日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初級Ⅱ 第28課「あなたが行くなら、わたしも行きます」の教案

『学ぼう!にほんご 初級Ⅱ』

この課で条件形(ば形)が初めて出ます。前半の二つの項目は「ば」の課で、「こうすれば、こうなる」という条件と結果と、「〜ば〜ほど」で一方が増えるともう一方も変わる言い方を学びます。後半の「〜なら」は課の題の形で、相手の話やその場の様子を受けて「そうなのであれば」と自分の考え・勧め・決めたことを言う使い方です。条件の言い方はこれで初級Ⅰ第15課の「〜と」、第19課の「〜たら」、第21課の名詞の「〜なら」とあわせて四つそろうので、形の練習よりも「後ろにどんな文が来られるか」「前と後ろのどちらが先に起こるか」で言い分けさせるのが教えどころです。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動詞・イ形容詞・ナ形容詞・名詞の条件形(ば形・なら)を作れる
  • 「〜ば、…」で、何をすればどうなるか、どんな時ならできるかを言い、「どうすればいいですか」と方法を聞ける
  • 「〜ば〜ほど」で、練習の量や早さなどが増えると結果も変わることを言える
  • 相手の話を受けて「〜なら、…」で勧めや自分の決定を言い、「〜たら」との時間の順序の違いがわかる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(前の課とのつなぎ)10分第19課の「〜たら」で「あした雨が降ったら、何をしますか」と2〜3人に聞いて条件の文を思い出させる。続けて第22課の可能形(行ける・読める)の表を貼り、え段の音がこの課でもう一度使われると予告する
条件形(ば形)の作り方35分辞書形のカードから、グループⅠは え段+ば、グループⅡは る→れば、グループⅢ(すれば・くれば)、否定の「なければ」、イ形容詞の「ければ」、ナ形容詞・名詞の「なら」の順に表を作る。第12課の「〜なければなりません」の「なければ」がこの形だと見せる
学習項目1 〜ば、…(1)40分機械の操作や体の調子など「そうすれば、こうなる」場面の絵で導入。「どうすればいいですか」「時間があれば、〜」まで広げ、後ろに頼む文を置けるのは前が状態(ある・形容詞・ない形・可能形)のときだと線を引く。1コマ目はここまで
学習項目2 〜ば、…(2)25分2コマ目の初めに ば形 を5分で言い直させてから入る。練習の回数と上手さのグラフ、コンサートの予約表で「〜ば〜ほど」を導入。後ろの文は「〜くなります」「〜ようになります」のような変化の言い方で練習する
学習項目3 〜なら、…45分相手の言ったことを受けて答える2人のやり取りで導入。課の題のように相手の予定を受けて自分の決定を言う形から、「〜なら、〜たほうがいいですよ」の勧めへ。「日本へ行くなら」と「日本へ行ったら」を時間の線で比べる
まとめの活動25分「相談室」の活動。一人が悩みや予定のカード(日本語が上手になりたい・週末に京都へ行く など)を引いて言い、相手が「〜ば、…」「〜ば〜ほど…」「〜なら、…」のどれかで助言する。最後に「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」の4行の板書を見ながら、言えた文がどの行に入るかを全員で確かめる

学習項目 1 条件形(ば形)の作り方

意味・はたらき活用

条件を言う形「ば形」を作ります。この本ではもう辞書形を習っているので、辞書形から作ります。グループⅠは辞書形の最後の音(う段)を「え段」に変えて「ば」を付け(行く→行けば)、グループⅡは「る」を「れば」に替え(食べる→食べれば)、グループⅢは「する→すれば」「来る→来れば(くれば)」です。否定は「ない」を「なければ」にし(行かない→行かなければ)、イ形容詞は「い」を「ければ」にします(安い→安ければ、いい→よければ)。ナ形容詞と名詞は「な・だ」を取って「なら」を付けます(静かなら・雨なら。改まった文では「静かであれば」)。この「なら」は学習項目3の「〜なら」と同じ形で、使い方も重なるので、ここでは形だけ確かめます。

接続

動詞: Ⅰ う段→え段+ば/Ⅱ る→れば/Ⅲ する→すれば・来る→くれば(否定 〜ない→〜なければ)。イ形容詞: 〜い→〜ければ(いい→よければ)。ナ形容詞・名詞: 〜なら(〜であれば)

形
Ⅰ 行く→行けば/読む→読めば/待つ→待てば/話す→話せば/買う→買えば/ある→あればⅡ 食べる→食べれば/見る→見れば/起きる→起きればⅢ する→すれば/来る→来れば(くれば)/否定 行かない→行かなければ安い→安ければ/いい→よければ/ない→なければ/静か→静かなら/雨→雨なら

導入

  • 可能形の表の横に並べる第22課の可能形の表(行ける・読める・待てる)を黒板に貼り、その右の列に「行けば・読めば・待てば」と書いて、グループⅠは え段 になるところが可能形と同じだと色チョークで囲む。グループⅡは「食べられる」の列から作るのではなく、「食べる」の「る」を「れば」に替えるだけなので、別の色で書く。グループⅢの「来れば」は読みの「くれば」を大きく書いて三回言わせる。
  • 「なければなりません」から否定と形容詞へ第12課の「宿題をしなければなりません」を板書し、「なければ」の部分を囲んで「ない」のば形だと見せる。同じ作り方で「安い→安ければ」「おいしい→おいしければ」と イ形容詞 を作り、「いい」だけは「よければ」になることを赤で書く。最後にナ形容詞と名詞のカード(静か・暇・雨・学生)を出して「なら」を付け、「〜ければ」にはならないことを確かめる。

板書案

辞書形 → ば形
Ⅰ 行く → 行け+ば 読む → 読め+ば 〔赤〕え段(可能形「行ける」と同じ段)
Ⅱ 食べる → 食べ+れば Ⅲ する → すれば 来る → くれば〔赤〕読みを大きく
ない → なければ 安い → 安ければ いい → よければ〔赤〕
静か → 静かなら 雨 → 雨なら 〔青〕「だ」を取って なら

場面と発話(自作)

  • 教師が辞書形のカード「待つ」を見せ、学生がば形に変えて答える(形の練習)。待つ——待てば。
  • 学生が「来る」のば形を「きれば」と言ったので、教師が辞書形の読みを指さしてもう一度言わせる。来る——くれば。
  • 教師が「いい」のカードを出して、イ形容詞の例外を確かめる。いい——よければ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、教師が辞書形・ない形・形容詞・名詞のカードを混ぜて1枚ずつ見せ、ば形(ナ形容詞・名詞は「なら」)をすぐ言わせる。「来る」「する」「いい」「ある」「ない」は毎回必ず入れる。慣れたらペアで、相手がめくったカードのば形を言い合い、間違えたら表に戻って確かめる。

  1. 口頭辞書形のカード(書く・泳ぐ・遊ぶ・起きる・する・来る)を1枚ずつ見せ、全体で ば形 を言わせてから個人に当てる。次に教師が指で×を作ったら否定(書かなければ)、形容詞と名詞のカード(高い・いい・暇・雨)が出たら「ければ」「なら」の列で答える、と合図を足す。グループⅢと「いい」は2枚に1枚の割合で戻して混ぜる。
  2. ペアAには辞書形の列だけ、Bには ば形 の列だけが書かれた表を配る。Aが辞書形を言い、Bは自分の表を見ないで ば形 を言い、Aは相手の表を見せてもらって合っているか確かめる。10語で役を交替し、最後に二人で間違えた語に印を付けて、教師がその語だけ全体でもう一度言わせる。
  3. 産出「ば形すごろく」。マスに辞書形・ない形・形容詞・名詞を書いておき、止まったマスの語を ば形 にして、自分で考えた短い句を付けて言う(ある→お金があれば/いい→天気がよければ)。言えなければ一回休み。教師はグループⅢの読み、「よければ」、ナ形容詞と名詞の「なら」、否定の「なければ」の4点だけを見て、その場で言い直させる。

つまずきと手当て

  • 「来れば」を「*きれば」「*これば」と読む、「する」を「*しれば」と作る。グループⅢは辞書形「くる」「する」の「る」を「れば」に替えた形だと見せ、読みの「くれば」を板書に残しておく
  • 「*いいければ」「*よくければ」と作る。「いい」の形はいつも「よ」から作ること(よくない・よかった・よければ)を、これまでの形と並べて確かめる
  • 「*きれいければ」「*有名ければ」と、「い」で終わるナ形容詞や漢語のナ形容詞をイ形容詞のように作る。きれい・有名・好き などを「なら」の列にまとめて言わせる
  • 否定を「*行かないば」「*行かないれば」と作る。「ない」は イ形容詞 と同じ作り方で「なければ」になると、「安い→安ければ」の行と並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〜なければなりません(初級Ⅰ第12課)「〜なければなりません」の「なければ」は、「ない」の ば形 そのものです。学習者はこの課まで決まった言い方として覚えているので、「なければ」の部分を囲んで見せると、否定の ば形 がすぐ作れます。「急がなければ、遅れます」のように後ろが「なりません」以外になる文を一つ並べると、同じ形が条件にも使えることが分かります。
  • 可能表現(1)(第22課)可能形もグループⅠは え段 で作る(行ける)ので、ば形 の「行けば」と音がよく似ています。学習者が「食べれば」と言うつもりで「食べられれば」と言うと、可能形の ば形 になって「食べることができれば」の意味に変わります。二つの表を並べ、可能形と違って ば形 には「られ」が入らない(食べれば/食べられれば)ことを確かめます。
関連する文型

学習項目 2 〜ば、…(1)

意味・はたらき学習項目 1

「〜ば、…」は、前のことが成り立てば後ろのことが成り立つ、という条件と結果の関係を言う形です(この教案では(1)を条件と結果の使い方として扱います)。「この薬を飲めば、熱が下がります」のように、後ろの結果を得るために何が要るか、という条件のほうに重みがあり、「どうすれば〜ますか」で方法を聞くのにもよく使います。「氷は、温めれば水になります」のように、いつもそうなることにも使えます。第19課の「〜たら」と同じように使える場面も多いですが、「〜ば」には「駅に着いたら、電話します」のような「〜したあとで」の使い方がありません。また、前と後ろが同じ人で前の文が動作のとき、後ろに「〜てください」「〜ましょう」「〜たいです」などの頼み・誘い・希望を置くと不自然になることが多く、そのときは「〜たら」を使います。前の文が状態(ある・いる・形容詞・ない形・可能形など)なら、後ろに頼む文を置いても自然です(時間があれば、手伝ってください)。文法の用語では条件表現の一つで、まだ起こっていないことを仮に置く「仮定条件」にも、いつもそうなる「一般条件(恒常条件)」にも使えます。

接続

条件形(ば形)+、…(動詞・イ形容詞は ば形、ナ形容詞・名詞は なら)

形
Vば、…(毎日練習すれば、上手になります)Vなければ、…(急がなければ、遅れます)イAければ、…/ナAなら、…どうすればいいですか/どうすれば〜ますか

導入

  • 機械の操作で「そうすれば、こうなる」教室のエアコンのリモコン(または自動販売機の絵)を見せ、教師がボタンを押す身ぶりをしながら「このボタンを押せば、つきます」「お金を入れれば、切符が出ます」と言う。板書は「[条件]ば、[結果]」の枠にし、続けて「押さなかったら?」と聞いて「つきません」と答えさせ、前の条件が後ろの結果を決める関係だと確かめる。
  • 悩みに方法を答える教師が「朝、早く起きられません。どうすればいいですか」と困った顔で学生に聞き、「早く寝れば、早く起きられますよ」のような答えを引き出す。答えを板書の枠に入れていき、「どうすれば」が方法を聞く言い方だと見せる。最後に「時間があれば」「天気がよければ」のような状態の条件を足し、後ろに「来てください」「行きませんか」を置ける形として赤で書く。

板書案

[条件]ば、[結果]
このボタンを押せば、電気がつきます。
どうすれば いいですか。 —— 早く寝れば、早く起きられますよ。
〔赤〕時間が あれば/天気が よければ + 〜てください・〜ませんか(前が状態なら言える)
〔青〕駅に着いたら、電話してください(動作のあとの頼みは「たら」)

場面と発話(自作)

  • 寮のコインランドリーで、来たばかりの留学生が洗濯機の前で困っている。先に住んでいる学生がボタンを指して教える。ここにお金を入れて、このボタンを押せば、始まりますよ。
  • 会社で、日本語の電話が聞き取れないと悩んでいる同僚に、先輩が自分の経験から言う。毎日ニュースを聞けば、だんだん聞けるようになりますよ。
  • 金曜日の授業のあと、友達を週末の山登りに誘う。天気がわからないので、条件を付けて言う。あした天気がよければ、いっしょに山へ行きませんか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、前と後ろの絵を組にしたカード(薬を飲む+熱が下がる、急ぐ+間に合う、窓を開ける+涼しくなる)を見せて「〜ば、…」の一文にし、途中で「急がない+遅れる」のような否定の組を混ぜる。場面のやり取りでは、悩みカード(漢字が覚えられない・夜眠れない など)を一人が引いて「どうすればいいですか」と聞き、相手が「〜ば、〜ますよ」と助言する。

  1. 口頭前と後ろの絵を組にしたカード(薬を飲む→熱が下がる/窓を開ける→涼しくなる/急ぐ→間に合う/地図を見る→道が分かる)を使う。教師が前の絵を指せば全体で「飲めば」、後ろの絵を指せば「熱が下がります」と言わせ、慣れたら一文で。続けて否定の組(急がない→遅れる)を混ぜ、最後に教師が「どうすれば漢字が覚えられますか」と聞いて個人に答えさせる。
  2. ペアAは悩みのカード(新聞が読めない・部屋が暑い・バスに間に合わない)、Bは方法が書かれたカードを持つ。Aが「〜。どうすればいいですか」と聞き、Bは自分のカードから合う方法を選んで「〜ば、〜ますよ」と答える。Aは「そうですか。やってみます」で受ける。3枚で役を交替し、Bのカードは相手に見せない。
  3. 産出「うまくいく方法を教えて」。自分の国や自分の経験から「こうすればうまくいく」ことを2文で考え(風邪をひいたとき・日本語の勉強・安く買い物をするとき)、グループで紹介し合う。聞いた人は一つ選んで「〜さんは、〜ば〜と言いました」と全体に伝える。教師は ば形 の形、前が動作のときに後ろへ頼み・誘いを置いていないか、条件の中の主語が「が」になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*日本に着けば、連絡してください」と、前が動作で後ろに頼む文を置く。「着いたら」に言い直させ、前と後ろが同じ人なら、「〜ば」の後ろに頼む・誘う文を置けるのは前が状態(あれば・よければ・なければ・できれば)のとき、と板書の赤い線に戻る。「仕事が終われば、飲みに行きましょう」のような誘いも「終わったら」のほうがふつう。前と後ろの人が違えば、後ろに自分の意志を置けることもある(田中さんが来れば、すぐ始めます)のは、教師が知っておく
  • 「〜ば」を「〜たら」の丁寧な言い方だと思い、「〜したあとで」の意味でも使う(「家に帰れば、すぐ寝ます」を「帰ってから」の意味で言う)。「〜ば」は条件に重みがある言い方で、順番だけを言うときは第19課の「〜たら」か第11課の「〜てから」を使うと、二つの文を並べて確かめる
  • 条件の文の中の主語を「は」で言い、「雨は降れば」のようにする。前の文の中の主語は「が」で言うのが普通なので、「雨が降れば」「時間があれば」の形で練習し、文全体の話題になる人だけを「わたしは、時間があれば…」と前に出す

既習の文型との違い

  • 〜たら、…(初級Ⅰ第19課)「〜たら」は条件にも「〜したあとで」にも使えるので、いちばん広く使えます。「〜ば」は何がそろえば結果が出るかという条件に重みがあり、前が動作のときは後ろに頼み・誘い・希望を置きにくくなります。学習者は「*駅に着けば、電話してください」のように「たら」の場面に「ば」を入れるので、二つの文を並べて、後ろが頼む文なら「着いたら」だと確かめます。
  • 〜と、…(初級Ⅰ第15課)「〜と」は前のことが起これば必ず後ろのことが起こる、という決まった結びつきを言い、後ろに自分の意志や頼みは置けません(*夏になると、海へ行きましょう)。「〜ば」も「氷は、温めれば水になります」のような決まった結果に使えますが、「どうすれば〜ますか」と方法を聞くときは「ば」がふつうです。機械の操作の場面ではどちらも使えるので、無理に分けず、方法を聞く文で違いを見せます。
関連する文型

学習項目 3 〜ば、…(2)

意味・はたらき学習項目 2

同じ言葉を「〜ば〜ほど」の形でくり返し、前のことの程度が増えると、後ろのこともそれに合わせて変わることを言います(この教案では(2)を「〜ば〜ほど」として扱います)。「練習すればするほど、上手になります」「早ければ早いほど、いい席が取れます」のように、前は ば形、後ろは辞書形(イ形容詞は「〜い」、ナ形容詞は「〜な」)に「ほど」を付けます。後ろの文は「〜くなります」「〜ようになります」のような変化の言い方や、「よく〜」「たくさん〜」のような程度の言い方になることが多く、一回だけのできごとには使いません。「〜ば」を使わずに「練習するほど、上手になります」と言うこともできますが、この課では「〜ば〜ほど」の形をそろえて練習します。

接続

Vば+V辞書形+ほど/イAければ+イAいほど/ナAなら+ナAなほど(同じ言葉をくり返す。「勉強する」のような動詞は「勉強すればするほど」と後ろを「する」だけにすることが多い)

形
Vば Vほど(読めば読むほど・練習すればするほど)イAければ イAいほど(早ければ早いほど・安ければ安いほど)ナAなら ナAなほど(静かなら静かなほど)

導入

  • 練習の回数と上手さのグラフ黒板に右上がりの線のグラフを描き、横に「練習」、縦に「上手」と書く。教師が線を指でたどりながら「練習すれば、上手になります。たくさん練習すれば、もっと上手になります」と言い、最後に「練習すればするほど、上手になります」とまとめる。板書は「[〜ば][〜]ほど、[変化]」の枠で、前と後ろに同じ言葉が入ることを同じ色で書く。
  • 予約の表で形容詞へコンサートの予約表を見せ、早く予約した人から順に前の席が埋まっていくことを指でたどって「早ければ早いほど、いい席が取れます」と言う。続けて「部屋は広ければ広いほど……」「駅に近ければ近いほど……」と前だけ言って、学生に後ろを考えさせる。

板書案

Vば + V(辞書形)+ほど、[変化]
練習すれば するほど、上手になります。
イA 安ければ 安いほど ナA 静かなら 静かなほど
〔赤〕同じ言葉を2回 〔青〕後ろは 〜くなります/〜ようになります
(右上がりの線のグラフ:横=練習、縦=上手)

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の休み時間に、留学生同士で漢字の勉強の話をしている。一人が少しうれしそうに言う。漢字は、書けば書くほど覚えられますね。
  • スーパーで、同僚と果物を選んでいる。同僚が大きいりんごを手に取ったので、値段の札を見て言う。りんごは、大きければ大きいほど高くなりますよ。
  • 部屋をさがしている留学生に、不動産屋の人が駅からの近さと家賃の関係を説明する。駅に近ければ近いほど、家賃が高くなります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、教師が「読む」「歩く」「安い」「静か」のカードを見せて「〜ば〜ほど」の前の部分だけを言わせ、形がそろってから後ろ(「上手になります」「疲れます」など)を付けて一文にする。場面のやり取りでは、「部屋」「仕事」「友達」などのテーマカードを引いて、自分の考えを「〜ば〜ほど、いいです/…なります」で言い合い、相手は「そうですね」「そうですか。わたしは〜」と反応する。

  1. 口頭語のカード(読む・歩く・考える・安い・近い・静か)を見せて、まず前の部分「読めば読むほど」だけを全体で言わせる。形がそろったら、後ろの絵(上手になる・疲れる・分からなくなる・いい)と組にして一文で言わせる。グラフの線を教師が指でたどる速さに合わせて「すれば…するほど」と区切って言わせると、くり返しの形が口に入りやすい。
  2. ペアAがテーマのカード(部屋・アルバイト・スマホ・先生)を出し、「部屋は、広ければ広いほどいいですか」のように形容詞を一つ選んで聞く。Bは自分の考えで「はい、広ければ広いほどいいです」か「いいえ、わたしは駅に近ければ近いほどいいです」と答え、理由を「〜から」で一つ足す。4枚で役を交替する。
  3. 産出「わたしの〜ば〜ほど」スピーチ。自分の趣味や勉強、国の生活について、「〜ば〜ほど」を1文入れた3文の話を作ってクラスで言う(型: 話題の文→〜ば〜ほどの文→だから〜ようにしています)。聞いた人は「わたしもそう思います」「わたしは違います」で一言返す。教師は「ほど」の前が辞書形になっているか、ナ形容詞の「な」、後ろが変化や程度の言い方になっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「*練習すれば練習すればほど」「*早ければ早ければほど」と、後ろにも ば形 を使う。「ほど」の前は辞書形(イ形容詞は「〜い」)だと、板書の枠の後ろの欄だけを指さして言い直させる
  • 「*静かければ静かいほど」と、ナ形容詞をイ形容詞のように作る。ナ形容詞は「静かなら静かなほど」と「な」を残すことを、条件形の表の「なら」の列に戻って確かめる
  • 後ろに一回だけのできごとや予定を置いて、「練習すればするほど、あした試合に出ます」のような文を作る。後ろは前に合わせて少しずつ変わることなので、「〜くなります」「〜ようになります」「よく〜」の形で答えさせる

既習の文型との違い

  • 〜ようになります(第24課)「〜ようになります」はできなかったことができるようになる変化を言うだけで、何によって変わるかは言いません。「〜ば〜ほど」は前に変化のもとになる量を置き、それが増えるのに合わせて変わっていくことを言います。「聞けば聞くほど、分かるようになります」のように二つを組み合わせると、どちらの役目も見えます。
  • 〜になります/〜くなります(初級Ⅰ第15課)「だんだん暖かくなります」は時間とともに変わることを言う文で、何によって変わるかは言いません。「〜ば〜ほど」では「南へ行けば行くほど、暖かくなります」のように、変わるもとを前に言います。学習者が「〜ば〜ほど」の後ろを「上手です」のような状態の文で終えたときは、前に習った「〜くなります」「〜になります」の形に戻させます。
関連する文型

学習項目 4 〜なら、…

意味・はたらき学習項目 3

「〜なら、…」は、相手が言ったことやその場の様子を受けて、「(あなたが言うように)そうなのであれば」と前提にし、後ろで自分の考え・勧め・頼み・決めたことを言う形です。課の題のように、相手の予定を聞いて自分の決定を言ったり(田中さんが来ないなら、会議はあしたにします)、「京都へ行くなら、お寺を見たほうがいいですよ」と勧めたりします。第21課の「〜なら」は名詞に付いて話題を取り上げる使い方(「スポーツなら、サッカーが好きです」の型)でしたが、この課では動詞や形容詞の文に付けて、相手の話を受けた条件として使います。「〜たら」と違い、後ろのことが前のことより先に起こってもかまいません(日本へ行くなら、行く前に日本語を勉強してください)。一方、「氷は、温めれば水になります」のような、いつもそうなることや自然の結果には使いません。

接続

動詞・イ形容詞の普通形+なら(行くなら・行かないなら・高いなら)/ナ形容詞・名詞は「だ」を取って+なら(暇なら・雨なら)

形
Vなら、…(田中さんが来ないなら、会議はあしたにします)Vなら、〜たほうがいいですイAなら、…/ナAなら、…/Nなら、…それなら、…

導入

  • 相手の話を受けて答える教師が学生の一人に「週末、何をしますか」と聞き、「あした、教室でテストの勉強をします」と答えさせてから、教師が「〜さんが勉強するなら、教室のかぎを開けておきます」と言う。もう一人の学生にも予定を聞き、その答えを受けて「映画を見るなら、駅の前の映画館がいいですよ」と勧める。板書は、相手の発話の吹き出しの下に「[相手の話]なら、[わたしの考え・勧め]」と書き、「なら」の前は相手から聞いたことだと矢印で示す。
  • 「行くなら」と「行ったら」を時間の線で比べる黒板に左から右へ時間の線を引き、真ん中に「日本へ行く」と書く。「日本へ行くなら、日本語を勉強してください」と言って勉強の印を線の左(行く前)に、「日本へ行ったら、富士山を見てください」と言って富士山の印を線の右(着いてから)に置く。二つの文の後ろが線のどちら側のことかを学生に指させると、「なら」は前のことより先のことも言えると目で分かる。

板書案

A:週末、京都へ行きます。
B:京都へ行くなら、お寺を見たほうがいいですよ。
[相手の話]なら、[考え・勧め・決めたこと] 〔矢印〕「なら」の前は相手から聞いたこと
時間の線:(勉強する)←― 日本へ行く ―→(富士山を見る) 行くなら=前のことも言える/行ったら=着いたあと
〔赤〕暇だ → 暇なら 雨だ → 雨なら(「だ」を取る)

場面と発話(自作)

  • サークルの集まりの相談で、山田さんが「来週の土曜日は用事があって来られません」と言った。リーダーが答える。山田さんが来られないなら、集まりは日曜日にしましょう。
  • 会社で、同僚が夏休みに北海道へ旅行すると話した。北海道に住んだことがある人が勧める。北海道へ行くなら、7月がいいですよ。
  • 放課後、友達が「頭が痛いから、きょうのアルバイトは休もうと思う」と言った。心配して答える。頭が痛いなら、早く帰って寝たほうがいいですよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

代入練習では、教師が相手の発話を短く言い(「パソコンを買います」「あした、暇です」「熱があります」)、学生がそれを受けて「〜なら、…」で勧めや自分の考えを言う。名詞・ナ形容詞の発話(「あしたは雨です」「暇です」)を必ず混ぜて「雨なら」「暇なら」の形を確かめる。場面のやり取りでは、旅行・買い物・引っ越しの予定カードを一人が引いて話し、相手が「〜なら、〜たほうがいいですよ」「〜なら、〜ましょう」で答える。

  1. 口頭教師が相手の役になって短く言う(「パソコンを買います」「熱があります」「あしたは暇です」「日曜日は雨です」「引っ越しをします」)。全体でまず「パソコンを買うなら」と前の部分を受け、次に個人に当てて勧めまで言わせる(「パソコンを買うなら、駅の前の店がいいですよ」)。名詞とナ形容詞の発話を必ず2つは混ぜ、「だ」を取ることを確かめる。
  2. ペア「旅行相談」。Aには旅行の予定のカード(行き先と季節)、Bにはいくつかの町の情報のカード(おいしい店・いい季節・持って行く物)を配る。Aが予定を言い、Bは自分のカードを見て「〜へ行くなら、〜たほうがいいですよ」「〜なら、〜がいいですよ」と答える。Aは「それなら、〜ておきます」で受ける。3回で役を交替する。
  3. 産出「先輩アドバイス」。学生が自分の本当の予定(週末・休み・来年のこと)を一つ言い、ほかの学生が自分の経験から「〜なら、…」で勧めるか、「〜なら、〜ます/〜ましょう」で自分の決めたことを言う。教師は「だ」が残っていないか、行く前のことを「〜たら」で言っていないか、決まった結果(ボタンを押す・氷を温める)に「なら」を使っていないかを見て、時間の線の板書に戻して直す。

つまずきと手当て

  • ナ形容詞・名詞に「だ」を残して「*暇だなら」「*雨だなら」と言う。「なら」は「だ」と入れ替わると見せ、「暇です→暇なら」「雨です→雨なら」の変換を口でくり返す
  • 「*氷を温めるなら、水になります」「*このボタンを押すなら、ドアが開きます」と、いつもそうなることや機械の結果に「なら」を使う。この使い方は学習項目1の「〜ば」か第15課の「〜と」だと、三つの文を並べて確かめる
  • 「日本へ行ったら、日本語を勉強してください」と言って、行く前に勉強してほしいことを伝えたつもりになる。「〜たら」だと着いたあとのことになるので、行く前のことなら「行くなら」だと、時間の線の板書に戻って確かめる
  • 相手の話を受けていない場面で、自分の予定に「なら」を使い、「わたしは来年日本へ行くなら、…」と言う。「なら」の前は相手が言ったことか、その場で分かったことが多いので、自分の予定なら「〜たら」や「〜ので」で言うほうが自然だと伝える

既習の文型との違い

  • 〜なら、…(第21課)第21課の「〜なら」は名詞に付いて、相手の話に出た話題を取り上げる使い方でした。この課では「京都へ行くなら」のように動詞や形容詞の文に付き、相手が言ったことを前提にして後ろで勧めや決定を言います。形は同じなので、前が名詞だけか、文かを板書で並べて見せます。
  • 〜たら、…(初級Ⅰ第19課)「〜たら」は前のことが終わってから後ろのことが起こる順で、「日本へ行ったら、富士山を見てください」は着いたあとのことです。「〜なら」は後ろのことが前より先でもよく、「日本へ行くなら、日本語を勉強してください」は行く前の準備を言えます。学習者が行く前のことを「行ったら」で言ったときは、時間の線のどこに印が来るかを指させて直します。
  • 〜ば、…(1)(この課)「京都へ行けば、お寺が見られます」は行くことが条件で、見られるのはその結果です。「京都へ行くなら、お寺を見たほうがいいですよ」は相手の予定を受けた勧めで、行くかどうかは相手が決めています。前のことを話し手が自分で持ち出したのか、相手から聞いたのかで選ぶと説明します。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新しい語は、条件形の練習に使いやすい「機械・道具の操作」(ボタン・押す・入れる)、体の調子と手当て(薬・熱・下がる)、程度や変化を表す言葉(だんだん・もっと・〜ほど)の三つにまとめると扱いやすくなります。単語だけで覚えさせず、「押せば」「下がれば」「〜ば〜ほど」のように、この課の形を付けた句で絵カードと一緒に入れます。「それなら」は相手の話を受ける言葉として、学習項目3の練習の中で出すと使い方が伝わります。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 押します(おします) ボタンやドアなどに手で力を入れて動かします。 ボタンを〜・ドアを〜
    駅の自動販売機の前で、使い方が分からない友達に教える。
    「お金を入れて、このボタンを押せば、お茶が出ますよ。」
  • 下がります(さがります) 熱や値段や温度などが、前より低くなります。 熱が〜・値段が〜・気温が〜
    病院で、医者が薬を渡しながら説明する。
    「この薬を飲めば、熱が下がりますよ。」
  • 間に合います(まにあいます) 決まった時間に遅れないで着いたり、できたりします。 電車に〜・授業に〜・時間に〜
    朝、駅へ向かいながら時計を見る。
    「急げば、9時の電車に間に合います。」
  • 遅れます(おくれます) 決まった時間よりあとになります。 授業に〜・電車が〜・5分〜
    出かける時間なのに、友達がまだ準備をしている。
    「早く出なければ、授業に遅れますよ。」
  • 練習します(れんしゅうします) 上手になるように、同じことを何回もします。 発音を〜・ピアノを〜・毎日〜
    発表会の前に、留学生が先生に相談する。
    「練習すればするほど、上手になりますよ。」
  • 覚えます(おぼえます) 忘れないように、頭の中に入れます。 漢字を〜・名前を〜・単語を〜
    漢字の小テストの前に、クラスの友達と話す。
    「何回も書けば、覚えられますよ。」
  • 家賃(やちん) 部屋や家を借りている人が、毎月払うお金です。 〜が高い・〜を払う・〜が安い
    不動産屋で、部屋をさがしている留学生が説明を聞く。
    「駅から遠ければ遠いほど、家賃は安くなります。」
  • 予約します(よやくします) 使う日より前に、席や部屋などを取っておきます。 ホテルを〜・席を〜・レストランを〜
    夏に旅行すると言う同僚に、旅行が好きな人が言う。
    「夏に北海道へ行くなら、早くホテルを予約しておいたほうがいいですよ。」
  • それなら(それなら) 相手の話を受けて、「そうであれば」と次のことを言うときの言葉です。 〜、バスで行きましょう・〜、あしたにしましょう
    友達を食事に誘ったら、「きょうは忙しいです」と言われた。
    「それなら、あしたにしましょう。」
  • だんだん(だんだん) 少しずつ変わっていく様子を言います。 〜上手になる・〜寒くなる・〜分かるようになる
    日本語のニュースが聞き取れないと言う同僚に、先輩が言う。
    「毎日聞けば、だんだん分かるようになりますよ。」
  • 涼しい(すずしい) 暑くなくて、気持ちがいい温度です。 〜風・部屋が〜・〜くなる
    夏の教室が暑い。窓のそばの学生に言う。
    「窓を開ければ、涼しくなりますよ。」

宿題と次のコマ

宿題は、自分の生活の中の「こうすればうまくいく」ことを「〜ば、…」で2文(例: 朝ご飯を食べれば、昼まで元気です)、「〜ば〜ほど」で自分の考えを1文、友達の予定を一つ思い浮かべて「〜なら、…」で勧める文を1文書くこと。次のコマの最初に、宿題の「〜なら」の文を教師が読み、その予定を言った人の役の学生に「ありがとう、そうします」と答えさせて復習し、「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」の4行の板書を一度見直してから、第29課の「〜そうです 様態」に入ります。

よくある質問

  • 第28課のば形はどの順で教えればいいですか?

    この本ではもう辞書形を習っているので、辞書形から作ります。第22課の可能形の表の横に並べ、グループⅠ(え段+ば)→グループⅡ(る→れば)→グループⅢ(すれば・くれば)→否定(なければ)→イ形容詞(ければ・いい→よければ)→ナ形容詞と名詞(なら)の順に書くと、え段の共通点と、第12課の「なければ」とのつながりが一度に見えます。

  • 「〜ば」と「〜たら」の違いはどう説明すればいいですか?

    初級では細かい規則を並べず、二つの点だけで分けます。一つは、「〜たら」には「〜したあとで」の使い方があるが「〜ば」にはないこと、もう一つは、前が動作のとき「〜ば」の後ろに頼み・誘い・希望を置きにくいことです。迷ったら「〜たら」がいちばん広く使える、と伝えておくと、学習者の誤りが減ります。

  • 「〜なら」と「〜たら」の違いは?

    時間の順で見せるのが分かりやすいです。「〜たら」は前のことが終わってから後ろのことが起こり、「〜なら」は後ろのことが前より先に起こってもかまいません。「日本へ行くなら、日本語を勉強してください」(行く前)と「日本へ行ったら、富士山を見てください」(着いたあと)を時間の線の上に置いて比べます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は前の課とのつなぎ、ば形の作り方、学習項目1の「〜ば、…」まで、2コマ目は「〜ば〜ほど」「〜なら、…」とまとめの活動にあてます。ば形の作り方が定着していないクラスでは、2コマ目の最初に5分の形の確認を入れてから進むと、あとの練習が止まりません。

  • 「〜と・〜たら・〜ば・〜なら」をこの課でまとめて整理させてもいいですか?

    まとめの活動で4行の板書にして見せるのはよいですが、規則の表を覚えさせる必要はありません。「後ろに頼み・誘いが来られるか」「前と後ろのどちらが先に起こるか」の二つの見方だけを示し、学習者が言えた文がどの行に入るかを一緒に確かめる程度にとどめます。細かい使い分けは、この先の課で例文が増えるたびに少しずつ足していきます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。