この課の目標は、記事や説明文を読んで、ある結果がなぜ起きたのか・何から始まったのかが文章のどこに書いてあるかを見つけられるようになることです。学習項目の五つは、どれも結果の前に置かれて「理由の側」を示す印として読めます。判断や名前の根拠を示す「〜ことから」、知った・伝わった道筋を示す「〜を通じて」、変化が始まった出来事を示す「〜をきっかけにして」、どの面から見た評価かを示す「〜からいうと」、悪い結果の原因を示す「〜せいで」です。教えどころは一つずつの意味よりも、同じ「理由」でも根拠・道筋・始まり・観点・原因と役割が違うことで、板書は右端に「結果」の枠を置き、左に五つの印を並べて矢印で結ぶ図を課の最後まで使います。会話で言えるところまでは求めず、まずは読んで「ここが理由だ」と線を引ける力を育てます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 15分 | 教師が作った短い記事(駅前の古い商店街に若い客が戻ってきた、という話・5〜6文)を配り、「なぜ客が戻ってきたのですか」とだけ聞く。答えを言わせたあと「その答えは、記事のどこに書いてありましたか」と聞き直し、理由の書いてある場所に線を引かせる。黒板の右端に「結果」の枠を描き、この課は理由の側の印を五つ覚えて、文章の中で理由を見つける課だと予告する |
| 学習項目1 〜ことから | 25分 | 動物の足あとの絵や、名前の由来の説明で、見えている事実から判断する・名前がつく流れを見せて導入。後ろに「〜と考えられる」「〜と呼ばれる」「〜ようになった」がよく来ることを板書の矢印の先に書く |
| 学習項目2 〜を通じて | 25分 | 人から人へ情報が渡る図(A→紹介者→B)で、間に立つ人・ものを示す使い方を導入。続けて「一年を通じて」で期間の全体を表す使い方を、季節の帯の絵で見せて、二つの使い方を分けて板書する |
| 学習項目3 〜をきっかけにして | 25分 | ある人の生活の変化を時間の線で描き、線が曲がった一点に印をつけて導入。「ことから」との違い(判断の根拠か、変化の始まりか)を板書の二本の矢印で比べる |
| 学習項目4 〜からいうと | 25分 | 一つの品物を値段・便利さ・デザインの三つの面から評価する表で導入。同じ物でも「どの面からいうと」で評価が変わることを見せ、文章の評価はいつも一つの面から言われていると確かめる |
| 学習項目5 〜せいで(初中級の続き) | 15分 | 初中級で習った「〜せいで」を、文章の中での原因の書き方として短く復習。書き手が原因を責める気持ちを持っていることを確かめ、記事では「〜ため」「〜により」が使われやすいことと比べる |
| 目標の活動(読み取り) | 40分 | 教師が作った説明文(ある町で自転車で通勤する人が増えた理由を説明する文・10文ほど)を配る。五つの表現が全部入っている。学生は一人で読み、結果の文に四角、理由の部分に線を引き、それぞれ根拠・道筋・始まり・観点・原因のどれかを書き込む。そのあとペアで答えを比べ、違ったところだけ全体で話し合う |
| まとめ | 10分 | 黒板の「結果」の図に、活動の文章から見つけた理由の部分を学生に書き込ませ、五つの印がそれぞれどんな理由を示していたかを全員で言い直す。最後に、理由が二つ以上重なっている文(きっかけと原因が両方ある文など)を一つ見せて、読むときはいくつ理由があるか数えるとよいと伝える |
「Aことから、B」は、Aという事実を根拠にしてBと判断する、またはAが理由・由来になってBという名前や状態になった、ということを表す書き言葉です。説明文・記事・案内の文章によく出て、後ろには「〜と考えられる」「〜とわかる」「〜と呼ばれる」「〜と名づけられた」「〜ようになった」のような判断や結果の言い方が来ることが多いです。前のAは、目で見える事実や、だれでも確かめられる事実であることが多く、読むときは「ことから」の前を「根拠」として線を引けば理由の場所が見つかります。後ろに「〜てください」「〜しよう」のような頼みや誘いが来ることはほとんどなく、そうした文には「から」「ので」を使います。
動詞・い形容詞の普通形+ことから/な形容詞語幹+な・である+ことから/名詞+である+ことから(「名詞+の+ことから」とは言わない)
教師が事実のカード(「窓が開いている」「机の上に辞書がある」など)を出し、学生が「〜ことから、〜と考えられる」で判断を一つ言う。次に、短い説明文の中から「ことから」の文を探して、根拠の部分と判断の部分を色分けして線を引かせる。
「Nを通じて」には二つの使い方があります。一つは、情報・気持ち・人のつながりが、Nを間に通って伝わる・手に入ることを表す使い方で、Nには人・メディア・活動などが来ます(「友人を通じて知り合った」「ボランティア活動を通じて学んだ」)。もう一つは、Nに期間を表す言葉が来て、その期間の全体ずっと、という意味を表す使い方です(「一年を通じて暖かい」)。読むときは、前の名詞が人やメディアか、期間かを見て、どちらの意味かを決めます。「〜を通して」もほぼ同じ意味で使われますが、「〜を通じて」のほうが少しかたい文章に出やすい傾向があります。
名詞+を通じて(「つうじて」と読む)/名詞を修飾するときは 名詞+を通じての+名詞・名詞+を通じた+名詞
教師が「人・メディア・活動」と「期間」の名詞カード(先輩・新聞・部活・一年・在学中など)を混ぜて出し、学生はどちらの使い方かを判断してから「〜を通じて」で一文作る。読み取りでは、文章の中の「を通じて」に印をつけ、道筋なのか期間の全体なのかを横に書き込ませる。
「Aをきっかけにして、B」は、Aという出来事が始まりになって、それまでになかったB(新しい行動・気持ちの変化・状態の変化)が起きた、ということを表します。「して」を省いた「〜をきっかけに」もよく使われ、「〜がきっかけで」「〜をきっかけとして」の形もあります。Aは、出会い・事故・病気・引っ越し・ニュースなど、ある時点で起きた一つの出来事であることが多く、Bはそのあとに続く変化です。「ことから」が判断や名前の根拠を示すのに対して、「をきっかけにして」は時間の流れの中で「変化が始まった点」を示すので、読むときはBが「〜ようになった」「〜始めた」のような変化の言い方になっているかを見ると見つけやすくなります。
名詞+をきっかけにして/をきっかけに/がきっかけで、動詞のた形+の+をきっかけにして(例: 入院したのをきっかけに)
教師が「出来事」のカード(引っ越し・転職・旅行・入院など)を出し、学生がそのあとに起きた変化を考えて「〜をきっかけに(して)、〜ようになった」の文を作る。次に、短い記事を読んで、きっかけの出来事と、そのあとの変化をそれぞれ時間の線の上に書き込ませる。
「Nからいうと、…」は、Nという観点・立場から見て判断すると…だ、ということを表します。Nには「〜の面」「〜の点」「〜の立場」「経験」「常識」のように、物事を見る面や判断のよりどころを表す名詞がよく来ます。「からいえば」「から言って」もほぼ同じ意味です。この言い方がある文は、評価が一つの面からのものだという印なので、文章では「Aの面からいうと〜だが、Bの面からいうと…」のように、二つの面を比べる形でよく出ます。近い言い方の「〜からすると」は、「親からすると」のように人を表す名詞にもつきますが、「からいうと」は人に直接つけるより「〜の立場からいうと」の形にするほうが自然な傾向があります。
名詞+からいうと/からいえば/から言って(「〜の面」「〜の点」「〜の立場」の形が多い)
教師が「アルバイト」「自炊と外食」「電車と自転車」のような比べる題をカードで出し、学生が二つの面(お金・時間・健康など)を選んで「〜の面からいうと…が、〜の面からいうと…」の文を作る。読み取りでは、文章の中の「からいうと」に印をつけ、その文がどの面からの評価かを表にまとめさせる。
初中級で習った「〜せいで」を、文章の中での原因の書き方として読み直す項目です。「Aせいで、B」は、Aが原因で、Bという悪い結果になったことを表し、書き手がAを責める・残念に思う気持ちを持っていることが多い言い方です。良い結果には「おかげで」を使い、原因がはっきりしないときは「せいか」を使います。新聞やかたい説明文では、責める気持ちを出さずに原因を書く「〜ため」「〜により」が使われやすく、「せいで」はエッセイや体験談、インタビューの言葉の中によく出る傾向があります。読むときは、「せいで」の前が原因、後ろが悪い結果だと押さえ、書き手がだれ(何)を責めているかまで読み取ります。
動詞・い形容詞の普通形+せいで/な形容詞語幹+な+せいで/名詞+の+せいで
教師が悪い結果のカード(遅刻した・試験に落ちた・料理が焦げたなど)を出し、学生が原因を考えて「〜せいで、〜てしまった」の文を作る。次に、同じ文を「おかげで」「をきっかけに」に替えられるかを考えさせ、結果の良し悪しと書き手の気持ちで言い方が決まることを確かめる。
この課は読む課なので、新しい語は意味を一つずつ覚えさせるより、文章の中で理由・結果のどちらの側に出る語かを意識させます。「増える・減る・広がる・〜ようになる」のような変化の語と、「〜と考えられる・〜とわかる・名づける」のような判断の語は結果の側に、出来事や事実を表す語は理由の側に来やすいので、板書の「結果」の図の左右に分けて残しておくと、学習者が文章の中で理由を探す手がかりになります。
宿題は、①自分の国の地名・料理・習慣の由来を一つ選び、「〜ことから」を使って3〜4文で説明すること、②自分の生活が変わった出来事を一つ選び、「〜をきっかけにして」と「〜を通じて」を使って5〜6文の短い文章を書き、その中に「〜の面からいうと」で今の生活の評価を一文入れること。次のコマの最初に、②の文章をペアで交換して読み、相手の文章の中の理由の部分に線を引いて返す活動で復習してから、第25課の「できない」を別の言葉で言う表現に入ります。
第24課の五つの表現はどの順で教えればいいですか?
本の順に、根拠を示す「〜ことから」、道筋を示す「〜を通じて」、変化の始まりを示す「〜をきっかけにして」、観点を示す「〜からいうと」、悪い結果の原因を示す「〜せいで」と進めると、理由の役割が一つずつ増えていく形になります。黒板の右端の「結果」の枠を最後まで消さずに、左に印を一つずつ足していくと、五つの違いが一目で比べられます。「〜せいで」は初中級の復習なので短くし、残りの時間を読み取りの活動に回します。
「〜ことから」と「〜から」「〜ので」の違いは何ですか?
「から」「ので」は会話でも使え、後ろに頼み・誘い・意志の文が来てもかまいません。「ことから」は判断や名前の根拠を示す書き言葉で、後ろには「〜と考えられる」「〜と呼ばれる」「〜ようになった」のような文が来ます。頼む文に「ことから」を使った学習者には、「ので」に戻すよう示します。
「〜をきっかけにして」と「〜ことから」「〜せいで」はどう区別させればいいですか?
「ことから」は変わらない事実を根拠にした判断、「をきっかけにして」は一回の出来事から始まった変化、「せいで」は悪い結果の原因で責める気持ちがある、と役割で分けます。板書では、「ことから」を「根拠→判断」の矢印、「をきっかけに」を時間の線の曲がる点で見せると区別しやすくなります。「をきっかけに」は良い変化にも悪い変化にも使え、責める気持ちはありません。
「〜を通じて」と「〜を通して」は同じですか?
ほぼ同じ意味で、どちらも道筋と期間の全体の二つの使い方があります。「を通して」は自分から手段として使う場合に多いという説明もありますが、中級の読み取りでは同じ意味として読めば足ります。「を通じて」のほうがややかたい文章に出やすいと伝える程度にとどめます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と「〜ことから」「〜を通じて」「〜をきっかけにして」まで、2コマ目は「〜からいうと」「〜せいで」の復習と、五つの表現が全部入った説明文の読み取りの活動、まとめです。読み取りに慣れていないクラスでは、活動の文章を短くするか、2コマ目の前半で一度ペアで線を引く練習をはさみます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。