物のやり取りを表す「あげます・もらいます・くれます」と、それにテ形をつけた「〜てあげます・〜てもらいます・〜てくれます」を学ぶ課です。三つの動詞は「だれからだれへ物が動くか」に加えて「だれの側から見て言うか」で使い分けるので、板書は人の絵と矢印を課の最初から最後まで消さずに残し、文が増えるたびに同じ図に戻ると混乱が少なくなります。テ形は第11課で習っているので新しい活用はなく、増えるのは助詞「に」の向きと、話し手の立場の決まりです。最後に「だれにあげましたか/だれにもらいましたか」と聞き合えるようになると、誕生日や国のお土産の話がそのまま教室の会話になります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第13課の「〜てもいいですか」で教室の物の貸し借りを2〜3問(「この辞書を使ってもいいですか」)。そのまま教師が学生に実物のペンを渡して見せ、「物が人から人へ動く」課だと予告する。プレゼント・花・本・時計・お土産などの新出語は、ここで実物か絵カードで先に入れておく |
| 学習項目1・2 〜は…に―をあげました/〜てあげました | 40分 | 教師が学生に実物を渡して「あげます」を導入し、板書に「[人]は [人]に [物]を あげました」の枠と右向きの矢印を書く。続けて、物ではなく「すること」を渡す形として「〜てあげました」を足す |
| 学習項目3・4 〜は…に―をもらいました/〜てもらいました | 40分 | 同じ場面を受け取った側から言い直して「もらいました」を導入。矢印は同じまま、文の主語(「は」の人)が矢印の先に移ることを板書で見せる。「に」が「もらった相手」を表すことを赤で書き、「〜てもらいました」まで |
| 学習項目5・6 〜が…をくれました/〜てくれました | 45分 | 矢印が「わたし」に向かうときだけ「くれました」になることを、人の絵を並べ替えて見せる。「あげました」と言えない文を板書で比べ、「〜てくれました」でお礼の気持ちが入ることまで |
| 学習項目7・8 だれに〜をあげましたか/もらいましたか | 25分 | 誕生日やお土産を話題に、教師の質問から学生どうしの聞き合いへ。答えの「〜にあげました」「〜にもらいました」で「に」の向きが逆になることを、もう一度矢印の図で確かめる |
| まとめの活動 | 20分 | 「だれに何をもらいましたか・だれに何をあげましたか」の表をペアで埋め、最後に一人ずつ「〜さんは〜に〜をもらいました」とクラスに報告する。報告では第三者どうしのやり取りになるので「くれました」を使わない点を確かめる |
自分(または話題の人)がほかの人に物を渡すことを「あげます」で言います。渡す人を「は」、受け取る人を「に」、物を「を」で表します。物は「わたし」から外へ、または第三者から第三者へ動きます。ほかの人が「わたし」に物を渡すときは「あげます」ではなく、学習項目5の「くれます」を使います。文法用語では、あげます・もらいます・くれますの三つをまとめて授受表現と呼び、だれの側から言うか(視点)で動詞が決まる点が説明の中心になります。
渡す人+は+受け取る人+に+物+を+あげます/あげました
口頭の代入練習では、人の絵カード(母・友達・先生・同僚)と物の絵カード(花・本・時計・お菓子)を1枚ずつ重ねて見せ、「わたしは〜に〜をあげました」と言わせる。慣れたら人のカードを2枚出して第三者どうしの文にする。場面のやり取りでは、ペアで「誕生日に、友達に何をあげましたか」「〜をあげました」まで言わせる。
物ではなく「すること(行為)」をほかの人のためにするとき、動詞のテ形に「あげます」をつけます。「教えました」と言うだけなら事実ですが、「教えてあげました」と言うと「相手のためにした」という気持ちが加わります。元の動詞の助詞はそのまま使い、「に」は元の動詞が「〜に」をとるとき(貸します・教えます・見せます など)だけ使います。文法用語では、テ形のあとに付く「あげます・もらいます・くれます」を補助動詞と呼び、物ではなく行為の恩恵がだれからだれへ動くかを表します。
Vて+あげます/あげました(助詞は元の動詞のまま。「手伝います・待ちます」などは「〜を」)
口頭の代入練習では、行為の絵カード(貸す・教える・見せる・手伝う・待つ・持つ)を見せ、まず「〜ました」、すぐに「〜てあげました」と二段で言わせて、助詞を変えないことを体で覚えさせる。場面のやり取りでは、困っている人の絵を引いて「わたしは〜て あげました」と言い、相手が「やさしいですね」と返す短いやり取りにする。
物を受け取る人の側から言う動詞です。受け取る人を「は」、渡してくれた人を「に」、物を「を」で表します。「あげます」の「に」は物が行く先でしたが、「もらいます」の「に」は物が来た元(相手)を表すので、向きが逆になります。渡した相手が人ではなく会社や学校のときは「から」を使うのが自然で、人のときも「から」を使えます。
受け取る人+は+渡した人+に(から)+物+を+もらいます/もらいました
口頭の代入練習では、学習項目1と同じ人と物のカードを使い、教師が「母は わたしに 花を あげました」と言ったら学生が「わたしは 母に 花を もらいました」と言い換える、の往復を速く回す。場面のやり取りでは、自分の持ち物を一つ見せて「これは〜にもらいました」と紹介し、相手が「いいですね」と返す。
ほかの人が自分のために何かをしてくれたことを、してもらった側から言う形です。してもらった人を「は」、してくれた人を「に」で表し、テ形に「もらいます」をつけます。自分から頼んでしてもらったときによく使い、「ありがたい」という気持ちが入ります。してくれた人の行為の助詞(「〜を」など)はそのまま残ります。
してもらった人+は+してくれた人+に+Vて+もらいます/もらいました
口頭の代入練習では、教師が「〜さんは わたしに 〜て くれました」の内容を絵で見せ、学生が「わたしは 〜さんに 〜て もらいました」と言う。場面のやり取りでは、「日本に来てから、だれに何をしてもらいましたか」を3人に聞いて回り、聞いたことを表に書く。
ほかの人が「わたし」に物を渡したことを、渡した人を主語にして言う動詞です。物の動きは「あげます」と同じですが、受け取るのが「わたし」(または家族など自分の側の人)のときは「あげます」を使わず「くれます」を使います。受け取るのが「わたし」だと分かるときは「わたしに」をよく省きます。渡した人は「が」で示すことが多く、話題として言うときは「は」も使えます。授受表現の説明では、「くれます」は物が話し手の側に来るときにしか使えないという視点の制約が中心になります。
渡した人+が(は)+(わたしに)+物+を+くれます/くれました
口頭の代入練習では、教師が受け取る人の絵を「わたし」「わたしの妹」「田中さん」と替えて見せ、学生が「くれました」と「あげました」を選んで言う。選び分けがこの項目の中心なので、間違えたら必ず矢印の図に戻る。場面のやり取りでは、自分の持ち物を見せて「これはだれがくれましたか」「〜がくれました」と聞き合う。
ほかの人が「わたし」(や自分の側の人)のために何かをしてくれたことを、してくれた人を主語にして言う形です。テ形に「くれます」をつけます。「来ました」と言うだけなら事実ですが、「来てくれました」と言うと「わたしのために」「ありがたい」という気持ちが入ります。「わたしのために」という意味は「くれました」に含まれているので、元の動詞が「〜に」をとらないとき(手伝います・待ちます など)は「わたしに」をつけません。
してくれた人+が(は)+Vて+くれます/くれました(助詞は元の動詞のまま)
口頭の代入練習では、学習項目4と同じ絵カードで、教師が「わたしは〜さんに〜てもらいました」と言ったら学生が「〜さんが〜てくれました」に言い換える。場面のやり取りでは、「日本に来てから、だれが何をしてくれましたか」をペアで聞き合い、答えには「よかったですね」と返させる。
物を渡した相手を聞く疑問文です。受け取る人の位置に疑問詞「だれ」を入れ、「に」はそのまま残します。答えは「〜にあげました」で、「に」をつけて答えます。「あなたは」は文の形を見せるためのかっこで、実際の会話では相手の名前を使うか、言わないのがふつうです。
(相手の名前+は)+だれ+に+物+を+あげましたか(答えは「〜にあげました」)
口頭の代入練習では、物のカードを見せて教師が「だれに あげましたか」と聞き、学生は人のカードを引いて「〜に あげました」と答える。答えの「に」を落とさないことが目標。場面のやり取りでは、「誕生日」「国のお土産」「使わない物」の三つの話題でペアで聞き合う。
物をくれた相手を聞く疑問文です。「もらいます」の「に」(物が来た元)の位置に「だれ」を入れます。答えは「〜にもらいました」です。同じことを、くれた人を主語にして「だれがくれましたか」と聞くこともでき、そのときの答えは「〜がくれました」になります。学習項目7の「だれにあげましたか」と形は似ていますが、「に」の向きが逆なので、答えの人の立場も逆になります。
(相手の名前+は)+だれ+に+物+を+もらいましたか(答えは「〜にもらいました」。「だれがくれましたか」とも聞ける)
口頭の代入練習では、物のカードを見せて教師が「だれに もらいましたか」と「だれが くれましたか」をばらばらの順で聞き、学生がその場で答えの形を選んで言う。場面のやり取りでは、学習項目7と合わせて「だれに何をあげましたか・もらいましたか」の表をペアで埋め、最後に第三者として「〜さんは〜に〜をもらいました」とクラスに報告させる。
この課の新出語は、プレゼントやお土産になる物の名前と、誕生日・母の日のようなやり取りのきっかけになる言葉が中心です。物は実物か絵カードで見せ、単語だけで覚えさせず「〜を あげました」「〜に もらいました」のように助詞つきで枠の中に入れて練習します。人の呼び方(父・母・姉・妹・友達・同僚)は既習のものも多いので、矢印の図に貼る人のカードとして使い回すと、語彙と文型の練習が一度にできます。
宿題は、「わたしは〜に〜をあげました」「わたしは〜に〜をもらいました」「〜が〜をくれました」「〜が〜てくれました」の形を一つずつ使って、自分の本当の経験を4文書くこと。次のコマの最初に、宿題の文を使って教師が「だれに何をもらいましたか」「だれが何をしてくれましたか」と聞いて復習し、矢印の図を見ずに「あげました・もらいました・くれました」を選べるかを確かめてから、第15課の「〜になります/〜くなります」に入ります。
第14課のあげます・もらいます・くれますは、どの順で教えればいいですか?
この教案では本の学習項目の順どおり、「あげます」→「もらいます」→「くれます」の順に、物の文とテ形の文を二つずつ組にして進めます。最初に人の絵と矢印を一つ描き、同じ矢印のまま「は」の人を入れ替えて「もらいます」へ、矢印を「わたし」に向けて「くれます」へ移ると、三つが一枚の図で整理できます。質問の形(だれに〜をあげましたか/もらいましたか)は最後にまとめて扱います。
「くれます」と「あげます」の使い分けは、どう説明すればいいですか?
物が「わたし」(や家族など自分の側の人)に向かうときは「くれます」、それ以外の向きは「あげます」と、受け取る人で決めます。「くれます」の主語はいつも「わたし」以外の人です。言葉で説明するより、受け取る人の絵だけを「わたし」「妹」「田中さん」と替えて言わせる練習のほうが定着します。
「〜てもらいました」と「〜てくれました」の違いは何ですか?
同じできごとを、してもらった人から言うのが「〜てもらいました」(してくれた人に「に」)、してくれた人から言うのが「〜てくれました」(してくれた人に「が」)です。「〜てもらいました」は自分から頼んだときによく使い、「〜てくれました」は相手が自分から進んでしてくれたときにも使えます。どちらにもありがたい気持ちが入ります。
「もらいます」の相手には「に」と「から」のどちらを使いますか?
人が相手のときはどちらも使えます。会社・学校・役所のような団体から受け取るときは「から」が自然です。初級ではまず「に」で練習し、団体の例が出たときに「から」を足すと混乱が少なくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入から学習項目1〜4(あげます・もらいます と、そのテ形の文)まで、2コマ目は学習項目5〜8(くれます・〜てくれます・質問の形)とまとめの活動です。「くれます」の使い分けに時間がかかるクラスでは、2コマ目の頭に矢印の図を使った言い換えを5分入れます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。