「こと」を使った三つの言い方を学ぶ課です。ときどき起きることを言う「〜ことがあります」、自分で決めたことを言う「〜ことにします」、自分以外が決めたこと・事情でそうなったことを言う「〜ことになります」で、あわせて聞いた内容や決まったことをひとまとめにして伝える「〜ということ」も入ります。三つとも新しい活用形はなく、前は辞書形かナイ形、変わるのは後ろの「ある・する・なる」だけなので、板書は「[V る/V ない]こと+(が あります/に します/に なります)」の一つの枠にして、後ろだけを差し替えていくと違いが目で見えます。教えるときの芯は二つで、一つは第16課の経験の「〜たことがあります」と前の形(タ形か辞書形か)で意味が変わること、もう一つは「する=話し手が自分で決める」「なる=話し手の外で決まる・成り行きでそうなる」という区別を、第20課の「〜くします/〜にします」と「〜くなります」の感覚につないで見せることです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第16課の「〜たことがありますか」で2〜3人に経験を聞き、第15課の「〜ことができます」も一つ聞く。黒板に「[V た]ことが あります」「[V る]ことが できます」を並べ、「きょうは『こと』の後ろが変わる言い方を三つ」と予告する |
| 学習項目1 〜ことがあります | 30分 | 教師の生活の話で導入。「いつも・よく・ときどき・たまに・ぜんぜん」の線を引き、「〜ことがあります」がどのあたりかを示す。第16課の「〜たことがあります」と上下2段で板書し、前の形の違いを赤で示す |
| 学習項目2 〜ことにします | 30分 | 教師が迷って決めるまねで導入。第12課の「[N]に します」(物を選ぶ)の下に「[V る/V ない]ことに します」(動作を決める)を書き、理由の「〜ので」をつけて「〜ことにしました」まで言わせる |
| 学習項目2(続き) 〜ということ | 25分 | お知らせの紙を使って、聞いた内容を「〜ということを 知っていますか/伝えてください」でまとめる。前は普通形、名詞・な形容詞は「だ」を入れると板書し、伝言ゲームで回す |
| 学習項目3 〜ことになります/〜ことになりました | 45分 | 「わたし」から出る矢印と「会社・学校」から出る矢印を黒板の左右に描き、左に「ことにしました」、右に「ことになりました」を書いて対にする。転勤・引っ越しのお知らせのあいさつで練習し、規則の「〜ことになっています」を少しだけ足す |
| まとめの活動 | 40分 | 「最近のわたしのニュース」の発表。自分で決めたこと(〜ことにしました)と決まったこと(〜ことになりました)を一つずつ言い、聞いた人は「ときどき〜ことがありますか」で一つ質問する。最後に、ペアの相手から聞いた内容を「〜さんが〜ということを聞きました」とクラスに報告する |
動詞の辞書形に「ことがあります」をつけて、いつもではないけれど、ときどきそういうことが起きる・そうすることがある、と言います。第16課の「〜たことがあります」は今までに一度でもしたかという経験で、この課の「〜ことがあります」は今の生活の中でときどき起きることです。前の形が辞書形かタ形かだけで意味が大きく変わるので、ここが課の最初の要点です。ナイ形につけた「〜ないことがあります」は、ふだんはするのに、しない日もある、という意味です。「ときどき」「たまに」とよくいっしょに使い、「いつも」「毎日」のように例外のないことには使いません。
動詞の辞書形/ナイ形+ことがあります(「寒いことがあります」「暇なことがあります」のように形容詞にもつくが、この課は動詞を中心にする。辞書形とナイ形の作り方はグループⅠ・Ⅱ・Ⅲとも第15課・第12課のとおり)
口頭の代入練習では、「ときどき」のカードと動作の絵カードを重ねて見せて「〜ことがあります」と言わせ、×のついたカードが出たら「〜ないことがあります」に替えさせる。途中に経験の絵カード(富士山・着物)を混ぜ、「1回」のカードなら「〜たことがあります」、「ときどき」のカードなら「〜ことがあります」と前の形を選ばせる。場面のやり取りでは、生活のアンケート表(料理をする・タクシーに乗る・夜遅く寝る・朝ご飯を食べない)をペアで聞き合い、「はい、ときどきあります」「いいえ、ありません」と答えさせる。
「〜ことにします」は、話し手が自分で考えて、これからすることを決める言い方です。「〜ことにします」はその場で決めるとき、「〜ことにしました」はもう決めたことを人に伝えるときに多く使います。第12課の「Nにします」は物を選ぶ(カレーライスにします)言い方で、動作を決めるときは「こと」を入れて動詞をつなぎます。第23課の「〜つもりです」は前から持っている考えを言い、「〜ことにしました」は「決めた」という点に目が向きます。決めたのが自分ではなく会社・学校などのときは学習項目3の「〜ことになりました」になり、この区別がこの課でいちばん大切です(なお、自分で決めて続けている習慣を言う「〜ことにしています」もありますが、ここでは触れる程度にします)。「〜ということ」は、文の内容をひとまとめにして「そのこと」として扱う形で、「知っています・知らせます・伝えます・聞きました・忘れました」などの前に置いて、聞いた話や決まったことの中身を伝えるときに使います。
動詞の辞書形/ナイ形+ことにします/ことにしました。「ということ」は普通形+ということ(名詞・な形容詞は「だ」を入れて「休みだということ」「静かだということ」。話し言葉では「だ」を落とすこともある。前をマス形にしない)
口頭の代入練習では、状況のカード(雨が降るそうです・来週テストがあります・お金がありません・医者にたばこをやめたほうがいいと言われました)を見せ、学生に決めた行動を選ばせて「〜ので、〜ことにしました」と一文で言わせる。「〜ということ」は、教師がお知らせのカード(あしたは休みです・バスの時間が変わりました・会議は3時からです)を一人に見せ、その学生が隣の人に「〜ということを知っていますか」と聞いて回す伝言ゲームにする。場面のやり取りでは、ペアで週末の予定を話し合い、条件(天気・お金・宿題)を聞いてから「じゃ、〜ことにします」で決めさせる。
話し手が自分で決めたのではなく、会社・学校・家族などほかの人が決めたこと、またはいろいろな事情の結果としてそう決まったことを言います。「〜ことにします」は話し手が自分で決める、「〜ことになります」は話し手以外が決める・成り行きでそうなる、という違いで、「する」と「なる」の違いがそのまま意味の違いになっています。「〜ことになりました」は決まったことを人に知らせる形で、転勤・引っ越し・予定の変更などの報告やあいさつによく使います。自分で決めたことでも、結婚・帰国などを人に知らせるときに「〜ことになりました」と言うと、自分の考えを前に出さない控えめな言い方になり、日本語ではよく使われます。「〜ことになります」は、もう決まっている予定や、ある事情からそうなる結果を説明するときに使い、規則や決まりは「〜ことになっています」と言います。
動詞の辞書形/ナイ形+ことになります/ことになりました(人に知らせるときは「ことになりました」が多い。規則は「ことになっています」)
口頭の代入練習では、行動の絵カードに「わたし」か「会社・学校」の札をつけて見せ、「わたし」なら「〜ことにしました」、「会社・学校」なら「〜ことになりました」と後ろを選ばせる。慣れたら札を見せずに短い話(「部長が決めました」「わたしが考えて決めました」)を聞かせて選ばせる。場面のやり取りでは、転勤・引っ越し・帰国・予定の変更のカードを引いて、お知らせのあいさつ(〜ことになりました。今までありがとうございました)をし、聞いた人は「そうですか。いつですか」と聞き返す。
この課では、テストや予定、決めること・決まることにかかわる語(テスト・予定・決める・転勤・引っ越し・決まり・お知らせなど)と、頻度を表す語(いつも・よく・ときどき・たまに)が中心になる課だと考えられます。頻度の語は学習項目1の線の上に並べて「〜ことがあります」がどこに入るかと一緒に覚えさせ、「決める」「転勤する」のような語は「〜ことにしました」「〜ことになりました」の文の中で、だれが決めたかと結びつけて練習します。お知らせの語(変わる・伝える・知らせる)は「〜ということ」の伝言ゲームでまとめて使わせます。
宿題は、自分の生活で「ときどきすること」と「ときどきしないこと」を「〜ことがあります/〜ないことがあります」で1文ずつ、最近自分で決めたことを理由つきで「〜ので、〜ことにしました」で1文、学校・会社・家族が決めたことを「〜ことになりました」で1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の文を教師が読み上げて「だれが決めましたか」と聞き、「ことにしました」と「ことになりました」が正しく選べているかをクラス全体で確かめてから、第35課の授受の敬語(くださいます・いただきます)に入ります。
第34課の「〜ことがあります」と第16課の「〜たことがあります」の違いはどう教えればいいですか?
黒板を上下2段にして、上に「Vた+ことがあります」(今までに1回でも)、下に「Vる/Vない+ことがあります」(今もときどき)を書き、前の形だけを赤で囲みます。教師の話で「北海道へ行ったことがあります。1回です」「雨の日は、バスで来ることがあります」を続けて聞かせ、「1回ですか、ときどきですか」と聞いてから形を選ばせます。練習では「1回」と「ときどき」の札を混ぜて、前の形を切り替えさせると定着します。
「〜ことにしました」と「〜ことになりました」はどう使い分けさせますか?
基準は「だれが決めたか」です。話し手が自分で決めたら「ことにしました」、会社・学校・家族などが決めたことや、事情でそう決まったことは「ことになりました」です。黒板の左右に「わたし」と「会社・学校」から出る矢印を描き、短い話を聞かせて「だれが決めましたか」と聞いてから後ろを選ばせると、形と意味が結びつきます。第20課の「〜くします」と第15課の「〜くなります」を並べて、「する」と「なる」の違いだと見せるのも効果があります。
自分で決めた結婚や帰国を「〜ことになりました」と言うのは間違いですか?
間違いではありません。自分で決めたことでも、人に知らせるあいさつでは「〜ことになりました」と言うと、自分の考えを前に出さない控えめな言い方になり、日本語ではよく使われます。ただ、初めに「なる=ほかの人が決める」を教えた直後にこれを出すと混乱するので、基本の区別が言えるようになってから、お知らせのあいさつの練習の中で「こういう言い方もよくします」と足すのがよいでしょう。
「〜ということ」の前に「だ」は必要ですか?
前は普通形なので、名詞とな形容詞は「休みだということ」「静かだということ」のように「だ」を入れます。話し言葉では「だ」を落とすこともありますが、教室では「だ」を入れた形で教え、「です」を入れないことを先に定着させます。「*午後からですということ」の誤りが出たら、丁寧さは文の最後の「知っていますか」が受け持つと説明します。
第34課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と学習項目1「〜ことがあります」、学習項目2の「〜ことにします」まで、2コマ目は「〜ということ」と学習項目3「〜ことになります/〜ことになりました」、まとめの「最近のわたしのニュース」です。「ことにしました/ことになりました」の選び分けに時間がかかるクラスでは、2コマ目の最初に宿題の文で「だれが決めましたか」の確認を10分入れます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。