この本で尊敬語が初めて出る課です。目上の人やお客様の動作・持ち物を高めて言う方法を、「〜れます/〜られます」「お〜/ご〜(名詞と、お〜ください)」「お〜になります」「特別な尊敬語(いらっしゃる・召し上がる など)」の四つで学びます。尊敬語は「だれの動作か」で決まり、自分の動作や持ち物には使わない、と最初に線を引き、その線を場面ごとに何度も確かめるのがこの課の芯です。「〜れます/〜られます」は第30課の受身形とまったく同じ形なので作り方は短く済ませ、第35課の「くださいます」もすでに尊敬語だったと気づかせてから、時間は学校・会社・店・受付の場面練習に回します。自分を低くする言い方(謙譲語)は第37課なので、この課では「自分のことはいつもの形で言う」までにとどめます。
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 15分 | 第35課の「先生が〜をくださいました」を絵カードで2〜3問確かめ、「くれました」を先生のときは「くださいました」と言ったことを思い出させる。そのあと友達の絵と先生・社長の絵を黒板の左右に貼り、同じ「帰りましたか」を、右の人のときは別の言い方にする課だと予告する |
| 学習項目1 〜れます/〜られます 尊敬 | 50分 | 第30課の受身形の作り方の板書をもう一度書き、同じ形が「目上の人の動作」の意味にもなると見せる。ます形→尊敬の形の口頭練習のあと、「先生は〜(ら)れましたか」の問答。助詞はもとの文のままだと、受身の文と並べて確かめる |
| 学習項目2 お〜/ご〜 | 50分 | 相手の名前・家族・仕事・荷物に「お」「ご」をつける練習から入り、教室を受付に見立てて「お入りください」「お待ちください」「ご注意ください」の案内へ広げる。和語は「お」、漢語は「ご」が多いことを二列の板書で |
| 学習項目3 お〜になります/ご〜になります | 45分 | 「帰りました→帰られました→お帰りになりました」を階段の板書で上へ書き、上ほど丁寧に聞こえると見せる。この形にしない動詞(見ます・寝ます・います・来ます・します など)を札にして端に貼り、学習項目4につなぐ |
| 学習項目4 尊敬表現 | 60分 | もとの動詞と特別な尊敬語を線で結ぶ対応表を作り、カードの表裏で言い換えを回す。「いらっしゃいます」が行く・来る・いるを兼ねること、ます形が「〜います」になることを押さえる |
| まとめの活動 | 50分 | 先生へのインタビュー(週末・好きな食べ物・よく見るテレビなど)を尊敬語で3問作って聞き、答えをクラスに「先生は〜そうです」と報告する。最後に受付・店員の役で、お客様を案内するロールプレイ |
尊敬語は、先生・上司・お客様のような目上の人や、よく知らない人の動作を高めて言う言い方です。いちばん作りやすいのが、動詞を「〜れる/〜られる」の形にする方法で、形は第30課の受身形とまったく同じです。受身の文と違うのは、主語が動作をする目上の人で、助詞がもとの文のまま変わらないことです(部長は新聞を読みました→部長は新聞を読まれました)。会社の中の会話やニュース・書いた文でよく使われ、「お〜になります」(学習項目3)より敬意は少し軽く聞こえることが多いです。
グループⅠはない形の「ない」を「れる」に(書かない→書かれる)、グループⅡは辞書形の「る」を「られる」に(始める→始められる)、グループⅢは「する→される」「来る→来られる」。できた形はグループⅡの動詞として活用し、ふつうは「〜れます・〜れました」の形で使う
口頭の代入練習では、教師が動詞のます形のカードを出し、学生が尊敬の形(〜れます/〜られます)で言う。グループを混ぜ、慣れたら「部長は〜ました」の文を出して尊敬の文に言いかえさせる。場面のやり取りでは、先生や会社の上の人の絵カードを使い、「〜はもう〜れましたか」「はい、〜れました」の問答をペアで行う。
相手や目上の人の持ち物・家族・様子を表す名詞に「お」「ご」をつけると、その人を高めて言うことになります(お名前・お仕事・お荷物・ご家族・ご住所)。もう一つ、「お+ます形(ます を取った形)+ください」「ご+漢語+ください」は、第11課の「〜てください」をお客様や目上の人に向けて丁寧にした言い方で、受付・店・駅の案内でよく聞きます(お待ちください・お入りください・ご注意ください)。和語には「お」、漢語には「ご」がつくことが多いですが、「お電話・お時間・お元気」のように漢語に「お」がつく語もあります。なお「お茶・お金」の「お」は人を高めるのではなく、言葉をきれいに言うための「お」で、自分のことにも使います。
お+和語の名詞(お名前)/ご+漢語の名詞(ご家族)。お+〈ます形〉+ください(待ちます→お待ちください)/ご+漢語+ください(注意します→ご注意ください)
口頭の代入練習では、名詞のカード(名前・家族・仕事・住所)を出して「お」か「ご」をつけて言わせ、次に動詞のカード(待ちます・入ります・注意します)を「お〜ください/ご〜ください」に変えさせる。場面のやり取りでは、受付・店員とお客様の役に分かれ、お客様を部屋に入れる・座ってもらう・待ってもらう・名前を書いてもらう、の流れを案内させる。
「お+ます形(ます を取った形)+になります」で目上の人の動作を高めて言います(帰ります→お帰りになります、待ちます→お待ちになります)。学習項目1の「〜れます/〜られます」より丁寧に聞こえることが多く、先生や上司に直接、その人の予定や動作を聞くときによく使います。「出席します」「利用します」のような漢語の動詞は「ご+漢語+になります」(ご出席になります・ご利用になります)になります。ます形が1拍の動詞(見ます・寝ます・います)や「来ます」「します」、それに特別な尊敬語がある動詞(行きます・食べます・言います など)はこの形にせず、学習項目4の語を使います。
お+〈ます形〉+になります(和語の動詞)/ご+漢語+になります。否定・過去・質問は「になります」の部分を変える(お帰りになりません・お帰りになりました・お帰りになりますか)
口頭の代入練習では、教師がます形のカードを出し、学生が「お〜になります」に変える。途中に札の動詞(見ます・来ます・します)を混ぜ、学生が「この形にしない」と気づいて止まれるかを確かめる。場面のやり取りでは、上司の一日の予定表(何時に出かける・どこへ行く・何時に戻る)を見ながら、「〜は何時にお〜になりますか」と聞き合う。
よく使ういくつかの動詞には、尊敬のための特別な言葉があります。行きます・来ます・います→いらっしゃいます、食べます・飲みます→召し上がります、言います→おっしゃいます、見ます→ご覧になります、します→なさいます、寝ます→お休みになります、知っています→ご存じです、くれます→くださいます(第35課)です。これらの動詞では「お〜になります」を作らず、この言葉を使うのがふつうです。いらっしゃる・おっしゃる・なさる・くださる のます形は「〜ります」ではなく「〜います」になり、「いらっしゃいます」は行く・来る・いるのどの意味かを、場所の助詞や前後の話で決めます。
もとの動詞を特別な語に置き換える。ます形は いらっしゃいます・おっしゃいます・なさいます・くださいます(「〜ります」にしない)。「〜ています」は「〜ていらっしゃいます」に、「〜てください」は「召し上がってください」「ご覧ください」のようにする
口頭の代入練習では、教師が対応表のもとの動詞のカードを出し、学生がすぐに特別な尊敬語で言う。慣れたら「先生は〜ました」の文を出して特別な語の文に言いかえさせる。場面のやり取りでは、先生へのインタビューの質問を尊敬語で作らせ、教師(または上級クラスの学生)に実際に聞いて答えをメモさせる。
この課の語は、目上の人を表す語(社長・部長・課長・校長先生・お客様)と、特別な尊敬語のかたまりに分かれます。特別な尊敬語は単語だけで覚えさせず、必ずもとの動詞と対にした対応表で、「先生は〜いらっしゃいますか」のように主語つきの文の形で練習します。「少し」を受付の場面で「少々」と言う言い方は、聞いて分かれば十分で、言わせるのは「少しお待ちください」でかまいません。
宿題は、先生にしてみたい質問を尊敬語で3つ書くこと(三つの形をそれぞれ1回は使う)と、「部長は〜ました」の文10個を尊敬語に言いかえるプリント。次のコマの最初に宿題の質問を教師に実際に聞いて答えてもらい、答えを「先生は〜そうです」と報告させて復習してから、第37課の謙譲語(自分の動作を低くして言う形)に入ります。
『学ぼう!にほんご』第36課の尊敬語は、どの順で教えればいいですか?
この教案では、第30課の受身形と同じ形の「〜れます/〜られます」から入り、名詞と案内の「お〜/ご〜」、より丁寧な「お〜になります」、最後に特別な尊敬語の順にしています。形の作り方が既習の受身で済む項目から始めると、時間を「だれの動作か」の言い分けに回せます。「お〜になります」で作れない動詞を札にしておき、特別な尊敬語の導入でその札を裏返すと、四つの項目が一本につながります。
尊敬の「〜れます/〜られます」と受身・可能は、どう見分けさせますか?
受身との違いは主語と助詞で見ます。尊敬は動作をする目上の人が主語で、助詞はもとの文のままです。可能とは、グループⅡと「来る」で形が同じになるので、予定を聞く場面か、したかどうかを聞く場面かで決まると見せます。どちらとも取れる文は、教室では「お〜になります」や特別な尊敬語で言い直させると誤解がありません。
「お帰りになります」と「帰られます」は、どちらが丁寧ですか?
一般に「お〜になります」のほうが丁寧に聞こえることが多く、先生や上司に直接聞くときに向きます。「〜れます/〜られます」は作りやすく、会社の中の話やニュース・書いた文でもよく使います。二つを重ねた「お帰りになられました」は二重敬語として避けるのが無難だと教えます。
第36課は何コマで終わりますか?
この教案では90分×3コマを目安にしています。1コマ目に導入と学習項目1、2コマ目に学習項目2と3、3コマ目に特別な尊敬語とインタビュー・受付のロールプレイを置きます。特別な尊敬語の対応表に時間がかかるクラスでは、3コマ目の最初に札のカードで復習を10分足します。
ほかの会社の人に自分の会社の部長のことを話すときの言い方も、この課で教えますか?
この課では「自分の会社の人のことを外の人に話すときは尊敬語を使わない」という決まりがある、と伝えるところまでにしています。そのときに使う自分を低くする言い方(謙譲語)は第37課の学習項目なので、言い方の練習はそこで扱います。学習者から質問が出たら、第37課でまとめて練習すると予告しておきます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。