駅や施設の館内放送、説明会の案内、工事や行事のお知らせのような改まった注意・連絡を聞いて、いつ・何の前に・どんな機会に・どのくらいの期間・何が決まっているのかを聞き取る課です。並ぶ5つの形は、どれも聞き取りの手がかりになる「時」の目印として整理すると教えやすくなります。「〜に先立って」は本番の前の準備や前置き、「〜に際して」と「〜にあたって/あたり」はある機会・節目のとき(「にあたって」は開店・入学のような始まりや、閉会・卒業のような終わりの節目に多い)、「〜にわたって」は期間や範囲の全体、そして「〜ことになっている」は初中級で学んだ決まり・予定を伝える文末です。初級の「〜前に」「〜とき」「〜間」に置き換えて意味をつかませてから、ゆっくり読む放送を何度も聞かせ、聞いた内容をメモに書き取る活動でまとめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が駅のホームや市役所の放送をまねて、ゆっくり一つ読み上げる(自作の短い放送)。「いつ」「何が」「どうしてほしい」の3つの欄があるメモ用紙を配り、もう一度聞いて書かせる。答え合わせで、聞き取りにくかった硬い言い方を黒板に集め、この課の5つの形がその目印だと予告する。黒板に「前」「とき・節目」「期間・範囲」「決まり・予定」の4つの箱を作っておく |
| 学習項目1 〜に先立って | 20分 | 「式の前に、写真を撮ります」と「式に先立ちまして、記念撮影を行います」を並べ、意味は「前に」だが、本番のための準備や前置きに使う改まった形だと押さえる。「前」の箱に入れる |
| 学習項目2・3 〜に際して・〜にあたって/あたり | 35分 | どちらも「〜のときに」「〜する機会に」と言い換えられる改まった形として一緒に入れ、「とき・節目」の箱に並べて置く。そのあと、開店・入学・卒業のような自分たちが迎える節目と、緊急・故障のような起きてしまった出来事の例を出して、どちらが自然かを選ばせ、使い分けの目安を表にする |
| 学習項目4 〜にわたって | 25分 | カレンダーと地図に線を引きながら、「3日間にわたって」「全館にわたって」を入れる。期間や範囲の初めから終わりまでずっと、という意味を線の長さで見せ、「期間・範囲」の箱に入れる。1コマ目はここまで |
| 学習項目5 〜ことになっている | 25分 | 初中級で学んだ「決まり・予定」の意味を短く思い出させてから、放送や説明会で使う「〜ことになっております」の形を聞かせる。「〜ことにしている」「〜ことになった」と並べて、だれが決めたか・いつ決まったかを確かめる。2コマ目はここから。前のコマの4つの箱を黒板に描き直し、1分で振り返ってから入る |
| 目標の活動(館内放送・説明会の案内の聞き取り) | 50分 | 教師(または録音)が、5つの形を含む自作の放送・案内を2〜3本読む。1回目は何のお知らせかだけ、2回目はメモ用紙の「いつ」「何が」「どうしてほしい」を書き取らせる。ペアでメモを見せ合い、聞き取った内容を「〜の前に」「〜の間ずっと」などのやさしい言い方で相手に伝え直す |
| まとめ | 15分 | 黒板の4つの箱に5つの形を置き直し、それぞれの横に「やさしい言い方」(前に・ときに・間ずっと・決まっている)を書いて一覧にする。放送で使う丁寧な形(先立ちまして・際しましては・あたりまして・わたり・ことになっております)も並べて残す |
ある大事な出来事(式・大会・開館・工事・発売など)の前に、その準備や前置きとして何かをすることを表します。意味は「〜の前に」に近いですが、ただ時間の順番を言うのではなく、後ろの出来事のために前もってすることに使うのが特徴です。改まった形で、司会のあいさつ、館内放送、行事の案内、ニュースなどでよく聞きます。放送や司会では「〜に先立ちまして」、書き言葉では「〜に先立ち」の形もよく使われ、名詞の前では「〜に先立つN」となります。
N/Vる(辞書形)+に先立って(「〜に先立ち」「〜に先立ちまして」、名詞の前は「〜に先立つN」。Nは開会・発売・試合のような出来事を表す名詞が多い)
「本番」のカード(入学式・新しい店の開店・マラソン大会・工事)と「準備」のカード(説明会・試食会・コースの下見・点検)を組み合わせ、「〜に先立って、〜があります/を行います」の一文を作らせる。できたら同じ文を司会の口調で「〜に先立ちまして」に言い換えさせ、別の学生に「先にあるのはどちらか」を聞き取って答えさせる。
ふだんとは違う、ある特別な機会や場面のときに、ということを表し、そのときに何をするか・何に気をつけるかを言う改まった形です。入学・卒業・退職・帰国のような人生の節目にも、利用・申し込み・出発のような手続きの場面にも、緊急・災害・故障のような起きてしまった出来事にも使えるのが、次の「〜にあたって」より広い点です。施設の利用案内や注意書き、放送でよく使われ、「ご利用に際しては」「申し込みに際しての注意」のような形で出てきます。放送ではもう少しやわらかい「〜の際は」(お降りの際は)もよく聞くので、同じ意味の仲間として一緒に聞かせます。
N/Vる(辞書形)+に際して(「〜に際し」「〜に際しまして」、名詞の前は「〜に際してのN」。Nは「ご利用」「出発」のような動きを表す名詞が多い)
「機会」のカード(入学・退職・ご利用・お申し込み・停電・火事)を引かせ、「〜に際して(は)、〜てください」で注意や手続きを一つ言わせる。聞き手は「いつの話ですか」と聞き返し、言った人は「〜するときです」とやさしく言い直す。最後に、同じ内容を「〜の際は」でも言わせて、二つの形が同じ意味で聞こえることを確かめる。
何か大事なことをする節目のとき(始める・新しい段階に入る・終える)に、ということを表す改まった形です。意味は「〜に際して」と重なるところが多く、どちらも「〜のときに」と言い換えられますが、「〜にあたって」は開店・入学・新年度・引っ越しのような始まりの節目にも、閉会・卒業・退職のような終わりの節目にも使い、「その大事なことに向き合うので、そのために〜する・〜をお願いする」という気持ちを込めて使われることが多い形です。そのため、あいさつ・式辞・説明会の冒頭や締めくくり・新しい制度の案内などでよく聞きます(「閉会にあたって、ひとことごあいさつ申し上げます」)。「〜にあたり」はさらに硬く、書き言葉や改まったあいさつで使われます。
N/Vる(辞書形)+にあたって/にあたり(丁寧には「〜にあたりまして」、名詞の前は「〜にあたってのN」。動詞は「始める」「卒業する」のように、これから迎える節目のことを表す辞書形)
「節目」のカード(入社・留学・新学期・開店・卒業・閉会)を引かせ、「〜にあたって、〜ようと思います/〜をお願いします」で、その節目での決意やお願いを一文言わせる。続けて教師が「地震」「停電」のような起きてしまった出来事のカードを混ぜ、「に際して」と「にあたって」のどちらで言うかを選ばせてから言わせる。
期間・回数・場所の範囲を表す言葉に付いて、その初めから終わりまで全体に、ある状態や行為が続く・広がることを表します。「3日間にわたって」「長年にわたって」「全館にわたって」「多くの分野にわたって」のように使い、話し手がその期間や範囲を長い・広いと感じていることを伝えることが多い形です。工事・休業・調査・会議・雨のお知らせやニュースでよく使われる改まった言い方で、「〜にわたり」はさらに硬く、名詞の前では「〜にわたるN」「〜にわたったN」となります。聞き取りでは、前に来る日付・期間・場所がいちばん大事な情報になります。
N(期間・回数・範囲を表す言葉)+にわたって/にわたり(名詞の前は「〜にわたるN」「〜にわたったN」。「〜から〜までの〜にわたって」の形も多い)
工事・休業・行事のお知らせのメモ(期間や場所だけを書いたもの。例「6/1〜6/14 東口」「3日間 全館」)を配り、「〜にわたって、〜」の放送の文を作って読ませる。聞き手はメモを見ずに聞き、期間と場所だけを書き取る。最後に、聞き手が「〜から〜まで、ずっと〜ですね」と確かめる言い方で返す。
初中級で学んだ「〜ことになっている」を、この課では注意や連絡の中で決まり・予定を伝える文末として聞き取ります。話し手が今その場で決めたことではなく、施設や会社の規則、前から決まっている予定、社会の習慣などを伝える形で、放送や説明会では丁寧な「〜ことになっております」の形でよく聞きます。「館内での飲食はご遠慮いただくことになっております」のように、相手にしてほしいこと・してほしくないことを、決まりとして柔らかく伝えるときにも使われます。この課の前の4つの形と組み合わさって、「〜に際しては、〜ことになっています」のような案内の文になることが多いので、文の最後まで聞いて「決まり」か「予定」かを判断させます。
Vる/Vない+ことになっている(丁寧には「〜ことになっています」、放送・案内では「〜ことになっております」)
学校・寮・図書館・ホテルなど、学生がよく知っている場所の決まりを一つずつ挙げさせ、放送の係になったつもりで「〜ことになっております」で言わせる。聞き手はそれが「しなければならないこと」か「してはいけないこと」かを手で示す(丸・ばつ)。続けて、同じ内容を友達に教える口調で「〜ことになってるよ」と言い換えさせる。
この課の言葉は、放送や案内に出る改まった言い方(ご利用・ご遠慮・お申し込み・開会・休館・点検・係員 など)と、日付・期間・場所を表す言葉(〜日間・〜週間・全館・各階 など)に分けて板書しておくと、聞き取りのメモが取りやすくなります。単語だけで覚えさせず、「ご利用に際しては」「全館にわたって」「ご遠慮いただくことになっております」のように、この課の形と組み合わせたかたまりで耳に慣らします。
宿題は、駅・学校・寮・アルバイト先などで実際に見たり聞いたりしたお知らせを一つ選び、この課の形を2つ以上使って、放送のように読める案内の文(3〜4文)を書いてくること。次のコマの最初に何人かに読み上げさせ、ほかの学生は「いつ」「何が」「どうしてほしい」をメモに書き取ってから、やさしい言い方で内容を言い直して振り返ります。
「〜に際して」と「〜にあたって」の違いは何ですか?
どちらも「〜のときに」と言い換えられる改まった形で、開店・入学のような始まりや、閉会・卒業のような終わりの節目ではどちらも使えます。「〜にあたって」はその節目に向き合って何かをする・お願いする、という場面で使われることが多く、台風・停電のような起きてしまった出来事には「〜に際して」のほうが自然です。授業では「迎える節目か、起きたことか」の2列の表で見せると選びやすくなります。
「〜に先立って」と「〜前に」はどう教え分ければいいですか?
「前に」は時間の順番だけを言う形で、毎日の動作にも使えます。「〜に先立って」は、後ろが式・大会・工事のような改まった本番で、前がそのための準備や前置きであるときに使います。導入では「授業の前にコーヒーを飲む」と「入学式に先立って写真を撮る」を並べ、「それは本番のためですか」と聞いて区別させます。
「〜にわたって」と「〜から〜にかけて」の違いは?
「〜から〜にかけて」は始まりと終わりをおおよそ示し、その間ずっとでなくてもかまいません。「〜にわたって」は示した期間や範囲の全体に続く・広がることを言い、話し手がそれを長い・広いと感じていることが多い形です。板書で点線(にかけて)と実線(にわたって)を描き分けると、聞き取りのときにも思い出しやすくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜に先立って」「〜に際して」「〜にあたって/あたり」「〜にわたって」まで、2コマ目で「〜ことになっている」の確認と、館内放送や説明会の案内を聞き取る目標の活動、まとめを行います。聞き取りに慣れていないクラスでは、目標の活動の放送を1本増やして、メモの取り方に時間をかけます。
「〜ことになっている」と「〜ことにしている」「〜ことになった」はどう見せますか?
「だれが決めたか」と「いつ決まったか」の2つの問いで分けます。「ことにしている」は自分で決めて続けている習慣、「ことになった」は最近だれかが決めた(決まった)知らせ、「ことになっている」は前からある決まりや予定です。3つの文を並べて板書し、それぞれの横に「自分」「最近」「前から」と書いておくと、放送の聞き取りでも使えます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。