日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第38課「これはアジサイという花です」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

第35〜37課の敬語の課を終えたあとを受けて、この課では敬語から離れ、動詞を二つつなげる複合動詞・見つけたことを言う「〜と、…ました」・名前を紹介する「〜という…」の三つを学びます。新しい活用形はなく、複合動詞は第9課の「〜やすいです」と同じマス形の「ます」を取った形、「〜と」は第15課と同じ辞書形、「という」は名詞につけるだけなので、形の負担は軽い課です。三つとも「自分が見たこと・知ったことを、知らない相手に伝える」場面でよく働き、「散歩していて、知らない花を見つけた」という一つの話の中で全部使えるので、導入の場面を課の最初から最後まで使い回すとまとまります。教えどころは、第15課の「と」(いつもそうなる)とこの課の「と」(そのとき見つけた)の違いと、後ろに話し手の意志の文が来ないことです。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜はじめる・〜おわる・〜つづける・〜だす・〜なおす」で、動作の始まり・終わり・続き・やり直しを言える
  • 「〜と、…ました」で、何かをしたときに見つけたこと・ひとりでに起きたことを言い、普通体の「〜と、…た」で日記や友達との話にも使える
  • 「〜という…」で、相手が知らないかもしれない物・人・店の名前を紹介し、「何という〜ですか」で名前を聞ける
  • 三つを組み合わせて、出かけた先で見つけたものを短く話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第37課の謙譲表現で教師が「週末はどちらへいらっしゃいましたか」と聞き、学生に「〜へ参りました」と1〜2問だけ答えさせて敬語を締めくくり、普通の会話に戻ることを伝える。続けて動詞のマス形を絵カードで速く言わせ(読みます・書きます・食べます)、「ます」を取った形を口でそろえておく
学習項目1 複合動詞40分時計と本の絵で「読みはじめる・読みおわる」、風の絵で「吹きはじめる・吹きだす」を導入。後ろの動詞のグループで活用することを表で見せる。口頭(動詞カード+後ろの札)→ ペア(一日の予定表の情報差で「何時に〜しはじめましたか」)まで。産出の「はじめて・つづけて1分スピーチ」は宿題の準備として予告だけしてもよい
学習項目2 〜と、…ました/〜と、…た40分第15課の「春になると、花が咲きます」と並べて板書し、こちらは過去の一回のことで、後ろが見つけたことだと見せる。後ろに話し手の意志の文が来ないことまで。めくり絵で口頭 → ペアの「宝さがし」まで。1コマ目はここまで
復習と学習項目2の産出15分2コマ目の頭。複合動詞を絵カードで速く言わせたあと、「びっくり発見ストーリー」で一人ずつ、出かけた先で見つけたことを「〜と、…ました」で2〜3文話させる。前に過去形を置いていないか、後ろに自分の意志の文を置いていないかだけを見て直す
学習項目3 〜という…40分教師の国や町の珍しい物の写真で「〜という果物」「〜というお祭り」を導入し、「何という〜ですか」で名前を聞き合う。名前カードで口頭 → ペアの「名前クイズ」→ 産出の「わたしの町じまん」まで
まとめの活動25分「散歩で見つけたもの」の報告。「角を曲がると、〜がありました」「〜という店でした」「〜しはじめました」の三つを入れて、週末に見つけた物や店を一人ずつ話し、聞いた人は「何という〜ですか」で一つ質問する
振り返りと宿題10分三つの形を板書の枠に戻して一行ずつ読み上げ、学生の発表から出た誤り(辞書形にしていない・「という」が落ちた)を2〜3例だけ全体で直す。宿題の日記の書き方を説明する

学習項目 1 複合動詞

意味・はたらき学習項目 1

動詞を二つつなげて一つの動詞にした言い方です。前の動詞はマス形から「ます」を取った形(読み・書き・食べ)で、後ろに「はじめる(始まる)」「おわる(終わる)」「つづける(続ける)」「だす(急に始まる)」「なおす(もう一度する)」などをつけます。この課ではまず、動作の始まり・終わり・続き・やり直しを言う五つから入ります。「〜だす」は思いがけず急に始まる感じがあり、「急に雨が降りだしました」「子どもが泣きだしました」のように使います。できた動詞は後ろの動詞と同じように活用するので、「読みはじめる」はグループⅡ、「読みおわる」「書きなおす」はグループⅠになります。

接続

Vます(「ます」を取った形)+はじめる/おわる/つづける/だす/なおす(する→しはじめる、来る→来(き)はじめる。活用は後ろの動詞のグループに従う)

形
Vはじめます/Vおわります(読みはじめます・読みおわりました)Vつづけます(2時間歩きつづけました)Vだします(急に泣きだしました)Vなおします(作文を書きなおします)

導入

  • 時計と本の絵で始まりと終わり黒板に時計を2つ描き、7時の時計の横に本を開く人、9時の時計の横に本を閉じる人の絵を貼る。教師が「ゆうべ、7時にこの本を読みはじめました。9時に読みおわりました」と言い、板書は「[Vます]はじめます/おわります」の枠にして、「読みます」の「ます」を手で隠して「はじめます」をつなげて見せる。間の時間を矢印で結んで「2時間読みつづけました」も足す。
  • 風の絵で「はじめる」と「だす」静かだった公園の木が急に大きくゆれる絵を2枚並べ、教師が「さっきまで静かでしたね。でも、急に強い風が吹きだしました」と言う。続けて「風が吹きはじめました」とも言えることを確かめ、「だす」には「急に」がよく合うと赤で書く。最後に学生の作文を1枚取り上げて「ここ、もう一度書きましょう。書きなおしてください」と言い、「なおす」を実際のやり取りで出す。

板書案

[Vます] + はじめます/おわります/つづけます/だします/なおします
読み ます → 読み + はじめます
7:00 読みはじめました ―― 2時間 読みつづけました ―― 9:00 読みおわりました
急に 強い 風が 吹きだしました。 作文を 書きなおします。
〔赤〕「ます」を消す線 〔青〕後ろの動詞のグループ(はじめる・つづける=Ⅱ/おわる・だす・なおす=Ⅰ)

場面と発話(自作)

  • 日本語学校で、先生が学生に、日本語の勉強をいつから始めたかを聞く。いつから日本語を勉強しはじめましたか。——去年の4月からです。
  • 会社で、上司から頼まれた資料を読んでいる社員が、まだ時間がかかることを伝える。すみません、まだ読みおわっていません。あしたまでに読みます。
  • 電車の中で赤ちゃんが急に大きな声で泣いた。降りたあと、留学生が友達にその話をする。電車の中で、隣の赤ちゃんが急に泣きだして、びっくりしました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、動詞のマス形カードと「はじめる・おわる・つづける・だす・なおす」の札を組み合わせて見せ、「食べます+はじめる→食べはじめます」のように一つの動詞にさせる。慣れたら「〜ました」「〜ています」「〜てください」に活用させる。場面のやり取りでは、「いつ〜しはじめましたか」「もう〜しおわりましたか」をペアで聞き合い、自分の習い事や仕事の話を3文で言わせる。

  1. 口頭動詞の絵カードと後ろの札を2枚重ねて見せ、キューを出す。「本・読みます+はじめる」→「本を読みはじめます」、「ご飯・食べます+おわる」→「ご飯を食べおわります」、「作文・書きます+なおす」→「作文を書きなおします」、「雨・降ります+だす」→「雨が降りだしました」、「1時間・歩きます+つづける」→「1時間歩きつづけました」。全体で言わせたあと個人に当てる。慣れたら札だけ替えて速く回し、最後は「読みはじめる・て形」「書きおわる・ない形」のように活用のキューも出す。
  2. ペアAには時刻の書いてある一日の予定表(宿題 7:00〜8:30、ゲーム 9:00〜11:00 など)、Bには時刻の欄が空いた同じ表を渡す。Bが「何時に宿題をしはじめましたか」「何時にしおわりましたか」と聞いて表を埋め、最後に「2時間ゲームをしつづけましたね」と一言感想を言う。4項目で役を交替し、2回目は自分のきのうの予定で聞き合わせる。
  3. 産出「はじめて・つづけて1分スピーチ」。自分が始めたこと(日本語・料理・スポーツ・仕事)を一つ選び、「〜年に〜しはじめました」「今も〜しつづけています」「最初は〜を何度もやりなおしました」の流れで1分話す。教師が見るのは、前の動詞をマス形の「ます」を取った形にしているか、後ろの動詞の活用が正しいか(はじめて/おわって)、自分で決めて始めることに「だす」を使っていないか。

つまずきと手当て

  • 前の動詞を辞書形やテ形にして「*食べるはじめます」「*読んではじめました」と言う。第9課の「〜やすいです」と同じく、マス形の「ます」を取った形につなぐと、「食べ・ます」の「ます」を手で隠す動きに戻って確かめる
  • テ形やナイ形を作るときに前の動詞のグループで考えて「*読みはじめって」「*書きおわて」のように作る。活用は後ろの動詞が決めるので、「はじめる(グループⅡ)→はじめて」「おわる(グループⅠ)→おわって」と後ろの動詞の表を黒板の端に出して言い直させる
  • 「〜だす」を誘いや頼みに使って「さあ、食べだしましょう」「読みだしてください」と言う。「だす」は思いがけず始まる感じなので、自分で決めて始めるときは「食べはじめましょう」と「はじめる」を使うと見せる。また「雨が降りおわりました」とはふつう言わず「雨がやみました」と言うことも、雨の絵で一言添える

既習の文型との違い

  • 〜やすいです/〜にくいです(第9課)前の動詞のつなぎ方は同じで、どちらもマス形の「ます」を取った形につけます。違いは後ろの部分で、「やすい・にくい」はイ形容詞なので「読みやすくないです」「読みやすかったです」と形容詞の活用になり、この課の「はじめる・おわる」は動詞なので「読みはじめました」「読みはじめないでください」と動詞の活用になります。学習者は第9課の形に引かれて「*書きおわるです」のように「です」をつけることがあるので、後ろの言葉の品詞を表で並べて見せます。
  • 〜ています(1)(第10課)「雨が降っています」は、今その動作が進んでいることを言う言い方です。「雨が降りつづけています」は、止まらずに長く続いていることに目を向ける言い方で、「きのうから」「3日も」のような長さの言葉とよくいっしょに使います。学習者が「今、ご飯を食べつづけています」のように、ただの進行に「つづける」を使うと不自然に聞こえるので、「どのくらい?」と長さを聞き返して使い分けを確かめます。
関連する文型

学習項目 2 〜と、…ました/〜と、…た

意味・はたらき学習項目 2

「〜と、…ました」は、前のことをしたとき、その結果として後ろのことに気づいた・後ろのことが起きた、と言う言い方です。第15課の「春になると、花が咲きます」は「いつもそうなる」ことでしたが、この課の「と」は過去の一回のことで、後ろには話し手が見つけたこと(〜がありました・〜ていました・〜が見えました)や、ひとりでに起きたこと(ドアが開きました・電話が鳴りました)が来ます。後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」のような頼み・誘い・希望の文が来ないのは、「と」の決まりです。一方、話し手が自分で続けてしたこと(うちへ帰ると、すぐ寝ました)は、物語や日記では言えますが、この課では扱わず、「〜て」で言わせます。前は過去のことでも辞書形のままで、文の時は後ろの「〜ました」が決めます。「〜と、…た」は同じ意味の普通体で、友達との会話や日記・作文で使います。

接続

V(辞書形)+と、…ました(普通体では …た。前は過去でも辞書形のまま。後ろは見つけたこと・ひとりでに起きたこと)

形
Vと、Nがありました/いました(窓を開けると、猫がいました)Vと、〜ていました(外に出ると、雪が降っていました)Vと、〜が見えました/聞こえましたVと、…た(普通体。ドアを開けると、だれもいなかった)

導入

  • 第15課の「と」と並べる黒板の上に第15課の型の文「このボタンを押すと、お湯が出ます」、下にこの課の文「きのう、このボタンを押すと、水が出ました」を書き、「どちらがいつもそうなりますか」「どちらがきのう一回だけのことですか」と聞く。下の文の「押す」に赤で下線を引き、「きのうのことでも『押した』にしない」と書き添える。板書は「[辞書形]と、[見つけたこと]ました」の枠にする。
  • ドアの絵をめくって見つける閉じたドアの絵の上に紙をかぶせ、教師が紙をめくりながら「ドアを開けると……」と間を取り、中の絵(たくさんの人・誕生日のケーキ)を見せて「友達がたくさんいました」と言う。めくる前は学生にも何があるか分からないことが、「見つけた」の感じを作る。同じ形で窓の絵(外は雪)、箱の絵(中に手紙)もめくり、学生に「〜と、〜がありました/〜ていました」で言わせる。最後に教師が「ドアを開けると、わたしは部屋に入りました」と言いかけて止め、「これは自分で決めてしたことなので、『ドアを開けて、部屋に入りました』と言います」と、この課の練習では後ろに自分で決めてしたことを置かないことを見せる。

板書案

[V辞書形]と、[見つけたこと・ひとりでに起きたこと]ました
(第15課)この ボタンを 押すと、お湯が 出ます。=いつも そうなる
(この課)きのう ボタンを 押すと、水が 出ました。=一回だけ・見つけた
〔赤〕「押す」に下線(過去でも辞書形のまま) 〔青〕「ました」に丸(時は後ろが決める)
後ろに来ない: 〜てください/〜ましょう/〜たいです → 「〜たら、…」で

場面と発話(自作)

  • 朝、カーテンを開けた留学生が、雪が積もっていたことを学校で友達に話す。けさ、カーテンを開けると、外が真っ白でした。雪が降っていました。
  • 会社で、同僚に、新しく引っ越した町のことを話す。橋を渡ると、古いお寺がありました。
  • 日本語の授業で、週末のことを日記の形で書く。山の上に着くと、遠くに富士山が見えた。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、「動作」の絵カード(ドアを開ける・坂を上る・角を曲がる)と「見つけたもの」の絵カード(猫・白い灯台・郵便局)を組み合わせて「〜と、〜がありました/〜が見えました」で一文にさせ、慣れたら普通体の「〜と、…た」でも言わせる。場面のやり取りでは、「日本に来て、空港を出ると、何が見えましたか」「けさ、うちを出ると、天気はどうでしたか」のような問いをペアで聞き合う。

  1. 口頭ドアや窓の絵に紙をかぶせた「めくり絵」で、教師が前の部分のキューを出し、学習者が紙をめくって後ろを言う。「ドアを開ける」→「ドアを開けると、猫がいました」、「坂を上る」→「坂を上ると、白い灯台が見えました」、「箱を開ける」→「箱を開けると、手紙が入っていました」、「角を曲がる」→「角を曲がると、郵便局がありました」、「ボタンを押す」→「ボタンを押すと、ドアが開きました」。次に教師がわざと過去形(「開けました」)でキューを出し、辞書形に直して言わせる。最後に同じ絵を普通体の「〜と、…た」で言わせる。
  2. ペア「宝さがし」。Aには、引き出し・冷蔵庫・ベッドの下・箱などの中に何が入っているかが描いてある部屋の絵、Bには中が描いていない同じ部屋の絵を渡す。Bが「引き出しを開けると、何がありましたか」と聞き、Aが「引き出しを開けると、古い写真がありました」と答え、Bは自分の絵に書き込む。5か所で役を交替し、終わったら二人の絵を見比べて答え合わせをする。
  3. 産出「びっくり発見ストーリー」。日本に来てから、出かけた先や家の中で思いがけず見つけたこと・起きたことを一つ選び、「〜と、…ました」を一回以上入れて3文で話す(または普通体で日記に書く)。教師が見るのは、前を辞書形にしているか、後ろが見つけたこと・ひとりでに起きたことになっているか、後ろに頼み・誘い・自分の意志の文を置いていないか。普通体で書く学生は、文の終わりを全部普通体にそろえているかも見る。

つまずきと手当て

  • 前を過去にして「*窓を開けたと、雪が降っていました」と言う。文の時は後ろが決めると、板書の赤の下線(辞書形)に戻って言い直させる。「窓を開けたら、雪が降っていました」と「たら」で言う学生は誤りではないので直さず、どちらも見つけたことを言えると一言添える
  • 後ろに自分の意志でしたことを置いて「うちへ帰ると、わたしはすぐ宿題をしました」と言う。この課の「と」の後ろは見つけたこと・ひとりでに起きたことなので、自分でしたことを続けて言うときは「うちへ帰って、すぐ宿題をしました」と第11課の「〜て、…」にすると見せる
  • 後ろに頼む・誘う文を置いて「*駅に着くと、電話してください」と言う。第19課の「たら」を使って「駅に着いたら、電話してください」と言い直させ、「と」の後ろは「〜てください」「〜ましょう」にならないと板書の枠に書いておく

既習の文型との違い

  • 〜と、…(第15課)第15課の「と」は「春になると、花が咲きます」のように、いつもそうなること(決まった結果)を言い、後ろは「〜ます」の形がふつうです。この課の「と」は過去の一回のことで、後ろは「〜ました」で、話し手がそのとき見つけたことを言います。前の形はどちらも辞書形なので、学習者が過去のことだからと「*開けたと」にする誤りが出やすく、二つの文を上下に並べて「前は同じ、後ろだけ変わる」と見せます。
  • 〜たら、…(第19課)「窓を開けたら、雪が降っていました」のように、「たら」でも見つけたことは言え、会話ではこちらのほうがよく使われます。違いは後ろに来られる文の幅で、「たら」は「駅に着いたら、電話してください」のように頼み・誘い・意志の文も置けますが、「と」は置けません。学習者が「*駅に着くと、電話してください」と言ったら、「たら」に替えると言えることを示し、迷ったら「たら」と覚えさせます。
  • 〜て、…て、―ます(第11課)自分が順番にしたことを言うときは「うちへ帰って、宿題をしました」のように「て」でつなぎます。この課の「と」の後ろは、話し手の思いどおりにならない、見つけたことや起きたことです。学習者が「うちへ帰ると、わたしは宿題をしました」と言うと、意味は通じても話し方として落ち着かないので、「自分がしたこと? 見つけたこと?」と聞いて、「て」と「と」を選び直させます。
関連する文型

学習項目 3 〜という…

意味・はたらき学習項目 3

「N1というN2」は、相手が知らないかもしれない名前(N1)を、それが何の仲間か(N2)といっしょに紹介する言い方です。「ドリアンという果物」「ソンクラーンというお祭り」のように、N2には果物・花・店・町・人のような、だれでも分かる名詞を置きます。名前を聞くときは「何(なん)という〜ですか」と言います。人の名前につけて「山田さんという人から電話がありました」と言うと、話し手もその人をよく知らない感じが出ます。相手もよく知っている物には使わないので、「富士山という山」と言うと、富士山を知らない人に話している感じになります。

接続

N1(名前)+という+N2(普通の名詞)(「という」はふつうひらがなで書く。名前を聞くときは「何(なん)という N ですか」)

形
N1というN2です(ドリアンという果物です)何というNですか〜さんという人N1というN2を/に/で…(「さくら」という店で買いました)

導入

  • 教師の国や町の写真を見せる学生がたぶん知らない果物・料理・お祭りの写真を3枚用意し、1枚ずつ見せながら「これは何ですか」と聞く。答えが出ないところで教師が「これはドリアンという果物です」と言い、板書は「[名前]という[果物・花・店]」の枠にする。名前の欄と仲間の欄を色で分け、仲間の欄にはだれでも知っている言葉が入ることを見せる。
  • 学生の国の物を紹介させる学生に自分の国の食べ物やお祭りを一つ思い浮かべさせ、教師が「〜さんの国には、どんな食べ物がありますか」と聞いて「〜という料理があります」と答えさせる。ほかの学生には「何という料理ですか」ともう一度聞き返させ、名前を聞く言い方も同時に練習する。最後に教師が「富士山という山があります」と言って首をかしげて見せ、だれでも知っている物には使わないことを笑いと一緒に確かめる。

板書案

[名前] という [仲間の言葉]
ドリアン という 果物 です。
これは 何(なん)という 花ですか。——コスモス という 花です。
〔赤〕名前の欄 〔青〕仲間の欄(果物・花・店・お祭り・人)=だれでも知っている言葉
「という」はひらがなで(〜という意味です・〜ということ と同じ)

場面と発話(自作)

  • 会社の昼休みに、同僚が初めて見る果物を持ってきた社員に聞く。それは何という果物ですか。——マンゴスチンという果物です。
  • 日本語学校で、留学生が先生に自分の国の新年のお祭りを紹介する。わたしの国には、ソンクラーンというお祭りがあります。みんなで水をかけ合います。
  • 学校の事務室で、職員が留守だった先生に伝言を伝える。先生、さっき山田さんという人から電話がありました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、名前のカード(店の名前・花の名前・料理の名前)と仲間のカード(店・花・料理)を見せて「〜という〜です」で一文にさせ、次に名前のカードを伏せて「何という〜ですか」と聞かせる。場面のやり取りでは、自分の国や町にある物・店・お祭りを一つずつ「〜という〜があります」で紹介し合い、聞いた人は「何という〜ですか」「どんな〜ですか」と質問する。

  1. 口頭名前のカードと仲間のカードを2枚並べてキューを出す。「ドリアン・果物」→「ドリアンという果物です」、「ロイクラトン・お祭り」→「ロイクラトンというお祭りです」、「さくら・喫茶店」→「さくらという喫茶店です」、「コスモス・花」→「コスモスという花です」。全体と個人で言わせたあと、名前のカードを伏せて「何という果物ですか」と聞く側も練習する。最後に人の名前のカード(山田・中村)で「山田さんという人から電話がありました」を言わせる。
  2. ペア「名前クイズ」。Aには表に写真、裏に名前と仲間の言葉が書いてあるカード(珍しい果物・花・料理・町)を5枚、Bには写真だけを見せる。Bが「これは何という果物ですか」と聞き、Aが「マンゴスチンという果物です。甘くておいしいです」と一文足して答える。Bは聞いた名前をメモし、5枚で役を交替する。最後にBがメモを見て「〜という果物は甘いです」と一つ報告する。
  3. 産出「わたしの町じまん」。自分の国や町にある店・食べ物・お祭りを三つ選び、「わたしの町には、〜という〜があります」と一文ずつ紹介し、それぞれに説明を一文足す。聞く人は一人一つ、「何という〜ですか」「どんな〜ですか」で質問する。教師が見るのは、名前と仲間の言葉の間に「という」が入っているか、仲間の言葉がだれでも分かる語になっているか、「何という」を「なんという」と読んでいるか、だれでも知っている物に使っていないか。

つまずきと手当て

  • 「という」を落として「*これはドリアン果物です」と言う。名前と仲間の名詞の間には「という」が要ると、板書の色分けした2つの欄に戻って確かめる。「ドリアンの果物」のように「の」でつなぐのも、名前の紹介にはならないと一言添える
  • 名前を聞くときに「なにという」と読んだり、「何の名前の花ですか」のように言ったりする。「何(なん)という花ですか」の形で覚えさせ、読みは「なんという」で統一する
  • 第25課の「〜という意味です」、第34課の「〜ということ」と同じ「という」なので、どれも「と言う」と漢字で書いてしまう。三つともふつうひらがなで書くと見せ、意味を言う・内容をまとめる・名前を紹介する、と後ろの名詞の違いで区別させる。親しい会話で「ドリアンって果物」と言う学生は誤りではないので直さず、この課では「という」で練習すると伝える

既習の文型との違い

  • 〜という意味です(第25課)第25課の「〜という意味です」は、ことばや標識が何を表すかを言う言い方で、「という」の後ろは「意味」です。この課の「という」は、後ろに果物・花・店のような仲間の名詞を置いて、名前を紹介します。どちらも「という」なので、後ろの名詞が「意味」か「物の仲間」かで見分けさせ、「これはドリアンという意味です」のように混ぜたら、「意味を聞いていますか、名前を聞いていますか」と確かめます。
  • 〜と言います/言う(第17課)第17課の「と言います」は、「日本語で『ありがとう』と言います」のように、ことばや人が言ったことを引く言い方です。「これはドリアンと言います」も名前を伝える文としては言えますが、仲間の名詞がつかないので、何の仲間かは伝わりません。この課の「ドリアンという果物」は名詞の前につく形で、そのまま「〜という果物を買いました」のように文の一部にできる点が違います。
関連する文型

語彙の扱い

この課の言葉は、複合動詞の後ろの部分(はじめる・おわる・つづける・だす・なおす)と、見つけたことを言うときの言葉(見える・聞こえる・〜がある・〜ている)、名前を紹介するときの仲間の言葉(果物・花・店・お祭り・料理)の三つに分けると整理しやすくなります。複合動詞は一語ずつ覚えさせるより、「読み+はじめる」のように前と後ろの組み合わせとして、絵カードを2枚重ねて入れます。仲間の言葉は、学生の国の写真と一緒に出すと、「〜という」の練習がそのまま語彙の練習になります。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 降りだします(ふりだします) 雨や雪が、急に降りはじめます。 雨が〜・急に〜
    学校から帰る途中で、空が急に暗くなった。
    「あ、雨が降りだしましたね。急ぎましょう。」
  • 泣きだします(なきだします) 人が、急に泣きはじめます。 急に〜・子どもが〜
    友達と映画を見た話を、次の日に同僚にする。
    「映画の最後で、隣の友達が泣きだしました。」
  • 書きなおします(かきなおします) 一度書いたものを、もう一度書きます。 作文を〜・名前を〜
    市役所の窓口で、書類の字が違っていた。
    「すみません、ここが違います。この紙に書きなおしてください。」
  • 読みおわります(よみおわります) 本や新聞などを、最後まで読みます。 本を〜・もう〜
    先生に借りた本を返しに行く。
    「この本、きのう読みおわりました。お返しします。」
  • 歩きつづけます(あるきつづけます) 休まないで、ずっと歩きます。 1時間〜・山の道を〜
    週末に山に登った話をする。
    「3時間歩きつづけて、やっと山の上に着きました。」
  • 見えます(みえます) 見ようとしなくても、自然に目に入ります。 海が〜・遠くに〜
    飛行機の窓から外を見た話をする。
    「窓の外を見ると、富士山が見えました。」
  • 聞こえます(きこえます) 聞こうとしなくても、音や声が自然に耳に入ります。 音が〜・声が〜
    夜、コンビニへ行こうとして外に出た。
    「外に出ると、どこかから歌が聞こえました。」
  • 角(かど) 道と道が交わって、曲がるところです。 〜を曲がる・二つ目の〜
    新しい町を散歩した話をする。
    「その角を曲がると、小さい公園がありました。」
  • 果物(くだもの) りんごやバナナのような、木などになる甘い食べ物です。 南の国の〜・〜を買う
    会社の昼休みに、珍しい果物を同僚に見せる。
    「これはランブータンという果物です。食べてみてください。」
  • お祭り(おまつり) 町の人が集まって、特別な日をみんなで楽しむ行事です。 夏の〜・〜がある
    日本語の授業で、自分の国の行事を紹介する。
    「わたしの国には、ロイクラトンというお祭りがあります。」
  • 名前(なまえ) 人や物や店を、ほかと分けて呼ぶことばです。 花の〜・店の〜
    公園で知らない花を見つけて、友達に聞く。
    「この花の名前を知っていますか。何という花ですか。」
  • 店(みせ) 物を売ったり、食べ物を出したりするところです。 〜という〜・小さい〜
    同僚に、おいしいラーメン屋を教える。
    「駅の前に『ふくや』というラーメンの店があります。」

宿題と次のコマ

宿題は、最近どこかへ出かけたときのことを、「〜と、〜がありました/見えました」「〜という〜」「〜はじめました/〜おわりました」の三つを入れて、普通体の日記(5文くらい)に書くこと。次のコマの最初に、宿題の日記を読み合って、教師が「〜さんは、角を曲がると、何がありましたか」「何という店でしたか」と聞いて復習し、複合動詞を絵カードで速く言わせてから、第39課の使役に入ります。

よくある質問

  • 第38課の「〜と、…ました」と第15課の「〜と、…」はどう違いますか?

    第15課の「と」は「このボタンを押すと、お湯が出ます」のように、いつもそうなることを言い、後ろは「〜ます」です。この課の「と」は過去の一回のことで、後ろは「〜ました」になり、話し手がそのとき見つけたことや、ひとりでに起きたことを言います。前の形はどちらも辞書形なので、板書で二つの文を上下に並べ、後ろだけが違うことを見せると混乱が少なくなります。

  • 「〜と、…ました」と「〜たら、…ました」はどちらを教えればいいですか?

    見つけたことを言うときは、どちらも使えます。会話では「たら」がよく使われ、「と」は日記や物語のような話の運びで多く出ます。この課では「と」で練習しますが、学習者が「窓を開けたら、雪が降っていました」と言っても直さず、どちらも言えると伝えます。後ろに頼み・誘いの文を置くときは「たら」だけが使えるので、そこだけは必ず分けます。

  • 「うちへ帰ると、すぐ寝ました」は誤りですか?

    文法の誤りではありません。物語や日記で「彼はうちへ帰ると、すぐ寝た」のように、同じ人が続けてしたことを「と」でつなぐ書き方もあります。ただ、初級のこの課では「見つけたこと・ひとりでに起きたこと」に絞って練習するほうが形が安定するので、自分のしたことを順に言うときは第11課の「〜て」を勧めます。上のクラスで物語を読むときに、この使い方を改めて取り上げます。

  • 複合動詞の「〜はじめる」と「〜だす」はどう使い分けますか?

    どちらも動作の始まりを言いますが、「〜だす」は思いがけず急に始まる感じがあり、「急に雨が降りだした」「子どもが泣きだした」のように、話し手が決めていないことによく使います。自分で決めて始めることや、「〜はじめましょう」「〜はじめてください」のような誘い・頼みには「〜はじめる」を使います。迷ったら「はじめる」を選べば不自然になりにくいと伝えると、学習者が安心して使えます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で導入・複合動詞・「〜と、…ました」のペア練習まで、2コマ目の頭に「〜と、…ました」の産出を回し、そのあと「〜という…」とまとめの活動に入ります。新しい活用形がない課なので、形の練習は短くし、三つの形を一つの話の中で使う活動に時間を取ると、次の第39課の使役に進みやすくなります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。