第8課までで「ます」の文・形容詞の文・「〜があります」がそろったところで、自分がほしい物・したいこと・出かける目的・物の使い心地を言えるようにする課です。四つの学習項目のうち三つ(たいです・に行きます・やすいです/にくいです)は、どれもます形から「ます」を取った形に何かをつける形なので、最初の「たいです」で「ます」を手で隠して取る動作をしっかり見せておくと、あとの二つは同じ動作のくり返しで入ります。「ほしい」「たい」「やすい」「にくい」はどれも い形容詞と同じように形が変わるので、第6課の形容表現の板書を横に残しておくと、否定の形や名詞の前の形も迷わずに言えます。最後は、ほしい物を買いに行く相談として四つを一つの会話にまとめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | デパートの売り場の絵を黒板に貼り、第8課の「〜に…があります」で「かばんの売り場に何がありますか」と2〜3問聞く。値段の札を指して第2課の「この〜は…円です」も言わせ、そのまま教師が一つの品物を指して「いいですね。わたしはこれがほしいです」と言って課の題につなぐ |
| 学習項目1 〜ほしいです | 35分 | 品物の絵カードと値段の札で「〜がほしいです」を導入。形容詞カードを重ねて「軽いパソコンがほしいです」まで広げ、誕生日にほしい物を聞き合う |
| 学習項目2 〜たいです | 45分 | 既習の動詞をます形で板書し、「ます」を手で隠して「たい」のカードに替える。「物は ほしい/することは たい」の2列を黒板に作って区別し、週末にしたいことを聞き合う(1コマ目はここまで) |
| 学習項目3 〜に行きます/来ます/帰ります | 40分 | 町の地図の絵で第4課の「〜へ行きます」を言わせ、そこに目的のカードを足して「〜へ…を―に行きます」の枠にする。「何をしに日本へ来ましたか」で学生自身のことを言わせる(2コマ目の最初の5分で「〜たいです」を口頭で復習してから入る) |
| 学習項目4 〜やすいです/〜にくいです | 30分 | スプーン・くつ・字の大きさが違う紙などの実物を試させて導入。二つを比べる第7課の「どちらが」と、学習項目1の「〜やすい〜がほしいです」につなげる |
| まとめの活動 | 20分 | 「週末の買い物の相談」をペアで行う。ほしい物(どんな物か)→どこへ買いに行くか→いっしょに行きませんか、までを一つの会話にして、最後にクラスの前で発表する |
自分が手に入れたい物を「Nがほしいです」で言います。ほしい物には「が」をつけます。「ほしい」は い形容詞なので、第6課の形容表現と同じように「です」をつけて言い、否定は「ほしくないです」になります。この課では、話し手(わたし)の気持ちを言う文と、相手に「何がほしいですか」と聞く文だけを練習します。文法用語では、「ほしい」は話し手の気持ちを表す感情形容詞で、言い切りの文では主語が「わたし」に限られる(人称制限)と説明されます。
名詞+が+ほしいです(否定は「Nはほしくないです」。形容詞をつけるときは「新しいくつがほしいです」)
口頭の代入練習では、品物の絵カードを1枚ずつ見せて「〜がほしいです」、次に形容詞カード(大きい・小さい・新しい・安い)を重ねて「安いカメラがほしいです」と一文で言わせる。場面のやり取りでは、値段の札つきのカードを机に並べた「店」を作り、ペアで「何がほしいですか」「〜がほしいです」「この〜は…円です」まで言わせる。
自分がしたい動作を言います。動詞のます形から「ます」を取って「たい」をつけ、「食べたいです」「行きたいです」のようにします。「たい」も い形容詞と同じように形が変わるので、したくないときは「食べたくないです」です。「〜を食べたいです」の「を」は「が」になることもありますが、この課ではまず「を」のままで言えるようにします。物がほしいときは学習項目1の「ほしいです」、何かをしたいときは「たいです」と使い分けます。「ます」を取った形は学校文法の連用形にあたり、「たい」は話し手の願望を表す形として、モダリティ(希望)や人称制限の問題で取り上げられます。
Vます から「ます」を取った形+たいです(食べます→食べたいです・行きます→行きたいです・します→したいです。否定は Vたくないです)
口頭の代入練習では、動詞のカード(ます形)を見せて「〜たいです」に替えさせ、慣れたら教師が「〜たいですか」と聞いて「はい、〜たいです」「いいえ、〜たくないです」で答えさせる。場面のやり取りでは、第4課の「だれと」「何で」「どこへ」を合わせて「日曜日、どこへ行きたいですか」「だれと行きたいですか」とペアで聞き合う。クラスの前では、聞いた人が代わりに言うのではなく、本人に「わたしは〜へ行きたいです」と言わせる(ほかの人の気持ちの言い方はまだ習っていないため)。
何をするために行くか(来るか・帰るか)、行く目的を言います。動詞のます形から「ます」を取った形に「に」をつけ、「買いに行きます」「勉強しに来ました」のようにします。行く場所は第4課と同じ「へ」で言うので、「スーパーへ野菜を買いに行きます」のように、場所と目的を一つの文に入れられます。「買い物」「散歩」のように動作を表す名詞は、そのまま「に」をつけて「買い物に行きます」と言えます。文法用語では、移動の動詞(行く・来る・帰る)の前の「連用形+に」は目的を表す形で、目的の部分には自分の意志でする動作(意志動詞)が入ります。
(場所へ)+Vます から「ます」を取った形+に+行きます/来ます/帰ります(動作を表す名詞は「買い物に行きます」)
口頭の代入練習では、場所カードと目的のカード(本を読みます・野菜を買います・お金をおろします など)を組み合わせて見せ、「〜へ…に行きます」と一文で言わせる。次に「買い物」「散歩」「食事」の名詞カードを混ぜて、「ます」を取るのか名詞のままかを判断させる。場面のやり取りでは、ペアで「日曜日、どこへ行きますか」「〜へ…に行きます」と聞き、第5課の「いっしょに行きませんか」「ええ、行きましょう」まで続けさせる。
物について、その動作が楽にできるか、むずかしいかを言います。動詞のます形から「ます」を取って「やすい」をつけると楽にできること(読みやすい・歩きやすい)、「にくい」をつけるとしにくいこと(読みにくい・書きにくい)を表します。この形では、話題にする物(本・くつ・はし・漢字)を「は」で出して、「この本は読みやすいです」のように言います。どちらも い形容詞と同じように使えるので、名詞の前に置いて「使いやすいパソコン」とも言えます。「やすい」「にくい」は動詞の連用形について新しい い形容詞を作る形で、語構成の見方では、動詞と形容詞の要素が結びついた一語の形容詞として扱います。
Vます から「ます」を取った形+やすいです/にくいです(い形容詞と同じ形。名詞の前は「読みやすい本」)
口頭の代入練習では、物の絵と動詞のカードを組み合わせて見せ(本+読みます、スプーン+使います、くつ+歩きます、はし+食べます)、絵の横の◯×の印で「やすい」か「にくい」かを決めて一文で言わせる。次に名詞の前に置いて「〜やすい〜がほしいです」と学習項目1につなげる。場面のやり取りでは、二つの物の絵を見せてペアで「どちらが〜やすいですか」と聞き合い、選んだ理由を「〜は…にくいですから」と言わせる。
この課の新出語は、品物の名前(かばん・くつ・時計・カメラなど)と、目的を言うための動詞・動作の名詞(買い物・散歩など)が中心になると考えられます。品物は値段の札つきの絵カードで「〜がほしいです」の文に入れて、動詞はます形で板書して「ます」を取る練習に使い、単語だけで覚えさせないようにします。「やすい」「にくい」と組み合わせる動詞(読みます・書きます・歩きます・使います)は、実物を試させながら入れると定着します。下の語は、この課の四つの形の練習で使いやすい語をこちらで選んだものです(教科書の新出語の一覧ではありません)。
宿題は、自分の週末について「ほしい物」「したいこと」「どこへ何をしに行くか」を一つずつ入れて3文書くこと(例の形は板書の枠のまま。「〜やすい」「〜にくい」を一つ入れられたら足してよい)。次のコマの最初に、宿題の文を使って教師が「週末、何をしに行きますか」「何がほしいですか」と聞いて復習し、学生が答えた動詞をます形で黒板に並べてから、第10課の「〜ています(1)」に入ります。
『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』第9課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課とのつなぎと「〜ほしいです」「〜たいです」、2コマ目は「〜に行きます/来ます/帰ります」と「〜やすいです/〜にくいです」、最後に買い物の相談の活動です。三つの形がどれも「ます」を取った形につくので、1コマ目で「ます」を取る動作を定着させておくと2コマ目が速く進みます。
「〜ほしいです」と「〜たいです」の違いはどう教えればいいですか?
物を求めるのが「ほしい」、動作を求めるのが「たい」です。黒板を2列に分け、同じカメラの絵から「カメラがほしいです」と「カメラを買いたいです」の二文を作ると、つく語(名詞か動詞か)と助詞(「が」か「を」か)の違いが一度に見えます。どちらも い形容詞と同じ形なので、否定は「ほしくないです」「〜たくないです」とそろえて見せます。
「〜を食べたいです」と「〜が食べたいです」はどちらで教えますか?
この課ではまず「を」のまま言えるようにします。「が」を使う言い方もあり、学習者に聞かれたらどちらも使うと答えてかまいませんが、練習で求めるのは「を」に決めておくと、第5課の「〜を…ます」から形を変えずに作れます。「が」の言い方は、学習者が慣れてから耳で聞いて覚えれば十分です。
「田中さんは〜たいです」と言わせないのはなぜですか?
日本語では、ほかの人の気持ちを「ほしいです」「たいです」で言い切ると不自然になり、文法では人称制限と呼ばれます。ほかの人のことは「〜たがっています」や「〜たいと言っていました」のような別の形を使いますが、この課ではまだ出しません。クラスで聞いた結果を伝えるときは、表に書かせて見せるか、本人に「わたしは〜たいです」と言わせます。
「〜に行きます」の前には何が来ますか?
動詞のます形から「ます」を取った形(買いに・読みに・迎えに)か、「買い物」「散歩」「食事」のような動作を表す名詞です。「*本に行きます」のように物の名詞をそのまま置くと目的になりません。名詞のカードを混ぜた代入練習で、「ます」を取るのか名詞のままかを学習者に判断させると区別がつきます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。