日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第35課「先生がこの本をくださいました」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

第14課の「あげます・もらいます・くれます」に上下の関係を足して、目上の人とのやり取りを「くださいます・いただきます・さしあげます」、年下の家族・動物・植物へのやり取りを「やります」で言い分ける課です。物の動く向き(だれからだれへ)と、だれの側から言うかの決まりは第14課とまったく同じなので、板書は第14課の矢印の図をそのまま使い、人の絵を「上・横・下」の高さに貼り直すだけにすると、学習者は新しい動詞を「向き」と「高さ」の二つで選べるようになります。新しい活用はありませんが、「くださる」のます形が「くださいます」になる点だけは例外として最初に押さえます。卒業や帰国の前に、お世話になった先生や上司にお礼を言う場面がそのまま使える課で、「〜てくださって、ありがとうございました」が言えることを最後の目標にします。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 目上の人が自分(や自分の家族)に物をくれたこと・何かをしてくれたことを「くださいました/〜てくださいました」で言える
  • 同じ出来事を受け取った側から「いただきました/〜ていただきました」で言い、「が」と「に」を取り違えない
  • 目上の人に物を渡したことを「さしあげました」で人に話せる。面と向かっての申し出には「〜てさしあげます」を使わず、「〜ましょうか」などの言い方を選べる
  • 弟・妹・自分の子ども・動物・植物に何かを渡すときの「やります」を理解し、いまは「あげます」を使う人も多いことを知っている

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第34課の「〜ことになりました」で、卒業・帰国・引っ越しの予定を2〜3人に聞く(「来月、国へ帰ることになりました」)。そこから「お世話になった人に何をあげますか」と話をつなぎ、第14課の「あげます・もらいます・くれます」の矢印の図を黒板に描いて思い出させる。そのあと人の絵を「上(先生・上司)・横(友達)・下(弟・犬・花)」の高さに貼り直し、この課は「高さ」で動詞が変わる課だと予告する
学習項目1 くださいます/〜てくださいます40分上の人から「わたし」へ向かう矢印に「くださいます」と書く。「くれます」の文を先生の文に言い換える練習から入り、ます形が「くださいます」になる例外を赤で板書。行為の「〜てくださいました」と、お礼の「〜てくださって、ありがとうございました」まで
学習項目2 いただきます/〜ていただきます35分学習項目1の場面を受け取った側から言い直す。矢印はそのままで「は」の印を「わたし」に移し、「先生が〜くださいました」「先生に〜いただきました」を上下に並べて板書する。食事のあいさつの「いただきます」と同じ言葉だと結びつける。1コマ目はここまでで、最後に上下の文の言い換えを全員で1周して終える
学習項目3 さしあげます/〜てさしあげます35分2コマ目の最初に、くださいます⇔いただきます の言い換えを絵カードで1分復習してから入る。「わたし」から上の人へ向かう矢印に「さしあげます」と書く。人に報告する文で練習したあと、目上の人の前でそのまま言うとどう聞こえるかを考えさせ、申し出には「〜ましょうか」を使うことを確かめる
学習項目4 やります/〜てやります25分下へ向かう矢印に「やります」と書き、弟・自分の子ども・犬・花のカードを貼る。「花に水をやる」「犬にえさをやる」を生活の言葉として入れ、いまは「あげます」で言う人も多いことを伝える
まとめの活動35分上・横・下の高さと向きで七つの動詞(あげます・さしあげます・やります・もらいます・いただきます・くれます・くださいます)を図に書き入れて完成させる。最後に、お世話になった目上の人に向けた短いお礼のスピーチ(「〜てくださって、ありがとうございました」を一つ以上入れる)を一人ずつ発表する

学習項目 1 くださいます/〜てくださいます

意味・はたらき学習項目 1

第14課の「くれます」の敬語の形です。先生・上司・お客様のような目上の人が、「わたし」や、わたしの家族のような話し手の側の人に物を渡すときに「くださいます」を使います。渡す人は「が」(または「は」)で表し、受け取るのが「わたし」なら「わたしに」は言わないことが多いです。何かをしてくれたときは「Vて+くださいます」で、相手への感謝の気持ちが入ります。辞書形は「くださる」ですが、ます形は「くださります」ではなく「くださいます」になります。第11課の「〜てください」の「ください」も、もとはこの動詞の形です。

接続

目上の人+が+(わたしに)+物+を+くださいます/くださいました。行為は Vて+くださいます(くださる はグループⅠ。て形 くださって・た形 くださった・ます形だけ くださいます)

形
先生が(わたしに)Nをくださいました先生がわたしの家族にNをくださいました先生が(わたしの)NをVてくださいましたVてくださって、ありがとうございました

導入

  • 矢印の図に「高さ」を足す第14課の矢印の図を黒板に描き、「友達がわたしにお土産をくれました」を言わせる。次に友達の絵を外して、黒板の高い位置に会社の部長の絵を貼り、そこから「わたし」へ下向きの矢印を引く。教師が「部長がお土産をくださいました」と言い、矢印の横に「くれます→くださいます」と書いて、向きは同じで高さだけが変わったと見せる。
  • してもらったことを聞いてから言い直す学生に「日本に来てから、先生や会社の人は何をしてくれましたか」と聞き、「先生が駅までの地図をかいてくれました」のような答えを集める。教師が「先生ですから、かいてくださいました、ですね」と言い直し、板書に「Vて くださいました」の枠を足す。最後に教師に向かって言う形として「〜てくださって、ありがとうございました」を板書し、全員で言う。

板書案

目上の人 が (わたしに) N を くださいます
〔図〕上の高さの部長の絵 → 下向きの矢印 → わたし
部長が わたしに お土産を くださいました。
先生が 駅までの 地図を かいて くださいました。
〔赤〕くださる → くださいます(*くださります)
〔青〕お礼の形 Vて くださって、ありがとうございました

場面と発話(自作)

  • 卒業式のあと、留学生が友達に、先生からもらった辞書を見せる。この辞書は、田中先生がくださいました。
  • 会社で、入院していたときに部長がお見舞いに来たことを、同僚に話す。部長が病院まで来てくださいました。
  • 面接の練習を見てもらった学生が、次の日に先生にお礼を言う。先生、きのうは面接の練習を見てくださって、ありがとうございました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が「友達が〜をくれました」と言い、人のカードを先生・部長・お客様に替えて見せたら、学生が「先生が〜をくださいました」と言い換える。慣れたら行為の絵カード(直す・教える・案内する・待つ)で「〜てくださいました」に広げる。場面のやり取りでは、教師が目上の人の役になり、学生が前の日にしてもらったことを思い出して「〜てくださって、ありがとうございました」とお礼を言い、教師が「いいえ、どういたしまして」と返す。

  1. 口頭教師が人のカードと物・行為の絵を同時に見せ、学生が「〜が〜をくださいました」で言う。キューは「先生+辞書」「部長+お土産」「ホストファミリーのお母さん+セーター」、行為なら「先生+傘を貸す」「店長+駅まで送る」「先輩+道を教える」。全体→列→個人の順で回し、途中に友達や弟のカードを混ぜて「くれました」と選び分けさせる。ます形でつまったら板書の赤い例外を指すだけにする。
  2. ペアAに「日本でお世話になった人」のカード(人と、その人がしてくれたことが書いてある)を3枚、Bには何も書いていない表を渡す。Bが「だれが何をしてくださいましたか」と聞き、Aがカードを見て「〜さんが〜てくださいました」と答え、Bは表に書く。3枚終わったら交替し、最後に表とカードを突き合わせて合っているか二人で確かめる。
  3. 産出「恩人紹介 1分スピーチ」。自分がお世話になった目上の人を一人選び、その人がしてくれたことを「〜が〜てくださいました」で2文以上入れて話し、最後はその人に向けて「〜てくださって、ありがとうございました」で締める。教師が見るのは、ます形「くださいます」、主語の「が」(「わたしは」にしていないか)、選んだ人が本当に目上か(友達に使っていないか)の3点。終わったら一つだけ直して、もう一度言わせる。

つまずきと手当て

  • ます形を「*くださります」「*くださりました」と作る。辞書形が「る」で終わるので、学習者はほかの動詞と同じ形にしてしまう。板書の端に「くださる→くださいます」を例外として赤で書き、て形・た形(くださって・くださった)はふつうの作り方でよいことも合わせて見せる
  • 「*わたしは部長にお土産をくださいました」と、受け取った「わたし」を主語にする。「くださいます」の主語は渡した部長だと矢印の元を指さし、「わたし」を主語にしたいときは学習項目2の「いただきました」を使うと予告する
  • 先生のことを話すときに「先生がくれました」と言う。文法の誤りではないが、目上の人の行為なので失礼に聞こえることがある。第14課の「くれます」は友達や家族に、先生や上司には「くださいます」と、人のカードの高さで選ばせる

既習の文型との違い

  • 〜が…をくれました(第14課)形も矢印の向き(相手からわたしへ)もまったく同じで、違うのは渡す人の高さだけです。友達や家族には「くれました」、先生・上司・お客様には「くださいました」を選びます。先生のことを「先生がくれました」と話すと失礼に聞こえ、逆に友達に「くださいました」と言うと丁寧すぎて冗談のように聞こえます。
  • 〜てください(第11課)「〜てください」は今これから相手に頼む文で、「〜てくださいました」は相手がしてくれたことを話す文です。もとは同じ動詞なので、学習者は頼むつもりで「先生、窓を開けてくださいました」と過去の形を言ってしまうことがあります。頼むときは「〜てください」、してもらったあとのお礼は「〜てくださって、ありがとうございました」と、場面の前後で分けて見せます。
関連する文型

学習項目 2 いただきます/〜ていただきます

意味・はたらき学習項目 2

第14課の「もらいます」の敬語の形(自分の側を低くして言う謙譲の形)です。「わたし」や話し手の側の人が、目上の人から物を受け取るときに使います。受け取る人を「は」、渡した目上の人を「に」または「から」で表します。同じ出来事を、渡した人を主語にすると「先生がくださいました」、受け取った人を主語にすると「先生にいただきました」になります。何かをしてもらったときは「Vて+いただきます」で、「〜ていただきました」は自分が頼んでしてもらったときによく使い、「〜てくださいました」は相手が進んでしてくれた気持ちが出やすい、という傾向があります。食事の前の「いただきます」も同じ言葉です。

接続

受け取る人+は+目上の人+に(から)+物+を+いただきます/いただきました。行為は 目上の人+に+Vて+いただきます(いただく はグループⅠ。て形 いただいて・た形 いただいた)

形
わたしは先生にNをいただきましたわたしは先生からNをいただきました先生にNをVていただきましたVていただいて、ありがとうございました

導入

  • 同じ場面を受け取った側から言い直す学習項目1の「部長がお土産をくださいました」の板書をそのまま使い、矢印の向きは変えずに「は」の印を「わたし」の絵に移す。教師が「わたしは部長にお土産をいただきました」と言い、二つの文を上下に並べて「が」と「に」の位置に赤で印をつける。第14課の「くれました/もらいました」の組と同じ関係だと、図の横に小さく書いておく。
  • 食事のあいさつから意味をつかませる教師が弁当を食べる身ぶりをして「いただきます」と言い、学生に「どういう意味ですか」と聞く。「食べ物をもらいます、の丁寧な言い方です」と説明し、目上の人から物を受け取るときにも同じ言葉を使うと伝える。そのうえで、教師が学生にお菓子を一つ渡し、学生が「ありがとうございます。いただきます」と言って受け取る、を何人かで回す。

板書案

わたし は 目上の人 に(から) N を いただきます
部長 が わたしに お土産を くださいました。
わたし は 部長 に お土産を いただきました。
〔赤〕「が」と「に」に丸 〔青〕「は」の印を わたし の絵へ移す
先生に 推薦状を 書いて いただきました。

場面と発話(自作)

  • アルバイト先の店長から旅行のお土産をもらった留学生が、そのことを日本語の先生に話す。きのう、店長にお菓子をいただきました。
  • 大学に出す推薦状を先生に書いてもらった学生が、学校の職員に書類のことを聞かれて答える。推薦状は山田先生に書いていただきました。
  • 結婚のお祝いをもらった社員が、お祝いをくれた部長に直接お礼を言う。部長、すてきなお祝いをいただいて、ありがとうございました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が「先生が〜をくださいました」と言ったら、学生が「わたしは先生に〜をいただきました」と言い換える往復を速く回し、行為のカードでも「〜てくださいました⇔〜ていただきました」を言い換えさせる。場面のやり取りでは、ペアで「日本に来てから、だれに何をしていただきましたか」と聞き合い、答えを「〜さんは〜に〜ていただきました」とクラスに報告させる。

  1. 口頭教師が学習項目1の文を言い、学生が受け取った側の文に言い換える。キューは「部長がお土産をくださいました」「先生が地図をかいてくださいました」「店長が仕事の時間を替えてくださいました」など。全員で言い換えたら、逆向き(「いただきました」→「くださいました」)も混ぜてテンポを上げる。言い換えのたびに、教師は黒板の「が」と「に」の丸を指して助詞だけ確かめさせる。
  2. ペア「日本に来てから、だれに何をしていただきましたか」でインタビューする。Aが聞き、Bは本当のことを2つ答える。Aは答えをメモし、聞き終わったら交替。メモには「だれに」「何を」の二つの欄だけを作らせ、受け取った相手を「に」で書く習慣をつける。
  3. 産出「お世話になりました インタビュー報告」。ペアで聞いたことを、クラスに「〜さんは日本に来てから、〜に〜ていただきました」で報告し、そのあと同じ内容をノートに2文書く。教師が見るのは、主語が受け取った人になっているか、目上の人に「に」がついているか、「*先生が〜ていただきました」の混同がないかの3点。報告のあとで、同じ出来事を「くださいました」で言い直させ、両方の形で言えるかを確かめる。

つまずきと手当て

  • 「*部長がわたしにお土産をいただきました」と、渡した部長を主語にする。「いただきます」の主語は受け取る人なので、矢印の先に「は」の印があることを図で確かめ、学習項目1の文と並べて言い換えさせる
  • 「*先輩が引っ越しを手伝っていただきました」「*先輩に引っ越しを手伝ってくださいました」と、二つの形の助詞を取り違える。「くださいました」は「〜が」、「いただきました」は「〜に」とカードに書いて組で覚えさせる
  • 目上の人から物を受け取るときに「もらいます」と言う。文法の誤りではないが、丁寧さが足りなく聞こえる。受け取る場面では「ありがとうございます。いただきます」を決まった言い方として練習しておく

既習の文型との違い

  • 〜は…に―をもらいました(第14課)文の組み立て(受け取る人は、渡す人に、物を)は同じで、渡す人が目上のときに「いただきます」を使います。友達からは「もらいました」のままでよく、先生から受け取ったことを「もらいました」と話すと丁寧さが足りなく聞こえます。
  • くださいます/〜てくださいます(第35課 学習項目1)同じ出来事を、渡した人を主語にすると「先生がくださいました」、受け取った人を主語にすると「わたしは先生にいただきました」です。学習者は二つを混ぜて「*先輩に引っ越しを手伝ってくださいました」「*先輩が引っ越しを手伝っていただきました」と言うので、動詞と助詞を「くださいました=が」「いただきました=に」の組で覚えさせます。
関連する文型

学習項目 3 さしあげます/〜てさしあげます

意味・はたらき学習項目 3

第14課の「あげます」の謙譲の形で、「わたし」や話し手の側の人が、先生・上司・お客様のような目上の人に物を渡すときに使います。渡す人を「は」、受け取る目上の人を「に」で表します。主に、目上の人に物を渡したことをほかの人に話すときや、改まった文章で使います。何かをしてあげるときの「Vて+さしあげます」は、敬語の形になっても「あなたのためにしてあげる」という意味が残るので、目上の人に面と向かって「荷物を持ってさしあげます」と言うと、恩を着せるような、押しつけがましい言い方に聞こえます。目上の人に手伝いを申し出るときは「持ちましょうか」や、第37課で習う「お持ちしましょうか」のような言い方にします。

接続

渡す人+は+目上の人+に+物+を+さしあげます/さしあげました。行為は Vて+さしあげます(さしあげる はグループⅡ。て形 さしあげて)

形
わたしは先生にNをさしあげました(人)はお客様にNをさしあげました(目上の人)にNをVてさしあげてください(店員どうしの指示など、その人のいない所で)面と向かっての申し出は Vましょうか(第37課で お〜しましょうか)

導入

  • 上へ向かう矢印を引く「わたし」の絵から高い位置の社長の絵へ上向きの矢印を引き、教師が「わたしは社長に国の写真集をさしあげました」と言う。横の友達の絵へ向かう矢印には「あげます」、上へ向かう矢印には「さしあげます」と書き分ける。学生に「国へ帰る前に、お世話になった人に何をさしあげますか」と聞いて、答えを板書の枠に入れていく。
  • 面と向かって言うとどう聞こえるかを考えさせる教師が重い荷物を持った先生の役をし、学生に「先生、荷物を持ってさしあげます」と言わせてみる。教師が少し困った顔をして見せ、「『あなたのためにしてあげる』と聞こえます」と説明する。そのあと同じ場面で「先生、持ちましょうか」と言わせ、教師が「ありがとう」と荷物を渡すところまで演じて、申し出の言い方を比べさせる。

板書案

わたし は 目上の人 に N を さしあげます
〔図〕わたし → 上向きの矢印 → 社長  横の矢印 → 友達(あげます)
社長に 国の 写真集を さしあげました。(ほかの人に話す文)
〔赤〕面と向かって言うときは 「持ちましょうか」
〔赤〕「持って さしあげます」は 目上の人の前では 使わない

場面と発話(自作)

  • 卒業式のあと、クラスで集めたお金で花を買って担任の先生に渡したことを、ほかの先生に話す。クラスのみんなで、田中先生に花をさしあげました。
  • 会社で、きのう来たお客様に国のお土産を渡したかどうか、上司に聞かれて答える。はい、きのうお客様にさしあげました。
  • 旅行会社のカウンターで、先輩の社員が、道を聞かれて困っている後輩に小さい声で言う。お客様に地図をかいてさしあげてください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、人のカードを上(先生・社長・お客様)と横(友達・同僚)に貼り分け、教師が指したカードによって「〜に〜をあげました」「〜に〜をさしあげました」を選んで言わせる。場面のやり取りでは、目上の人が困っている絵(荷物が重い・ドアが開けられない・傘がない)を見せ、「〜ましょうか」で申し出て、相手役が「ありがとう、お願いします」と答える短いやり取りにする。

  1. 口頭人のカードを上(先生・社長・お客様)と横(友達・同僚)に貼り分け、教師が人と物の組を指して言わせる。キューは「先生+国の絵はがき」「友達+CD」「社長+国のお茶」「同僚+お菓子」で、学生は高さを見て「さしあげました」か「あげました」を選ぶ。次に、困っている目上の人の絵(荷物が重い・ドアが開かない・傘がない)に切り替え、「〜ましょうか」で申し出る口頭練習をする。
  2. ペアAが目上の人の役で、困っている場面のカードを1枚引いて演じ、Bが「〜ましょうか」で申し出る。Aは「ありがとう、お願いします」か「いいえ、大丈夫です」で答える。そのあとAは友達の役に変わり、Bはいまの出来事を「きのう、〜先生に〜をさしあげました」のように話す。3場面で交替する。
  3. 産出「お礼のプレゼント会議」。3〜4人のグループで、卒業していく先輩やお世話になった先生に何を渡すかを相談し、決まったことを「わたしたちは〜に〜をさしあげることにしました。〜からです」とクラスに発表する。教師が見るのは、発表の文で「さしあげます」を使えているか、相談の中で同じクラスの人に「さしあげる」を使っていないか、渡す本人に向けて「さしあげます」と言っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 目上の人に面と向かって「先生、かばんを持ってさしあげます」「これをさしあげます」と言う。文法の誤りではないが、恩を着せるように、押しつけがましく聞こえる。物を渡すときは「どうぞ」「よろしかったら、どうぞ」、手伝いは「持ちましょうか」と言い、第37課の「お持ちしましょうか」につなげる
  • 「*先生がわたしに辞書をさしあげました」と、目上の人から自分へのやり取りに使う。向きが「わたし」へ来るときは学習項目1の「くださいました」になることを矢印の図で確かめる
  • 友達や同僚に「さしあげます」を使う。誤りではないが、丁寧すぎて距離を置いているように聞こえる。横の高さの人には第14課の「あげます」でよいと、カードの高さに戻って選ばせる

既習の文型との違い

  • 〜は…に―をあげました(第14課)向き(わたしから相手へ)は同じで、相手が目上なら「さしあげます」、友達や同僚なら「あげます」です。友達に「さしあげました」と話すと丁寧すぎて距離を感じさせます。
  • 〜は…に―を〜てあげました(第14課)「〜てあげます」も「〜てさしあげます」も「あなたのためにする」という意味が残るので、目上の人に面と向かって言うと押しつけがましく聞こえる点は同じです。学習者は敬語にすれば失礼ではなくなると考えて「先生、手伝ってさしあげます」と言いがちなので、申し出はどちらも使わず「〜ましょうか」にすると、同じ場面で三つを並べて見せます。
関連する文型

学習項目 4 やります/〜てやります

意味・はたらき学習項目 4

第14課の「あげます」を、自分より下の人や物に使う形です。弟・妹・自分の子どものような年下の家族、犬や猫などの動物、花や木などの植物に物を渡すときに使い、「花に水をやる」「犬にえさをやる」はよく使う言い方です。何かをしてあげるときは「Vて+やります」です。ただし、いまは動物や植物、自分の子どもにも「あげます」を使う人が多く、「やります」は少し乱暴に聞こえると感じる人もいます。よその家の子どもには「あげます」がふつうです。学習者には、聞いて分かること、自分で言うときは「あげます」でも誤りではないことを伝えます。

接続

渡す人+は+年下の家族・動物・植物+に+物+を+やります/やりました。行為は Vて+やります(やる はグループⅠ。て形 やって)

形
(年下の家族・動物・植物)にNをやりました犬にえさをやります/花に水をやります(年下の家族)にNをVてやりました(年下の家族)をVてやりました(手伝って・待って)

導入

  • 下へ向かう矢印に生活の絵を貼る「わたし」の絵から低い位置へ下向きの矢印を引き、弟・子ども・犬・花のカードを貼る。教師が自分の朝の話として「毎朝、ベランダの花に水をやります。それから、犬にえさをやります」と言い、矢印の横に「やります」と書く。上・横・下の三つの矢印がそろったところで、「さしあげます・あげます・やります」を高さの順に読ませる。
  • 「あげます」と言う人も多いことを伝える学生に「うちで動物や花を育てていますか」と聞き、「犬にえさをあげます」と答えた学生がいたら直さずにほめる。そのうえで、教師が「『やります』と言う人も、『あげます』と言う人もいます」と伝え、「水をやる」は今もよく聞く言い方なので、聞いて分かるようにしておこうと説明する。家族の話として「妹の宿題を見てやりました」も一つ板書する。

板書案

わたし は 下(弟・子ども・動物・植物) に N を やります
毎朝、花に 水を やります。
犬に えさを やりました。
〔青〕上 さしあげます 横 あげます 下 やります(今は あげます も多い)
〔赤〕花に 水を やる(=渡す) / 宿題を やる(=する)

場面と発話(自作)

  • 一週間旅行に行く留学生が、寮の友達にベランダの植物の世話を頼む。毎朝、この花に水をやってください。
  • 日本語教室で、子どもがいる学習者が、週末にしたことを話す。日曜日、息子に自転車を買ってやりました。
  • 国の妹が日本語の勉強を始めたので、自分が使っていた辞書を送ったことを、クラスメートに話す。妹に、わたしが日本で使っていた辞書をやりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、下の高さのカード(弟・妹・息子・犬・猫・花)と物・行為のカード(水・えさ・おもちゃ・宿題を見る・自転車を直す)を組み合わせて「〜に〜をやりました」「〜に〜てやりました」と言わせ、途中に上・横のカードを混ぜて七つの動詞から選ばせる。場面のやり取りでは、旅行の前に友達にペットや植物の世話を頼む会話(「えさをやってください」「何回やりますか」)をペアで行う。

  1. 口頭下の高さのカード(弟・妹・息子・犬・猫・花)と物・行為のカード(水・えさ・おもちゃ・自転車を直す・宿題を見る)を組み合わせて見せ、学生が「〜に〜をやりました」「〜に〜てやりました」で言う。キューは「花+水」「猫+えさ」「弟+古いパソコン」「息子+自転車を直す」など。慣れたら上・横の人のカードを混ぜ、七つの動詞から選ばせる。
  2. ペア「留守番のお願い」。Aは旅行に行く人で、ペットと植物の世話のメモ(何に・何を・何回)を持ち、Bは頼まれる友達でメモを持たない。Aが「毎朝、猫にえさをやってください」のように頼み、Bは「何回やりますか」「水はどのくらいやりますか」と聞いてメモを作る。最後にBが聞いたことを言い直し、Aのメモと合っているか確かめてから交替する。
  3. 産出「わたしの家の世話メモ」。自分の家(または国の家)で動物や植物、年下の家族にしていることを3文書き、隣の人に読む。「やります」を使わない人は「あげます」で書いてもよいと最初に伝える。教師が見るのは、「やります」を上や横の人に使っていないか、物を渡す文に「〜に」があるか、「宿題をやる」の意味と混ざっていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「*弟がわたしにマンガをやりました」と、年下の人から「わたし」へのやり取りに使う。向きが「わたし」へ来るときは高さに関係なく第14課の「くれました」になることを図で確かめる
  • 先生や友達、よその家の子どもに「やりました」を使う。文法の誤りではないが、とても失礼・乱暴に聞こえる。「やります」の矢印は下の高さだけ、と図のカードを指して確かめ、迷ったら「あげます」を使えばよいと伝える
  • 「宿題をやります」の「やる(=する)」と混同して、意味が分からなくなる。物を渡す「〜に〜をやる」と、くだけた「する」の意味の「〜をやる」は別だと、「に」があるかどうかで見分けさせる。また「勝ってやる」のように強い気持ちを表す「〜てやる」もあるが、この課では扱わないと一言だけ添える

既習の文型との違い

  • 〜は…に―をあげました(第14課)向きは同じで、相手が年下の家族・動物・植物のときに「やります」を使えます。ただし今は「犬にえさをあげる」「花に水をあげる」と言う人も多く、学習者が「あげます」と言っても誤りにはしません。よその家の子どもや友達に「やりました」を使うと乱暴に聞こえるので、迷ったら「あげます」と教えます。
  • 〜は…に―を〜てあげました(第14課)「〜てやります」は自分の子どもや弟妹のためにしたことを家族の外の人に話すときに出やすく、「息子に自転車を買ってやりました」のように使います。同じ文を「買ってあげました」と言っても通じます。「〜てやる」には「勝ってやる」のような強い気持ちの用法もあるので、この課では物を渡す・世話をする場面に絞ります。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は、お礼やお祝いの場面の言葉(お祝い・お見舞い・お土産など)と、目上の人を表す呼び方(部長・社長・お客様など)、動物や植物の世話の言葉(えさ・水をやる など)が中心になると考えられます。人の呼び方は、上・横・下の矢印の図に貼るカードとして使い回すと、語彙と動詞の選び分けの練習が一度にできます。「えさ」「水」は「やる」と、「お祝い」「お土産」は「いただく・さしあげる」と組にして、単語だけでなく動詞つきの形で覚えさせます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • お土産(おみやげ) 旅行に行った人が、帰ってきてほかの人に渡す、その土地の物です。 国の〜・〜を買う・〜をいただく
    夏休みに国へ帰った留学生が、日本語の先生に国のお菓子を渡したことを友達に話す。
    「先生に国のお土産をさしあげました。」
  • お祝い(おいわい) 結婚・入学・卒業などのうれしいことを喜んで、言葉や物を贈ることです。贈る物のことも言います。 入学の〜・結婚の〜・〜をいただく
    大学に合格した留学生が、アルバイト先で店長から何かをもらったことを話す。
    「店長に入学のお祝いをいただきました。」
  • お見舞い(おみまい) 病気やけがをした人のところへ行って、ようすを聞いたり、物を渡したりすることです。 〜に行く・〜の花
    入院していた学生が、退院したあと担任の先生にお礼を言う。
    「先生、お見舞いに来てくださって、ありがとうございました。」
  • 推薦状(すいせんじょう) その人がどんな人か、よいところを書いて、学校や会社に紹介する手紙です。 〜を書く・〜を頼む・〜を出す
    大学に出す書類のことを、学校の職員に聞かれて答える。
    「来週、担任の先生に推薦状を書いていただくことになりました。」
  • 案内します(あんないします) 場所や道が分からない人といっしょに行って、見せたり教えたりします。 町を〜・駅まで〜・会社の中を〜
    会社に初めて来た日のことを、国の友達に話す。
    「先輩が会社の中を案内してくださいました。」
  • 直します(なおします) 間違っているところを正しくします。壊れた物を使えるようにするときにも使います。 作文を〜・間違いを〜・自転車を〜
    日曜日に家でしたことを、日本語教室で話す。
    「息子の自転車を直してやりました。」
  • 送ります(おくります) 人をある場所までいっしょに連れて行きます。物を遠くの人に届けるときにも使います。 駅まで〜・車で〜・荷物を〜
    雨の夜、アルバイトのあとのことを同僚に話す。
    「きのうは雨だったので、店長が駅まで車で送ってくださいました。」
  • お礼(おれい) 何かをしてもらったときに、ありがとうの気持ちを言ったり、物を渡したりすることです。 〜を言う・〜の手紙・〜に
    推薦状を書いてもらった先生に、何を渡したかを友達に話す。
    「お礼に、先生に国のお茶をさしあげました。」
  • えさ(えさ) 動物や魚が食べる物です。 犬に〜をやる・魚の〜・〜の時間
    旅行に行く前に、寮の友達に猫の世話を頼む。
    「朝と夜、猫にえさをやってください。」
  • 育てます(そだてます) 子ども・動物・植物の世話をして、大きくします。 花を〜・野菜を〜・子どもを〜
    クラスで、家でしていることを話す。
    「ベランダでトマトを育てています。毎朝、水をやります。」
  • お世話になります(おせわになります) ほかの人にいろいろ助けてもらいます。お礼やあいさつの決まった言い方として使います。 いろいろ〜・長い間〜
    帰国の前の日、寮の管理人にあいさつする。
    「長い間お世話になりました。いろいろ教えてくださって、ありがとうございました。」

宿題と次のコマ

宿題は、日本に来てからお世話になった目上の人を一人選び、その人に渡す短いお礼のカードを書くこと(「〜てくださって、ありがとうございました」か「〜ていただいて、ありがとうございました」を必ず一つ入れる)と、上・横・下の矢印の図に七つの動詞を書き入れて、それぞれの動詞で自分の経験の文を一つずつ作ること。次のコマの最初にカードを何人かに読ませ、教師が「だれに何をしていただきましたか」と聞いて復習してから、第36課の「〜れます/〜られます 尊敬」に入ります。目上の人の行為を高めて言う課なので、この課の「くださいます」が尊敬の言い方の入り口になると予告しておきます。

よくある質問

  • 第35課の「くださいます」と「いただきます」はどう使い分けさせればいいですか?

    同じ出来事を、だれを主語にして言うかの違いです。渡した目上の人が主語なら「先生がくださいました」、受け取った人が主語なら「わたしは先生にいただきました」になります。板書では矢印の図を動かさず、「は」の印だけを移して二つの文を上下に並べ、「くださいました=が」「いただきました=に」の組で覚えさせると、助詞の取り違えが減ります。

  • 「〜てさしあげます」を目上の人に言ってはいけないのはなぜですか?

    敬語の形になっても「あなたのためにしてあげる」という意味が残るので、相手に面と向かって言うと恩を着せるように聞こえるからです。「さしあげます」は、目上の人に何かをしたことをほかの人に話すときの言い方として練習します。申し出は「持ちましょうか」にし、第37課の「お持ちしましょうか」につなげます。

  • 「やります」は今も教える必要がありますか?

    「花に水をやる」「犬にえさをやる」は今も生活でよく聞くので、聞いて分かるようにしておく価値はあります。一方で、動物や植物、自分の子どもにも「あげます」を使う人が多いので、学習者が自分で言うときは「あげます」でも誤りにしません。「あげる」が使われるうちに丁寧さが薄れて広く使われるようになった例として、敬意逓減の説明に使われることもあります。

  • 第35課は何コマで終わりますか?板書はどう組めばいいですか?

    90分×2コマが目安で、1コマ目に「くださいます」「いただきます」、2コマ目に「さしあげます」「やります」とまとめの活動を入れます。板書は第14課の矢印の図を左に大きく描き、人の絵を上・横・下の高さに貼り分けて、2コマとも同じ図に動詞を書き足していくと、最後に七つの動詞の表が黒板に完成します。

  • 「くださる」のます形が「くださいます」になるのはなぜですか?

    「くださります」の「り」が「い」に変わった形が定着したもので、第36課で出る「いらっしゃる」「おっしゃる」「なさる」も「いらっしゃいます」「おっしゃいます」「なさいます」と同じ形になります。学習者には理由より先に、この課では「くださる→くださいます」の1語だけが例外だと示し、て形・た形はふつうのⅠグループと同じ(くださって・くださった)だと押さえれば十分です。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。