日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初中級 第1課「今度ぜひ教えていただけませんか」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

初中級の最初の課で、メールや電話で人に何かを頼む場面を扱います。頼みごとは、いきなり用件を言うより、いまの自分の状況(〜ているところです)→何についての話か(〜について)→頼み(〜てくれませんか/〜ていただけませんか)の順に組み立てると、相手が受け止めやすくなります。この課の3つの学習項目はちょうどこの順に並んでいるので、一つずつ練習したあと、課の最後にこれをつないで1本の電話と1通のメールにします。初級で習った「〜てくれました」「〜ていただけませんか」を、相手との関係と、話すか書くかに合わせて選び分けられるようにするのがこの課の芯です。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 動作をする前・している途中・終わったすぐあとを「〜ところだ」で言い分け、頼む前に自分がいまどんな状況かを説明できる
  • 「〜について」で用件の中身を先に示し、「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」のように話を切り出せる
  • 「〜てくれない?」「〜てくれませんか」「〜ていただけませんか」「〜ていただけないでしょうか」を、相手との関係と場面に合わせて選べる
  • 名乗る・事情・用件・頼み・お礼の順で、頼みごとの電話をかけ、同じ用件をメールに書ける

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分「最近、だれかに何かを頼みましたか。会って・電話で・メールで、どうやって頼みましたか」と学生に聞く。そのあと教師が、友達あての短いメッセージと先生あてのメールを1通ずつ板書し、どちらがだれあてかを当てさせる。丁寧さの違いと、どちらも頼む前に何かを説明していることに目を向けさせ、この課は「上手に頼む」課だと予告する
学習項目1 〜ところだ30分教師の動作を前・途中・直後で止めて3つの形を見せ、時間の線に置いて板書する。電話で「今〜ているところなので」と出られない理由を言う形まで
学習項目2 〜について…25分メールの件名から入り、「〜について聞く・調べる」と「〜についての+名詞」を色分けして板書。「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」で話を切り出す練習へ
学習項目3 〜くれませんか40分一つの頼みを友達・先輩・先生・会社の部長に向けて言い替え、丁寧さの段を階段の形で板書する。くれる・もらえる・いただける の向きは初級の矢印で軽く確かめる
頼み方の組み立て20分3つの項目をつなぎ、「前置き(お忙しいところすみません)→事情(〜ているところです)→用件(〜について)→頼み(〜ていただけませんか)→お礼」の枠を板書する。教師の見本の電話を聞かせ、どこがどの部分かを学生に指させる
目標の活動(電話のロールプレイ・メール作文)40分役のカード(頼む人・頼まれる人・二人の関係・用件)を配り、ペアで電話をかける。頼まれる側は「今〜ているところなので」と一度都合を言ってもよい。そのあと同じ用件を、宛先に合った丁寧さでメールに書かせる
まとめ15分話すときと書くときで変わる言い方(〜てくれない?/〜ていただけないでしょうか、〜について/〜につきまして)を表にして振り返り、宿題のメールの宛先と用件をその場で決めさせる

学習項目 1 〜ところだ

意味・はたらき学習項目 1

動作がいまどの段階にあるかを表します。「Vる+ところだ」はその動作をする直前(これからするところ)、「Vている+ところだ」は動作の途中、「Vた+ところだ」は動作が終わったすぐあとです。「ところ」はもともと場所の言葉ですが、ここでは時間の流れの中の一点を指しています。頼みごとの電話やメールでは、「いま〜を探しているところなんですが」のように自分の状況を先に伝えて、頼む理由にするときによく使います。「ちょうど〜しようと思っていたところです」は、相手の話が自分の予定とちょうど重なったことを伝える言い方です。

接続

Vる/Vている/Vた+ところだ(丁寧な形は「ところです」。「Vていたところだ」「Vようと思っていたところだ」の形もある)

形
Vるところです(これからする)Vているところです(している途中)Vたところです(終わったすぐあと)ちょうど〜ようと思っていたところです

導入

  • 教師の動作を写真のように止める教師がペットボトルを持ち、ふたを開ける直前で止めて「今から飲むところです」、飲んでいる途中で止めて「飲んでいるところです」、机に置いた直後に「今、飲んだところです」と言う。黒板に左から右へ時間の線を引き、3つの形を線の上の点(前・途中・直後)に置いて板書する。学生にも同じ動作をさせ、ほかの学生に3つのどれかを言わせる。
  • 電話に出られない理由として使う教師が電話を受けるまねをして「すみません、今、会議をしているところなので、あとでかけ直します」と言い、学生に「この人はなぜ今話せないんですか」と聞く。いまの状況を言うことが、断りや頼みの理由になることを確かめてから、「今、〜を探しているところなんですが…」と頼みの前置きにつなげる。

板書案

Vる / Vている / Vた + ところです
〔時間の線〕 前(Vる)――――●途中(Vている)――――●直後(Vた)
今から 出かける ところです。 今、出かけている ところです。 今、帰った ところです。
今、アルバイトを 探している ところなんですが、少し お聞きしても いいですか。
〔赤〕ところ 〔青〕時間の線の上に3つの点

場面と発話(自作)

  • レポートの資料が見つからない留学生が、図書館のカウンターに電話をかける。今、レポートの資料を探しているところなんですが、少しお聞きしてもいいですか。
  • 友達から「今から駅に来られる?」と電話があった。ちょうど家を出ようとしていた。ちょうど今、出るところ。10分で行くね。
  • 先輩から「メール、見た?」とメッセージが来た。たった今読み終わったところだ。はい、今読んだところです。すぐお返事します。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

時間の線の板書を残したまま、動作の絵カード(ご飯を食べる・宿題をする・電話をかける など)と「前・途中・直後」の矢印を組み合わせて出し、3つの形を言い分けさせる。次に「電話がかかってきました。今、何をしているところですか」と聞き、出られない理由を言って「あとでかけ直します」まで一続きで言わせる。

  1. 口頭教師がペットボトルを開ける・黒板に字を書く・ドアを開けて出ていく、の3つの動作を前・途中・直後で止め、全員→列→個人の順で「飲むところです」「書いているところです」「出ていったところです」と言わせる。次に絵カード(ご飯を食べる・宿題をする・バスに乗る・手紙を書く)と時間の線の矢印(前・途中・直後)を組み合わせて出し、矢印だけを替えて形を言い分けさせる。最後は「電話がかかってきました。今、何をしているところですか」と聞き、電話に出られない理由として言わせる。
  2. ペアAに「いまの状況カード」(料理をしている途中・家を出る直前・試験が終わった直後 など)を伏せて持たせ、Bが電話をかける役で「もしもし、今、ちょっといい?」と聞く。Aはカードを見て「ごめん、今、料理をしているところだから、あとでかけ直すね」のように断るか、「今、試験が終わったところだから、いいよ」と受ける。Bはカードを見ずに、Aの答えから状況を言い当てる。5枚で交替する。
  3. 産出「手がはなせない電話」: 学生が自分のふだんの生活の中から電話に出にくい時間を一つ選び、その時間に電話がかかってきた設定で、相手(友達・アルバイト先の店長)に合わせて「今〜ているところなので」と事情を言い、いつかけ直すかまで言う。教師が見るのは、動作の段階と形が合っているか、「いる・ある」のような状態の動詞に付けていないか、時間がたったことに「〜たところ」を使っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「Vたところだ」を、時間がたったことにも使う(「*去年日本に来たところです」)。「たところ」は終わってすぐのときにしか使えない。少し時間がたっていても話し手が「最近」と感じていることを言うなら「〜たばかりです」を使う、と2つを並べて見せる
  • 「Vるところです」と「Vているところです」を取り違え、食べている途中なのに「今食べるところです」と言う。文としては正しいが意味が変わるので、時間の線の板書に戻って、どの点の話かを指させる
  • 状態を表す動詞に付ける(「*今、家にいるところです」)。「ところだ」は動きのある動作に付けるので、状態は「今、家にいます」で十分だと示す

既習の文型との違い

  • 〜ています(1)〜(3)(初級Ⅰ第10課)「〜ています」は動作の進行だけでなく、住んでいる・めがねをかけているのような状態にも使えます。「〜ているところです」は、ある動作がちょうど今その途中にあることだけを言う形で、続いている状態や毎日の習慣には使いません。「毎朝、公園を走っているところです」のように習慣に付けると意味が通らなくなるので、「今この時の話か」を確かめさせます。
  • 〜あとで、…(初級Ⅰ第16課)「ご飯を食べたあとで、薬を飲みます」は2つの動作の順番を言う形で、どれだけ時間がたったかは問いません。「〜たところです」は動作が終わったすぐあとの今の状況を言う形で、後ろに別の動作を続けなくても文が終わります。「食べたところです」を「食べたあとです」と言い換える学習者には、時間の線の上で「すぐあと」の点を指させます。
関連する文型

学習項目 2 〜について…

意味・はたらき学習項目 2

話す・聞く・調べる・考える・書くなどの動作が、何を内容・テーマにしているかを示します。後ろに動詞が来るときは「NについてVる」、名詞が来るときは「Nについての+名詞」(〜についての質問・〜についての資料)になります。頼みごとでは、最初に「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」と用件の中身を示すと、相手は何の話かが分かったうえで聞くことができます。メールや改まった手紙、お知らせでは「〜につきまして」という丁寧な形もよく使われます。

接続

N+について+V(話す・聞く・調べる・考える・説明する など)/N+についての+N

形
Nについて聞く/調べる/説明するNについての+N(〜についての質問)〜についてお聞きしたいことがあるんですがNにつきまして(メール・手紙の丁寧な形)

導入

  • メールの件名から入る黒板に件名だけのメールを3通書く(「来週の授業について」「奨学金の申し込みについて」「アルバイトのシフトについて」)。「このメールには何が書いてあると思いますか」と学生に聞き、件名を見ただけで中身の見当がつくことを確かめる。「について」の前が話のテーマだと押さえてから、「〜について聞く・調べる・説明する」と動詞につなげる。
  • 「について」と「についての」を色分けする「日本の大学について調べています」と「日本の大学についての本を借りました」を上下に並べて板書し、後ろが動詞か名詞かで形が変わることを色で示す。学生に、いま知りたいことや興味のあることを一つずつ言わせ、「〜について調べたい」「〜についての本を読みたい」の両方の形で言わせる。

板書案

N + について + V(聞く・調べる・話す・考える)
N + についての + N(質問・資料・説明会)
奨学金について 聞きたいです。 奨学金についての 説明会に 行きました。
〔赤〕について(後ろが動詞) 〔青〕についての(後ろが名詞)
件名:来週の授業について → 来週の授業について お聞きしたいことが あるんですが、…

場面と発話(自作)

  • 大学院に進みたい留学生が、大学の事務室に電話をかける。来年の入学試験についてお聞きしたいことがあるんですが、今よろしいでしょうか。
  • ゼミの先生に、来週の発表の相談をしたい。メールの書き出しを書く。来週の発表のテーマについて、ご相談したいことがあります。
  • 会社に入ったばかりの人が、休みの取り方が分からず、先輩に聞く。休みの取り方についての決まりを、教えてもらえませんか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

学生が実際に聞きたいことを一つずつカードに書き、「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」で話を切り出す練習を、相手役(事務室の人・先生・友達)を替えて回す。そのあと同じカードで、メールの件名「〜について」と書き出しの1文を書かせる。

  1. 口頭テーマの語カード(寮・アルバイト・試験・図書館・ビザ)を出し、教師が「寮・聞きたい」とキューを出して「寮について聞きたいです」と言わせる。次に同じカードに「本」「質問」「説明会」のカードを足し、「寮についての説明会」と名詞につなぐ形に切り替える。最後は「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」の切り出しを、語カードを替えて全員→個人で速く言わせる。
  2. ペアAは事務室の人の役で、案内の要点カード(図書館は夜9時まで・奨学金の申し込みは来月10日まで など)を持つ。Bは質問カードを持ち、必ず「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」で切り出してから質問する。Aは自分のカードにない質問には「それについては、ほかの窓口で聞いてください」と答える。3往復で交替し、カードを入れ替える。
  3. 産出「件名だけで伝わるメール」: 学生が実際に聞きたいことを3つ考え、メールの件名「〜について」と書き出しの1文を書く。隣の学生は件名だけを読んで、どんな用件かを当てる。当たらなかった件名は、テーマが広すぎないか(日本について→日本の大学の入学試験について)を二人で直す。教師が見るのは、後ろが名詞のときの「の」の落ち、テーマの絞り方、相手への態度を言う文に「について」を使っていないか。

つまずきと手当て

  • 後ろが名詞なのに「の」を落とす(「*これは日本の経済について本です」「*日本の経済について本を買いました」)。板書の色分けに戻り、後ろが名詞なら「についての」と確かめる
  • 相手に向けた態度や行動にまで「について」を使う(「*お客さんについて失礼な態度をとった」)。「について」は話や考えの中身、相手に向かう態度は「に対して」と分ける。くわしくは第13課の「〜に対して…」で扱う
  • テーマが広すぎて、何を頼みたいのかが伝わらない(「日本についてお聞きしたいんですが」)。文法の誤りではないので、教師が「日本の何について?」と聞き返し、用件を一つに絞って言い直させる

既習の文型との違い

  • 〜という…(初級Ⅱ第38課)「『日本の歴史』という本」は本の名前を紹介する言い方で、「日本の歴史についての本」は本の中身が何を扱っているかを言う言い方です。題名を言いたいのに「について」を使うと、名前ではなく話題を言ったことになります。本や映画の題名と中身の話題を並べて板書し、「名前なら という、中身なら について」と分けます。
  • 〜か/〜かどうか…(初級Ⅱ第32課)「試験がいつあるか聞きたいです」は具体的な問いを文の中に入れる形で、「試験について聞きたいです」は問いの中身を言わずにテーマだけを示す形です。電話の最初は「〜について」でテーマを示し、そのあとで「〜か」を使って具体的な問いを言う、という順にすると、聞き手が受け止めやすくなります。
関連する文型

学習項目 3 〜くれませんか

意味・はたらき学習項目 3

相手に、自分(または家族など自分の側の人)のために何かをしてほしいと頼む形です。初級で習った「〜てくれました」の「くれる」を頼みに使ったもので、「〜てください」より相手が断る余地を残すぶん、やわらかく聞こえます。「〜てくれますか」より、否定の形の「〜てくれませんか」のほうが丁寧です。友達や家族には「〜てくれない?」、目上の人や会社の人には「〜ていただけませんか」「〜ていただけないでしょうか」が自然で、「〜てくれませんか」はその中間、同じくらいの立場の人や親しい先輩などに向く言い方です。「〜てもらえませんか」「〜ていただけませんか」は「わたしがしてもらう」の形の頼み方で、意味はほぼ同じですが、少し丁寧に聞こえることが多いです。

接続

Vて+くれませんか(くだけた形:Vてくれない?/より丁寧な形:Vてもらえませんか・Vていただけませんか・Vていただけないでしょうか)

形
Vてくれない?(友達・家族に)VてくれませんかVてもらえませんか/VていただけませんかVていただけないでしょうか(目上の人・メールで)

導入

  • 同じ頼みを、相手を替えて言う「書類を見る」という一つの頼みを決め、黒板に友達・クラスの先輩・先生・会社の部長の絵を並べる。教師がそれぞれに向かって「見てくれない?」「見てくれませんか」「見ていただけませんか」「見ていただけないでしょうか」と言い、どの言い方がだれ向けかを学生に当てさせる。当てたものを階段の形に板書し、上に行くほど丁寧になることを見せる。
  • くれる・もらえる・いただける の向き初級の「〜てくれました」「〜てもらいました」の矢印(相手→わたし)の板書を出し、「くれませんか」は相手がする側から、「もらえませんか・いただけませんか」はわたしが受ける側からの言い方だと、矢印のどちらの端から見ているかで確かめる。どちらも相手にしてもらう頼みで意味はほぼ同じだと伝え、主語の話には深入りしない。

板書案

Vて + くれませんか
〔階段〕Vてくれない? → Vてくれませんか → Vていただけませんか → Vていただけないでしょうか
この書類を 見て くれませんか。
お忙しいところ申し訳ありませんが、推薦状を 書いて いただけないでしょうか。
〔赤〕て形 〔青〕相手 → わたし の矢印(くれる・もらえる・いただける)
前置き → 事情(〜ているところです)→ 用件(〜について)→ 頼み → お礼

場面と発話(自作)

  • 引っ越しの前の日、荷物が多くて困っている留学生が、同じアパートの友達に電話する。あしたの朝、ちょっと荷物を運ぶのを手伝ってくれない?
  • アルバイト先で書類の書き方が分からない。同じくらいの年の同僚に頼む。すみません、この書類の書き方を教えてくれませんか。
  • 就職に推薦状が必要になった留学生が、ゼミの先生にメールで頼む。お忙しいところ申し訳ありませんが、推薦状を書いていただけないでしょうか。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

相手の絵カード(友達・先輩・先生・部長)と頼みのカード(教える・待つ・見る・手伝う)を組み合わせて出し、相手に合う形をすぐに言わせる。慣れたら頼む前に「今〜ているところなんですが」「〜についてなんですが」を足させ、事情→用件→頼みの一続きで言わせる。

  1. 口頭相手の絵カード(友達・先輩・先生・会社の部長)と頼みのカード(教える・待つ・見る・手伝う・貸す)を組み合わせて出す。「友達・待つ」→「ちょっと待ってくれない?」、「同僚・教える」→「教えてくれませんか」、「先生・見る」→「見ていただけませんか」、「部長・書く」→「書いていただけないでしょうか」。最初は相手カードだけを替え、慣れたら頼みのカードも替えて、て形と丁寧さの段を同時に選ばせる。
  2. ペアAは困りごとカード(荷物が多い・漢字の読み方が分からない・傘を忘れた)を、Bは関係カード(あなたはAの友達/先輩/先生)を持つ。Bが関係カードを読み上げ、Aはそれに合う形で頼む。Bは引き受けるか、「今〜ているところなので」と事情を言って断るかを選ぶ。断られたら、Aは別の時間を聞いてもう一度頼む。3枚で交替する。
  3. 産出「頼み方の階段ロールプレイ」: 学生が自分の本当の頼みごとを一つ決め、同じ頼みを友達・アルバイト先の先輩・学校の先生の3人に続けて言う。3人目では前置き・事情・用件・頼み・お礼の枠をすべて入れる。教師が見るのは、て形が正しいか、相手と形の段が合っているか、自分がすることを言うつもりで「〜てくれませんか」を使っていないか、前置きが最後まで付いているか。

つまずきと手当て

  • 「て」を落としたり、て形を間違えたりする(「*教えくれませんか」「*待ちてくれませんか」)。頼みの練習の前に、動詞カードでて形だけを速く言わせる時間をとる
  • 先生や会社の上の人に「〜てくれませんか」「〜てくれる?」を使う。文法の誤りではないが、なれなれしく、または失礼に聞こえることがある。階段の板書に戻り、目上の人には「〜ていただけませんか」を選び直させる
  • 手伝いを申し出るつもりで「かばんを持ってくれませんか」と言ってしまい、相手に持ってほしいという頼みになる。「くれませんか」は自分のために相手がすることを頼む形で、自分がするなら「持ちましょうか」だと対比して見せる
  • 前置きの「お忙しいところ」を、学習項目1の「ところだ」と同じものだと思う。こちらは「忙しいときに」という意味の決まった言い方なので、「すみませんが」「申し訳ありませんが」とひとまとまりで覚えさせる

既習の文型との違い

  • 〜てください(初級Ⅰ第11課)「〜てください」は丁寧ですが指示に近く、相手が断る余地をあまり残しません。「〜てくれませんか」は質問の形で頼むので、相手が「はい」とも「すみません、ちょっと…」とも答えられる言い方になります。先生に「推薦状を書いてください」と言うのは文法の誤りではありませんが、強く聞こえるので、頼むときは質問の形にすると教えます。
  • 〜させてください/〜ていただけませんか(初級Ⅱ第39課)「早く帰らせてください」は自分がすることの許可を求める形で、「〜ていただけませんか」は相手にしてもらうことを頼む形です。早退したいのに「早く帰っていただけませんか」と言うと、相手に帰ってくれと頼んだことになります。だれが帰るのかを聞き返して、する人で形を選ばせます。
  • 〜が…を〜てくれました(初級Ⅰ第14課)「友達が駅まで送ってくれました」はしてもらったことを報告する形で、「〜てくれませんか」はこれからしてもらうことを頼む形です。どちらも相手からわたしへの矢印なので、同じ矢印の板書が使えます。頼んで引き受けてもらったあとに「〜てくれて、ありがとう」とお礼につなぐ練習にすると、過去の形との区別がつきます。
関連する文型

語彙の扱い

頼みごとの電話やメールで使う決まった言い方(お忙しいところ・申し訳ありませんが・かけ直す・よろしくお願いいたします など)と、メールの部品(件名・宛名・本文・署名)は、単語として一つずつ覚えさせるより、電話とメールの枠の中に入れた形で練習します。そうすると、課の最後の電話のロールプレイとメール作文にそのまま使えます。

この課の練習で使う語(10語・意味・連語・例文)

  • 頼む(たのむ) 自分のために何かをしてほしいと、人に言うことです。 仕事を〜・友達に〜・〜のを忘れる
    引っ越しの手伝いを、友達にお願いしたい。
    あしたの引っ越し、森さんに頼んでみます。
  • 都合(つごう) ある時間に何かができるかどうかという、その人の予定や事情のことです。 〜がいい・〜が悪い・〜を聞く
    先生に相談に行く日を決めたい。
    来週、先生のご都合のいい日はありますか。
  • 引き受ける(ひきうける) 人から頼まれたことを、自分がすると決めて受けることです。 仕事を〜・頼みを〜・喜んで〜
    同僚から、資料のコピーを頼まれた。
    いいですよ。わたしが引き受けます。
  • 断る(ことわる) 頼まれたことや誘いを、できないと言って受けないことです。 頼みを〜・誘いを〜・ていねいに〜
    アルバイトを頼まれたが、その日は試験がある。
    すみません、その日は試験なので、お断りしてもいいですか。
  • かけ直す(かけなおす) いったん切った電話を、あとでもう一度こちらからかけることです。 電話を〜・あとで〜・こちらから〜
    電車の中で電話がかかってきた。
    今、電車に乗っているところなので、あとでかけ直します。
  • 問い合わせる(といあわせる) 分からないことを、事務室や会社などに電話やメールで聞くことです。 事務室に〜・電話で〜・メールで〜
    奨学金の申し込み方が分からない。
    奨学金について、学生課に問い合わせてみます。
  • 相談する(そうだんする) どうしたらいいか、人に話して意見を聞くことです。 先生に〜・進学について〜・友達に〜
    大学院に進むかどうか迷っている。
    進学について、一度先生にご相談したいんですが。
  • 件名(けんめい) メールのいちばん上に書く、何についてのメールかを短く表した言葉です。 〜を書く・〜に入れる・〜だけで分かる
    先生にメールを送る前に、友達に見てもらう。
    件名に「レポートの提出について」と書いたほうがいいよ。
  • 締め切り(しめきり) 申し込みやレポートなどを出さなければならない最後の日や時間のことです。 〜に間に合う・〜が近い・〜を過ぎる
    推薦状を急いで頼まなければならない。
    締め切りが来週の金曜日なので、それまでに書いていただけないでしょうか。
  • 申し訳ない(もうしわけない) 相手に迷惑をかけて、とてもすまないと思う気持ちを表す丁寧な言葉です。 〜ありませんが・〜と思う・本当に〜
    忙しい先輩に、もう一度説明を頼む。
    申し訳ありませんが、もう一度説明していただけませんか。

宿題と次のコマ

宿題は、実際に頼みたいこと(先生への質問・友達への手伝い・事務室への問い合わせ など)を一つ決め、名乗る→事情(〜ているところです)→用件(〜について)→頼み→お礼の順で、宛先に合った丁寧さのメールを1通書くこと。次のコマの最初に何通かを読み上げ、相手役の学生に「このメールなら引き受けたくなりますか」と聞いて、足りない部分を直します。そのあと、理由を言って許可を求める第2課に進みます。

よくある質問

  • 「〜ところだ」の3つの形はどう導入すればいいですか?

    教師が一つの動作(ペットボトルを開けて飲む)を前・途中・直後で止め、黒板の時間の線の3つの点に「Vる」「Vている」「Vた」を置いて見せるのがいちばん伝わります。3つを一度に覚えさせるより、線の上の点を指して形を選ばせる練習を先にします。そのあとで、電話に出られない理由として使う場面に広げると、頼みごとの課の流れにつながります。

  • 「〜たところです」と「〜たばかりです」の違いは何ですか?

    「〜たところです」は動作が終わった直後の今の状況を言うので、「去年」「先月」のような時間の言葉とはいっしょに使えません。「〜たばかりです」は時間が少したっていても、話し手が「まだ新しい」と感じていることを言えます。「先月日本に来たばかりです」は自然ですが、同じ文を「〜たところです」にすると不自然になる、と2文を並べて比べさせます。

  • 「〜てくれませんか」と「〜ていただけませんか」はどう使い分けさせればいいですか?

    意味はほぼ同じで、違いは丁寧さと相手との関係です。友達には「〜てくれない?」、同じくらいの立場の人には「〜てくれませんか」、先生や会社の上の人には「〜ていただけませんか」「〜ていただけないでしょうか」と、階段の形の板書で段を見せます。迷ったら一段上を選ぶように言っておくと、目上の人になれなれしく聞こえる失敗を防げます。

  • 「〜について」と「〜に対して」の違いはこの課で教えますか?

    この課では「〜について」を話や考えの中身を示す形として練習するところまでにし、「〜に対して」は第13課で扱います。学習者が「*店員さんについて失礼な態度をとった」のように態度の向きに使い出したら、「相手に向かう気持ちや態度は、あとで習う〜に対して」とだけ言って止めておきます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜ところだ」「〜について」、2コマ目の前半で「〜てくれませんか」の丁寧さの段と頼み方の組み立て、後半で電話のロールプレイとメール作文をします。メール作文を宿題に回して次のコマの最初に読み合うと、2コマに収まります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。