物事の範囲をしぼる(限定する)言い方と、しぼらない(範囲を広げる・条件を問わない)言い方を使い分け、募集・案内・規則のような説明の文章から「だれが・いつ・どんな条件で」を正確に読み取れるようにする課です。5つの項目は、「〜に限り」「〜限り(は)」のしぼる側と、「〜に関わらず」「〜を(は)問わず」「〜に限らず」「〜のみならず」のしぼらない・広げる側に分けて板書しておくと整理しやすくなります。とくに「限」の字が付く形が三つあり、名詞に付く「Nに限り(=Nだけ)」と、動詞や状態に付く「V限り(=その状態が続く間は)」は意味が違うので、課の早いうちに並べて見せます。中級の最終課なので、最後に、この一冊で学んだ形を働き(気持ち・原因・時・対照・限定など)ごとに振り返る時間を取ります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 15分 | 教師が自作のアルバイト募集のお知らせ(「年齢・経験は問いません」「週3日以上働ける方に限り交通費全額支給」のような短い文を入れたもの)を配り、「だれが応募できますか」「交通費をもらえるのはだれですか」と聞く。答えを黒板の「しぼる」「しぼらない」の二つの箱に分けて書き、この課の5つの形がどちらかに入ると予告する |
| 学習項目1・5 〜に関わらず/〜を(は)問わず | 25分 | 「天気がいい日も悪い日も → 試合をする」を矢印で書き、「天候に関わらず」にまとめる。続けて初中級で学んだ「〜は問わず」を思い出させ、「〜を問わず」と並べて、どちらも違いを条件にしない形だと確かめる。動詞の対(するしない)に付けやすいのは「〜に関わらず」のほうだと押さえる |
| 学習項目2 〜に限って/限り/限らず | 30分 | 同じ「Nに限」の形が三つあることを板書で見せ、「に限り=だけ(お知らせ)」「に限って=その時だけ困ったことが(会話)」「に限らず=だけでなく」の三行にする。お知らせの文と、困った経験の会話を一つずつ作って使い分けを確かめる |
| 学習項目3 〜のみならず | 20分 | 「に限らず」と並べ、「〜だけでなく、〜も」の書き言葉の形として入れる。名詞にも文にも付くこと、作文や報告で使うことを、会話の文を作文の文に書き直す練習で確かめる |
| 学習項目4 〜限りは/限り | 25分 | 「Nに限り」と「V限り」を上下に並べ、前に来るものと意味の違いを確かめる。「この寮に住んでいる限り」「練習を続ける限り」のように、ある状態が続く間ずっと、という条件として導入し、「〜ない限り」の形も入れる |
| 目標の活動(説明の文を読む) | 45分 | 自作の募集・利用規則・奨学金の案内を3種類配り、ペアで「対象になる人」「対象にならない人」「いつまで有効か」を表にまとめさせる。そのあと、自分のクラスや寮の新しい決まりを、この課の形を3つ以上使って短いお知らせの文に書かせる |
| まとめと中級の振り返り | 20分 | 黒板の「しぼる」「しぼらない」の箱に5つの形を置き直す。続けて、中級で学んだ形を「気持ち」「原因・理由」「時」「対照」「限定」などの働きの札に分けて貼らせ、使えると思う形に丸を付けさせて、これからの学習の目安にする |
前に来る事柄の違いや程度が、後ろのことの条件にならないこと、つまり「〜に関係なく」という意味を表します。前には、天候・年齢・性別・経験・量のようにいろいろな値や段階がある名詞か、「するしない」「行く行かない」「多い少ない」のように対立する二つ、または「〜かどうか」が来ます。募集・案内・規則の文章でよく使われ、「天候に関わらず実施します」のように、どんな場合でも同じだと知らせるときに使います。漢字では「関わらず」「拘らず」とも、ひらがなで「かかわらず」とも書きます。
N(幅のある名詞)/対立する二つ(Vる Vない・い形の反対の語の組 など)/〜かどうか +に関わらず(「〜に関わりなく」とも言う)
「幅のある名詞」のカード(天候・年齢・国籍・成績・金額)と「対立する二つ」のカード(する/しない・できる/できない・多い/少ない)を引かせ、お知らせの一文を「〜に関わらず」で作らせる。言えたら、同じ内容を「〜を問わず」(学習項目5)でも言えるかどうかを考えさせ、名詞なら言える、動詞の対なら「に関わらず」のほうが自然、と確かめる。
名詞に「に限る(=そのものだけにしぼる)」が付いた形で、三つの言い方があります。「Nに限り」は「Nだけ」という限定で、「先着20名に限り」「本日に限り」のように、お知らせや店の案内などの改まった文でよく使います。「Nに限って」も限定ですが、会話では「急いでいる日に限って電車が遅れる」のように、ほかの時は大丈夫なのに、よりによってその時だけ困ったことが起こるという不満や意外な気持ちを込めて言うことが多く、「うちの子に限ってそんなことはしない」のように、その人だけはそうではないと信じる言い方もあります。「Nに限らず」は反対に、しぼらないこと、つまり「Nだけでなく(ほかも)」という意味で、後ろに「も」「みんな」「広く」などが来ます。
N+に限って/に限り/に限らず(「に限って」「に限り」は時を表す名詞や人を表す名詞に付くことが多い)
「だけ」「その時だけ困ったことが」「だけでなく」の三つの札を前に貼り、教師が状況を言う(「この割引は平日だけです」「急ぐ時だけエレベーターが来ない」「若い人だけでなく、お年寄りにも人気」)。学生は札を選んで「に限り」「に限って」「に限らず」の文に言い直す。慣れたら学生同士で「〜に限って〜」の困った経験を一つずつ話させる。
「のみ」は「だけ」の書き言葉で、「〜のみならず」は「〜だけでなく」の書き言葉・改まった言い方です。前のことに加えて、後ろのことも当てはまる、と範囲を広げて言い、後ろには「〜も」「〜まで」が来ることが多い形です。名詞にも文にも付くので、「この町は観光地として有名であるのみならず、住みやすさでも知られている」のように、二つの性質や出来事を重ねて述べられます。作文・レポート・報告・ニュースなどで使い、友達との会話では「〜だけじゃなくて」がふつうです。文の初めに「のみならず、」と置いて「それだけでなく」の意味で使うこともあります。
N/普通形+のみならず(な形とNは「である」を付けることが多い:便利であるのみならず・学生であるのみならず)
二つの短い会話文(「この町は静か。それに、交通も便利」「先輩は道を教えてくれた。それに、駅まで送ってくれた」)を渡し、「〜のみならず、〜も/まで」の一文に書き換えさせる。な形・名詞の文では「である」を入れるかどうかを毎回確かめ、最後に同じ文を声に出して「だけじゃなくて」に戻させ、硬さの違いを耳で確かめる。
動詞や状態を表す言葉に付いて、「その状態が続いている間は(ずっと)」という条件を表します。「日本に住んでいる限り、日本の法律を守らなければならない」のように、前の状態が続く間は後ろのことが変わらない、という意味です。「は」を付けた「〜限りは」は、その条件をはっきり取り立てて言う感じになります。「〜ない限り」の形では「〜しなければ(ずっと)〜ない」という意味になり、「本人が来ない限り、書類は受け取れません」のように、後ろには「〜できない」「〜ない」が来ることが多くあります。名詞に付く「Nに限り(=Nだけ)」とは意味が違うので注意します。なお、「できる限り(=できるだけ)」「わたしの知る限り(=知っている範囲では)」のように、範囲を表す使い方もあります。
Vる/Vない/Vている +限り(は)、い形い/な形である/Nである +限り(は)
「状態」のカード(日本にいる・この会社で働いている・学生である・毎日練習する)と「ずっと変わらないこと」のカード(法律を守る・社員証を付ける・学割が使える・上手になる)を組み合わせて「〜限り(は)、〜」の文を作らせる。次に「〜ない限り〜ない」で、自分の目標が達成できない条件を一つずつ言わせる(「毎日少しでも読まない限り、漢字は覚えられない」)。
初中級で学んだ「〜は問わず」の続きで、「問わず」は「問わない(=問題にしない・条件にしない)」の書き言葉の形です。「〜を問わず」は「〜に関係なく、どれでも・だれでも」という意味で、前には年齢・性別・国籍・経験・季節のようないろいろな種類や値がある名詞や、男女・昼夜・内外・有無のような対になった名詞が来ます。募集・案内・規則の文章でよく使い、「経験を問わず、歓迎します」のように範囲の広さを示します。「は」を使った「〜は問わず」「〜は問いません」は、ほかの条件はあるけれど「その点は」問題にしない、という取り立ての響きがあり、募集の文の条件の欄によく見られます。意味は「〜に関わらず」と近いですが、「〜を問わず」は名詞に付くのがふつうで、動詞の対(するしない)には「〜に関わらず」のほうが使われることが多い形です。
N(幅のある名詞・対になった名詞)+を問わず/は問わず(文の終わりでは「〜は問いません」「〜を問いません」)
自作の募集のお知らせを3枚(料理教室・通訳ボランティア・アルバイト)配り、「条件になること」と「条件にならないこと(を問わず・は問いません)」を表に分けさせる。そのあと、自分がクラスでイベントを開くとしたら、と考えて「〜を問わず」「〜は問いません」を使った募集の文を2行書かせ、ほかの学生が「わたしは応募できますか」と質問して確かめる。
この課の言葉は、募集・案内・規則の文章によく出る硬い語(対象・応募・条件・有無・支給・先着・実施・有効 など)を中心に、カードにして「〜を問わず」「〜に限り」と組み合わせた形で練習させます。読むときは、お知らせの中で「だれが」「いつ」「どんな条件で」を示す語に印を付けさせ、語の意味だけでなく、文章のどこに条件が書かれているかを見つける手がかりとして扱います。
宿題は二つ。一つ目は、自分の住む町や学校の実際のお知らせ(掲示・ウェブサイト・チラシ)を一つ選び、「対象になる人」「対象にならない人」「期間や条件」を表にまとめて、この課の形が使われているところに線を引いてくること。二つ目は、中級の最終課として、この一冊で学んだ形の中から、自分がよく使えるようになった形を三つ、まだ自信がない形を三つ選び、それぞれ一文ずつ例文を作って、200〜300字の振り返りの文章にまとめること。次のコマでは、集めたお知らせを読み合って条件を確かめ、振り返りで「自信がない」に挙がった形を全体で復習します。
「〜に関わらず」と「〜を問わず」の違いは何ですか?
意味はどちらも「〜に関係なく」でほとんど同じで、お知らせや募集の文で入れ替えられることが多くあります。違いは前に来るもので、「〜を問わず」は年齢・国籍・男女のような名詞に付くのがふつうですが、「〜に関わらず」は名詞のほかに「参加するしない」「行くかどうか」のような動詞の対や疑問の形にも付きます。板書では二つを一つの表にして、前に来るものの列だけを比べさせると整理しやすくなります。
「〜に限り」「〜に限って」「〜限り」はどう教え分ければいいですか?
「Nに限り」はお知らせの「Nだけ」、「Nに限って」は会話で「その時だけ困ったことが起こる」という不満、「V限り」は「その状態が続く間は」という条件だと、働きで三つに分けます。見分ける手がかりは前に来るもので、「に」が付いて名詞が前にあれば限定、「に」が無く動詞や「〜である」が前にあれば条件です。黒板で「留学生に限り」と「留学生である限り」を上下に並べ、「国に帰ったらどうなるか」を聞いて違いを確かめさせます。
「〜に関わらず」と「〜にもかかわらず」を混同する学習者にはどう説明しますか?
「にもかかわらず」はすでに起こった一つの事実に対して「それなのに」と言う形で、「に関わらず」は二つ以上の場合をまとめて「どれでも同じ」と言う形です。「熱があったにもかかわらず学校に来た」と「熱があるかどうかに関わらず体温を測る」を並べ、「熱は本当にありましたか」と聞くと、前の文にしか事実が無いことに気づきます。「も」の一字で意味が変わるので、板書ではその字を赤で囲んでおきます。
「〜のみならず」と「〜ばかりか」「〜だけでなく」はどう違いますか?
三つとも範囲を広げる言い方ですが、「だけでなく」は会話でも文章でも使えるふつうの形、「のみならず」はレポートや報告で使う改まった書き言葉です。「ばかりか」は第38課の形で、「その上さらに」という驚きや悪いことが重なる気持ちが乗りやすくなります。作文の指導では、事実を並べるだけなら「のみならず」、気持ちを出したいなら「ばかりか」、会話なら「だけじゃなくて」と場面で選ばせます。
この課は何コマで終わりますか?中級の最終課の振り返りはどうしますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜に関わらず」「〜を問わず」「〜に限って/限り/限らず」まで、2コマ目で「〜のみならず」「〜限りは/限り」、説明の文の読み取りと募集文の作成、振り返りまで進めます。振り返りは、中級の形を「気持ち」「原因・理由」「時」「対照」「限定」などの働きの札に分けて貼らせ、自分が使える形に丸を付けさせると、次の学習の目安になります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。