日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第9課「かばんがほしいです」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

第8課までで「ます」の文・形容詞の文・「〜があります」がそろったところで、自分がほしい物・したいこと・出かける目的・物の使い心地を言えるようにする課です。四つの学習項目のうち三つ(たいです・に行きます・やすいです/にくいです)は、どれもます形から「ます」を取った形に何かをつける形なので、最初の「たいです」で「ます」を手で隠して取る動作をしっかり見せておくと、あとの二つは同じ動作のくり返しで入ります。「ほしい」「たい」「やすい」「にくい」はどれも い形容詞と同じように形が変わるので、第6課の形容表現の板書を横に残しておくと、否定の形や名詞の前の形も迷わずに言えます。最後は、ほしい物を買いに行く相談として四つを一つの会話にまとめます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 自分がほしい物を「〜がほしいです」で言い、相手に「何がほしいですか」と聞ける
  • 自分がしたいこと・したくないことを「〜たいです/〜たくないです」で言い、友達に「何を〜たいですか」と聞ける
  • どこへ何をしに行くか(来たか・帰るか)を「〜へ…に行きます」の形で言える
  • 物について「読みやすい」「歩きにくい」のように、その動作がしやすいかどうかを言い、二つの物を比べて選べる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分デパートの売り場の絵を黒板に貼り、第8課の「〜に…があります」で「かばんの売り場に何がありますか」と2〜3問聞く。値段の札を指して第2課の「この〜は…円です」も言わせ、そのまま教師が一つの品物を指して「いいですね。わたしはこれがほしいです」と言って課の題につなぐ
学習項目1 〜ほしいです35分品物の絵カードと値段の札で「〜がほしいです」を導入。形容詞カードを重ねて「軽いパソコンがほしいです」まで広げ、誕生日にほしい物を聞き合う
学習項目2 〜たいです45分既習の動詞をます形で板書し、「ます」を手で隠して「たい」のカードに替える。「物は ほしい/することは たい」の2列を黒板に作って区別し、週末にしたいことを聞き合う(1コマ目はここまで)
学習項目3 〜に行きます/来ます/帰ります40分町の地図の絵で第4課の「〜へ行きます」を言わせ、そこに目的のカードを足して「〜へ…を―に行きます」の枠にする。「何をしに日本へ来ましたか」で学生自身のことを言わせる(2コマ目の最初の5分で「〜たいです」を口頭で復習してから入る)
学習項目4 〜やすいです/〜にくいです30分スプーン・くつ・字の大きさが違う紙などの実物を試させて導入。二つを比べる第7課の「どちらが」と、学習項目1の「〜やすい〜がほしいです」につなげる
まとめの活動20分「週末の買い物の相談」をペアで行う。ほしい物(どんな物か)→どこへ買いに行くか→いっしょに行きませんか、までを一つの会話にして、最後にクラスの前で発表する

学習項目 1 〜ほしいです

意味・はたらき学習項目 1

自分が手に入れたい物を「Nがほしいです」で言います。ほしい物には「が」をつけます。「ほしい」は い形容詞なので、第6課の形容表現と同じように「です」をつけて言い、否定は「ほしくないです」になります。この課では、話し手(わたし)の気持ちを言う文と、相手に「何がほしいですか」と聞く文だけを練習します。文法用語では、「ほしい」は話し手の気持ちを表す感情形容詞で、言い切りの文では主語が「わたし」に限られる(人称制限)と説明されます。

接続

名詞+が+ほしいです(否定は「Nはほしくないです」。形容詞をつけるときは「新しいくつがほしいです」)

形
Nがほしいです〈形容詞〉Nがほしいです(新しいパソコンがほしいです)何がほしいですかNはほしくないです

導入

  • 品物の絵カードと値段の札で気持ちを作るかばん・くつ・時計・カメラ・パソコンの絵カードに値段の札をつけて黒板に貼る。教師が一枚ずつ見て「このかばんは3,000円です。いいですね」と言い、気に入った一枚の前で胸に手を当てて「わたしはこれがほしいです」と言う。板書は「わたしは [物]が ほしいです」の枠にして、カードを差し替えて全員でくり返す。
  • 誕生日にほしい物を聞く第4課の「何月何日」を使い、教師が自分の誕生日を言ってから「誕生日に何がほしいですか」と学生に聞く。答えを黒板に名前と一緒に書いていき、形容詞を足したい学生には「大きい」「新しい」「小さい」のカードを見せて「新しい時計がほしいです」の形に広げる。ほしくない物は「Nはほしくないです」と「は」にして言うことも、ここで一度見せる。

板書案

わたしは [物]〔赤〕が ほしいです。
わたしは 新しい 時計が ほしいです。
何が ほしいですか。——カメラが ほしいです。
ほしい → ほしくないです(高い → 高くないです と同じ形)
〔絵〕店の物 → ほしい  〔絵〕いつも好きな物 → 好き

場面と発話(自作)

  • 家電の店で、友達といっしょにパソコンの売り場を見ている留学生が言う。わたしは新しいパソコンがほしいです。
  • 誕生日が近いクラスメートに、何を買うか決めるために聞く。誕生日に何がほしいですか。——時計がほしいです。
  • 旅行用品の店で、店の人に大きいスーツケースを見せられた客が、ほしい物の大きさを言う。大きいスーツケースはほしくないです。小さいスーツケースがほしいです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、品物の絵カードを1枚ずつ見せて「〜がほしいです」、次に形容詞カード(大きい・小さい・新しい・安い)を重ねて「安いカメラがほしいです」と一文で言わせる。場面のやり取りでは、値段の札つきのカードを机に並べた「店」を作り、ペアで「何がほしいですか」「〜がほしいです」「この〜は…円です」まで言わせる。

  1. 口頭品物の絵カード(時計・くつ・カメラ・かばん・パソコン)を1枚ずつ見せ、教師のキュー「時計」→ 全体で「時計がほしいです」→ 個人で。次にキューを「新しい・時計」「安い・カメラ」「軽い・パソコン」と形容詞つきにして一文で言わせる。最後に×の札を重ねたカードで「パソコンはほしくないです」と否定まで言わせる。「が」が「を」になった学生には、板書の赤い「が」を指して言い直させる。
  2. ペア情報差の練習。Aは「ほしい物カード」(品物3つと形容詞が書いてある)を持ち、Bには見せない。Bが「何がほしいですか」と聞き、Aは「新しい時計がほしいです」と答える。Bはメモを取り、最後に「大きいかばんですか」のように確かめる。3つ聞き終わったらカードを見せ合って答え合わせをし、役を交替する。
  3. 産出活動名「誕生日ほしい物アンケート」。表(名前・誕生日・ほしい物)を配り、学生が教室を歩いて3人に「誕生日は何月何日ですか」「誕生日に何がほしいですか」と聞いて書く。終わったら自分のほしい物を、値段の予想と一緒に「この時計は2万円です。わたしはこの時計がほしいです」と2文で発表する。教師が見るのは、ほしい物の「が」、否定の「ほしくないです」、ほかの人の気持ちを言い切らないこと(聞いた結果は表を見せて紹介させ、「*〜さんは〜がほしいです」とは言わせない)。

つまずきと手当て

  • 「カメラをほしいです」と、ほしい物に「を」をつける。話し言葉で耳にすることもあるが、この段階では「が」に決めて覚えさせる。板書の枠の「が」を赤で書き、代入練習では教師が毎回「が」を少し強く言う
  • 「*田中さんはカメラがほしいです」と、ほかの人の気持ちを「ほしいです」で言い切る。この課の文は「わたし」の気持ちと、相手への質問だけだと板書の枠の「わたしは」を指して確かめる。ほかの人の気持ちの言い方は「〜ています」を習ったあとで扱う
  • 「好きです」と「ほしいです」を同じ意味だと思う。「好き」はいつもの気持ち、「ほしい」は今それを持っていなくて手に入れたい気持ちだと、持っている物と店の物の絵を並べて見せる
  • 先生や会社の上の人に「何がほしいですか」と直接聞く。文法は正しいが、相手によっては失礼に聞こえることがあるので、練習の相手は友達・クラスメートにしておく

既習の文型との違い

  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(第7課)どちらも対象に「が」をつけますが、「好き」はいつも持っている気持ち、「ほしい」は今それを持っていなくて手に入れたい気持ちです。形も違い、「好き」はな形容詞なので否定は「好きじゃありません」、「ほしい」はい形容詞なので「ほしくないです」です。「*ほしいじゃないです」「*好きくないです」と混ぜる学習者がいるので、二つの否定を並べて板書します。
  • 〜を…ます(第5課)「カメラを買います」は動作の文なので物に「を」がつきますが、「カメラがほしいです」は気持ちの文なので「が」です。第5課の「を」に慣れた学習者は「カメラをほしいです」と言いやすいので、同じカメラの絵で「買います」と「ほしいです」の二文を作り、助詞だけが変わることを見せます。
関連する文型

学習項目 2 〜たいです

意味・はたらき学習項目 2

自分がしたい動作を言います。動詞のます形から「ます」を取って「たい」をつけ、「食べたいです」「行きたいです」のようにします。「たい」も い形容詞と同じように形が変わるので、したくないときは「食べたくないです」です。「〜を食べたいです」の「を」は「が」になることもありますが、この課ではまず「を」のままで言えるようにします。物がほしいときは学習項目1の「ほしいです」、何かをしたいときは「たいです」と使い分けます。「ます」を取った形は学校文法の連用形にあたり、「たい」は話し手の願望を表す形として、モダリティ(希望)や人称制限の問題で取り上げられます。

接続

Vます から「ます」を取った形+たいです(食べます→食べたいです・行きます→行きたいです・します→したいです。否定は Vたくないです)

形
Vたいです(食べたいです・行きたいです・したいです)Nを Vたいです(すしを食べたいです)何を Vたいですか/どこへ行きたいですかVたくないです

導入

  • 「ます」を手で隠して「たい」に替えるこれまでに習った動詞をます形で黒板に縦に書く(食べます・飲みます・行きます・見ます・買います・します)。教師が「ます」の部分を手で隠し、その上に「たい」と書いたカードを貼って「食べたい」と読む。続けて時計の絵を12時にして「12時です。ラーメンを食べたいです」、うちわであおぎながら「暑いです。水を飲みたいです」と、気持ちが分かる状況の中で言う。
  • 「ほしい」と「たい」の2列を作る黒板を2列に分け、左に「物 → がほしいです」、右に「すること → たいです」と見出しを書く。カメラの絵を指して「カメラがほしいです」、カメラを買う動作をして「カメラを買いたいです」と、同じ絵から二つの文を作って見せる。そのあと学生に「日曜日、何をしたいですか」「どこへ行きたいですか」と聞き、答えを右の列に書き足していく。

板書案

食べ〔赤で消す〕ます + 〔赤〕たい です
Vます - ます + たいです (行きます → 行きたいです/します → したいです)
〔左の列〕物 → Nが ほしいです 〔右の列〕すること → Nを Vたいです
日曜日、友達と 海へ 行きたいです。
Vたい → Vたくないです(い形容詞と同じ)

場面と発話(自作)

  • 金曜日の授業のあと、友達に週末のことを聞かれた留学生が言う。日曜日、友達と海へ行きたいです。
  • 昼休みに、同じ部署の人とどこで食べるかを決めるために聞く。何を食べたいですか。——ラーメンを食べたいです。
  • とても寒い日の放課後、クラスメートに公園へ行こうと言われて答える。きょうは寒いですから、外へ行きたくないです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、動詞のカード(ます形)を見せて「〜たいです」に替えさせ、慣れたら教師が「〜たいですか」と聞いて「はい、〜たいです」「いいえ、〜たくないです」で答えさせる。場面のやり取りでは、第4課の「だれと」「何で」「どこへ」を合わせて「日曜日、どこへ行きたいですか」「だれと行きたいですか」とペアで聞き合う。クラスの前では、聞いた人が代わりに言うのではなく、本人に「わたしは〜へ行きたいです」と言わせる(ほかの人の気持ちの言い方はまだ習っていないため)。

  1. 口頭ます形の動詞カード(食べます・飲みます・行きます・見ます・買います・します)を見せ、「ます」の部分を手で隠してから全体で「食べたいです」。次にキューを三つの型で出す。動詞だけ(「飲みます」→「飲みたいです」)、名詞と動詞(「すし・食べます」→「すしを食べたいです」)、状況の絵(暑い日の絵→「水を飲みたいです」)。×の札を出したら「〜たくないです」で言わせる。慣れたら教師が「〜たいですか」と聞き、「はい」「いいえ」で答えさせる。
  2. ペア「週末の計画カード」を使う。Aのカードにはしたいことの絵が3つ(場所・食べ物・見る物)、Bのカードは空欄。Bが「日曜日、どこへ行きたいですか」「何を食べたいですか」「何を見たいですか」と聞いて絵の内容をメモする。交替したあと、二人のカードで同じことを一つ見つけ、第5課の「いっしょに〜ませんか」「ええ、〜ましょう」で約束まで言わせる。
  3. 産出活動名「したいことビンゴ」。3×3のマスに動作の絵(海へ行く・すしを食べる・映画を見る・テニスをする・服を買う など)を描いた紙を配る。学生は教室を回って「〜たいですか」と聞き、「はい、〜たいです」と答えた人の名前をそのマスに書く。1列そろったら終わり。最後に自分がいちばんしたいことを「わたしは〜たいです。〜から」と理由つきで言う。教師が見るのは「ます」の取り方、否定の「〜たくないです」、聞いた結果を「*〜さんは〜たいです」と言い切らせないこと。

つまずきと手当て

  • 「*食べますたいです」「*食べるたいです」と、「ます」を取らずに、または習っていない形に「たい」をつける。黒板のます形の「ます」を手で隠す動作を学生にもさせ、「ます を取る」を体で覚えさせる
  • 「*食べたいじゃないです」「*食べたいないです」と否定を作る。「たい」は「高い→高くないです」と同じ い形容詞の形だと、第6課の板書を横に並べて見せる
  • 「*田中さんはすしを食べたいです」と、ほかの人の気持ちを言い切る。学習項目1と同じで、この課は「わたし」と相手への質問だけだと確かめる
  • 先生に「先生、コーヒーを飲みたいですか」と聞く。文法は正しいが、目上の人の気持ちを直接聞くのは失礼に聞こえやすい。すすめるときは第5課の「いっしょに〜ませんか」や「コーヒーを飲みませんか」を使うと教える

既習の文型との違い

  • 〜ほしいです(第9課 学習項目1)「ほしい」は名詞について物を求め、「たい」は動詞について動作を求めます。助詞も変わり、物は「カメラがほしいです」、動作は「カメラを買いたいです」です。「*カメラがほしいたいです」「*カメラを買いほしいです」と二つを重ねる誤りが出るので、板書の2列のどちらに入るかを先に決めさせます。
  • いっしょに〜ませんか/〜ましょう(第5課)「〜ませんか」は相手を誘う言い方、「〜たいです」は自分の気持ちを言う言い方です。誘うつもりで「いっしょにテニスをしたいですか」と聞くと、相手の気持ちをたずねるだけになり、誘いには聞こえにくくなります。誘うときは「〜ませんか」、気持ちを言うときは「〜たいです」と、場面の絵を分けて練習します。
関連する文型

学習項目 3 〜に行きます/来ます/帰ります

意味・はたらき学習項目 3

何をするために行くか(来るか・帰るか)、行く目的を言います。動詞のます形から「ます」を取った形に「に」をつけ、「買いに行きます」「勉強しに来ました」のようにします。行く場所は第4課と同じ「へ」で言うので、「スーパーへ野菜を買いに行きます」のように、場所と目的を一つの文に入れられます。「買い物」「散歩」のように動作を表す名詞は、そのまま「に」をつけて「買い物に行きます」と言えます。文法用語では、移動の動詞(行く・来る・帰る)の前の「連用形+に」は目的を表す形で、目的の部分には自分の意志でする動作(意志動詞)が入ります。

接続

(場所へ)+Vます から「ます」を取った形+に+行きます/来ます/帰ります(動作を表す名詞は「買い物に行きます」)

形
Nへ Vに行きます(スーパーへ野菜を買いに行きます)動作の名詞+に行きます(買い物に行きます・散歩に行きます)Vに来ます/Vに帰ります何をしに行きますか

導入

  • 町の地図の絵に目的のカードを足す黒板に駅・スーパー・図書館・公園・郵便局のある町の絵を描き、教師が指さしながら第4課の形で「あした、図書館へ行きます」と言う。次に本の絵カードを図書館の横に貼り、「図書館へ本を読みに行きます」と言い直す。板書は「[場所]へ [〜を V]に 行きます」の枠にして、学習項目2と同じく「ます」を手で隠す動作をしてから「に」をつけて見せる。
  • 学生が日本へ来た目的を聞く「来ます」は、教師が学生一人ひとりに「〜さんは何をしに日本へ来ましたか」と聞いて導入する。「日本語を勉強しに来ました」「働きに来ました」の答えを黒板に集めたあと、「帰ります」は、かぎを忘れてうちへ戻る絵(駅・うち・かぎ)で「うちへかぎを取りに帰ります」と見せる。三つの動詞の向きは第4課の矢印の絵を再び使って確かめる。

板書案

[場所]〔青〕へ [Nを Vます-ます]〔赤〕に 行きます/来ます/帰ります
スーパーへ 野菜を 買いに 行きます。
〔青〕へ=行く所 〔赤〕に=何をするか(目的)
買い物・散歩 + に 行きます(名詞のまま)
何を しに 行きますか。——本を 読みに 行きます。

場面と発話(自作)

  • 土曜日の朝、出かけようとしている留学生が、ルームメートに行き先を聞かれて答える。スーパーへ野菜を買いに行きます。
  • 新しいクラスの最初の日に、先生が留学生に日本へ来た目的を聞く。何をしに日本へ来ましたか。——日本語を勉強しに来ました。
  • 会社で、昼休みに出かける同僚が、うちに忘れた書類のことを話す。うちへ書類を取りに帰ります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、場所カードと目的のカード(本を読みます・野菜を買います・お金をおろします など)を組み合わせて見せ、「〜へ…に行きます」と一文で言わせる。次に「買い物」「散歩」「食事」の名詞カードを混ぜて、「ます」を取るのか名詞のままかを判断させる。場面のやり取りでは、ペアで「日曜日、どこへ行きますか」「〜へ…に行きます」と聞き、第5課の「いっしょに行きませんか」「ええ、行きましょう」まで続けさせる。

  1. 口頭町の地図の絵を黒板に貼り、場所カードと目的カードを組み合わせてキューを出す。「図書館・本を読みます」→「図書館へ本を読みに行きます」、「駅・友達を迎えます」→「駅へ友達を迎えに行きます」、「デパート・買い物」→「デパートへ買い物に行きます」(名詞はそのまま)。続けて「来ます」は「日本・日本語を勉強します」、「帰ります」は「うち・傘を取ります」で言わせる。最後は教師が「何をしに行きますか」と聞き、個人で答えさせる。
  2. ペア活動「行き先あて」。Aは場所カードと目的カードを1組ずつ引き、Bには場所だけ伝える(「あした、公園へ行きます」)。Bは目的を当てるつもりで「散歩に行きますか」と聞き、Aは「いいえ、テニスをしに行きます」のように答える。3回のうちに当てたらBの勝ち。5組で交替する。当たらなかったときも、Aは必ず「〜に行きます」の形で答えを言う。
  3. 産出活動名「わたしの土曜日 予定発表」。学生が自分の土曜日の予定を3文で書いて発表する。「どこへ何をしに行くか」を必ず入れ、第4課の「だれと」「何で」も一つ足す(例の形は板書のまま)。聞いた人は一つ「何をしに〜へ行きますか」「だれと行きますか」のように質問する。教師が見るのは、ます形から「ます」を取って「に」をつけているか、名詞の目的に「で」「を」がついていないか、行く場所が「へ」になっているか。

つまずきと手当て

  • 「*本を読むに行きます」と、ます形でない形に「に」をつける。学習項目2の「たい」と同じく「ます を取ってからつける」と、黒板のます形の列に戻って確かめる
  • 「*食べたいに行きます」と、「たい」と「に行きます」を一つにしてしまう。したい気持ちは「食べたいです」、行く目的は「食べに行きます」と、二つの枠を並べて別の文だと見せる
  • 「*買い物で行きます」「*買い物を行きます」と、目的の名詞に「で」や「を」をつける。母語の for や to の感覚が出やすいので、「目的は に」と枠の見出しに書いておく
  • 「レストランに食べに行きます」と「に」が二つ続き、学生がどちらの「に」か迷う。誤りではないが、この課では場所は「へ」、目的は「に」と分けて言わせると文の形が見えやすい。「食べにレストランへ行きます」のような語順の入れ替えも正しいので直さない

既習の文型との違い

  • 〜へ…(移動表現)(第4課)第4課の「図書館へ行きます」は行く場所だけを言う文で、この課の形はそこに目的を足して「図書館へ本を読みに行きます」とします。「へ」は行く所、「に」は何をするかです。目的だけ足して「*図書館へ本を読みます」と、最後を移動の動詞にしない誤りが出るので、文の最後は「行きます・来ます・帰ります」だと枠で見せます。
  • 〜で…を―ます(第5課)「図書館で本を読みます」はその場所でする動作を言う文、「図書館へ本を読みに行きます」はそこへ行く目的を言う文です。「で」の文はその場所にいてする動作、「に行きます」の文はこれから移動すること、という違いを地図の上で人の絵を動かして見せます。
関連する文型

学習項目 4 〜やすいです/〜にくいです

意味・はたらき学習項目 4

物について、その動作が楽にできるか、むずかしいかを言います。動詞のます形から「ます」を取って「やすい」をつけると楽にできること(読みやすい・歩きやすい)、「にくい」をつけるとしにくいこと(読みにくい・書きにくい)を表します。この形では、話題にする物(本・くつ・はし・漢字)を「は」で出して、「この本は読みやすいです」のように言います。どちらも い形容詞と同じように使えるので、名詞の前に置いて「使いやすいパソコン」とも言えます。「やすい」「にくい」は動詞の連用形について新しい い形容詞を作る形で、語構成の見方では、動詞と形容詞の要素が結びついた一語の形容詞として扱います。

接続

Vます から「ます」を取った形+やすいです/にくいです(い形容詞と同じ形。名詞の前は「読みやすい本」)

形
Nは Vやすいです(この本は読みやすいです)Nは Vにくいです(この漢字は書きにくいです)Vやすい N/Vにくい N(使いやすいパソコン)N1とN2とどちらが Vやすいですか

導入

  • 実物を試させる字の大きい紙と小さい紙、持つところの太いスプーンと細いスプーンを用意し、学生に実際に読ませたり使わせたりする。教師が字の大きい紙を読んで笑顔で「この紙は読みやすいです」、小さい紙で顔をしかめて「この紙は読みにくいです」と言う。板書は「[物]は [V]やすいです/にくいです」の枠にして、学習項目2・3と同じく「ます」を隠して「やすい」「にくい」のカードをつける。
  • 二つを比べて、ほしい物につなげるくつの絵を2枚(運動ぐつとかかとの高いくつ)貼り、第7課の形で「このくつとこのくつとどちらが歩きやすいですか」と聞く。答えが出たら、学習項目1の枠に戻って「歩きやすいくつがほしいです」と言い、「やすい」が名詞の前にも置けることを見せる。最後に、値段の「安い」と同じ音だが意味が違うことを、値段の札の絵と並べて一言確かめる。

板書案

[物]は Vます-ます + 〔赤〕やすいです/〔青〕にくいです
この紙は 読みやすいです。 この道は 歩きにくいです。
〔◯の顔〕やすい 〔×の顔〕にくい
読みやすい 本 歩きやすい くつ(名詞の前は い形容詞と同じ)
安い(値段) ≠ 〜やすい(楽にできる)

場面と発話(自作)

  • くつの店で、くつをはいて少し歩いてみた留学生が、友達に言う。このくつは歩きやすいです。このくつがほしいです。
  • 漢字の授業のあと、クラスメート同士で、きょう習った漢字について話す。この漢字は書きにくいです。——そうですね。
  • 会社で、先週新しいパソコンを買った同僚に、使った感想を聞く。新しいパソコンは使いやすいですか。——はい、とても使いやすいです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、物の絵と動詞のカードを組み合わせて見せ(本+読みます、スプーン+使います、くつ+歩きます、はし+食べます)、絵の横の◯×の印で「やすい」か「にくい」かを決めて一文で言わせる。次に名詞の前に置いて「〜やすい〜がほしいです」と学習項目1につなげる。場面のやり取りでは、二つの物の絵を見せてペアで「どちらが〜やすいですか」と聞き合い、選んだ理由を「〜は…にくいですから」と言わせる。

  1. 口頭実物(持つところの太さが違うスプーン2本・字の大きさが違う紙・はしとフォーク)と絵カードで、物・動詞・◯×の三つのキューを出す。「スプーン・使います・◯」→「このスプーンは使いやすいです」、「漢字・書きます・×」→「この漢字は書きにくいです」、「くつ・歩きます・◯」→「このくつは歩きやすいです」、「説明・分かります・◯」→「この説明は分かりやすいです」。全体→個人の順で言わせ、慣れたら名詞の前に置いて「歩きやすいくつ」「読みやすい本」の形にも替えさせる。
  2. ペア二つの物の絵カード(運動ぐつとかかとの高いくつ・字の大きい本と小さい本・はしとフォーク)を組にして配る。Aが第7課の形で「このくつとこのくつとどちらが歩きやすいですか」と聞き、Bが答えて、理由を「こちらは歩きにくいですから」と足す。3組終わったら交替。答えが人によって違ってよいこと(はしが食べやすい人もいる)を最初に伝えておく。
  3. 産出活動名「使いやすい物 紹介」。前のコマで予告しておき、学生がよく使う物(辞書・かばん・ペン など)を一つ持ってくるか絵に描く。「これはわたしのかばんです。このかばんは大きいです。そして、持ちやすいです」のように3文で紹介し、聞いた人は「〜やすいですか」と一つ質問する。教師が見るのは、物を「は」で出しているか(「*この本を読みやすいです」になっていないか)、「難しい」と「にくい」が混ざっていないか、名詞の前の形。

つまずきと手当て

  • 「*この本を読みやすいです」と、物に「を」をつけたままにする。「やすい」の文は物が主語なので「は」(または「が」)になると、板書の枠の「は」を赤で書いて確かめる
  • 「わたしは読みやすいです」と、人を「は」で出して物を言わない。「わたしは(この字が)読みやすいです」は言えるので誤りの印はつけないが、何が読みやすいのか分からない。この課では、まず「この本は」と物を「は」で出す形で固める
  • 「*読み難しいです」と、「にくい」の代わりに「難しい」をつける。「難しい」は「この本は難しいです」と単独で使い、動詞につけるのは「にくい」だと2つの文を並べて見せる
  • 「やすい」を値段の「安い」と思い、「歩きやすいくつ」を安いくつだと受け取る。漢字の「安い」は値段、動詞につく「やすい」はひらがなで書くことが多いと、値段の札の絵と並べて区別させる

既習の文型との違い

  • 形容表現(1)(第6課)「この漢字は難しいです」は漢字そのものの性質を言い、「この漢字は書きにくいです」は書くという動作がしにくいことを言います。「難しい」は単独で使い、動詞につけるときは「にくい」です。「*書き難しいです」と組み合わせる誤りが出るので、同じ漢字カードで二つの文を並べて見せます。
  • 〜たいです(第9課 学習項目2)どちらもます形から「ます」を取ってつけ、い形容詞と同じように形が変わりますが、「たい」は人の気持ちで「わたしは」と人を出し、「やすい」「にくい」は物の性質で「この本は」と物を出します。「わたしは読みやすいです」は「たい」の文の形に引かれた言い方で、何が読みやすいのかが伝わらないので、「わたしは読みたいです」と「この本は読みやすいです」を並べて主語を確かめます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、品物の名前(かばん・くつ・時計・カメラなど)と、目的を言うための動詞・動作の名詞(買い物・散歩など)が中心になると考えられます。品物は値段の札つきの絵カードで「〜がほしいです」の文に入れて、動詞はます形で板書して「ます」を取る練習に使い、単語だけで覚えさせないようにします。「やすい」「にくい」と組み合わせる動詞(読みます・書きます・歩きます・使います)は、実物を試させながら入れると定着します。下の語は、この課の四つの形の練習で使いやすい語をこちらで選んだものです(教科書の新出語の一覧ではありません)。

この課の練習で使う語(10語・意味・連語・例文)

  • 時計(とけい) 時間を見る物です。 〜を買います・新しい〜・この〜は…円です
    誕生日の前に、友達にほしい物を聞かれる。
    新しい時計がほしいです。
  • くつ(くつ) 外を歩くときに、足にはく物です。 〜の店・新しい〜・歩きやすい〜
    くつの店で、はいてみたくつを指して友達に言う。
    このくつは歩きやすいです。このくつがほしいです。
  • 買い物(かいもの) 店へ行って、物を買うことです。 〜に行きます・デパートで〜をします
    土曜日の予定を友達に聞かれる。
    土曜日、デパートへ買い物に行きます。
  • 散歩(さんぽ) 外を、ゆっくり歩くことです。 〜に行きます・公園を〜します・朝の〜
    朝、うちを出るところで、となりの人に会う。
    公園へ散歩に行きます。
  • 遊びます(あそびます) 仕事や勉強ではなく、友達と好きなことをして楽しい時間を過ごします。 友達と〜・〜に行きます・公園で〜
    日曜日の予定をクラスメートに聞かれる。
    日曜日、友達のうちへ遊びに行きます。
  • 泳ぎます(およぎます) 海やプールの水の中を、手と足を動かして進みます。 海で〜・プールで〜・〜に行きます
    夏休みにしたいことを話す。
    夏休みに、海へ泳ぎに行きたいです。
  • 迎えます(むかえます) 来る人に会うために、駅や空港などへ行って待ちます。 駅へ〜に行きます・友達を〜・空港で〜
    あしたの午後、国から家族が来る。
    あした、空港へ母を迎えに行きます。
  • 使います(つかいます) 物や機械で、何かをします。 パソコンを〜・はしを〜・〜やすい
    会社で、新しいパソコンについて同僚と話す。
    このパソコンは使いやすいです。
  • 歩きます(あるきます) 足で、前へ進みます。 駅まで〜・〜やすいくつ・〜にくい道
    雨の日に、駅までの道について話す。
    きょうは雨ですから、この道は歩きにくいです。
  • 分かります(わかります) 話や文の意味が、頭に入ります。 意味が〜・〜やすい説明・日本語が〜
    授業のあと、クラスメートと先生の話をする。
    田中先生の説明は分かりやすいです。

宿題と次のコマ

宿題は、自分の週末について「ほしい物」「したいこと」「どこへ何をしに行くか」を一つずつ入れて3文書くこと(例の形は板書の枠のまま。「〜やすい」「〜にくい」を一つ入れられたら足してよい)。次のコマの最初に、宿題の文を使って教師が「週末、何をしに行きますか」「何がほしいですか」と聞いて復習し、学生が答えた動詞をます形で黒板に並べてから、第10課の「〜ています(1)」に入ります。

よくある質問

  • 『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』第9課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課とのつなぎと「〜ほしいです」「〜たいです」、2コマ目は「〜に行きます/来ます/帰ります」と「〜やすいです/〜にくいです」、最後に買い物の相談の活動です。三つの形がどれも「ます」を取った形につくので、1コマ目で「ます」を取る動作を定着させておくと2コマ目が速く進みます。

  • 「〜ほしいです」と「〜たいです」の違いはどう教えればいいですか?

    物を求めるのが「ほしい」、動作を求めるのが「たい」です。黒板を2列に分け、同じカメラの絵から「カメラがほしいです」と「カメラを買いたいです」の二文を作ると、つく語(名詞か動詞か)と助詞(「が」か「を」か)の違いが一度に見えます。どちらも い形容詞と同じ形なので、否定は「ほしくないです」「〜たくないです」とそろえて見せます。

  • 「〜を食べたいです」と「〜が食べたいです」はどちらで教えますか?

    この課ではまず「を」のまま言えるようにします。「が」を使う言い方もあり、学習者に聞かれたらどちらも使うと答えてかまいませんが、練習で求めるのは「を」に決めておくと、第5課の「〜を…ます」から形を変えずに作れます。「が」の言い方は、学習者が慣れてから耳で聞いて覚えれば十分です。

  • 「田中さんは〜たいです」と言わせないのはなぜですか?

    日本語では、ほかの人の気持ちを「ほしいです」「たいです」で言い切ると不自然になり、文法では人称制限と呼ばれます。ほかの人のことは「〜たがっています」や「〜たいと言っていました」のような別の形を使いますが、この課ではまだ出しません。クラスで聞いた結果を伝えるときは、表に書かせて見せるか、本人に「わたしは〜たいです」と言わせます。

  • 「〜に行きます」の前には何が来ますか?

    動詞のます形から「ます」を取った形(買いに・読みに・迎えに)か、「買い物」「散歩」「食事」のような動作を表す名詞です。「*本に行きます」のように物の名詞をそのまま置くと目的になりません。名詞のカードを混ぜた代入練習で、「ます」を取るのか名詞のままかを学習者に判断させると区別がつきます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。