第5課で「〜を…ます」の動詞の文を広げたあとを受けて、ものや場所の様子を言う形容詞が初めて出る課です。形容詞にはイ形容詞(暑い・高い)とナ形容詞(静か・きれい)の2種類があり、「です」の前(形容表現(1))と名詞の前(形容表現(2))で形の分かれ方が違うので、課の最初から黒板にイとナの2列の表を作り、語が出るたびにどちらの列かを指させます。後半は「より」で二つを比べる文と、「そして」「が」で二つの様子をつなぐ文で、つなぎ方は二つの様子が同じ向き(よい・よい)か、逆の向き(高い・おいしい)かで選ぶ、と見せるのが芯です。季節・天気・町・店のように、学習者が自分の生活で比べたり評価したりできる話題を使うと、言いたいことがすぐに出てきます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 15分 | 第5課の「〜で…を―ました」で「週末、どこで何を食べましたか」と2〜3人に聞き、答えた料理について教師が「おいしいですか」と聞き返して形容詞を耳に入れる。季節(春・夏・秋・冬)と天気の絵で、この課は様子を言う課だと予告し、反対の組の形容詞を絵カードで先に入れておく |
| 学習項目1 形容表現(1) | 40分 | イとナの2列の表を黒板に作り、「〜です」と否定の形を表に書き足しながら導入。「〜はどうですか」で聞き合う |
| 学習項目2 形容表現(2) | 30分 | 表のナの列に赤で「な」を足して名詞の前の形へ。持ち物と町を「どんな〜ですか」で聞き合う。1コマ目はここまでで、宿題に「自分の持ち物を『どんな〜』の答えの形で3つ書く」を出す |
| 学習項目3 〜は…より―です | 30分 | 2コマ目の頭に、宿題の文を2〜3人に読ませて形容表現(1)(2)を復習してから入る。二つの物を並べて、「より」が比べる相手(基準)につくことを見せ、季節・乗り物・自分の国と日本で比べる |
| 学習項目4・5 〜です。そして、…です/〜ですが、…です | 40分 | 形容詞を「+(よい)」「-(よくない)」の2列に分け、同じ列の組は「そして」、違う列の組は「が」とつなぎ方を選ばせる。順番を入れ替えて、言いたいことが後ろに来ると確かめる |
| まとめの活動 | 25分 | 自分の国の町と日本の町を紹介する短いスピーチ(「〜は〜な町です。そして、…です」「〜は〜より…です」「〜ですが、…です」を1文ずつ)をペアで聞き合い、聞いた内容をクラスに報告する |
ものや人、場所の様子を表す形容詞を「です」の前で使います。形容詞には「い」で終わるイ形容詞(暑い・高い・おいしい)と、名詞の前で「な」がつくナ形容詞(静か・きれい・元気)があり、「です」の前ではどちらもそのまま「暑いです」「静かです」と言います。違いがはっきり出るのは否定の形で、イ形容詞は最後の「い」を「くないです」に替え(暑くないです)、ナ形容詞は後ろに「じゃありません」をつけます(静かじゃありません)。「いいです」だけは否定が「よくないです」になります。様子を聞くときは「〜はどうですか」です。文法の用語で言えば、イ形容詞は学校文法の「形容詞」、ナ形容詞は「形容動詞」にあたり、日本語教育では名詞の前の形(「い」か「な」か)で呼び分けます。ナ形容詞の「です」の文と否定の形は、第1課の名詞の文(学生です/学生じゃありません)と同じ形になると見せると、学習者が新しく覚えることは実質イ形容詞の否定だけになります。
イ形容詞+です(否定は「い」→「くないです」)/ナ形容詞+です(否定は「じゃありません」。「です」の前に「な」はつけない)
代入練習では、反対の組のカードを1枚ずつ見せて「〜です」、裏返して「〜くないです/〜じゃありません」と言わせ、イとナのカードを混ぜて速く回す。やり取りでは、ペアで写真(町・料理・部屋)を見せ合い「〜はどうですか」「〜です/〜くないです」と答えさせ、慣れたら「とても」「あまり〜ない」を足していく。
形容詞を名詞の前に置いて、どんなものかを言います。イ形容詞はそのまま名詞につけ(新しいかばん・おいしい料理)、ナ形容詞は「な」をつけてから名詞につけます(静かな町・きれいな部屋)。形容詞と名詞の間に「の」は入りません。どんなものかを聞くときは「どんな〜ですか」で、「静かな町です」とも「静かです」とも答えられます。このように名詞の前に置いて名詞をくわしくする働きを、文法の用語で連体修飾と言い、第18課では動詞の文が名詞の前に来る形まで広がります。
イ形容詞+名詞/ナ形容詞+な+名詞(間に「の」は入れない)
代入練習では、名詞カード(町・店・部屋・料理・かばん)と形容詞カードを組み合わせて見せ、「にぎやかな町」「おいしい料理」と一息で言わせて、「な」が要るかをその場で判断させる。やり取りでは、ペアで「〜さんの国の〜はどんな〜ですか」と聞き合い、答えを「〜さんの国の町は〜な町です」と第三者として報告させる。
二つのものを比べて、片方の様子を言う文です。「AはBより〜です」の形で、話題のAについて、Bを比べる相手(基準)にすると〜だ、と言います。「より」は比べる相手のほうにつきます。差が大きいときは「ずっと」をつけて「ずっと寒いです」と言えます。二つのうちどちらかを聞く言い方は第7課で習うので、この課では言い切る形を練習します。文法の用語で言えば「より」は比べる基準を表す格助詞で、話題を表す「は」とは働きが違います。英語のように形容詞の形が変わる(big→bigger)ことはなく、形容詞は「寒いです」のままで、比べる相手を「より」で足すだけだと見せると負担が軽くなります。
A は B より + イ形容詞/ナ形容詞 + です(「より」は比べる相手のBにつく)
代入練習では、二枚のカード(季節・乗り物・店・町)と形容詞カードを見せて「AはBより〜です」と言わせ、慣れたらAとBのカードを入れ替えて、形容詞を反対の語に替えさせる(「秋は冬より暖かいです」)。やり取りでは、自分の国と日本を三つの観点(夏・物の値段・町の大きさ)で比べてペアに話させる。
一つのものについて二つの様子を言うとき、文を二つに分けて「そして」でつなぎます。「この町は静かです。そして、きれいです。」のように、二つの様子が同じ向き(どちらもよい、どちらもよくない)のときに使うのが基本です。二つ目の文では、同じ話題(「この町は」)をくり返さずに言います。形容詞どうしを一つの文でつなぐ形は第11課で習うので、この課では文を二つに分けて言います。「そして」は文と文をつなぐ接続詞で、ここでは二つ目の文が一つ目と同じ向きの情報を足すことを示します。話の流れに合うつなぎ方を選べるかは、文法の用語で言う文と文のつながり(結束性)の問題です。
〜です。そして、…です(一つ目の文を「です。」で終え、二つ目の文の頭に「そして」を置く)
代入練習では、写真1枚と形容詞カード2枚を見せて「〜です。そして、…です」と言わせ、慣れたらカードを1枚にして、二つ目の言葉を学生に考えさせる。やり取りでは、ペアで自分の国の町・料理・季節を一つ選び、「〜はどうですか」と聞かれたら様子を二つ、「そして」でつないで答える。
二つの様子が逆の向きのとき、「が」で一つの文につなぎます。「この店は高いですが、おいしいです。」は、よくない点(高い)とよい点(おいしい)を並べて、後ろのほうを特に言いたいときの形です。順番を入れ替えて「おいしいですが、高いです」と言うと、言いたいことが「高い」のほうになります。この「が」は文と文をつなぐ言葉で、第7課で習う「〜が好きです」の「が」とは働きが違います。文法の用語では、この「が」は前の文と後ろの文を逆の関係でつなぐ接続助詞で、二つの文を一つの文にまとめます(「そして」は文を二つに分けたまま、二つ目の文の頭に置く接続詞です)。
〜です+が、…です(「です」の後ろに「が」をつけ、読点で区切って後ろの文を続ける)
代入練習では、+と-の列から1枚ずつカードを引かせて「〜ですが、…です」と言わせ、次に同じ2枚の順番を入れ替えて言わせる。やり取りでは、「日本の〜はどうですか」(食べ物・電車・部屋・季節)と聞き合い、よい点とよくない点を一つずつ「が」でつないで答える。
この課の新出語の中心は形容詞で、「暑い/寒い」「高い/安い」「大きい/小さい」「新しい/古い」のように反対の組で覚えさせると、否定の形や「が」の練習でそのまま使えます。イ形容詞とナ形容詞は、語を出すたびに黒板の2列の表のどちらに入るかを言わせ、「きれい」のように「い」で終わるナ形容詞には最初から印をつけておきます。季節(春・夏・秋・冬)と天気の言葉は絵で入れ、「とても」「あまり〜ない」「ずっと」は形容詞と組にした形(とても寒い・あまり寒くない)で練習します。
宿題は、自分の国の町(または日本で行った町)について、この課の形を使って4文書くこと(「〜は〜な町です」「〜は〜より…です」「〜です。そして、…です」「〜ですが、…です」を1文ずつ)。次のコマの最初に宿題の文を2〜3人に読ませ、聞いたクラスメートに「その町はどうですか」と聞いて答えさせて復習してから、第7課の「〜が好きです」に入ります。
第6課のイ形容詞とナ形容詞はどう見分けさせればいいですか?
語が出るたびに、黒板の「イ」「ナ」の2列の表のどちらに入るかを学習者に言わせ、名詞の前で「い」のままか「な」がつくかで覚えさせます。見た目で決めると「きれい」(のちの課の「きらい」も)のように「い」で終わるナ形容詞で必ず崩れるので、これらは最初から別の色で印をつけます。「です」の前ではどちらも同じに見えるので、区別は否定の形と名詞の前の形で確かめます。
形容詞の否定は「〜くないです」と「〜くありません」のどちらで教えますか?
どちらも正しい形で、「〜くありません」のほうが少し改まった言い方です。この教案では話し言葉でよく使う「〜くないです」を中心に練習していますが、使う教科書が示す形があればそちらを先に出し、もう一方は聞いて分かればよい形として後で紹介します。ナ形容詞の「じゃありません」と「ではありません」も同じ考え方で扱います。
「そして」と「が」の使い分けはどう見せればいいですか?
形容詞を「+(よい)」「-(よくない)」の2列に分け、同じ列の組は「そして」、違う列の組は「が」と、つなぎ方を表から選ばせます。「高い」「古い」のように話によって向きが変わる語は、何の話かを決めてから列に入れます。「が」では後ろが言いたいことになるので、同じ2語の順番を入れ替えた文を並べ、どちらの人がその店にまた行くかを聞くと違いが分かります。
「AはBより〜です」で「より」をつける側を逆にする学習者にはどうしますか?
二つの物を実際に並べ、「より」がついたほうを指さして「くらべる相手」と板書で示します。そのうえでAとBを入れ替え、形容詞を反対の語(寒い→暖かい)にすると同じ意味になることを言わせると、「より」がどちらにつくかの意識が強くなります。英語の than の語順に引かれて「より」の句を文の最後に置く言い方(話し言葉の言い足しなら言えます)も、書くときは同じ枠で形容詞の前に戻します。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と形容表現(1)(2)まで、2コマ目は「より」の比べる文と「そして」「が」のつなぎ方、まとめの町紹介スピーチです。形容詞の数が多い課なので、2コマ目の頭に反対の組のカードで5分ほど否定の形を言わせてから入ると、後半の練習が止まりません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。