日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第30課「犬に手をかまれました」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

この課で受身形(〜れます/られます)が初めて出ます。受身は、ある出来事を「した人」からではなく「された人」の側から言う文で、この課ではされた人が主語になる受身を三つの型に分けて扱います。この教案では、受身(1)を直接の受身(母にしかられる)、受身(2)を持ち主の受身(足を踏まれる)、受身(3)を迷惑の受身(自動詞の受身・子どもに泣かれる)として教えます。三つとも主語は「わたし」になることが多く、違うのは「を」の後ろに何が残るか・自動詞かどうかなので、板書に能動の文と受身の文を上下に並べ、矢印で語の動きを見せながら進めると混乱が少なくなります。物が主語になる受身と「〜によって」は次の第31課なので、この課では人が主語の文に絞ります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞のない形から受身形を作れる(グループⅠ・Ⅱ・Ⅲ、可能形との違いを含めて)
  • 「わたしは〜に…(ら)れました」で、人から何かをされたことを、された側から言える
  • 「わたしは〜に(体・持ち物)を…(ら)れました」で、自分の体や持ち物に何かをされたことを言える
  • 自動詞の受身で、ほかの人や天気のせいで困ったことを言い、困った気持ちを相手に伝えられる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第27課の「〜てしまいました」で、けさ困ったことを2〜3人に聞く。そのあと教師が二人の人の絵(先生と学生)を見せ、「先生は学生をしかりました」を言ってから「学生はどう言いますか」と問いかけ、された人の側から言う新しい形が要ることを予告する
受身形の作り方35分ない形から作る。グループⅠ(ない→れます。買わない→買われます)→グループⅡ(ない→られます)→グループⅢ(されます・こられます)の順に動詞カードで速く言い換え、第22課の可能形(書けます・食べられます)と並べて違いを確かめる
学習項目1 受身(1)直接の受身50分しかる・ほめる・呼ぶ・誘う の絵で、能動の文と受身の文を上下に板書する。「を」の人が主語に、「が」の人が「に」になる動きを矢印で見せる
学習項目2 受身(2)持ち主の受身45分電車で足を踏まれる絵で導入。「わたしの足を」の「わたし」だけが前に出て、「足を」が残ることを板書で見せ、持ち物(かばん・日記・名前)に広げる
学習項目3 受身(3)迷惑の受身50分夜中に赤ちゃんが泣いて寝られなかった絵で導入。自動詞にも受身があり、それは「困った」という気持ちを表すことを、能動の文との比べで見せる
まとめの活動50分「ついていない一日」を4コマの絵で話す活動。ペアで一人がその日にされたことを受身(1)〜(3)を混ぜて話し、もう一人が「それは大変でしたね」と受けて、どの型の受身だったかを最後に二人で確かめる
各コマの始めと終わりの確認30分2コマ目・3コマ目の始めに、動詞カードで受身形を言い換える復習を10分ずつ。最後のコマの終わりに10分の小テスト(受身形を作る5問と、絵を見て受身(1)(2)(3)の文を1つずつ書く問題)をして、宿題の説明をする

学習項目 1 受身形の作り方

意味・はたらき活用

動詞の受身形「〜れます/られます」を作ります。この本ではない形がもう出ているので、受身形はない形から作ると教えると、グループⅠの「わ」もそのまま使えます。グループⅠはない形の「ない」を「れます」に替え(書かない→書かれます・買わない→買われます)、グループⅡは「ない」を「られます」に替え(食べない→食べられます)、グループⅢは「します→されます」「来ます→こられます」です。できた受身形はグループⅡの動詞と同じように形が変わるので、て形・た形・ない形は「ほめられて」「ほめられた」「ほめられない」になります。グループⅡと「来ます」の受身形は第22課の可能形と同じ形になるので、どちらの意味かは文の形(「〜に」があるか・何が主語か)で見分けます。

接続

ない形から作る。Ⅰ: 〜ない→〜れます(書かない→書かれます)/Ⅱ: 〜ない→〜られます/Ⅲ: します→されます、来ます→こられます(受身形はグループⅡと同じように活用する)

形
Ⅰ 書きます→書かれます/呼びます→呼ばれます/踏みます→踏まれます/取ります→取られますⅠ 買います→買われます/言います→言われます(ない形の「わ」のまま)Ⅱ 食べます→食べられます/見ます→見られます/ほめます→ほめられますⅢ します→されます(注意します→注意されます)/来ます→こられます

導入

  • ない形から一段ずつ言う動詞カード(ます形)を見せ、学生にまずない形を言わせてから、教師が「ない」を手で隠して「れます」と言う(書きます→書かない→書かれます)。グループⅡでは同じように「ない」を隠して「られます」を付ける。二段で言わせると、第12課で覚えたない形の作り方をそのまま使えるので、グループⅠの「〜います」の動詞(買います・言います)も「わ」を間違えにくくなる。
  • 可能形と並べて見分ける黒板に「可能形」と「受身形」の2列を作り、グループⅠの「書けます/書かれます」「読めます/読まれます」を並べて、形が違うことを見せる。次にグループⅡの「食べられます/食べられます」と「来ます」の「こられます/こられます」を並べ、ここは同じ形になると赤で書く。どちらの意味かは文の中で決まることを、「すしが食べられます」と「弟にケーキを食べられました」の2文で一言だけ見せておく。

板書案

受身形 = ない形 + れます/られます
Ⅰ 書かない → 書か〔赤〕れます  買わない → 買わ〔赤〕れます
Ⅱ 食べない → 食べ〔赤〕られます  見ない → 見〔赤〕られます
Ⅲ します → されます  来ます → こられます
〔青〕可能形 書けます/食べられます ⇔ 〔赤〕受身形 書かれます/食べられます(Ⅱと「来ます」は同じ形なので丸で囲む)

場面と発話(自作)

  • 教師が動詞カードの「呼びます」を見せ、学生がない形を通して受身形を言う(形の練習)。呼びます——呼ばない——呼ばれます。
  • 学生が「言います」の受身形を「いあれます」と言ったので、教師がない形からもう一度言わせる。言います——言わない——言われます。
  • 教師が「注意します」と「来ます」のカードを続けて出し、グループⅢを確かめる。注意します——注意されます。来ます——こられます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、教師が動詞カード(ます形)をグループを混ぜて1枚ずつ見せ、受身形をすぐ言わせる。慣れたら「受身形のた形」(ほめられた・踏まれた)や「受身形のて形」(呼ばれて)まで一息で言わせる。最後に可能形のカードと受身形のカードを混ぜて出し、教師が言った形が可能形か受身形かを手を挙げて答えさせる。

  1. 口頭動詞カード(ます形)を1枚ずつ見せ、全体で「ない形→受身形」の二段で言わせる(呼びます→呼ばない→呼ばれます/踏みます→踏まない→踏まれます/ほめます→ほめない→ほめられます/注意します→注意されます/来ます→こられます)。全体で言えたら個人に当て、次はない形を言わずに受身形だけを言わせる。最後に教師が受身形を言い、学生がもとのます形に戻す逆の練習も入れる。
  2. ペア表にます形、裏に受身形を書いたカードを10枚ずつ配る。Aがカードの表を見せ、Bが受身形を言い、Aが裏を見て合っているかを言う。10枚で交替する。慣れたら、Aが可能形か受身形かを指定して(「可能で」「受身で」)Bに言わせ、グループⅠで形が分かれることを二人で確かめさせる。
  3. 産出「受身形リレー」。4〜5人で輪になり、一人目が動詞のます形を一つ言う。次の人がその受身形を言ってから、別の動詞のます形を出して次へ回す。グループⅠ・Ⅱ・Ⅲが一回ずつ出たら一周、と決めておく。教師は、グループⅠの「わ」(買われます・言われます)、グループⅠに「られます」を付けていないか、「来ます」を「きられます」と言っていないかを聞いて、その場で直す。

つまずきと手当て

  • 「*書られます」「*読みられます」と、グループⅠにも「られます」を付ける。グループⅠは「ない」を「れます」に替えるだけ、と板書の2段(書かない→書かれます)に戻り、「〜られます」はグループⅡの列だけに書いておく
  • 「*買あれます」「*言いられます」と、「〜います」で終わる動詞で「わ」が出ない。ない形(買わない・言わない)を必ず先に言わせ、「わ」をそのまま残すと確かめる
  • 受身形の「書かれます」と可能形の「書けます」を混ぜて覚える。2列の表を毎回の練習の最初に見せ、グループⅠは形が違う、グループⅡと「来ます」は同じ形、の二つだけを覚えさせる
  • 受身形を作ったあと、て形やた形で「*ほめられって」「*呼ばれりた」のように崩す。受身形はグループⅡの動詞と同じ変わり方だと伝え、「食べられます→食べられて→食べられた」と同じ調子で言わせる

既習の文型との違い

  • 可能表現(1)(第22課)グループⅠでは、可能形は「書けます」(え段)、受身形は「書かれます」(あ段)で形が違います。グループⅡと「来ます」はどちらも「食べられます」「こられます」で同じ形になるので、意味は文の形(「〜に」があるか、何が主語か)で決まります。受身を習ったあとに、可能の意味で「書かれます」と言ったり、受身の意味で「書けます」と言ったりする言い間違いが出るので、2列の表で並べて確かめます。
  • 命令表現と禁止表現(第25課)グループⅠの命令形「書け」は、可能形と同じえ段から作ります。受身形はない形のあ段から作るので、第22課・第25課・第30課でグループⅠの形が「え段」「あ段」の二つに分かれます。どの形がどの段から作るかを表にしておくと、「*書けれます」のような混ざった形を防げます。
関連する文型

学習項目 2 〜れます/られます 受身(1)

意味・はたらき学習項目 1

この教案では受身(1)を直接の受身として扱います。「母が子どもをしかりました」のように、ある人がほかの人に何かをした出来事を、された人の側から「子どもは母にしかられました」と言う文です。能動の文で「を」(動詞によっては「に」)が付いていた人が主語になり、「が」が付いていた人(した人)には「に」を付けます。ほめる・しかる・呼ぶ・頼む・誘う・招待する・注意する など、人が人に向けてする動作の動詞でよく使い、うれしいこともいやなことも言えます。日本語では、自分にかかわる出来事は「わたし」を主語にして話すことが多いので、「母がわたしをしかりました」より「(わたしは)母にしかられました」のほうが自然に聞こえる傾向があります。

接続

(わたしは)[した人]に+受身形(しかられます・呼ばれます・誘われます)。能動の「Aが Bを V」→ 受身の「Bは Aに V(ら)れる」

形
(わたしは)Nに Vれます/Vられます部長に呼ばれました友達に食事に誘われました係の人に注意されました

導入

  • 能動の文と受身の文を上下に並べる母親が子どもをしかっている絵を貼り、まず能動の文「母は子どもをしかりました」を板書する。その下に、子どもの顔を指さしながら「子どもは母にしかられました」と書き、「子どもを→子どもは」「母は→母に」を矢印で結ぶ。同じ絵のまま「どちらの人の話ですか」と聞き、上の文は母の話、下の文は子どもの話だと確かめる。
  • 学生自身の経験を聞く誘う・呼ぶ・頼む・ほめる の絵カードを見せ、教師が自分のことを「きのう、友達に食事に誘われました」「けさ、校長に呼ばれました」と話す。次に学生に「最近、だれに何を頼まれましたか」「子どものとき、よくだれにしかられましたか」と聞き、答えを受身の文の形で板書に足していく。

板書案

能動 母 が 子ども を しかりました。
受身 子ども は 母 に しかられました。
〔青〕矢印 子どもを → 子どもは  母が → 母に
(わたしは)[した人]〔赤〕に + Vれます/Vられます
〔赤〕受身の文には「を」の人がいない

場面と発話(自作)

  • 会社で、席に戻った社員が、同僚に「どこへ行っていたの」と聞かれて答える。部長に呼ばれて、部長の部屋へ行っていました。
  • 月曜日の朝、留学生がクラスメートに、週末のうれしかったことを話す。土曜日、アルバイトの店の人に食事に誘われました。
  • 図書館から戻ってきた学生が、友達に、なぜ元気がないのかを話す。図書館で大きい声で話して、係の人に注意されてしまいました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、した人とされた人の絵カード(先生と学生・母と子ども・部長と社員)と動詞カードを組み合わせて見せ、まず能動の文、次に「〜は〜に〜(ら)れました」と言い換えさせる。慣れたら能動の文を言わずにすぐ受身の文を言わせる。場面のやり取りでは、「きのう、だれに何をされましたか」「〜に〜(ら)れました」「そうですか。よかったですね/それは大変でしたね」をペアで回し、うれしい話といやな話の両方を出させる。

  1. 口頭した人とされた人の絵カード(母と子ども・部長と社員・友達とわたし・先生と学生)を見せ、教師が能動の文を言い(母が子どもをしかりました/部長が社員を呼びました/友達がわたしを食事に誘いました)、学生が全体で受身の文に言い換える。全体のあとは個人に当てる。慣れたら教師は「部長・呼ぶ」のように語を二つだけ言い、学生が「(わたしは)部長に呼ばれました」と一文で言う。
  2. ペアAには能動の文が書いてあるカード、Bには同じ場面の絵だけのカードを渡す。Aがカードの文を読み、Bは絵の中のされた人を指さしながら、その人の側から受身の文で言い直す。Aはカードの文と比べて、「に」と「は」が合っているかを言う。5枚で交替する。
  3. 産出「うれしかった・困った報告会」。学生は最近だれかにされたことを、うれしかったこと1つと困ったこと1つ考えて受身(1)で言えるようにし、3人のグループで話す。聞く人は「よかったですね」「それは大変でしたね」で受けて、「どこで」「いつ」を一つ聞く。教師は、した人に「に」が付いているか、主語の人に「を」が残っていないか、「わたしは」を毎回言いすぎていないかを見て、終わりに全体で2〜3例を直す。

つまずきと手当て

  • 「*わたしは母をしかられました」と、主語になった人にも「を」を残す。能動の文の「わたしを」が受身では「わたしは」に変わると矢印の板書に戻り、受身(1)の文には「を」の人がいないことを確かめる
  • 「*母でしかられました」と、した人に「で」を付けたり、「母がしかられました」と「が」のまま言ったりする。した人には「に」と決めて、板書の「母に」の「に」に色を付ける。「母がしかられました」は文としては正しいが、母がしかられた意味になると絵で見せる
  • 「先輩に教えてもらいました」と「先輩に注意されました」の違いが分からない。「〜てもらいます」はありがたい気持ち、受身はされたことをそのまま言う形で、いやなことにもよく使う、と第14課の文と並べて見せる
  • 「わたしは」を毎回言って文が重くなる。された人が自分なら「わたしは」は言わないことが多いと伝え、話の中では省いて練習する

既習の文型との違い

  • 〜は…に―を〜てもらいました(第14課)どちらも「〜に」の人が動作をした人ですが、「〜てもらいました」はしてもらってありがたい気持ちを表し、受身はされたことをそのまま言う形で、困ったことにもよく使います。学習者が先生に作文を見てもらったことを「先生に作文を直されました」と言うと、文は正しくても、いやだったように聞こえることがあります。お礼の気持ちがあるときは「〜てもらいました」を選ぶと伝えます。
  • 〜は…に―をあげました(第14課)「わたしは友達に本をあげました」の「友達に」は物を受け取る人ですが、「わたしは友達に誘われました」の「友達に」は誘った人、つまり動作をした人です。同じ「に」で向きが逆になるので、学習者は受身の文で、だれがだれを誘ったのかを取り違えることがあります。矢印を描いて、受身の「に」は動作が出てくるほうだと確かめます。
関連する文型

学習項目 3 〜れます/られます 受身(2)

意味・はたらき学習項目 2

この教案では受身(2)を持ち主の受身として扱います。ほかの人が自分の体の一部や持ち物に何かをしたとき、体や持ち物ではなく持ち主(わたし)を主語にして「わたしは電車で足を踏まれました」と言う文です。能動の文「隣の人がわたしの足を踏みました」の「わたしの」が前に出て主語になり、「足を」はそのまま「を」で残ります。した人には受身(1)と同じく「に」を付けます。この形は、持ち主が困った・いやだったと感じたときに使うことが多く、話し手の気持ちが伝わります(「お客さんに料理をほめられました」のようにうれしいことにも使えます)。

接続

(わたしは)[した人]に+[体・持ち物]を+受身形(足を踏まれます・かばんを開けられます)

形
(わたしは)N1に N2を Vれます/Vられます電車で足を踏まれました弟に日記を読まれましたお客さんに料理をほめられました

導入

  • 混んだ電車の絵で「を」が残るのを見せる混んだ電車の中で、隣の人が学生の足を踏んでいる絵を貼る。まず「隣の人がわたしの足を踏みました」と能動の文を板書し、その下に「わたしは隣の人に足を踏まれました」と書く。「わたしの」が前に出て「わたしは」になり、「足を」は動かないことを、足のところを四角で囲んで見せる。顔をしかめて言い、いやな気持ちが入る文だと伝える。
  • 持ち物に広げるかばん・日記・ケーキ・自転車の絵カードを出し、教師が「きのう、弟にケーキを食べられました」「だれかに自転車を使われました」と話す。学生に「〜さんは、だれかに何をされて困ったことがありますか」と聞き、体の一部(足・頭)と持ち物の両方の答えを集めて板書の枠「わたしは [人]に [物]を 〜れました」に入れていく。

板書案

能動 隣の人 が 〔青〕わたしの 足 を 踏みました。
受身 〔青〕わたし は 隣の人 に 足 を 踏まれました。
〔赤〕「足を」を四角で囲む(動かない)
(わたしは)[した人]に [体・持ち物]を + Vれます/Vられます
△ わたしの足が踏まれました(不自然) → 〇(わたしは)足を踏まれました

場面と発話(自作)

  • 朝、会社に着いた社員が、同僚に満員電車のことを話す。けさ、電車で隣の人に足を踏まれて、痛かったです。
  • 寮で、留学生が友達に、ルームメートのことを少し怒って話す。ルームメートに、わたしのパンを食べられてしまいました。
  • 新しいアルバイト先で、名前のことで困った留学生が、先輩に話す。店長に、いつも名前を間違えられて、困っています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、した人の絵カードと体・持ち物の絵カードを重ねて見せ、「〜に〜を〜(ら)れました」を言わせる。最初は能動の文「〜が わたしの〜を〜ました」を言ってから言い換え、慣れたらすぐ受身で言わせる。場面のやり取りでは、「どうしましたか」「〜に〜を〜(ら)れました」「それは困りましたね」の型で、困ったことを報告し合う。

  1. 口頭人と物を組み合わせた絵カードを見せる(弟と日記・子どもとめがね・隣の人と足・だれかと自転車・店長と名前)。教師が能動の文を言い(弟がわたしの日記を読みました/だれかがわたしの自転車を使いました)、学生が全体で「(わたしは)弟に日記を読まれました」と言い換える。次は教師が「店長・名前・間違える」と語を三つだけ言い、個人で受身の文を言わせる。
  2. ペアAは困った出来事の絵カードを1枚引き、Bには見せない。Bが「どうしましたか」と聞き、Aがカードの出来事を「〜に〜を〜(ら)れました」で答え、Bは「それは困りましたね」と受ける。Aが「を」の物を言い落としたら、Bは「何を?」と聞き返す役にする。4枚で交替する。
  3. 産出「寮のトラブル相談ロールプレイ」。留学生役が寮の係の人(または先輩)に、ルームメートや隣の部屋の人に持ち物を使われた・食べられたなどの困ったことを相談し、係の人役は「いつですか」「何をですか」と聞いて、どうすればいいかを答える。役のカードには出来事の絵だけを描き、文は学生が作る。教師は、持ち主が主語になっているか、「〜を」が残っているか、した人に「に」が付いているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「わたしの足が踏まれました」と、体の一部を主語にする。不自然に聞こえることが多いので、日本語では持ち主を主語にして「足を」を残すと板書の四角に戻って確かめる(物が主語の受身は第31課で扱う)
  • 「隣の人がわたしの足を踏まれました」と、能動の文の「が」を残したまま動詞だけ受身にする。これでは「された」意味にならず、第36課で習う尊敬の言い方のように聞こえてしまう。した人は「に」、主語は「わたし」と、二つの文の矢印を一つずつたどらせる
  • 受身(1)と混ぜて「わたしは弟に読まれました」と、何をされたか(日記を)を落とし、自分が読まれたような意味の通じない文にする。持ち主の受身では「〜を」が必ず残ると伝え、「何を?」と聞き返して補わせる

既習の文型との違い

  • 〜れます/られます 受身(1)(この課)受身(1)は人そのものがされた文で、「を」の語は残りません。受身(2)は体の一部や持ち物がされた文で、持ち主が主語になり、「足を」「日記を」がそのまま残ります。学習者は「弟に日記を読まれました」の「日記を」を落として「わたしは弟に読まれました」と言いがちなので、何がされたのかを毎回聞いて確かめます。
  • 〜てしまいます/〜てしまいました(第27課)「ケーキを食べてしまいました」は自分がしたことを残念に思う文で、「弟にケーキを食べられてしまいました」はほかの人が自分の物にしたことで自分が困った文です。学習者は困った話をするとき「弟がわたしのケーキを食べてしまいました」と言いがちで、文は正しくても、話し手が困ったことがはっきり出ません。二つを組み合わせた「〜(ら)れてしまいました」を、この課の言い方として練習させます。
関連する文型

学習項目 4 〜れます/られます 受身(3)

意味・はたらき学習項目 3

この教案では受身(3)を迷惑の受身(自動詞の受身)として扱います。泣く・来る・帰る・休む・座る・降る のような「を」を取らない動詞(自動詞)でも受身形が作れ、その場合はほかの人や天気のせいで、自分が困ったという気持ちを表します。能動の文「赤ちゃんが泣きました」には「わたし」が出てきませんが、受身の文「(わたしは)赤ちゃんに泣かれました」にすると、そのせいで自分が困ったことになります。泣いた人・来た人(天気なら「雨」)には「に」を付けます。「雨に降られる」はこの形のよく使われる言い方です。困った気持ちを表す形なので、うれしいことには使いません。なお、「夜遅くまでピアノを弾かれる」のように「を」を取る動詞でも同じような迷惑の受身が作れますが、この課では自動詞の文に絞ります。

接続

(わたしは)[人・天気]に+自動詞の受身形(泣かれます・来られます・休まれます)。あとに「〜て、困りました」「〜て、…できませんでした」を続けることが多い

形
(わたしは)Nに V(自動詞)れます/られます赤ちゃんに泣かれて、寝られませんでした同僚に急に休まれました(雨に)降られて、ぬれてしまいました

導入

  • 能動の文に「わたし」がいないことから入る夜中に隣の部屋の赤ちゃんが泣いていて、学生が眠れずに困っている絵を貼る。まず「赤ちゃんが泣きました」と板書し、「この文に、困っている人はいますか」と聞く。いないことを確かめてから、下に「(わたしは)赤ちゃんに泣かれました」と書き、困った顔のマークを付けて、この受身は「困った人」を文に入れる言い方だと見せる。
  • 「〜て、困りました」で続きを言わせる同僚が休んだ・前に背の高い人が座った・帰りに雨が降った の3枚の絵を順に見せ、教師が「同僚に急に休まれて、一人で働かなければなりませんでした」のように、受身のあとに困った結果を続けて話す。学生にも絵を1枚選ばせて「〜に〜(ら)れて、〜」と結果まで言わせると、この受身が困った気持ちを表すことが自然に伝わる。

板書案

能動 赤ちゃん が 泣きました。 (困った人は? → いない)
受身 (わたしは)赤ちゃん 〔赤〕に 泣かれました。〔赤〕困った顔のマーク
[人・天気]に + 自動詞の受身形 + 〜て、…(困ったこと)
〔青〕泣く・休む・来る・帰る・座る・降る(「を」がない動詞)
〔赤〕うれしいとき → 〜が〜てくれました

場面と発話(自作)

  • 朝、眠そうな留学生が、クラスメートに理由を話す。ゆうべ、隣の部屋の赤ちゃんに泣かれて、ぜんぜん寝られませんでした。
  • アルバイトの帰りに、留学生が友達に、きょうの仕事が大変だったことを話す。きょうは同僚に急に休まれて、一人で働かなければなりませんでした。
  • 映画を見たあと、友達に感想を聞かれた会社員が答える。背の高い人に前に座られて、よく見えませんでした。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、自動詞の絵カード(泣く・来る・休む・座る・帰る・降る)と人の絵カードを見せて「〜に〜(ら)れました」を言わせ、次に結果のカード(寝られない・見えない・一人で働く)を足して「〜に〜(ら)れて、〜」と一文で言わせる。場面のやり取りでは、「ゆうべ、どうでしたか」「〜に〜(ら)れて、〜ました」「それは大変でしたね」の型で、困ったことを話し合う。

  1. 口頭人や天気と自動詞の絵カードを見せる(雨・降る/同僚・休む/子ども・泣く/背の高い人・前に座る/お客さん・閉店の前に来る)。教師が能動の文を言い(同僚が急に休みました/子どもが泣きました)、学生が全体で「同僚に急に休まれました」「子どもに泣かれました」と言い換える。次に結果のカード(ぬれた・一人で働いた・寝られなかった)を足し、個人に「雨に降られて、ぬれてしまいました」のように一文で言わせる。
  2. ペア「理由あてクイズ」。Aは結果だけを言う(「きのう、ぜんぜん寝られませんでした」)。Bは理由を受身で想像して聞く(「赤ちゃんに泣かれましたか」「隣の人に夜遅く来られましたか」)。Aは「はい」か「いいえ」で答え、最後に本当の理由を受身で言う。3問で交替する。
  3. 産出「困った日の1分スピーチ」。学生は、ほかの人や天気のせいで困った日のことを、自動詞の受身を1つ以上使って1分で話す(いつ・何をされたか・そのあとどうなったか)。聞く人は一つ質問をする。教師は、した人(物)に「が」が残っていないか、結果の文が続いているか、うれしいことに使っていないかを聞き、うれしい話になった学生には「〜てくれました」で言い直させる。

つまずきと手当て

  • 「*赤ちゃんが泣かれました」「*雨が降られました」と、した人(物)を「が」のまま受身にする。困った人が主語、した人は「に」と、能動の文と受身の文を上下に並べて確かめる
  • うれしいことに使って「友達に来られて、うれしかったです」と言う。文の形は正しくても、自動詞の受身は困った気持ちを表すので、話し手が困ったように聞こえてしまう。うれしいときは「友達が来てくれて」と第14課の「〜てくれました」を使うと伝える
  • 「友達に来られました」(受身)と「友達はあした来られますか」(可能)を混同する。「〜に」がある・困った話のときは受身、「〜は/が」で「できるか」を聞くときは可能、と文の形で見分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜が…を〜てくれました(第14課)「友達が来てくれました」は来てもらってうれしい気持ち、「友達に来られました」は来たせいで困った気持ちを表します。学習者は自動詞の受身を習うと、うれしい話にも「友達に来られて、うれしかったです」と使うことがありますが、話し手が困ったように聞こえます。うれしいかどうかで「〜てくれました」と受身を選ぶことを、同じ絵で二つの文を言わせて確かめます。
  • 自動詞・他動詞(第20課)受身(1)(2)は「しかる」「踏む」のような「を」を取る動詞でしたが、受身(3)は「泣く」「降る」のような自動詞でも受身形が作れます。学習者の母語によっては自動詞を受身にできないので、「*雨が降られました」のように「が」を残したり、受身を避けて「雨が降りました。困りました」と二文に分けたりします。困った人を主語にして一文で言える、ということを見せます。
  • 可能表現(1)(第22課)「来ます」の受身形と可能形はどちらも「こられます」です。「友達に夜遅く来られました」は「〜に」があって困った話なので受身、「あした来られますか」は来ることができるかを聞く可能です。文の形で見分けることを、二つの文を並べて確かめます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の練習で使う語は、受身でよく使う動詞(ほめる・しかる・呼ぶ・誘う・踏む・かむ・注意する など)と、困った出来事の場面(満員電車・寮・アルバイト先)の言葉にしぼります。動詞はます形のカードで入れ、裏にない形と受身形を書いておくと、作り方の練習と語彙の確認が一度にできます。人が人にする動作の動詞(受身(1)向き)と、泣く・休む・降る のような自動詞(受身(3)向き)はカードの色を分けておくと、どの型の受身になるかを選ばせる練習に使えます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • ほめます(ほめます) 人のしたことや作った物を、いいと言います。 子どもを〜・作文を〜・お客さんに〜られる
    アルバイトの帰りに、留学生が友達に話す。
    「きょう、店のお客さんに、日本語が上手だとほめられました。」
  • しかります(しかります) 悪いことをした人に、強い声でだめだと言います。 子どもを〜・強く〜・母に〜られる
    子どものころの話をする。
    「小さいとき、よく母にしかられました。」
  • 呼びます(よびます) 名前を言ったり声をかけたりして、人を来させます。 名前を〜・部長に〜ばれる・タクシーを〜
    会社で、同僚にどこへ行くのか聞かれる。
    「部長に呼ばれたので、ちょっと部長の部屋へ行ってきます。」
  • 誘います(さそいます) 「いっしょに〜ませんか」と人に言って、いっしょに何かをしようとします。 食事に〜・映画に〜・友達に〜われる
    月曜日に、週末のことを話す。
    「土曜日、クラスの友達に花見に誘われました。」
  • 頼みます(たのみます) 自分のために何かをしてほしいと、人に言います。 仕事を〜・買い物を〜・先輩に〜まれる
    アルバイトの帰りが遅くなった理由を話す。
    「店長に片づけを頼まれて、帰るのが遅くなりました。」
  • 注意します(ちゅういします) まちがったことや危ないことをしないように、人に言います。 学生を〜・係の人に〜される・車に〜する
    図書館から戻った学生が話す。
    「図書館で電話をして、係の人に注意されました。」
  • 踏みます(ふみます) 足で物や人の足の上に乗ります。 足を〜・ブレーキを〜・隣の人に〜まれる
    混んだバスを降りた会社員が話す。
    「バスの中で後ろの人に足を踏まれて、痛かったです。」
  • かみます(かみます) 歯で物を強くはさみます。 ガムを〜・よく〜んで食べる・かたい肉を〜
    食事のとき、親が子どもに言う。
    「ごはんは、よくかんで食べてね。」
  • 間違えます(まちがえます) 正しいものとちがうものを選んだり言ったりします。 名前を〜・道を〜・漢字を〜
    新しいクラスで、留学生が先生に話す。
    「わたしの名前は読み方が難しいので、よく間違えられます。」
  • 泣きます(なきます) 悲しいときや痛いときなどに、声を出したり涙を出したりします。 赤ちゃんが〜・大きい声で〜・子どもに〜かれる
    電車の中で困ったことを話す。
    「電車で隣の子どもに泣かれて、本が読めませんでした。」
  • 降ります(雨が)(ふります) 雨や雪が空から落ちてきます。 雨が〜・雪が〜・雨に〜られる
    ぬれて教室に入ってきた学生が話す。
    「駅から学校まで歩いているときに雨に降られて、くつがぬれてしまいました。」
  • 休みます(やすみます) 仕事や学校に行かないで、家にいます。 学校を〜・急に〜・同僚に〜まれる
    仕事のあと、疲れた顔で話す。
    「きょうは同僚に急に休まれて、とても忙しかったです。」

宿題と次のコマ

宿題は、①動詞15個(グループを混ぜる)の受身形を書くこと、②自分が最近人にされたことを受身(1)(2)(3)で1文ずつ書くこと(うれしいことでもいやなことでもよいが、(3)は困ったことで)、③可能形と受身形が同じ形になる動詞を3つ書いて、それぞれの意味の文を1つずつ作ること。次のコマの最初に宿題の文をペアで読み合い、「それは大変でしたね」と受ける練習をしてから、「わたしの財布」のように物が主語になる文を見せて、第31課の受身(4)(5)に入ります。

よくある質問

  • 第30課の受身はどの順で教えればいいですか?

    先に受身形の作り方をない形から練習し、形がすぐ言えるようになってから、受身(1)直接の受身→(2)持ち主の受身→(3)迷惑の受身の順に入ります。(1)で「を」の人が主語になり、した人に「に」が付く動きを矢印で見せておくと、(2)は「を」が一つ残る形、(3)は「を」がない動詞でもできる形として、(1)との違いだけを足していけます。物が主語の受身は第31課なので、この課では人が主語の文に絞ります。

  • 受身形と可能形が同じ形になるのはどう教えればいいですか?

    グループⅡと「来ます」は、受身形と可能形が「食べられます」「こられます」で同じ形になります。可能形と受身形の2列の表を作り、グループⅠは形が違う、グループⅡと「来ます」は同じ、の二つだけを覚えさせます。意味は文の形で決まり、「〜に」があってされた側が主語なら受身、「〜が」で何ができるかを言うなら可能だと、短い2文を並べて見せます。

  • 「足を踏まれました」を「わたしの足が踏まれました」と言うのはなぜ不自然なのですか?

    日本語では、体の一部や持ち物に何かされたとき、それを主語にするより、持ち主を主語にして「〜を」を残すほうが自然に聞こえます。持ち主が困った・いやだったという気持ちも、持ち主が主語のほうがよく伝わります。物が主語の受身は第31課で出てくるので、この課では「(わたしは)〜に〜を〜(ら)れました」の形に慣れさせ、「わたしの足が」と言った学生には板書の四角に戻って言い直させます。

  • 「雨に降られる」のような迷惑の受身は、初級でどこまで教えればいいですか?

    この課では、泣く・休む・来る・座る・降る のような身近な自動詞で、困った出来事を一文で言えれば十分です。困った気持ちを表す形だと分かるように、「〜に〜(ら)れて、〜」と結果の文を続けて言わせます。「を」を取る動詞の迷惑の受身(夜遅くまでピアノを弾かれる)は無理に広げず、出てきたときに同じ仲間だと伝える程度でよいでしょう。

  • 第30課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目で受身形の作り方と受身(1)、2コマ目で受身(2)と(3)、3コマ目で3つの型を混ぜたまとめの活動と小テストをします。受身形の作り方が定着していないと後が止まるので、クラスの様子によっては1コマ目を形の練習だけにして、4コマに延ばしてもかまいません。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。