見た目から受けた印象を言う「〜そうです」、目的を言う「〜ために、…」、程度が度を越していることを言う「〜すぎます」の3つを学ぶ課です。3つのうち2つは動詞の ます形の「ます」をとった形と、い形容詞の「い」をとった形につくので、課の最初に「食べ・おいし・元気」のような「とった形」を作る練習をしておくと、そうです と すぎます が同じ作り方で入ります。形の作り方がそろっているぶん、例外のいい→よさそう・よすぎる、ない→なさそう・なさすぎるは板書の赤で別に残します。「〜ために」だけは辞書形と「Nの」につき、第9課の「〜に行きます」の目的よりも広く、行く・来る以外の動詞にも目的をつけられるようになります。様態の「〜そうです」は第32課の伝聞の「〜そうです」と形がよく似ているので、この課では「見て思ったこと」に限って練習し、違いは第32課で並べて確かめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 動詞カードで ます形 →「ます」をとった形(食べ・飲み・し)を、い形容詞・な形容詞のカードで「い」「な」をとった形(おいし・高・元気)を、すばやく言わせる。この形にいろいろな言葉がつく課だと予告し、いい→よ、ない→なさ だけは形が変わると板書の端に赤で書いておく |
| 学習項目1 〜そうです 様態(形容詞) | 40分 | 料理や人の写真・絵で、「食べていないけど、見て思う」状況を作る。い形容詞・な形容詞の作り方、いい→よさそう・ない→なさそう、名詞の前の「〜そうな」まで |
| 学習項目1 〜そうです 様態(動詞) | 40分 | 棚の端に置いた物・暗い空の絵で、「今にも〜そうです」を導入する。形容詞の「様子」と、動詞の「もうすぐ起こりそう」の違いを、絵を並べて確かめる。1コマ目はここまで |
| 学習項目2 〜ために、… | 40分 | 教師の行動とその目的を2枚のカードで見せ、「Nのために」「Vるために」の2列で板書する。第9課の「〜に行きます」と並べて、目的が言える動詞が広がったことを見せる |
| 学習項目3 〜すぎます | 30分 | 大きすぎる服・量の多い料理の絵で、「困る」程度を見せる。動詞・い形容詞・な形容詞の作り方をそうです と同じ表に足し、「〜すぎて、〜」で結果まで言わせる |
| まとめの活動 | 20分 | 買い物の場面のロールプレイ。店の品物の絵を見て「〜そうですね」と感想を言い、「〜すぎます」で買わない理由を言い、「〜のために買います」で買う物を決める |
見た目や様子から「〜のように見える」と感じたことを言う形です。まだ食べていない料理を見て「おいしそうです」、友達の顔を見て「元気そうです」のように、話し手が直接見て受けた印象を言います。動詞につくと「今にも〜が起こりそうだ」という意味になり、「雨が降りそうです」「棚から落ちそうです」のように、もうすぐ起こりそうなことを言って注意するときにも使います。第24課の「〜ようです」が様子から考えて判断するのに対して、「〜そうです」は見た瞬間の印象に近い言い方です。また、第32課で学ぶ伝聞の「〜そうです」(聞いたことを伝える)とは形がよく似ていますが、前につく形が違います(様態は「おいしそうです」、伝聞は「おいしいそうです」)。
Vます形の「ます」をとった形+そうです/い形容詞の「い」をとった形+そうです/な形容詞+そうです(いい→よさそう、ない→なさそう。名詞にはつかない。名詞の前では「〜そうな+N」)
口頭の代入練習では、物や人の絵カード(ピザ・辛いカレー・重い荷物・高い時計・元気な子ども・ひまな店員)を見せて「〜そうです」と言わせ、慣れたら「〜そうな+N」で名詞の前に置く形、「いい」「ない」の絵(よさそうなかばん・つまらなさそうな顔 など)を混ぜる。動詞は「落ちる・切れる・倒れる・泣く」の絵で「〜そうです」と言わせる。場面のやり取りでは、ペアで写真を見せ合い、「〜そうですね」「ええ、〜ですよ」と、見た印象と本当のことをやり取りする。
何のためにその行動をするのか、目的を言う形です。「Nのために」は「家族のために働きます」のように、目的や、だれ・何のためになるかを言います。「Vるために」は「大学に入るために、勉強しています」のように、目的を辞書形で言います。第9課の「買い物に行きます」の「に」は行く・来る・帰るのような移動の動詞にしか使えませんでしたが、「〜ために」は後ろにどんな動詞でも来られます。前と後ろの主語は同じ人で、前には自分の意志でする動詞(入る・買う・行く など)が来ます。「Vた/Nの+ために」が原因(雨のために、試合が中止になりました)を表す使い方もありますが、この課では目的に絞って練習します。
Nの+ために、…/V辞書形+ために、…(前と後ろは同じ人。前は意志でする動詞)
口頭の代入練習では、目的のカード(試験・新しいパソコンを買う・旅行に行く・家族)と行動のカード(毎晩勉強する・アルバイトをする・お金をためる・働く)を組み合わせて「〜ために、〜ます」と一文で言わせ、名詞のときに「の」を入れるかを判断させる。場面のやり取りでは、「何のために〜ていますか」とペアで聞き合い、聞いた答えをクラスに「〜さんは〜ために、〜ています」と紹介させる。
程度がふつうより大きくて、ちょうどよいところを越えていることを言う形です。「この服は大きすぎます」「ゆうべ食べすぎました」のように、多くの場合「だから困る・よくない」という気持ちがあります。そのため、困った結果を「〜すぎて、…」でつなげると自然になります(重すぎて、一人では運べません など)。「すぎます」はグループⅡの動詞と同じように「すぎて・すぎました・すぎない」と活用します。ほめるつもりで「とても」の代わりに使うと、意味が強く・困ったように聞こえることがあります。
Vます形の「ます」をとった形+すぎます/い形容詞の「い」をとった形+すぎます/な形容詞+すぎます(いい→よすぎます、ない→なさすぎます。「すぎます」はグループⅡの動詞と同じ活用)
口頭の代入練習では、物と状態のカード(スープ+からい・かばん+重い・部屋+静か・ゆうべ+飲む)を見せて「〜すぎます」と言わせ、次に結果のカード(食べられません・持てません・さびしいです・頭が痛いです)を足して「〜すぎて、〜」の一文にする。場面のやり取りでは、買い物や部屋探しの絵を見ながら、客役が「〜すぎます」と理由を言って断り、店員役が「では、こちらはどうですか」と別の物をすすめる。
この課の語彙は、様子を言うための形容詞(あまい・からい・重い・軽い・眠い・ひま・まじめ など)と、目的を言うための生活の語(試験・健康・貯金・家族 など)の二つにまとめると練習が回ります。形容詞は単語だけで覚えさせず、「おいしそう」「重すぎる」のように、この課の形を作ってから文に入れます。
宿題は、自分のまわりの物や人を3つ選んで「〜そうです」で様子を1文ずつ書き、そのうち1つに「〜すぎて、〜」の文を、さらに「わたしは〜ために、〜ています」の文を1つ書くこと。次のコマの最初に、写真や絵を見せながら宿題の文を発表し合い、聞いた人が「何のために〜ていますか」と1つ質問してから、第30課の受身に入ります。様態の「〜そうです」は第32課の伝聞の「〜そうです」と並べて復習するので、この課で作った文は残しておくよう伝えておきます。
「〜そうです(様態)」と第24課の「〜ようです」の違いは何ですか?
「〜そうです」は見た瞬間の印象で、まだ確かめていない味・重さ・人の気持ちなどを言います。「〜ようです」は音やにおい、人の話し方など、いくつかの手がかりから考えた判断です。形では、名詞につくのは「〜ようです」だけ(学生のようです)なので、「*学生そうです」はここで直します。授業では、同じ絵を見て「すぐ思ったこと」と「考えて分かったこと」を言い分けさせると違いが見えます。
様態の「〜そうです」と伝聞の「〜そうです」は、この課でどこまで扱いますか?
この課では、見て思ったことの「〜そうです」だけを練習します。学習者が「おいしいそうです」と言ったら、文として誤りではないが「聞いた話」の意味になると一言伝え、「見て思ったの?」と聞き返して言い直させる程度にします。二つを並べて形の違い(おいしそう/おいしいそう)を確かめるのは第32課です。この課で作った文を残しておくと、第32課の導入にそのまま使えます。
「〜ために」と「〜ように」の違いを聞かれたら、どう答えればいいですか?
初級では、「〜ために」の前には自分で決めてする動詞の辞書形が来る、と答えれば足ります(車を買うために)。「話せる」「分かる」のような可能形や、自分で決められない動詞を前に置きたいときは、「話せるようになるために」と第24課の「〜ようになります」を組み合わせて言えば通じます。目的の「〜ように」(話せるように練習します)は教師が知識として持っておき、この課では表に出さなくてよいでしょう。
第29課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は「とった形」の確認と、様態の「〜そうです」(形容詞と動詞)まで。2コマ目は「〜ために」「〜すぎます」と、買い物の場面のまとめの活動です。様態の「〜そうです」で、いい→よさそう・名詞の前の「な」が定着しない場合は、2コマ目の最初の10分で復習してから進みます。
「〜すぎます」をほめ言葉として使う学生には、どう言えばいいですか?
「おいしすぎる」「かわいすぎる」は若い人の会話でほめる意味でも聞くので、頭ごなしに誤りとは言いません。ただ、目上の人やあらたまった場面では「困るほど」の意味に取られることがあると伝え、ほめるときは「とてもおいしいです」をまず使わせます。店で値段を見て「安すぎます」と言うと品物を疑っているように聞こえる例を出すと、「すぎます」の困る気持ちが分かりやすくなります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。