第35〜37課の敬語の課を終えたあとを受けて、この課では敬語から離れ、動詞を二つつなげる複合動詞・見つけたことを言う「〜と、…ました」・名前を紹介する「〜という…」の三つを学びます。新しい活用形はなく、複合動詞は第9課の「〜やすいです」と同じマス形の「ます」を取った形、「〜と」は第15課と同じ辞書形、「という」は名詞につけるだけなので、形の負担は軽い課です。三つとも「自分が見たこと・知ったことを、知らない相手に伝える」場面でよく働き、「散歩していて、知らない花を見つけた」という一つの話の中で全部使えるので、導入の場面を課の最初から最後まで使い回すとまとまります。教えどころは、第15課の「と」(いつもそうなる)とこの課の「と」(そのとき見つけた)の違いと、後ろに話し手の意志の文が来ないことです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第37課の謙譲表現で教師が「週末はどちらへいらっしゃいましたか」と聞き、学生に「〜へ参りました」と1〜2問だけ答えさせて敬語を締めくくり、普通の会話に戻ることを伝える。続けて動詞のマス形を絵カードで速く言わせ(読みます・書きます・食べます)、「ます」を取った形を口でそろえておく |
| 学習項目1 複合動詞 | 40分 | 時計と本の絵で「読みはじめる・読みおわる」、風の絵で「吹きはじめる・吹きだす」を導入。後ろの動詞のグループで活用することを表で見せる。口頭(動詞カード+後ろの札)→ ペア(一日の予定表の情報差で「何時に〜しはじめましたか」)まで。産出の「はじめて・つづけて1分スピーチ」は宿題の準備として予告だけしてもよい |
| 学習項目2 〜と、…ました/〜と、…た | 40分 | 第15課の「春になると、花が咲きます」と並べて板書し、こちらは過去の一回のことで、後ろが見つけたことだと見せる。後ろに話し手の意志の文が来ないことまで。めくり絵で口頭 → ペアの「宝さがし」まで。1コマ目はここまで |
| 復習と学習項目2の産出 | 15分 | 2コマ目の頭。複合動詞を絵カードで速く言わせたあと、「びっくり発見ストーリー」で一人ずつ、出かけた先で見つけたことを「〜と、…ました」で2〜3文話させる。前に過去形を置いていないか、後ろに自分の意志の文を置いていないかだけを見て直す |
| 学習項目3 〜という… | 40分 | 教師の国や町の珍しい物の写真で「〜という果物」「〜というお祭り」を導入し、「何という〜ですか」で名前を聞き合う。名前カードで口頭 → ペアの「名前クイズ」→ 産出の「わたしの町じまん」まで |
| まとめの活動 | 25分 | 「散歩で見つけたもの」の報告。「角を曲がると、〜がありました」「〜という店でした」「〜しはじめました」の三つを入れて、週末に見つけた物や店を一人ずつ話し、聞いた人は「何という〜ですか」で一つ質問する |
| 振り返りと宿題 | 10分 | 三つの形を板書の枠に戻して一行ずつ読み上げ、学生の発表から出た誤り(辞書形にしていない・「という」が落ちた)を2〜3例だけ全体で直す。宿題の日記の書き方を説明する |
動詞を二つつなげて一つの動詞にした言い方です。前の動詞はマス形から「ます」を取った形(読み・書き・食べ)で、後ろに「はじめる(始まる)」「おわる(終わる)」「つづける(続ける)」「だす(急に始まる)」「なおす(もう一度する)」などをつけます。この課ではまず、動作の始まり・終わり・続き・やり直しを言う五つから入ります。「〜だす」は思いがけず急に始まる感じがあり、「急に雨が降りだしました」「子どもが泣きだしました」のように使います。できた動詞は後ろの動詞と同じように活用するので、「読みはじめる」はグループⅡ、「読みおわる」「書きなおす」はグループⅠになります。
Vます(「ます」を取った形)+はじめる/おわる/つづける/だす/なおす(する→しはじめる、来る→来(き)はじめる。活用は後ろの動詞のグループに従う)
代入練習では、動詞のマス形カードと「はじめる・おわる・つづける・だす・なおす」の札を組み合わせて見せ、「食べます+はじめる→食べはじめます」のように一つの動詞にさせる。慣れたら「〜ました」「〜ています」「〜てください」に活用させる。場面のやり取りでは、「いつ〜しはじめましたか」「もう〜しおわりましたか」をペアで聞き合い、自分の習い事や仕事の話を3文で言わせる。
「〜と、…ました」は、前のことをしたとき、その結果として後ろのことに気づいた・後ろのことが起きた、と言う言い方です。第15課の「春になると、花が咲きます」は「いつもそうなる」ことでしたが、この課の「と」は過去の一回のことで、後ろには話し手が見つけたこと(〜がありました・〜ていました・〜が見えました)や、ひとりでに起きたこと(ドアが開きました・電話が鳴りました)が来ます。後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」のような頼み・誘い・希望の文が来ないのは、「と」の決まりです。一方、話し手が自分で続けてしたこと(うちへ帰ると、すぐ寝ました)は、物語や日記では言えますが、この課では扱わず、「〜て」で言わせます。前は過去のことでも辞書形のままで、文の時は後ろの「〜ました」が決めます。「〜と、…た」は同じ意味の普通体で、友達との会話や日記・作文で使います。
V(辞書形)+と、…ました(普通体では …た。前は過去でも辞書形のまま。後ろは見つけたこと・ひとりでに起きたこと)
代入練習では、「動作」の絵カード(ドアを開ける・坂を上る・角を曲がる)と「見つけたもの」の絵カード(猫・白い灯台・郵便局)を組み合わせて「〜と、〜がありました/〜が見えました」で一文にさせ、慣れたら普通体の「〜と、…た」でも言わせる。場面のやり取りでは、「日本に来て、空港を出ると、何が見えましたか」「けさ、うちを出ると、天気はどうでしたか」のような問いをペアで聞き合う。
「N1というN2」は、相手が知らないかもしれない名前(N1)を、それが何の仲間か(N2)といっしょに紹介する言い方です。「ドリアンという果物」「ソンクラーンというお祭り」のように、N2には果物・花・店・町・人のような、だれでも分かる名詞を置きます。名前を聞くときは「何(なん)という〜ですか」と言います。人の名前につけて「山田さんという人から電話がありました」と言うと、話し手もその人をよく知らない感じが出ます。相手もよく知っている物には使わないので、「富士山という山」と言うと、富士山を知らない人に話している感じになります。
N1(名前)+という+N2(普通の名詞)(「という」はふつうひらがなで書く。名前を聞くときは「何(なん)という N ですか」)
代入練習では、名前のカード(店の名前・花の名前・料理の名前)と仲間のカード(店・花・料理)を見せて「〜という〜です」で一文にさせ、次に名前のカードを伏せて「何という〜ですか」と聞かせる。場面のやり取りでは、自分の国や町にある物・店・お祭りを一つずつ「〜という〜があります」で紹介し合い、聞いた人は「何という〜ですか」「どんな〜ですか」と質問する。
この課の言葉は、複合動詞の後ろの部分(はじめる・おわる・つづける・だす・なおす)と、見つけたことを言うときの言葉(見える・聞こえる・〜がある・〜ている)、名前を紹介するときの仲間の言葉(果物・花・店・お祭り・料理)の三つに分けると整理しやすくなります。複合動詞は一語ずつ覚えさせるより、「読み+はじめる」のように前と後ろの組み合わせとして、絵カードを2枚重ねて入れます。仲間の言葉は、学生の国の写真と一緒に出すと、「〜という」の練習がそのまま語彙の練習になります。
宿題は、最近どこかへ出かけたときのことを、「〜と、〜がありました/見えました」「〜という〜」「〜はじめました/〜おわりました」の三つを入れて、普通体の日記(5文くらい)に書くこと。次のコマの最初に、宿題の日記を読み合って、教師が「〜さんは、角を曲がると、何がありましたか」「何という店でしたか」と聞いて復習し、複合動詞を絵カードで速く言わせてから、第39課の使役に入ります。
第38課の「〜と、…ました」と第15課の「〜と、…」はどう違いますか?
第15課の「と」は「このボタンを押すと、お湯が出ます」のように、いつもそうなることを言い、後ろは「〜ます」です。この課の「と」は過去の一回のことで、後ろは「〜ました」になり、話し手がそのとき見つけたことや、ひとりでに起きたことを言います。前の形はどちらも辞書形なので、板書で二つの文を上下に並べ、後ろだけが違うことを見せると混乱が少なくなります。
「〜と、…ました」と「〜たら、…ました」はどちらを教えればいいですか?
見つけたことを言うときは、どちらも使えます。会話では「たら」がよく使われ、「と」は日記や物語のような話の運びで多く出ます。この課では「と」で練習しますが、学習者が「窓を開けたら、雪が降っていました」と言っても直さず、どちらも言えると伝えます。後ろに頼み・誘いの文を置くときは「たら」だけが使えるので、そこだけは必ず分けます。
「うちへ帰ると、すぐ寝ました」は誤りですか?
文法の誤りではありません。物語や日記で「彼はうちへ帰ると、すぐ寝た」のように、同じ人が続けてしたことを「と」でつなぐ書き方もあります。ただ、初級のこの課では「見つけたこと・ひとりでに起きたこと」に絞って練習するほうが形が安定するので、自分のしたことを順に言うときは第11課の「〜て」を勧めます。上のクラスで物語を読むときに、この使い方を改めて取り上げます。
複合動詞の「〜はじめる」と「〜だす」はどう使い分けますか?
どちらも動作の始まりを言いますが、「〜だす」は思いがけず急に始まる感じがあり、「急に雨が降りだした」「子どもが泣きだした」のように、話し手が決めていないことによく使います。自分で決めて始めることや、「〜はじめましょう」「〜はじめてください」のような誘い・頼みには「〜はじめる」を使います。迷ったら「はじめる」を選べば不自然になりにくいと伝えると、学習者が安心して使えます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入・複合動詞・「〜と、…ました」のペア練習まで、2コマ目の頭に「〜と、…ました」の産出を回し、そのあと「〜という…」とまとめの活動に入ります。新しい活用形がない課なので、形の練習は短くし、三つの形を一つの話の中で使う活動に時間を取ると、次の第39課の使役に進みやすくなります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。