第24課までに辞書形・普通体・可能形・意向形がそろったあとを受けて、この課で動詞の命令形(行け)と禁止形(行くな)が初めて出ます。どちらも相手に直接「しろ」「するな」と言う強い形で、使われる場面はスポーツの応援・標識や注意書き・緊急のとき・親しい男性どうしなどに限られるため、この課の芯は、学習者が自分から人に言う形としてではなく、聞いて・見てわかり、人の言ったことを伝えるための形として教えることです。「〜という意味です」は標識やマークの意味を説明する言い方で、命令形・禁止形を覚えたその場で使い道ができます。最後の「〜なさい」は親や先生が下の立場の人に言う命令でテストの指示文にもよく出るので、命令形・〜なさい・〜てください を「だれがだれに言うか」の一つの表に並べてまとめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(前の課とのつなぎ) | 10分 | 第12課の「〜ないでください」と第13課の「〜てはいけません」を、図書館や病院の注意の絵で2〜3問言わせる。そのあと道路の「止まれ」の標識の写真を見せて「何と書いてありますか」と聞き、同じことをもっと短く強く言う形があること、それがこの課の形だと予告する |
| 命令形と禁止形の作り方 | 40分 | 辞書形の動詞カードをグループⅠ・Ⅱ・Ⅲの3列に貼り、命令形(Ⅰ う段→え段/Ⅱ る→ろ/Ⅲ しろ・こい)→禁止形(辞書形+な)の順に速く言い換える。最後に、命令形にしない動詞(わかる・できる・可能形)を確かめる |
| 学習項目1 命令表現と禁止表現 | 40分 | 応援・標識・緊急・父と子の4枚の場面の絵で「だれがだれに言うか」を確かめ、教室では自分から使わない約束をする。人の言ったことを「〜と言いました」で伝える練習まで。1コマ目はここまで |
| 学習項目2 〜という意味です | 35分 | 標識・マーク・注意書きの絵で「どういう意味ですか」「〜という意味です」を練習する。第17課の「何と言いますか」と上下に並べて板書し、聞く向きの違いを見せる |
| 学習項目3 〜なさい | 35分 | 朝の家の絵(母親と子ども)とテストの指示文で導入。命令形・〜なさい・〜てください を「だれがだれに言うか」の表にまとめる |
| まとめの活動 | 20分 | 学習者が町や学校で見つけた標識・注意書きの写真を持ち寄り、「これは〜という意味です」と説明し合う。最後に、その写真の場所で自分が人に頼むならどう言うかを「〜てください/〜ないでください」で言う |
動詞の命令形(行け・食べろ)と禁止形(行くな)を作ります。どちらも第15課の辞書形から作ると規則が見えやすくなります。グループⅠは辞書形の最後の音を「う段」から「え段」に変えます(行く→行け・飲む→飲め・帰る→帰れ・買う→買え)。ます形から見れば「ます」の前の「い段」を「え段」に変えるのと同じです。グループⅡは「る」を「ろ」に変え(食べる→食べろ・見る→見ろ)、グループⅢは「する→しろ」「来る→こい」です。禁止形はどのグループも辞書形に「な」を付けるだけです(行くな・食べるな・するな・来る(くる)な)。「わかる」「できる」「見える」「聞こえる」や可能形(話せる)のように、自分の意志でするのではないことを表す動詞は、ふつう命令形・禁止形にしません。
命令形: Ⅰ 辞書形のう段→え段/Ⅱ 〜る→〜ろ/Ⅲ する→しろ、来る→こい。禁止形: 辞書形+な(どのグループも同じ)
代入練習では、教師が辞書形のカードをグループを混ぜて1枚ずつ見せ、まず命令形だけ、次に禁止形だけ、最後に教師の「命令」「禁止」の合図に合わせてどちらかを言わせる。慣れたらます形のカードも混ぜ、ます形からでも作れるようにする。最後はペアで、相手がめくったカードの命令形と禁止形を続けて言い合う。
命令形は相手に強く「しろ」と言う形、禁止形は強く「するな」と言う形です。普通体の中でも特に直接的で、丁寧さを表す部分がないので、使う場面が限られます。おもな場面は、①スポーツの応援や試合中(がんばれ・走れ)、②道路の標識や注意書き(止まれ・さわるな)、③主に男性が、親しい友達や年下の家族に言うとき(こっちへ来い・心配するな)、④火事や事故など緊急のとき(逃げろ・危ない、止まれ)です。教室で学習者が先生や友達に使うと、怒っている・乱暴だと受け取られるので、自分が人に頼むときは「〜てください」「〜ないでください」を使い、命令形・禁止形は聞いたり見たりしてわかるための形、人の言ったことを伝えるための形として練習します。人の言葉を伝えるときは、第17課の「〜と言いました」の中に入れて「父は宿題をしろと言いました」と言えます。
命令形/禁止形で文を終える(普通体の文)。人の言葉を伝えるときは 命令形・禁止形+と言いました
代入練習では、場面カード(応援・標識・緊急・父と子)と動詞カードを組み合わせて、その場面の一言を命令形・禁止形で言わせる。次に同じ内容を「〜てください/〜ないでください」に言い直させ、聞く形と自分が言う形を両方向で行き来させる。場面のやり取りでは、「子どものとき、お父さんはよく何と言いましたか」と聞き合い、「野菜も食べろと言いました」「ゲームをするなと言いました」のように「〜と言いました」で答える。
標識・マーク・漢字・ことばの意味を説明するときの言い方です。「XはYという意味です」の形で、Yに意味の中身を普通体で入れます。命令形や禁止形もそのまま入るので、「門の前の『駐車禁止』は、ここに車を止めるなという意味です」のように、標識や注意書きの意味を説明するのにちょうどよい形です。意味を聞くときは「Xはどういう意味ですか」「Xは何という意味ですか」と聞きます。第17課の「日本語で何と言いますか」がことばを聞く質問なのに対して、こちらはことばの意味を聞く質問で、向きが反対です。
Xは+普通体の文(命令形・禁止形も入る)/名詞+という意味です(聞くとき: Xはどういう意味ですか)
代入練習では、標識・マーク・注意書きのカードを見せて「〜は…という意味です」と言わせる。はじめは命令形・禁止形で、次に同じカードを「〜てはいけない」「〜なければならない」(第12・13課)で言い直させる。場面のやり取りでは、学習者がスマートフォンで撮ってきた町の標識やマークの写真をペアで見せ合い、「これはどういう意味ですか」「〜という意味です」と聞き合う。
ます形の「ます」を取って「なさい」を付ける命令の言い方です。親が子どもに、先生が生徒に言うなど、上の立場の人が下の立場の人に言うときに使い、男性も女性も使います。命令形より少しやわらかく聞こえますが、命令であることは同じなので、友達や目上の人には使いません。テストや教科書の指示(「正しいものを選びなさい」「次の文を読みなさい」)にもよく出るので、学習者にとっては読んでわかることが大切です(試験問題では「選べ」「答えよ」のような命令形で書かれることもあります)。あいさつの「おやすみなさい」「ごめんなさい」も同じ「なさい」です。「〜なさい」には決まった否定の形がないので、しないように言うときは「〜てはいけません」「〜ないようにしなさい」(第24課)などを使います。
ます形(「ます」を取った形)+なさい(書きなさい・食べなさい・しなさい・来(き)なさい)
代入練習では、朝の家の絵カード(起きる・顔を洗う・歯をみがく・ご飯を食べる・学校へ行く)を見せ、母親の役で「〜なさい」と言わせる。次に同じカードで子どもの役になり、「母は顔を洗いなさいと言いました」と人の言葉として伝えさせる。場面のやり取りでは、親と子・先生と生徒のロールプレイのあと、テストの指示文のカードを引いて読み、指示どおりの動作をする。
この課の練習には、命令形・禁止形を作るための動詞(逃げる・止まる・急ぐ・さわる など)と、標識・マーク・注意書きのことば(禁煙・立入禁止・危険 など)を使います。動詞は辞書形のカードで入れ、裏に命令形と禁止形を書いておくと、作り方の練習と語彙の確認が一度にできます。標識のことばは漢字が多いので、読みと意味を「〜という意味です」の枠で説明させ、書けることまでは求めなくてよいでしょう。
宿題は、①動詞15個(グループを混ぜる)の命令形と禁止形を書くこと、②学校・寮・駅・町で見た標識や注意書きを2つ写真に撮るか写して、「〜は…という意味です」で説明を書くこと、③子どものころ家の人がよく言ったことを「母は(よく)〜なさいと言いました」の形で2文書くこと。次のコマの最初に、宿題の写真をクラスで見せ合って意味を説明し、家を出るときのあいさつ「行ってきます」を話題にしてから、第26課の「〜てきます」に入ります。
第25課の命令形は学習者に使わせてもいいのですか?
この課では、命令形・禁止形を自分から人に言う形としては使わせず、聞いて・見てわかる形、人の言ったことを「〜と言いました」で伝える形として練習します。教室で先生や友達に使うと乱暴に聞こえるからです。ただし応援(がんばれ)や緊急(逃げろ)は使う場面がはっきりしているので、その場面の中でなら言わせてかまいません。
命令形は辞書形から作らせますか、ます形から作らせますか?
この教案では第15課の辞書形から作ります。グループⅠは最後の音を う段→え段 と五十音図の下へ一つ動かすだけなので、第12課のない形(上へ一つ)と向きで対にできるからです。ます形から作る説明(い段→え段)も同じ結果になるので、ます形のほうが強い学生にはそちらを見せてもかまいません。する・来るの「しろ・こい」は規則で作らず、丸ごと覚えさせます。
命令形と「〜なさい」と「〜てください」の違いはどう教えればいいですか?
形の違いより「だれがだれに言うか」で分けます。「〜てください」は自分が人に頼む形で目上にも使え、「〜なさい」は親や先生が下の立場の人に言う形、命令形はいちばん強く、応援・標識・緊急・親しい男性どうしで出る形です。板書では 起きてください/起きなさい/起きろ の3段の表にし、学習者が自分で言うのは上の段だと約束します。
禁止の「な」と「いいな」の「な」は、どう聞き分けさせますか?
禁止の「な」は動詞の辞書形にすぐ付き、短く強く言います(行くな)。「この店、いいな」「わたしも行きたいな」の「な」は形容詞や「たい」のあとに付いて気持ちを表すもので、やわらかく言います。二つの文を続けて聞かせ、前に来る語が動詞の辞書形かどうかで分けさせると混ざりにくくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と命令形・禁止形の作り方、学習項目1の命令表現と禁止表現まで。2コマ目は「〜という意味です」と「〜なさい」、標識の写真を使ったまとめの活動です。作り方が定着しないクラスでは、2コマ目の最初に命令形のカード練習を10分入れます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。