「AだからBになるはずだ」という予想を、後ろの文で裏切る言い方=逆接を、話すときにも文章を読むときにも使えるようにする課です。初級の「〜が」「〜けど」「〜のに」「〜ても」に、中級では「〜ながら」「〜といっても」「〜ものの」「〜からといって」が加わりますが、どれも前の文から生まれる予想が少しずつ違うので、「前の文を聞いて、ふつうは何を予想するか」→「後ろの文はその予想をどう裏切ったか」の2段で整理すると混ざりません。項目の中に順接の「〜たら」が入っているのは、予想どおりに進む「〜たら」と、予想を裏切る「〜ても」を対にして見せるためだと考えられます(この教案の推測です)。読解では、逆接の言葉のあとに書き手の言いたいことが来ることが多いので、逆接に印を付けて読む練習を課のまとめにすると、課の目標がそのまま読む力になります。
目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 黒板に「雨が降った →(ふつうは)試合は中止」と書き、「でも、試合はありました」と続けて、予想が裏切られる文のつなぎ方を「逆接」と呼ぶことを確かめる。初級の「〜けど」「〜のに」「〜ても」を学生に出させて黒板の左に並べ、右にこの課の新しい形を置いていくと予告する |
| 学習項目1 〜ながら | 35分 | 「歩きながら考える」と「知っていながら黙っていた」を並べ、前に来る言葉の種類(動作か状態か)で意味が変わることを見せる。「残念ながら」「狭いながらも」などの決まった形をかたまりで入れる |
| 学習項目2 〜といっても | 30分 | 「料理ができる」と聞いて相手が想像することを出させ、実際はそれほどではない、と言い足す形として導入する。相手の思い込みを小さく直す会話で使わせる |
| 学習項目3・4 〜ものの・〜からといって | 50分 | 「〜ものの」は「〜けれども」の書き言葉として、予定どおりに進まなかったことを書く文で入れる。「〜からといって」は「一つの理由で決めつけていいか」という問いで導入し、後ろの「〜とは限らない」「〜わけではない」とセットで板書する |
| 学習項目5・6 〜たら/〜ても | 45分 | 同じ前半で「〜たら、予想どおり」「〜ても、予想と違う」の2本の矢印を書き、順接と逆接の対で整理する。「〜ても」は「12月になっても」のように、もう起きた事実にも使えることを確かめる |
| 逆接の形の整理 | 30分 | 「前の文から生まれる予想」「後ろの文の裏切り方」「硬さ」の3列の表に6つの形と初級の「〜のに」を入れさせる。後ろに命令や意志の文が来られる形と来られない形もここで確かめる |
| 目標の活動(逆接に印を付けて読む) | 50分 | 教師が作った400字ほどの短い文章(新しい考えが最初は受け入れられなかった、という話題)を配り、逆接の言葉に印を付けさせる。印の前で「この先、何が書いてありそうか」を予想させてから続きを読み、書き手のいちばん言いたい一文を選ばせる |
| まとめ | 20分 | 表を見ながら、それぞれの形を使った一文を自分のことで書かせ、硬い形(ものの・ながら)は作文、やわらかい形(といっても・からといって・ても)は会話で、と使い分けを確かめる |
初級で学んだ「〜ながら」は、二つの動作を同時にすること(音楽を聞きながら勉強する)でした。この課の「〜ながら」は逆接で、「〜のに」「〜けれども」に近く、前の事実から予想されることと違うことが後ろに来ることを表します。逆接になることが多いのは、前に「知っている」「ある」「いる」のような状態を表す言葉や、形容詞・名詞が来るときで、「知っていながら黙っていた」「子どもながら、しっかりしている」のように使います。動作の動詞でも「注意されながら、同じ間違いをくり返す」のように逆接に読める文があるので、最後は前後の意味で見分けます。「残念ながら」「勝手ながら」「わずかながら」「我ながら」などは決まった言い方として、会話でもお知らせの文でもよく使われます。全体としてはやや硬い言い方で、「〜ながらも」と「も」を付けると逆接であることがはっきりします。
Vます形の語幹/Vている → Vていながら/い形+ながら/な形の語幹・N+ながら(「も」を付けて「〜ながらも」とも言う)
黒板の左に状態の言葉(知っている・お金がある・日本に住んでいる・子ども・小さい)、右に予想と違う結果のカードを並べ、組み合わせて「〜ながら(も)、〜」の文を作らせる。そのあと教師が「〜ながら」の文をいくつか読み上げ、学生に「同時」か「逆接」かを手で示させて、聞いて見分ける練習を入れる。
前の言葉は本当だけれど、その言葉から相手が想像するほどではない、と後ろで実際の程度を言い足す逆接です。「旅行に行った」と聞けば相手は遠くへ何日も、と想像しますが、「旅行といっても、近くの温泉に一泊しただけです」と言えば、その想像を小さく直せます。後ろには「〜だけ」「〜くらい」「それほど〜ない」のように程度を下げる言い方が来ることが多く、自分のことを控えめに言うときにもよく使われます。文の頭に「といっても、〜」と置いて、前の人の話や自分の前の文を補うこともできます。
普通形+といっても(N・な形は「だ」があってもなくてもよい: 社長といっても/静かだといっても)
「大きく聞こえる言葉」のカード(社長・旅行・引っ越し・ピアノが弾ける・大学で教えている)を引かせ、「〜といっても、〜だけ/〜くらい」で実際の小ささを言い足させる。そのあと、ペアの一人がカードの言葉で大げさにほめ、もう一人が「いえ、〜といっても」で控えめに返す会話にする。
「〜けれども」と同じ逆接ですが、書き言葉や改まった話で使われる硬い言い方です。前の事実を認めたうえで、そこから予想される次の段階に進まなかった・うまくいかなかったことを後ろで言うことが多く、「引き受けはしたものの、気が進まない」「申し込んだものの、まだ準備ができていない」のように、気持ちや状況が前に進まない様子を表します。後ろには命令・依頼・誘い・強い意志の文は来ません。「とはいうものの」の形で文の頭に置き、前の文の内容を認めながら反対の内容を続けることもあります。
普通形+ものの(な形は「な」か「である」、Nは「である」: 便利なものの・学生であるものの)
「始めたこと」のカード(ジムに入った・料理の本を買った・資格の勉強を始めた・ブログを作った)を引かせ、「〜ものの、〜」で、そのあと進まなかったことを作文の一文で書かせる。次に同じ内容を友達に話す口調の「〜けど」に戻させ、書き言葉と話し言葉を行き来させる。
「〜という理由がある」ことは認めたうえで、その理由だけで、ふつう考えられる結論になるとは限らない、と言う逆接です。「ブランド品だからといって、長持ちするとは限らない」のように、後ろには「〜とは限らない」「〜わけではない」「〜ことはない」「〜てはいけない」などの否定や、決めつけをいましめる言い方が来ます。相手や世間の決めつけを直したり、自分のことを言い訳したりするときによく使われ、話し言葉では「〜からって」とも言います。なお、文章では「頭が痛いからといって、彼は先に帰った」のように、その人がそう理由を言って何かをした、という引用の意味で使われることもあるので、読むときは後ろの文で見分けます。
普通形+からといって(N・な形は「だ」を付ける: 日曜日だからといって・好きだからといって。話し言葉では「〜からって」)
学生がよく言われる決めつけ(留学生だから〜・若いから〜・男の人だから〜・日本に十年いるから〜)を黒板に集め、「〜からといって、〜わけではない/とは限らない」で一つずつ直させる。そのあと、落ち込んでいる友達を「〜からといって、〜ことはない」で励ます短い会話にする。
初級で学んだ条件の「〜たら」です。ここでの「〜たら」は順接の条件で、前のことが起きると、予想どおりの結果が後ろに来る使い方です。逆接の課に並ぶのは、予想どおりに進む「〜たら」と、予想を裏切る「〜ても」を対にして見せるためと考えると、教えやすくなります(「雨が降ったら中止です」と「雨が降っても実施します」)。また、「〜たら、〜た」の形で、してみたら、思っていたのと違う結果だったという発見を表すこともあり(「行ってみたら、店が閉まっていた」)、予想と結果のずれを語る文章ではこの使い方もよく出ます。この課では新しい意味を足すより、「〜たら」の後ろに来るのは予想どおりの結果か、それとも意外な発見か、を読み分ける練習に使います。
Vた/い形かった/な形・Nだった+ら(初級の復習)
前半のカード(物価が上がる・人口が減る・駅ができる・円が安くなる)を引かせ、まず「〜たら、〜」で予想どおりの結果を言わせ、次に同じ前半で「〜ても、〜」と予想を裏切る結果を言わせる。最後に「〜てみたら、〜た」で、自分が予想と違う経験をしたことを一つずつ話させる。
初級で学んだ逆接の「〜ても」です。「雨が降っても行きます」のように、まだ起きていないことを仮に考えて、それでも結果は変わらないと言う使い方(仮定)と、「12月になっても雪が降らない」「何度説明しても分かってもらえない」のように、もう起きた事実から予想されることが起きないと言う使い方があります。中級では、「たとえ〜ても」「いくら〜ても」「どんなに〜ても」と組み合わせて意味を強める形も使えるようにします。同じ逆接の「〜のに」との違いは、「〜のに」が実際に起きた事実や今の事実に使い、意外さや不満の気持ちが強く出ること、仮定の話には使えないことです。「〜ても」は仮定にも事実にも使え、後ろに「〜ます」「〜ましょう」のような意志の文も来られます。
Vて+も/い形くて+も/な形・Nで+も(初級の復習。たとえ・いくら・どんなに と組み合わせる)
「まだ起きていないこと」と「もう起きたこと」の2色のカードを用意し、引いた色に合わせて仮定の「〜ても」か事実の「〜ても」で文を作らせる。事実のカードの文は「〜のに」にも言い換えさせ、どちらが不満の気持ちが強く聞こえるかをペアで話し合わせる。
この課の言葉は、逆接の形の前に来る「予想を生む言葉」(有名・高い・約束する・申し込む など)と、後ろに来る「予想を裏切る言葉」(〜とは限らない・〜だけ・まだ〜ない など)に分けて板書すると、形の使い方と結び付けて覚えられます。読む練習では、逆接の言葉そのもの(しかし・ところが・〜ながら・〜ものの など)にも印を付けさせ、文章の中で見つけたら「この先に書き手の言いたいことがある」と考える習慣を付けます。
宿題は、自分が「最初は思っていたのと違った」経験(日本に来る前の想像と実際・始めた習い事・アルバイトなど)を一つ選び、「〜ながら」「〜といっても」「〜ものの」「〜からといって」「〜ても」のうち3つ以上を使って、300字ほどの文章に書くこと。書き終わったら、自分の文章の逆接の言葉に印を付け、そのあとに書いた一文が言いたいことになっているかを確かめさせる。次のコマの最初にペアで交換して読み、相手の文章の「いちばん言いたい一文」を当て合って振り返ります。
第33課の逆接の形は、どの順で教えればいいですか?
最初に初級の「〜けど」「〜のに」「〜ても」を学生に出させ、「前の文からふつう何を予想するか」を毎回言わせる習慣を付けてから、本の順に「〜ながら」→「〜といっても」→「〜ものの」→「〜からといって」と進めます。「〜たら」と「〜ても」は最後に2本の矢印の図で対にすると、順接と逆接の違いがはっきりします。終わりに6つの形を表にまとめると、混同が減ります。
「〜ながら」と「〜ものの」はどう違いますか?
どちらも硬い逆接ですが、逆接の「〜ながら」は「知っていながら」のように状態の言葉や形容詞・名詞に付き、状態と行動の食い違いを言います。「〜ものの」は「申し込んだものの」のように動詞のた形にもよく付き、前のことはしたが次の段階に進まない、うまくいかないことを言います。どちらも後ろに命令や誘いを置きにくいので、会話でそう言いたいときは「〜けど」に戻させます。
「〜といっても」と「〜からといって」の違いは?
「〜といっても」は前の言葉が本当だと認めて、相手が想像するほどではないと程度を小さく直す形で、後ろに「〜だけ」「〜くらい」が来ます。「〜からといって」は理由を認めたうえで、その理由だけで決めつけることを否定する形で、後ろに「〜とは限らない」「〜わけではない」が来ます。形が似ているので、後ろに来る言葉の枠を板書でセットにして見分けさせます。
「〜ても」と「〜のに」の違いはどう説明しますか?
「〜のに」は実際に起きたことにだけ使い、意外さや不満の気持ちが強く出ます。「〜ても」は「あした雨が降っても」のような仮定にも、「12月になっても」のような事実にも使え、後ろに意志の文も来られます。事実の「〜ても」を「〜のに」に言い換えさせて気持ちの強さを比べると、違いがつかみやすくなります。
この課は何コマで終わりますか?
この教案では90分×3コマを目安にしています。1コマ目に導入と「〜ながら」「〜といっても」、2コマ目に「〜ものの」「〜からといって」「〜たら」「〜ても」、3コマ目に逆接の整理表と、逆接に印を付けて読む活動、まとめを置きます。読む活動を宿題の作文に回せば、2コマ半ほどに縮められます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。