事故・失敗・びっくりしたことのようなそのときの状況を、ありのままに相手に説明することが目標の課です。出来事の説明は「〜しました。〜しました」と並べるだけでは何が原因で何が起きたのか伝わりにくいので、この課では原因(〜せいで・〜ばかりに)/その場面(〜ところへ・〜ところに・〜ところを)/すぐあと(〜たとたん)/結果(〜てしまいました)の四つの箱に形を分けて、一つの説明を組み立てさせます。似た形が並ぶ課なので、「せいで」と「ばかりに」、「ところへ・に」と「ところを」の言い分けを、後ろに来る文の種類から判断できるようにするのが芯です。
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 「最近、困ったこと・びっくりしたことはありましたか」と聞き、学生の話を黒板に集める。「〜しました。〜しました」と並べただけでは、何が原因で、どの場面で何が起きたのか分かりにくいことを確かめ、この課は原因・場面・すぐあと・結果を言い分けて、ありのままに説明する課だと予告する |
| 学習項目1・2 〜せいで…/〜ばかりに… | 45分 | 第3課の「おかげで」の枠の隣に「せいで」の枠を書き、遅刻の理由で練習する。そのあと教師の失敗談で「ばかりに」を出し、同じ出来事を二つの形で言って、原因を指さす言い方と、その一点を悔やむ言い方を比べる |
| 学習項目3・4 〜ところへ…/〜ところに… | 35分 | 時間の線と第1課の「〜ところだ」で場面の段階(直前・途中・直後)を見せ、その場面に人がやって来る「へ」から、何かが起きる「に」へ広げる。多くの文は入れ替えられることを先に言っておく。1コマ目はここまで |
| 学習項目5 〜ところを… | 30分 | 2コマ目。初めに前のコマの「せいで・ばかりに・ところへ・ところに」を2〜3問で言い分けさせてから入る。見られて恥ずかしかった話から受身の文で導入する。一枚の絵で「へ・に」と「を」を言い分け、後ろの動詞(来る/見る・見つける)で助詞が決まることを確かめる |
| 学習項目6 〜たとたん… | 30分 | 教師の動作で「びっくりした瞬間」を見せて導入する。「〜てすぐ」と並べ、後ろに話し手の意志の文が来ないことを二列の板書で見せる |
| 学習項目7 〜てしまいました | 30分 | 初級の復習。店長役の教師に失敗を報告するやり取りで、「〜てしまいました+おわび」の型を作り、原因の形(せいで・ばかりに)を前に足す。2コマ目はここまで |
| 目標の活動(報告のロールプレイ) | 65分 | 3コマ目。初めに前のコマの「ところを・たとたん・てしまいました」を2〜3問で確かめてから入る。「アルバイト先で物を壊した」「借りた自転車をなくした」「道で人とぶつかった」などの状況カードを引き、上司・大家さん・係の人の役に、原因→場面→すぐあと→結果→おわびの順で報告する。聞く役は「それで、どうなったんですか」「どうして〜たんですか」と質問を返し、足りない部分を言わせる |
| まとめ | 25分 | 七つの形を「原因」「場面」「すぐあと」「結果」の四つの箱に分けて板書し直し、「せいで/ばかりに」と「ところへ・に/ところを」の言い分けを2〜3問で確かめて終わる |
前の部分が原因になって悪い結果になったことを表します。原因を指さして「これが悪かった」と責任を向ける言い方で、人や物のせいにするときにも、「私のせいで」と自分の責任を認めて謝るときにも使います。後ろには、もう起きた悪い結果(遅れた・壊れた・眠れなかった)が来ることが多く、「〜しよう」「〜てください」のような意志や依頼の文は来ません。よい結果には第3課の「〜おかげで」を使います。原因がはっきりしないときは「〜せいか」(寝不足のせいか、頭が痛い)と言います。
N+の+せいで/普通形+せいで(な形容詞は「な」:不便なせいで。名詞は「の」:雨のせいで。動詞は「Vた/Vている せいで」が多い)
原因カード(雨・事故・工事の音・寝坊・かぜ)と結果カード(遅刻した・眠れなかった・試合が中止になった)を組み合わせて「〜せいで、〜」と言わせる。途中によい結果のカード(合格した・涼しくなった)を混ぜ、「おかげで」に切り替えられるかを確かめる。
「それだけのことが原因で、思ってもいなかった悪い結果になってしまった」という残念な気持ち・後悔を表します。前の部分は、ちょっとしたことや一つのことが多く、「それさえなければ、こんなことにならなかったのに」という気持ちが入ります。話し手自身の行動(一言言った・確認しなかった)について使うことが多く、後ろは「〜てしまった」「〜なくなった」のような悪い結果で、意志や依頼の文は来ません。「〜せいで」は原因を指さして責任を向ける言い方、「〜ばかりに」はその一点を悔やむ言い方、と分けると分かりやすくなります。「Vたいばかりに」は「どうしても〜したくて、そのために無理なことをしてしまった」という使い方です。
普通形+ばかりに(動詞は「Vた/Vなかった ばかりに」が多い。な形容詞は「な/である」:不器用なばかりに。名詞は「である」:外国人であるばかりに。「Nのばかりに」とは言わない)
「小さな原因」と「大きな結果」のカード(名前を書き忘れた→テストが0点になった/かぎをかけなかった→自転車をとられた)をつなげて一文にさせる。慣れたら同じ出来事を「せいで」と「ばかりに」で言い分け、どちらが後悔に聞こえるかをペアで話し合わせる。
ある動作をしようとしている・している・し終わったちょうどその場面に、別の人や物がやって来ることを表します。「ところ」は第1課の「〜ところだ」と同じく動作のどの段階かを表し、「Vる(直前)/Vている(途中)/Vた(直後)」のどれにもつきます。後ろには「来る・帰ってくる・入ってくる・現れる」のような、こちらへ近づく動きの文が来ることが多いです。都合の悪いときに来た話が多いですが、「いいところへ来たね」のように、ちょうどよいときに来たことにも使います。
Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところへ(「先生のところへ行く」のように場所を表す「Nのところ」とは別)
場面カード(料理をしている・お風呂に入ろうとしている・家を出た)と、来たもののカード(友達・宅配便・大家さん)を組み合わせて「〜ところへ、〜が来ました」と言わせる。最後にペアで、自分が困ったタイミングで人が来た経験を話させる。
「〜ところへ」とほとんど同じで、ちょうどその場面に、別の人や物が来る・別のことが起きることを表します。多くの文は「へ」と「に」を入れ替えても意味は変わりません。違いは傾向で、「ところへ」は後ろが「来る・現れる」のような近づく動きの文になることが多いのに対し、「ところに」は「電話が鳴る・知らせが届く・雨が降り出す」のように、その場面で何かが起きる文にも使いやすい、という点です。教室では「へ=だれかが来る」「に=来る・起きる(もう少し広い)」と整理しておくと迷いにくくなります。
Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところに(「困っていたところに」のように、状態の「Vていた」にもつく)
項目3と同じ場面カードを使い、後ろを「来た」以外(電話が鳴った・雨が降り出した・停電した・知らせが届いた)に替えて「〜ところに、〜」と言わせる。毎回「へでも言えますか」と聞き、入れ替えられる文と「に」のほうが自然な文を分けていく。
「その場面を、だれかに見られる・見つけられる・助けられる」のように、場面そのものが後ろの動作の対象になる言い方です。この「を」は後ろの動詞の「を」なので、後ろには「見る・見つける・見かける・助ける・止める・起こす」や、その受身(見られる・助けられる)や「見つかる」が来ます。「へ・に」は場面に別の人や物がやって来る、「を」は場面そのものに働きかける、と分けると使い分けが分かります。「お忙しいところを、ありがとうございます」「お休みのところを、すみません」は、相手の時間をもらうときの決まった言い方です。「忙しいのに、それでも」という気持ちを含む別の使い方なので、上の「を」とは分けて、まとまりで覚えさせます。
Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところを(決まった言い方では「お忙しいところを」「お休みのところを」)
場面カード(居眠りしている・つまみ食いしている・道に迷っている)と、だれが何をしたかのカード(先生に見られた・友達に見つかった・警察官に助けられた)を組み合わせて言わせる。最後に「へ・に・を」が混ざったカードを出し、後ろの動詞を見て助詞を選ばせる。
ある動作や変化が起きたすぐあとに、別のことが起きたことを表します。後ろには、話し手が予想していなかったことや、自分ではどうにもできないこと(急に雨が降り出した・電気が消えた・相手の顔色が変わった)が来ることが多く、「びっくりした」気持ちがこもります。そのため、後ろに「〜よう」「〜てください」のような話し手の意志や依頼の文は来ません。自分の意志で続けてした動作(家に帰ってすぐ手を洗った)を言うときは、「〜てすぐ」「〜とすぐ」を使うほうが自然です。多くは過去の一回の出来事について使い、「〜たとたんに」とも言います。
Vた+とたん(に)(前は動詞のた形だけ。「Vる/Vている とたん」とは言わない)
動作カード(ドアを開けた・電気をつけた・座った・電話に出た)を見せ、学生に「思いがけないこと」を自由に続けさせる。そのあと教師が、後ろに意志の文や自分の続けた動作を入れた文を混ぜて言い、正しいか、変か、「すぐ」に替えたほうがいいかを判断させる。
初級で習った形の復習です。この課では「全部終わった」という意味より、「失敗した・取り返しがつかない・残念だ」という気持ちを中心に、事故や失敗の報告の中で使います。同じ出来事でも「お皿を割りました」はただの事実、「お皿を割ってしまいました」は「そうするつもりはなかった、すみません」という気持ちが入り、報告やおわびの言葉になります。親しい相手には「〜ちゃった/〜じゃった」になります。この課の「〜せいで」「〜ばかりに」「〜たとたん」の文は、後ろをこの形で結ぶと自然になることが多いです。
Vて+しまいました(話し言葉:Vちゃった/Vじゃった。忘れちゃった・飲んじゃった)
失敗カード(かぎをなくした・ドアを壊した・予約を忘れた)を見せ、「〜てしまいました。申し訳ありません」で報告させる。慣れたら原因を「〜せいで/〜ばかりに」で前に足し、最後に「これからは〜ようにします」まで言わせて、報告の型を一通り通す。
状況をありのままに説明するには、事故や失敗の場面の語(ぶつかる・ころぶ・けがをする・なくす・落とす・壊す)と、そのときの気持ちや様子を言う語(びっくりする・あわてる・ほっとする・恥ずかしい・にっこり)が要ります。新出語もこの二つのかたまりに分けて扱うと練習しやすくなります。自動詞と他動詞の組(壊す/壊れる・落とす/落ちる・割る/割れる)は、報告の中で責任の言い方が変わるので、必ず組にして「〜を壊してしまいました」「〜が壊れてしまいました」の形で練習します。
宿題は、自分が実際に経験した失敗やびっくりしたことを一つ選び、原因・その場面・すぐあと・結果・そのあとどうしたかの順で、200字ほどの報告の文章を書くこと。この課の形を三つ以上使う。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞いた人が「どうして〜たんですか」「それで、どうなったんですか」と質問して復習してから、第18課の「変化を説明する」に入ります。この課の「〜てしまいました」と第18課の「〜くなります」はどちらも結果を言う形なので、「〜てしまって、〜くなりました」と一文でつなぐと自然に移れます。
「〜せいで」と「〜ばかりに」の違いはどう説明すればいいですか?
どちらも悪い結果の原因を言いますが、「せいで」は原因を指さして「これが悪かった」と責任を向ける言い方、「ばかりに」は「たったそれだけのことで」と話し手が悔やむ言い方です。同じ出来事を二つの形で言い比べ、どちらが後悔に聞こえるかを学習者に判断させると違いがつかめます。接続では、名詞が「Nのせいで」「Nであるばかりに」と分かれる点も板書で確かめます。
「〜ところへ」と「〜ところに」は使い分けを教える必要がありますか?
多くの文は入れ替えても意味が変わらないので、細かい使い分けは教えなくてかまいません。傾向として、「へ」は後ろが「来る・現れる」のような近づく動き、「に」はそれに加えて「電話が鳴る・雨が降り出す」のような出来事にも使いやすい、とだけ伝えます。学習者が「へ」で言った文を「に」に直すような訂正はしないほうが、言うことへの不安を増やしません。
「〜ところを」が「へ・に」と混ざらないようにするにはどうすればいいですか?
助詞は前の場面ではなく後ろの動詞で決まることを、矢印の向きで見せます。後ろが「来る・起きる」なら「へ・に」、「見る・見つける・助ける」とその受身なら「を」です。一枚の絵で両方の文を言わせ、最後まで言ってから助詞を選ぶ練習をすると誤りが減ります。
「〜たとたん」と「〜てすぐ」「〜たら」の違いは何ですか?
「たとたん」は前の動作のすぐあとに、話し手が予想していなかったことが起きたときに使い、後ろに意志や依頼の文は来ません。自分で決めて続けた動作は「〜てすぐ」、あとで気づいたことやこれからのことは「〜たら」で言います。二列の板書(自分で決めた/急に起きた)に文カードを分けて貼らせると、判断の基準が残ります。
第17課は何コマで終わりますか?
90分×3コマが目安です。1コマ目で導入と「せいで」「ばかりに」「ところへ」「ところに」、2コマ目で「ところを」「たとたん」「てしまいました」、3コマ目で報告のロールプレイとまとめを扱います。似た形が多い課なので、各コマの最初に前のコマの形を2〜3問で言い分けさせてから新しい項目に入ると、混ざりにくくなります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。