第30課で受身形を作り、人が主語になる受身(ほめられる・手をかまれる・雨に降られる)を学んだのを受けて、この課では物や出来事が主語になる受身と、作った人・建てた人を言う「〜によって」を学びます。第30課の受身は「わたし」や「〜さん」が何かをされて、うれしい・困ったという気持ちを言う形でしたが、この課の受身は、だれがしたかよりも「何が・どうされたか」を伝えるための形で、ニュース・お知らせ・案内・物の説明でよく使われます。新しい活用形はないので、時間は「どんなときに物を主語にするか」を場面で見せることに使えます。教えるときの芯は、第20課の自動詞の文(窓が割れました)と並べて、受身にすると「だれかがした」ことが文に残る、と見せることです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第30課の受身を2〜3人に聞く(「子どものとき、だれによくしかられましたか」)。そのあと教師が自転車置き場の絵を見せて「きのう、わたしの自転車が……盗まれました。だれが盗みましたか。わかりません」と言い、きょうは「わたし」ではなく物が主語になる受身だと予告する。黒板の端には第30課の受身形の表を残しておく(1コマ目は導入から学習項目1の〜ています・お知らせまで、2コマ目は学習項目2から) |
| 学習項目1 物が主語の受身(事件・出来事) | 40分 | 割れた窓・なくなったかばんの絵で「〜が〜られました」を導入。第20課の自動詞の文(窓が割れました)と左右に並べて板書し、受身にすると「だれかがした」ことが残る違いを見せる |
| 学習項目1 物が主語の受身(〜ています・お知らせ) | 40分 | 学生の国の物の写真で「〜は〜で作られています/使われています」、学校の行事カレンダーで「〜は〜月に行われます」。した人を言わなくても物の説明やお知らせになることを確かめる |
| 学習項目2 〜によって | 50分 | 電話・飛行機・有名な絵や建物の写真でクイズをして「〜は〜によって発明されました/建てられました」を導入。作る動詞のカードを「によって」の列に貼り、第30課の「に」と分ける |
| まとめの活動 | 35分 | 「わたしの国の有名な物」の発表。一人一つ選び、いつ・だれによって作られたか(学習項目2)、今どこでどう使われているか・いつ行われるか(学習項目1)を受身で3文にまとめて話し、聞く人は「だれによって作られましたか」と質問する |
| 振り返りと宿題 | 5分 | 二つの受身を一文ずつ言わせて終える(「〜が盗まれました」「〜は〜によって建てられました」)。宿題の発表の題を決めさせ、材料は「で」、作った人は「によって」と最後にもう一度確かめる |
この教案では、受身(4)を物や出来事が主語になる受身として扱います。第30課の受身は人が主語で、その人がほかの人に何かをされたことを言う形でした。この課の受身は物や出来事を主語にして、「何が・どうされたか」を伝えます。した人がわからないとき、だれがしたかは大事ではないとき、多くの人がしていることを言うときに使い、ニュース・お知らせ・物の説明によく出ます。した人はふつう文に出しませんが、「世界中の人に」「多くの人に」のように、する人の広がりを言うときは「に」で言えます。日本語教育の文法では、このように物や出来事が主語になる受身を非情の受身と呼び、人が主語の受身(第30課)と分けて扱います。
物・出来事の名詞+が(は)+受身形(第30課と同じ形)。今も続いていることは「〜れています/られています」。物が主語の受身は「を」をとる動詞(他動詞)からだけ作る
まず第30課の表で受身形を一周する(盗みます→盗まれます、使います→使われます、行います→行われます、建てます→建てられます)。次に事件の絵カード(割れた窓・なくなったかばん・壊れたいす)を見せて「〜が〜られました」、物の写真を見せて「〜は〜で〜られています」と一文で言わせる。場面のやり取りでは、ペアの一人が交番の人、一人が物をなくした人になり、「どうしましたか」「〜が盗まれました」「いつですか」「〜です」と続ける。
この教案では、受身(5)を作った人・建てた人を「〜によって」で言う受身として扱います。建物・作品・発明・発見など、ある人の手で世の中に出た物を主語にして、それをした人を「〜によって」で表します。建てる・作る・書く・描く・発明する・設計するのように物を新しく生む動詞では、した人はふつう「に」ではなく「によって」で言います。歴史や作品の説明、案内板、発表のような、少しかたい話し方・書き方で使われます。文法の上では、動作をした人を表す「に」の代わりに「によって」を使う受身で、作る・建てるのような物を生み出す動詞と強く結びつきます。会話の中で自分や身近な人のしたことを言うときは、受身にせず「〜が〜ました」と言うのがふつうです。
作られた物+は(が)+した人+によって+受身形(建てられました・書かれました・発明されました)
口頭練習では、物の写真カード(電話・飛行機・絵・本・建物)と人の名前カードを組み合わせて「〜は〜によって〜られました」と一文で言わせる。動詞は言わずにカードだけ見せ、物に合う動詞(建てる・書く・描く・発明する)を学生に選ばせると、「によって」と動詞の組み合わせが身につく。場面のやり取りでは、ペアで自分の国の有名な物を一つずつ選び、「これは何ですか」「〜です」「だれによって作られましたか」「〜によって作られました」と聞き合う。
この課では、事件やニュースの言葉(盗む・事件・警察 など)と、建物・作品・発明を説明する言葉(建てる・発明する・設計する・〜年前 など)が中心になる課だと考えられます。動詞は辞書形だけで覚えさせず、「〜が盗まれました」「〜によって建てられました」のように受身形と助詞をつけた形でカードにし、学習項目の練習にそのまま使います。「行われます(おこなわれます)」は読みでつまずきやすいので、行事のカレンダーで何度も声に出させます。
宿題は、自分の国や町の有名な物(建物・料理・祭り・発明など)を一つ選び、いつ・だれによって作られたかを「〜によって」で1文、今どこでどう使われているか・いつ行われるかを「〜ています」や「〜れます/られます」の受身で1〜2文書くこと。あわせて受身形の表(グループⅠ・Ⅱ・Ⅲを5語ずつ。使う・言う・行うを必ず入れる)を埋める。次のコマの最初に、宿題の文を2〜3人に発表させて復習し、「建てられました」の普通形「建てられた」を言わせてから、第32課の「〜そうです 伝聞」に入ります。
第31課の受身と第30課の受身はどう違いますか?
第30課は人が主語で、その人がされたこと(ほめられる・足を踏まれる・雨に降られる)を言い、うれしい・困ったという気持ちが入りやすい形です。第31課は物や出来事が主語で、だれがしたかより「何がどうされたか」を伝え、気持ちは入りません。形は同じなので、主語が人か物かで分け、ニュース・お知らせ・物の説明という場面と結びつけて見せます。
「〜によって」と「〜に」の使い分けはどう教えればいいですか?
建てる・作る・書く・描く・発明する・設計するのように物を新しく生む動詞の受身では、作った人を「によって」で言います。第30課の「先生にほめられました」のような、された人がいる受身の「に」とは列を分けて板書します。「この本は世界中の人に読まれています」のように、物が主語でも生む動詞でなければ「に」で言えるので、初級では動詞で覚えさせるのが早道です。
「窓が割れました」と「窓が割られました」の違いは何と説明しますか?
「割れました」は第20課の自動詞で、窓に起きたことだけを言い、だれかがしたかどうかは言いません。「割られました」は他動詞の受身で、だれがしたかわからなくても「だれかがした」ことが文に残ります。事件として管理人や交番に伝えるときは受身、風で割れたときは自動詞、と場面で分けて見せます。
第31課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と学習項目1(事件の受身、〜ています・お知らせの受身)、2コマ目は学習項目2「〜によって」とまとめの発表です。第30課の受身形がまだ不安なクラスは、1コマ目の最初に受身形の表を5分で一周してから入ると、新しい用法の練習が止まりません。
第31課の板書はどう組めばいいですか?
黒板の左に第30課の受身形の表を残し、真ん中に能動文と受身文を上下に書いて「を→が/は」の矢印を赤で入れます。右には第20課の自動詞の文と受身の文を並べ、受身の文にだけ人の形の印を付けます。2コマ目は右側を「によって」の列(建てる・作る・書く・発明する)と材料の「で」の列に書き替えると、二つの「作られています」が混ざりません。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。