第30・31課の受身形に続いて、この課で使役形が初めて出ます。使役は「だれかに何かをさせる」言い方で、相手が嫌がってもさせる強制と、相手がしたいことをさせてあげる許可の二つの意味があり、どちらになるかは場面で決まります。この教案では、他動詞の使役(人に…を〜させる)と自動詞の使役(人を〜させる)を分けて練習し、最後に使役形のて形を使った「〜させてください」で、自分がしたいことを許してほしいと頼む言い方へ進みます。使役は親から子ども、上司から部下のように上の立場の人が下の立場の人にさせる言い方なので、先生や上司を「する人(動作をさせられる人)」に置かないという使い方の決まりを、形と同時に場面で入れておくことが大切です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 教師が一人の学生に「黒板を消してください」と頼んで消してもらい、クラスに「わたしは〜さんに黒板を消させました」と言う。頼んだ人と実際に動いた人が違う文の形があること、第30課の受身形と形がよく似ていることを予告する |
| 使役形の作り方 | 35分 | 第30課の受身形の表の隣に使役形の列を足し、ない形から作る。グループⅠ(ない→せます)→グループⅡ(ない→させます)→グループⅢ(させます・こさせます)の順で、動詞カードで速く言い換え、使役形のて形・ない形まで言わせる |
| 学習項目1 〜せます/〜させます 使役(1) | 45分 | 「〜を」をとる動詞(読む・書く・食べる・コピーする)で「人に…を〜させます」を導入。子どもの顔の違う二枚の絵で、強制と許可の意味を分ける。(1コマ目はここまで) |
| 学習項目2 〜せます/〜させます 使役(2) | 30分 | 「〜を」をとらない動詞(行く・帰る・走る・座る・遊ぶ)で「人を〜させます」。教師が学生に動いてもらって報告する形で導入し、「待たせてしまいました」「お待たせしました」まで。(2コマ目は最初の5分で使役形の小テストをしてから入る) |
| 学習項目3 〜させてください/〜ていただけませんか | 35分 | だれが動くかを矢印で板書し、自分がしたいことは「〜させてください」、相手にしてほしいことは「〜ていただけませんか」と分ける。アルバイト先・会社の場面で、理由(〜ので)をつけて頼む |
| まとめの活動 | 25分 | 「わたしが店長なら」の活動。4人で、アルバイトに何をさせるか・何をさせてあげるかを三つずつ決めて発表し、店長役とアルバイト役に分かれて、休みや早く帰ることを「〜ので、〜させていただけませんか」で頼むロールプレイをする |
だれかに何かを「させる」ときの動詞の形、使役形を作ります。この本ではない形がすでに出ているので、ない形から作るのがいちばん早い方法です。グループⅠはない形の「ない」を「せます」に変え(書かない→書かせます、買わない→買わせます)、グループⅡは「ない」を「させます」に変えます(食べない→食べさせます)。グループⅢは「します→させます」「来ます→来(こ)させます」と丸ごと覚えます。できた使役形は「〜せる/〜させる」で終わるグループⅡの動詞と同じように活用するので、辞書形は「書かせる」、て形は「書かせて」、ない形は「書かせない」になり、課の後半の「〜させてください」はこのて形を使います。
ない形から作る。Ⅰ: 〜ない→〜せます/Ⅱ: 〜ない→〜させます/Ⅲ: します→させます、来ます→来(こ)させます。使役形はグループⅡの動詞と同じに活用する(書かせる・書かせて・書かせない)
代入練習では、ます形の動詞カードをグループを混ぜて見せ、はじめは「ない形→使役形」の二段で、慣れたら使役形だけをすぐ言わせる。次に同じカードで受身形と使役形を交互に言わせ(書かれます/書かせます・食べられます/食べさせます)、最後に使役形の辞書形・て形・ない形まで言い換えさせて、課の後半の「〜させてください」に備える。
ある人(させる人)が、ほかの人(する人)に動作をさせる言い方です。この教案では(1)を他動詞の使役、つまり「本を読む」「部屋を掃除する」のように「〜を」をとる動詞の使役として扱います。形は「させる人は する人に …を 〜させます」で、もとの文に「を」がすでにあるので、する人には「に」を付けます。意味は二つあり、相手が嫌がってもさせる強制(母は弟に宿題をさせます)と、相手がしたいことを許してさせる許可(父はわたしに自由に絵をかかせてくれました)です。許可のときは第14課の「〜てくれました/〜てあげました」と合わせた「〜させてくれました」「〜させてあげました」がよく使われます。使役は親から子ども、先生から学生、上司から部下のように、上の立場の人が下の立場の人にさせるときの言い方です。
させる人は+する人に+Nを+使役形(〜せます/〜させます)。する人には「に」、動作の対象には「を」
代入練習では、「させる人・する人・すること」の三枚のカード(先生・学生・作文を書く/部長・社員・資料をコピーする/母・子ども・宿題をする)を並べて一文で言わせる。次に子どもの顔の絵(嫌な顔・うれしい顔)を足して、強制なら「〜させます」、許可なら「〜させてあげます」と言い分けさせる。場面のやり取りでは、「子どものとき、ご両親はあなたに何をさせましたか」「どんなことをさせてくれましたか」をペアで聞き合い、聞いたことを「〜さんのお母さんは〜さんに…」とクラスに報告させる。
「行く・帰る・来る・走る・座る・遊ぶ」のように「〜を」をとらない動詞(自動詞)の使役です。この教案では(2)を自動詞の使役として扱い、する人に「を」を付けて「させる人は する人を 〜させます」の形で練習します(部長は森さんを大阪へ行かせました)。意味は使役(1)と同じく、強制(先生は熱がある学生をうちへ帰らせました)と許可(父は姉を一人で旅行に行かせてくれました)の両方があります。「待つ」は「人を待つ」とも言える動詞ですが、使役では待つ人を「を」で表し、「友達を待たせる」「お待たせしました」の形でよく使います。また「心配する・笑う・泣く」のような気持ちの動詞も「を」で使い(両親を心配させました)、この場合はわざとさせるのではなく、自分のしたことで相手がそういう気持ちになったという意味です。
させる人は+する人を+自動詞の使役形(行かせます・帰らせます・走らせます・座らせます)。「公園を散歩する」のように場所の「を」がある文では、する人は「に」
代入練習では、人のカードと自動詞のカード(行く・帰る・来る・走る・座る・遊ぶ)を見せて「〜を〜させます」を言わせ、慣れたら使役(1)の他動詞カードを混ぜて、する人に「を」を付けるか「に」を付けるかを選ばせる。場面のやり取りでは、学生が先生や店長の役になり、「熱がある学生をどうしますか」「雨の日、子どもをどこで遊ばせますか」のような問いに使役で答えさせる。
「〜させてください」は、使役形のて形に「ください」を付けて、自分がしたいことを相手に許してほしいと頼む言い方です。動作をするのは話し手で、相手は許す人です(きょうは早く帰らせてください=わたしが早く帰ることを許してください)。第13課の「〜てもいいですか」が許可があるかどうかを聞く言い方なのに対して、「〜させてください」は自分の気持ちをはっきり伝えて頼むので、仕事を引き受けたいとき(その仕事はわたしにさせてください)にも使います。「〜ていただけませんか」は、第35課の「〜ていただきます」の可能形「いただけます」を否定の疑問にした形で、相手に何かをしてほしいときのとても丁寧な頼み方です。二つを合わせた「〜させていただけませんか」は、目上の人に自分がしたいことの許可を丁寧に頼むときに使います。
使役形のて形+ください(帰らせてください・休ませてください)/Vて+いただけませんか(教えていただけませんか)/使役形のて形+いただけませんか(休ませていただけませんか)
代入練習では、したいことのカード(早く帰る・あした休む・この仕事をする・写真を撮る・電話を使う)を見せて「〜させてください」、次に同じカードで「〜させていただけませんか」と丁寧にして言わせる。そのあと「してほしいこと」のカード(書き方を教える・もう一度言う・ゆっくり話す)を混ぜて、だれが動くかで「〜させてください」と「〜ていただけませんか」を選ばせる。場面のやり取りでは、アルバイトと店長・社員と課長の役で、理由(〜ので)を言ってから頼み、相手は「いいですよ」「ちょっと…」で答える。
この課の新しい語は、使役の文を作るための動詞と、させる人・する人がはっきりする場面(家庭・学校・会社・アルバイト先)の人の言葉が中心になると考えられます。動詞はます形のカードの裏に使役形を書いておき、作り方の練習と語の確認を同時に行います。人の言葉(部長・社員・店長・親・子どもなど)は「させる人・する人」のカードとして上下に並べて貼ると、使役を使える関係・使わない関係の説明にもそのまま使えます。
宿題は、①動詞20個(グループを混ぜる)の使役形を書くこと、②子どものころに親がさせたこと・させてくれたことを「父/母はわたしに〜させました」「〜させてくれました」で1文ずつ書くこと、③アルバイト先や学校で頼みたいことを「〜ので、〜させていただけませんか」で1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の②の「母はわたしに〜させました」を、させられた「わたし」のほうから言うとどうなるかを教師が投げかけ、受身と使役を合わせた形が要ることを確かめてから、第40課の使役受身(〜せられます/〜させられます)に入ります。
第39課の使役形はどの順で教えればいいですか?
ない形から作るのがいちばん早く、グループⅠ(ない→せます)、グループⅡ(ない→させます)、グループⅢ(させます・こさせます)の順にします。第30課の受身形の表の隣に使役形の列を足すと、一字の違いが目で見えて混ざりにくくなります。作った使役形はグループⅡの動詞として活用するので、て形まで言わせてから文型に入ると、課の後半の「〜させてください」が楽になります。
使役の「人に」と「人を」はどう教え分けますか?
もとの文に「〜を」があるかで分けます。「作文を書く」のように「を」をとる動詞は、する人を「に」(学生に作文を書かせる)、「帰る・行く」のように「を」をとらない動詞は、する人を「を」(学生をうちへ帰らせる)にします。「一つの文に『を』は一つ」と覚えさせ、「公園を散歩する」のような場所の「を」がある文でも、する人は「に」になると確かめます。自動詞の使役で「に」を使う文も実際にはあるので、この課ではまず「を」で練習すると伝えておきます。
「〜させてください」と「〜てもいいですか」の違いは何ですか?
どちらも自分がしたいことの許可にかかわりますが、「〜てもいいですか」は許可があるかどうかを聞く言い方、「〜させてください」は自分の希望をはっきり言って許してほしいと頼む言い方です。「その仕事はわたしにさせてください」のように、自分から引き受けたいときは「〜させてください」が合います。目上の人には理由を添えて「〜させていただけませんか」にすると、強く聞こえません。
学習者が先生や上司に使役を使ってしまったら、どう直しますか?
「先生に資料を読ませました」は文の形は正しいので、文法の誤りとしてではなく、使う相手の誤りとして直します。使役は上の立場の人が下の立場の人にさせる言い方なので、目上の人がしてくれたことは第35課の「〜ていただきました」で言うと、その場で言い換えさせます。させる人とする人のカードを上下に並べて貼っておくと、使える関係が目で確かめられます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入・使役形の作り方・学習項目1まで、2コマ目は学習項目2と「〜させてください/〜ていただけませんか」、まとめのロールプレイにします。使役形が定着していないと後半の文型練習が止まるので、2コマ目の最初に使役形の小テストを5分入れ、作り方が怪しいクラスでは学習項目3とまとめを3コマ目に回します。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。