これから何かに取り組む人が、心がまえや決心を言葉にする場面を扱う課です。決心を人に伝えるときは、何をする場面の話か(〜上で)→ もう決まった事実や自分の立場(〜以上は/〜からには)→ これからどうするか(〜ことなく続ける/二度と〜まい)の順に組み立てると、聞き手に覚悟が伝わります。5つの学習項目はほぼこの順に並んでいるので、一つずつ練習したあと、課の最後に「わたしの決意」の短いスピーチとインタビューにつなげます。「以上(は)」と「からには」はどちらも「〜のだから、当然〜」という筋道を作る形なので、後ろに来る文が義務・決意・当然の判断になることを押さえさせ、あわせて二つの文体の差を感じさせるのがこの課の芯です。
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 15分 | 「今年、何か心に決めたことはありますか。どうしてそう決めたんですか」と学生に聞き、二、三人の答えを「場面・理由・決意」の3列に分けて板書する。教師も自分の決心(毎朝30分歩く など)を短く話して見せ、この課は決心を筋道立てて伝える課だと予告する |
| 学習項目1 〜上で | 40分 | 時間の線を引き、「Vる上で(それをするときに大切なこと)」と「Vた上で(それを済ませてから次へ)」を線の上の位置で対比して板書する。「〜上で大切なのは〜です」の枠で、アルバイト・寮生活・発表など身近な活動について言わせる |
| 学習項目2・3 〜以上(は)/〜からには | 60分 | 同じ前の文(「リーダーを引き受けた」)から二つの形で文を作り、文体の目盛り(書き言葉・改まった話 ↔ ふだんの会話)の上に置いて板書する。後ろに来る文(義務・決意・当然の判断・希望)を表にまとめ、来ない文(偶然の出来事・過去の事実)も一行だけ見せる。1コマ目は〜以上(は)の導入と口頭練習までにし、2コマ目の最初に〜からには を同じ前の文で始めると、二つの形を比べやすい |
| 学習項目4 〜ことなく | 35分 | 「休まないで/休まずに/休むことなく」を文体の階段の形で並べ、ことなく が作文・報告・スピーチの原稿で使われることを示す。「一度も」「一日も」と組み合わせた形を練習する |
| 学習項目5 〜まい | 35分 | 初中級で習った「〜まい」の形の作り方を短く確かめてから、「二度と〜まい」「〜まいと決める/心に決める」に絞って練習する。会話では「〜ないようにしよう」「もう〜ないぞ」になることも並べて板書する |
| 目標の活動(決意のスピーチ・インタビュー) | 60分 | 「場面(〜上で大切なのは)→ 事実・立場(〜た以上は/〜からには)→ 決意(〜ことなく続ける/二度と〜まい)」の枠で、1分ほどの決意のスピーチ原稿を書かせて発表する。聞き手は「〜する上で、いちばん難しいのはどんなところですか」とインタビュー役になって質問する。原稿は2コマ目の宿題にしておき、3コマ目は発表とインタビューに時間を使う |
| まとめ | 25分 | 書き言葉と話し言葉の対照表(〜以上は/〜からには、〜ことなく/〜ないで、〜まい/〜ないようにしよう)を振り返り、宿題の作文のテーマをその場で決めさせる |
動詞の形によって二つの使い方があります。「Vる+上で」は「〜するときに・〜する場合に」「〜するために」という意味で、後ろには「大切だ・必要だ・欠かせない・役に立つ・問題になる」のような評価の言葉がよく来ます。何かに取り組む前に、そのとき気をつけることを言う形です。「Vた+上で」は「〜してから・〜を済ませたあとで」という意味で、前のことを先にきちんと済ませてから、後ろの行動(決める・申し込む・返事をする など)に進むことを表します。「Nの上で」(相談の上で・確認の上で)も同じ意味で、改まった場面でよく使います。決心を伝える場面では、「よく考えた上で決めました」と言うと、軽い気持ちで決めたのではないことが伝わります。
Vる+上で(〜するときに・〜するために)/Vた・Nの+上で(〜してから)。「上で」は「うえで」と読む
活動の絵カード(引っ越しをする・発表をする・面接を受ける など)を見せて「〜上で大切なのは〜ことです」の枠で言わせる。次に「決めたこと」のカード(留学・転職・部屋の契約)を出し、「〜た上で決めました」で、決める前に何をしたかを一文で言わせる。
「〜のだから、当然〜」という意味です。前には、もう決まって変えられない事実や、自分の立場・役目(引き受けた・約束した・学生である など)が来て、後ろには、そこから当然出てくる義務・決意・判断(〜なければならない・〜つもりだ・〜べきだ・〜はずだ・〜わけにはいかない・〜しかない)が来ます。「は」はあってもなくても意味は同じですが、「以上は」と言うと前の事実を強く取り立てる感じになります。ややかたい表現で、書き言葉や改まった話(あいさつ・スピーチ・会議)でよく使います。数の「3人以上」の「以上」とは別の使い方です。
V普通形・い形容詞普通形+以上(は)/Nである・な形容詞である+以上(は)(名詞とな形容詞は「である」をはさむ)
前の文のカード(約束した・申し込んだ・学生である・社会人になった)を引かせ、「〜以上(は)」のあとに義務か決意を続けさせる。慣れたら教師が後ろの文の種類(義務・決意・判断)をカードで指定し、同じ前の文から3つの文を作らせる。
「〜以上(は)」とほぼ同じで、「〜のだから、当然〜」「〜するのなら、最後まで〜」という意味です。前にはもう決めたこと・始めたこと・決まった立場が来て、後ろには強い決意・義務・希望(〜たい・〜てほしい・〜つもりだ・〜なければならない)が来ます。「以上(は)」より会話でも使いやすい傾向があり、話し手の気持ちの強さが出る言い方です。「やるからには」「来たからには」のように、自分で選んだことを前に置いて、自分を奮い立たせるときによく使います。後ろに「〜だろう」を置いて、「〜するのだから、きっと〜だろう」という推測を表すこともあります。
V普通形・い形容詞普通形+からには/Nである・な形容詞である+からには(「Vる」も「Vた」も使う)
「始めたこと」のカード(ピアノを習い始めた・留学を決めた・部長になった)を引かせ、「〜からには」で希望か決意を言わせる。次に同じカードで「以上(は)」の文も作らせ、二人一組で「会議で言うなら」「友達に言うなら」と場面を指定し合って選ばせる。
「〜しないで」「〜せずに」という意味の書き言葉です。ふつうなら起こりそうなこと(休む・あきらめる・迷う・失敗する)が起こらないまま、ある状態や行動が続いたことを表し、「一度も」「一日も」「最後まで」とよくいっしょに使います。報告書・新聞・作文・スピーチの原稿など、改まった文章で出ることが多く、ふだんの会話では「〜ないで」「〜ずに」のほうが自然です。決心を表すときは「途中であきらめることなく、続けていきたい」のように、これからの態度を言う文にも使えます。
Vる(辞書形)+ことなく(会話の形は「Vないで」「Vずに」)
会話の文(「一回もあきらめないで練習した」「迷わずに答えた」)をカードで渡し、作文の文に書き換えさせる。次に「あなたがこれから続けたいこと」を一つ決めさせ、「〜ことなく〜続けていきたい」の形で決意の一文を書かせる。
初中級で習った「〜まい」の続きで、この課では強い否定の決心「絶対に〜しない」に絞ります。「二度と〜まい」「もう〜まい」の形で、同じ失敗をくり返さないと心に決めるときによく使います。人に向かって言うより、心の中の決心や、それを文章にするときの言い方で、「〜まいと決める・心に決める・誓う」の形にすると、自分のことも他の人の決心も書けます。かたく古風な響きがあるので、会話では「もう〜ないぞ」「〜ないようにしよう」と言うのがふつうです。「〜まい」には「〜ないだろう」という推量の使い方もありますが、この課では扱わず、決心に絞ります。
グループⅠ(五段動詞)は辞書形+まい(行くまい)。グループⅡ(一段動詞)は「食べまい」「食べるまい」、「する」は「するまい・すまい」、「来る」は「来るまい・こまい」などの形がある
失敗の絵カード(財布を忘れた・電車を乗り過ごした・宿題を出し忘れた)を見せ、「二度と〜まいと決めた」で日記の一文を書かせる。次に同じ決心を友達に話す形(「もう〜ないようにする」)に言い替えさせ、書き言葉と話し言葉の両方を口に出させる。
決心を表す言葉(決める・心に決める・誓う・覚悟・責任・全力・最後まで・二度と・一度も)は、単語として一つずつ覚えさせるより、「心に〜」「責任を〜持つ」「全力で〜」のような連語の形で、この課の文型の後ろに入れて練習します。「二度と〜まい」「一度も〜ことなく」のように、副詞と文型を組で覚えさせると、課の最後のスピーチ原稿にそのまま使えます。
宿題は、これから取り組むこと(試験・仕事・習いごと・日本での生活 など)を一つ選び、「〜上で大切なのは〜だ」→「〜た以上(は)/〜からには〜」→「〜ことなく〜続けたい」または「二度と〜まい」の順で、200〜300字の「わたしの決意」を書くこと。次のコマの最初に何人かに読み上げさせ、聞き手に「いちばん決意が伝わった文はどれですか」と聞いてから、以上(は)とからには の選び方が場面に合っているかを全員で確かめます。そのあと、抑えられない気持ちを表す第23課に進みます。
第22課の「Vる上で」と「Vた上で」は、どう教え分ければいいですか?
時間の線を引き、ある行動の点の真上に「Vる上で(それをするときに大切なこと)」、点の右に「Vた上で(それを済ませてから次へ)」を置いて対比します。後ろに来る言葉も分けて見せ、る上で のあとは「大切だ・必要だ」のような評価、た上で のあとは「決める・申し込む」のような次の行動が多いと示すと、取り違えが減ります。
「〜以上(は)」と「〜からには」の違いは何ですか?入れ替えられますか?
どちらも「もう決まったのだから、当然〜」という筋道を作る形で、多くの文で入れ替えられます。違いは傾向で、以上(は)は改まった話や文章、からには は会話でも使いやすく、「〜たい」で自分を奮い立たせる言い方に合います。どちらかを誤りとせず、場面を指定して選ばせるのがよいでしょう。後ろに偶然の出来事が来にくい点は共通です。
「〜ことなく」と「〜ないで」「〜ずに」はどう違いますか?
意味は近く、違うのは文体と使う場面です。〜ないで がいちばんふつうの形で、〜ずに は少しかたく、〜ことなく は報告書・記事・スピーチの原稿のような書き言葉で使います。また ことなく は「一日も休むことなく」のように、起こりそうなことが起こらないまま続いたことに価値がある話に向き、日常の小さなことに使うと大げさに聞こえます。
「〜まい」は初中級でも出ましたが、この課では何を教えればいいですか?
形の作り方と強い否定の意志という意味は初中級で扱っているので、短く確かめるだけにします。この課では「二度と〜まい」「〜まいと心に決める」に絞り、課の流れ(〜上で→〜以上(は)・〜からには→〜ことなく・〜まい)の中で決意の文章を作るところまで進めます。人に向かって言うときは「〜ないようにします」と言い替えることも、あわせて練習します。
この課は何コマで終わりますか?
90分×3コマが目安です。1コマ目で〜上で と〜以上(は)、2コマ目で〜からには・〜ことなく・〜まい、3コマ目で決意のスピーチとインタビュー、まとめを行います。スピーチの原稿を2コマ目の宿題にしておくと、3コマ目を発表と振り返りに使えます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。