この課で条件形(ば形)が初めて出ます。前半の二つの項目は「ば」の課で、「こうすれば、こうなる」という条件と結果と、「〜ば〜ほど」で一方が増えるともう一方も変わる言い方を学びます。後半の「〜なら」は課の題の形で、相手の話やその場の様子を受けて「そうなのであれば」と自分の考え・勧め・決めたことを言う使い方です。条件の言い方はこれで初級Ⅰ第15課の「〜と」、第19課の「〜たら」、第21課の名詞の「〜なら」とあわせて四つそろうので、形の練習よりも「後ろにどんな文が来られるか」「前と後ろのどちらが先に起こるか」で言い分けさせるのが教えどころです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第19課の「〜たら」で「あした雨が降ったら、何をしますか」と2〜3人に聞いて条件の文を思い出させる。続けて第22課の可能形(行ける・読める)の表を貼り、え段の音がこの課でもう一度使われると予告する |
| 条件形(ば形)の作り方 | 35分 | 辞書形のカードから、グループⅠは え段+ば、グループⅡは る→れば、グループⅢ(すれば・くれば)、否定の「なければ」、イ形容詞の「ければ」、ナ形容詞・名詞の「なら」の順に表を作る。第12課の「〜なければなりません」の「なければ」がこの形だと見せる |
| 学習項目1 〜ば、…(1) | 40分 | 機械の操作や体の調子など「そうすれば、こうなる」場面の絵で導入。「どうすればいいですか」「時間があれば、〜」まで広げ、後ろに頼む文を置けるのは前が状態(ある・形容詞・ない形・可能形)のときだと線を引く。1コマ目はここまで |
| 学習項目2 〜ば、…(2) | 25分 | 2コマ目の初めに ば形 を5分で言い直させてから入る。練習の回数と上手さのグラフ、コンサートの予約表で「〜ば〜ほど」を導入。後ろの文は「〜くなります」「〜ようになります」のような変化の言い方で練習する |
| 学習項目3 〜なら、… | 45分 | 相手の言ったことを受けて答える2人のやり取りで導入。課の題のように相手の予定を受けて自分の決定を言う形から、「〜なら、〜たほうがいいですよ」の勧めへ。「日本へ行くなら」と「日本へ行ったら」を時間の線で比べる |
| まとめの活動 | 25分 | 「相談室」の活動。一人が悩みや予定のカード(日本語が上手になりたい・週末に京都へ行く など)を引いて言い、相手が「〜ば、…」「〜ば〜ほど…」「〜なら、…」のどれかで助言する。最後に「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」の4行の板書を見ながら、言えた文がどの行に入るかを全員で確かめる |
条件を言う形「ば形」を作ります。この本ではもう辞書形を習っているので、辞書形から作ります。グループⅠは辞書形の最後の音(う段)を「え段」に変えて「ば」を付け(行く→行けば)、グループⅡは「る」を「れば」に替え(食べる→食べれば)、グループⅢは「する→すれば」「来る→来れば(くれば)」です。否定は「ない」を「なければ」にし(行かない→行かなければ)、イ形容詞は「い」を「ければ」にします(安い→安ければ、いい→よければ)。ナ形容詞と名詞は「な・だ」を取って「なら」を付けます(静かなら・雨なら。改まった文では「静かであれば」)。この「なら」は学習項目3の「〜なら」と同じ形で、使い方も重なるので、ここでは形だけ確かめます。
動詞: Ⅰ う段→え段+ば/Ⅱ る→れば/Ⅲ する→すれば・来る→くれば(否定 〜ない→〜なければ)。イ形容詞: 〜い→〜ければ(いい→よければ)。ナ形容詞・名詞: 〜なら(〜であれば)
代入練習では、教師が辞書形・ない形・形容詞・名詞のカードを混ぜて1枚ずつ見せ、ば形(ナ形容詞・名詞は「なら」)をすぐ言わせる。「来る」「する」「いい」「ある」「ない」は毎回必ず入れる。慣れたらペアで、相手がめくったカードのば形を言い合い、間違えたら表に戻って確かめる。
「〜ば、…」は、前のことが成り立てば後ろのことが成り立つ、という条件と結果の関係を言う形です(この教案では(1)を条件と結果の使い方として扱います)。「この薬を飲めば、熱が下がります」のように、後ろの結果を得るために何が要るか、という条件のほうに重みがあり、「どうすれば〜ますか」で方法を聞くのにもよく使います。「氷は、温めれば水になります」のように、いつもそうなることにも使えます。第19課の「〜たら」と同じように使える場面も多いですが、「〜ば」には「駅に着いたら、電話します」のような「〜したあとで」の使い方がありません。また、前と後ろが同じ人で前の文が動作のとき、後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」などの頼み・誘い・希望を置くと不自然になることが多く、そのときは「〜たら」を使います。前の文が状態(ある・いる・形容詞・ない形・可能形など)なら、後ろに頼む文を置いても自然です(時間があれば、手伝ってください)。文法の用語では条件表現の一つで、まだ起こっていないことを仮に置く「仮定条件」にも、いつもそうなる「一般条件(恒常条件)」にも使えます。
条件形(ば形)+、…(動詞・イ形容詞は ば形、ナ形容詞・名詞は なら)
代入練習では、前と後ろの絵を組にしたカード(薬を飲む+熱が下がる、急ぐ+間に合う、窓を開ける+涼しくなる)を見せて「〜ば、…」の一文にし、途中で「急がない+遅れる」のような否定の組を混ぜる。場面のやり取りでは、悩みカード(漢字が覚えられない・夜眠れない など)を一人が引いて「どうすればいいですか」と聞き、相手が「〜ば、〜ますよ」と助言する。
同じ言葉を「〜ば〜ほど」の形でくり返し、前のことの程度が増えると、後ろのこともそれに合わせて変わることを言います(この教案では(2)を「〜ば〜ほど」として扱います)。「練習すればするほど、上手になります」「早ければ早いほど、いい席が取れます」のように、前は ば形、後ろは辞書形(イ形容詞は「〜い」、ナ形容詞は「〜な」)に「ほど」を付けます。後ろの文は「〜くなります」「〜ようになります」のような変化の言い方や、「よく〜」「たくさん〜」のような程度の言い方になることが多く、一回だけのできごとには使いません。「〜ば」を使わずに「練習するほど、上手になります」と言うこともできますが、この課では「〜ば〜ほど」の形をそろえて練習します。
Vば+V辞書形+ほど/イAければ+イAいほど/ナAなら+ナAなほど(同じ言葉をくり返す。「勉強する」のような動詞は「勉強すればするほど」と後ろを「する」だけにすることが多い)
代入練習では、教師が「読む」「歩く」「安い」「静か」のカードを見せて「〜ば〜ほど」の前の部分だけを言わせ、形がそろってから後ろ(「上手になります」「疲れます」など)を付けて一文にする。場面のやり取りでは、「部屋」「仕事」「友達」などのテーマカードを引いて、自分の考えを「〜ば〜ほど、いいです/…なります」で言い合い、相手は「そうですね」「そうですか。わたしは〜」と反応する。
「〜なら、…」は、相手が言ったことやその場の様子を受けて、「(あなたが言うように)そうなのであれば」と前提にし、後ろで自分の考え・勧め・頼み・決めたことを言う形です。課の題のように、相手の予定を聞いて自分の決定を言ったり(田中さんが来ないなら、会議はあしたにします)、「京都へ行くなら、お寺を見たほうがいいですよ」と勧めたりします。第21課の「〜なら」は名詞に付いて話題を取り上げる使い方(「スポーツなら、サッカーが好きです」の型)でしたが、この課では動詞や形容詞の文に付けて、相手の話を受けた条件として使います。「〜たら」と違い、後ろのことが前のことより先に起こってもかまいません(日本へ行くなら、行く前に日本語を勉強してください)。一方、「氷は、温めれば水になります」のような、いつもそうなることや自然の結果には使いません。
動詞・イ形容詞の普通形+なら(行くなら・行かないなら・高いなら)/ナ形容詞・名詞は「だ」を取って+なら(暇なら・雨なら)
代入練習では、教師が相手の発話を短く言い(「パソコンを買います」「あした、暇です」「熱があります」)、学生がそれを受けて「〜なら、…」で勧めや自分の考えを言う。名詞・ナ形容詞の発話(「あしたは雨です」「暇です」)を必ず混ぜて「雨なら」「暇なら」の形を確かめる。場面のやり取りでは、旅行・買い物・引っ越しの予定カードを一人が引いて話し、相手が「〜なら、〜たほうがいいですよ」「〜なら、〜ましょう」で答える。
この課の新しい語は、条件形の練習に使いやすい「機械・道具の操作」(ボタン・押す・入れる)、体の調子と手当て(薬・熱・下がる)、程度や変化を表す言葉(だんだん・もっと・〜ほど)の三つにまとめると扱いやすくなります。単語だけで覚えさせず、「押せば」「下がれば」「〜ば〜ほど」のように、この課の形を付けた句で絵カードと一緒に入れます。「それなら」は相手の話を受ける言葉として、学習項目3の練習の中で出すと使い方が伝わります。
宿題は、自分の生活の中の「こうすればうまくいく」ことを「〜ば、…」で2文(例: 朝ご飯を食べれば、昼まで元気です)、「〜ば〜ほど」で自分の考えを1文、友達の予定を一つ思い浮かべて「〜なら、…」で勧める文を1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の「〜なら」の文を教師が読み、その予定を言った人の役の学生に「ありがとう、そうします」と答えさせて復習し、「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」の4行の板書を一度見直してから、第29課の「〜そうです 様態」に入ります。
第28課のば形はどの順で教えればいいですか?
この本ではもう辞書形を習っているので、辞書形から作ります。第22課の可能形の表の横に並べ、グループⅠ(え段+ば)→グループⅡ(る→れば)→グループⅢ(すれば・くれば)→否定(なければ)→イ形容詞(ければ・いい→よければ)→ナ形容詞と名詞(なら)の順に書くと、え段の共通点と、第12課の「なければ」とのつながりが一度に見えます。
「〜ば」と「〜たら」の違いはどう説明すればいいですか?
初級では細かい規則を並べず、二つの点だけで分けます。一つは、「〜たら」には「〜したあとで」の使い方があるが「〜ば」にはないこと、もう一つは、前が動作のとき「〜ば」の後ろに頼み・誘い・希望を置きにくいことです。迷ったら「〜たら」がいちばん広く使える、と伝えておくと、学習者の誤りが減ります。
「〜なら」と「〜たら」の違いは?
時間の順で見せるのが分かりやすいです。「〜たら」は前のことが終わってから後ろのことが起こり、「〜なら」は後ろのことが前より先に起こってもかまいません。「日本へ行くなら、日本語を勉強してください」(行く前)と「日本へ行ったら、富士山を見てください」(着いたあと)を時間の線の上に置いて比べます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課とのつなぎ、ば形の作り方、学習項目1の「〜ば、…」まで、2コマ目は「〜ば〜ほど」「〜なら、…」とまとめの活動にあてます。ば形の作り方が定着していないクラスでは、2コマ目の最初に5分の形の確認を入れてから進むと、あとの練習が止まりません。
「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」をこの課でまとめて整理させてもいいですか?
まとめの活動で4行の板書にして見せるのはよいですが、規則の表を覚えさせる必要はありません。「後ろに頼み・誘いが来られるか」「前と後ろのどちらが先に起こるか」の二つの見方だけを示し、学習者が言えた文がどの行に入るかを一緒に確かめる程度にとどめます。細かい使い分けは、この先の課で例文が増えるたびに少しずつ足していきます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。