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学ぼう!にほんご 中級 第40課「分かり合おうとしない限りは、「新しい国」を作ることはできない」の教案

『学ぼう!にほんご 中級』

物事の範囲をしぼる(限定する)言い方と、しぼらない(範囲を広げる・条件を問わない)言い方を使い分け、募集・案内・規則のような説明の文章から「だれが・いつ・どんな条件で」を正確に読み取れるようにする課です。5つの項目は、「〜に限り」「〜限り(は)」のしぼる側と、「〜に関わらず」「〜を(は)問わず」「〜に限らず」「〜のみならず」のしぼらない・広げる側に分けて板書しておくと整理しやすくなります。とくに「限」の字が付く形が三つあり、名詞に付く「Nに限り(=Nだけ)」と、動詞や状態に付く「V限り(=その状態が続く間は)」は意味が違うので、課の早いうちに並べて見せます。中級の最終課なので、最後に、この一冊で学んだ形を働き(気持ち・原因・時・対照・限定など)ごとに振り返る時間を取ります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜に関わらず」「〜を(は)問わず」で、年齢・経験・天候などの違いが条件にならないことを言い、募集や案内の文で「だれでも・いつでもよい」という条件を読み取れる
  • 「〜に限り」でお知らせの「〜だけ」という限定を読み取り、「〜に限って」で、ほかの時はいいのにその時だけ困ったことが起こる、という気持ちを会話で言える
  • 「〜に限らず」「〜のみならず」で、範囲が一つにとどまらないことを、話し言葉と書き言葉で言い分けられる
  • 「〜限り(は)」で「その状態が続く間は」という条件を言い、規則や約束の文章で、ある状態でいる間ずっと守ることを読み取れる
  • 中級で学んだ形を働きごとに整理し直し、自分が使いこなせる形とまだ使えない形を見分けられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)15分教師が自作のアルバイト募集のお知らせ(「年齢・経験は問いません」「週3日以上働ける方に限り交通費全額支給」のような短い文を入れたもの)を配り、「だれが応募できますか」「交通費をもらえるのはだれですか」と聞く。答えを黒板の「しぼる」「しぼらない」の二つの箱に分けて書き、この課の5つの形がどちらかに入ると予告する
学習項目1・5 〜に関わらず/〜を(は)問わず25分「天気がいい日も悪い日も → 試合をする」を矢印で書き、「天候に関わらず」にまとめる。続けて初中級で学んだ「〜は問わず」を思い出させ、「〜を問わず」と並べて、どちらも違いを条件にしない形だと確かめる。動詞の対(するしない)に付けやすいのは「〜に関わらず」のほうだと押さえる
学習項目2 〜に限って/限り/限らず30分同じ「Nに限」の形が三つあることを板書で見せ、「に限り=だけ(お知らせ)」「に限って=その時だけ困ったことが(会話)」「に限らず=だけでなく」の三行にする。お知らせの文と、困った経験の会話を一つずつ作って使い分けを確かめる
学習項目3 〜のみならず20分「に限らず」と並べ、「〜だけでなく、〜も」の書き言葉の形として入れる。名詞にも文にも付くこと、作文や報告で使うことを、会話の文を作文の文に書き直す練習で確かめる
学習項目4 〜限りは/限り25分「Nに限り」と「V限り」を上下に並べ、前に来るものと意味の違いを確かめる。「この寮に住んでいる限り」「練習を続ける限り」のように、ある状態が続く間ずっと、という条件として導入し、「〜ない限り」の形も入れる
目標の活動(説明の文を読む)45分自作の募集・利用規則・奨学金の案内を3種類配り、ペアで「対象になる人」「対象にならない人」「いつまで有効か」を表にまとめさせる。そのあと、自分のクラスや寮の新しい決まりを、この課の形を3つ以上使って短いお知らせの文に書かせる
まとめと中級の振り返り20分黒板の「しぼる」「しぼらない」の箱に5つの形を置き直す。続けて、中級で学んだ形を「気持ち」「原因・理由」「時」「対照」「限定」などの働きの札に分けて貼らせ、使えると思う形に丸を付けさせて、これからの学習の目安にする

学習項目 1 〜に関わらず

意味・はたらき学習項目 1

前に来る事柄の違いや程度が、後ろのことの条件にならないこと、つまり「〜に関係なく」という意味を表します。前には、天候・年齢・性別・経験・量のようにいろいろな値や段階がある名詞か、「するしない」「行く行かない」「多い少ない」のように対立する二つ、または「〜かどうか」が来ます。募集・案内・規則の文章でよく使われ、「天候に関わらず実施します」のように、どんな場合でも同じだと知らせるときに使います。漢字では「関わらず」「拘らず」とも、ひらがなで「かかわらず」とも書きます。

接続

N(幅のある名詞)/対立する二つ(Vる Vない・い形の反対の語の組 など)/〜かどうか +に関わらず(「〜に関わりなく」とも言う)

形
Nに関わらず(天候に関わらず・年齢に関わらず・経験の有無に関わらず)Vる Vない に関わらず(参加するしないに関わらず・使う使わないに関わらず)い形の反対の語の組 に関わらず(値段が高い安いに関わらず・量が多い少ないに関わらず)〜かどうかに関わらず(合格したかどうかに関わらず)

導入

  • 「も…も…」を一言にまとめる「晴れの日も、雨の日も、マラソン大会をします」と板書し、「天気は関係がありますか」と聞く。「ない」という答えを受けて「天候に関わらず、マラソン大会を行います」に書き換え、前の二つ(晴れ・雨)をまとめた名詞が「に関わらず」の前に来ることを矢印で示す。
  • 「にもかかわらず」と並べる「熱があったにもかかわらず、学校に来た」と「熱があるかどうかに関わらず、毎朝体温を測る」を並べ、「熱は実際にありましたか」と聞く。前の文は事実に対して「それなのに」と言う形、後ろの文は「どちらでも同じ」と言う形だと確かめ、「も」の一字で意味が変わることを赤で書く。

板書案

〔幅のある名詞/対立する二つ〕 に関わらず、 〔いつも同じこと〕
晴れの日も 雨の日も → 天候 に関わらず、マラソン大会を行います。
行くか行かないか に関わらず、金曜日までに紙を出してください。
〔青〕「も…も…」を一つの名詞にまとめる矢印
〔赤〕熱があった にもかかわらず 学校に来た(=それなのに) 「も」の一字を丸で囲む

場面と発話(自作)

  • 市民体育館の入口に、来月のスポーツ教室のお知らせが貼ってある。年齢・経験に関わらず、どなたでもご参加いただけます。
  • 日本語学校の先生が、翌週の遠足について学生に説明している。行くか行かないかに関わらず、金曜日までにこの紙を出してください。
  • 会社の新人研修で、担当者が出席の決まりを説明する。前の仕事の経験があるないに関わらず、全員この研修を受けることになっています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「幅のある名詞」のカード(天候・年齢・国籍・成績・金額)と「対立する二つ」のカード(する/しない・できる/できない・多い/少ない)を引かせ、お知らせの一文を「〜に関わらず」で作らせる。言えたら、同じ内容を「〜を問わず」(学習項目5)でも言えるかどうかを考えさせ、名詞なら言える、動詞の対なら「に関わらず」のほうが自然、と確かめる。

  1. 口頭教師が「〜も〜も」の組を言い、学生は全体でまとめの名詞を付けて「〜に関わらず」と言う。キューは「晴れの日も雨の日も」→天候に関わらず、「子どもも大人も」→年齢に関わらず、「初めての人も慣れた人も」→経験に関わらず、「行く人も行かない人も」→行く行かないに関わらず。言えたら教師が後ろの文(「参加できます」「紙を出してください」)を足し、全体で一文を2回言ってから個人に当てる。最後に「〜かどうかに関わらず」の形(合格したかどうかに関わらず)を3つ言わせる。
  2. ペアAにはイベントのお知らせのカード(条件の欄が書いてある)、Bには「質問する人」の役のカード(7歳の子ども・日本語が初めての人・当日来られるか分からない人 など)を渡す。Bが自分の立場で「〜でも参加できますか」と聞き、Aはカードを見て「年齢に関わらず、参加できますよ」のように答える。4問終わったらカードを替えて役を交替する。答えに条件がある場合(「申し込みは必要です」)も一言足させる。
  3. 産出「どなたでも歓迎ポスター」。クラスで開く行事(スポーツ大会・料理の会・日本語の発表会など)を一つ決め、「〜に関わらず」を2か所以上使ったお知らせを書いて壁に貼り、ほかの学生が読んで「わたしは参加できるか」を答える。教師が見るのは、前が幅のある名詞か対立する二つになっているか(「二十歳に関わらず」になっていないか)、対の二つを「と」でつないでいないか、「にもかかわらず」と混ぜていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「にもかかわらず」と混ぜる(「*熱があったに関わらず、学校に来た」)。すでに起こった一つの事実に「それなのに」と言うときは「にもかかわらず」。「に関わらず」は「どちらでも同じ」で、前に一つの事実は来ない、と二つの文を並べて確かめる
  • 前に一つに決まった値を置く(「二十歳に関わらず」)。それでは何と何の違いが関係ないのかが伝わらない。「年齢に関わらず」「二十歳以上か未満かに関わらず」のように、幅のある名詞か二つの対にする
  • 対立する二つを「と」でつなぐ(「行くと行かないに関わらず」)。「行く行かない」と続けて並べるか、「行くかどうか」「行くか行かないか」の形にする、と板書の形に戻す

既習の文型との違い

  • 〜は問わず…(初中級 第19課)「年齢は問わず」は名詞に付いて、その点を条件にしないことを言う形で、意味は「〜に関わらず」とほとんど同じです。違いは前に来るもので、「に関わらず」は「するしない」「行くかどうか」のような動詞の対や疑問の形にも付けられます。学習者が「来るか来ないかは問わず」と言ったら、誤りではないものの、「来るか来ないかに関わらず」のほうが自然だと示します。
  • 〜にしろ(第29課)「行くにしろ行かないにしろ、連絡してください」は、二つの場合を一つずつ挙げて「どちらでも」と言う形で、話し言葉でも使えます。「に関わらず」は二つをひとまとめにして前に置き、お知らせや規則の文に出やすい形です。友達同士の会話で「行く行かないに関わらず、連絡してね」と言うと少し硬く聞こえるので、会話なら「にしろ」や「〜ても〜ても」を使わせます。
  • 〜ても(第33課)「雨が降っても、試合をします」は一つの場合だけを取り上げて「その場合でも」と言う形です。「天候に関わらず」は晴れも雨も全部の場合をまとめて「どの場合でも同じ」と言います。学習者が「雨に関わらず、試合をします」と言ったら、一つの場合を言いたいなら「雨が降っても」、全部の場合なら「天候に関わらず」と二つに分けて示します。
関連する文型

学習項目 2 〜に限って/限り/限らず

意味・はたらき学習項目 2

名詞に「に限る(=そのものだけにしぼる)」が付いた形で、三つの言い方があります。「Nに限り」は「Nだけ」という限定で、「先着20名に限り」「本日に限り」のように、お知らせや店の案内などの改まった文でよく使います。「Nに限って」も限定ですが、会話では「急いでいる日に限って電車が遅れる」のように、ほかの時は大丈夫なのに、よりによってその時だけ困ったことが起こるという不満や意外な気持ちを込めて言うことが多く、「うちの子に限ってそんなことはしない」のように、その人だけはそうではないと信じる言い方もあります。「Nに限らず」は反対に、しぼらないこと、つまり「Nだけでなく(ほかも)」という意味で、後ろに「も」「みんな」「広く」などが来ます。

接続

N+に限って/に限り/に限らず(「に限って」「に限り」は時を表す名詞や人を表す名詞に付くことが多い)

形
Nに限り(先着20名に限り・本日に限り・平日に限り)=Nだけ(お知らせ)Nに限って(大事な日に限って・忙しい時に限って)=その時だけ困ったことがNに限って〜ない(あの人に限ってうそはつかない)=その人だけはNに限らず、〜も(日本人に限らず、留学生も)=Nだけでなく

導入

  • お知らせの「に限り」からスーパーのチラシのような板書「本日に限り、卵1パック100円」を見せ、「あしたも100円ですか」と聞く。「きょうだけ」という答えから「に限り=だけ」と書き、同じ形で「平日に限り」「先着10名に限り」を学生に作らせる。
  • 教師の「ついてない日」の話教師が「ふだんは傘を持っているのに、傘を忘れた日に限って雨が降るんですよ」と困った顔で話し、「先生はうれしいですか」と聞く。「その時だけ悪いことが起こる、不満な気持ち」と板書し、続けて「旅行に限らず、出かける日はいつもそう」と言って、「に限らず=だけでなく」を三行目に足す。

板書案

Nに限り = Nだけ(お知らせ) 本日に限り、卵1パック100円
Nに限って = その時だけ困ったことが(会話) 傘を忘れた日に限って雨が降る
Nに限らず = Nだけでなく、〜も 子どもに限らず、大人も参加できる
〔赤〕三行の「に限」を縦にそろえて丸 〔青〕限らず の後ろの「も」に下線
〔黄〕文の終わりの「〜に限る」(冷たいそばに限る=いちばんよい)は別もの

場面と発話(自作)

  • 大学の図書館の入口に、試験期間の開館時間のお知らせが出ている。試験期間中に限り、夜10時まで開館します。
  • 大事な面接の朝、電車が止まって遅れそうになった留学生が、友達にメッセージを送る。どうして、こういう日に限って電車が止まるんだろう。
  • 地域の防災訓練の案内を、町内会の役員が説明している。この訓練は、子どもに限らず、どなたでも参加できます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「だけ」「その時だけ困ったことが」「だけでなく」の三つの札を前に貼り、教師が状況を言う(「この割引は平日だけです」「急ぐ時だけエレベーターが来ない」「若い人だけでなく、お年寄りにも人気」)。学生は札を選んで「に限り」「に限って」「に限らず」の文に言い直す。慣れたら学生同士で「〜に限って〜」の困った経験を一つずつ話させる。

  1. 口頭黒板の「だけ」「その時だけ困ったことが」「だけでなく」の三つの札を指しながら、教師が短い状況を言い、学生は全体で形を選んで言い直す。キューは「きょうだけ半額」→本日に限り半額です、「予約した人だけ入れる」→予約した方に限り入場できます、「急いでいる時だけバスが来ない」→急いでいる時に限ってバスが来ない、「若い人だけでなく、お年寄りにも人気」→若い人に限らず、お年寄りにも人気です。全体で言えたら札を外し、教師が状況だけ言って個人に当てる。
  2. ペア「ついてない日」の話。Aが「〜日に限って、〜」で困った経験を一つ言い(試験の日に限って目覚ましが鳴らなかった)、Bは「それは大変でしたね。わたしも〜に限って〜ことがあります」と自分の経験を一つ返す。3往復したら役を替える。次にAがお店の店員、Bが客になり、Aが「今週に限り〜」「雨の日に限り〜」とサービスを説明し、Bは「〜に限らず、〜もいいですか」と聞き返す。
  3. 産出「本日限定チラシ作り」。学生は小さなグループで架空の店を一つ決め、「〜に限り」の限定サービスを2つ、「〜に限らず」で客の範囲を広げる一文を1つ入れたチラシを書いて発表する。発表のあとに、店の人として「〜に限って〜」で困った日の話を一言付け加える。教師が見るのは、「に限り」「に限らず」の前が名詞になっているか、「に限らず」のあとに「も」が置かれているか、会話の「に限って」が困ったことや意外なことに使われているかの3点。

つまずきと手当て

  • 会話の「に限って」を、ただうれしいことに使う(「誕生日に限って、プレゼントをもらった」)。誤りではないが、会話の「に限って」はふつう困ったことや意外なことを言うので、ただうれしいことなら「誕生日だけは」などのほうが自然
  • 「に限らず」のあとに「も」を落として、範囲が広がったことが伝わらない(「子どもに限らず、大人が参加できる」)。「大人も」のように「も」を置くと「だけでなく」の対がはっきりする
  • 動詞の文にそのまま付ける(「*雨が降ったに限らず、風も強かった」)。この形の前は名詞。文に付けて「だけでなく」と言いたいときは「〜のみならず」(学習項目3)や「〜だけでなく」を使う
  • 「夏は冷たいそばに限る」の「に限る」(=いちばんよい)と取り違える。文の最後に「に限る」が来るときは「それがいちばんだ」という意味になることがある、と一言添える

既習の文型との違い

  • 〜しかない(初中級 第14課)「しか」は後ろに否定が来て「ほかに無い」と範囲を閉じる言い方で、残念さがにじむことも多い形です。「Nに限り」は案内の中で対象をしぼるだけで、後ろは肯定の文のままです。学習者が「*平日しか割引があります」と言ったら、後ろに否定が無いので誤りだと示し、「平日に限り割引があります」か「平日だけ割引があります」に直させます。
  • 〜ばかりか(第38課)「ばかりか」は文にも名詞にも付き、「Aだけでもすごいのに、Bまで」と話し手の驚きを込めて範囲を広げます。「Nに限らず」は名詞にだけ付き、驚きは込めずに「Nだけでなく、ほかも」と対象の広さを説明します。お知らせの文で「子どもばかりか大人も参加できます」と書くと驚きが混ざって不自然なので、「子どもに限らず」に直させます。
関連する文型

学習項目 3 〜のみならず

意味・はたらき学習項目 3

「のみ」は「だけ」の書き言葉で、「〜のみならず」は「〜だけでなく」の書き言葉・改まった言い方です。前のことに加えて、後ろのことも当てはまる、と範囲を広げて言い、後ろには「〜も」「〜まで」が来ることが多い形です。名詞にも文にも付くので、「この町は観光地として有名であるのみならず、住みやすさでも知られている」のように、二つの性質や出来事を重ねて述べられます。作文・レポート・報告・ニュースなどで使い、友達との会話では「〜だけじゃなくて」がふつうです。文の初めに「のみならず、」と置いて「それだけでなく」の意味で使うこともあります。

接続

N/普通形+のみならず(な形とNは「である」を付けることが多い:便利であるのみならず・学生であるのみならず)

形
Nのみならず、Nも(国内のみならず、海外からも)Vる/Vた のみならず(荷物を運んでくれたのみならず、部屋の片付けまで手伝ってくれた)い形い のみならず(値段が安いのみならず、品質もよい)な形/N である のみならず(便利であるのみならず、安全でもある)

導入

  • 会話の文を作文の文に「この店は安いだけじゃなくて、おいしいんだよ」と友達に言う文を板書し、「レポートに書くなら?」と聞く。「この店は値段が安いのみならず、味もよい」に書き換えて見せ、「だけじゃなくて → のみならず」「〜も」の対応を色で示す。
  • 「に限らず」と並べる「留学生に限らず、日本人学生も」と「留学生が増えたのみならず、出身国も多様になった」を並べ、前に名詞しか来ないのはどちらかを確かめる。「に限らず」は名詞、「のみならず」は名詞にも文にも付く、と整理する。

板書案

N/普通形 のみならず、 〜も/まで
日本のみならず、多くの国でも見られる。
この店は値段が安いのみならず、味もよい。
〔赤〕な形・N + である のみならず(便利であるのみならず)
〔青〕話す:〜だけじゃなくて → 書く:〜のみならず の矢印

場面と発話(自作)

  • ボランティア活動の報告書に、参加した学生が感想を書く。この活動を通して、日本語が上達したのみならず、地域の人との交流も深まった。
  • 市の広報誌で、新しくできた図書館を紹介している。この図書館は、本を借りられるのみならず、勉強会や展示にも利用できる。
  • 研究発表で、留学生が調査の結果を説明する。この問題は、日本のみならず、多くの国で見られます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

二つの短い会話文(「この町は静か。それに、交通も便利」「先輩は道を教えてくれた。それに、駅まで送ってくれた」)を渡し、「〜のみならず、〜も/まで」の一文に書き換えさせる。な形・名詞の文では「である」を入れるかどうかを毎回確かめ、最後に同じ文を声に出して「だけじゃなくて」に戻させ、硬さの違いを耳で確かめる。

  1. 口頭教師が会話の文「〜だけじゃなくて、〜も」を言い、学生は全体で書き言葉の「〜のみならず、〜も」に言い換える。キューは「東京だけじゃなくて、大阪でも」→東京のみならず大阪でも、「安いだけじゃなくて、おいしい」→安いのみならず味もよい、「便利なだけじゃなくて、安全」→便利であるのみならず安全でもある、「荷物を運んでくれただけじゃなくて、片付けまで」→運んでくれたのみならず片付けまで手伝ってくれた。な形と名詞のカードでは「である」を入れる練習を個人に当てて繰り返す。
  2. ペアAには会話のメモ(「この寮、駅から近いし、家賃も安いよ」のような2文のメモ)、Bには報告書の書き出しのカードを渡す。Aがメモを読み上げ、Bはそれを「〜のみならず、〜も」の一文にして書き、Aに読んで聞かせる。Aは元の内容が全部入っているか、「も」「まで」で加わったことが分かるかを確かめる。3枚終わったら交替する。
  3. 産出「町の紹介レポート」。自分の国の町か、いま住んでいる町を一つ選び、良いところを「〜のみならず、〜も」で2文、「〜に限らず」で1文入れた150字ほどの紹介文を書く。書けたら、同じ内容を友達に話すつもりで「〜だけじゃなくて」に戻して口で言わせ、書き言葉と話し言葉の違いを本人に確かめさせる。教師が見るのは、な形・名詞の「である」の有無と、後ろに加わったことが「も」「まで」で示されているかの2点。

つまずきと手当て

  • 友達との会話で使って、硬すぎる響きになる。誤りではないが、会話では「〜だけじゃなくて」「〜だけでなく」がふつう。作文・報告・発表で使う形だと場面ごと覚えさせる
  • な形やNに「な」「だ」を付けて続ける(「*便利なのみならず」「*学生だのみならず」)。「である」を付けて「便利であるのみならず」「学生であるのみならず」にする。名詞だけを並べるときは「日本のみならず」とそのまま付けられる
  • 後ろに「も」「まで」を置かず、何が加わったのかがぼやける。「〜のみならず」のあとには、加わったことを「〜も」で示すと文がはっきりする

既習の文型との違い

  • 〜ばかりか(第38課)「ばかりか」も「のみならず」も「だけでなく」と範囲を広げますが、「ばかりか」には「その上さらに」という驚きや、悪いことが重なる気持ちが乗りやすくなります。「のみならず」は気持ちを込めずに、事実を並べて述べる改まった書き言葉です。報告書に「雨ばかりか、風も強かった」と書くと気持ちが出るので、事実だけ伝えたいときは「のみならず」を使わせます。
  • 〜うえに…だ(初中級 第10課)「うえに」は会話でも文章でも使え、「狭いうえに、暗い」のように同じ方向の評価を重ねる形です。「のみならず」は書き言葉で、評価だけでなく出来事や範囲(国内のみならず海外からも)を広げるときにも使います。友達との会話で「この部屋は狭いのみならず暗い」と言うと硬すぎるので、会話なら「うえに」か「だけじゃなくて」に替えさせます。
関連する文型

学習項目 4 〜限りは/限り

意味・はたらき学習項目 4

動詞や状態を表す言葉に付いて、「その状態が続いている間は(ずっと)」という条件を表します。「日本に住んでいる限り、日本の法律を守らなければならない」のように、前の状態が続く間は後ろのことが変わらない、という意味です。「は」を付けた「〜限りは」は、その条件をはっきり取り立てて言う感じになります。「〜ない限り」の形では「〜しなければ(ずっと)〜ない」という意味になり、「本人が来ない限り、書類は受け取れません」のように、後ろには「〜できない」「〜ない」が来ることが多くあります。名詞に付く「Nに限り(=Nだけ)」とは意味が違うので注意します。なお、「できる限り(=できるだけ)」「わたしの知る限り(=知っている範囲では)」のように、範囲を表す使い方もあります。

接続

Vる/Vない/Vている +限り(は)、い形い/な形である/Nである +限り(は)

形
Vている限り(は)(この寮に住んでいる限り・練習を続けている限り)Vない限り(は)〜(後ろは「〜ない」「〜できない」が多い。話し合わない限り、解決しない/雨が降らない限り、試合を行う)Nである限り(学生である限り、学生証を持ち歩くこと)できる限り/わたしの知る限り(範囲の言い方)

導入

  • 「に限り」と「限り」を上下に学習項目2の型で「留学生に限り、申し込めます」と書き、その下に「留学生である限り、在留カードを持ち歩かなければならない」を書く。「国に帰って留学生でなくなったら、どうですか」と聞き、上は「留学生だけ」、下は「留学生でいる間は」だと確かめ、前に「に」があるかないか、名詞か状態かで意味が変わることを赤で囲む。
  • 時間の線で見せる黒板に横に長い線を引き、線の上に「この寮に住んでいる」、線の下に「夜11時までに帰る」と書く。「線が続いている間は、ずっと下のことも続く」と説明して「この寮に住んでいる限り、夜11時までに帰らなければならない」を板書する。続けて「話し合わない限り、問題は解決しない」を書き、「〜しなければ(その間はずっと)」の意味も足す。後ろは「〜ない」が多いが、「雨が降らない限り、試合を行う」のように肯定の文も自然だと一言添える。

板書案

Vている/Nである 限り(は)、 〔ずっと変わらないこと〕
この寮に住んでいる限り、夜11時までに帰らなければならない。
Vない 限り、 〜(「〜ない」が多い)  話し合わない限り、問題は解決しない。
〔赤〕上:留学生に限り(=留学生だけ) 下:留学生である限り(=留学生でいる間は) 「に」の有無に丸
〔青〕横に長い線(状態が続く間)と、その下にずっと続く矢印

場面と発話(自作)

  • 寮の管理人が、入寮した留学生に寮の決まりを説明している。ここに住んでいる限りは、ごみの分け方のルールを守ってください。
  • けんかをした友達同士の間に入ったクラスメートが、二人に言う。二人がちゃんと話さない限り、この問題は終わらないと思うよ。
  • 市役所の窓口で、職員が手続きについて説明している。ご本人が来られない限り、こちらの書類はお渡しできません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「状態」のカード(日本にいる・この会社で働いている・学生である・毎日練習する)と「ずっと変わらないこと」のカード(法律を守る・社員証を付ける・学割が使える・上手になる)を組み合わせて「〜限り(は)、〜」の文を作らせる。次に「〜ない限り〜ない」で、自分の目標が達成できない条件を一つずつ言わせる(「毎日少しでも読まない限り、漢字は覚えられない」)。

  1. 口頭黒板の横の線の上に「状態」のカード、下に「ずっと変わらないこと」のカードを教師が貼り、学生は全体で「〜限り、〜」の文を言う。キューは「日本にいる」+法律を守る、「この会社で働いている」+社員証を付ける、「学生である」+学割が使える、「毎日練習する」+上手になる。言えたら「〜ない限り〜ない」に切り替え、「本人が来ない」+書類を渡せない、「予約しない」+入れない、「謝らない」+許してもらえない、を全体と個人で言わせる。最後に「雨が降らない」+試合を行う、を出し、後ろが肯定の文でも自然に言えることを確かめる。
  2. ペアAは寮の管理人、Bは新しく入る留学生。Aは決まりのカード(ごみの分け方・門限・客を泊めない など)を見ながら「ここに住んでいる限りは、〜てください」と説明し、Bは「〜ない限り、〜ないんですか」と確かめる質問を一つずつ返す(「届けを出さない限り、友達は泊められないんですか」)。決まりを3つ説明したら役を替え、今度はアルバイト先の店長と新人で同じやり取りをする。
  3. 産出「わたしの約束カード」。学生は自分の目標を一つ決め、「〜ない限り」で目標に必要な条件を1文、「〜限り(は)、〜」で続けると決めたことを1文書いてクラスで読み上げる(「毎日少しでも読まない限り、漢字は覚えられない」「日本にいる限りは、毎朝ニュースを日本語で聞く」)。教師が見るのは、前が続く状態になっているか(一回だけの出来事になっていないか)、「Nに限り」と「Nである限り」を混ぜていないか、「ない限り」が「〜しなければ(その間はずっと)」の条件になっていて「ないうちに」と混ぜていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 一回だけの出来事に使う(「*あした雨が降る限り、試合は中止です」)。「限り」は続いている状態の条件なので、一回の出来事なら「雨が降ったら」「雨の場合は」にする
  • 名詞に「に」を付けたまま、条件の意味で使う(「留学生に限り、在留カードを持ち歩く」と言って「留学生でいる間は」の意味のつもりでいる)。「Nに限り」は「Nだけ」の意味になる。状態の条件なら「留学生である限り」と「である」を入れる
  • 「〜ない限り」を「〜ないうちに」と混ぜて、「*雨が降らない限り、洗濯物を取り込もう」と言う。「ない限り」は「〜しなければ(その間はずっと)」という条件で、急ぐ気持ちの「ないうちに」とは違う、と二つの文を並べて板書する。後ろは「〜ない」「〜できない」が多いが、「雨が降らない限り、試合を行う」のように肯定の文も自然に使える

既習の文型との違い

  • 〜以上(は)(第22課)「留学生である以上、勉強を優先すべきだ」の「以上」は、留学生であるという事実を受け入れたうえで、後ろに当然の義務や決意(〜べきだ・〜つもりだ・〜なければならない)を言う形です。「限り」は範囲や条件を区切り、その中で後ろのことが成り立つ、と言う形です(日本にいる限り、日本の法律を守らなければならない)。どちらも言える文もありますが、「〜ない限り(=〜しなければ)」は「以上」に置き換えられません。「本人が来ない限り、書類は渡せない」を「本人が来ない以上」にすると、来ないことが決まった事実の話になり、意味が変わります。学習者が混ぜたときは、前が受け入れた事実か、区切った条件かを聞いて選ばせます。
  • 〜からでないと(第29課)「申し込んでからでないと、使えません」は、ある一回の手続きが先に済まなければならない、という順番の条件です。「申し込まない限り、使えません」は、申し込まない状態が続く間はずっと使えない、という言い方で、手続きの順番より状態の続きに目が向きます。一回の動作の前後を言いたいときは「からでないと」、状態が変わるまでずっと、と言いたいときは「ない限り」と分けます。
  • 〜うちに/ないうちに(第28課)「うちに」は「その状態が終わる前に、何かをしておく」と行動を促す形で、「元気なうちに旅行したい」のように使います。「限り」は「その状態が続く間は、ずっと同じ」と条件を言う形で、行動を急がせる意味はありません。学習者が「*日本にいる限りに、富士山に登りたい」と言ったら、急ぐ気持ちなら「日本にいるうちに」に直させます。
関連する文型

学習項目 5 〜を(は)問わず

意味・はたらき学習項目 5

初中級で学んだ「〜は問わず」の続きで、「問わず」は「問わない(=問題にしない・条件にしない)」の書き言葉の形です。「〜を問わず」は「〜に関係なく、どれでも・だれでも」という意味で、前には年齢・性別・国籍・経験・季節のようないろいろな種類や値がある名詞や、男女・昼夜・内外・有無のような対になった名詞が来ます。募集・案内・規則の文章でよく使い、「経験を問わず、歓迎します」のように範囲の広さを示します。「は」を使った「〜は問わず」「〜は問いません」は、ほかの条件はあるけれど「その点は」問題にしない、という取り立ての響きがあり、募集の文の条件の欄によく見られます。意味は「〜に関わらず」と近いですが、「〜を問わず」は名詞に付くのがふつうで、動詞の対(するしない)には「〜に関わらず」のほうが使われることが多い形です。

接続

N(幅のある名詞・対になった名詞)+を問わず/は問わず(文の終わりでは「〜は問いません」「〜を問いません」)

形
Nを問わず(年齢を問わず・国籍を問わず・季節を問わず)対の名詞を問わず(男女を問わず・昼夜を問わず・国の内外を問わず)Nの有無を問わず(経験の有無を問わず・資格の有無を問わず)Nは問いません(募集の条件の欄:学歴は問いません)

導入

  • 初中級の「は問わず」を思い出す自作の求人の条件欄(「日本語能力:日常会話ができる方」「年齢・性別は問いません」)を見せ、「何歳でも応募できますか」「日本語が話せなくても応募できますか」と聞く。年齢は条件にならないが、日本語は条件になると確かめ、「は問わない=その点は条件にしない」を思い出させる。
  • 「を」と「に関わらず」に広げる「年齢を問わず、だれでも参加できます」と「年齢に関わらず、だれでも参加できます」を並べ、意味がほとんど同じだと確かめる。次に「参加するしないに関わらず」を書き、「参加するしないを問わず」とはあまり言わないことを示して、「を問わず」は名詞、「に関わらず」は名詞にも動詞の対にも、と表にする。

板書案

N(幅のある名詞・対の名詞) を問わず / は問いません
国籍・学年を問わず、どなたでもご参加ください。
経験の有無は問いません。
〔青〕対の名詞:男女・昼夜・内外・有無 を四角で囲む
〔表〕を問わず=名詞 に関わらず=名詞・動詞の対・〜かどうか

場面と発話(自作)

  • 大学の国際交流センターのウェブサイトに、交流イベントの案内が出ている。国籍・学年を問わず、どなたでもお気軽にご参加ください。
  • 駅前のコンビニのドアに、アルバイト募集の紙が貼ってある。経験の有無は問いません。未経験の方も歓迎します。
  • 病院の救急の窓口について、看護師が新しく来た職員に説明する。この窓口は、昼夜を問わず患者さんを受け付けています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

自作の募集のお知らせを3枚(料理教室・通訳ボランティア・アルバイト)配り、「条件になること」と「条件にならないこと(を問わず・は問いません)」を表に分けさせる。そのあと、自分がクラスでイベントを開くとしたら、と考えて「〜を問わず」「〜は問いません」を使った募集の文を2行書かせ、ほかの学生が「わたしは応募できますか」と質問して確かめる。

  1. 口頭教師が「〜でも〜でも大丈夫」と言い、学生は全体で「〜を問わず」の形に言い換える。キューは「男の人でも女の人でも」→男女を問わず、「昼でも夜でも」→昼夜を問わず、「経験があってもなくても」→経験の有無を問わず、「どこの国の人でも」→国籍を問わず、「春でも冬でも」→季節を問わず。言えたら、同じキューで文の終わりの形「〜は問いません」に言い換えさせ、募集の条件の欄の読み方に慣れさせる。
  2. ペア情報差のある募集カード。Aには通訳ボランティアの募集(条件の欄つき)、Bには料理教室の募集を渡し、相手のカードは見せない。Bは「何歳でも申し込めますか」「日本語が少ししかできなくてもいいですか」のように4つ質問し、Aは「年齢は問いません」「日本語能力は〜以上の方に限ります」のように条件になるものとならないものを分けて答える。終わったら役を替え、最後に二人で二つの募集の条件を表にまとめる。
  3. 産出「クラスのイベント募集文」。学生は自分が開きたい集まり(映画を見る会・国の料理を作る会・朝の散歩の会 など)を一つ決め、「〜を問わず」と「〜は問いません」を1つずつ、条件になること(「〜に限ります」でも可)を1つ入れた募集の文を4〜5行で書く。ほかの学生が「わたしは参加できますか」と質問し、書いた人が答える。教師が見るのは、「を問わず」の前が幅のある名詞か対の名詞になっているか、一つの地名や人名に付けていないか、条件になることとならないことが読み手に区別できるかの3点。

つまずきと手当て

  • 一つに決まった名詞に付ける(「東京を問わず、全国から参加者が来た」)。何が条件にならないのかが伝わらない。範囲を広げたいなら「東京に限らず」、場所の違いを問題にしないなら「地域を問わず」にする
  • 動詞の対にそのまま付ける(「来る来ないを問わず」)。まったく使わないわけではないが、名詞に付けるのがふつうなので、「来るかどうかに関わらず」か、名詞の「出欠を問わず」にすると自然
  • 「は問わず」と「を問わず」の違いを気にしすぎて手が止まる。意味はほとんど同じで、「は」はほかの条件と比べて「この点は」と取り立てる響きがある、とだけ伝え、募集の条件の欄では「〜は問いません」がよく使われることを実物の形で覚えさせる

既習の文型との違い

  • 〜は問わず…(初中級 第19課)初中級で学んだ「〜は問わず」は、ほかの条件はあるけれど「この点は」問題にしない、と取り立てる響きのある形です。中級の「〜を問わず」は取り立てずに「〜に関係なく、広くだれでも」と範囲の広さを言うことが多く、意味の差はわずかです。学習者には、募集の条件の欄では「〜は問いません」、紹介や案内の文の中では「〜を問わず」がよく見られる、と実物の配置で覚えさせます。
  • 〜に応じて…(初中級 第19課)「年齢に応じて料金が変わる」は、前の違いに合わせて後ろも変わる、という形です。「年齢を問わず料金は同じ」は、前の違いがあっても後ろは変わらない、という反対の向きです。学習者が「年齢を問わず、料金が違います」と言ったら、意味が逆になると示し、二つを同じ表の「変わる/変わらない」の列に並べて見せます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の言葉は、募集・案内・規則の文章によく出る硬い語(対象・応募・条件・有無・支給・先着・実施・有効 など)を中心に、カードにして「〜を問わず」「〜に限り」と組み合わせた形で練習させます。読むときは、お知らせの中で「だれが」「いつ」「どんな条件で」を示す語に印を付けさせ、語の意味だけでなく、文章のどこに条件が書かれているかを見つける手がかりとして扱います。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 対象(たいしょう) 案内や決まり、サービスなどが向けられている人やものです。 〜になる・〜外・留学生を〜にした
    奨学金の説明会で、担当者が話している。
    「この奨学金は、学年に関わらず、留学生全員が対象になります。」
  • 応募する(おうぼする) 募集に、参加したい・働きたいと申し込みます。 〜に応募する・〜者・〜条件
    アルバイトの募集を見た留学生が、店に電話する。
    「日本語がまだ上手ではないんですが、応募してもいいですか。」
  • 有無(うむ) あるかないか、ということです。 経験の〜・資格の〜・〜を問わず
    求人のチラシの条件の欄を、先生が学生と読んでいる。
    「経験の有無は問いません、と書いてありますね。」
  • 未経験(みけいけん) まだ一度もしたことがないことです。 〜の方・〜者・〜でも
    コンビニの店長が、面接に来た人に話す。
    「未経験の方も、研修がありますから大丈夫ですよ。」
  • 支給する(しきゅうする) 会社や役所などが、お金や物を決まりにしたがって渡します。 交通費を〜・制服を〜・全額〜
    アルバイトの面接で、担当者が条件を説明する。
    「週3日以上働ける方に限り、交通費を全額支給します。」
  • 先着(せんちゃく) 早く来た順番、早く申し込んだ順番のことです。 〜順・〜20名・〜で
    店の前のお知らせを見た友達同士が話す。
    「先着30名に限り、プレゼントがもらえるって。早く行こう。」
  • 実施する(じっしする) 計画していたことを、実際に行います。 試験を〜・訓練を〜・予定どおり〜
    学校の掲示板に、避難訓練のお知らせが出ている。
    「避難訓練は、天候に関わらず実施します。」
  • 有効(ゆうこう) 決まった期間や条件の中で、使える・力があることです。 〜期限・〜な・一年間〜
    図書館の受付で、職員が利用カードを渡す。
    「このカードは、この大学に在籍している限り有効です。」
  • 在籍する(ざいせきする) 学校や会社などに、そこの一員として名前があります。 大学に〜・〜中・〜証明書
    留学生が、事務室で書類について聞く。
    「在籍している人に限り、この証明書を出してもらえるんですか。」
  • 国籍(こくせき) その人が、どの国の国民であるかということです。 〜を問わず・日本〜・〜が違う
    国際交流のイベントで、司会が会場に呼びかける。
    「国籍を問わず、どなたでもステージに上がってください。」
  • 天候(てんこう) ある期間の、晴れ・雨・風などの空の様子です。 〜に関わらず・〜が悪い・〜による
    運動会の前日、先生が学生に予定を伝える。
    「あしたは、天候に関わらず、8時に学校に集まってください。」

宿題と次のコマ

宿題は二つ。一つ目は、自分の住む町や学校の実際のお知らせ(掲示・ウェブサイト・チラシ)を一つ選び、「対象になる人」「対象にならない人」「期間や条件」を表にまとめて、この課の形が使われているところに線を引いてくること。二つ目は、中級の最終課として、この一冊で学んだ形の中から、自分がよく使えるようになった形を三つ、まだ自信がない形を三つ選び、それぞれ一文ずつ例文を作って、200〜300字の振り返りの文章にまとめること。次のコマでは、集めたお知らせを読み合って条件を確かめ、振り返りで「自信がない」に挙がった形を全体で復習します。

よくある質問

  • 「〜に関わらず」と「〜を問わず」の違いは何ですか?

    意味はどちらも「〜に関係なく」でほとんど同じで、お知らせや募集の文で入れ替えられることが多くあります。違いは前に来るもので、「〜を問わず」は年齢・国籍・男女のような名詞に付くのがふつうですが、「〜に関わらず」は名詞のほかに「参加するしない」「行くかどうか」のような動詞の対や疑問の形にも付きます。板書では二つを一つの表にして、前に来るものの列だけを比べさせると整理しやすくなります。

  • 「〜に限り」「〜に限って」「〜限り」はどう教え分ければいいですか?

    「Nに限り」はお知らせの「Nだけ」、「Nに限って」は会話で「その時だけ困ったことが起こる」という不満、「V限り」は「その状態が続く間は」という条件だと、働きで三つに分けます。見分ける手がかりは前に来るもので、「に」が付いて名詞が前にあれば限定、「に」が無く動詞や「〜である」が前にあれば条件です。黒板で「留学生に限り」と「留学生である限り」を上下に並べ、「国に帰ったらどうなるか」を聞いて違いを確かめさせます。

  • 「〜に関わらず」と「〜にもかかわらず」を混同する学習者にはどう説明しますか?

    「にもかかわらず」はすでに起こった一つの事実に対して「それなのに」と言う形で、「に関わらず」は二つ以上の場合をまとめて「どれでも同じ」と言う形です。「熱があったにもかかわらず学校に来た」と「熱があるかどうかに関わらず体温を測る」を並べ、「熱は本当にありましたか」と聞くと、前の文にしか事実が無いことに気づきます。「も」の一字で意味が変わるので、板書ではその字を赤で囲んでおきます。

  • 「〜のみならず」と「〜ばかりか」「〜だけでなく」はどう違いますか?

    三つとも範囲を広げる言い方ですが、「だけでなく」は会話でも文章でも使えるふつうの形、「のみならず」はレポートや報告で使う改まった書き言葉です。「ばかりか」は第38課の形で、「その上さらに」という驚きや悪いことが重なる気持ちが乗りやすくなります。作文の指導では、事実を並べるだけなら「のみならず」、気持ちを出したいなら「ばかりか」、会話なら「だけじゃなくて」と場面で選ばせます。

  • この課は何コマで終わりますか?中級の最終課の振り返りはどうしますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜に関わらず」「〜を問わず」「〜に限って/限り/限らず」まで、2コマ目で「〜のみならず」「〜限りは/限り」、説明の文の読み取りと募集文の作成、振り返りまで進めます。振り返りは、中級の形を「気持ち」「原因・理由」「時」「対照」「限定」などの働きの札に分けて貼らせ、自分が使える形に丸を付けさせると、次の学習の目安になります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。