第29課の様態「〜そうです」(見て、そう感じる)に続いて、人から聞いたこと・ニュースや天気予報で知ったことを伝える「〜そうです」(伝聞)を学ぶ課です。形は同じ「そうです」でも、伝聞は前が普通体(降るそうです)、様態はマス形の語幹(降りそうです)で、意味も「聞いた」と「見える」で違うので、課の最初に二つを左右に並べた板書を作り、課の終わりまで消さずに使います。2番目の項目は第30・31課の受身を普通体にして伝聞をつける形で、建物の由来やニュースの出来事を伝えるときの決まった言い方になります。最後の「〜か/〜かどうか」は、質問の文をそのまま大きな文の中に入れる形で、分からないことを「〜かわかりません」「〜かどうか聞いてみます」と言えるようになり、伝聞と組み合わせると「〜そうですが、本当かどうかわかりません」まで言えます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第29課の様態「〜そうです」を、ケーキや空の写真で2〜3問確かめる(おいしそうです・雨が降りそうです)。そのあと教師がスマホの天気予報を見るふりをして「夕方から雨が降るそうです」と言い、写真を見て言うのと、予報を聞いて言うのとで形が違うことに気づかせる |
| 学習項目1 〜そうです 伝聞 | 40分 | 天気予報と伝言で導入し、「[情報のもと]によると、[普通体]そうです」の枠で、動詞・形容詞・名詞、否定・過去を一つずつ足す。名詞・な形容詞の「だ」は色を変えて板書 |
| 様態と伝聞の見分け | 15分 | 黒板の左に様態(降りそう・おいしそう・元気そう)、右に伝聞(降るそう・おいしいそう・元気だそう)を並べ、絵(見ている目)とスマホ(聞いた耳)のマークをつけて、教師の出す場面カードでどちらを使うか選ばせる |
| 学習項目2 〜れる/られる+そうです | 35分 | 橋や公園の写真と案内板の絵で、受身の「作られました」→普通体「作られた」→「作られたそうです」の3段で導入。人に起きた出来事(盗まれた・ほめられた)に広げる |
| 学習項目3 〜か/〜かどうか… | 45分 | 中の見えない箱で導入。疑問詞のある質問は「〜か」、ない質問は「〜かどうか」と2列に分け、「わかりません・知っていますか・調べます・聞いてみます」につなげる |
| まとめの活動 | 35分 | ニュース番組ごっこ。グループごとに教師が渡す「ニュースのメモ」を読み、リポーター役が「〜によると、〜そうです」でクラスに伝える。聞く側は分からなかった点を「〜か教えてください」「〜かどうかわかりますか」で質問する |
人から聞いたこと、ニュースや天気予報・本で知ったことを、「自分が見たり決めたりしたことではなく、聞いた情報だ」と示して相手に伝える形です。前は普通体で、な形容詞と名詞は「だ」を入れます(静かだそうです・休みだそうです)。「そうです」の部分は形が変わらず、過去や否定は前の普通体で表します(降ったそうです・降らないそうです)。情報のもとを言うときは、文の初めに「〜によると」「〜の話では」をつけます。第29課の様態「〜そうです」は、マス形の語幹や形容詞の語幹について「見て、そう感じる」ことを言う別の形です。文法の用語では、話し手が情報をどこから得たかを示すモダリティ(証拠性の表現)の一つで、自分の判断を言う「〜と思います」とは役割が違います。
普通体+そうです(な形容詞・名詞は「だ」を入れる。「そうです」は過去・否定にしない)
口頭の代入練習では、テレビ・新聞・友達の顔のカードに短い情報を書いたものを見せ、学生が「〜によると、〜そうです」と言いかえる。動詞・い形容詞・な形容詞・名詞、否定・過去を混ぜ、慣れたら様態の場面カード(ケーキの写真など)も混ぜてどちらの「そうです」かを選ばせる。場面のやり取りでは、ペアの一人が週末に聞いたうわさやニュースを一つ話し、もう一人がそれを別の人に「〜さんの話では、〜そうです」と伝える。
第30・31課の受身形を普通体にして、伝聞の「そうです」をつけた形です。お寺・お城・作品などがいつ、だれによって作られたかや、事件・出来事のように、自分で見たのではなく案内板・本・ニュースで知ったことを伝えるときによく使います(この橋は町の人たちによって作られたそうです)。人が主語の受身(先生にほめられた・財布を盗まれた)にも使え、友達から聞いた出来事を別の人に伝えるときに便利です。受身形は最後が「る」なので、普通体はグループⅡの動詞と同じように「〜られる・〜られた・〜られない・〜られなかった」となります。述語の中では「建て(動詞)+られ(受身)+た(過去)+そうです(伝聞)」の順に並び、ヴォイス・テンス・モダリティの順に後ろへつく形の典型なので、受身を先に作ってから伝聞をつける、という手順で練習させます。
受身形の普通体(〜れる・〜れた・〜れない・〜れなかった/〜られる・〜られた…)+そうです
口頭の代入練習では、「〜年・〜が建てました/書きました/作りました」の案内カードを見せて「〜によって〜られたそうです」と言わせ、次に人の出来事カード(足を踏んだ・手紙を読んだ・ほめた)を見せて「〜は〜に〜られたそうです」と言わせる。場面のやり取りでは、学習者が自分の国や町の有名な建物・料理を一つ選び、いつ・だれによって作られたかを「〜そうです」でクラスに紹介する(分からない部分は「〜かどうかわかりません」でよい)。
質問の文を、そのまま大きな文の中に入れる形です。「何・だれ・いつ・どこ・どう・いくら」などの疑問詞がある質問は「〜か」、「はい・いいえ」で答える質問は「〜かどうか」をつけて、「わかりません・知っていますか・覚えていません・調べます・聞いてみます・教えてください」などにつなげます。中の文は普通体ですが、名詞とな形容詞は「だ」をつけません(静かかどうか・休みかどうか・いつが休みか)。答えが分からないことを言ったり、人に何かを確かめてもらったりするときに使います。文法の用語では「間接疑問(埋め込み疑問)」と呼ばれる形で、疑問詞のある質問が「〜か」、「はい・いいえ」で答える質問が「〜かどうか」になる、と押さえておくと説明がぶれません。
疑問詞+普通体+か/普通体+かどうか+わかります・知っています・調べます など(名詞・な形容詞は「だ」をつけない)
口頭の代入練習では、質問カード(「会議は何時に始まりますか」「田中さんはあした来ますか」)を見せ、学生が「〜かわかりません」「〜かどうかわかりません」に言いかえる。疑問詞のあるカードとないカード、名詞文のカードを混ぜ、慣れたら後ろを「知っていますか」「調べます」「聞いてみます」に替える。場面のやり取りでは、クラス旅行の計画表を配り、分からないこと(いくらかかるか・ホテルがあいているかどうか・雨が降るかどうか)を書き出して、「〜か調べます」「〜かどうか聞いてみます」で担当を決めさせる。
この課の練習で中心になる語は、情報のもとを言う言葉(天気予報・ニュース・新聞・〜によると・〜の話では)と、天気・出来事の言葉(夕方・晴れ・盗む・建てる)が中心です。情報のもとの言葉は「天気予報によると」「先輩の話では」のように、文の初めの決まった形のまま入れ、第31課の「〜によって」と並べて違いを見せます。「わかります・知っています・調べます・聞いてみます」は単語ではなく「〜かどうか調べます」の形で、場面ごとにどれを使うかと一緒に練習します。
宿題は、きょう聞いたり読んだりした天気予報・ニュース・人の話を「〜によると、〜そうです」の形で3文書くこと(うち1文は受身の「〜られたそうです」を使う)と、来週の予定で分からないことを「〜かどうかわかりません」「〜か調べます」で2文書くこと。次のコマの最初に、宿題の文を隣の人に伝え、聞いた人がそれをクラスに「〜さんの話では、〜そうです」と伝え直して復習してから、第33課の「〜らしいです」「〜はずです」(聞いたことや根拠から考える言い方)に入ります。
伝聞の「〜そうです」と様態の「〜そうです」は、どう区別させればいいですか?
形と意味を同時に見せます。黒板の左に様態(降りそう・おいしそう・元気そう)、右に伝聞(降るそう・おいしいそう・元気だそう)を並べ、左に目、右に耳のマークをつけて、課の終わりまで消さずに使います。練習では写真カード(見て言う)と天気予報や新聞のカード(聞いて言う)を混ぜて出し、どちらの形かを選ばせると、形だけで覚える学習者が減ります。
「〜そうです」と「〜と言っていました」の違いは何ですか?
「〜と言っていました」は言った人を出して、その人のことばを伝えます。「〜そうです」は言った人を出さなくてもよく、天気予報・ニュース・本など人ではない情報のもとにも使え、「〜によると」とよく一緒に使います。初級では「人から聞いたことは両方使える、ニュースや予報は『〜によると、〜そうです』が自然」と分けて教えると十分です。
「〜か」と「〜かどうか」の使い分けはどう教えますか?
もとの質問に疑問詞(何・だれ・いつ・どこ・いくら など)があるかどうかで分けます。疑問詞のある質問は「何があるかわかりません」のように「か」だけ、「はい・いいえ」で答える質問は「高いかどうかわかりません」のように「かどうか」です。板書を2列にして質問カードを振り分けさせ、名詞・な形容詞では「だ」を取る点を赤で書いておきます。
第32課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で様態とのつなぎ、伝聞の「〜そうです」と見分けの練習、受身+「そうです」の導入まで進め、2コマ目で受身+「そうです」の練習の続き、「〜か/〜かどうか」、ニュース番組ごっこを行います。第30・31課の受身形がまだ不安なクラスでは、2コマ目の初めに受身形の作り方を5分ほど復習してから入ります。
「〜によると」と「〜によって」を混ぜる学習者にはどうすればいいですか?
第31課の「〜によって」は、建物や作品を作った人・建てた人を示す言い方で、受身の文の中で使います。「〜によると」は、情報のもと(天気予報・ニュース・人の話)を示して文の初めに置き、文の終わりの「そうです」と組みになります。「この橋は〜によって作られました」と「案内板によると、この橋は〜によって作られたそうです」を上下に並べて板書し、一つの文の中で両方を使う例を見せると区別がつきます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。