日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅰ 第14課「わたしはキムさんにプレゼントをあげました」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅰ』

物のやり取りを表す「あげます・もらいます・くれます」と、それにテ形をつけた「〜てあげます・〜てもらいます・〜てくれます」を学ぶ課です。三つの動詞は「だれからだれへ物が動くか」に加えて「だれの側から見て言うか」で使い分けるので、板書は人の絵と矢印を課の最初から最後まで消さずに残し、文が増えるたびに同じ図に戻ると混乱が少なくなります。テ形は第11課で習っているので新しい活用はなく、増えるのは助詞「に」の向きと、話し手の立場の決まりです。最後に「だれにあげましたか/だれにもらいましたか」と聞き合えるようになると、誕生日や国のお土産の話がそのまま教室の会話になります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目8時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • だれがだれに何をあげたか・もらったかを、助詞「は・に・を」を取り違えずに言える
  • 相手が自分(や自分の家族)に物をくれたときは「くれました」を使い、「あげました」と言わない
  • 人のために何かをしたこと・人にしてもらったことを「〜てあげました・〜てもらいました・〜てくれました」で言える
  • 「だれにあげましたか」「だれにもらいましたか」と聞き、聞かれたときに正しい助詞で答えられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第13課の「〜てもいいですか」で教室の物の貸し借りを2〜3問(「この辞書を使ってもいいですか」)。そのまま教師が学生に実物のペンを渡して見せ、「物が人から人へ動く」課だと予告する。プレゼント・花・本・時計・お土産などの新出語は、ここで実物か絵カードで先に入れておく
学習項目1・2 〜は…に―をあげました/〜てあげました40分教師が学生に実物を渡して「あげます」を導入し、板書に「[人]は [人]に [物]を あげました」の枠と右向きの矢印を書く。続けて、物ではなく「すること」を渡す形として「〜てあげました」を足す
学習項目3・4 〜は…に―をもらいました/〜てもらいました40分同じ場面を受け取った側から言い直して「もらいました」を導入。矢印は同じまま、文の主語(「は」の人)が矢印の先に移ることを板書で見せる。「に」が「もらった相手」を表すことを赤で書き、「〜てもらいました」まで
学習項目5・6 〜が…をくれました/〜てくれました45分矢印が「わたし」に向かうときだけ「くれました」になることを、人の絵を並べ替えて見せる。「あげました」と言えない文を板書で比べ、「〜てくれました」でお礼の気持ちが入ることまで
学習項目7・8 だれに〜をあげましたか/もらいましたか25分誕生日やお土産を話題に、教師の質問から学生どうしの聞き合いへ。答えの「〜にあげました」「〜にもらいました」で「に」の向きが逆になることを、もう一度矢印の図で確かめる
まとめの活動20分「だれに何をもらいましたか・だれに何をあげましたか」の表をペアで埋め、最後に一人ずつ「〜さんは〜に〜をもらいました」とクラスに報告する。報告では第三者どうしのやり取りになるので「くれました」を使わない点を確かめる

学習項目 1 〜は…に―をあげました

意味・はたらき学習項目 1

自分(または話題の人)がほかの人に物を渡すことを「あげます」で言います。渡す人を「は」、受け取る人を「に」、物を「を」で表します。物は「わたし」から外へ、または第三者から第三者へ動きます。ほかの人が「わたし」に物を渡すときは「あげます」ではなく、学習項目5の「くれます」を使います。文法用語では、あげます・もらいます・くれますの三つをまとめて授受表現と呼び、だれの側から言うか(視点)で動詞が決まる点が説明の中心になります。

接続

渡す人+は+受け取る人+に+物+を+あげます/あげました

形
わたしはNにNをあげました(人)は(人)にNをあげましたNに何をあげましたか

導入

  • 実物を渡して見せる教師が自分のペンを一人の学生に渡しながら「わたしは〜さんにペンをあげます」と言う。黒板に教師と学生の簡単な絵を描き、教師から学生へ右向きの矢印を引いて、矢印の上に物の名前、矢印の先に「に」と書く。板書は「[人]は [人]に [物]を あげました」の枠にし、物を差し替えて全員でくり返す。
  • 第三者どうしのやり取りに広げる学生Aに本を渡してもらい、Aが学生Bに渡す。教師がそれを見ていた人として「Aさんは Bさんに 本を あげました」と言い、矢印の絵を二人の学生の名前に書き換える。「わたし」がいない文でも同じ形になることを見せたあと、学生に「〜さんは〜さんに何をあげましたか」と聞いて答えさせる。

板書案

[人]は [人]に [物]を あげました
わたし → 友達 (矢印の上に「花」)
母の日に、わたしは 母に 花を あげました。
田中さんは 山田さんに 本を あげました。
〔赤〕に(受け取る人) 〔青〕矢印は 渡す人 → 受け取る人

場面と発話(自作)

  • 月曜日の朝、週末に家族の誕生日があった留学生が、クラスメートに何をしたか話す。日曜日、わたしは母に花をあげました。
  • 会社で、国へ帰っていた社員が、同僚に配ったお土産のことを上司に聞かれて答える。課の人にお菓子をあげました。国のお菓子です。
  • 寮の友達どうしで、前の部屋の人が置いていった物のことを話す。田中さんはわたしの友達にテレビをあげました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、人の絵カード(母・友達・先生・同僚)と物の絵カード(花・本・時計・お菓子)を1枚ずつ重ねて見せ、「わたしは〜に〜をあげました」と言わせる。慣れたら人のカードを2枚出して第三者どうしの文にする。場面のやり取りでは、ペアで「誕生日に、友達に何をあげましたか」「〜をあげました」まで言わせる。

  1. 口頭人の絵カード(母・友達・先生・同僚)と物の絵カード(花・本・時計・お菓子)を使う。キュー「母・花」で全員が「わたしは母に花をあげました」、続けて「友達・本」「同僚・お菓子」と替え、慣れたら個人指名にする。次に人のカードを2枚出して(田中さん・山田さん・時計)第三者どうしの文にし、最後は教師が板書の矢印を指すだけで言わせる。
  2. ペアAは人と物のカードを3組持ち、Bには見せない。Bが「田中さんは何をあげましたか」「だれにあげましたか」と聞き、Aがカードを見て「田中さんは山田さんに時計をあげました」と答える。Bは聞いたことを手元の紙に矢印の図で書き、3組終わったらカードと図を見比べて合っているか確かめ、役を交替する。
  3. 産出「プレゼント交換ゲーム」。全員に物の絵カードを1枚ずつ配り、教室を歩いて3人とカードを交換する(渡すときは「どうぞ」、受け取るときは「ありがとうございます」)。席に戻ったら、自分が渡した分を「わたしは〜さんに〜をあげました」で一人ずつ報告する。教師が見るのは、受け取った人に「に」が付いているか、受け取った分まで「あげました」で言っていないか(受け取った分は学習項目3で言い直す)。

つまずきと手当て

  • 「*友達を本をあげました」「*友達が本をあげました(友達が受け取った意味で)」と、受け取る人の助詞を取り違える。矢印の先は「に」、と板書の図を指さして戻す
  • ほかの人が自分に渡したときに「*友達はわたしに本をあげました」と言う。矢印が「わたし」に向かう文は「あげました」にならないことを予告だけしておき、学習項目5で「くれました」として扱う
  • 先生や上司に向かって「先生、これをあげます」と言う。文法の誤りではないが、目上の人に面と向かって言うと押しつけるように聞こえることがある。この課では「〜に〜をあげました」と人に話す形で練習し、目上に物を渡すときの言い方(敬語)は先の課で扱う、とだけ伝える

既習の文型との違い

  • 〜へ…(移動表現)(第4課)第4課の「学校へ行きます」の「へ」は人が動いていく先で、この課の「友達に本をあげました」の「に」は物を受け取る人です。どちらも向かう先なので同じに感じられ、学習者は相手の人に「へ」を付けて言うことがあります。初級では、物を受け取る人には「に」と決めて練習させます。
  • 〜に…います/…あります/…かかります(第8課)第8課の「教室に学生がいます」の「に」は人や物がある場所で、この課の「に」は物を受け取る人です。「に」の前が場所か人かで役目が変わることを、二つの文を板書の端に並べて見せます。
関連する文型

学習項目 2 〜は…に―を〜てあげました

意味・はたらき学習項目 2

物ではなく「すること(行為)」をほかの人のためにするとき、動詞のテ形に「あげます」をつけます。「教えました」と言うだけなら事実ですが、「教えてあげました」と言うと「相手のためにした」という気持ちが加わります。元の動詞の助詞はそのまま使い、「に」は元の動詞が「〜に」をとるとき(貸します・教えます・見せます など)だけ使います。文法用語では、テ形のあとに付く「あげます・もらいます・くれます」を補助動詞と呼び、物ではなく行為の恩恵がだれからだれへ動くかを表します。

接続

Vて+あげます/あげました(助詞は元の動詞のまま。「手伝います・待ちます」などは「〜を」)

形
(人)にNをVてあげました(貸して・教えて・見せて)(人)をVてあげました(手伝って・待って)(人)のNをVてあげました(かばんを持って)

導入

  • 物の矢印の上に動作を書く学習項目1の矢印の図をそのまま使い、矢印の上の「本」を消して「日本語を教えます」と書き換える。教師が「わたしは〜さんに日本語を教えて あげました」と言い、物の代わりに「すること」を渡していると見せる。テ形は第11課の作り方を2〜3語で思い出させてから、「Vて あげました」の枠を板書に足す。
  • 困っている人の絵で場面を作る重い荷物を持っている人・道が分からない人・傘がない人の絵を順に見せ、「わたしは何をしましたか」と学生に聞く。「荷物を持ちました」と答えたら、教師が「その人のために、ですね。持って あげました」と言い直す。行為の内容は学生に考えさせ、助詞は元の動詞のままにすることをここで確かめる。

板書案

Vて + あげました
貸します → 貸して → 友達に 辞書を 貸して あげました。
手伝います → 手伝って → 友達を 手伝って あげました。
〔赤〕助詞は 元の動詞のまま(に/を)
〔青〕矢印の上を「物」から「すること」に書き換える

場面と発話(自作)

  • クラスメートが辞書を忘れて困っていたので、自分の辞書を使わせた留学生が、あとで先生に話す。きのう、クラスメートに辞書を貸してあげました。
  • 寮で、日本に来たばかりの後輩の留学生に寮の中を見せて回ったことを、寮の人に話す。新しい人に寮の中を案内してあげました。
  • 週末、近所のおばあさんの荷物を家まで運んだことを、友達に話す。土曜日、となりのおばあさんの荷物を持ってあげました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、行為の絵カード(貸す・教える・見せる・手伝う・待つ・持つ)を見せ、まず「〜ました」、すぐに「〜てあげました」と二段で言わせて、助詞を変えないことを体で覚えさせる。場面のやり取りでは、困っている人の絵を引いて「わたしは〜て あげました」と言い、相手が「やさしいですね」と返す短いやり取りにする。

  1. 口頭行為の絵カード(辞書を貸す・道を教える・写真を見せる・友達を手伝う・駅で待つ・荷物を持つ)を見せ、教師がキュー「貸します」を出す。学生は「友達に辞書を貸しました」「友達に辞書を貸してあげました」と二段で言う。テ形が崩れた語はその場で第11課の表に戻り、最後はキューを絵だけにして、相手に「に」と「を」のどちらが付くかを学生に選ばせる。
  2. ペアAが困っている人の絵カード(かさがない・荷物が重い・道が分からない・辞書を忘れた)を引いて見せ、Bが「わたしは〜て あげました」と言う。Aは「やさしいですね」と返し、「ほかに何をしましたか」ともう一つ聞く。4枚で交替する。
  3. 産出「親切メモ」。今週だれかのためにしたことを3つ、「〜に〜を〜てあげました」「〜を〜てあげました」の形で書いて読み上げる。教師が見るのは、助詞が元の動詞のまま(手伝う・待つは「を」)か、テ形が正しいか。先生や上司の名前が入っていたら、文法は合っていても聞く人によっては恩を着せるように聞こえる、と一言添える。

つまずきと手当て

  • 「*友達に手伝ってあげました」「*駅で友達に待ってあげました」と、「〜てあげました」にすると何にでも「に」をつける。元の文「友達を手伝います」「友達を待ちます」に戻して、助詞はそのままと確かめる
  • テ形の作り方を間違える(「*貸ってあげました」「*持ちてあげました」)。第11課のテ形の表を板書の端に出しておき、間違えた動詞だけその場で表に戻る
  • 目上の人に「先生、かばんを持ってあげます」と言う。文法の誤りではないが、恩を着せるように聞こえるので、目上の人の前では使わないほうがよい。申し出の言い方は別に扱うと伝え、この課では「〜てあげました」と後で人に話す形にしぼる

既習の文型との違い

  • 〜てください(第11課)第11課の「〜てください」もテ形に付く形で、相手に動作を頼みます。「〜てあげました」はテ形の作り方は同じですが、話し手が相手のためにしたことを後で話す形で、する人は話し手です。テ形の文が出たら「だれがしますか」と先に聞くと混ざりません。
  • 〜は…に―をあげました(第14課)学習項目1は物を渡す文で、「を」の前に物が来ます。「〜てあげました」は物の代わりに「すること」を渡す形なので、助詞は「あげます」ではなく元の動詞が決めます。「*友達に手伝ってあげました」は、学習項目1の「に」の枠をそのまま使ったときに出る誤りです。
関連する文型

学習項目 3 〜は…に―をもらいました

意味・はたらき学習項目 3

物を受け取る人の側から言う動詞です。受け取る人を「は」、渡してくれた人を「に」、物を「を」で表します。「あげます」の「に」は物が行く先でしたが、「もらいます」の「に」は物が来た元(相手)を表すので、向きが逆になります。渡した相手が人ではなく会社や学校のときは「から」を使うのが自然で、人のときも「から」を使えます。

接続

受け取る人+は+渡した人+に(から)+物+を+もらいます/もらいました

形
わたしはNにNをもらいましたわたしはNからNをもらいました(会社から・学校から)Nに何をもらいましたか

導入

  • 同じ場面を受け取った側から言い直す学習項目1で教師が学生にペンを渡した場面を、もう一度やって見せる。今度は学生に「〜さんは 先生に ペンを もらいました」と教師が言い、黒板の矢印は同じ向きのまま、「は」の印を矢印の先の学生の絵に移す。「に」の位置が矢印の元に来ることを赤で書き、あげますの文と上下に並べて板書する。
  • 学生の持ち物から聞く学生のかばんや時計など身の回りの物を指して「これはだれにもらいましたか」と聞き、「母にもらいました」「自分で買いました」の答えを集める。会社や学校からもらった物(社員証・学生証・奨学金の書類など)が出たら、「会社から」「学校から」と「から」も板書に足す。

板書案

[人]は [人]に(から) [物]を もらいました
母 → わたし (矢印の向きは同じ・「は」を矢印の先へ)
わたしは 母に 花を もらいました。
わたしは 会社から カレンダーを もらいました。
〔赤〕に=物が来た元 〔青〕「あげました」の文と上下に並べる

場面と発話(自作)

  • クラスメートが新しい時計をしているのに気づいて聞いたら、誕生日のプレゼントだと分かった。その時計、きれいですね。——父にもらいました。
  • 会社で、年末に会社から配られたカレンダーを、入ったばかりの同僚に見せる。このカレンダーは会社からもらいました。
  • 日曜日に先生のうちへ行った留学生が、月曜日にクラスで話す。先生の奥さんに花の写真をもらいました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、学習項目1と同じ人と物のカードを使い、教師が「母は わたしに 花を あげました」と言ったら学生が「わたしは 母に 花を もらいました」と言い換える、の往復を速く回す。場面のやり取りでは、自分の持ち物を一つ見せて「これは〜にもらいました」と紹介し、相手が「いいですね」と返す。

  1. 口頭学習項目1の人と物のカードを使い、教師が「母は わたしに 花を あげました」と言ったら、学生が「わたしは 母に 花を もらいました」と言い換える。キューを「父・時計」「友達・本」「会社・カレンダー」と替え、会社や学校のカードのときは「から」で言わせる。慣れたら教師は矢印を指すだけにし、矢印の先の人を主語にして言わせる。
  2. ペアAが日にちのカード(誕生日・母の日・入学の日)を引いて「誕生日に何をもらいましたか」と聞き、Bが「〜に〜をもらいました」と答える。Aは聞いたことを「〜さんは〜に〜をもらいました」と一文で言い返して確かめる。3枚で交替する。
  3. 産出「思い出の物紹介」。人にもらった物を一つ(写真や絵でもよい)見せて、「これは〜です。〜にもらいました。とても〜です。」の3文でクラスに紹介する。教師が見るのは、もらった相手に「に」(会社・学校なら「から」)が付いているか、主語の「は」が自分になっているか。

つまずきと手当て

  • 「に」を「行く先」と思いこんで、受け取った話を「*わたしは母に花をあげました」と言う、または渡した話を「*わたしは母に花をもらいました(母に渡した意味で)」と言う。矢印の図で、「もらいました」の「に」は矢印の元だと何度も指さす
  • 「*わたしは母を花をもらいました」「*わたしは母が花をもらいました」と、相手の助詞を落とす・取り違える。枠の「[人]に」の列を指して戻す
  • 「わたし」が渡した場面を相手の側から「*友達はわたしに本をもらいました」と言う。話し手を「に」(渡した人)に置く「もらいます」は、視点の制約で成り立たない文になる。わたしが渡したときは「わたしは友達に本をあげました」と自分の側から言う、と矢印の図で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜は…に―をあげました(第14課)同じ受け渡しを、渡した人から言うのが「あげました」、受け取った人から言うのが「もらいました」です。どちらも相手に「に」を使いますが、「あげました」の「に」は物の行く先、「もらいました」の「に」は物が来た元で、向きが逆です。矢印を一本だけ書き、「は」の印を矢印の両端で置き換えて見せます。
  • 〜は…時から…時までです(第3課)第3課の「9時から」の「から」は時間の始まりで、この課の「会社からもらいました」の「から」は物が出てきた元です。どちらも始まりの点を表すと結べば、「に」の代わりに「から」が使える理由が分かりやすくなります。会社や学校のような団体が相手のときは「から」が自然です。
関連する文型

学習項目 4 〜は…に―を〜てもらいました

意味・はたらき学習項目 4

ほかの人が自分のために何かをしてくれたことを、してもらった側から言う形です。してもらった人を「は」、してくれた人を「に」で表し、テ形に「もらいます」をつけます。自分から頼んでしてもらったときによく使い、「ありがたい」という気持ちが入ります。してくれた人の行為の助詞(「〜を」など)はそのまま残ります。

接続

してもらった人+は+してくれた人+に+Vて+もらいます/もらいました

形
わたしはNにVてもらいましたわたしはNにNをVてもらいました(日本語を教えて)Nに何をVてもらいましたか

導入

  • 頼んで、してもらう場面を演じる教師がわざと黒板の高い所に手が届かないふりをし、背の高い学生に「すみません、これを書いてください」と第11課の「〜てください」で頼む。学生が書いたら、教師がクラスに「わたしは〜さんに 書いて もらいました」と言う。頼む→してもらう、の流れを板書の左右に並べ、「Vて もらいました」の枠を足す。
  • 学生の経験を聞く「先週、だれに何をしてもらいましたか」と聞き、「友達に駅へ来てもらいました」「寮の人に部屋を教えてもらいました」のような答えを集める。答えが「〜が〜てくれました」の形で出た学生は誤りではないので、学習項目6で扱うとだけ言って、ここでは「〜にもらいました」の形で言い直させる。

板書案

Vて + もらいました
すみません、書いてください。 → わたしは 〜さんに 書いて もらいました。
わたしは 友達に 書類を 読んで もらいました。
〔赤〕に=してくれた人
〔青〕左に頼む文、右に「〜てもらいました」の文

場面と発話(自作)

  • 役所の書類が分からなかった留学生が、日本人の友達に読んでもらったことをクラスで話す。きのう、友達に書類を読んでもらいました。
  • 会社で、パソコンが動かなくなって困った社員が、昼休みに先輩に直してもらったことを同僚に話す。山田さんにパソコンを見てもらいました。
  • 旅行から帰った留学生が、写真を見せながら友達に話す。この写真は、駅の人に撮ってもらいました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が「〜さんは わたしに 〜て くれました」の内容を絵で見せ、学生が「わたしは 〜さんに 〜て もらいました」と言う。場面のやり取りでは、「日本に来てから、だれに何をしてもらいましたか」を3人に聞いて回り、聞いたことを表に書く。

  1. 口頭教師が絵で、人が「わたし」のために何かをしている場面(友達が日本語を教える・駅の人が写真を撮る・先輩がパソコンを見る)を見せ、学生が「わたしは 〜さんに 〜て もらいました」と言う。次に教師が「すみません、写真を撮ってください」のような頼む文を言い、学生が「〜さんに 撮って もらいました」と後で話す文に言い換える。頼む文から報告の文への往復を5〜6回くり返す。
  2. ペアAは頼みたいことのカード(写真を撮る・漢字を読む・荷物を持つ・窓を開ける)を引き、Bに「すみません、〜てください」と頼む。Bはその動作をする(まねでよい)。そのあとAがクラスに向かって「わたしは〜さんに〜てもらいました」と言う。3枚で交替する。
  3. 産出「ありがとうリスト」。日本に来てから人にしてもらったことを3つ書き、「わたしは〜に〜てもらいました。」で発表する。聞いている学生は一つ選んで「よかったですね」と返す。教師が見るのは、してくれた人に「に」が付いているか、主語が自分か、テ形が正しいか。

つまずきと手当て

  • してくれた人を主語にして「*友達が日本語を教えてもらいました(友達が教えてくれた意味で)」と言う。「もらいました」の文の「は」はしてもらった人だと、矢印の先の絵を指して確かめる
  • 「*友達を書類を読んでもらいました」と、してくれた人に「を」をつける。してくれた人は「に」と、枠の列を指して戻す
  • 頼んでいないのに相手が自分からしてくれたことまで「〜てもらいました」で言い、相手への感謝が伝わりにくい場合がある。誤りではないので直さず、学習項目6の「〜てくれました」と比べるときの材料にする

既習の文型との違い

  • 〜てください(第11課)「〜てください」は相手に頼む文で、頼んだあと相手がしてくれたことを後で話すのが「〜てもらいました」です。導入では「すみません、〜てください」と「〜さんに〜てもらいました」を左右に並べると、二つの形が一つの流れとしてつながります。
  • 〜は…に―をもらいました(第14課)学習項目3は物をもらう文で、この項目はテ形を付けて「すること」をもらう文です。してくれた人に「に」を付ける点は同じですが、「を」の前に来るのはもらった物ではなく、相手がした動作の目的語です。「友達に本をもらいました」と「友達に本を読んでもらいました」を並べると、物が手元に来たかどうかで違いが見えます。
関連する文型

学習項目 5 〜が…をくれました

意味・はたらき学習項目 5

ほかの人が「わたし」に物を渡したことを、渡した人を主語にして言う動詞です。物の動きは「あげます」と同じですが、受け取るのが「わたし」(または家族など自分の側の人)のときは「あげます」を使わず「くれます」を使います。受け取るのが「わたし」だと分かるときは「わたしに」をよく省きます。渡した人は「が」で示すことが多く、話題として言うときは「は」も使えます。授受表現の説明では、「くれます」は物が話し手の側に来るときにしか使えないという視点の制約が中心になります。

接続

渡した人+が(は)+(わたしに)+物+を+くれます/くれました

形
NがわたしにNをくれましたNがNをくれました(「わたしに」を省く)Nが妹にNをくれました(自分の家族が受け取るとき)

導入

  • 矢印を「わたし」に向ける黒板に「わたし」の絵を描き、学習項目1の「わたし→友達」の矢印の横に、今度は「友達→わたし」の矢印を引く。教師が学生から実物の消しゴムを受け取って「〜さんが わたしに 消しゴムを くれました」と言い、矢印が「わたし」に向かうときだけ動詞が変わることを赤で書く。「*あげました」を矢印の横に書いて大きく×をつけ、使えないことを見せる。
  • 同じできごとを二つの文で言い、第三者の文と比べる同じ受け渡しを「わたしは〜さんに〜をもらいました」「〜さんがわたしに〜をくれました」の二つで言い、黒板に上下に並べる。どちらも同じできごとを言っていて、「は」「が」の人が変わるだけだと確かめる。最後に第三者どうしのやり取り(AさんからBさんへ)の矢印を描いて、そこでは「くれました」を使わず「あげました」になることを見せる。

板書案

[人]が (わたしに) [物]を くれました
友達 → わたし (矢印が「わたし」に向かう)
友達が わたしに ケーキを くれました。
*友達は わたしに ケーキを あげました。
〔赤〕「わたし」(家族)に向かう矢印だけ「くれました」

場面と発話(自作)

  • 誕生日の次の日、クラスで先生に「きのう誕生日でしたね」と言われて答える。はい。友達がケーキをくれました。
  • 日本人の同僚に、机の上のお菓子はどうしたのかと聞かれた。となりの課の人がくれました。どうぞ、食べてください。
  • 国から荷物が届いた留学生が、寮の友達に中身を見せる。母がこのセーターをくれました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が受け取る人の絵を「わたし」「わたしの妹」「田中さん」と替えて見せ、学生が「くれました」と「あげました」を選んで言う。選び分けがこの項目の中心なので、間違えたら必ず矢印の図に戻る。場面のやり取りでは、自分の持ち物を見せて「これはだれがくれましたか」「〜がくれました」と聞き合う。

  1. 口頭渡す人と物のカード(友達・ケーキ)は固定し、受け取る人の絵だけを「わたし」「わたしの妹」「田中さん」と替えて見せる。学生は「友達が(わたしに)ケーキをくれました」「友達が妹にケーキをくれました」「友達は田中さんにケーキをあげました」を選んで言う。キューを速く回し、間違えたら必ず矢印の向きを指して言い直させる。
  2. ペアAは矢印カード(だれからだれへ何が動いたかを描いたもの。「わたし」が受け取るカードと受け取らないカードを混ぜる)を引き、読み上げずにBに見せる。Bは「くれました」か「あげました」を選んで文にし、Aは正しければ「はい」、違えば矢印を指でなぞって戻す。5枚で交替する。
  3. 産出「わたしのプレゼント図」。誕生日などにもらった物を思い出し、自分を真ん中にした矢印の図をかく。図を見せながら「〜が〜をくれました」を3文言い、最後に自分があげた物を一つ「わたしは〜に〜をあげました」で足す。教師が見るのは、「わたし」に向かう矢印に「くれました」、外へ向かう矢印に「あげました」を使い分けているか。

つまずきと手当て

  • 「*友達はわたしにケーキをあげました」と言う。矢印が「わたし」に向かうときは「くれました」と、板書の×のついた文を指して戻す。この課でいちばん多い誤り
  • 第三者どうしのやり取りに「*田中さんが山田さんに本をくれました」と使う。受け取る人が「わたし」の側でないときは「あげました」だと、矢印の図で確かめる
  • 「*わたしは友達にケーキをくれました」と、「くれました」の主語を「わたし」にする。「くれました」の主語はいつも「わたし」以外の人だと伝える
  • 母語に「くれる」に当たる区別がない学習者は、「もらいました」だけで全部言おうとすることがある。誤りではないので直さず、渡した人を主語にして言うときには「くれました」が要る、と場面を変えて練習する

既習の文型との違い

  • 〜は…に―をあげました(第14課)物の動きは同じでも、受け取るのが「わたし」(や家族)のときは「くれました」、それ以外のときは「あげました」です。「*友達はわたしにケーキをあげました」はこの課でいちばん多い誤りなので、「わたし」に向かう矢印にだけ赤で「くれました」と書いておきます。
  • 〜は…に―をもらいました(第14課)「友達がケーキをくれました」と「わたしは友達にケーキをもらいました」は同じできごとで、主語が渡した人か受け取った人かだけが違います。くれた人には「が」、もらった相手には「に」が付くので、助詞を入れ替えて言い換える練習で二つを結びます。
関連する文型

学習項目 6 〜が…を〜てくれました

意味・はたらき学習項目 6

ほかの人が「わたし」(や自分の側の人)のために何かをしてくれたことを、してくれた人を主語にして言う形です。テ形に「くれます」をつけます。「来ました」と言うだけなら事実ですが、「来てくれました」と言うと「わたしのために」「ありがたい」という気持ちが入ります。「わたしのために」という意味は「くれました」に含まれているので、元の動詞が「〜に」をとらないとき(手伝います・待ちます など)は「わたしに」をつけません。

接続

してくれた人+が(は)+Vて+くれます/くれました(助詞は元の動詞のまま)

形
NがVてくれましたNがNをVてくれました(日本語を教えて・荷物を持って)NがわたしにNをVてくれました(貸して・見せて など、元の動詞が「〜に」をとるとき)

導入

  • 学習項目4の場面を言い直す学習項目4で学生に黒板に書いてもらった場面をもう一度使い、今度は教師が「〜さんが 書いて くれました」と言う。板書の「わたしは〜さんに書いてもらいました」の下に並べ、同じできごとをしてくれた人の側から言うと「くれました」になることを見せる。矢印は「わたし」に向けたままにしておく。
  • 「〜ました」と「〜てくれました」を比べる「友達が駅へ来ました」「友達が駅へ来てくれました」の二つを読み上げ、どちらの文に「ありがとう」の気持ちが入っているかを学生に聞く。感謝の気持ちを言うときは「〜てくれました」を使うと確かめてから、学生に「日本に来てから、だれが何をしてくれましたか」と聞き、一つずつ「〜が〜てくれました」で答えさせる。

板書案

Vて + くれました
友達が 駅へ 来ました。 → 友達が 駅へ 来て くれました。
寮の人が 荷物を 運んで くれました。
わたしは 〜さんに 書いて もらいました。=〜さんが 書いて くれました。
〔赤〕「わたしに」は 元の動詞が「に」をとるときだけ

場面と発話(自作)

  • 熱が出て学校を休んだ留学生が、次の日、先生に休んだ日のことを話す。きのう、ルームメートが薬を買ってくれました。
  • 大きな荷物を持って寮に引っ越した日のことを、クラスで話す。寮の人が部屋まで荷物を運んでくれました。
  • 会社で、休みの日に代わりに電話に出てくれた同僚に、次の日お礼を言う。きのうは電話に出てくれて、ありがとうございました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、学習項目4と同じ絵カードで、教師が「わたしは〜さんに〜てもらいました」と言ったら学生が「〜さんが〜てくれました」に言い換える。場面のやり取りでは、「日本に来てから、だれが何をしてくれましたか」をペアで聞き合い、答えには「よかったですね」と返させる。

  1. 口頭学習項目4と同じ絵カードで、教師が「わたしは 〜さんに 〜て もらいました」と言い、学生が「〜さんが 〜て くれました」に言い換える。次にキューを事実だけの文(友達が駅へ来ました・寮の人が荷物を運びました・同僚が電話に出ました)にし、学生が「〜てくれました」に直してお礼の気持ちを入れる。手伝う・待つのカードでは「わたしに」を付けないことを確かめる。
  2. ペアAが「日本に来てから、だれが何をしてくれましたか」と聞き、Bが「〜が〜てくれました」と答える。Aは「やさしい人ですね」と返し、Bが同じ質問をAに聞き返す。3回ずつ聞き合ったら相手を替える。
  3. 産出「お礼のカード」。だれか一人に、してくれたことのお礼を3文で書く(「〜さん、先週は〜てくれました。ありがとうございました。〜さんはとても親切です。」)。書いたら読み上げ、教師は「〜てくれました」の主語がしてくれた人になっているか、「わたしに」の付け方が元の動詞どおりかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*友達がわたしに手伝ってくれました」「*先生がわたしに待ってくれました」と、何にでも「わたしに」をつける。元の文に戻すと「わたしを手伝います」「わたしを待ちます」なので、助詞はそのまま(「わたしを」または省く)と確かめる
  • 第三者のためにしたことに「*田中さんが山田さんに日本語を教えてくれました」と使う。してもらうのが「わたし」の側の人でないときは「〜てあげました」だと、学習項目2の板書に戻す
  • お礼を言う場面で「きのう、電話に出ました。ありがとうございました」のように「くれました」を落とす。文法の誤りではないが、感謝の気持ちが伝わりにくいので、場面のやり取りで「〜てくれて」の形を一つだけ覚えさせる

既習の文型との違い

  • 〜は…に―を〜てもらいました(第14課)同じできごとを、してもらった人から言うと「〜てもらいました」、してくれた人から言うと「〜てくれました」です。「〜てもらいました」は自分から頼んだときによく使い、「〜てくれました」は相手が自分から進んでしてくれたときにも自然に使えます。学習者が全部「〜てもらいました」で言うときは、頼んだかどうかを聞いて使い分けを考えさせます。
  • 〜は…に―を〜てあげました(第14課)「〜てあげました」はわたしがほかの人のためにすること、「〜てくれました」はほかの人がわたしのためにすることで、向きが逆です。第三者のためにしたことに「〜てくれました」を使う誤りが出たら、受け取るのが「わたし」の側かどうかを矢印で確かめます。
関連する文型

学習項目 7 (あなたは)だれに〜をあげましたか

意味・はたらき学習項目 7

物を渡した相手を聞く疑問文です。受け取る人の位置に疑問詞「だれ」を入れ、「に」はそのまま残します。答えは「〜にあげました」で、「に」をつけて答えます。「あなたは」は文の形を見せるためのかっこで、実際の会話では相手の名前を使うか、言わないのがふつうです。

接続

(相手の名前+は)+だれ+に+物+を+あげましたか(答えは「〜にあげました」)

形
だれにNをあげましたかNをだれにあげましたかだれに何をあげましたか

導入

  • 板書の人の位置に「だれ」を入れる学習項目1の枠「わたしは [人]に [物]を あげました」の[人]のカードを外し、そこに「だれ」と書いたカードを貼って「〜さんは だれに 花を あげましたか」と読む。「に」は残ることを赤で示し、答えの文で再び人のカードを貼り戻す。
  • お土産の話から聞く教師が「先月、国へ帰りました。国のお菓子を買いました」と話し、学生に「先生は だれに あげましたか」と聞かせる。教師が答えたあと、国へ帰ったことのある学生や、誕生日のあった学生に同じ質問をして、聞き手と答え手を交代していく。

板書案

[人]は だれに [物]を あげましたか
—— 〜に あげました。
だれに 何を あげましたか。
〔赤〕「だれ」の後ろの「に」は 残す 〔青〕答えで人のカードを貼り戻す

場面と発話(自作)

  • 国から帰ってきたクラスメートに、お土産をたくさん買ったと聞いて、休み時間に聞く。そのお菓子、だれにあげましたか。——アルバイトの店の人にあげました。
  • 母の日のあと、寮の友達どうしで話す。山本さんは母の日にお母さんに何をあげましたか。——花をあげました。
  • 会社で、同僚が使わなくなった自転車をどうしたのか聞く。あの自転車はだれにあげましたか。——会社の新しい人にあげました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、物のカードを見せて教師が「だれに あげましたか」と聞き、学生は人のカードを引いて「〜に あげました」と答える。答えの「に」を落とさないことが目標。場面のやり取りでは、「誕生日」「国のお土産」「使わない物」の三つの話題でペアで聞き合う。

  1. 口頭物のカード(お菓子・花・時計・本)を見せ、教師が「〜さんは だれに 〜を あげましたか」と聞く。学生は人のカードを引いて「〜に あげました」と答える。次に質問する役も学生に回し、「だれに 何を あげましたか」の疑問詞二つの形まで広げる。答えの「に」を落としたら板書の答えの行を指す。
  2. ペアAは話題のカード(誕生日・国のお土産・使わない物)を1枚引き、Bに「〜さんは だれに 〜を あげましたか」と聞く。Bは本当のことか、カードの例で答え、Aは「いいですね」と返してから「何をあげましたか」ともう一つ聞く。話題3つで交替する。
  3. 産出「お土産インタビュー」。国へ帰ったときや旅行のときに買ったお土産について、3人に「だれに 何を あげましたか」と聞いて表にまとめる。教師が見るのは、質問で「だれに」の「に」が残っているか、相手を「あなた」と呼ばずに名前で聞いているか。

つまずきと手当て

  • 「*だれをあげましたか」「*だれがあげましたか(受け取った人を聞く意味で)」と、疑問詞の助詞を取り違える。枠の[人]の位置に「だれ」を入れるだけで、助詞は変えないと確かめる
  • 答えで「に」を落として「母、あげました」「母です」と言う。話し言葉では通じるので強く直さず、板書の答えの形で一度言い直させる
  • 目上の人や初対面の人に「あなたは」と言う。日本語では相手を「あなた」と呼ぶと失礼に聞こえることが多いので、名前に「さん」をつけるか、言わずに聞く練習にする

既習の文型との違い

  • 〜と…へ(移動表現)(第4課)第4課の「だれと行きますか」と同じく、疑問詞「だれ」の後ろの助詞は答えの文の助詞と同じです。「だれと」の答えは「〜と」、「だれに」の答えは「〜に」なので、質問の助詞をそのまま答えに使えば正しい文になると教えます。
  • (あなたは)だれに〜をもらいましたか(第14課)形は「あげましたか」と「もらいましたか」の一語しか違いませんが、「だれ」が指す人は逆です。「あげましたか」の「だれ」は受け取った人、「もらいましたか」の「だれ」は渡した人なので、答えを聞いて矢印を書かせると取り違えが見えます。
関連する文型

学習項目 8 (あなたは)だれに〜をもらいましたか

意味・はたらき学習項目 8

物をくれた相手を聞く疑問文です。「もらいます」の「に」(物が来た元)の位置に「だれ」を入れます。答えは「〜にもらいました」です。同じことを、くれた人を主語にして「だれがくれましたか」と聞くこともでき、そのときの答えは「〜がくれました」になります。学習項目7の「だれにあげましたか」と形は似ていますが、「に」の向きが逆なので、答えの人の立場も逆になります。

接続

(相手の名前+は)+だれ+に+物+を+もらいましたか(答えは「〜にもらいました」。「だれがくれましたか」とも聞ける)

形
だれにNをもらいましたかNはだれにもらいましたかだれがくれましたか(答えは「〜がくれました」)

導入

  • 7と8の質問を並べて矢印で比べる黒板に「だれに あげましたか」と「だれに もらいましたか」を上下に書き、それぞれの横に矢印を描く。「あげましたか」の「だれ」は矢印の先、「もらいましたか」の「だれ」は矢印の元だと、矢印の両端に「だれ」のカードを貼り分けて見せる。
  • 学生の持ち物で聞き合う学生に、人からもらった物を一つ机の上に出させる(なければ絵カードを配る)。教師が「その〜は だれに もらいましたか」と聞いて答えさせたあと、同じ物について「だれが くれましたか」とも聞き、答えの形が「〜にもらいました」「〜がくれました」と変わることを板書で確かめる。

板書案

だれに 〜を もらいましたか。 —— 〜に もらいました。
だれが 〜を くれましたか。 —— 〜が くれました。
あげましたか:「だれ」=矢印の先 もらいましたか:「だれ」=矢印の元
〔赤〕質問の助詞(に・が)を そのまま答えに

場面と発話(自作)

  • クラスメートのかわいいペンを見て、休み時間に聞く。そのペン、いいですね。だれにもらいましたか。——姉にもらいました。
  • 会社で、同僚の机に花があるのに気づいて聞く。その花はだれがくれましたか。——となりの課の人がくれました。
  • 誕生日の次の日に、友達に何をもらったか聞かれる。誕生日に、だれに何をもらいましたか。——家族に時計をもらいました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、物のカードを見せて教師が「だれに もらいましたか」と「だれが くれましたか」をばらばらの順で聞き、学生がその場で答えの形を選んで言う。場面のやり取りでは、学習項目7と合わせて「だれに何をあげましたか・もらいましたか」の表をペアで埋め、最後に第三者として「〜さんは〜に〜をもらいました」とクラスに報告させる。

  1. 口頭物のカードを見せ、教師が「だれに もらいましたか」と「だれが くれましたか」をばらばらの順で聞く。学生はその場で「〜に もらいました」「〜が くれました」を選んで答える。慣れたら学習項目7の「だれに あげましたか」も混ぜ、三つの質問を聞き分けさせる。
  2. ペア学習項目7と合わせた表(あげた物・あげた人/もらった物・くれた人)を配る。AとBが「だれに〜をもらいましたか」「だれに〜をあげましたか」と聞き合って相手の欄を埋め、最後に表を見せ合って、聞き取った答えが合っているか確かめる。
  3. 産出「プレゼント調査の報告」。ペアで埋めた表を見ながら、相手のことを「〜さんは〜に〜をもらいました」「〜さんは〜に〜をあげました」とクラスに報告する。教師が見るのは、主語と「に」の人が表のとおりか、第三者どうしの話に「くれました」が混ざっていないか。

つまずきと手当て

  • 「だれにもらいましたか」に「*母があげました」と答える。答えはもらった側の文「母にもらいました」か、くれた人の文「母がくれました」のどちらかだと、矢印の図で確かめる
  • 「だれがくれましたか」に「*母にくれました」と答える。「くれました」の答えは「が」の人だと、質問の助詞をそのまま答えに使うよう指導する
  • 報告の段階で、第三者どうしの話に「*〜さんのお姉さんが〜さんに時計をくれました」と「くれました」を使う。受け取ったのが「わたし」の側の人ではないので「あげました」か「〜さんは〜に時計をもらいました」と言う、と学習項目5の板書に戻す

既習の文型との違い

  • 〜が…をくれました(第14課)「だれにもらいましたか」と「だれがくれましたか」は同じことを聞いています。答えの助詞は質問に合わせて「〜に」「〜が」になり、「*母にくれました」のように混ぜる誤りが出やすいので、二つの質問を板書で上下に並べ、助詞だけ色を変えておきます。
  • (あなたは)だれに〜をあげましたか(第14課)学習項目7の答えは受け取った人、この項目の答えは渡した人です。二つの質問をばらばらの順で聞く練習を入れないと、学習者は「だれに」と聞こえただけで同じ答え方をしてしまいます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、プレゼントやお土産になる物の名前と、誕生日・母の日のようなやり取りのきっかけになる言葉が中心です。物は実物か絵カードで見せ、単語だけで覚えさせず「〜を あげました」「〜に もらいました」のように助詞つきで枠の中に入れて練習します。人の呼び方(父・母・姉・妹・友達・同僚)は既習のものも多いので、矢印の図に貼る人のカードとして使い回すと、語彙と文型の練習が一度にできます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • プレゼント(プレゼント) 人のために選んで、あげる物です。 誕生日の〜・〜をあげます・〜をもらいます
    友達の誕生日の前の日、クラスメートと話す。
    「あしたは田中さんの誕生日です。いっしょにプレゼントを買いませんか。」
  • お土産(おみやげ) 旅行や国から帰ったときに、ほかの人にあげる物です。 国の〜・〜を買います・〜をもらいます
    国から帰った同僚が、課の人にお菓子を配る。
    「国のお土産です。どうぞ、食べてください。」
  • 誕生日(たんじょうび) その人が生まれた日です。毎年同じ日に来ます。 〜のプレゼント・〜に〜をもらいます
    休み時間に、クラスメートの新しい時計に気づいて聞く。
    「その時計、誕生日にもらいましたか。」「はい、姉がくれました。」
  • 貸します(かします) 自分の物を少しの間ほかの人に渡して、使ってもらいます。あとで返してもらいます。 〜に辞書を〜・かさを〜
    辞書を忘れたクラスメートに自分の辞書を使わせたことを、先生に話す。
    「きのう、山本さんに辞書を貸してあげました。」
  • 借ります(かります) ほかの人の物を少しの間もらって使い、あとで返します。「貸します」の反対で、相手には「に」を使います。 〜に本を〜・図書館で〜
    友達が読んでいる本のことを聞く。
    「その本は図書館で借りましたか。」「いいえ、先生に借りました。」
  • 教えます(おしえます) 知っていることを話して、ほかの人に分かってもらいます。 〜に日本語を〜・道を〜・電話番号を〜
    寮に来たばかりの留学生が、先輩のことをクラスで話す。
    「先輩が駅の場所を教えてくれました。」
  • 見せます(みせます) 物を相手の前に出して、ほかの人に見てもらいます。 〜に写真を〜・パスポートを〜
    日本人の友達が、国の家族を見たいと言った。
    「田中さんに家族の写真を見せました。」
  • 手伝います(てつだいます) ほかの人の仕事をいっしょにして、その人を助けます。助ける相手には「を」を使います。 〜さんを〜・仕事を〜・引っ越しを〜
    週末、友達が寮の部屋を替わった。
    「日曜日、友達の引っ越しを手伝ってあげました。」
  • 持ちます(もちます) 物を手に取ります。重い荷物を運ぶときにも言います。 荷物を〜・かばんを〜
    駅の階段で大きな荷物の人を見た留学生が、あとで友達に話す。
    「駅で、おばあさんの荷物を持ってあげました。」
  • 案内します(あんないします) 場所が分からない人といっしょに行って、道や中を見せます。 寮の中を〜・町を〜・〜さんを〜
    国から友達が来た週末のことを、クラスで話す。
    「土曜日、国の友達に東京を案内しました。」
  • 送ります(おくります) 手紙や荷物を、郵便などで遠くにいる人に届けます。 〜に荷物を〜・手紙を〜
    国の母から荷物が届いた。
    「母が国のお菓子を送ってくれました。」

宿題と次のコマ

宿題は、「わたしは〜に〜をあげました」「わたしは〜に〜をもらいました」「〜が〜をくれました」「〜が〜てくれました」の形を一つずつ使って、自分の本当の経験を4文書くこと。次のコマの最初に、宿題の文を使って教師が「だれに何をもらいましたか」「だれが何をしてくれましたか」と聞いて復習し、矢印の図を見ずに「あげました・もらいました・くれました」を選べるかを確かめてから、第15課の「〜になります/〜くなります」に入ります。

よくある質問

  • 第14課のあげます・もらいます・くれますは、どの順で教えればいいですか?

    この教案では本の学習項目の順どおり、「あげます」→「もらいます」→「くれます」の順に、物の文とテ形の文を二つずつ組にして進めます。最初に人の絵と矢印を一つ描き、同じ矢印のまま「は」の人を入れ替えて「もらいます」へ、矢印を「わたし」に向けて「くれます」へ移ると、三つが一枚の図で整理できます。質問の形(だれに〜をあげましたか/もらいましたか)は最後にまとめて扱います。

  • 「くれます」と「あげます」の使い分けは、どう説明すればいいですか?

    物が「わたし」(や家族など自分の側の人)に向かうときは「くれます」、それ以外の向きは「あげます」と、受け取る人で決めます。「くれます」の主語はいつも「わたし」以外の人です。言葉で説明するより、受け取る人の絵だけを「わたし」「妹」「田中さん」と替えて言わせる練習のほうが定着します。

  • 「〜てもらいました」と「〜てくれました」の違いは何ですか?

    同じできごとを、してもらった人から言うのが「〜てもらいました」(してくれた人に「に」)、してくれた人から言うのが「〜てくれました」(してくれた人に「が」)です。「〜てもらいました」は自分から頼んだときによく使い、「〜てくれました」は相手が自分から進んでしてくれたときにも使えます。どちらにもありがたい気持ちが入ります。

  • 「もらいます」の相手には「に」と「から」のどちらを使いますか?

    人が相手のときはどちらも使えます。会社・学校・役所のような団体から受け取るときは「から」が自然です。初級ではまず「に」で練習し、団体の例が出たときに「から」を足すと混乱が少なくなります。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入から学習項目1〜4(あげます・もらいます と、そのテ形の文)まで、2コマ目は学習項目5〜8(くれます・〜てくれます・質問の形)とまとめの活動です。「くれます」の使い分けに時間がかかるクラスでは、2コマ目の頭に矢印の図を使った言い換えを5分入れます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。