意見文やスピーチで、自分の主張を根拠といっしょに言い切るための形を集めた課です。5つの形は、どれくらい強く言い切るかと何を言い切るかで整理すると教えやすくなります。「〜にほかならない」は「まさにこれだ」と一つに絞って言い切り、「〜にすぎない」は「それ以上のものではない」と小さく言い切り、「〜に違いない」は根拠から強く推し量り、「〜ほか(は)ない」は「ほかに道がない」と結論を一つに絞ります。一方で「〜と思われる/ように思われる」は、言い切りを少し弱めて、自分一人の思い込みではないと見せる書き言葉の形です。最後に、根拠→主張→反対の意見への答え、という意見文の骨組みの中で、強い形と控えめな形をどこに置くかを考えさせると、課の目標がそのまま練習になります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 町の地図を黒板に描いて公園の部分だけを緑に塗り、「公園は町の土地のどれくらいだと思いますか」と聞く。答えが出たら、「この町は公園が少ない」という意見を言うとき、日本語ではどんな形で強く言えるかを考えさせる。黒板の右に、強く言い切る形から控えめな形まで並べる「主張の強さのものさし」を用意しておく |
| 学習項目1 〜にすぎない | 20分 | 数字(わずか3%・たった5人)と「ただの〜」を使って、「それ以上のものではない」と小さく評価する形を入れる。主張の根拠として数字を出すときに使う、と押さえる |
| 学習項目2 〜ほかならない | 25分 | 「AはBにすぎない」と「AはBにほかならない」を並べ、小さく言う形と「まさにこれだ」と言い切る形の対にする。「〜のは、〜からにほかならない」で理由を一つに絞る形も入れる |
| 学習項目3 〜に違いない | 25分 | 証拠の絵(ぬれたかさ・電気のついた窓)から推し量る遊びで導入し、初級の「〜はずです」と比べる。根拠を先に言ってから「〜に違いない」で結ぶ順を板書で固定する |
| 学習項目4 〜ほか(は)ない | 20分 | 選択肢を一つずつ消していく図で、「残る道はこれだけ」という結論を入れる。初中級の「〜しかない」を思い出させ、書き言葉ではこちらを使うことを確かめる |
| 学習項目5 〜と思われる/ように思われる | 25分 | 「私は〜と思う」「〜と思われる」「〜ように思われる」を並べ、だれの考えか・どれくらい言い切っているかを比べる。レポートや意見文の結論に使う形として、ものさしのいちばん控えめな側に置く |
| 目標の活動(根拠のある1分スピーチ) | 45分 | 「スマホは子どもに必要か」「日本の駅はなぜ時間どおりに電車が来るか」などの題から一つ選び、根拠1つ→主張→反対意見への一言、の順で1分話す。強い形(ほかならない・違いない)と控えめな形(と思われる)を一つずつ必ず入れ、聞き手は「その根拠は何ですか」と一つ質問する |
| まとめ | 10分 | ものさしに5つの形を置き直し、話し言葉で言いかえるとどうなるか(「〜だけだ」「〜こそ〜だ」「きっと〜」「〜しかない」「〜みたいだ」)を横に書いて、硬さと強さを一覧にして残す |
「ただ〜だけで、それ以上のものではない」と、ものごとの程度や価値を小さく評価して言い切る形です。数や割合に付けると「思ったより少ない・わずかだ」という意味になり、名詞に付けると「本当の答えや大事なものではなく、ただの〜だ」という意味になります。「わずか」「たった」「ただの」「単なる」「〜の一つ」などといっしょに使われることが多く、話し手の「大したことではない」という見方がはっきり入ります。意見文では、「反対しているのは一部の人にすぎない」「それは一つの例にすぎない」のように、相手の見方を小さくしてから自分の主張を出す根拠として使えます。
N(数・割合も)+にすぎない/V普通形+にすぎない(「〜たにすぎない」が多い。な形は「〜であるにすぎない」。丁寧には「〜にすぎません」)
数字のカード(わずか2%・たった1日・100人中3人)と話題のカード(日本の森林以外の土地・試験の勉強時間・女性の社長)を組み合わせ、「〜は〜にすぎない」で一文を作らせる。そのあと「だから、〜と言える」を一文足させ、小さく評価した数字を主張の根拠につなげる練習にする。
「AはBにほかならない」で、「Aはまさに・ほかでもないBだ」と、ほかの可能性を消して一つに言い切る形です。「ほかならない」は「ほかのものではない」ということで、「〜だ」よりもずっと強い断定になります。ものごとの本当の姿・原因・責任を「これだ」と示すときに使い、とくに「〜のは、〜からにほかならない」の形で、理由を一つに絞って強調することがよくあります。硬い言い方なので、意見文・論文・スピーチ・あいさつで使い、友達との会話ではふつう「〜こそ〜だ」「まさに〜だ」などを使います。「〜にすぎない」が小さく評価するのに対し、こちらは大事なものとして示すので、二つを並べると「AはBにすぎない、と言う人もいるが、実はCにほかならない」という主張の形が作れます。
N+にほかならない/普通形+から+にほかならない(理由を言うとき)(「〜ことにほかならない」の形もある。丁寧には「〜にほかなりません」)
「〜は、〜からにすぎない」と言う人に反論する形で、「いいえ、〜からにほかならない」と言い直させる(例: 「あの店がはやっているのは、安いからにすぎない」→「いいえ、店員の対応がいいからにほかならない」)。ペアで、相手の見方を小さくする側と、本当の理由を言い切る側を交代しながら練習する。
見たこと・聞いたこと・知っていることなどの根拠から、「きっとそうだ、まちがいない」と話し手が強く確信して推し量る形です。はっきり確かめたわけではないけれど、ほとんど断定に近い気持ちで言います。初級の「〜はずだ」も強い推量ですが、「〜はずだ」は知識や理屈から考えて当然そうなる、という筋道に重点があり、「〜に違いない」は話し手が「これだ」と思う確信の強さに重点があります。そのため、「寒いはずだ。雪が降っている」のように理由が分かって納得する使い方や、「来るはずなのに、来ない」のように予想が外れた場面は「はず」だけが使えます。一方、勘や直感から「犯人はあの人に違いない」と言うのは「違いない」のほうが自然です。少し硬い言い方で、作文やスピーチ、物語に多く、会話では「きっと〜と思う」「〜に決まっている」もよく使われます。
普通形+に違いない(な形とNは「だ」を付けない: 静かに違いない・学生に違いない。丁寧には「〜に違いありません」)
「証拠のカード」(駅に人があふれている・部屋から笑い声が聞こえる・テストが早く返ってきた 等)を引かせ、「〜から、〜に違いない」で推し量らせる。聞き手は「本当に? ほかの理由は考えられない?」と一つ反論し、言った人は根拠をもう一つ足して主張を守る。最後に何枚かを「〜はずだ」に言い換えられるか、全体で確かめる。
ほかに方法も選ぶ道もないので、そうするしかない、という結論を表す形です。本当はそうしたくない・残念だという気持ちがあっても、事情を考えると残る道はそれだけだ、というあきらめや覚悟が入ることが多い形です。初中級で学んだ「〜しかない」と意味は同じですが、「〜ほか(は)ない」のほうが硬く、意見文・説明文・改まったあいさつで使います。「〜よりほか(は)ない」「〜ほかしかたがない」の形もあります。意見文では、いくつかの方法を比べてだめな理由を一つずつ言ってから、最後に「だから〜ほかない」で結論を一つに絞る、という使い方ができます。
Vる(辞書形)+ほか(は)ない(「〜よりほか(は)ない」「〜ほかしかたがない」とも言う。丁寧には「〜ほか(は)ありません」)
困った場面のカード(パスポートをなくした・締め切りが明日・雨で試合が中止)を引かせ、だめな方法を二つ言ってから「だから、〜ほかない」で結論を言わせる。そのあと同じ内容を友達に言う形で「〜しかない」に言いかえさせ、硬い形とくだけた形を口で比べる。
「思われる」は「思う」の自発の形(受身と同じ形)で、「自然にそう考えられる」という意味です。「私は〜と思う」と言うと話し手個人の考えになりますが、「〜と思われる」は「私は」を出さずに、資料や状況から見て、だれが考えてもそうなるだろうという形で、客観的に、そして少し控えめに主張する書き言葉の形です。レポート・論文・新聞・ニュースの説明でよく使われます。「〜ように思われる」は、はっきりした根拠よりも見た感じ・印象からそう感じられる、ということで、「と思われる」よりもさらにやわらかく、言い切りを避けた言い方になります。強く断定するとかえって説得力がなくなる場面(データが少ない・相手の意見に反対する)で、主張の強さを一段下げる道具として使います。
普通形+と思われる/普通形+ように思われる(「ように」の前は な形な・Nの: 静かなように・問題のように。丁寧には「〜と思われます」)
強い主張の文(「この問題の原因はスマホだ」「この店は必ずつぶれる」)を配り、データが少ない場面を想定して「〜と思われる」「〜ように思われる」に書き直させる。次に、同じ内容をスピーチの最後で強く言う場合は「〜に違いない」「〜にほかならない」に戻させ、ものさしの上で強さを上げ下げする練習にする。
この課の言葉は、数や割合を言う言葉(わずか・たった・割合・全体・一部)と、意見文の骨組みを作る言葉(根拠・原因・結果・以上の理由から・一方で)に分けて板書しておくと、5つの形をどこで使うかが見えやすくなります。とくに「わずか〜にすぎない」「〜からにほかならない」「以上の理由から〜ほかない」は、かたまりでカードにして覚えさせます。
宿題は、身近な問題(ごみ・スマホ・アルバイト・日本の生活 など)を一つ選び、根拠→主張→反対の意見への答え、の順で400字程度の意見文を書くこと。5つの形のうち3つ以上を使い、強い形(にほかならない・に違いない)と控えめな形(と思われる・ように思われる)を少なくとも一つずつ入れる。次のコマの最初に何人かに読ませ、聞いた学生が「いちばん強く言い切っていた文」と「控えめに言っていた文」を一つずつ挙げ、その強さが根拠に合っていたかを話し合います。
第37課の5つの形はどの順で教えればいいですか?
本の学習項目の順(にすぎない→ほかならない→に違いない→ほか(は)ない→と思われる)のままで教えやすく組めます。「にすぎない」と「ほかならない」は小さく言う・これだと言い切るの対なので続けて入れ、「に違いない」は既習の「はずです」と比べます。最後に「と思われる」で強さを下げ、黒板の「主張の強さのものさし」に5つを並べると、課全体が一枚の表にまとまります。
「〜にすぎない」と「〜しかない」の違いは何ですか?
どちらも少ないと評価しますが、「しかない」は会話でも使えるくだけた形で、後ろに否定が来ます(5人しかいない)。「にすぎない」は書き言葉の硬い形で、名詞や数字に直接付きます(5人にすぎない)。初級の「〜すぎます(多すぎる)」と取り違える学習者もいるので、「すぎます=多い/にすぎない=少ない」を逆向きの矢印で見せておきます。
「〜に違いない」と「〜はずだ」はどう教え分けますか?
「はず」は知識や理屈から当然そうなる筋道、「違いない」は話し手の確信、と分けます。どちらも言える文(10年住んでいたから英語が上手なはずだ/上手に違いない)を先に見せ、そのあとで「はず」だけが使える2つの場面、予想が外れた「来るはずなのに来ない」と、理由が分かった「だから寒いはずだ」を表にします。勘からの断定(犯人はあの人に違いない)は「違いない」のほうが自然です。
「〜ほかならない」と「〜ほか(は)ない」を学習者が混ぜたらどうしますか?
形と意味を2列の表に分けて板書します。左は「Nにほかならない=まさにそれだ(言い切り)」、右は「Vるほか(は)ない=方法がそれだけだ(結論)」です。前に来るのが名詞(理由なら「〜から」)か、動詞の辞書形か、で見分けさせると混同が減ります。ペア練習でも、一人が言い切りの文、もう一人が結論の文を言う役に分けると、違いが残りやすくなります。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で「にすぎない」から「に違いない」までの3つ、2コマ目で「ほか(は)ない」「と思われる」と、目標の活動の1分スピーチを行います。意見文の宿題を出して次のコマの最初に読ませると、5つの形の強さを根拠と合わせて振り返れます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。