まだ起きていないこと、起きるかどうか分からないことを仮に置いて、「そうなったら、どうなるか」を相手に分かるように説明する課です。4つの形は、話の範囲を「この分野なら」と絞る「〜にかけては」、実現しにくいことや、してしまったら大変なことを仮定する「〜ものなら」、仮の話や聞いた情報を前提にして結果を考える「〜としたら/とすれば」、一つの条件だけで十分だと言う「〜さえ…ば」と、どれも「条件を置いて、その先を言う」形だと最初に見せておくと整理しやすくなります。「〜ものなら」は、可能形に付くか意向形に付くかで後ろに来る内容がまったく違うので、この課でいちばん時間をかけるところです。「〜さえ…ば」は初中級の復習として、説明やアドバイスの締めに「これさえ〜ば大丈夫」と言う使い方に絞ります。最後に、自分の得意な分野を紹介し、仮の場面を置いて助言する短い説明の活動で4つをまとめて使わせます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が「もし来月から一年間、仕事も勉強も休めるとしたら、何をしますか」と聞き、学生に自由に答えさせる。答えを黒板に集めながら、「もし〜」のように条件を置いて、その先を話していることを確かめ、この課の4つの形はどれも「条件を置く → その結果を言う」の形だと、黒板の左右に「条件」「結果」の2つの枠を作って予告する |
| 学習項目1 〜にかけては/かけても | 30分 | 学生に「自分がクラスのだれにも負けないこと」を一つずつ聞き、「〜にかけては、だれにも負けない」の形で言い直して導入する。前に来るのは能力・技術の分野で、後ろは自信や高い評価だと押さえ、「〜にかけても」で「ほかのことだけでなく、この分野でも」と足す言い方を見せる |
| 学習項目2 〜ものなら | 50分 | 「できるものなら、子どものころに戻りたい」と「授業中に寝ようものなら、先生にしかられる」を上下に板書し、前の形(可能形/意向形)と後ろの内容(願い・挑戦/困った結果)を線で結ばせる。二つは仮定する内容も話し手の気持ちも違う、と表にして残す。1コマ目はここまで。2コマ目の最初に、可能形と意向形の「ものなら」を同じ動詞で1回ずつ言わせてから学習項目3に入る |
| 学習項目3 〜としたら/とすれば | 30分 | 導入で使った「もし一年間休めるとしたら」に戻り、現実ではない仮の話を置く使い方を確かめる。続けて「天気予報が正しいとすれば、あしたの花火大会は中止だろう」で、聞いた情報を前提にして推論する使い方を足し、後ろには話し手の判断(〜だろう・〜はずだ・どうしよう)が来ることを押さえる |
| 学習項目4 〜さえ…ば(初中級の復習) | 15分 | 初中級で学んだ「〜さえ…ば」を短く思い出させ、この課では説明の最後に「これさえ〜ば大丈夫です」と、条件を一つに絞る使い方に集中する。「Nさえ」「Vさえすれば」「Vてさえいれば」の形を言い換え練習で確かめる |
| 4つの形の整理 | 10分 | 「条件」の枠に4つの形を並べ、どんな条件を置くのか(分野を絞る/むずかしいこと・危ないこと/仮の話・聞いた情報/一つだけの条件)と、後ろに来るもの(評価/願い・困った結果/判断・推論/十分だという結果)を表にする |
| 目標の活動(得意分野の紹介と、仮の場面での助言) | 25分 | ペアで、自分の得意なこと(料理・ゲーム・節約・道案内など)を「〜にかけては」で紹介し、相手が「もし〜としたら、どうすればいいですか」と仮の場面で質問する。答える人は理由を言ってから、最後に「〜さえ…ば大丈夫」で一番大事な条件を一つにまとめる。「〜ようものなら」で注意点を一つ入れられたら加点する。時間が足りなければ、紹介と質問までを教室で行い、「〜さえ…ば」のまとめは宿題の作文に回す |
| まとめ | 10分 | 表を見ながら、「〜ものなら」の二つの形を例文つきで言い分けさせ、「〜としたら」が使えない場面(必ず起きること)も確かめて、表をノートに写させる |
「〜という分野・点に限って言えば」と話の範囲を絞り、その分野ではほかのだれにも負けない、いちばん優れていると言うときの形です。前に来るのは、料理の腕・計算・足の速さ・記憶力・サービスのような能力・技術・性質の分野で、後ろには「だれにも負けない」「自信がある」「右に出る者はいない」「町で一番だ」のような高い評価や自信が来ます。自分のことにも、人・店・会社・製品のことにも使え、紹介文や自己PR、評判を伝える説明でよく使われます。「〜にかけても」は「ほかの点だけでなく、この分野でも」という意味で、すでに一つ長所を言ったあとに、もう一つの長所を足すときに使います。
N+にかけては(「Vる+ことにかけては」の形でも使う)/N+にかけても
分野のカード(計算・道案内・早起き・節約・料理・写真)を引かせ、自分や家族・友達・知っている店について「〜にかけては、〜」の一文を作らせる。次に、ペアの相手の長所を一つ聞き出して、「〜さんは〜が上手ですが、〜にかけても〜」でクラスに紹介させ、「は」と「も」の違いを使って確かめる。
「もし〜なら」と仮定する形ですが、前に来る動詞の形によって意味が二つに分かれます。一つは可能形+ものならで、「実現はむずかしいと分かっているが、もしできるなら」という気持ちを表し、後ろには「〜たい」「〜てほしい」のような願いや、「やれるものならやってみろ」のような挑戦・挑発が来ます。もう一つは意向形+ものならで、「もし〜しようものなら」つまり「少しでもそんなことをしたら」という意味になり、後ろには「大変なことになる」「怒られる」のような困った結果・大げさな警告が来ます。前の形は、可能形はむずかしいこと、意向形はしようと思えば簡単にできてしまうことを仮定している、という違いを押さえると、二つを取り違えにくくなります。
V(可能形)+ものなら(「かなう」「許される」のような、できる・できないを表す動詞の辞書形にも付く)/V(意向形)+ものなら(する → しようものなら、来る → 来(こ)ようものなら)。会話では「〜もんなら」とも言う
動詞のカード(戻る・休む・話す・遅れる・忘れる・連絡する)を見せ、教師が「願い」か「警告」かを指示する。「願い」なら可能形にして「〜ものなら、〜たい」、「警告」なら意向形にして「〜ようものなら、大変だ」と言わせる。同じ動詞で両方を作らせると、前の形で後ろが変わることがよく分かる(「休めるものなら休みたい」「休もうものなら仕事が回らない」)。
まだ分からないこと、現実にはそうではないことを仮にそうだと置いて、その場合どうなるかを考えるときの形です。「もし」「仮に」といっしょに使われることが多く、後ろには「〜だろう」「〜はずだ」「〜かもしれない」「どうしよう」「〜たい」のような話し手の判断・推論・気持ちが来ます。また、人から聞いた話や目の前の様子を事実だとして受けて、「もしそれが本当なら、こうなるはずだ」と推論するときにも使います。「〜としたら」は話し言葉でも使いやすく、「〜とすれば」は少し硬く、説明文や論理を順に追う話でよく使われます。「〜たら」と違い、春が来る・朝になるのような必ず起きることには使わないのが特徴です。
普通形+としたら/とすれば(名詞とな形容詞は「学生だとしたら」「静かだとすれば」のように「だ」を付けるのが基本。書き言葉では「それが事実とすれば」と「だ」を落とすこともある。「〜とすると」も近い意味で使う)
仮の状況のカード(一か月の休み・言葉が通じない国・電車が止まった・お金を落とした)を引かせ、「もし〜としたら、〜」で自分ならどうするかを言わせる。次に、教師が短い「情報」(「あの店は月曜日が休みらしい」)を言い、学生は「それが本当だとすれば、〜」で推論を一つ返す。二つの使い方を交互に回して、仮定と推論の違いを体で覚えさせる。
初中級で学んだ「〜さえ…ば」の復習です。「ほかのことはどうでもいい、その一つの条件さえ満たせば、それで十分だ」と、必要な条件を一つに絞って言います。この課では、説明やアドバイスの最後に「これさえ〜ば大丈夫です」とまとめる使い方に集中すると、目標の「上手に説明する」にそのままつながります。また、「あのとき〜さえしていれば」のように過去のことに使うと、そうしなかったことを悔やむ気持ちになることも短く確かめておきます。
N+さえ+Vば/い形ければ/な形・Nなら(であれば)、Vます+さえすれば、Vて+さえいれば(「が」は「さえ」に替わり、「を」もふつうは「さえ」だけにする。「に」「で」は「にさえ」「でさえ」と残る)
学生に、自分がよく知っていること(家電の使い方・料理・地元の観光・アプリ)を30秒で説明させ、最後の一文を必ず「〜さえ…ば大丈夫です」で締めさせる。聞いた学生は「それだけでいいんですか」と聞き返し、説明した学生は「はい、〜さえ…ば」をもう一度言って確かめる。形を変えて「Vさえすれば」「Vてさえいれば」も一回ずつ使わせる。
この課で扱う言葉は、評価を表す言葉(評価を得る・右に出る者はいない・自信がある・腕がいい など)と、仮定の話でよく使う言葉(仮に・もし・万一・実現・可能性 など)に分けて板書しておくと、どの形の前後に来るかを考える材料になります。「盛り付け」「腕」のような分野を表す名詞は、「〜にかけては」の前に置いた形でカードにして覚えさせます。
宿題は、自分の国の町か、自分の得意なことを一つ選び、それを日本人に紹介する200〜300字の説明文を書くこと。「〜にかけては」で一番の長所を紹介し、「もし〜としたら/とすれば」で読み手が実際にそこへ行く(それをやってみる)場面を仮に置き、注意点を一つ「〜ようものなら」で、最後のまとめを「〜さえ…ば」で書かせる。次のコマの最初に何人かに読ませ、聞いた学生が4つの形がどこに使われていたかを言い、「〜ものなら」が可能形か意向形かも確かめて振り返ります。
第34課の「〜ものなら」は、可能形と意向形のどちらから教えればいいですか?
可能形の「〜ものなら、〜たい」から入ると、学生が自分の願いで言いやすく、導入が早く進みます。そのあとで同じ動詞を意向形にして「休もうものなら、仕事が回らない」と並べ、前の形で後ろの内容が変わることを見せます。二つを別の日に分けると混ざりやすいので、同じコマで上下に並べて板書するのがおすすめです。
「〜としたら」と「〜たら」の違いはどう説明すればいいですか?
「〜としたら」は起きるかどうか分からないこと、現実ではないことを仮に置いて、判断や推論を言う形です。「〜たら」は必ず起きることや、起きたあとの行動・依頼にも使えます。「春になったら」は言えて「春になるとしたら」が不自然なこと、「着いたら電話して」の依頼に「としたら」が合わないことを例に見せると区別がつきます。
「〜にかけては」と「〜について」「〜に関して」はどう区別させますか?
「について」「に関して」は話題を示すだけですが、「にかけては」はその分野で優れているという評価を言う形です。後ろに「だれにも負けない」「自信がある」のような評価が来ているかを確かめさせると、見分けられます。「料理について話した」「料理にかけては自信がある」を並べて板書しておくと便利です。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜にかけては」「〜ものなら」まで、2コマ目で「〜としたら/とすれば」と「〜さえ…ば」の復習、4つの形の整理と目標の活動を行います。「〜ものなら」の二つの形に時間がかかるクラスでは、目標の活動の後半を宿題の作文に回します。
4つの形をまとめて使わせる活動には何がありますか?
自分の得意なことを紹介し、相手の質問に仮の場面で答える活動がまとまりやすいです。「〜にかけては」で得意な分野を紹介し、相手が「もし〜としたら、どうすればいいですか」と聞き、答える人は注意点を「〜ようものなら」で一つ入れて、最後を「〜さえ…ば大丈夫」で締めます。同じ流れを宿題の作文にすると、話したことを書いて振り返れます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。