初中級の最初の課で、メールや電話で人に何かを頼む場面を扱います。頼みごとは、いきなり用件を言うより、いまの自分の状況(〜ているところです)→何についての話か(〜について)→頼み(〜てくれませんか/〜ていただけませんか)の順に組み立てると、相手が受け止めやすくなります。この課の3つの学習項目はちょうどこの順に並んでいるので、一つずつ練習したあと、課の最後にこれをつないで1本の電話と1通のメールにします。初級で習った「〜てくれました」「〜ていただけませんか」を、相手との関係と、話すか書くかに合わせて選び分けられるようにするのがこの課の芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 「最近、だれかに何かを頼みましたか。会って・電話で・メールで、どうやって頼みましたか」と学生に聞く。そのあと教師が、友達あての短いメッセージと先生あてのメールを1通ずつ板書し、どちらがだれあてかを当てさせる。丁寧さの違いと、どちらも頼む前に何かを説明していることに目を向けさせ、この課は「上手に頼む」課だと予告する |
| 学習項目1 〜ところだ | 30分 | 教師の動作を前・途中・直後で止めて3つの形を見せ、時間の線に置いて板書する。電話で「今〜ているところなので」と出られない理由を言う形まで |
| 学習項目2 〜について… | 25分 | メールの件名から入り、「〜について聞く・調べる」と「〜についての+名詞」を色分けして板書。「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」で話を切り出す練習へ |
| 学習項目3 〜くれませんか | 40分 | 一つの頼みを友達・先輩・先生・会社の部長に向けて言い替え、丁寧さの段を階段の形で板書する。くれる・もらえる・いただける の向きは初級の矢印で軽く確かめる |
| 頼み方の組み立て | 20分 | 3つの項目をつなぎ、「前置き(お忙しいところすみません)→事情(〜ているところです)→用件(〜について)→頼み(〜ていただけませんか)→お礼」の枠を板書する。教師の見本の電話を聞かせ、どこがどの部分かを学生に指させる |
| 目標の活動(電話のロールプレイ・メール作文) | 40分 | 役のカード(頼む人・頼まれる人・二人の関係・用件)を配り、ペアで電話をかける。頼まれる側は「今〜ているところなので」と一度都合を言ってもよい。そのあと同じ用件を、宛先に合った丁寧さでメールに書かせる |
| まとめ | 15分 | 話すときと書くときで変わる言い方(〜てくれない?/〜ていただけないでしょうか、〜について/〜につきまして)を表にして振り返り、宿題のメールの宛先と用件をその場で決めさせる |
動作がいまどの段階にあるかを表します。「Vる+ところだ」はその動作をする直前(これからするところ)、「Vている+ところだ」は動作の途中、「Vた+ところだ」は動作が終わったすぐあとです。「ところ」はもともと場所の言葉ですが、ここでは時間の流れの中の一点を指しています。頼みごとの電話やメールでは、「いま〜を探しているところなんですが」のように自分の状況を先に伝えて、頼む理由にするときによく使います。「ちょうど〜しようと思っていたところです」は、相手の話が自分の予定とちょうど重なったことを伝える言い方です。
Vる/Vている/Vた+ところだ(丁寧な形は「ところです」。「Vていたところだ」「Vようと思っていたところだ」の形もある)
時間の線の板書を残したまま、動作の絵カード(ご飯を食べる・宿題をする・電話をかける など)と「前・途中・直後」の矢印を組み合わせて出し、3つの形を言い分けさせる。次に「電話がかかってきました。今、何をしているところですか」と聞き、出られない理由を言って「あとでかけ直します」まで一続きで言わせる。
話す・聞く・調べる・考える・書くなどの動作が、何を内容・テーマにしているかを示します。後ろに動詞が来るときは「NについてVる」、名詞が来るときは「Nについての+名詞」(〜についての質問・〜についての資料)になります。頼みごとでは、最初に「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」と用件の中身を示すと、相手は何の話かが分かったうえで聞くことができます。メールや改まった手紙、お知らせでは「〜につきまして」という丁寧な形もよく使われます。
N+について+V(話す・聞く・調べる・考える・説明する など)/N+についての+N
学生が実際に聞きたいことを一つずつカードに書き、「〜についてお聞きしたいことがあるんですが」で話を切り出す練習を、相手役(事務室の人・先生・友達)を替えて回す。そのあと同じカードで、メールの件名「〜について」と書き出しの1文を書かせる。
相手に、自分(または家族など自分の側の人)のために何かをしてほしいと頼む形です。初級で習った「〜てくれました」の「くれる」を頼みに使ったもので、「〜てください」より相手が断る余地を残すぶん、やわらかく聞こえます。「〜てくれますか」より、否定の形の「〜てくれませんか」のほうが丁寧です。友達や家族には「〜てくれない?」、目上の人や会社の人には「〜ていただけませんか」「〜ていただけないでしょうか」が自然で、「〜てくれませんか」はその中間、同じくらいの立場の人や親しい先輩などに向く言い方です。「〜てもらえませんか」「〜ていただけませんか」は「わたしがしてもらう」の形の頼み方で、意味はほぼ同じですが、少し丁寧に聞こえることが多いです。
Vて+くれませんか(くだけた形:Vてくれない?/より丁寧な形:Vてもらえませんか・Vていただけませんか・Vていただけないでしょうか)
相手の絵カード(友達・先輩・先生・部長)と頼みのカード(教える・待つ・見る・手伝う)を組み合わせて出し、相手に合う形をすぐに言わせる。慣れたら頼む前に「今〜ているところなんですが」「〜についてなんですが」を足させ、事情→用件→頼みの一続きで言わせる。
頼みごとの電話やメールで使う決まった言い方(お忙しいところ・申し訳ありませんが・かけ直す・よろしくお願いいたします など)と、メールの部品(件名・宛名・本文・署名)は、単語として一つずつ覚えさせるより、電話とメールの枠の中に入れた形で練習します。そうすると、課の最後の電話のロールプレイとメール作文にそのまま使えます。
宿題は、実際に頼みたいこと(先生への質問・友達への手伝い・事務室への問い合わせ など)を一つ決め、名乗る→事情(〜ているところです)→用件(〜について)→頼み→お礼の順で、宛先に合った丁寧さのメールを1通書くこと。次のコマの最初に何通かを読み上げ、相手役の学生に「このメールなら引き受けたくなりますか」と聞いて、足りない部分を直します。そのあと、理由を言って許可を求める第2課に進みます。
「〜ところだ」の3つの形はどう導入すればいいですか?
教師が一つの動作(ペットボトルを開けて飲む)を前・途中・直後で止め、黒板の時間の線の3つの点に「Vる」「Vている」「Vた」を置いて見せるのがいちばん伝わります。3つを一度に覚えさせるより、線の上の点を指して形を選ばせる練習を先にします。そのあとで、電話に出られない理由として使う場面に広げると、頼みごとの課の流れにつながります。
「〜たところです」と「〜たばかりです」の違いは何ですか?
「〜たところです」は動作が終わった直後の今の状況を言うので、「去年」「先月」のような時間の言葉とはいっしょに使えません。「〜たばかりです」は時間が少したっていても、話し手が「まだ新しい」と感じていることを言えます。「先月日本に来たばかりです」は自然ですが、同じ文を「〜たところです」にすると不自然になる、と2文を並べて比べさせます。
「〜てくれませんか」と「〜ていただけませんか」はどう使い分けさせればいいですか?
意味はほぼ同じで、違いは丁寧さと相手との関係です。友達には「〜てくれない?」、同じくらいの立場の人には「〜てくれませんか」、先生や会社の上の人には「〜ていただけませんか」「〜ていただけないでしょうか」と、階段の形の板書で段を見せます。迷ったら一段上を選ぶように言っておくと、目上の人になれなれしく聞こえる失敗を防げます。
「〜について」と「〜に対して」の違いはこの課で教えますか?
この課では「〜について」を話や考えの中身を示す形として練習するところまでにし、「〜に対して」は第13課で扱います。学習者が「*店員さんについて失礼な態度をとった」のように態度の向きに使い出したら、「相手に向かう気持ちや態度は、あとで習う〜に対して」とだけ言って止めておきます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜ところだ」「〜について」、2コマ目の前半で「〜てくれませんか」の丁寧さの段と頼み方の組み立て、後半で電話のロールプレイとメール作文をします。メール作文を宿題に回して次のコマの最初に読み合うと、2コマに収まります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。