日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第40課「学生は先生に本を読ませられました」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

初級Ⅱの最後の課で、第39課の使役形に第30〜31課の受身をかさねた使役受身形(〜させられる/〜される)を学びます。使役受身は「ほかの人に言われて、したくないことをした」と、した本人の側から言う形で、子どものころの思い出・アルバイトや会社でのいやな経験など、学習者に話したいことがたくさんある場面で使えます。後半は受身・使役・使役受身の三つを同じ出来事で並べ、「だれが言ったか」「だれがしたか」「だれが困ったか」を整理し、最後に初級Ⅱ(第21〜40課)で学んだ形を組み合わせて使う活動で本を締めくくります。板書は「する(能動)→ させる(使役)→ させられる(使役受身)」の3段と、「される(受身)」を横に置いた表を課の最後まで残すと、三つの関係が一目で見えます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞を使役受身形に変えられ、グループⅠ(す で終わる動詞を除く)では話し言葉の「〜される」の形も使える
  • 「わたしは〈させた人〉に〜させられました」で、ほかの人に言われてしかたなくしたことを、した本人の側から話せる
  • 同じ出来事を受身・使役・使役受身で言い分け、それぞれの文で「だれがしたか」「だれが言ったか」を正しく読み取れる
  • 初級Ⅱで学んだ形(可能・意向・条件・推量・授受・敬語・受身・使役など)を組み合わせて、自分の経験や予定をまとまった話にできる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第39課の使役を2〜3問で復習する(「お父さんは子どもに何をさせますか」と絵で聞き、「部屋を掃除させます」の型)。そのあと同じ絵の子どもの顔(いやそうな顔)を指して「子どもはどんな気持ちですか」と聞き、子どもの側から言う形がこの課の形だと予告する
使役受身形の作り方40分使役形(グループⅡの動詞になる)に受身の「られる」をつける、の1本で作り方を見せ、グループごとに変換練習。グループⅠの「〜される」(せら→さ)は長い形が言えるようになってから足す
学習項目1 〜せられます/〜させられます 使役受身70分教師の子どものころの話で導入し、「わたしは〈人〉に〜させられました」の枠で、子どものころ・アルバイト・学校でしかたなくしたことを言わせる。「〜させてもらいました」と比べて気持ちの違いを確かめる
学習項目2 受身・使役・使役受身の総まとめ50分一つの出来事を4つの文(能動・受身・使役・使役受身)で並べ、「に」の人がだれかを表で整理する。だれがしたかを答えるクイズで定着させる
学習項目3 復習70分初級Ⅱの活用形を一枚の表で振り返り、形を組み合わせて話す活動(「日本に来てから変わったこと」のスピーチ・敬語のロールプレイ)を行う
まとめの活動30分スピーチを録音して聞き直し、使えた形に印をつける。初級Ⅱの終わりとして、できるようになったことを学習者自身が3つ書いて発表する

学習項目 1 使役受身形の作り方

意味・はたらき活用

使役受身形は、第39課の使役形に受身の「られる」をつけた形です。使役形(書かせる・食べさせる・させる・こさせる)はどれもグループⅡの動詞と同じように活用するので、受身は「〜られる」になります。グループⅠの動詞には、「せら」を「さ」にした短い形(書かせられる→書かされる)もあり、話し言葉ではこちらがよく使われます。ただし、「話す・貸す」のように「す」で終わる動詞は短い形にせず、「話させられる」だけを使います。

接続

グループⅠ: ない形の「〜a」+せられる(書か+せられる)、または「〜a」+される(書か+される。す で終わる動詞を除く)/グループⅡ: 〜る→〜させられる/グループⅢ: する→させられる、来る→こさせられる。使役受身形はグループⅡの動詞として活用する(させられます・させられた・させられて)

形
グループⅠ: 書く→書かせる→書かせられる/書かされる、待つ→待たせられる/待たされる、歌う→歌わせられる/歌わされるグループⅠ(す で終わる): 話す→話させる→話させられる(短い形は使わない)グループⅡ: 食べる→食べさせる→食べさせられる、覚える→覚えさせられるグループⅢ: する→させる→させられる、来る(くる)→こさせる→こさせられる

導入

  • 使役形から一段ずつ足す黒板に「書く」「食べる」「する」「来る」を縦に並べ、右に第39課の使役形を学生に言わせて書く。使役形の右にもう1列作り、「させる」はグループⅡなので受身は「られる」、と第30課の受身の作り方を思い出させながら「〜させられる」を書き足す。3列が左から「する→させる→させられる」とつながっていることを矢印で見せる。
  • グループⅠの短い形長い形が全員言えるようになってから、「書かせられる」の「せら」に丸をつけ、「さ」に替えると「書かされる」になると見せる。教師が「きのう、店長に長い時間待たされました」のように短い形で話して聞かせ、話し言葉ではこちらをよく聞くと伝える。最後に「話す」で同じことをすると「さ」が二つ続いて言いにくいので、す で終わる動詞は長い形だけ、と赤で書き添える。

板書案

する → させる → させられる
書く → 書かせる → 書かせられる/書かされる
食べる → 食べさせる → 食べさせられる
来る(くる)→ こさせる → こさせられる
〔青〕させる=グループⅡ → +られる(受身)の矢印
〔赤〕せら→さ はグループⅠだけ 〔赤〕す で終わる動詞(話す・貸す)は長い形だけ

場面と発話(自作)

  • 動詞のカードを使った活用の練習で、教師が「読む」のカードを見せる。学生が答える。読ませられる、読まされる、です。
  • クラスで「来る」の使役受身形を聞かれた留学生が、少し考えてから答える。こさせられる、だと思います。
  • 宿題の答え合わせで、「話す」を「話さされる」と書いた友達に、別の学生が教える。「話す」は「話させられる」だけですよ。短い形はないそうです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の変換練習では、動詞カードを1枚ずつ見せて「使役形→使役受身形」の順に言わせ、グループⅠは長い形と短い形の両方を言わせる。慣れたら教師が使役受身形を言い、学生が辞書形に戻す逆向きの練習も入れる。カードの中に「話す・貸す・出す」を混ぜて、短い形にしないかを確かめる。

  1. 口頭動詞カード(読む・待つ・歌う・覚える・掃除する・来る・話す)を1枚ずつ見せ、全体で「読ませる→読ませられる」と使役形から順に言わせる。グループⅠは続けて短い形(読まされる)も言わせ、慣れたらます形(読まされます・読まされました)で答えさせる。テンポが出たら一人ずつ指名し、最後は教師が使役受身形を言って学生が辞書形に戻す逆向きを入れる。
  2. ペア一人が辞書形のカードを引いて読み、相手はカードを見ずに使役受身形を答える。カードの裏に答え(長い形・短い形・短い形なし)を書いておき、出題した側が確かめる。5枚ごとに役を交替し、言えなかったカードは別の山に分けて、最後に2人でその山だけもう一度言い合う。
  3. 産出「させられた動詞リスト」。学生が、子どものころ・学校・アルバイトで、したくないのにしたことの動詞を自分で5つ選び、辞書形・使役形・使役受身形の3つを書き出す(次の学習項目で話す材料になる)。教師は、動詞のグループの判断、す で終わる動詞を短い形にしていないか、「来る」が こさせられる になっているかを見て、机の間を回りながら直す。

つまずきと手当て

  • 「*食べられさせる」「*書かれさせる」のように、受身と使役の順番を逆にする。使役(させる)が先、受身(られる)があと、と板書の3列の矢印に戻り、「させ」のあとに「られ」と順に言わせる
  • 「*話さされる」「*貸さされる」と、す で終わる動詞まで短い形にする。す で終わる動詞は長い形だけと、カードの角に印をつけて区別する
  • 「*食べさされる」「*勉強さされる」と、グループⅡ・Ⅲにも短い形を作る。短い形はグループⅠだけと表で確かめる
  • 「来る」を「*きさせられる」と読む。使役形の「こさせる」から作ることを確かめ、「こ」にふりがなをつけて板書する

既習の文型との違い

  • 〜れます/られます 受身(1)(第30課)受身は動詞に直接「れる/られる」をつけ(書く→書かれる)、使役受身は間に使役の「せ/させ」が入ります(書く→書かせられる)。学習者は「せ」「さ」を落として、自分がさせられたことを「書かれました」と言いがちなので、語の真ん中に「せ」か「さ」があるかを板書の3列で指させます。
  • 〜せます/〜させます 使役(1)(第39課)使役形はどのグループの動詞でもグループⅡの動詞のように活用するので、受身にすると「られる」がつきます。グループⅠの動詞だからと受身の「れる」をつけて「*書かせれる」と言う誤りが出るので、「させる」の「る」の前が「せ」(e段)であることを確かめ、グループⅡの「食べる→食べられる」と同じ作り方だと見せます。
  • 可能表現(1)(第22課)「食べさせられる」は、使役形に可能の「られる」がついた形(食べさせることができる)と同じ形になります。この課では、主語が自分でしたことを「〈人〉に」と言った人つきで言う文だけを使役受身として扱い、形だけで意味を決めないように、例文はいつも主語と「に」の人を入れて示します。
関連する文型

学習項目 2 〜せられます/〜させられます 使役受身

意味・はたらき学習項目 1

使役受身は、ほかの人に言われて(命令されて)、自分がしたくないことをしたことを、した本人を主語にして言う形です。「わたしは父に部屋を掃除させられました」では、部屋を掃除したのは「わたし」で、掃除するように言ったのは「父」です。多くの場合「いやだったけれど、しかたなくした」という気持ちが入ります。同じことを使役で言うと「父はわたしに部屋を掃除させました」となり、主語が言った人(父)に替わります。また「この映画には考えさせられました」のように、何かを見たり聞いたりして自然にそういう気持ちになった、という意味で使うこともありますが、この課では「しかたなくした」の意味を中心に扱います。

接続

〈した人〉は〈させた人〉に(Nを)+使役受身形(わたしは父に部屋を掃除させられました/わたしは先輩に1時間待たされました)。させた人には「に」をつける

形
〈人〉に Nを Vさせられました(父に部屋を掃除させられました)〈人〉に Vされました(店長に重い荷物を運ばされました)〈人〉に Nへ/Nに 行かされました(社長に大阪へ行かされました)(比べる)〈人〉に Vさせてもらいました(したかったことをさせてくれた)

導入

  • 教師の子どものころの話教師が高校の部活の写真か絵(ボールがたくさん転がったテニスコート)を見せ、「高校のとき、わたしはテニス部でした。先輩は毎日、練習のあとで一年生にボールを集めさせました」と使役で話す。続けて「わたしは早く帰りたかったです。わたしは先輩に毎日ボールを集めさせられました」と言い直し、主語が「先輩」から「わたし」に替わったことを、板書の二つの文の主語に下線を引いて見せる。
  • 「いやでしたか」で気持ちを確かめる学生に「子どものころ、家の人に何をさせられましたか」と聞き、言いにくそうな学生には絵カード(皿洗い・掃除・漢字の練習・早く寝る)を見せて「〜させられました」を引き出す。答えのあとに必ず「いやでしたか」と聞き返し、「はい、いやでした」と答える文が使役受身の文だと、気持ちと形をいっしょに確かめる。

板書案

〔した人〕は 〔させた人〕に (Nを) Vさせられました
わたしは 父に 部屋を 掃除させられました。
父は わたしに 部屋を 掃除させました。(使役)
〔赤〕は の人=した人 〔青〕に の人=言った人
いやでした → させられました / うれしかったです → させてもらいました

場面と発話(自作)

  • アルバイトのあと、疲れた顔の留学生が、寮で友達に「どうしたの?」と聞かれて答える。きょうは店長に重い荷物をたくさん運ばされて、とても疲れました。
  • 会社の飲み会の次の日、社員が同僚に、きのうのことを話す。きのうは部長にみんなの前で歌を歌わされて、恥ずかしかったです。
  • 駅の前で、約束の時間に来なかった友達を待っていた学生が、ほかの友達に電話で話す。森さんが遅れて、寒い所で1時間待たされました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、「させた人」のカード(父・先生・店長・部長)と「したこと」の絵カード(部屋を掃除する・作文を書く・皿を洗う・荷物を運ぶ)を組み合わせて「〈人〉に〜させられました」と言わせ、グループⅠは短い形でも言わせる。場面のやり取りでは、ペアで「子どものころ、何をさせられましたか」「〜させられました」「いやでしたか」「ええ。でも、今は〜てよかったと思います」と、気持ちまで話させる。

  1. 口頭人のカード(父・先生・店長・部長)と、したことの絵カード(部屋を掃除する・作文を書く・皿を洗う・重い荷物を運ぶ・1時間待つ)を組み合わせて出し、全体で「父に部屋を掃除させられました」と言わせてから一人ずつ当てる。次に教師が使役の文(「店長はわたしに荷物を運ばせました」)を言い、学生が使役受身の文(「わたしは店長に荷物を運ばされました」)に言い換える。答えのあとに「いやでしたか」と聞き、気持ちの一言まで言わせる。
  2. ペアAには「子どものころ」、Bには「アルバイト・会社」の質問カードを渡す。Aが「子どものころ、何をさせられましたか」と聞き、Bが答えると、Aは「いやでしたか」「今はどう思いますか」と二つ続けて聞いてメモを取る。交替したあと、聞いたことを「〜さんはお父さんに〜させられたそうです」とクラスに報告させ、使役受身を3人称でも言わせる。
  3. 産出「させられた思い出スピーチ」。子どものころ・学校・アルバイトでさせられたことを一つ選び、何をさせられたか、そのときの気持ち、今どう思うか(〜てよかったと思います・〜は今も好きではありません)を1分で話す。教師は、「は」と「に」の人の取り違え、使役受身形の作り方、「させてもらいました」と混ざっていないか、目上の人を責める言い方に聞こえないかを見て、話し終わってから直す。

つまずきと手当て

  • 「父が部屋を掃除させられました」と、させた人に「が」をつける。文としては成り立つが、掃除したのが父の意味になってしまうので、「した人は(わたしは)」「させた人に」と、板書の文の助詞に色をつけて確かめる
  • したかったことを許してもらったのに「先輩に車を運転させられました」と言う。うれしかったとき・お礼を言いたいときは第39課の使役と第14課の「〜てもらいます」を組み合わせた「〜させてもらいました」を使う、と二つの文を並べ、「いやでしたか、うれしかったですか」と聞いて選ばせる
  • 使役受身と受身を取り違えて、父に言われて自分が掃除したのに「父に部屋を掃除されました」と言う。文としては成り立つが、「掃除されました」では掃除したのは父の意味になってしまう、と次の総まとめの表につなげる
  • 目上の人の前で、上司のことを「部長に〜させられました」と言い続けると、不満を言っているように聞こえることがある。文法の誤りではないが、職場では言う相手と場面を選ぶ形だと一言添える

既習の文型との違い

  • 〜せます/〜させます 使役(1)(第39課)同じ出来事でも、使役は言った人(父)が主語、使役受身はした人(わたし)が主語です。自分が掃除したのに「わたしは父に部屋を掃除させました」と言うと、父に掃除させたという別の意味になってしまうので、文の前に「掃除したのはだれ?」と自分で確かめる習慣をつけさせます。使役受身には、使役の文にはない「いやだった」という気持ちが入ることも並べて見せます。
  • 〜は…に―を〜てもらいました(初級Ⅰ 第14課)「〜させてもらいました」は使役と「〜てもらう」を組み合わせた形で、したかったことをさせてくれた、という感謝の気持ちを言います。「〜させられました」とは、した人もさせた人も同じなのに気持ちが反対になるので、「父に車を運転させてもらいました」「父に車を洗わされました」のように同じ人で2文を並べ、うれしかったかいやだったかで選ばせます。
  • 〜れます/られます 受身(1)(第30課)受身の文では「に」の人が動作をします(父に部屋を掃除されました=父が掃除した)。使役受身の文では動作をしたのは主語で、「に」の人は言った人です。助詞は同じ「に」なので、形の真ん中の「させ」の有無で見分けることを、総まとめの表につなげて確かめます。
関連する文型

学習項目 3 受身・使役・使役受身の総まとめ

意味・はたらき学習項目 2

受身・使役・使役受身は、形が似ているうえに、どれも「〈人〉に」が入るので混ざりやすい形です。区別のかぎは「に」の人がその文で何をしたかです。受身(わたしは弟に作文を読まれました)では「に」の人が動作をした人で、主語はそれで困った人やされた人です。使役(先生は弟に作文を読ませました)では「に」の人が動作をする人で、主語はそうさせた人です。使役受身(弟は先生に作文を読ませられました)では動作をしたのは主語で、「に」の人はそうさせた人です。形の上では、受身は「〜れる/〜られる」、使役は「〜せる/〜させる」、使役受身は両方が入った「〜させられる」と、語の後ろを見れば見分けられます。

接続

受身: 主語は 〈した人〉に Vれる/Vられる/使役: 主語は 〈する人〉に(を) Vせる/Vさせる/使役受身: 主語は 〈させた人〉に Vせられる/Vさせられる(グループⅠは Vされる も)

形
書く: 書かれる(受身)/書かせる(使役)/書かせられる・書かされる(使役受身)食べる: 食べられる(受身)/食べさせる(使役)/食べさせられる(使役受身)する: される(受身)/させる(使役)/させられる(使役受身)来る: こられる(受身)/こさせる(使役)/こさせられる(使役受身)

導入

  • 一つの出来事を4つの文で先生・弟・作文の絵を貼り、まず「弟が作文を読みました」と能動の文を書く。その下に、わたしが机に置いていた作文を弟が勝手に読んだ場面で受身(わたしは弟に作文を読まれました)、先生が弟にみんなの前で読むように言った場面で使役(先生は弟に作文を読ませました)、読みたくなかった弟がしかたなく読んだ場面で使役受身(弟は先生に作文を読ませられました)を、絵の矢印を替えながら書いていく。4つの文のどれでも、実際に読んだのはだれかを学生に指でささせる。
  • 「に」の人の表4つの文の横に「主語」「に の人」「読んだ人」「いやだった人」の4列の表を作り、学生といっしょに埋める。受身は「に の人=読んだ人」、使役受身は「主語=読んだ人」となることを色で示し、形の後ろの「れる」「せる」「せられる」に同じ色の下線を引いて、形と役割を結びつける。

板書案

弟が 作文を 読みました。(能動)
わたしは 弟に 作文を 読まれました。(受身)
先生は 弟に 作文を 読ませました。(使役)
弟は 先生に 作文を 読ませられました。(使役受身)
〔赤〕読んだ人に丸 〔青〕〜れる・〜せる・〜せられる に下線
表: 主語|に の人|読んだ人|いやだった人

場面と発話(自作)

  • 寮で、楽しみにしていたプリンがなくなっていた留学生が、友達に話す。冷蔵庫のプリンを、だれかに食べられてしまいました。
  • 日本語学校の先生が、ほかの先生にきょうの授業のことを話す。きょうは学生に自分の国の料理について発表させました。
  • 同じ授業のあと、発表が苦手な学生が友達に話す。きょうは先生にみんなの前で発表させられて、緊張しました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の練習では、教師が受身・使役・使役受身の文をばらばらに読み、学生が「読んだのはだれですか」「言ったのはだれですか」に答える聞き取りクイズを行う。次に、絵カード1枚(人が二人と動作)を見せ、教師が言う主語(「わたしは」「先生は」「弟は」)に合わせて受身・使役・使役受身のどれかで文を作らせる。場面のやり取りでは、「家族やアルバイトの思い出」を、された(受身)・させた(使役)・させられた(使役受身)の3文で話させる。

  1. 口頭先生・弟・わたしの人物カードを学生に1組ずつ持たせ、教師が文を読むたびに「読んだ人」のカードを上げさせる聞き取りクイズを行う。キューの文は「わたしは弟に作文を読まれました」「先生は弟に作文を読ませました」「弟は先生に作文を読ませられました」のほか、「わたしは店長に1時間待たされました」「店長はわたしを1時間待たせました」のように動詞と人を替えて出す。慣れたら教師が主語だけを言い(「弟は」)、学生が同じ出来事をその主語の文に言い換える。
  2. ペア「だれがしたかクイズ」。Aは出来事の絵カード(人が二人と動作、言った人と困った人の矢印つき)を持ち、Bには見せない。Aが受身・使役・使役受身のどれか一つの文を読み、Bが「した人」「言った人」「困った人」を答え、Aが絵で答え合わせをする。3枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「1つの出来事・3つの文」。学生が家族や学校・アルバイトの出来事を一つ選び、受身・使役・使役受身の3文で書いてクラスで読む。聞いている学生は、それぞれの文で動作をしたのがだれかを答える。教師は、主語と「に」の人の組み合わせ、形(れる・させる・させられる)、受身と使役受身の取り違えがないかを見る。

つまずきと手当て

  • 受身と使役受身を取り違え、自分がさせられたことを「わたしは先生に作文を書かれました」と言う。文としては成り立つが、「書かれました」では書いたのは先生の意味になってしまう、と表の「書いた人」の列に戻って確かめる
  • グループⅡの受身形を可能形と取り違える(「食べられる」は第22課の可能形と同じ形)。「〈人〉に」があって、困った・された気持ちの文なら受身、と文の中の「に」と前後の話で見分けさせる
  • 使役と使役受身の主語を取り違え、先生が弟に読ませたことを「先生は弟に作文を読ませられました」と言う。文としては成り立つが、読んだのが先生の意味になってしまう。使役受身の主語は自分がした人なので、した人を先に言うと決めて、「〈した人〉は〈させた人〉に」の順で練習する
  • 受身にも使役受身にも「いやだった」という気持ちが入ることがあり、どちらを使うか迷う。いやなことを人にされた(自分はしていない)なら受身、いやなことを自分がさせられた(自分がした)なら使役受身、と「自分がしたか」で決めさせる

既習の文型との違い

  • 〜れます/られます 受身(第30・31課)人に何かをされて困ったことを言う受身にも、使役受身と同じように「いやだった」という気持ちが入ります。違いは自分がその動作をしたかどうかで、自分はしていないなら受身(友達に傘を持っていかれました)、自分がしたなら使役受身(先輩に重い荷物を持たされました)です。どちらにするか迷う学習者には、「その動作をしたのはあなたですか」と一つだけ聞いて決めさせます。
  • 〜せます/〜させます 使役(2)(第39課)行く・来る・帰るのような動詞の使役では、する人に「を」を使う文(部長は新人を取引先へあいさつに行かせました)がありますが、使役受身にするとその人が主語になり、させた人には「に」がつきます(新人は部長に取引先へあいさつに行かされました)。使役の「を」の人と使役受身の主語が同じ人だと、二つの文を矢印で結んで見せます。
  • 可能表現(1)(第22課)グループⅡの動詞では、受身と可能が同じ形(食べられる)になります。「わたしは生の魚が食べられます」は可能、「わたしは弟にケーキを食べられました」は受身で、「〈人〉に」があり、困った出来事の話なら受身と見分けます。総まとめの表の横に可能の文を1つ置いておくと、学習者が自分で見分けを確かめられます。
関連する文型

学習項目 4 復習

意味・はたらき学習項目 3

初級Ⅱで学んだことを振り返り、いくつかの形を組み合わせて、まとまった話ができるようにするための活動の時間です。初級Ⅱでは、可能形・意向形・命令形と禁止形・条件形(ば形)・受身形・使役形・使役受身形と、新しい活用形が次々に出てきました。それぞれの課では一つの形を練習してきましたが、実際に話すときには「日本語が話せるようになったので、アルバイトを始めようと思います」のように、いくつもの形が一つの話の中に入ります。この時間は、活用形の表で形を整え直したあと、推量(〜ようです・〜らしいです・〜そうです・〜かもしれません・〜はずです)や敬語のように、似た形が並ぶものを場面の中で選んで使う練習をします。

接続

(文型ではない)

形
活用形の表: 書く→書ける・書こう・書け・書くな・書けば・書かれる・書かせる・書かされる変化と予定: 〜ようになりました/〜ことにしました/〜つもりです推量の使い分け: 〜ようです・〜らしいです・〜そうです・〜かもしれません・〜はずです敬語: お〜になります・お〜します・いらっしゃいます・申します・〜ていただけませんか

導入

  • 一枚の活用表で整理する黒板に「書く・食べる・する・来る」の4語を縦に、横に辞書形・可能形・意向形・命令形・禁止形・ば形・受身形・使役形・使役受身形の列を作り、学生に1マスずつ埋めさせる。どの形が何課で出たか、どんな文で使ったかを一言ずつ思い出させ、形が似ているもの(食べられる=可能と受身)にはしるしをつけておく。
  • スピーチ「日本に来てから」教師が見本として短い話をする(「日本に来たときは、漢字が読めませんでした。でも、毎日勉強したので、今は駅の名前が読めるようになりました。来年は大学に入ろうと思っています。」)。話の中の可能形・〜ようになりました・意向形に下線を引き、学生には同じように「日本に来てから変わったこと」を、初級Ⅱの形を3つ以上使って話すように準備させる。

板書案

辞書形|可能|意向|命令|禁止|ば形|受身|使役|使役受身
書く|書ける|書こう|書け|書くな|書けば|書かれる|書かせる|書かされる
〔赤〕同じ形に注意: 食べられる(可能・受身・尊敬)
スピーチの枠: 前は〜ませんでした → 今は〜ようになりました → これから〜(よ)うと思います
〔青〕使えた形に丸をつける

場面と発話(自作)

  • 初級Ⅱの最後の授業で、留学生がクラスの前で「日本に来てから変わったこと」を話す。前は電話で日本語が話せませんでしたが、今は病院の予約ができるようになりました。
  • 面接の練習で、学生がアルバイト先の店長の役の先生に話す。はじめまして。山田と申します。土曜日と日曜日なら働けます。
  • 空が暗くなってきたのを見て、学生が出かける前の友達に言う。雨が降るかもしれませんから、傘を持っていったほうがいいですよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

活用表を埋めたあと、教師が形の名前(「書く、ば形」「来る、使役受身形」)を言い、学生が速く答える練習を全員→一人ずつで回す。場面のやり取りは3つ用意する。①スピーチ「日本に来てから変わったこと」(可能・〜ようになりました・意向形)②敬語のロールプレイ(アルバイトの面接や先生へのお願いで、謙譲語・尊敬語・〜ていただけませんか)③天気や人の様子の絵を見て、推量の形を一つ選んで言う。どれも、使えた形をペアの相手がチェック表に印をつける。

  1. 口頭教師が動詞と形の名前をキューにして(「書く、ば形」「来る、使役受身形」「する、意向形」「待つ、禁止形」)全体で答えさせ、速くなったら一人ずつ当てる。次に「食べられる」「読まれる」を見せ、可能・受身・尊敬の文をそれぞれ作らせ、同じ形でも文の中で意味が決まることを口で確かめる。
  2. ペア推量の絵カード(暗い空・天気予報を見ている人・ぬれた傘を持って入ってきた人)を一人が引き、絵に合う推量の形で一文言う。相手は「どうしてそう思いますか」と根拠を聞き、言った側が「空が暗いからです」「ニュースで聞きました」と答える。交替したあと、先生と学生の役割カードで、敬語を使ったお願い(〜ていただけませんか)と、それを受ける返事のやり取りもする。
  3. 産出「日本に来てから変わったことスピーチ」。初級Ⅱの形を3つ以上入れて1〜2分話し、聞き手はチェック表の形の名前に印をつける。教師は、言いたいことを言い切れたかを先に見てほめ、文の終わりのです・ます体がそろっているか、可能・受身・使役受身の形の誤りは話が終わってから一つか二つだけ直す。

つまずきと手当て

  • 一つの話の中で、普通体と丁寧体が混ざる(「今は話せるようになった。来年は大学に入ろうと思います」)。スピーチでは文の終わりをです・ます体にそろえ、普通体は「〜と思います」「〜ので」「〜そうです」などの前や、名詞を説明するときに使う、と第17課の普通表現に戻って確かめる
  • 推量の形を何でも「〜そうです」で言う。見た目からの判断(降りそうです)、聞いたこと(降るそうです)、根拠からの推量(降るらしいです・降るようです)、可能性(降るかもしれません)を、天気の絵・ニュースの絵・空の写真のように根拠の違う絵で分けて選ばせる
  • 敬語で、自分の動作に尊敬語を使う(「*わたしがお読みになります」)。動作をするのが相手か自分かを先に決め、相手なら尊敬語、自分なら謙譲語、と第36・37課の表に戻る
  • 形を覚えることが目的になり、活動で話す内容が短くなる。この時間は正しい形よりも「言いたいことを言い切れたか」を先にほめ、形の誤りは話が終わってから一つか二つだけ直す

既習の文型との違い

  • 〜そうです 様態(第29課)・〜そうです 伝聞(第32課)「降りそうです」はます形の語幹につき、見た目から自分が判断したこと、「降るそうです」は普通形につき、ニュースや人から聞いたことです。復習の時間に推量をまとめて練習すると、形の近いこの二つがいちばん混ざるので、「見たのか、聞いたのか」を先に言わせてから形を選ばせます。
  • 〜れます/〜られます 尊敬(第36課)尊敬の「読まれる」は受身と同じ形ですが、主語が目上の人で、困った気持ちは入りません(部長は毎朝新聞を読まれます)。受身は「〈人〉に」があり、自分がされたことの話です(わたしは先生に作文を読まれました)。活用表の受身の列に尊敬の印を足しておき、形が同じものを文で見分ける練習にします。
関連する文型

語彙の扱い

この課の中心は新しい語よりも使役受身形そのものなので、語彙は「したくないのにさせられること」に使う動詞(運ぶ・掃除する・練習する・待つ・歌う・覚える など)を、すでに習った語から選び直して使います。動詞カードは辞書形・使役形・使役受身形を裏表に書いておき、変換練習とやり取りの両方で同じカードを使うと負担が減ります。気持ちを言う語(いや・つらい・恥ずかしい・しかたがない)は、文のあとに「どうでしたか」と聞いて答えさせる形で口に出させます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 運びます(はこびます) 物を持って、ほかの場所へ移します。 荷物を〜・机を〜・2階へ〜
    引っ越しのアルバイトのあと、友達に話す。
    「先輩に重い机を3階まで運ばされました。」
  • 掃除します(そうじします) 部屋や場所のごみやほこりを取って、きれいにします。 部屋を〜・トイレを〜・教室を〜
    クラスで子どものころの家の手伝いの話をする。
    「子どものとき、毎週土曜日に父にトイレを掃除させられました。」
  • 練習します(れんしゅうします) 上手になるために、同じことを何回もします。 ピアノを〜・発音を〜・毎日〜
    子どものころの習い事について話す。
    「小学生のとき、毎日2時間ピアノを練習させられました。」
  • 習います(ならいます) 先生から、やり方や知っていることを教えてもらいます。 水泳を〜・ピアノを〜・先生に〜
    友達に、子どものころの習い事を聞かれる。
    「好きではなかったのに、5年も水泳を習わされました。」
  • 待ちます(まちます) 人や物が来るまで、その場所にいます。 友達を〜・駅で〜・1時間〜
    約束の時間に遅れて来た友達に言う。
    「寒い所で30分も待たされましたよ。」
  • 覚えます(おぼえます) あとで忘れないように、頭に入れます。 漢字を〜・単語を〜・名前を〜
    テストの前の一週間のことを友達に話す。
    「先生に毎日漢字を20覚えさせられて、大変でした。」
  • 歌います(うたいます) 声に出して、歌を歌います。 歌を〜・カラオケで〜・みんなの前で〜
    友達の結婚のパーティーのあとで、別の友達に話す。
    「急にみんなの前で歌を歌わされて、恥ずかしかったです。」
  • 片づけます(かたづけます) 使った物を元の場所に戻して、きれいにします。 部屋を〜・机の上を〜・おもちゃを〜
    兄弟との子どものころの思い出を話す。
    「弟が遊んだおもちゃなのに、わたしが父に片づけさせられました。」
  • 残業します(ざんぎょうします) 決まった時間が終わったあとも、会社に残って働きます。 毎日〜・夜遅くまで〜
    会社員が、疲れている理由を友達に話す。
    「今週は部長に毎日夜10時まで残業させられました。」
  • 書き直します(かきなおします) 一度書いたものを、よくするためにもう一度書きます。 作文を〜・レポートを〜・3回〜
    作文の宿題が返ってきた学生が、友達に話す。
    「先生に作文を3回も書き直させられました。」
  • 飲みます(のみます) 水や薬などを、口から体の中に入れます。 薬を〜・お酒を〜・水を〜
    かぜをひいて病院へ行ったときの話をする。
    「病院で、苦い薬を三つも飲まされました。」
  • いや(な)(いや) したくない、好きではない、という気持ちを言います。 〜な仕事・〜な顔をする・〜でした
    使役受身の文を言ったあとで、気持ちを聞かれる。
    「毎日ピアノを練習させられて、いやでした。」

宿題と次のコマ

宿題は、子どものころやアルバイト・学校でさせられたことを使役受身の文で3つ書き、それぞれに「どんな気持ちだったか」「今はどう思うか」を一文ずつ足すことと、初級Ⅱの活用表(9つの形)を4つの動詞で埋めること。次のコマの最初に宿題の文を読ませ、ほかの学生が「言ったのはだれですか」「したのはだれですか」と聞いて、使役受身と受身・使役が取り違えられていないかを確かめます。この課で初級Ⅱは終わりなので、そのあとスピーチ「日本に来てから変わったこと」を発表して初級の総まとめとします。初中級では、初級で習った形を、頼む・断る・説明するといった目的のある場面の中で使い分けていくので、活用の誤りが残っている学生には、ここで表を使って個別に確かめておくと次の本へ進みやすくなります。

よくある質問

  • 使役受身形は、長い形(書かせられる)と短い形(書かされる)のどちらから教えればいいですか?

    長い形から教えます。長い形は「使役形+られる」の1本の作り方で、どのグループの動詞にも使えるからです。短い形はグループⅠ(す で終わる動詞を除く)だけにあり、話し言葉でよく聞く形なので、長い形が全員言えるようになってから「せら→さ」として足します。す で終わる動詞(話す・貸す)は長い形だけ、と最初に表で示しておくと誤りが減ります。

  • 第40課の使役受身と第30課の受身の違いは、どう説明すればいいですか?

    「その動作をしたのはだれか」で説明します。受身では「に」の人が動作をし(わたしは弟に作文を読まれました=弟が読んだ)、使役受身では主語が動作をして「に」の人は言った人です(弟は先生に作文を読ませられました=弟が読んだ)。一つの出来事を能動・受身・使役・使役受身の4文で並べ、読んだ人に丸をつける表を作ると、学習者が自分で確かめられます。

  • 「〜させられました」と「〜させてもらいました」の違いは何ですか?

    どちらも「わたし」が動作をし、「に」の人がそれを言ったり許したりした人ですが、気持ちが反対です。「〜させられました」はしたくないのにしかたなくしたこと、「〜させてもらいました」はしたかったことを許してもらったことで、お礼の気持ちが入ります。同じ人を使った2文を並べ、「いやでしたか、うれしかったですか」と聞いて選ばせると区別がつきます。

  • 第40課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目は前の課の復習と使役受身形の作り方、学習項目1の導入まで、2コマ目は学習項目1の練習と受身・使役・使役受身の総まとめ、3コマ目は初級Ⅱの復習とスピーチです。時間が足りないときは、復習の活動をスピーチ一つに絞り、推量と敬語の練習は宿題の活用表と次の本の最初の時間に回します。

  • 「この映画には考えさせられました」のような使い方も、この課で教えますか?

    この課の中心は「ほかの人に言われてしかたなくした」の意味なので、練習はそちらだけで行います。学習者が映画やニュースの感想でこの言い方を聞いて質問したときに、「見たり聞いたりして、自然にそういう気持ちになった」という使い方もある、と短く紹介する程度で十分です。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。