話や文章が何を対象にしているのかをはっきり示す言い方を集めた課です。5つの形は、手本のとおりにすることを言う「〜通りに」、話題や対象を示す「〜について」「〜に関して」、根拠や基準を示す「〜に基づいて」、意見が分かれる中心を示す「〜をめぐって」の4組に分けると整理しやすくなります。「〜について」は初中級で学んだ形なので、この課では「〜に関して」と並べて、硬さの違いと名詞の前の形(についての/に関する)の使い分けを押さえ直します。人に作業の手順を伝える場面と、制度や決まりの変更を知らせるお知らせ・ニュースを読む場面の両方で使わせると、どの形がどんな文章に出るかが見えてきます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が「アルバイトを始めた日、店長から何を教えてもらいましたか」と聞き、仕事のやり方を教えてもらったときの言い方を集める。続けて、駅や市役所の掲示の写真(規則の変更のお知らせ)を見せ、「これは何についてのお知らせですか」と聞く。指示する・お知らせを読む、の二つの場面で、話の対象をはっきり示す形がこの課に5つあると予告する |
| 学習項目1 〜通りに/通りに | 30分 | 教師が折り紙を折りながら「わたしが折るとおりに折ってください」と言い、学生にまねさせて導入する。「説明書どおりに」「地図のとおりに」と前の語を替え、「とおり」と「どおり」の読み分けを板書で整理する |
| 学習項目5 〜について/ついての(復習) | 15分 | 初中級で学んだ形を、「きょうは新しいレジの使い方について説明します」のように、指示を始める一言で思い出させる。名詞の前では「についての」になることも確かめ、次の「〜に関して」と比べる土台にする |
| 学習項目2 〜に関して/関する | 30分 | 同じ内容を、友達との会話(「〜について」)とお知らせの文(「〜に関して」)で書き分けて見せ、硬さの違いを確かめる。名詞の前の「に関する」を、お知らせや記事の見出しの形として練習する。1コマ目はここまで |
| 学習項目3 〜に基づいて | 25分 | 「〜通りに」は手本と同じにする、「〜に基づいて」は根拠・基準にして考える・決める、の違いを、レシピどおりの料理と、調査の結果に基づいて決めた計画の2つの例で比べる。2コマ目の最初に、宿題のお知らせの題を何人かに読ませてから入る |
| 学習項目4 〜をめぐって | 25分 | 「何について」と「だれとだれが」を矢印で結んだ図で導入する。後ろには議論する・対立する・意見が分かれる のような動詞が来ることを、短いニュースの文で確かめる |
| 目標の活動(手順の指示とお知らせの読み取り) | 35分 | 前半は、ペアで一人が簡単な作業(地図をかく・図形を組み立てる)の手順を「〜通りに」で指示し、もう一人が言われたとおりにやってみる。後半は、教師が作った短いお知らせとニュースの文を読み、「何についての話か」「何に基づいて決まったか」「何をめぐって意見が分かれているか」を答える |
| まとめ | 10分 | 5つの形を「手本」「話題」「根拠」「議論の中心」の4つの箱に置き直し、会話向きの形と書き言葉向きの形、名詞の前の形を一覧にして残す |
前に来る言葉(人が言ったこと・説明・見本・予定・自分の考えなど)を手本にして、それと同じようにする、また、そのとおりのことが起こる、ということを表します。人に作業を教えるとき、「わたしがやるとおりにやってください」「説明書どおりに組み立ててください」のように、何をまねすればよいかをはっきり示せるので、指示の言葉としてとても便利です。「思ったとおり」「予想どおり」のように、前から考えていたことと結果が同じだった、という意味でもよく使われ、反対に「計画どおりに進まない」は、前に考えていたようには物事が進まない、ということです。前に動詞や「この・その」が来るときは「とおり」、名詞に直接付くときは「どおり」と読みます。
Vる/Vた+とおりに、Nの+とおりに、この・その・あの+とおりに(読みは「とおりに」)/N+どおりに(読みは「どおりに」。予定どおりに・説明どおりに)。名詞の前では「〜とおりの N/〜どおりの N」、文末では「〜とおりだ/〜どおりだ」
絵のカード(簡単な図形の並び・道順の地図・料理の手順)をペアの片方だけに見せ、「〜とおりに」「〜どおりに」を使って相手に指示させ、相手は言われたとおりに紙にかく。終わったら絵と比べ、「指示のとおりでしたか」「予定どおりにできましたか」と聞き合う。読みの練習として、教師が言う語(説明・予定・約束・この・言った)に「とおりに/どおりに」を付けて言わせ、読み分けを速く回す。
話・質問・調査・決まり・情報などが何を対象にしているかを示します。意味は「〜について」とほぼ同じですが、「〜に関して」のほうが硬く、お知らせ・ニュース・報告・説明会・ビジネスのメールなど、改まった話や書き言葉でよく使われます。名詞の前では「〜に関する N」になり、「個人情報に関する注意」「新しい制度に関するお知らせ」のように、記事の見出しや書類の題名によく出てきます。「関する」は「関係する」ということなので、その話題だけでなく、それに関係すること全体を広く指す感じがあります。丁寧な話では「〜に関しまして」、話題を取り立てて言うときは「〜に関しては」も使われます。
N+に関して(V)/N+に関する+N(書き言葉では「に関しての N」も使われる。改まった話では「〜に関しまして」)
話題のカード(ごみの出し方・駐車場・アルバイトの時間・図書館の利用時間)を引かせ、①友達に話す「〜について」の一文、②掲示板に貼るお知らせの題「〜に関するお知らせ」、③説明会の始めの一言「〜に関して説明いたします」の3つを作らせる。同じ話題を3つの場面で言い換えることで、硬さと名詞の前の形を同時に練習する。
決まり・データ・調査の結果・事実・経験・計画などを根拠や基準にして、考えたり、決めたり、何かを作ったりすることを表します。何を根拠にしているかをはっきり示すので、「法律に基づいて手続きをします」「アンケートの結果に基づいて、メニューを変えました」のように、説明・報告・お知らせなど、理由をきちんと示したい文章でよく使われます。名詞の前では「〜に基づいた N」「〜に基づく N」(「事実に基づいた映画」「経験に基づく助言」)、書き言葉では「〜に基づき、〜」も使われます。「〜通りに」が手本と同じ形にすることを言うのに対し、「〜に基づいて」は手本をそのまま写すのではなく、それを土台にして判断する・作ることを言います。
N+に基づいて(V)/N+に基づいた・に基づく+N/書き言葉では N+に基づき、〜(読みは「もとづいて」)
根拠のカード(調査の結果・学校の規則・去年の経験・天気予報)と、決めることのカード(文化祭の出し物・遠足の日・クラブの練習時間)を組み合わせ、「〜に基づいて〜ことにしました」の一文を作らせる。言えたら、ほかの学生が「何に基づいて決めたんですか」と聞き、言った学生が根拠を答える。最後に同じ内容を、お知らせの文「〜に基づき、〜」に書き直させる。
ある事柄を中心にして、いろいろな人の意見が分かれたり、議論や対立が起きたりしていることを表します。「めぐる」はもとは「周りを回る」という意味で、一つの問題の周りで何人もの人が話し合ったり争ったりしている様子を思い浮かべると分かりやすい形です。そのため後ろには、議論する・話し合う・対立する・争う・意見が分かれる・問題が起きる・裁判になる のような動詞や言葉が来ます。ニュースや新聞、報告など書き言葉で多く使われ、名詞の前では「〜をめぐる N」(「計画をめぐる議論」)、書き言葉では「〜をめぐり、〜」も使われます。一人で調べる・説明する・書く のように、議論や対立のない動作には使いません。
N+をめぐって(議論・対立を表す V)/N+をめぐる+N(議論・対立・問題 など)/書き言葉では N+をめぐり、〜
教師が作った短いニュースの文を3つ読ませ、「何をめぐって」「だれとだれが」「どうなっているか」を表に書き出させる。次に、学生の身近な話題(寮のルール・クラスの旅行先・ごみの出し方)を一つ選ばせ、「〜をめぐって、〜と〜の意見が分かれています」の形で、架空のニュースの一文を作って読み上げさせる。
初中級で学んだ「〜について」を、この課では「〜に関して」と比べながら使い直します。話す・聞く・考える・調べる・説明する・書く・知っている などの話題や対象を示す形で、会話でも文章でも使える、いちばん基本の形です。名詞の前では「〜についての N」になります(「マナーについての質問」)。「〜に関して/関する」と意味はほぼ同じですが、「について」のほうがやわらかく、友達との会話や授業・仕事の指示の始めなど、日常の話でよく使われます。名詞の前は、会話や身近な文章なら「についての」、お知らせ・記事の見出し・書類の題なら「に関する」が選ばれることが多い、と整理しておくと使い分けやすくなります。
N+について(V)/N+についての+N(話題を取り立てるときは「〜については」)
学習項目2の練習で作った「〜に関するお知らせ」の題を、友達に話す文「〜についての話なんだけど」に言い換えさせ、逆に、会話の文「〜について聞きたいんだけど」を、先生へのメールの文「〜に関してお聞きしたいことがあります」に書き直させる。2つの形を行ったり来たりさせ、意味は同じで硬さが違うことを体で覚えさせる。
この課で扱う言葉は、制度や決まりに関する言葉(法律・規則・改正・手続き・条例 など)と、作業の手順を伝える言葉(説明書・手順・図・見本 など)に分けて板書しておくと、「〜に関する」「〜に基づいて」「〜通りに」のどれと結びつきやすいかを考える材料になります。単語だけで覚えさせず、「法律に基づいて」「規則に関するお知らせ」「説明書どおりに」のように、形と組み合わせたかたまりでカードを作って練習します。
宿題は、自分の身近な決まり(寮・アルバイト先・学校のルールなど)を一つ選び、①その決まりについてのお知らせを「〜に関するお知らせ」の題と「〜に基づき」を使った本文で100〜150字で書くこと、②後輩にその決まりの守り方を「〜とおりに」「〜どおりに」を使って教える会話を3〜4行で書くこと。次のコマの最初に何人かにお知らせを読ませ、聞いた学生が「何についてのお知らせか」「何に基づいて決まったか」を答えて振り返ります。そのあと、「〜をめぐって」で、その決まりについてどんな意見の違いがありそうかをクラスで話し合います。
「〜について」と「〜に関して」の違いは何ですか?
どちらも話題や対象を示し、意味はほぼ同じです。違いは硬さで、「について」は会話でも文章でも使えるやわらかい形、「に関して」はお知らせ・ニュース・説明会・ビジネスのメールなど改まった場面で選ばれやすい形です。名詞の前では「についての N」「に関する N」と形が変わるので、この2つを2列の表にして板書すると混ざりにくくなります。
「とおりに」と「どおりに」はどう教えればいいですか?
前に何が来るかで読みが決まる、と表で見せます。動詞・「この/その」・「Nの」のあとは「とおり」、名詞に直接付くときは「どおり」です。「地図のとおり=地図どおり」を並べ、「の」があれば「と」、なければ「ど」と覚えさせると速く定着します。語カードに「とおりに/どおりに」を付けて言わせる練習を、短く何度も回すのが効果的です。
「〜に基づいて」と「〜通りに」はどう区別させますか?
「通りに」は手本と同じ形・同じ手順にすること、「に基づいて」は根拠を土台にして自分で判断する・作ることです。レシピどおりに作った料理と、家族の好みの調査に基づいて考えた料理を並べ、「手本と同じものができたのはどちらか」と聞くと違いが見えます。前に来る語も、「通りに」は説明・見本・予定、「に基づいて」は規則・データ・調査の結果・経験が多いと添えます。
「〜をめぐって」はどんな言葉と一緒に使いますか?
後ろには、議論する・話し合う・対立する・争う・意見が分かれる・問題になる のような、何人かの意見がぶつかることを表す言葉が来ます。一人で調べる・説明する・書く には使わず、その場合は「について」です。ニュースや新聞の書き言葉に多く、名詞の前では「〜をめぐる議論」「〜をめぐる対立」の形でよく見ます。
第26課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で「〜通りに」と「〜について」「〜に関して」の比べまで、2コマ目で「〜に基づいて」「〜をめぐって」と、手順の指示・お知らせとニュースの読み取りの活動を行います。「について」の名詞の前の形が固まっていないクラスでは、1コマ目に5分ほど足して2列の表で固め直すと、あとの比べがスムーズになります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。