日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第36課「どうぞお座りください」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

この本で尊敬語が初めて出る課です。目上の人やお客様の動作・持ち物を高めて言う方法を、「〜れます/〜られます」「お〜/ご〜(名詞と、お〜ください)」「お〜になります」「特別な尊敬語(いらっしゃる・召し上がる など)」の四つで学びます。尊敬語は「だれの動作か」で決まり、自分の動作や持ち物には使わない、と最初に線を引き、その線を場面ごとに何度も確かめるのがこの課の芯です。「〜れます/〜られます」は第30課の受身形とまったく同じ形なので作り方は短く済ませ、第35課の「くださいます」もすでに尊敬語だったと気づかせてから、時間は学校・会社・店・受付の場面練習に回します。自分を低くする言い方(謙譲語)は第37課なので、この課では「自分のことはいつもの形で言う」までにとどめます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞を「〜れます/〜られます」の尊敬の形に変え、先生や上司の動作を「部長はもう帰られましたか」のように言える
  • 相手の名前・家族・荷物などに「お」「ご」をつけて言え、受付や店で「お待ちください」「ご注意ください」の案内を聞いて分かり、自分でも言える
  • 「お〜になります」「ご〜になります」で、目上の人に直接その人の予定や動作を丁寧に聞ける
  • いらっしゃいます・召し上がります・おっしゃいます・ご覧になります・なさいます・ご存じです を、もとの動詞と結びつけて使い、自分のことには使わない

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)15分第35課の「先生が〜をくださいました」を絵カードで2〜3問確かめ、「くれました」を先生のときは「くださいました」と言ったことを思い出させる。そのあと友達の絵と先生・社長の絵を黒板の左右に貼り、同じ「帰りましたか」を、右の人のときは別の言い方にする課だと予告する
学習項目1 〜れます/〜られます 尊敬50分第30課の受身形の作り方の板書をもう一度書き、同じ形が「目上の人の動作」の意味にもなると見せる。ます形→尊敬の形の口頭練習のあと、「先生は〜(ら)れましたか」の問答。助詞はもとの文のままだと、受身の文と並べて確かめる
学習項目2 お〜/ご〜50分相手の名前・家族・仕事・荷物に「お」「ご」をつける練習から入り、教室を受付に見立てて「お入りください」「お待ちください」「ご注意ください」の案内へ広げる。和語は「お」、漢語は「ご」が多いことを二列の板書で
学習項目3 お〜になります/ご〜になります45分「帰りました→帰られました→お帰りになりました」を階段の板書で上へ書き、上ほど丁寧に聞こえると見せる。この形にしない動詞(見ます・寝ます・います・来ます・します など)を札にして端に貼り、学習項目4につなぐ
学習項目4 尊敬表現60分もとの動詞と特別な尊敬語を線で結ぶ対応表を作り、カードの表裏で言い換えを回す。「いらっしゃいます」が行く・来る・いるを兼ねること、ます形が「〜います」になることを押さえる
まとめの活動50分先生へのインタビュー(週末・好きな食べ物・よく見るテレビなど)を尊敬語で3問作って聞き、答えをクラスに「先生は〜そうです」と報告する。最後に受付・店員の役で、お客様を案内するロールプレイ

学習項目 1 〜れます/〜られます 尊敬

意味・はたらき学習項目 1

尊敬語は、先生・上司・お客様のような目上の人や、よく知らない人の動作を高めて言う言い方です。いちばん作りやすいのが、動詞を「〜れる/〜られる」の形にする方法で、形は第30課の受身形とまったく同じです。受身の文と違うのは、主語が動作をする目上の人で、助詞がもとの文のまま変わらないことです(部長は新聞を読みました→部長は新聞を読まれました)。会社の中の会話やニュース・書いた文でよく使われ、「お〜になります」(学習項目3)より敬意は少し軽く聞こえることが多いです。

接続

グループⅠはない形の「ない」を「れる」に(書かない→書かれる)、グループⅡは辞書形の「る」を「られる」に(始める→始められる)、グループⅢは「する→される」「来る→来られる」。できた形はグループⅡの動詞として活用し、ふつうは「〜れます・〜れました」の形で使う

形
グループⅠ: 書きます→書かれます、帰ります→帰られます、読みます→読まれます、言います→言わない→言われますグループⅡ: 始めます→始められます、出かけます→出かけられます、辞めます→辞められますグループⅢ: します→されます、来ます→来られます(こられます)、出張します→出張されます、出席します→出席されます文の中で: 部長は何時に帰られましたか/社長は来週大阪へ出張されるそうです(助詞はもとの文のまま)

導入

  • 受身の板書をもう一度使う第30課の受身形の作り方(書かない→書かれる、始める→始められる、する→される、来る→来られる)を黒板の左にそのまま書く。右に「わたしは先生に名前を呼ばれました」(受身)と「先生は8時に学校へ来られました」(尊敬)を並べ、形は同じでも、右の文は先生が自分で来たこと、そして先生を高めて言っていることだと説明する。
  • 「だれの動作か」で言い分ける友達の絵と先生の絵を左右に貼り、教師が友達の絵を指して「森さんはもう帰りました」、先生の絵を指して「先生はもう帰られました」と言い分ける。学生に「友達のときは?」「先生のときは?」と聞き、同じ動詞(出かけます・休みます・電話します)を両方の形で言わせる。最後に教師が自分を指して「わたしは帰りました」と言い、自分のことはいつもの形だと見せる。

板書案

〜れます/〜られます = 受身と同じ形 → 目上の人の動作
書かない→書か〔赤〕れます 始める→始め〔赤〕られます する→されます 来る→来られます
部長は新聞を読みました。→ 部長は新聞を読まれました。〔青〕助詞はそのまま
先生は8時に学校へ来られました。(先生が自分で来た)
〔左の絵〕友達:帰りました 〔右の絵〕先生:帰られました 〔丸〕わたし:帰りました

場面と発話(自作)

  • 会社で、きのうから大阪へ出張していた部長がもう戻ったかどうか、社員が同じ部署の先輩に聞く。部長はもう大阪から帰られましたか。
  • 月曜日の朝、日本語学校の学生が、教室に来た先生に週末のことを聞く。先生は週末、どこかへ出かけられましたか。
  • 学校の事務室で、職員が学生に、校長先生のあしたの予定を伝える。校長先生はあしたの会議に出席されるそうです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が動詞のます形のカードを出し、学生が尊敬の形(〜れます/〜られます)で言う。グループを混ぜ、慣れたら「部長は〜ました」の文を出して尊敬の文に言いかえさせる。場面のやり取りでは、先生や会社の上の人の絵カードを使い、「〜はもう〜れましたか」「はい、〜れました」の問答をペアで行う。

  1. 口頭教師がます形のカードを出し、全体→列ごと→個人の順で尊敬の形を言わせる。キューは「書きます」「休みます」「出かけます」「始めます」「電話します」「来ます」。最初はグループごとにまとめ、2周目から混ぜる。次に部長・先生の絵カードと動作の絵(新聞・電話・会議)を組み合わせて出し、「部長は新聞を読まれました」のように文で言わせる。グループⅠでつまずいたら、ない形を先に言わせてから「ない→れる」に替えさせる。
  2. ペアAは「部長のきのうの予定表」、Bは「課長のきのうの予定表」を持ち、相手には見せない。Bが「部長は何時に会社に来られましたか」「午後は何をされましたか」と聞き、Aが表を見て「9時に来られました」と答える。3問ずつで役を替える。答えるほうも尊敬の形のまま答える(自分の話ではないため)ことを最初に一度見せておく。
  3. 産出「先生のきのう当てクイズ」。学習者は先生がきのうしたことを予想して「先生はきのう〜れましたか」の質問を3つ紙に書き、順に教師に聞く。当たった数で競う。教師は答えるとき「はい、出かけました」と自分のことはいつもの形で返す。見るのは、助詞がもとの文のままか、グループⅠをない形から作れているか、受身の「に」が混ざっていないかの3点で、誤りはその場で一文だけ言い直させる。

つまずきと手当て

  • 自分の動作に尊敬の形を使う(起きたことを言うつもりで「わたしはきのう6時に起きられました」と言う)。この文はかえって「起きることができた」(可能)の意味に聞こえてしまう。左右の絵カードに戻し、「自分のことはいつもの形」と確かめる
  • 受身の文と混ぜて、動作をする人に「に」をつける(部長にあした出張されます)。文としては「わたしは部長に出張される(そして困る)」という迷惑の受身に聞こえてしまうので、尊敬の文は「部長は(が)」のまま、助詞はもとの文と同じ、と二つの文を並べて言い直させる
  • グループⅠをます形から作る(*帰りられます、*書きられます)。ない形から作る、と受身の板書の「書かない→書かれる」に戻す。なお「来られますか」「始められますか」は可能形とも同じ形なので、どちらの意味かは前後の話で決まることを一言添える

既習の文型との違い

  • 〜れます/られます 受身(1)(第30課)形はまったく同じだが、受身は動作を受けた人が主語で、動作をした人に「に」がつく(わたしは先生に呼ばれました)。尊敬は動作をする目上の人が主語で、助詞はもとの文のまま(先生は学生を呼ばれました)。尊敬のつもりで「部長に新聞を読まれました」と「に」をつけると、受身(わたしが部長に新聞を読まれて困った)の意味に聞こえてしまうので、主語がだれかを先に確かめさせる。
  • 可能表現(1)(第22課)グループⅡの動詞と「来る」は、可能形と尊敬の形が同じになる(来られます・始められます)。グループⅠは可能が「書けます」、尊敬が「書かれます」と形が分かれる。「先生は来られますか」がどちらの意味かは場面で決まるので、教室では予定を聞く場面(来ることができるか)と、来たかどうかを聞く場面(来られましたか)を並べて見せる。
関連する文型

学習項目 2 お〜/ご〜

意味・はたらき学習項目 2

相手や目上の人の持ち物・家族・様子を表す名詞に「お」「ご」をつけると、その人を高めて言うことになります(お名前・お仕事・お荷物・ご家族・ご住所)。もう一つ、「お+ます形(ます を取った形)+ください」「ご+漢語+ください」は、第11課の「〜てください」をお客様や目上の人に向けて丁寧にした言い方で、受付・店・駅の案内でよく聞きます(お待ちください・お入りください・ご注意ください)。和語には「お」、漢語には「ご」がつくことが多いですが、「お電話・お時間・お元気」のように漢語に「お」がつく語もあります。なお「お茶・お金」の「お」は人を高めるのではなく、言葉をきれいに言うための「お」で、自分のことにも使います。

接続

お+和語の名詞(お名前)/ご+漢語の名詞(ご家族)。お+〈ます形〉+ください(待ちます→お待ちください)/ご+漢語+ください(注意します→ご注意ください)

形
名詞: お名前・お仕事・お荷物・お国/ご家族・ご住所・ご両親お〜ください: 待ちます→お待ちください、入ります→お入りください、掛けます→お掛けください、使います→お使いくださいご〜ください: ご注意ください、ご連絡ください、ご利用くださいこの形にしない動詞: 見てください→ご覧ください、食べてください→召し上がってください(学習項目4)

導入

  • 相手のものに「お」をつける教師が学生の名札やかばんを指して「〜さんのお名前は?」「これは〜さんのお荷物ですか」と聞き、答えさせる。次に自分の名札を指して「わたしの名前は〜です」と言い、自分のものには「お」をつけないことを見せる。板書は左に「お」(名前・仕事・荷物)、右に「ご」(家族・住所・両親)の二列にし、学生から出た語を振り分けさせる。
  • 教室を受付にする教室のドアの前に「受付」の札を置き、教師が受付の人になって、ノックして入ってきた学生に「どうぞお入りください」「こちらにお掛けください」「少しお待ちください」と言う。そのあと「入ってください→お入りください」と第11課の形と並べて板書し、学生に受付の役を替わらせる。漢語の「ご注意ください」「ご連絡ください」は、駅の掲示や学校のお知らせの写真で見せる。

板書案

〔赤〕お+和語:お名前・お仕事・お荷物・お国
〔青〕ご+漢語:ご家族・ご住所・ご両親・ご連絡
入ってください → お入りください(ます を取って お〜ください)
待ってください → お待ちください 注意してください → ご注意ください
〔×〕わたしのお名前 〔○〕〜さんのお名前 (お茶・お金 は別)

場面と発話(自作)

  • 病院の受付で、初めて来た患者に、受付の人が紙を渡しながら言う。こちらにお名前とご住所をお書きください。
  • 会社の受付で、約束の時間より早く来たお客様に、受付の人が言う。どうぞお入りください。こちらで少しお待ちください。
  • 先生のうちに招かれた学生が、先生の家族のことをたずねる。先生、ご家族は皆さんお元気ですか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、名詞のカード(名前・家族・仕事・住所)を出して「お」か「ご」をつけて言わせ、次に動詞のカード(待ちます・入ります・注意します)を「お〜ください/ご〜ください」に変えさせる。場面のやり取りでは、受付・店員とお客様の役に分かれ、お客様を部屋に入れる・座ってもらう・待ってもらう・名前を書いてもらう、の流れを案内させる。

  1. 口頭名詞のカード(名前・仕事・荷物・家族・住所・両親・電話)を出し、全体→個人で「お」か「ご」をつけて言わせる。次に動詞のカード(入ります・掛けます・待ちます・使います・書きます・連絡します・注意します)を出し、「お〜ください/ご〜ください」に変えさせる。て形から作ろうとする学習者には、ます形を言わせて「ます」を消すところを指で示す。
  2. ペアAは受付の人で、指示を4つ書いたカード(入る→掛ける→名前を書く→待つ)を持ち、Bはお客様でカードを見ない。Aが「どうぞお入りください」「こちらにお掛けください」と案内し、Bは言われたとおりに動く。Bが動けなかったらAの言い方を確かめる。終わったら、病院・ホテル用の別のカードで役を替える。
  3. 産出「受付案内ロールプレイ」。3〜4人の組で会社・病院・ホテルのどれかを選び、お客様が来てから待ってもらうまでの案内を4〜5行で書いて演じる。受付の人がお客様の名前か家族のことを一つは聞くように台本に入れる。見るのは、和語と漢語で「お」「ご」を分けられているか、ます形から作れているか、自分のものに「お」「ご」をつけていないか。

つまずきと手当て

  • 自分のものに「お」「ご」をつける(*わたしのお名前は森です、*わたしのご家族は4人です)。相手のものにだけつける、と名札の導入に戻す。ただし「お茶・お金」の「お」は自分のことにも使うので、別のものとして一言だけ触れる
  • 「お」と「ご」を取り違える(*お注意ください、*ご待ちください)。和語は「お」、漢語は「ご」が多い、と二列の板書に戻す。「お電話ください」のような例外は、出てきたときに一つずつ覚えればよい
  • 目上の人に自分のための頼みごとをするときも「お〜ください」を使う(先生に作文を直してほしいとき「先生、この作文をお直しください」)。誤りではないが指示のように聞こえることがあるので、自分のための頼みは第35課の形で「直してくださいませんか」と言うほうが自然なことが多い、と場面を分けて見せる

既習の文型との違い

  • 〜てください(第11課)どちらも相手に動作を頼む・指示する形だが、「お〜ください」は受付・店・駅でお客様や目上の人に向けた案内の言い方で、友達や同じ立場の人には使わない。形の誤りでいちばん多いのは、て形とまぜた「*お待ってください」「*お入ってください」で、ます形から作ると言い直させる。
  • くださいます/〜てくださいます(第35課)第35課の「〜てくださいませんか」は、自分のために目上の人に頼む言い方だった。この課の「お〜ください」は、相手の都合や安全のための案内に向く。先生に作文を見てほしいときは「見てくださいませんか」、お客様に待ってもらうときは「お待ちください」と、だれのための頼みかで分ける。
関連する文型

学習項目 3 お〜になります/ご〜になります

意味・はたらき学習項目 3

「お+ます形(ます を取った形)+になります」で目上の人の動作を高めて言います(帰ります→お帰りになります、待ちます→お待ちになります)。学習項目1の「〜れます/〜られます」より丁寧に聞こえることが多く、先生や上司に直接、その人の予定や動作を聞くときによく使います。「出席します」「利用します」のような漢語の動詞は「ご+漢語+になります」(ご出席になります・ご利用になります)になります。ます形が1拍の動詞(見ます・寝ます・います)や「来ます」「します」、それに特別な尊敬語がある動詞(行きます・食べます・言います など)はこの形にせず、学習項目4の語を使います。

接続

お+〈ます形〉+になります(和語の動詞)/ご+漢語+になります。否定・過去・質問は「になります」の部分を変える(お帰りになりません・お帰りになりました・お帰りになりますか)

形
書きます→お書きになります、使います→お使いになります、出かけます→お出かけになります、着きます→お着きになります出席します→ご出席になります、利用します→ご利用になります、心配します→ご心配になります否定・過去: お出かけになりません/お出かけになりました/お出かけになりましたかこの形にしない動詞: *お見になります(→ご覧になります)、*お寝になります(→お休みになります)、*おしになります(→なさいます)

導入

  • 階段の板書で丁寧さを上げる黒板に三段の階段を描き、下の段に「帰りました」、まん中に学習項目1の「帰られました」、いちばん上に「お帰りになりました」と書く。「ます」を取って「お」と「になります」ではさむ作り方を色を変えて示し、「待ちます」「出かけます」「使います」も学生に階段の上まで上げさせる。
  • 使えない動詞を札にする学生に「見ます」「寝ます」「来ます」「します」でも作らせてみて、「お見になります」は言わない、と札に書いて黒板の端に貼る。札は学習項目4でそのまま使い、裏に「ご覧になります」「お休みになります」「いらっしゃいます」「なさいます」を書いておいて、そこで裏返す。

板書案

〔上の段〕お帰りになりました
〔まん中〕帰られました(学習項目1)
〔下の段〕帰りました
お+〔赤〕帰り(ます を取る)+になります ご+〔青〕出席+になります
部長は何時にお出かけになりますか。
〔札〕見ます・寝ます・います・来ます・します → 学習項目4へ

場面と発話(自作)

  • 会社で、午後に外へ出る予定の課長に、社員が戻りの時間を確かめるために聞く。課長、何時ごろお出かけになりますか。
  • 図書館で、パソコンの前で待っている年配の利用者に、図書館の人が聞く。こちらのパソコンをお使いになりますか。
  • 会社で、来週の会議の出欠を集めている社員が、部長に直接たずねる。部長は、来週の会議にご出席になりますか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師がます形のカードを出し、学生が「お〜になります」に変える。途中に札の動詞(見ます・来ます・します)を混ぜ、学生が「この形にしない」と気づいて止まれるかを確かめる。場面のやり取りでは、上司の一日の予定表(何時に出かける・どこへ行く・何時に戻る)を見ながら、「〜は何時にお〜になりますか」と聞き合う。

  1. 口頭教師がます形のカードを出し、全体→個人で「お〜になります」に変えさせる。キューは「書きます」「使います」「出かけます」「着きます」「待ちます」、漢語の「出席します」「利用します」。慣れたら否定・過去・質問(お出かけになりません・お出かけになりました・お出かけになりますか)に広げる。途中に札の動詞(見ます・来ます・します)を一枚ずつ混ぜ、学習者が「この形にしない」と言って止まれるかを見る。
  2. ペアAは上司のあしたの予定表(何時に出かける・どこに着く・何時に戻る・何を使う)を持ち、Bは時間の欄が空いた同じ表を持つ。Bが「部長は何時にお出かけになりますか」「何時ごろ会社にお戻りになりますか」と聞いて欄を埋め、最後に二人で表を見比べる。役を替えるときは社長の予定表に替える。
  3. 産出「上司への予定確認ロールプレイ」。教師(または上級の学生)が部長役になり、学習者は社員として、あしたの会議の準備のために部長に直接、予定を3つ聞く(何時に着くか・会議に出るか・パソコンを使うか)。聞いた答えはメモして同僚役に伝える。見るのは、「お〜になりますか」の「に」が落ちていないか、札の動詞で作っていないか、「お〜になられます」と重ねていないか。

つまずきと手当て

  • 1拍の動詞や「来ます」「します」で作る(*お見になります、*お来になります、*お勉強しになります)。黒板の端の札に戻し、「ご覧になります」「いらっしゃいます」「勉強されます」のように別の形で言わせる
  • 二つの尊敬を重ねて「お帰りになられました」と言う。「お〜になります」と「〜られます」を重ねた形は二重敬語といい、正しくないとされることが多いので、階段の板書で一段ずつしか上がらないと見せる
  • 会社の外の人に、自分の会社の社長の動作を尊敬語で言う(ほかの会社の人に「社長はもうお帰りになりました」)。文の形は正しいが、外の人に話すときは自分の会社の人を高めない決まりがある、とだけ伝え、そのときの言い方は第37課で扱う

既習の文型との違い

  • 〜になります(第15課)第15課の「〜になります」は名詞やナ形容詞について変化を表した(医者になります・元気になります)。この課の「お〜になります」は、ます形を「お」と「になります」ではさむ尊敬の形で、変化の意味はない。学習者は「に」を落として「*お帰りなりました」と言いやすいので、板書の「になります」の「に」に印をつけておく。
  • 〜れます/〜られます 尊敬(この課の学習項目1)どちらも目上の人の動作を高めるが、「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえることが多く、本人に直接聞くときに向く。「〜れます/〜られます」はほとんどの動詞から作りやすく、会社の中の話や書いた文でもよく使う。二つを重ねた「お帰りになられました」は二重敬語として避けるよう、階段は一段ずつと確かめる。
関連する文型

学習項目 4 尊敬表現

意味・はたらき学習項目 4

よく使ういくつかの動詞には、尊敬のための特別な言葉があります。行きます・来ます・います→いらっしゃいます、食べます・飲みます→召し上がります、言います→おっしゃいます、見ます→ご覧になります、します→なさいます、寝ます→お休みになります、知っています→ご存じです、くれます→くださいます(第35課)です。これらの動詞では「お〜になります」を作らず、この言葉を使うのがふつうです。いらっしゃる・おっしゃる・なさる・くださる のます形は「〜ります」ではなく「〜います」になり、「いらっしゃいます」は行く・来る・いるのどの意味かを、場所の助詞や前後の話で決めます。

接続

もとの動詞を特別な語に置き換える。ます形は いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます(「〜ります」にしない)。「〜ています」は「〜ていらっしゃいます」に、「〜てください」は「召し上がってください」「ご覧ください」のようにする

形
行きます・来ます・います→いらっしゃいます/食べます・飲みます→召し上がります言います→おっしゃいます/見ます→ご覧になります/します→なさいます/寝ます→お休みになります知っています→ご存じです(否定: ご存じではありません)/くれます→くださいます〜ています→〜ていらっしゃいます(部長は会議室で待っていらっしゃいます)

導入

  • 札を裏返して対応表にする学習項目3で端に貼った札(見ます・寝ます・来ます・します)を一枚ずつ裏返して「ご覧になります」「お休みになります」「いらっしゃいます」「なさいます」を見せ、さらに「行きます・います」「食べます・飲みます」「言います」「知っています」の札を足して、もとの動詞と特別な語を線で結ぶ表にする。「いらっしゃいます」に線が三本集まることを指さして確かめる。
  • 先生への質問で使う教師が先生役のまま、学生に「先生に週末のことを聞いてください」「好きな食べ物を聞いてください」と指示し、「先生は週末どこへいらっしゃいましたか」「先生は何をよく召し上がりますか」を引き出す。教師は答えるときに「わたしは京都へ行きました」と、自分のことはいつもの形で答え、言い分けを耳に入れる。

板書案

行きます・来ます・います → いらっしゃいます
食べます・飲みます → 召し上がります 言います → おっしゃいます
見ます → ご覧になります します → なさいます 寝ます → お休みになります
知っています → ご存じです くれます → くださいます(第35課)
〔赤〕〜ります ではなく 〜います:いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます
先生は週末どこへいらっしゃいましたか。— わたしは京都へ行きました。

場面と発話(自作)

  • 先生が話した言葉を聞き取れなかった学生が、もう一度言ってもらうために聞く。すみません、今、何とおっしゃいましたか。
  • 学生のうちのパーティーに先生が来てくれたので、学生が自分の国の料理をすすめる。先生、どうぞたくさん召し上がってください。
  • 金曜日の授業のあと、学生が質問をしたくて、先生のあしたの予定を聞く。先生はあしたも学校にいらっしゃいますか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭の代入練習では、教師が対応表のもとの動詞のカードを出し、学生がすぐに特別な尊敬語で言う。慣れたら「先生は〜ました」の文を出して特別な語の文に言いかえさせる。場面のやり取りでは、先生へのインタビューの質問を尊敬語で作らせ、教師(または上級クラスの学生)に実際に聞いて答えをメモさせる。

  1. 口頭もとの動詞のカードを表にして見せ、全体→個人で裏の特別な尊敬語を言わせる(食べます→召し上がります、見ます→ご覧になります、言います→おっしゃいます、寝ます→お休みになります、知っています→ご存じです)。慣れたら教師が「先生はテレビを見ました」「社長はもう寝ました」と文で言い、学習者が尊敬語の文に言いかえる。「いらっしゃいます」は「教室に」「京都へ」「あした学校に」の三つの文で、行く・来る・いるのどれかを当てさせる。
  2. ペアAは「先生」の札を首にかけて目上の役になり、Bは特別な尊敬語を使った質問を3つする(何を召し上がりますか・週末どこへいらっしゃいますか・〜をご存じですか)。Aは自分のことなので「〜を食べます」「〜へ行きます」といつもの形で答える。3問で役を替え、Bは聞いた答えを一行メモする。
  3. 産出「先生インタビュー報告」。学習者が先生にしてみたい質問を特別な尊敬語で3つ作り、教師に実際に聞いて答えをメモし、クラスに「先生は〜そうです」と報告する(第32課の伝聞)。見るのは、ます形を「〜ります」にしていないか、自分の答えに尊敬語を使っていないか、目上の人の気持ちを「〜たいですか」で聞いていないか。

つまずきと手当て

  • ます形を「〜ります」で作る(*いらっしゃります、*おっしゃります)。対応表の横に「〜います」と大きく書き、いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます の四つをまとめて言わせる
  • 「ご存じですか」と聞かれて、自分のことに尊敬語で答える(*はい、ご存じです)。自分のことは「はい、知っています」と、左右の絵カードに戻して確かめる。同じく「*わたしはあした学校にいらっしゃいます」のように、自分の動作に特別な尊敬語を使う誤りもここで直す
  • 目上の人に「先生、ケーキを召し上がりたいですか」のように、希望を「〜たいですか」で聞く。尊敬語の形は正しいが、目上の人の気持ちを直接聞くのは失礼に聞こえやすいので、「召し上がりますか」「いかがですか」で聞くほうが自然だと場面で見せる

既習の文型との違い

  • くださいます/〜てくださいます(第35課)「くださいます」は第35課ですでに習った特別な尊敬語で、ます形が「〜います」になる点で、いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいますと同じ仲間だと気づかせる。四つを並べて言わせると「*いらっしゃります」の誤りが減る。
  • お〜になります/ご〜になります(この課の学習項目3)特別な尊敬語がある動詞では、「お〜になります」を作らずにそちらを使う(*お見になります→ご覧になります、*お来になります→いらっしゃいます)。学習項目3の札を裏返すと、この二つの関係が一目で分かる。
  • 〜ています(1)(第10課)「〜ています」は「〜ていらっしゃいます」にすると尊敬になる(部長は会議室で待っていらっしゃいます)。学習者は「*待っていらっしゃります」のように崩しやすいので、て形+いらっしゃいます の形を板書で一行にして見せる。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語は、目上の人を表す語(社長・部長・課長・校長先生・お客様)と、特別な尊敬語のかたまりに分かれます。特別な尊敬語は単語だけで覚えさせず、必ずもとの動詞と対にした対応表で、「先生は〜いらっしゃいますか」のように主語つきの文の形で練習します。「少し」を受付の場面で「少々」と言う言い方は、聞いて分かれば十分で、言わせるのは「少しお待ちください」でかまいません。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 座ります(すわります) いすなどに腰をおろします。 いすに〜・席に〜
    会社の受付で、お客様に席をすすめる。
    「空いている席に、お座りになってお待ちください。」
  • 掛けます(かけます) いすに座ることを、少し改まって言う言い方です。 いすに〜・こちらに〜
    病院の待合室で、受付の人が患者に言う。
    「名前を呼びますから、あちらにお掛けください。」
  • 受付(うけつけ) 会社や病院の入り口で、来た人の名前や用事を聞く所です。 〜で名前を書く・〜の人
    初めて来た会社で、どこへ行けばいいか分からない。
    「すみません、受付はどこですか。」
  • お客様(おきゃくさま) 店や会社に来る人を、高めて言う言葉です。 〜が来る・〜を案内する
    店で、店員が同僚に声をかける。
    「お客様がいらっしゃいましたよ。」
  • 部長(ぶちょう) 会社の部の、いちばん上の人です。 〜に聞く・〜の予定
    会社で、社員が先輩に部長の予定を聞く。
    「部長はもう会議室に行かれましたか。」
  • 出張します(しゅっちょうします) 仕事のために、ほかの町や国へ行きます。 大阪へ〜・〜から帰る
    会社で、課長の来週の予定を伝える。
    「課長は来週、福岡へ出張されるそうです。」
  • 出席します(しゅっせきします) 会議や授業、パーティーなどに出ます。 会議に〜・パーティーに〜
    会議の前に、社員が部長に直接たずねる。
    「部長はあしたの会議にご出席になりますか。」
  • いらっしゃいます(いらっしゃいます) 目上の人が行く・来る・いることを、高めて言う言葉です。 学校に〜・京都へ〜
    学生が、先生のあしたの予定を聞く。
    「先生はあしたも学校にいらっしゃいますか。」
  • 召し上がります(めしあがります) 目上の人が食べる・飲むことを、高めて言う言葉です。 料理を〜・お茶を〜
    学生のうちのパーティーで、先生に料理をすすめる。
    「先生、どうぞ召し上がってください。」
  • おっしゃいます(おっしゃいます) 目上の人が言うことを、高めて言う言葉です。 先生が〜・何と〜
    先生の言葉が聞き取れなかった。
    「すみません、もう一度おっしゃってください。」
  • ご覧になります(ごらんになります) 目上の人が見ることを、高めて言う言葉です。 映画を〜・資料を〜
    先生と週末の話をする。
    「先生は週末、映画をご覧になりましたか。」
  • ご存じです(ごぞんじです) 目上の人が知っていることを、高めて言う言葉です。 〜ですか・〜ではありません
    学生が先生に、近くの店を知っているか聞く。
    「先生は駅の前の新しい店をご存じですか。」

宿題と次のコマ

宿題は、先生にしてみたい質問を尊敬語で3つ書くこと(三つの形をそれぞれ1回は使う)と、「部長は〜ました」の文10個を尊敬語に言いかえるプリント。次のコマの最初に宿題の質問を教師に実際に聞いて答えてもらい、答えを「先生は〜そうです」と報告させて復習してから、第37課の謙譲語(自分の動作を低くして言う形)に入ります。

よくある質問

  • 『学ぼう!にほんご』第36課の尊敬語は、どの順で教えればいいですか?

    この教案では、第30課の受身形と同じ形の「〜れます/〜られます」から入り、名詞と案内の「お〜/ご〜」、より丁寧な「お〜になります」、最後に特別な尊敬語の順にしています。形の作り方が既習の受身で済む項目から始めると、時間を「だれの動作か」の言い分けに回せます。「お〜になります」で作れない動詞を札にしておき、特別な尊敬語の導入でその札を裏返すと、四つの項目が一本につながります。

  • 尊敬の「〜れます/〜られます」と受身・可能は、どう見分けさせますか?

    受身との違いは主語と助詞で見ます。尊敬は動作をする目上の人が主語で、助詞はもとの文のままです。可能とは、グループⅡと「来る」で形が同じになるので、予定を聞く場面か、したかどうかを聞く場面かで決まると見せます。どちらとも取れる文は、教室では「お〜になります」や特別な尊敬語で言い直させると誤解がありません。

  • 「お帰りになります」と「帰られます」は、どちらが丁寧ですか?

    一般に「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえることが多く、先生や上司に直接聞くときに向きます。「〜れます/〜られます」は作りやすく、会社の中の話やニュース・書いた文でもよく使います。二つを重ねた「お帰りになられました」は二重敬語として避けるのが無難だと教えます。

  • 第36課は何コマで終わりますか?

    この教案では90分×3コマを目安にしています。1コマ目に導入と学習項目1、2コマ目に学習項目2と3、3コマ目に特別な尊敬語とインタビュー・受付のロールプレイを置きます。特別な尊敬語の対応表に時間がかかるクラスでは、3コマ目の最初に札のカードで復習を10分足します。

  • ほかの会社の人に自分の会社の部長のことを話すときの言い方も、この課で教えますか?

    この課では「自分の会社の人のことを外の人に話すときは尊敬語を使わない」という決まりがある、と伝えるところまでにしています。そのときに使う自分を低くする言い方(謙譲語)は第37課の学習項目なので、言い方の練習はそこで扱います。学習者から質問が出たら、第37課でまとめて練習すると予告しておきます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。