日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初中級 第17課「警察官は私の言葉を聞いたとたん、にっこりと笑いました」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

事故・失敗・びっくりしたことのようなそのときの状況を、ありのままに相手に説明することが目標の課です。出来事の説明は「〜しました。〜しました」と並べるだけでは何が原因で何が起きたのか伝わりにくいので、この課では原因(〜せいで・〜ばかりに)/その場面(〜ところへ・〜ところに・〜ところを)/すぐあと(〜たとたん)/結果(〜てしまいました)の四つの箱に形を分けて、一つの説明を組み立てさせます。似た形が並ぶ課なので、「せいで」と「ばかりに」、「ところへ・に」と「ところを」の言い分けを、後ろに来る文の種類から判断できるようにするのが芯です。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目7時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 悪い結果の原因を「〜せいで」で言い、自分の小さなことが原因で大きな悪い結果になったことを「〜ばかりに」で後悔の気持ちをこめて言い分けられる
  • 何かをしている途中・直前・直後に別の人やことがやって来たことを「〜ところへ/〜ところに」で、その場面を見られた・助けられたことを「〜ところを」で言い分けられる
  • 「〜たとたん」で、ある動作のすぐあとに思いがけないことが起きたことを言い、自分の意志でしたことには「〜てすぐ」を使える
  • 「〜てしまいました」とおわびを組み合わせて、事故や失敗を上司・店長・係の人に、原因から結果まで順序よく報告できる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分「最近、困ったこと・びっくりしたことはありましたか」と聞き、学生の話を黒板に集める。「〜しました。〜しました」と並べただけでは、何が原因で、どの場面で何が起きたのか分かりにくいことを確かめ、この課は原因・場面・すぐあと・結果を言い分けて、ありのままに説明する課だと予告する
学習項目1・2 〜せいで…/〜ばかりに…45分第3課の「おかげで」の枠の隣に「せいで」の枠を書き、遅刻の理由で練習する。そのあと教師の失敗談で「ばかりに」を出し、同じ出来事を二つの形で言って、原因を指さす言い方と、その一点を悔やむ言い方を比べる
学習項目3・4 〜ところへ…/〜ところに…35分時間の線と第1課の「〜ところだ」で場面の段階(直前・途中・直後)を見せ、その場面に人がやって来る「へ」から、何かが起きる「に」へ広げる。多くの文は入れ替えられることを先に言っておく。1コマ目はここまで
学習項目5 〜ところを…30分2コマ目。初めに前のコマの「せいで・ばかりに・ところへ・ところに」を2〜3問で言い分けさせてから入る。見られて恥ずかしかった話から受身の文で導入する。一枚の絵で「へ・に」と「を」を言い分け、後ろの動詞(来る/見る・見つける)で助詞が決まることを確かめる
学習項目6 〜たとたん…30分教師の動作で「びっくりした瞬間」を見せて導入する。「〜てすぐ」と並べ、後ろに話し手の意志の文が来ないことを二列の板書で見せる
学習項目7 〜てしまいました30分初級の復習。店長役の教師に失敗を報告するやり取りで、「〜てしまいました+おわび」の型を作り、原因の形(せいで・ばかりに)を前に足す。2コマ目はここまで
目標の活動(報告のロールプレイ)65分3コマ目。初めに前のコマの「ところを・たとたん・てしまいました」を2〜3問で確かめてから入る。「アルバイト先で物を壊した」「借りた自転車をなくした」「道で人とぶつかった」などの状況カードを引き、上司・大家さん・係の人の役に、原因→場面→すぐあと→結果→おわびの順で報告する。聞く役は「それで、どうなったんですか」「どうして〜たんですか」と質問を返し、足りない部分を言わせる
まとめ25分七つの形を「原因」「場面」「すぐあと」「結果」の四つの箱に分けて板書し直し、「せいで/ばかりに」と「ところへ・に/ところを」の言い分けを2〜3問で確かめて終わる

学習項目 1 〜せいで…

意味・はたらき学習項目 1

前の部分が原因になって悪い結果になったことを表します。原因を指さして「これが悪かった」と責任を向ける言い方で、人や物のせいにするときにも、「私のせいで」と自分の責任を認めて謝るときにも使います。後ろには、もう起きた悪い結果(遅れた・壊れた・眠れなかった)が来ることが多く、「〜しよう」「〜てください」のような意志や依頼の文は来ません。よい結果には第3課の「〜おかげで」を使います。原因がはっきりしないときは「〜せいか」(寝不足のせいか、頭が痛い)と言います。

接続

N+の+せいで/普通形+せいで(な形容詞は「な」:不便なせいで。名詞は「の」:雨のせいで。動詞は「Vた/Vている せいで」が多い)

形
Nのせいで、〜(台風のせいで、電車が止まりました)Vた/Vていた せいで、〜(夜遅くまでゲームをしていたせいで、寝坊しました)い形/な形 せいで、〜(道が狭いせいで、車が通れません/説明が複雑なせいで、よく分かりませんでした)〜のは、Nのせいです(遅れたのは、事故のせいです)

導入

  • 第3課の「おかげで」と並べる第3課の板書「[原因]のおかげで、[よい結果]」を思い出させ、隣に「[原因]のせいで、[悪い結果]」の枠を書く。同じ原因(雨)で「雨のおかげで、涼しくなりました」「雨のせいで、試合が中止になりました」と二つ言って見せ、後ろの結果がよいか悪いかで形が決まることに気づかせる。
  • 遅刻の理由を集める「今まで遅刻したことはありますか。どうしてですか」と聞き、「バスが遅れた」「目覚まし時計が鳴らなかった」などの答えを「〜せいで、遅刻しました」に言い直させる。最後に教師が「私が時間をまちがえたせいで、みんなを待たせてしまいました」と自分の話をし、「私のせいで」は謝るときにも使うと見せる。

板書案

[原因] Nの/普通形 + せいで、[悪い結果]
〔青〕おかげで(第3課の枠を左に残す) ⇔ 〔赤〕せいで
雨の せいで、試合が 中止に なりました。
寝坊した せいで、バスに 乗り遅れました。
後ろ:×〜ましょう/×〜てください → 「から・ので」へ

場面と発話(自作)

  • 朝の授業に20分遅れて入ってきた留学生が、先生に理由を説明する。すみません。事故のせいで、電車が30分止まっていたんです。
  • アルバイト先で注文をまちがえた店員が、店長に報告して謝る。私が確認しなかったせいで、ちがう料理を出してしまいました。申し訳ありません。
  • 寮の部屋で、ルームメイトに眠そうな理由を聞かれる。となりの工事の音のせいで、ゆうべはほとんど眠れなかったんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

原因カード(雨・事故・工事の音・寝坊・かぜ)と結果カード(遅刻した・眠れなかった・試合が中止になった)を組み合わせて「〜せいで、〜」と言わせる。途中によい結果のカード(合格した・涼しくなった)を混ぜ、「おかげで」に切り替えられるかを確かめる。

  1. 口頭原因の絵カード(台風・事故・工事の音・かぜ・寝坊)と結果の語(電車が止まった・眠れなかった・学校を休んだ)を並べて見せ、全体で「台風のせいで、電車が止まりました」と言わせる。キューを名詞(事故)→動詞の文(ゆうべ遅くまで起きていた)→形容詞(道が狭い・説明が複雑だ)と替えて、「の」「な」の接続を一つずつ確かめる。ときどきよい結果のカード(合格した・涼しくなった)を混ぜ、「おかげで」に切り替えられるかを個人に当てて見る。
  2. ペア「遅刻の理由」の情報差。A は先生役で「どうして遅れたんですか」と聞き、B は A に見せない原因カードを1枚引いて「〜せいで、〜んです」と答える。A は「そうですか。次は〜ないようにしてくださいね」と返す。3枚ごとに役を交替し、最後に A が B の答えをクラスに「Bさんは〜せいで遅れたそうです」と伝える。
  3. 産出活動「ついてない一日」。最近の運の悪かった一日を、原因と結果のつながりを三つ以上入れて話す(目覚ましが鳴らなかった→急いでいた→かさを忘れた、のように連鎖させる)。教師は、後ろが悪い結果になっているか、名詞の「の」・な形容詞の「な」、後ろに意志や依頼の文が来ていないかを聞き取り、終わってから黒板で2〜3文を言い直させる。

つまずきと手当て

  • よい結果に使う(「*友達のせいで、試験に合格できました」)。後ろの結果がよいか悪いかを先に考えさせ、よければ「おかげで」と第3課の枠に戻す
  • 後ろに意志や依頼の文を置く(「*雨のせいで、出かけるのをやめましょう」)。「せいで」は起きてしまった結果を説明する形なので、これからのことには「雨だから/雨なので」を使うと直す
  • 目上の人の前で、相手のしたことに「〜さんのせいで」と言ってしまう。誤りではないが相手を強く責める言い方になるので、報告では原因を物や出来事にするか、「私の確認が足りなかったせいで」と自分の側に置く言い方を練習する

既習の文型との違い

  • 〜おかげで…(第3課)形は同じ(Nの/普通形+)で、後ろの結果がよければ「おかげで」、悪ければ「せいで」と分かれます。学習者は「*先生のせいで、試験に合格できました」のように逆に使うことがあるので、先に後ろの結果のよしあしを言わせてから形を選ばせます。悪い結果に皮肉で「おかげで」を使う言い方は、この段階では取り上げません。
  • 〜ので、…(初級Ⅱ 第21課)「ので」は結果のよしあしを問わず原因・理由を言う形で、後ろに依頼や意志の文も来ます(雨なので、かさを持って行ってください)。「せいで」は起きた悪い結果の説明に限られ、だれ・何が悪かったかという責任の向きがはっきり出ます。「*雨のせいで、かさを持って行ってください」の誤りには「ので」を勧めます。
関連する文型

学習項目 2 〜ばかりに…

意味・はたらき学習項目 2

「それだけのことが原因で、思ってもいなかった悪い結果になってしまった」という残念な気持ち・後悔を表します。前の部分は、ちょっとしたことや一つのことが多く、「それさえなければ、こんなことにならなかったのに」という気持ちが入ります。話し手自身の行動(一言言った・確認しなかった)について使うことが多く、後ろは「〜てしまった」「〜なくなった」のような悪い結果で、意志や依頼の文は来ません。「〜せいで」は原因を指さして責任を向ける言い方、「〜ばかりに」はその一点を悔やむ言い方、と分けると分かりやすくなります。「Vたいばかりに」は「どうしても〜したくて、そのために無理なことをしてしまった」という使い方です。

接続

普通形+ばかりに(動詞は「Vた/Vなかった ばかりに」が多い。な形容詞は「な/である」:不器用なばかりに。名詞は「である」:外国人であるばかりに。「Nのばかりに」とは言わない)

形
Vたばかりに、〜(うっかり返事をしたばかりに、勧誘の電話が毎日来るようになりました)Vなかったばかりに、〜(保険に入っていなかったばかりに、修理代を全部払うことになりました)な形/Nである ばかりに、〜(字が下手なばかりに、申込書を何度も書き直しました)Vたいばかりに、〜(早く帰りたいばかりに、確認をとばしてしまいました)

導入

  • 「あれさえなければ」の話教師が「先週、かさを持っていかなかったばかりに、びしょぬれになって、かぜをひいてしまいました」と自分の失敗談をし、「かさを持っていけば、どうでしたか」と聞く。「かぜをひかなかった」という答えから、「たった一つのことが原因で悪いことになった」「だから残念」という気持ちを引き出し、「[小さなこと]ばかりに、[大きな悪い結果]てしまいました」の枠を板書する。
  • 「せいで」と同じ出来事で比べる同じ旅行の話を「台風のせいで、飛行機が飛びませんでした」「出発を一日遅らせたばかりに、台風にあってしまいました」の二通りで言い、前の文は外の原因を指すだけ、後ろの文は自分の選んだことを悔やむ気持ちがある、と比べる。学生に自分の失敗を一つ思い出させ、二つの形で言わせる。

板書案

[小さな原因] 普通形 + ばかりに、[大きな悪い結果]てしまいました
N/な形 → 〜である ばかりに(×Nの ばかりに)
かぎを かけなかった ばかりに、自転車を とられて しまいました。
〔赤〕気持ち:「あれさえ なければ…」(後悔)
〔青〕来た ばかりで(直後) ≠ 〔赤〕来た ばかりに(原因)

場面と発話(自作)

  • 引っ越しの日の夜、ガス会社に電話した留学生が事情を説明する。開栓の申し込みを忘れていたばかりに、今夜はお風呂に入れないんです。
  • 会社で、メールのあて先を一つまちがえた社員が、先輩に相談する。あて先をよく確認しなかったばかりに、社外の人にメールを送ってしまいました。
  • 友達との会話で、きのうのけんかの話をする。冗談のつもりで一言言ったばかりに、彼女を怒らせちゃったんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「小さな原因」と「大きな結果」のカード(名前を書き忘れた→テストが0点になった/かぎをかけなかった→自転車をとられた)をつなげて一文にさせる。慣れたら同じ出来事を「せいで」と「ばかりに」で言い分け、どちらが後悔に聞こえるかをペアで話し合わせる。

  1. 口頭「小さなこと」のカード(名前を書き忘れた・かぎをかけなかった・地図を見なかった・一言多かった)に矢印で「大きな結果」の絵をつけて見せ、全体で「〜ばかりに、〜てしまいました」と言わせる。キューを「Vなかった」→「Vた」→「Vたい」(早く帰りたい・もっと寝たい)の順に替え、最後に名詞・な形容詞(外国人・不器用)で「である」の形を個人に言わせる。
  2. ペア「あのとき…」。A は結果だけを言い(テストが0点だったんです)、B が「どうしてですか」と聞き、A がカードの原因で「〜ばかりに」と答える。B は「それは残念でしたね」「あれさえなければね」と気持ちを返す。交替したあと、同じカードを「せいで」でも言い、どちらが後悔に聞こえるかをペアで一言話し合わせる。
  3. 産出活動「もったいない話コンテスト」。自分の経験から「小さなことが原因で大きな悪い結果になった話」を一つ選び、3〜4文で話す。聞いた人の投票でいちばん「もったいない」話を選ぶ。教師は、前がちょっとした一点になっているか、後ろが悪い結果か、名詞・な形容詞の接続、「〜たばかりで(直後)」と混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 「〜たばかりに」と、した直後を表す「〜たばかりで/〜たばかりなのに」を混同する(「*日本に来たばかりに、まだ友達がいません」=来た直後という意味で言っている)。直後の「ばかり」は第1課の「〜ところだ」の仲間、原因の「ばかりに」はこの課、と板書で分け、直後の意味なら「来たばかりで」と直す
  • 名詞に直接「の」でつける(「*外国人のばかりに、部屋が借りられませんでした」)。名詞は「外国人であるばかりに」、な形容詞は「下手な/下手であるばかりに」と形を確かめる
  • よい結果に使う(「*毎日練習したばかりに、優勝できました」)。「ばかりに」の後ろは悪い結果だけで、よい結果は「おかげで」になる

既習の文型との違い

  • 〜せいで…(第17課)どちらも悪い結果の原因を言いますが、「せいで」は原因を指さして責任を向ける言い方で、外の出来事にも自分のことにも使えます。「ばかりに」は話し手の残念な気持ちが中心で、前は「たった一つのこと」になります。そのため「台風のせいで」は自然でも、天気のような外の大きな原因に「ばかりに」を使うと落ち着かない文になりやすいです。
  • 〜さえ…ば…(第13課)「さえ〜ば」は「その一つだけそろえばよい」という条件の言い方で、「ばかりに」は「その一つだけのせいで悪くなった」という事実の言い方です。「地図を見なかったばかりに、道に迷いました」は「地図さえ見ていれば、迷わなかったのに」と言い換えられる裏表の関係なので、二つを並べると後悔の気持ちがつかみやすくなります。
関連する文型

学習項目 3 〜ところへ…

意味・はたらき学習項目 3

ある動作をしようとしている・している・し終わったちょうどその場面に、別の人や物がやって来ることを表します。「ところ」は第1課の「〜ところだ」と同じく動作のどの段階かを表し、「Vる(直前)/Vている(途中)/Vた(直後)」のどれにもつきます。後ろには「来る・帰ってくる・入ってくる・現れる」のような、こちらへ近づく動きの文が来ることが多いです。都合の悪いときに来た話が多いですが、「いいところへ来たね」のように、ちょうどよいときに来たことにも使います。

接続

Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところへ(「先生のところへ行く」のように場所を表す「Nのところ」とは別)

形
Vる/Vようとした ところへ、〜(出かけようとしたところへ、宅配便が来ました)Vているところへ、〜(部屋を片付けているところへ、急に友達が来ました)Vたところへ、〜(店を閉めたところへ、お客さんが一人入ってきました)いいところへ来た(ちょうど手伝ってほしいときに来た)

導入

  • 時間の線に人がやって来る黒板に時間の線を書き、教師が「ゆうべ、晩ご飯を食べていました」と線の途中に印を付ける。そこへ人の絵を矢印で近づけ、「食べているところへ、となりの人が来ました」と言って、「ところへ」が「その場面のちょうどそこへ」の意味だと見せる。印を線の手前(食べようとしたところ)とあと(食べたところ)に動かし、三つの段階でも言わせる。
  • 「最悪のタイミング」の経験第1課の「〜ところだ」の板書(これから〜するところ/〜しているところ/〜したところ)を出し、その後ろに「へ、[人]が来ました」を足すだけだと見せる。そのうえで「人が来て困ったことはありますか」と聞き、学生の話を「〜ているところへ、〜が来ました」で言わせる。

板書案

Vる/Vている/Vた + ところへ、[人・物]が 来ました
――●直前――●途中――●直後――→(時間の線)
〔赤〕矢印:人が その場面へ 入って来る
料理を している ところへ、友達が 来ました。
〔青〕先生の ところへ 行く(場所)← 前が「Nの」

場面と発話(自作)

  • 掃除の途中で友達が遊びに来て、部屋が散らかっていた。次の日、クラスメートにその話をする。部屋を片付けているところへ、急に友達が来たんです。
  • 店で、閉店の準備をしていた店員が、店長にさっきのことを話す。シャッターを閉めようとしたところへ、お客さんが走ってきたんですよ。
  • 重い荷物を運んでいた留学生のところに、ちょうど先輩が通りかかる。あ、いいところへ来てくれました。ちょっと手伝ってもらえませんか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

場面カード(料理をしている・お風呂に入ろうとしている・家を出た)と、来たもののカード(友達・宅配便・大家さん)を組み合わせて「〜ところへ、〜が来ました」と言わせる。最後にペアで、自分が困ったタイミングで人が来た経験を話させる。

  1. 口頭時間の線の上で印を動かしながら、場面カード(お風呂に入ろうとしている・料理をしている・家を出た)と来た人のカード(宅配便・大家さん・友達)を出し、全体→個人で「〜ところへ、〜が来ました」と言わせる。キューは「料理・している・友達」のように語を三つだけ出し、学習者に文を組み立てさせる。同じ場面を直前・途中・直後の三通りで言い分けさせる。
  2. ペア「最悪のタイミング」。A が場面カードを読み(シャワーを浴びている)、B が伏せた来た人カードを引いて「〜ところへ、〜が来ました」で文を完成させる。A は「それで、どうしましたか」と聞き、B が一言続ける。5枚で交替し、二人で一番困るタイミングの組み合わせを一つ選ぶ。
  3. 産出活動「間が悪い話」。自分の経験で、困ったタイミング(またはちょうどいいタイミング)で人や物が来た話を「〜ところへ」を入れて3文で話す。聞き手は「それは悪いところへ来ましたね」「いいところへ来ましたね」と一言返す。教師は、Vる/Vている/Vた が話の段階に合っているか、後ろが「来る・入ってくる」の類になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 前の動詞の形(Vる/Vている/Vた)で場面のどの段階かが変わるのに、いつも「Vているところへ」で言う。出かける直前・途中・直後の三枚の絵で言い分けさせる
  • 「先生のところへ質問に行きました」の場所の「ところへ」と区別できず、読解で意味を取りちがえる。前が「名詞+の」なら場所、動詞なら場面、と前の形で見分けさせる
  • 「〜ときに」と同じだと思い、ただ時を言うだけの文に使う。「ところへ」は「ちょうどその場面に割り込んでくる」感じがあるので、後ろは人や物がやって来る出来事にする

既習の文型との違い

  • 〜ところだ(第1課)第1課の「〜ところだ」は文末に置いて、今どの段階にいるかを言う形です。この課の「〜ところへ」は同じ段階の言い方を文の途中に置き、その場面に別の人や物が割り込んだことを言います。「今、出かけるところです」を「出かけるところへ、電話が…」とつなげて見せると、新しい形として構えずにすみます。
  • 〜最中(第4課)「最中」は途中のいちばん盛んなときだけを言い、Vる(直前)やVた(直後)にはつきません。「会議の最中に電話が鳴りました」も「会議をしているところへ…」も言えますが、「*出かける最中に」は言えません。直前・直後の場面なら「ところへ」を選ぶ、と時間の線で区別させます。
  • 〜とき、…(初級Ⅰ 第18課)「とき」は時を言うだけで、後ろに意志や依頼の文も来ます(出かけるとき、電気を消してください)。「ところへ」は後ろが場面に割り込んでくる出来事に限られ、「ちょうどそこへ」という感じがあります。学習者が「とき」の代わりに何でも「ところへ」で言うときは、後ろに来たものがあるかを確かめさせます。
関連する文型

学習項目 4 〜ところに…

意味・はたらき学習項目 4

「〜ところへ」とほとんど同じで、ちょうどその場面に、別の人や物が来る・別のことが起きることを表します。多くの文は「へ」と「に」を入れ替えても意味は変わりません。違いは傾向で、「ところへ」は後ろが「来る・現れる」のような近づく動きの文になることが多いのに対し、「ところに」は「電話が鳴る・知らせが届く・雨が降り出す」のように、その場面で何かが起きる文にも使いやすい、という点です。教室では「へ=だれかが来る」「に=来る・起きる(もう少し広い)」と整理しておくと迷いにくくなります。

接続

Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところに(「困っていたところに」のように、状態の「Vていた」にもつく)

形
Vようとしたところに、〜(家を出ようとしたところに、雨が降り出しました)Vているところに、〜(会議をしているところに、地震の知らせが入りました)Vていたところに、〜(お米がなくて困っていたところに、国の家族から荷物が届きました)いいところに(ちょうどいいときに)

導入

  • 「へ」の文を「に」に替えてみる項目3で作った文を黒板に並べ、「へ」を「に」に替えて読ませ、意味が変わらないことを確かめる。次に後ろを「電話が鳴りました」「雨が降り出しました」「停電しました」に替え、「へ」と「に」のどちらが言いやすいかを学生に聞いて、「に」のほうが広く使えることに気づかせる。

板書案

Vる/Vている/Vた + ところに、[来る・起きる]
〔青〕へ = だれかが 来る  〔赤〕に = 来る・起きる(少し広い)
シャワーを 浴びようとした ところに、玄関の チャイムが 鳴りました。
困って いた ところに、荷物が 届きました。
後ろ:×〜てください(話し手が決められないことを言う)

場面と発話(自作)

  • 留学生が、レポートを書き始めたとたん停電した夜のことを、クラスメートに話す。レポートを書き始めたところに、急に停電したんです。
  • アルバイト先で休憩に入ろうとしたら団体客が来た、と店員が友達に話す。休憩に入ろうとしたところに、団体のお客さんが来ちゃって。
  • 寮の留学生が、家族から荷物が届いたことを友達に話す。お米がなくなって困っていたところに、国の母から荷物が届きました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

項目3と同じ場面カードを使い、後ろを「来た」以外(電話が鳴った・雨が降り出した・停電した・知らせが届いた)に替えて「〜ところに、〜」と言わせる。毎回「へでも言えますか」と聞き、入れ替えられる文と「に」のほうが自然な文を分けていく。

  1. 口頭項目3で板書した文を、そのまま「へ」を「に」に替えて全体で読む。次に後ろを出来事のカード(電話が鳴った・雨が降り出した・停電した・知らせが届いた)に替え、場面カード+出来事カードのキューで全体→個人に言わせる。一文ごとに「へでも言えますか」と聞き、言いやすいほうに手を挙げさせる。
  2. ペア「ある一日の表」の情報差。A は時刻と「していたこと」だけ、B は時刻と「起きたこと」だけが書かれた表を持ち、見せ合わずに「9時ごろ、何をしていましたか」「そのとき、何がありましたか」と聞き合って、「〜ていたところに、〜」の文を5つ完成させる。終わったら表を見せ合い、時刻が合っているか確かめる。
  3. 産出活動「ちょうどそのとき日記」。この一週間に、何かをしようとした・していたときに起きた出来事を二つ選び、「〜ところに」「〜ところへ」を使って短い日記を書く。教師は、後ろが話し手の意志の文になっていないか、場所の「Nのところに」と混ざっていないかを見る。「へ」で書いた文を「に」に直すことはしない。

つまずきと手当て

  • 教師が「へ」と「に」の違いを細かく教えすぎて、学習者が言えなくなる。多くは入れ替えられるので、使い分けは「へ=来る」「に=来る・起きる」の傾向だけにとどめ、学習者が「へ」で言った文を「に」に直さない
  • 後ろに意志や依頼の文を置く(「*帰ろうとしたところに、電話してください」)。「ところへ・に」の後ろは、その場面で起きたこと(話し手が決められないこと)を言う文だと確かめる
  • 「机のところに置いてください」の場所の「ところに」と区別できない。前が「名詞+の」なら場所、動詞なら場面、と項目3と同じ見分け方を使う

既習の文型との違い

  • 〜ところへ…(第17課)多くの文は入れ替えられ、違いは傾向だけです。「へ」は後ろが「来る・現れる」のような近づく動き、「に」はそれに加えて「電話が鳴る・雨が降り出す」のような、その場面で起きることにも使いやすい、と整理します。違いを細かく問う練習はせず、学習者がどちらで言っても通じることを優先します。
  • 〜たら、…(初級Ⅰ 第19課)「家に帰ったら、荷物が届いていました」は、帰ってから気づいた発見を言う文です。「家に帰ったところに、荷物が届きました」は、帰ったちょうどそのときに届いたという重なりを言います。学習者は「ところに」を「たら」の言い換えとして使うことがあるので、時間がぴったり重なっているかを絵で確かめさせます。
関連する文型

学習項目 5 〜ところを…

意味・はたらき学習項目 5

「その場面を、だれかに見られる・見つけられる・助けられる」のように、場面そのものが後ろの動作の対象になる言い方です。この「を」は後ろの動詞の「を」なので、後ろには「見る・見つける・見かける・助ける・止める・起こす」や、その受身(見られる・助けられる)や「見つかる」が来ます。「へ・に」は場面に別の人や物がやって来る、「を」は場面そのものに働きかける、と分けると使い分けが分かります。「お忙しいところを、ありがとうございます」「お休みのところを、すみません」は、相手の時間をもらうときの決まった言い方です。「忙しいのに、それでも」という気持ちを含む別の使い方なので、上の「を」とは分けて、まとまりで覚えさせます。

接続

Vる/Vようとしている/Vている/Vた+ところを(決まった言い方では「お忙しいところを」「お休みのところを」)

形
Vているところを、〜に見られる(授業中に居眠りしているところを、先生に見られました)Vているところを、見つける/見かける(店長が倉庫で探し物をしているところを、見かけました)Vようとしたところを、〜に止められる/助けられる(まちがった資料を出そうとしたところを、先輩に止められました)お忙しいところを、すみません/ありがとうございます

導入

  • 見られて恥ずかしかった場面「人に見られて恥ずかしかったことはありますか」と聞き、教師から「電車の中で大きな口を開けて寝ているところを、学生に見られました」と話す。板書は「[場面]ところを、[人]に 見られました」。「学生が、私が寝ている場面を見た」という能動の文と並べ、「を」は「見る」の「を」だと見せる。
  • 一枚の絵で「へ・に」と「を」台所で料理をしている人・ドアから入ってくる友達・窓の外からのぞく人の一枚の絵を見せ、「料理しているところへ/に、友達が来ました」「料理しているところを、となりの人に見られました」を言い分けさせる。こちらへ来るものは「へ・に」、場面を見るものは「を」と、矢印の向きで示す。

板書案

Vている ところを、[人]に 見られました
〔赤〕を =「見る・見つける・助ける」の を
店長が、私が 倉庫で お菓子を 食べている ところを 見ました。
→ 私は 倉庫で お菓子を 食べている ところを 店長に 見られました。
〔青〕へ・に ← 来る・起きる  〔赤〕を ← 見る・助ける(矢印の向き)
お忙しい ところを すみません。(決まった言い方)

場面と発話(自作)

  • 電車で寝てしまい、降りる駅に着いたときに、となりの人が起こしてくれた。降りる駅で寝ているところを、となりの人が起こしてくれました。
  • 会社で、まちがった資料を部長に出しかけたが先輩が止めてくれた、と同期の人に話す。部長に出すところを、先輩が止めてくれて助かりました。
  • 先生の研究室を訪ねた留学生が、最初に言う。お忙しいところをすみません。少しよろしいでしょうか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

場面カード(居眠りしている・つまみ食いしている・道に迷っている)と、だれが何をしたかのカード(先生に見られた・友達に見つかった・警察官に助けられた)を組み合わせて言わせる。最後に「へ・に・を」が混ざったカードを出し、後ろの動詞を見て助詞を選ばせる。

  1. 口頭場面カード(居眠りしている・つまみ食いしている・道に迷っている)と、だれが何をしたかのカード(先生・見た/母・見つけた/警察官・助けた)を出し、まず能動の文(先生が、私が居眠りしているところを見ました)を全体で言ってから、受身の文(私は…先生に見られました)に言い直させる。慣れたら最初から受身で言わせ、最後に「へ・に・を」が混ざったカードで、後ろの動詞を見て助詞を選ばせる。
  2. ペア「見られちゃった」。A は恥ずかしい場面の絵カードを見て「実は、〜ているところを〜に見られたんです」と打ち明け、B は「えっ、それでどうしたんですか」と聞き返す。交替したあと、研究室や職場の場面カードで、A が「お忙しいところをすみません」から短いお願いを言い、B が先生・先輩役で受ける。
  3. 産出活動「恥ずかしかった話・助かった話」。自分の経験で、人に見られて恥ずかしかったこと、または困っていたところを助けられたことを一つ選び、3〜4文で話す。教師は、後ろの動詞と助詞の組み合わせ(を+見られる・助けられる)、受身の主語と見た人の「に」、決まった言い方の「を」を聞き取って直す。

つまずきと手当て

  • 見られた・見つかった場面に「へ・に」を使う(「*居眠りしているところに、先生に見られました」)。後ろが「見る・見つける・助ける」とその受身、または「見つかる」なら「を」、と後ろの動詞から決めさせる
  • 受身の文で、見た人の助詞を取りちがえる(「*先生が、居眠りしているところを見られました」)。見られた人(私)が主語で、見た人は「に」と、初級Ⅱの受身の板書に戻って確かめる
  • 決まった言い方の助詞を変えてしまう(「*お忙しいところで、すみません」)。「お忙しいところを」「お忙しいところ」(「を」を言わない形)のどちらかで覚えさせる

既習の文型との違い

  • 受身(初級Ⅱ 第30・31課)初級の受身は「先生に名前を呼ばれました」のように、された動作を言う文でした。この課では「〜ているところを」を前に置き、されたときの自分の様子まで一文に入れます。学習者は「*先生に寝ているところを見ました」のように受身の形を落としたり、主語を見た人にしたりするので、能動の文から受身へ言い直す手順を毎回踏ませます。
  • 〜ところへ…/〜ところに…(第17課)後ろが「来る・起きる」なら「へ・に」、「見る・見つける・助ける」とその受身なら「を」です。助詞の違いは前の場面ではなく後ろの動詞で決まるので、文を最後まで言わせてから助詞を選ばせると誤りが減ります。
関連する文型

学習項目 6 〜たとたん…

意味・はたらき学習項目 6

ある動作や変化が起きたすぐあとに、別のことが起きたことを表します。後ろには、話し手が予想していなかったことや、自分ではどうにもできないこと(急に雨が降り出した・電気が消えた・相手の顔色が変わった)が来ることが多く、「びっくりした」気持ちがこもります。そのため、後ろに「〜よう」「〜てください」のような話し手の意志や依頼の文は来ません。自分の意志で続けてした動作(家に帰ってすぐ手を洗った)を言うときは、「〜てすぐ」「〜とすぐ」を使うほうが自然です。多くは過去の一回の出来事について使い、「〜たとたんに」とも言います。

接続

Vた+とたん(に)(前は動詞のた形だけ。「Vる/Vている とたん」とは言わない)

形
Vたとたん、〜(ドアを開けたとたん、猫が飛び出してきました)Vたとたんに、〜(急に立ち上がったとたんに、めまいがしました)Nになったとたん、〜(春になったとたん、花粉で目がかゆくなりました)

導入

  • びっくりした瞬間を動作で見せる教師が箱のふたを開けるまねをし、開けた瞬間に大げさに驚いて見せて「ふたを開けたとたん、中から虫が出てきました」と言う。板書は「[動作]たとたん、[思いがけないこと]」。別の動作(電気をつけた・いすに座った)でも何回かやり、後ろがいつも「起きたこと」で、自分で決めてしたことではない点に気づかせる。
  • 「すぐ」と比べる「家に帰ってすぐ、手を洗いました」「家に帰ったとたん、雨が降り出しました」を並べ、前の文を「とたん」に替えると変に聞こえることを確かめる。自分で決めてしたことは「〜てすぐ」、思いがけず起きたことは「〜たとたん」と、二つの列に分けて板書する。

板書案

Vた + とたん(に)、[思いがけないこと]
ドアを 開けた とたん、猫が 飛び出して きました。
〔左の列〕自分で 決めて した → Vて すぐ
〔右の列〕急に 起きた → Vた とたん
×Vる とたん  ×〜とたん、〜ましょう

場面と発話(自作)

  • 雨の日の帰り道のことを、ルームメイトに話す。駅を出たとたん、すごい雨が降ってきたんだよ。
  • 面接の練習のあと、留学生が先生に感想を言う。部屋に入ったとたん、頭の中が真っ白になってしまいました。
  • 職場で、パソコンのトラブルを情報担当の人に報告する。保存のボタンを押したとたん、画面が真っ暗になってしまいました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動作カード(ドアを開けた・電気をつけた・座った・電話に出た)を見せ、学生に「思いがけないこと」を自由に続けさせる。そのあと教師が、後ろに意志の文や自分の続けた動作を入れた文を混ぜて言い、正しいか、変か、「すぐ」に替えたほうがいいかを判断させる。

  1. 口頭教師が動作(ふたを開ける・電気をつける・いすに座る・電話に出る)をして大げさに驚き、全体で「〜たとたん、〜」と言わせる。次に動作カードだけを見せ、学習者に思いがけない結果を自由に続けさせる。最後に、後ろに意志の文や自分で続けた動作を入れた文を教師が読み、全体で「いい」「変」「すぐのほうがいい」と判断させる。
  2. ペア「ジェスチャー当て」。A が動作と驚いた様子を言葉なしで演じ、B が「〜たとたん、〜たんですね」と当てる。3回で交替。次に、二人で文カード(家に帰って手を洗った/家に帰ったら雨が降り出した、など)を読み、「てすぐ」と「たとたん」のどちらにするかを話し合って分ける。
  3. 産出活動「びっくり実況」。びっくりした瞬間の体験を、そのときの状況から3〜4文で話す(帰り道・面接・旅行先など)。聞き手は「それで、どうなったんですか」と一つ質問する。教師は、前がいつも「Vた」か、後ろが話し手の決められない出来事か、自分で続けた動作なら「〜てすぐ」に言い直せるかを見る。

つまずきと手当て

  • 後ろに意志や依頼の文を置く(「*授業が終わったとたん、食堂へ行きましょう」)。これからのことは「終わったら、すぐ食堂へ行きましょう」と直す
  • 自分で決めて続けた動作に使う(「家に帰ったとたん、テレビをつけました」)。文の形は誤りではないが、「思わず・急に」の感じがないと不自然に聞こえるので、「帰ってすぐ」を勧める
  • 前を辞書形やている形にする(「*家を出るとたん、雨が降り出しました」)。前はいつも「Vた」だと、板書の枠で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜てから、…(初級Ⅰ 第11課)「てから」は順番を言うだけの形で、後ろに意志や依頼の文も来ます(家に帰ってから、宿題をします)。「たとたん」は前と後ろの間がほとんどなく、後ろは思いがけず起きたことに限られます。「*家に帰ったとたん、宿題をします」の誤りには「帰ってから」「帰ってすぐ」を勧めます。
  • 〜たら、…(初級Ⅰ 第19課)「ドアを開けたら、猫がいました」は開けて気づいたことを言う文、「ドアを開けたとたん、猫が飛び出してきました」はその瞬間に起きた動きを言う文です。「たら」は「駅に着いたら、電話してください」のようにこれからのことにも使えますが、「たとたん」は使えません。
関連する文型

学習項目 7 〜てしまいました

意味・はたらき学習項目 7

初級で習った形の復習です。この課では「全部終わった」という意味より、「失敗した・取り返しがつかない・残念だ」という気持ちを中心に、事故や失敗の報告の中で使います。同じ出来事でも「お皿を割りました」はただの事実、「お皿を割ってしまいました」は「そうするつもりはなかった、すみません」という気持ちが入り、報告やおわびの言葉になります。親しい相手には「〜ちゃった/〜じゃった」になります。この課の「〜せいで」「〜ばかりに」「〜たとたん」の文は、後ろをこの形で結ぶと自然になることが多いです。

接続

Vて+しまいました(話し言葉:Vちゃった/Vじゃった。忘れちゃった・飲んじゃった)

形
Vてしまいました(電車にかさを忘れてしまいました)〜せいで/〜ばかりに、Vてしまいました(寝坊したせいで、遅刻してしまいました)Vてしまって、すみません/申し訳ありませんVちゃった/Vじゃった(親しい相手に)

導入

  • 同じ報告を二通りで聞く教師が店長役になり、学生役の報告を「お皿を割りました」と「お皿を割ってしまいました。すみません」の二通りで言って、どちらがおわびの気持ちが伝わるかを聞く。初級で習った形だと思い出させてから、「[原因]せいで、[失敗]てしまいました。申し訳ありません」の報告の型を板書する。
  • 「割った」か「割れた」か「コップを割ってしまいました」「コップが割れてしまいました」を並べ、自分が割ったのに「割れて」と言うと、責任をぼかしているように聞こえることがある、と話す。報告では、自分がしたことは「〜を割る・壊す・なくす」の形で言うほうが誠実に聞こえることを、組になる動詞(壊す/壊れる・落とす/落ちる)で確かめる。

板書案

Vて + しまいました(失敗・残念)
〔赤〕[原因]せいで/ばかりに、[失敗]てしまいました。申し訳ありません。
コップを 割って しまいました。(自分が した)
〔青〕コップが 割れて しまいました。(物が主語・責任がぼやける)
目上:〜てしまいました  友達:〜ちゃった/〜じゃった

場面と発話(自作)

  • アルバイト先で、レジのお金が合わないことに気づいた店員が、店長に報告する。すみません、さっきのお客さんに、おつりを多く渡してしまいました。
  • 図書館のカウンターで、借りた本をぬらした学生が係の人に言う。申し訳ありません。雨の日に、本をぬらしてしまいました。
  • 友達に、借りたかさのことをメッセージで送る。ごめん、きのう借りたかさ、電車に忘れちゃった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

失敗カード(かぎをなくした・ドアを壊した・予約を忘れた)を見せ、「〜てしまいました。申し訳ありません」で報告させる。慣れたら原因を「〜せいで/〜ばかりに」で前に足し、最後に「これからは〜ようにします」まで言わせて、報告の型を一通り通す。

  1. 口頭失敗の絵カード(かぎをなくす・ドアを壊す・予約を忘れる・お茶をこぼす・お皿を割る)を辞書形で出し、全体で「〜てしまいました」に変えて言わせる。次に「すみません」「申し訳ありません」をつけて言わせ、最後に組になる動詞(割る/割れる・壊す/壊れる・落とす/落ちる)を並べて、自分がしたときの言い方と物が主語の言い方を言い分けさせる。
  2. ペア「店長への報告」。A は店員、B は店長。A が失敗カードを引いて「〜てしまいました。申し訳ありません」と報告し、B は「どうして〜たんですか」「けがはありませんか」と質問する。A は「〜せいで」「〜ばかりに」で原因を答える。交替したあと、同じ出来事を友達に話す形(〜ちゃった)でも言わせ、相手で言い方が変わることを確かめる。
  3. 産出活動「報告とおわびロールプレイ」(課の目標の活動の準備)。アルバイト先・寮・図書館の状況カードを引き、上司や係の人に、原因→結果→おわび→これからどうするか(〜ようにします)の順で報告する。教師は、自分がしたことを他動詞で言っているか、目上に「〜ちゃいました」が出ていないか、て形の音便を聞き取って直す。

つまずきと手当て

  • て形の作り方を忘れる(「*行きてしまいました」「*読んてしまいました」)。初級のて形の表に戻り、グループⅠの音便(行って・読んで)を確かめる
  • 上司やお客さんへの報告で「〜ちゃいました」を使う。誤りではないがくだけた言い方なので、目上の人には「〜てしまいました」に替えさせる
  • 「宿題を全部してしまいました(もう終わった)」の完了の意味と区別できず、うれしい報告まで後悔の話に聞こえると思って使えなくなる。この課では失敗の報告に絞り、完了の意味は「全部・もう」といっしょに出ることが多いと一言添える

既習の文型との違い

  • 〜てしまいます/〜てしまいました(初級Ⅱ 第27課)初級では「全部終わった(完了)」と「残念だ・失敗した」の二つの意味で習いました。この課では残念・失敗の意味に絞り、報告とおわびの中で使います。完了の意味は「もう・全部」といっしょに出ることが多いと一言添えるだけにして、二つを並べて練習はしません。
  • 自動詞・他動詞(初級Ⅰ 第20課)「お皿を割ってしまいました」は自分がしたことを認める言い方、「お皿が割れてしまいました」は物を主語にした言い方で、自分が割ったのに後者を使うと責任をぼかしているように聞こえることがあります。報告の練習では他動詞と自動詞を必ず組で見せ、場面に合うほうを選ばせます。
関連する文型

語彙の扱い

状況をありのままに説明するには、事故や失敗の場面の語(ぶつかる・ころぶ・けがをする・なくす・落とす・壊す)と、そのときの気持ちや様子を言う語(びっくりする・あわてる・ほっとする・恥ずかしい・にっこり)が要ります。新出語もこの二つのかたまりに分けて扱うと練習しやすくなります。自動詞と他動詞の組(壊す/壊れる・落とす/落ちる・割る/割れる)は、報告の中で責任の言い方が変わるので、必ず組にして「〜を壊してしまいました」「〜が壊れてしまいました」の形で練習します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • ぶつかる(ぶつかる) 動いている人や物が、ほかの人や物に強く当たります。 人と〜・車が〜・柱に〜
    自転車で、角を曲がったとき。
    「角を曲がったとたん、前から来た人とぶつかってしまいました。」
  • 転ぶ(ころぶ) 歩いたり走ったりしているときに、足がすべったりして、たおれます。 道で〜・雪で〜・階段で〜
    雪の朝、駅まで歩いた。
    「道がすべりやすかったせいで、駅の前で転んでしまいました。」
  • 壊す(こわす) 物を使えない状態にします。物が主語のときは「壊れる」と言います。 機械を〜・パソコンを〜・おなかを〜
    アルバイト先で、店の機械を落とした。
    「すみません、店のコーヒーメーカーを壊してしまいました。」
  • 割る(わる) コップやお皿などを、落としたりして、いくつかに分かれた形にします。「割れる」と組で覚えます。 お皿を〜・コップを〜・窓ガラスを〜
    友達の家で、お皿を洗っていた。
    「洗っているときに手がすべって、お皿を割ってしまいました。」
  • なくす(なくす) 持っていた物が、どこにあるか分からなくなります。 かぎを〜・財布を〜・切符を〜
    寮に帰ったが、部屋に入れない。
    「部屋のかぎをなくしたばかりに、一晩友達の部屋に泊まることになりました。」
  • 落とす(おとす) 持っていた物を、手から下へ落ちるようにしてしまいます。気づかないで道などに置いてきてしまうことにも使います。 財布を〜・スマホを〜・書類を〜
    駅の近くの交番で、警察官に話す。
    「駅からここへ来るときに、財布を落としてしまったんです。」
  • 寝坊する(ねぼうする) 起きる予定の時間より、遅く起きます。 朝〜・うっかり〜
    朝の授業に遅れて、先生に理由を言う。
    「目覚まし時計をかけ忘れたせいで、寝坊してしまいました。」
  • 乗り遅れる(のりおくれる) 乗る予定のバスや電車が出たあとに着いて、乗れなくなります。 バスに〜・終電に〜・飛行機に〜
    友達との待ち合わせに遅れそうになり、電話する。
    「すみません、電車に一本乗り遅れてしまって、10分ぐらい遅れます。」
  • あわてる(あわてる) 急なことにびっくりして、落ち着いて考えたり動いたりできなくなります。 〜て家を出る・急に〜
    面接の日の朝、時計を見た。
    「時計を見たとたん、遅刻しそうだと気づいて、すっかりあわててしまいました。」
  • 見つかる(みつかる) 探していた物が出てきます。また、かくしていたことを人に知られてしまうことにも使います。 財布が〜・先生に〜
    授業中のことを友達に話す。
    「スマホを見ているところを、先生に見つかっちゃった。」
  • 謝る(あやまる) 自分のしたことが悪かったと言って、「すみません」「申し訳ありません」と相手に言います。 店長に〜・電話で〜・すぐに〜
    待ち合わせに30分遅れた日の夜。
    「待たせてしまった友達に、もう一度電話で謝りました。」
  • ほっとする(ほっとする) 心配していたことがなくなって、安心します。 〜した顔・聞いて〜
    落とした財布のことで、交番から電話があった。
    「財布が届いていると聞いたとたん、ほっとしました。」

宿題と次のコマ

宿題は、自分が実際に経験した失敗やびっくりしたことを一つ選び、原因・その場面・すぐあと・結果・そのあとどうしたかの順で、200字ほどの報告の文章を書くこと。この課の形を三つ以上使う。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞いた人が「どうして〜たんですか」「それで、どうなったんですか」と質問して復習してから、第18課の「変化を説明する」に入ります。この課の「〜てしまいました」と第18課の「〜くなります」はどちらも結果を言う形なので、「〜てしまって、〜くなりました」と一文でつなぐと自然に移れます。

よくある質問

  • 「〜せいで」と「〜ばかりに」の違いはどう説明すればいいですか?

    どちらも悪い結果の原因を言いますが、「せいで」は原因を指さして「これが悪かった」と責任を向ける言い方、「ばかりに」は「たったそれだけのことで」と話し手が悔やむ言い方です。同じ出来事を二つの形で言い比べ、どちらが後悔に聞こえるかを学習者に判断させると違いがつかめます。接続では、名詞が「Nのせいで」「Nであるばかりに」と分かれる点も板書で確かめます。

  • 「〜ところへ」と「〜ところに」は使い分けを教える必要がありますか?

    多くの文は入れ替えても意味が変わらないので、細かい使い分けは教えなくてかまいません。傾向として、「へ」は後ろが「来る・現れる」のような近づく動き、「に」はそれに加えて「電話が鳴る・雨が降り出す」のような出来事にも使いやすい、とだけ伝えます。学習者が「へ」で言った文を「に」に直すような訂正はしないほうが、言うことへの不安を増やしません。

  • 「〜ところを」が「へ・に」と混ざらないようにするにはどうすればいいですか?

    助詞は前の場面ではなく後ろの動詞で決まることを、矢印の向きで見せます。後ろが「来る・起きる」なら「へ・に」、「見る・見つける・助ける」とその受身なら「を」です。一枚の絵で両方の文を言わせ、最後まで言ってから助詞を選ぶ練習をすると誤りが減ります。

  • 「〜たとたん」と「〜てすぐ」「〜たら」の違いは何ですか?

    「たとたん」は前の動作のすぐあとに、話し手が予想していなかったことが起きたときに使い、後ろに意志や依頼の文は来ません。自分で決めて続けた動作は「〜てすぐ」、あとで気づいたことやこれからのことは「〜たら」で言います。二列の板書(自分で決めた/急に起きた)に文カードを分けて貼らせると、判断の基準が残ります。

  • 第17課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目で導入と「せいで」「ばかりに」「ところへ」「ところに」、2コマ目で「ところを」「たとたん」「てしまいました」、3コマ目で報告のロールプレイとまとめを扱います。似た形が多い課なので、各コマの最初に前のコマの形を2〜3問で言い分けさせてから新しい項目に入ると、混ざりにくくなります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。