日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 中級 第32課「東京でも野菜を作れないことはないんですよ」の教案

『学ぼう!にほんご 中級』

「はい」か「いいえ」かで言い切らずに、物事を全部ではなく一部分だけ否定して、やわらかく言う課です。相手が「無理でしょう」「嫌いなんでしょう」と決めつけたとき、全部を認めるのでも全部を打ち消すのでもなく、「できないことはない」「嫌いなわけではない」と言えると、話が行き止まりにならず、どうすればできるかを一緒に考える方向へ進みます。5つの形は、言い方を直す「〜というよりも」、少しは「ある・できる」と認める「〜ないことはない」、思い込みや言い過ぎを打ち消す「〜わけではない」、今はそれをする余裕がない「〜どころではない」、する必要はないと伝える「〜ことはない」と、どこを否定しているかで分けて板書すると整理しやすくなります。いちばんの山は「〜ないことはない」と「〜わけではない」の違いで、前者は結局「できる・する」側に立つ消極的な肯定、後者は相手や自分の思い込みを打ち消す否定だ、という向きの違いを例の対で必ず確かめます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 相手の言い方や自分の最初の言い方を「〜というよりも」で直して、より合った言葉で言い表せる
  • 「無理でしょう」と言われたことに「〜ないことはない」で少しの可能性を認め、条件や気の進まなさを添えて答えられる
  • 「〜わけではない」と「全部・いつも・必ずしも・全く」を組み合わせて、思い込みや言い過ぎを部分的に打ち消し、本当の理由を続けて言える
  • 「〜どころではない」で今それをする余裕がない事情を説明し、「〜ことはない」で相手に、そこまでする必要はないと伝えて安心させられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分教師が「狭いアパートで料理なんて無理ですよね」「日本人はみんな納豆が好きですよね」のような決めつけを言い、学生に「はい」「いいえ」以外の答え方がないか考えさせる。出てきた答えを黒板に集め、全部ではなく一部分だけ否定する言い方がこの課に5つある、と予告する。黒板に「言い方を直す」「少しは認める」「思い込みを打ち消す」「余裕がない」「必要がない」の5つの箱を作っておく
学習項目1 〜というよりも20分一つのものを二つの言葉で言い比べ、前の言葉は間違いではないが、後ろの言葉のほうがぴったりだ、という直し方を導入する。二つのものを比べる「AよりBのほうが」と違うことを最初に押さえる
学習項目2 〜ないことはない25分「できない」に「〜ことはない」を付けて打ち消すと、少しはできるという意味になる二重否定を、矢印の板書で見せる。答えたあとに「けど」「が」で条件や気の進まなさを続ける形をかたまりで練習する
学習項目3 〜わけではない35分相手の思い込みを打ち消す形として導入し、「全部・いつも・必ずしも・全く」と組み合わせた部分否定を練習する。続けて学習項目2と対にして、向きの違い(認める側か、打ち消す側か)を例の対で確かめる。1コマ目はここまで(自分の国についてよく言われる決めつけを一つ、メモしてこさせる)
学習項目4 〜どころではない20分誘いや提案に、今はもっと大事なことがあって余裕がない、と答える形で導入する。気持ちの上で嫌なのではなく、事情でそれをする状態にない、という点を押さえる。2コマ目の最初に、メモしてきた決めつけを「〜わけではない」で打ち消す復習を3分ほど入れてから入る
学習項目5 〜ことはない25分初中級で学んだ「する必要はない」の意味を短く思い出させ、困っている相手を安心させる言い方、そこまでしなくてもよかったと伝える「〜ことはなかった」へ広げる。「〜ないことはない」「〜たことはない」と形が似ていることもここで整理する
目標の活動(相談のロールプレイ)35分一人が「〜は無理だ」「もう〜しかない」と悩みを言い、もう一人が5つの形を使って、全部は否定せずに別のやり方を一緒に考える。悩み役は最後に「じゃあ、〜てみます」と一つ行動を決める
まとめ10分黒板の5つの箱に形を置き直し、とくに「〜ないことはない」と「〜わけではない」、「〜ないことはない」と「〜ことはない」の対を、それぞれ一組ずつの例文で残す

学習項目 1 〜というよりも

意味・はたらき学習項目 1

一つの物事を言い表すときに、前の言い方も間違いとは言えないが、後ろの言い方のほうがより正確だ、ぴったりだと、言葉を選び直すことを表します。「AというよりもB」で、Aを全部打ち消すのではなく、「Aと言うのは少し足りない・少しずれている」と部分的に退けて、Bに言い換えるのがこの形のはたらきです。相手の言い方を直すときにも、自分が最初に言った言葉を言い直すときにも使い、「〜というよりも、むしろ〜」と「むしろ」を添えることもよくあります。「も」を落とした「〜というより」も同じ意味で、会話ではこちらのほうがよく使われます。

接続

N/な形(「だ」はふつう付けない)/い形/V(普通形)+というよりも(名詞・な形は「Nだというよりも」とも言う)

形
N というよりも N(趣味というよりも仕事だ)な形 というよりも な形(静かというよりも寂しい)い形 というよりも い形(寒いというよりも痛い)〜というよりも、むしろ〜

導入

  • 一つの物を二つの言葉で冷たい雨が降っている日の窓の外の写真を見せ、「きょうは涼しいですか、寒いですか」と聞く。学生が「涼しい、でも寒い」などと答えたら、「涼しいというよりも、寒い」と板書し、「涼しい」は間違いではないが、ぴったりなのは「寒い」のほうだと確かめる。次に、熱が出たときの「寒い」と「痛い」のように、学生自身に言い直しを作らせる。
  • 「AよりBのほうが」と並べる「バスより電車のほうが速い」と「この店はレストランというよりも食堂だ」を2行で板書し、「物はいくつですか」と聞く。前の文は二つの物を比べ、後ろの文は一つの物をどう呼ぶかを選んでいる、と確かめて、比べる形と言い直す形を分けておく。

板書案

A というよりも B(一つの物を、言い直す)
この店は、レストランというよりも食堂です。
〔青〕A=間違いではないが少しずれる 〔赤〕B=ぴったりの言葉 A→B の矢印
比べる(物が二つ):バスより電車のほうが速い / 言い直す(物が一つ):レストランというよりも食堂
会話では「〜というより、むしろ〜」

場面と発話(自作)

  • 週末にずっとピアノを練習している同僚に、「ピアノが趣味なんですか」と聞かれた。実は子どもの音楽教室で教えている。趣味というよりも、もう仕事の一部なんです。
  • 留学生が日本の夏の感想を先生に聞かれた。暑さだけでなく、空気が重く感じる。暑いというよりも、蒸し暑くて息が苦しい感じです。
  • 友達に「田中さんって怖い先輩だね」と言われた。厳しいが、後輩のことをよく考えてくれる人だ。怖いというより、仕事に厳しいんだと思うよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

人や物・場所の写真(大きな公園・古い家・よく食べる友達 など)を見せ、まず思い浮かんだ言葉を一つ言わせてから、「〜というよりも〜」でもっと合う言葉に言い直させる。言えたら周りの学生に「どうしてそう言い直したんですか」と聞かせ、前の言葉では何が足りなかったかを一言で説明させる。

  1. 口頭教師が写真やしぐさをキューにして、まず学生に思いついた言葉を一つ言わせ、「もっとぴったりの言葉は?」と聞いて「AというよりもB」で言い直させる。キューの例は、冷たい雨の日の写真(涼しい→寒い)、熱が出た人のしぐさ(寒い→痛い)、人でいっぱいの駅の写真(にぎやか→うるさい)、古い木の家の写真(古い→歴史がある)。全体で言わせてから、一人ずつ別の写真で言わせる。
  2. ペアAは人や物の短い説明カード(週末ずっとピアノを弾いている人・毎日10キロ走る人 など)を見て、最初の言葉で「〜は〜ですね」と言う。Bはカードの裏の情報(実は教室で教えている・大会に出ている)を見て「〜というよりも〜です」と直す。Aには裏が見えないので、直された理由をBに一つ聞く。5枚ずつで役を交替する。
  3. 産出「ひとこと言い直し自己紹介」。自分の趣味・性格・ふるさとの町を一つずつ、まずふつうの言葉で言い、すぐ自分で「〜というよりも〜」と言い直して、理由を一文足す。教師が見るのは、一つの物を言い直しているか(二つの物の比べになっていないか)、前の言葉にも当たっているところが残っているか、な形・名詞に「だ」を付けて書き言葉らしくなりすぎていないか。

つまずきと手当て

  • 二つの物を比べるときに使う(「*この店はあの店というよりも安い」)。二つの物の比べには「あの店よりこの店のほうが安い」を使い、「というよりも」は一つの物をどう言い表すかを選び直すときだけ、と板書の2行に戻す
  • 前の言葉が完全に間違っているときに使う。「犬ですか」と聞かれて猫なら「いいえ、猫です」と答える。「というよりも」は、前の言葉にも当たっているところがあるときの言い直しだ、と伝える
  • な形や名詞に「だ」を付けるかどうか迷う。会話では「静かというより」のように付けないことが多い。「静かだというより」も誤りではないが、少し書き言葉らしく聞こえる

既習の文型との違い

  • AよりBのほうが〜(初中級第5課)「AよりBのほうが〜」は二つの物を並べて、程度の大きい小さいを比べる形で、物は二つです。「AというよりもB」は一つの物をどう呼ぶかを選び直す形で、物は一つです。「この店はあの店というよりも安い」のように混ぜたら、まず物の数を数えさせて、比べる形に直します。
  • 〜に比べて…(初中級第5課)「〜に比べて」も二つの物の比べで、前に基準になる物を置きます。「というよりも」の前に来るのは物ではなく、言葉(呼び方・言い方)です。前に来るのが物か言葉かで分けると、学生が自分で選べるようになります。
関連する文型

学習項目 2 〜ないことはない

意味・はたらき学習項目 2

「〜ない」を「ことはない」でもう一度打ち消す二重否定で、まったくできない・しないわけではなく、少しは可能性がある、条件しだいではする、という消極的な肯定を表します。「作れないことはない」は「作れる」とほぼ同じ事実を言いますが、「簡単ではない」「あまり気が進まない」「条件がある」という気持ちが残るので、言ったあとに「けど」「が」で、その条件や気の進まなさを続けることが多い形です。とくに「行けないことはない」「作れないことはない」のように可能形に付けて、「無理でしょう」と言われたことに少しの可能性を認める使い方がよく出ます。「〜ないこともない」と「も」にすると、さらに遠回しでやわらかくなります。

接続

Vない(ない形)/い形くない/な形・Nじゃない(ではない)+ことはない(丁寧には「〜ないことはありません」。「〜ないこともない」とも言う)

形
可能形 ない ことはない(作れないことはない・行けないことはない)Vない ことはない けど/が、〜(食べないことはないけど、あまり好きじゃない)い形くない ことはない(高くないことはない)〜ないこともない(もっと遠回しに)

導入

  • 打ち消しを打ち消す矢印黒板に「作れる」「作れない」「作れないことはない」を縦に書き、「作れない」の横に×、それを打ち消す「ことはない」にもう一つ×を付けて、×が二つで「作れる」の側に戻ることを見せる。そのうえで「でも、『作れる』と同じですか」と聞き、「簡単ではない」「少しだけ」という気持ちが残ることを引き出して、矢印の先に「消極的に『できる』」と書く。
  • 質問にすぐ「はい」と言えないとき教師が学生に「あしたの朝6時に来られますか」と聞き、別の学生に「6時? 来られないことはないですけど…」と答えさせる。「この人は来ますか」「喜んで来ますか」と聞いて、来られるが気が進まない・大変だ、という答え方だと確かめ、「けど」のあとに条件を足す練習につなぐ。

板書案

作れる → 作れない(×)→ 作れないことはない(××=できる側へ戻る)
可能形のない形/Vない + ことはない + けど/が、〜
朝6時に来られないことはないですけど、少し大変です。
〔赤〕×を二つ書いて矢印 〔青〕「けど」のあと=条件か気の進まなさ
〜ないこともない(もっと遠回し)

場面と発話(自作)

  • 引っ越しの荷物を、自分の小さい車で運べるか友達に聞かれた。二回に分ければ、運べないことはないけど、ベッドは無理かな。
  • 同僚に、今夜までに資料を仕上げられるか聞かれた。ほかの仕事もたまっている。今夜中にできないことはないんですが、少し雑になるかもしれません。
  • 友達に「辛い料理は食べるの?」と聞かれた。食べられるが、自分からは選ばない。食べないことはないけど、自分ではあまり頼まないかな。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「〜できますか」の質問カード(朝5時に起きる・一人で引っ越しをする・漢字で手紙を書く など)を引かせ、「〜ないことはないけど/が、〜」で答えさせる。「けど」のあとには条件(〜ば)か気の進まなさ(あまり〜ない)を必ず入れる。最後に聞いた学生が「じゃあ、するんですね?」と確かめ、答えた学生は「ええ、〜なら」と条件つきで認める形で返す。

  1. 口頭教師が「〜できますか」と聞き、全体で「〜ないことはないです」と答えさせてから、個人で「けど」のあとに条件か気の進まなさを足させる。キューの例は、「一人で引っ越しができますか」「朝5時に起きられますか」「生の魚が食べられますか」「漢字で手紙が書けますか」。可能形のない形がすぐ出ない学生には、先に「起きられる→起きられない」と形だけを言わせてから文にする。
  2. ペアAは頼みのカード(今夜手伝える?・駅まで車で送れる?・あしたまでに訳せる?)を読む。Bは自分だけが見られる一週間の予定表を持ち、空きが少しある日なら「〜ないことはないけど、〜ば」と条件を付けて答える。Aは条件を聞いて「じゃあ、〜でお願いします」とまとめる。3枚ずつで交替し、最後にAが「Bさんは引き受けましたか」とクラスに報告する。
  3. 産出「条件つきOKカード」。自分にとって大変だが、条件しだいではできることを3つカードに書き、「〜ないことはないですけど、〜」で発表する(例: 大学まで自転車で行けないことはないですけど、1時間かかります)。教師が見るのは、可能形のない形が正しいか(「書けれない」のような形になっていないか)、「けど」のあとが条件か気の進まなさになっているか、気持ちよく引き受けるべき場面で使っていないか。

つまずきと手当て

  • 「〜ことはない」(する必要はない)と取り違え、「行かないことはない」を「行かなくてもいい」の意味に取る。「ない」が一つなら必要がない、二つなら少しはする・できる、と「ない」の数を数えさせて区別する
  • 「〜わけではない」と同じだと思って何でも言い換える。「〜ないことはない」は結局「できる・する」側に立つ答え、「〜わけではない」は相手の思い込みを打ち消す答えで、向きが違う。「この人は、するの?しないの?」と聞いて選ばせる(学習項目3の対の例文で確かめる)
  • はっきり「はい」と言うべきところで使って、気が進まないように聞こえる。上司に「手伝ってもらえますか」と頼まれて「手伝えないことはないです」と答えると、いやいや引き受けるように聞こえるので、気持ちよく引き受けるなら「はい、手伝います」と言う

既習の文型との違い

  • 〜ないわけにはいかない(初中級第4課)「〜ないわけにはいかない」も「ない」が二つ重なる形ですが、意味は「事情があって、しないでいることはできない」という義務です。「〜ないことはない」は「少しはできる・する」という可能性の認め方で、するかどうかは話し手しだいです。「行かないわけにはいかない」なら必ず行く、「行かないことはない」なら行くこともある、と対で比べさせます。
  • 〜ことはない(初中級第14課)初中級で学んだ「〜ことはない」は辞書形に付いて「する必要はない」を表し、「ない」は一つです。「〜ないことはない」は「ない」が二つで、意味はほぼ反対の「少しはする・できる」になります。「心配しないことはない」を「心配しなくていい」の意味で使う誤りが出たら、「ない」の数を数えさせます。
関連する文型

学習項目 3 〜わけではない

意味・はたらき学習項目 3

相手が持っている思い込みや、前の話から当然そう考えられることを、「そうだとは限らない・全部がそうなのではない」と打ち消すことを表します。「わけ」は「理由・当然の結論」なので、「〜わけではない」は「当然〜だろう、という結論にはならない」という意味です。「全部・みんな・いつも・必ずしも・全く」などと組み合わせると、「全部ではない(一部はそうだ)」という部分否定になります(「全く〜ないわけではない」なら「少しはある」)。また、「嫌いなわけではない」のように、相手が考えていそうな理由を打ち消して、本当の理由をあとに続けるときにもよく使います。学習項目2の「〜ないことはない」との違いは向きで、「〜ないことはない」は「少しはできる・する」と自分から認める答え、「〜わけではない」は相手や自分の思い込みを打ち消す答えです。たとえば、納豆が出たのに手をつけない人が「納豆が嫌いなわけではないんです。おなかがいっぱいで」と言えば、嫌いだろうという相手の思い込みを打ち消しています。「納豆は食べないことはないです」と言えば、食べることは食べると、少し気が進まない調子で認めています。

接続

普通形+わけではない(な形は「な形な」、名詞は「Nな」か「Nというわけではない」。丁寧には「〜わけではありません」。会話では「〜わけじゃない」)

形
全部/みんな/いつも 〜わけではない(部分否定)必ずしも 〜わけではない全く〜ない わけではない(少しはある)〜わけではないんです。〜からです(思い込みを打ち消して本当の理由へ)

導入

  • 思い込みを打ち消す教師が「日本人はみんな、毎朝ご飯とみそ汁を食べますよね?」とわざと決めつけて学生に聞く。学生の答えを受けて「日本人がみんな毎朝ご飯を食べるわけではありません。パンの人も多いです」と板書し、「みんな」が打ち消されて「一部の人はそうだ」が残ることを、丸の図(全体の丸の中に一部分だけ色を塗る)で見せる。
  • 「ないことはない」と対にする同じ場面(友達に料理をすすめられて、あまり食べなかった)で、「この料理が嫌いなわけではないんです」と「この料理は食べないことはないです」を2行で板書する。「どちらの人が、相手の誤解を直していますか」「どちらの人が、少し気が進まないけど食べると言っていますか」と聞き、打ち消す側と認める側に分けて、黒板の箱に置く。

板書案

普通形(な形な・Nな/Nという)+ わけではない
日本人がみんな納豆を好きなわけではありません。
〔図〕大きな丸の一部分だけを塗る=「みんな」を打ち消して「一部はそう」を残す
全部/みんな/いつも/必ずしも + 〜わけではない(部分否定)
認める側:食べないことはない | 〔赤〕打ち消す側:嫌いなわけではない

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の説明会で、留学希望者から「日本の会社は残業が多いんでしょう」と聞かれた担当者が答える。会社によって違うので、どこでも残業が多いわけではありませんよ。
  • 週末の飲み会を断った後輩に、先輩が「お酒が嫌いなの?」と聞く。実は翌朝早くにアルバイトがある。お酒が嫌いなわけじゃないんです。次の日、朝からアルバイトなので。
  • 引っ越し先を探している会社員に、不動産屋が駅から遠い部屋を紹介する。会社員は「バスはあるんですか」と聞いた。本数は少ないですが、全くバスがないわけではありません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

決めつけのカード(学生はみんなお金がない・雨の日はいつも電車が遅れる・高い物は必ず質がいい など)を読み上げ、「〜わけではない」で打ち消させ、「〜もある/〜人もいる」で一部分を一文足させる。次に、同じカードのうち二枚を選んで「〜ないことはない」で答えさせ、どちらの形が答えとして合うかをクラスで話し合わせる。

  1. 口頭教師がわざと決めつけを言い、全体で「〜わけではありません」と打ち消させてから、個人で「〜人もいます」「〜こともあります」と一部分を一文足させる。キューの例は、「学生はみんなお金がないですよね」「雨の日は電車がいつも遅れますよね」「高い物は必ずいい物ですよね」「日本人はみんな毎日お茶を飲みますよね」。な形の決めつけ(「静かな人はみんなまじめですよね」)も混ぜて、「まじめなわけでは」の「な」を言わせる。
  2. ペアAは「しなかったこと」の場面カード(飲み会を断った・料理を残した・メールに返事をしなかった)を持ち、Bはその相手の役で「〜が嫌いなの?」「怒ってるの?」と聞く。Aは自分だけが見られる本当の理由カードを見て、「〜わけじゃないんです。〜ので」と思い込みを打ち消してから理由を言う。Bは理由を聞いて「なんだ、そうだったんだ」と返す。3枚ずつで交替する。
  3. 産出「わたしの国のよくある思い込み」。自分の国や町についてよく言われる決めつけを一つ選び、「〜と思われていますが、みんなが〜わけではありません。〜人もいます。〜からです」と3〜4文で書いて発表する。聞く学生は一つ質問をする。教師が見るのは、な形・名詞の接続、「〜わけがない」と混ざって強い否定になっていないか、部分否定の副詞と組んで一部分がちゃんと残っているか。

つまずきと手当て

  • な形や名詞にそのまま付ける(「*嫌いわけではない」「*学生わけではない」)。な形は「嫌いなわけではない」、名詞は「学生というわけではない」か「学生なわけではない」にする、と接続の表で固定する
  • 「〜わけがない」と取り違える。「来るわけがない」は来る可能性はまったくないという強い否定、「来るわけではない」は来るとは限らない・全部がそうではない、という部分否定。二つの文を並べて「可能性はゼロですか」と聞いて区別する
  • 「〜ないことはない」と混ぜて、「全くできないわけではない」と言いたいところを「全くできないことはない」と言ってしまう。「全く・必ずしも・みんな」と組むのは「〜わけではない」のほうが自然なことが多い、と板書の対で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜わけがない(初中級第10課)「〜わけがない」は「可能性がまったくない」という強い否定で、話し手の確信を表します。「〜わけではない」は「そうとは限らない・全部がそうではない」という部分的な否定で、一部分はそうだという余地を残します。「この試験は簡単なわけがない」(絶対に難しい)と「簡単なわけではない」(思っているほど簡単ではない)を並べ、「可能性はゼロですか」と聞いて選ばせます。
  • 〜わけにはいかない(初中級第4課)「〜わけにはいかない」は、事情や立場があって「それはできない」と自分の行動を止める形です。「〜わけではない」は、相手や自分の思い込みを打ち消す形で、行動を止めてはいません。「今日は休むわけにはいかない」(休めない)と「休みたくないわけではない」(本当は休みたい)を対にして、何を打ち消しているかを確かめます。
関連する文型

学習項目 4 〜どころではない

意味・はたらき学習項目 4

ほかにもっと大事なこと・大変なことがあって、今はそれをする余裕も状況もまったくないことを表します。前に来るのは、旅行・花見・勉強・パーティーのような活動の名詞や、「寝ている」「テレビを見ている」のような動作の言葉で、その活動について「それをしている場合ではない」と強く打ち消します。理由は、忙しい・病気・心配事・急な出来事など、話し手の事情や周りの状況で、気持ちとして嫌なのではない点が大切です。会話では「〜どころじゃない」がよく使われます。似た形の「〜どころか」は、「AどころかB」で「Aは当然違う、それより程度がずっと上(または反対)のBだ」という意味で、別の形です。

接続

N/Vる・Vている+どころではない(丁寧には「〜どころではありません」。会話では「〜どころじゃない」)

形
N どころではない(旅行どころではない・勉強どころではない)Vている どころではない(のんびり寝ているどころではない)〜て、それどころではない(それをする余裕がない)〜どころの話ではない(もっと強く)

導入

  • 誘いに余裕がないと答える学生に「週末、花見に行きませんか」と誘わせ、教師がスーツケースを持つしぐさで「来週引っ越しなんです。荷物が全然片付いていなくて、花見どころじゃないんですよ」と答える。「先生は花見が嫌いですか」と聞き、嫌いではなく、引っ越しのほうが大変で余裕がない、という意味を引き出す。
  • 天秤で大事なほうを見せる天秤の絵を描き、重い皿に「大変なこと(試験・病気・仕事のトラブル)」、軽い皿に「したいこと(旅行・遊び)」を書く。重い皿がある間は、軽い皿の活動について「〜どころではない」と言う、と板書し、学生に自分の最近の「重い皿」を言わせて文を作らせる。

板書案

N/Vている + どころではない(=今はそれをする余裕がない)
来週引っ越しなので、花見どころじゃないんです。
〔図〕天秤:重い皿〔赤〕大変なこと(試験・病気・引っ越し) 軽い皿〔青〕したいこと(旅行・遊び)
嫌いだから、ではない → 事情があって、できない
〜て、それどころではない

場面と発話(自作)

  • 大学院の論文の締め切りが来週に迫っている留学生が、友達から旅行に誘われた。締め切りが来週なので、今は旅行どころじゃないんだ。
  • 子どもが熱を出した会社員が、昼休みに同僚から「ランチ、どこ行きます?」と聞かれた。子どもが熱を出して、ランチどころではないんです。早めに帰らせてもらいます。
  • 引っ越しの前の晩、のんびりテレビを見ている弟に、兄が言う。あしたは引っ越しだろう。テレビを見ているどころじゃないよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「大変なこと」のカード(あしたが面接・財布をなくした・部屋の水道が壊れた)と「誘い」のカード(カラオケ・映画・飲み会)を一枚ずつ引かせ、誘われた側として「〜て、〜どころではない」と断らせる。そのあと「いつなら行けますか」と聞かせ、「〜が終わったら」と次の約束につなげさせる。

  1. 口頭教師が「週末、カラオケに行きませんか」と誘いながら「大変なこと」の絵カードを見せ、全体で「〜て、カラオケどころじゃないんです」と断らせる。絵カードの例は、あしたの面接、壊れた水道、熱を出した子ども、山のような宿題。慣れたら誘いの名詞(映画・飲み会・旅行・買い物)を入れ替えて、一人ずつ言わせる。
  2. ペアAは誘う役、Bは自分だけが見られる「今の状況カード」を持つ。Bは状況を言ってから「〜どころではない」で断り、Aが「じゃあ、いつなら大丈夫?」と聞き、Bは「〜が終わったら」で返す。1回目は友達どうし、2回目はAを先輩にして、Bは「申し訳ありません」とおわびを足す。2回終わったら役を交替する。
  3. 産出「今週の重い皿スピーチ」。自分の今週か今月のいちばん大変なことを一つ言い、「〜ので、〜どころではありません」でできないことを一つ挙げ、最後に「〜が終わったら〜たいです」で締める(3〜4文)。教師が見るのは、好き嫌いの理由で使っていないか、前が活動の名詞か「Vている」になっているか、目上の人への言い方にやわらげる言葉が入っているか。

つまずきと手当て

  • 気持ちとして好きではないことに使う。旅行が好きではないから行かない、という意味で「旅行どころではない」と言うと、何か大変なことが起きていると誤解される。好き嫌いなら「あまり旅行は好きじゃない」と言う
  • 「〜どころか」と混ぜる。「*忙しいので、旅行どころか」で文を終える、あるいは「旅行どころではない、海外にも行った」のように言う。「〜どころではない」は「する余裕がない」で文を終える形、「〜どころか」は後ろにもっと程度の上(反対)のことが続く形、と2つの文を並べて区別する
  • 目上の人の誘いに「〜どころじゃないです」とそのまま言うと、強く突き放すように聞こえることがある。目上の人には「ちょっと〜があって、それどころではなくて…。申し訳ありません」と、事情とおわびを添える

既習の文型との違い

  • 〜わけにはいかない(初中級第4課)「〜わけにはいかない」は、規則や立場、相手への気持ちから「してはいけない・できない」と自分を止める形です。「〜どころではない」は、もっと大変なことがあって、時間や気持ちの余裕がない状態を言います。「みんなが働いているから、休んでいるわけにはいかない」は自分で止めている、「仕事がたまっていて、休んでいるどころではない」は余裕がない、と言い換えて比べさせます。
  • 〜最中(初中級第4課)「〜最中」は「ちょうど〜しているとき」という時間を言い、そのときに起きたことが後ろに続きます。「〜どころではない」は、今の状態として余裕がないことを言い、文はそこで終わります。「引っ越しの最中に電話が来た」と「引っ越しで、ほかのことどころではない」を並べて、後ろに続くものの違いを見せます。
関連する文型

学習項目 5 〜ことはない

意味・はたらき学習項目 5

初中級で学んだ「〜ことはない」を、この課では相手の「〜しなければならない」という思い込みを打ち消す形として使います。「そんなに急いで返事することはない」は「そこまでする必要はない」という意味で、困っている相手や気をつかいすぎる相手を安心させるときによく使います。「何も〜ことはない」「わざわざ〜ことはない」と強めると、「そこまでしなくてもいいのに」という少しあきれた気持ちや軽い非難が入ることもあります。過去の「〜ことはなかった」は「しなくてもよかったのに(したけれど)」という意味です。「〜なくてもいい」と意味は近いですが、「〜ことはない」のほうが「心配しなくていい」と言い切る調子が強く、目上の人にはあまり使いません。

接続

Vる(辞書形)+ことはない(丁寧には「〜ことはありません」。会話では「〜ことないよ」と「は」を落とすこともある)

形
Vる ことはない(あやまることはない)何も/わざわざ Vる ことはないVる ことはなかった(しなくてもよかったのに)そんなに Vる ことはないよ(安心させる)

導入

  • 初中級の意味を思い出す学生に「宿題を忘れた友達が、先生に何回もあやまっています。何と言いますか」と聞き、初中級で学んだ「そんなにあやまることはないよ」を引き出す。「ことはない = する必要はない」と板書したうえで、相手は「しなければならない」と思っていること、それを打ち消してあげる形だ、と矢印で確かめる。
  • 似た形を三つ並べる「行くことはない」「行かないことはない」「行ったことはない」を3行で板書し、「必要がない」「少しは行く」「経験がない」の3つの意味のカードを学生に貼らせる。辞書形・ない形・た形のどれに付いているかだけで意味が変わることを、色分けで見せる。

板書案

Vる + ことはない = する必要はない(相手を安心させる)
すぐ直せるから、そんなに気にすることはないよ。
〔赤〕辞書形+ことはない=必要がない 〔青〕ない形+ことはない=少しはする 〔緑〕た形+ことはない=経験がない
Vる ことはなかった(のに)=しなくてもよかった
何も/わざわざ 〜ことはない(少しあきれた気持ち)

場面と発話(自作)

  • 入社したばかりの後輩が、毎朝一時間も早く会社に来ている。先輩が言う。そんなに早く来ることはないよ。始業の15分前で大丈夫だから。
  • 書類の小さな間違いで落ち込んでいる後輩に、先輩が言う。すぐ直せる間違いだから、そんなに気にすることはないよ。
  • 雨の中、忘れ物の傘を家まで届けてくれた友達に言う。こんな雨の中、わざわざ届けに来ることはなかったのに。でも、ありがとう。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「気をつかいすぎる人」のカード(駅まで迎えに来ようとする・高いお土産を買おうとする・徹夜で準備しようとする)を読み上げ、相手を安心させる一言を「〜ことはないよ」で言わせ、「〜でいいから」と代わりのやり方を一文足させる。次に、そのカードの人が実際にしてしまった後の場面にして、「〜ことはなかったのに」で言い直させる。

  1. 口頭教師が「気をつかいすぎる人」をしぐさで見せ、全体で「そんなに〜ことはないよ」と言わせてから、個人で「〜でいいから」と代わりのやり方を足させる。キューの例は、何度も頭を下げてあやまる、重い荷物を全部一人で持とうとする、走って急いで来る、高いお土産の箱を出す。動詞が辞書形で出るか、一つずつ確かめる。
  2. ペアAは心配事のカード(あしたの発表が不安・日本語の間違いが恥ずかしい・プレゼントが安すぎないか心配)を読み、Bが「〜ことはないよ。〜から」と理由を付けて安心させる。次に同じカードを「もうしてしまった」場面に変え、Bが「〜ことはなかったのに」と言い、Aはお礼かおわびで返す。2枚ずつで交替する。
  3. 産出「新しく来た人へのアドバイスカード」。初めて日本に来た人がしがちな心配(毎日全部自分で料理しなければ・いつも敬語で話さなければ など)を一つ選び、「〜ことはありません。〜ても大丈夫です。でも、〜ほうがいいですよ」と3文で書いて、教室の壁に貼る。教師が見るのは、辞書形で付いているか(ない形と混ざっていないか)、目上の人あての文になっていないか、止めたあとに代わりのやり方が書けているか。

つまずきと手当て

  • 「〜ないことはない」「〜たことはない」と混同する(「行くことはない」を「行ったことがない」の意味に取る)。前の形が辞書形なら必要がない、ない形なら少しはする、た形なら経験がない、と導入の3行の色分けに戻す
  • 目上の人に使って、上から言っているように聞こえる。部長に「部長が来ることはありません」と言うと、来る必要がないと決めつけるように聞こえるので、「お越しいただかなくても大丈夫です」のように言い換える
  • 「心配しなくていい」と言うつもりで「心配しないことはない」と、前にない形を付けてしまう。文としては成り立つが「少しは心配する」という別の意味になるので、必要がないと伝えるときは「心配することはない」と辞書形にする

既習の文型との違い

  • 〜てもいいです/〜なくてもいいです(初級Ⅰ第13課)「〜なくてもいいです」は「しなくても問題ない」と許可の形で言うだけで、相手の気持ちには踏み込みません。「〜ことはない」は、相手が「しなければ」と思っていることを打ち消して安心させる、言い切りの強い形です。目上の人には「〜なくても大丈夫です」を使わせ、「〜ことはない」は友達や後輩に、と場面で分けます。
  • 〜ほうがいい(初中級第14課)「〜ほうがいい」は、することをすすめる形です。「〜ことはない」は反対に、することを止める形です。相談の場面では「〜ことはないよ。〜ほうがいいと思う」と二つを続けて、止めてから代わりをすすめると自然になります。
関連する文型

語彙の扱い

この課の形は、前に来る語の種類で使いやすさが変わります。「〜ないことはない」は可能形(作れる・行ける・食べられる)と、「〜わけではない」は「全部・みんな・いつも・必ずしも・全く」のような程度や範囲を表す副詞と、「〜どころではない」は旅行・花見・勉強のような活動の名詞と組んで出ることが多いので、カードにするときはかたまりで作ります。悩みや相談の場面で使う言葉(無理・あきらめる・工夫する・方法 など)を先に板書しておくと、目標の活動に入りやすくなります。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 無理(な)(むり) することがとても難しくて、できそうにないことです。 〜をする・〜な計画
    引っ越しの準備を一人でしようとしている友達と話す。
    一人で全部やるのは無理だと思ったけど、手伝ってもらえば、できないことはないね。
  • 工夫します(くふうします) もっといい方法を考えて、やり方を変えることです。 やり方を〜・料理を〜
    アルバイトが忙しくて、勉強の時間が取れないと悩んでいる留学生に、先生が言う。
    時間の使い方を少し工夫すれば、両立できないことはないですよ。
  • あきらめます(あきらめます) 「もうできない」と思って、続けるのをやめることです。 夢を〜・途中で〜
    試験に一回落ちて、もうやめようと思っている友達に言う。
    一回落ちただけで、あきらめることはないよ。次はきっと大丈夫。
  • 育てます(そだてます) 植物や動物、子どもを、大きくなるまで世話することです。 野菜を〜・花を〜・子どもを〜
    日当たりの悪い部屋に住んでいる友達が、植物を置きたいと言っている。
    サボテンなら、この部屋でも育てられないことはないよ。
  • 余裕(よゆう) 時間やお金、気持ちに残りがあって、ほかのこともできる状態です。 〜がある・〜がない・時間の〜
    試験の週に、友達から旅行に誘われた。
    今週は試験で余裕がないから、旅行どころじゃないんだ。
  • 締め切り(しめきり) 書類や作品を出さなければならない、最後の日や時間です。 〜が近い・〜に間に合う・〜を守る
    会社で、同僚から飲み会に誘われた。
    報告書の締め切りがあしたなので、飲み会どころではないんです。
  • 気にします(きにします) 小さいことを心配して、ずっと考えてしまうことです。 失敗を〜・人の目を〜
    会議で一回言い間違えて、落ち込んでいる後輩に言う。
    誰でも言い間違えるから、そんなに気にすることはないよ。
  • 遠慮します(えんりょします) 相手のことを考えて、したいことをしないでおくことです。 参加を〜・お酒を〜
    家に来た友達が、料理になかなか手をつけない。
    遠慮することはないよ。たくさん作ったから、どんどん食べて。
  • わざわざ(わざわざ) しなくてもいいのに、時間や手間をかけて特別にする様子です。 〜来る・〜届ける・〜買いに行く
    友達が、自分のために遠くの店まで本を買いに行ってくれた。
    わざわざ買いに行くことはなかったのに。でも、ありがとう。
  • 必ずしも(かならずしも) 後ろに「〜わけではない」などが来て、「いつもそうだとは言えない」という意味になります。 〜正しいわけではない・〜いいわけではない
    高い店とふつうの店のどちらに行くか、友達と相談している。
    値段が高い店が、必ずしもおいしいわけではないよ。
  • 決めつけます(きめつけます) よく確かめないで、「〜だ」と一つの考えに決めてしまうことです。 人を〜・最初から〜
    「留学生はみんなお金がないでしょう」と言われた留学生が答える。
    そう決めつけないでください。みんながお金がないわけではありませんよ。
  • 全く(まったく) 後ろに「〜ない」が来て、「少しも〜ない」という意味になります。 〜知らない・〜分からない
    「料理はしないんですか」と聞かれた会社員が答える。
    全くしないわけではありません。週末は自分で作りますよ。

宿題と次のコマ

宿題は、自分や友達がいま「無理だ」「もうだめだ」と思っていることを一つ選び、それに答える短い相談の会話(8〜10行)を書くこと。答える側は、「〜ないことはない」「〜わけではない」「〜ことはない」を必ず一回ずつ使い、全部は否定せずに別のやり方を一つ提案させる。「〜というよりも」「〜どころではない」は使える場所があれば入れる。次のコマの最初にペアで読ませ、聞いた学生が「どの文が、何を否定していたか(全部か、一部分か)」を言って振り返ります。

よくある質問

  • 「〜ないことはない」と「〜わけではない」の違いは、どう教えればいいですか?

    向きで分けます。「〜ないことはない」は「少しはできる・する」と自分から認める答えで、結局はできる・する側に立ちます。「〜わけではない」は相手や自分の思い込みを打ち消す答えで、そのあとに本当の理由や一部分を続けます。同じ場面で二つの文を並べ、「この人は、するの? しないの?」「誰の思い込みを直していますか」と聞いて選ばせると区別がつきます。

  • 「〜ことはない」「〜ないことはない」「〜たことはない」を学習者が混同するときは?

    前に付く形の色を分けて板書します。辞書形なら「する必要はない」、ない形なら「少しはする・できる」、た形なら「経験がない」です。3つの文を並べて意味のカードを学生に貼らせると、形を見ただけで意味を選べるようになります。誤りが出たら、まず前の形が何形かを言わせてから直します。

  • 第32課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と「〜というよりも」「〜ないことはない」「〜わけではない」まで、2コマ目は「〜どころではない」「〜ことはない」と相談のロールプレイ、まとめです。いちばん時間がかかるのは「〜わけではない」で、「〜ないことはない」との対の確認まで1コマ目に入れておくと、2コマ目の活動が楽になります。

  • 「〜どころではない」と「〜どころか」の違いを聞かれたら、どう答えますか?

    「〜どころではない」は「今はそれをする余裕がない」で文を終える形、「〜どころか」は後ろに、もっと程度が上のことや反対のことが続く形だ、と答えます。この課では「〜どころではない」だけを練習し、「〜どころか」は第39課で扱うので、ここでは文の終わり方の違いを一言伝えるだけにします。

  • この課の板書はどう組めばいいですか?

    最初に黒板の上に「言い方を直す」「少しは認める」「思い込みを打ち消す」「余裕がない」「必要がない」の5つの箱を作り、学習項目ごとに文型の枠と例文を箱の中に入れていきます。「〜ないことはない」と「〜わけではない」の箱は隣に並べ、同じ場面の例文を一組ずつ書いて対にします。まとめのときに箱を指しながら、どこを否定しているかを学生に言わせます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。