既に持っている言語(多くは母語)の知識が第二言語の学習に影響することを言語転移という。習得を助ける方向に働く場合が正の転移、誤用につながるなど妨げる方向に働く場合が負の転移である。母語からの負の転移は母語干渉とも呼ばれる。
漢字圏出身の学習者が初級から読解で有利になるのは正の転移、英語母語話者が「私は行きました、図書館に」のような語順を出すのは負の転移の例。転移は音声・語彙・文法・語用など、さまざまな層で起こる。
「母語の影響はすべて習得を妨げる」「転移は音声にしか起こらない」「上級になれば完全に消える」といった言い切りは、いずれも誤り。また、誤用のすべてが母語起因ではなく、学習者に共通して現れる言語内の誤りとの区別も重要である。
中国語を母語とする学習者は、「電話」「図書館」のような漢語の意味を漢字から推測しやすく、読解で有利になりやすい。一方で、「手紙」のように同じ漢字を使っていても母語では意味が異なる語では、母語の知識がかえって誤解を生む。同じ母語の知識が、語によって正の転移にも負の転移にもなる例である。
韓国語を母語とする学習者は、語順や助詞の働きが日本語と近いため、文の組み立ては比較的早く身につきやすいとされる(正の転移)。その一方で、母語にない「つ」の音が「ちゅ」や「す」に近い音になるなど、音声面では母語の影響が誤りとして現れることがある(負の転移)。転移が層によって違う方向に働く例である。
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