人や物を、相手の頭に絵が浮かぶように描写し、紹介することが目標の課です。この課では、自分の性格を言う、知り合いを人に紹介する、持ち物やお店の様子を説明する、といった場面が中心になります。紹介が「いい人です」「きれいです」だけで終わると相手には何も浮かばないので、この課では性質の傾向(〜っぽい)・同じ向きの評価の重ね方(〜うえに)・たとえ(〜のようだ)・見た様子(〜そうです)で説明に厚みを出し、「あの人がうそをつくわけがない」のように人柄を請け合う強い否定(〜わけがない)も加えます。五つの形はどれも話し手の評価や印象を言う形なので、事実を言う文と組み合わせて、言い過ぎにも失礼にもならない紹介に仕上げるのが芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が自分の友人を言葉だけで二通りに紹介する。一つは「いい人です。やさしいです。」だけ、もう一つは性格の傾向・よい点の重ね・たとえを入れた紹介。学生に「どちらの人に会ってみたくなりますか」と聞き、この課は人や物を描写して紹介する課だと予告する。学生にも家族や友達を一言で言ってもらい、出た形容詞を黒板の端に残しておく |
| 学習項目1 〜っぽい… | 25分 | 黒板に残った性格の言葉の横に「忘れっぽい」「子どもっぽい」「白っぽい」を足し、動詞のます形・名詞・色の三段で板書する。子どもが子どもらしい絵と大人が子どもっぽい絵を並べて「らしい」との違いを見せる |
| 学習項目2 〜うえに…だ | 25分 | 紹介したい人のよい点を二つ挙げさせて「〜うえに、〜も」でつなぐ。困った点二つも同じ形で。板書に++/−−の印を付け、+と−をつなぐときは「けれど」になることを見せる |
| 学習項目3 〜わけがない | 25分 | 紹介した友達がうわさで疑われる場面を作り、「あの人が〜わけがない」とかばう言い方として導入。初級Ⅱの「〜はずがありません」と同じ文を二通りに言わせ、第4課の「〜わけにはいかない」との違いも確かめる |
| 学習項目4・5 〜のようだ/〜そうです | 35分 | 景色や人物のイラストで、左に「まるで〜のようだ」(本当ではないたとえ)、右に「〜そうだ」(今にも起こりそう・見た感じ)を板書して対比する。初級Ⅱの推量の「〜ようです」、第7課の伝聞の「〜そうだ」とも並べて、形と意味の違いを整理する |
| 目標の活動(他己紹介) | 30分 | ペアで3分ずつインタビューし、相手をクラスに紹介する。五つの形のうち三つ以上を使う決まりにし、聞いた人は「どの言葉でその人の様子が浮かんだか」を一つ言う |
| 目標の活動(物の紹介) | 20分 | 自分の持ち物か好きな店を、名前を言わずに「〜のような」「〜そうな」「〜うえに」で説明し、クラスが何かを当てる。フリーマーケットの売り手役になって、品物を客に勧めるロールプレイに広げてもよい |
| まとめ | 10分 | 「っぽい」と「らしい」、「わけがない」と「はずがない」、「のようだ」と「そうです」の三組を、短い文を2問ずつ選ばせて確かめる。他人の紹介でよくない響きの語(子どもっぽい・怒りっぽい)をどう言い換えるかも一言で振り返る |
名詞や動詞のます形などについて、「〜の感じがする」「〜の傾向が強い」という性質を表し、全体で一つのい形容詞として活用します。使い方は大きく三つで、①人の性格や様子が〜のように感じられる(子どもっぽい・大人っぽい・男っぽい)、②色や成分が〜に近い・多い(白っぽい・水っぽい)、③動詞のます形について、すぐ〜してしまう傾向がある(忘れっぽい・怒りっぽい・飽きっぽい)です。よくない評価の響きを持つことが多く(子どもっぽい・安っぽい・水っぽい・怒りっぽい)、ほめる意味で使うのは「大人っぽい」などに限られます。「男らしい」「子どもらしい」の「らしい」は、その人や物が本来の性質を十分に持っていることを言うのに対し、「っぽい」はそうではないのに〜に似て見えることや、その性質が強く出ていることを言う場合が多い、と対比すると分かりやすくなります。
N+っぽい(子どもっぽい・白っぽい)/Vます形+っぽい(忘れっぽい)/い形容詞の語幹+っぽい(安っぽい)。い形容詞と同じように活用する(〜っぽくない・〜っぽかった・〜っぽさ)
まず、教師が「すぐ忘れる」「すぐ怒る」「白に近い色」「大人なのに子どものよう」のような説明を言い、学生が「〜っぽい」の語で答える。次に、学生が自分の性格を「〜っぽい」で一つ言い、それが困ることか、いいことかを一文添える。最後に、他人を紹介する文で「子どもっぽい」「怒りっぽい」を使わずに言い換える練習を入れる。
ある事がらに、同じ向きの事がらをもう一つ重ねて、「それだけでなく、さらに」と言う形です。よい点によい点を重ねる(安いうえに、おいしい)か、困った点に困った点を重ねる(狭いうえに、駅から遠い)のが基本で、重ねることで評価がいっそう強くなります。初級Ⅰの「〜し、…し」より少しかたい響きで、後ろの文に「〜も」が入ることが多いです。題の「…だ」が示すように、後ろには様子や評価を言う文が来て、「〜てください」「〜ましょう」のような相手への働きかけは来ません。
普通形+うえに(な形容詞は「な」:親切なうえに。名詞は「である」:医者であるうえに。「Nのうえに」は場所の「上に」と紛れやすいので、教室では「である」で教える)
まず、+と−の印の付いた条件カードを2枚ずつ出し、同じ向きなら「〜うえに、〜も」でつなぎ、違う向きなら「〜けれど」でつなぐ判断をさせる。次に、お店・アパート・アルバイト先のどれかを選んで、よい点を重ねて勧める文を言わせ、勧めの言葉は「〜ので、おすすめです」と文を分けて言わせる。
「〜という理由や可能性はまったくない」と、話し手が強く否定する判断を表します。人柄や事情をよく知っていて「そんなことはありえない」と請け合うときに使い、紹介の場面では「あの人がうそをつくわけがない」のように、その人への信頼を言い表すことができます。初級Ⅱの「〜はずがありません」とほぼ同じ意味で、たいていは置き換えられますが、「はずがない」は根拠から考えた結論として落ち着いた響き、「わけがない」は気持ちのこもった強い響きになりやすい、という傾向があります。「〜ないわけがない」と否定を重ねると「必ず〜だ」という強い肯定になります。
普通形+わけがない(な形容詞は「な」:簡単なわけがない。名詞は「の/である」:本物のわけがない。話し言葉では「わけない」「〜わけないでしょう」と短くなる)
まず、教師が「あの人は〜らしい」とうわさを言い、学生が「〜だから、〜わけがない」と根拠を付けて打ち消す。根拠を言わずに否定だけした場合は、「どうしてそう思うの?」と聞き返して根拠を足させる。次に、同じ文を「はずがありません」でも言い、目上の人に言うときはどちらの形で、どこまで丁寧にするかを選ばせる。
あるものを、実際にはそうではないと分かったうえで、よく似た別のものにたとえて言う形です(比喩)。人や物の様子を相手に絵として浮かばせる力があり、紹介や描写でよく使います(太陽のような人・雪のように白い)。「まるで」といっしょに使うと、たとえであることがはっきりします。初級Ⅱの「〜ようです」は様子から考えた推量(どうも風邪のようです=たぶん風邪だ)で、本当にそうである可能性があるのに対し、たとえの「〜のようだ」は本当ではないことが分かっている点が違います。話し言葉では「〜みたいだ」もよく使います。
N+のようだ/N+のような+N/N+のように+動詞・形容詞(動詞の文でたとえるときは普通形+ようだ:まるで夢を見ているようだ)
まず、教師が人や物の特徴(白い・速い・明るい・静か)を言い、学生がたとえを一つ考えて「〜のように〜」と言う。たとえの決まった言い方(雪のように白い・氷のように冷たい)と、自分で考えたたとえの両方を出させる。次に、自分の家族や友達を「〜のような人」で紹介し、なぜそのたとえなのかを一文で説明させる。
見た様子から「〜しそうだ」「〜に見える」と判断して言う形(様態)です。この課では二つの使い方を扱います。一つは、動詞について今にも起こりそうなことを言う使い方(コップが落ちそうです・雨が降りそうです)、もう一つは、形容詞について人や物の見た感じを言う使い方(やさしそうな人・丈夫そうないす)です。初級Ⅱで習った形の復習ですが、紹介の場面では「まだよく知らないけれど、見た感じでは」という控えめな描写として役に立ちます。前の項目の「〜のようだ」が本当ではないたとえなのに対し、「〜そうです」は本当にそうである(そうなる)かもしれないことを言います。普通形につく第7課の伝聞の「〜そうだ」(遅れるそうです)とは、形も意味も違います。
Vます形+そうです(切れそうです)/い形容詞の「い」を取って+そうです(やさしそうです。いい→よさそう、ない→なさそう)/な形容詞の語幹+そうです(元気そうです)。名詞には付かない。名詞の前は「〜そうなN」、動詞の前は「〜そうにV」
まず、絵カードを見せて、動詞なら「〜そうです」、人や物なら「〜そうな N」で言わせ、「いい」「ない」のカードを混ぜて「よさそう」「なさそう」を確かめる。次に、混んだホームの絵を見て言う文(電車が遅れそうです)と、駅の放送を伝える文(電車が遅れるそうです)を交互に言い分けさせる。最後に、目標の活動に向けて、知らない人の写真を「〜そうな人で、〜のような雰囲気です」と様子とたとえを組み合わせて紹介させる。
人や物を描写するには、性格の語(明るい・おとなしい・まじめな・さっぱりした・頼りになる など)、見た目の語(背が高い・はでな・地味な など)、物の様子の語(丈夫な・こわれやすい・使いやすい など)が要ります。新出語もこの三つのかたまりに分けて板書すると、紹介の文を組み立てるときに選びやすくなります。単語だけで覚えさせず、「〜な性格」「〜っぽい服」「〜そうな人」「〜のような人」の形で、紹介の文の中に入れて練習します。他人を紹介するときに失礼になりやすい語(子どもっぽい・怒りっぽい・地味な)は、言い換えの語と並べておくと実際の場面で困りません。
宿題は、家族・友達・あこがれの人の中から一人を選び、その人を知らないクラスメートに紹介する文章(5〜6文)を書くこと。性格(〜っぽい)、よい点の重ね(〜うえに)、たとえ(〜のような)、見た感じ(〜そうな)のうち三つ以上を使い、最後に「〜だから、〜わけがない」の形で、その人を信頼している理由を一つ書く。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞いた人が「会ってみたい」と思った言葉を一つ挙げてから、第11課の「お知らせを読む」に入ります。
「〜っぽい」と「〜らしい」の違いはどう教えればいいですか?
子どもが子どもらしく遊ぶ絵と、大人が子どものようにはしゃぐ絵を並べ、前者が「子どもらしい」、後者が「子どもっぽい」だと見せるのが早道です。「らしい」は本来の性質を十分に持っていること、「っぽい」はそうではないのに似て見えることや、その傾向が強いことを言い、よくない響きになりやすいと確かめます。初級Ⅱの推量の「〜らしいです」とは別のものだと一言添えておくと混乱が減ります。
「〜わけがない」と「〜はずがない」は何が違いますか?
意味はほぼ同じで、多くの文は置き換えられます。「はずがない」は根拠から考えた結論として落ち着いた響き、「わけがない」は気持ちのこもった強い響きになりやすい、という傾向の違いです。教室では、人柄の根拠を前に置いて友達をかばう場面で「わけがない」を練習し、目上への反論では「はずがありません」を選ばせると使い分けが身につきます。
たとえの「〜のようだ」と様態の「〜そうです」はどう区別させますか?
板書の左に「まるで〜のようだ」(本当ではないたとえ)、右に「今にも〜しそうだ・〜そうな人」(本当にそうかもしれない見た様子)を置いて比べます。「のようだ」は名詞には「の」をはさんで付き(夢を見ているようだ、のように動詞の文なら普通形に付く)、「そうです」はます形と形容詞の語幹に付いて名詞には付かないので、形でも見分けられます。さらに初級Ⅱの推量の「〜ようです」と第7課の伝聞の「〜そうだ」を加えて四つを一枚の表にすると、学生が自分で確かめられます。
「〜うえに」でよい点と悪い点をつないでもいいですか?
形は作れますが、聞き手は二つ目もよい点なのか悪い点なのか迷ってしまいます。「〜うえに」はよい点どうし、困った点どうしのように同じ向きの事がらを重ねる形なので、向きが違うときは「〜けれど」「〜が」でつなぐように指導します。+と−の印を付けた条件カードで判断させる練習が効きます。
第10課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜っぽい」「〜うえに」「〜わけがない」まで、2コマ目で「〜のようだ」「〜そうです」の対比と、他己紹介・物の紹介の目標の活動、まとめを行います。「〜そうです」は初級Ⅱの復習なので、形の確認を短くして紹介の練習に時間を回すと収まります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。