日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初中級 第16課「町の様子は、時代とともに変わっていきます」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

日本に来てからの自分の変化や、住んでいる町が時間とともにどう変わってきたかを、まとまった話にして伝える力をつける課です。学習項目は、変化のきっかけを言う「〜て以来」、一方が変わるともう一方も変わることを言う「〜とともに」「〜に伴って」、過去から今までの続き・変化をまとめる「〜てきました」の四つで、どれも「きっかけ → 変化 → 今まで(とこれから)」という経験の話の部品になります。「とともに」「に伴って」はスピーチ・作文・お知らせで使う硬い言い方なので、ふだんの会話の言い方と並べて、場面で選べるようにします。板書は時間の線を1本引いて課の最後まで消さずに残し、「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱に形を足していくと、最後の経験を話す活動にそのままつながります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 自分の生活が変わったきっかけを「〜て以来」で言い、そこから今まで続いていることを話せる
  • 「〜とともに」「〜に伴って」で、一方の変化につれてもう一方も変わることを言い、スピーチ・作文・お知らせの文で読み取ったり使ったりできる
  • 「〜てきました」で過去から今までの続きと変化をまとめ、「〜ていきます」でこれからのことにつなげられる
  • 日本に来てからの経験を、きっかけ・変化・今までの順に、2分ほどのまとまった話にできる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分教師が自分の住んでいる町の駅前の「10年前」と「今」の様子を簡単な絵か写真で2枚見せ、「何が変わりましたか」と聞く。出てきた答え(店が増えた・人が多くなった)を黒板に残し、黒板の下に左(過去)から右(これから)へ時間の線を引いて、「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱を描く。この課の終わりには、自分の経験をこの三つの箱で話せるようにすると予告する
学習項目1 〜て以来…25分時間の線に「きっかけ」の旗を立て、旗から「今」まで太い矢印を引いて「〜て以来、ずっと〜ています」を導入。「〜てから」と並べ、一回だけのことには使いにくいことを確かめて「きっかけ」の箱へ
学習項目2 〜とともに…25分上下二本の矢印(年齢と体力・技術と生活)で、一方が動くともう一方も動く形を見せる。「一緒に」「同時に」の意味もあることを一言添え、どれも改まった言い方だと確かめて「変化」の箱へ
学習項目3 〜に伴って…30分駅ができる前と後の町の地図で、社会や町の大きな変化を言う形として導入。掲示のお知らせの「〜に伴い」も読ませ、「とともに」との違い(人には使わない・一回の出来事にも使う)を対比の表にして「変化」の箱に並べる。1コマ目はここまで。時間の線と三つの箱の板書は写真に撮っておき、2コマ目の初めに同じ形で描き直す
学習項目4 〜てきました30分2コマ目。初めに前のコマの三つの形を時間の線の上で5分ほど言い直してから入る。時間の線の上で、過去から今へ向かう矢印に「てきました」、今からこれからへ向かう矢印に「ていきます」を書く。初級の「買ってきます」(場所の移動)の絵と並べて違いを確かめ、「今まで」の箱へ
目標の活動(経験を話す)45分時間の線のプリントに、日本に来た日(日本語を始めた日)から今までのことをメモさせ、三つの箱の順に2分ほど話す。聞き手は「それ以来、〜んですか」「これからはどうしたいですか」と質問を一つずつ返す。相手を替えて2〜3回くり返し、回を重ねるごとにメモを見る回数を減らす
まとめ15分話した内容を作文の書き出し数行に書き直させ、話すときの「〜てから」「〜と一緒に」と、書くときの「〜て以来」「〜とともに」「〜に伴い」を見比べて終わる

学習項目 1 〜て以来…

意味・はたらき学習項目 1

「過去のある時(きっかけになった出来事)からあと、今までずっと同じ状態が続いている」ことを表します。後ろには「ずっと〜ている」「一度も〜ていない」「〜てきた」のように今まで続いていることを言う文か、「3回引っ越した」「一度だけ国に帰った」のように、その期間の中の回数をまとめて言う文が来ます。「〜てから」と似ていますが、「〜てから」は「Aのあとで一回Bをした」という順番にも使えるのに対し、「〜て以来」は一回の出来事だけを言う文には使いにくく、少し改まった言い方です。また、さっき・きのうのような近い過去より、ある程度長い期間を振り返るときに使います。

接続

Vて形+以来/N(入学・卒業・来日などの出来事の名詞)+以来。前の文の出来事を受けるときは「それ以来」

形
Vて以来、ずっと〜ていますVて以来、一度も〜ていませんN以来(入社以来・卒業以来)それ以来

導入

  • 時間の線にきっかけの旗を立てる黒板の時間の線の左に「この学校に来た(5年前)」と旗を立て、旗から「今」まで太い矢印を引く。教師が矢印をなぞりながら「わたしはこの学校に来て以来、毎朝7時半に教室の窓を開けています」と自分のことを言い、形を板書する。続けて学生に「日本に来てから、ずっと続けていることはありますか」と聞き、答えを矢印の上に書き込んで「〜て以来」の文に言い換えさせる。
  • 「〜てから」と並べて違いを見せる「日本に来てから、一度京都へ行きました」と「日本に来て以来、ずっと寮に住んでいます」を上下に並べ、上の文の「てから」を「以来」に替えられるか学生に考えさせる。上は線の上の一つの点、下は旗から今までの矢印だと絵で確かめ、矢印(今までの続きや、その間の回数のまとめ)のときに「以来」が自然だとまとめて「きっかけ」の箱に入れる。

板書案

Vて + 以来、ずっと〜ています/一度も〜ていません
N(入学・卒業・来日)+ 以来  前の文を受けて → それ以来
日本に来て以来、ずっと寮に住んでいます。
〔赤〕きっかけの旗 ━━━▶ 今(太い矢印) 〔青〕「〜てから」は線の上の一つの点
後ろ = 今まで続いていること(ずっと・一度も・〜ています)/その間の回数のまとめ(3回・一度だけ)

場面と発話(自作)

  • 就職の面接で、日本語の勉強を始めたきっかけを聞かれた留学生が答える。高校で日本の歌に興味を持って以来、毎日少しずつ日本語の勉強を続けています。
  • 駅で偶然、専門学校の同級生に会った。卒業してから一度も会っていなかった。わあ、久しぶり。卒業以来だね。元気だった?
  • 健康診断で、医者に最近の生活の変化を聞かれた会社員が答える。去年の春に自転車で通勤し始めて以来、一度も風邪をひいていません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

きっかけのカード(日本に来た・一人暮らしを始めた・アルバイトを始めた・スマホを替えた)を引き、「〜て以来、ずっと〜ています/一度も〜ていません」と自分のことを言う。聞いた人は「それ以来、〜んですか」と一言質問を返し、やり取りを一往復させる。

  1. 口頭きっかけの旗のカード(日本に来た・この学校に入った・一人暮らしを始めた・自転車を買った)と、続いていることの絵(自分で料理する・毎朝走る・自転車で通う)を一組ずつ見せる。教師「一人暮らしを始めた・料理」→ 全体で「一人暮らしを始めて以来、ずっと自分で料理しています」。次に名詞のキュー(入学・卒業・来日)で「入学以来」の形に替え、最後に✕の印のついた絵(風邪・国に帰る)で「一度も〜ていません」まで言わせる。一人ずつ当てるときは、て形の接続が崩れた学生に「始めます → 始めて → 始めて以来」と三段で言い直させる。
  2. ペアAは「きっかけ」のカード、Bは「続いていること」のカードを伏せて持つ。Aが1枚めくって「〜て以来、」まで言い、Bが自分のカードで文を終える。意味がつながらない組み合わせ(自転車を買って以来、一度も国に帰っていません)が出たら、二人でつながるカードを探して言い直す。3枚ごとに持つカードを交換する。慣れたら、Aが「〜て以来、何か変わったことはありますか」と聞き、Bが「それ以来、〜ています」で答える一往復にする。
  3. 産出「わたしのきっかけ年表」。プリントの時間の線に、自分の生活が変わった出来事を2つ書き込み、それぞれ「〜て以来」で今まで続いていることを1文ずつ話す。聞いた人は「それ以来、ずっと〜ていますか」と一つ質問する。教師が見るのは、動詞はて形・名詞は直接という接続、後ろが続いていること(ずっと・一度も・〜ています)になっているか、一回だけのことを後ろに置いていないか。一回のことが出たら、その文を「〜てから」に直して言わせる。

つまずきと手当て

  • 「*来た以来」「*卒業の以来」と接続を間違える。動詞はて形、名詞は直接つく、と二つの列に分けて板書し、「卒業して以来」と「卒業以来」の両方を言わせる
  • 一回だけのことを後ろに置く(「日本に来て以来、一度富士山に登りました」)。意味は通じるが不自然になる。後ろは旗から今までの矢印、つまり続いていることだと絵に戻り、一回のことは「〜てから」で言わせる。「日本に来て以来、一度だけ富士山に登りました」のように、その期間の中の回数のまとめにすれば自然になることも一言添える
  • ごく近い過去に使う(「さっき起きて以来、何も食べていません」)。誤りとまでは言いにくいが大げさに聞こえる。「以来」は月や年の単位で振り返るときの言い方だと、時間の線の長さで見せる

既習の文型との違い

  • 〜てから、…(初級Ⅰ 第11課)「〜てから」はAのあとでBをするという順番を言う形で、後ろは一回のことでも続いていることでもかまいません。「〜て以来」はきっかけから今までの矢印で、後ろは今まで続いている状態か、その期間の中の回数のまとめ(3回引っ越した・一度だけ国に帰った)です。一回の出来事だけを言うなら「〜てから」です。学習者は「日本に来て以来、一度京都へ行きました」のように一回のことを置きがちなので、その文は「てから」に戻させます。
  • 〜あとで、…(初級Ⅰ 第16課)「〜たあとで」は出来事の順番だけを言う形で、「授業が終わったあとで、図書館へ行きます」のようにこれからのことにも使えます。「〜て以来」は過去のきっかけから今までを振り返る形なので、これからのことには使いません。「あした国に帰って以来…」のように言いかけた学生には、時間の線で旗が「今」より左にあるかを確かめさせます。
関連する文型

学習項目 2 〜とともに…

意味・はたらき学習項目 2

この課の中心は「Aが変わると、それにつれてBも変わる」という使い方です(年齢とともに体力が落ちる・技術の進歩とともに生活が便利になる)。前にも後ろにも変化を表す言葉が来て、後ろには「〜てきた」「〜ていく」「〜ようになった」がよくいっしょに使われます。「とともに」には、ほかに「〜と一緒に」(家族とともに暮らす)と「〜と同時に」(合図とともに走り出す)の意味もあり、どの意味でも、ふだんの会話よりスピーチ・ニュース・作文などの改まった場面で使う硬い言い方です。友達と話すときは「〜と一緒に」「〜と同時に」や、「〜すると、〜も…」の形で言います。

接続

N+とともに/Vる(辞書形)+とともに(変化の意味では「年齢・時代・成長・進歩」のような名詞や「年を取る・増える」のような動詞がよく前に来る)

形
Nとともに(年齢とともに・技術の進歩とともに)Vるとともに(年を取るとともに)N(人)とともに(=一緒に)Vるとともに(=と同時に)

導入

  • 二本の矢印を並べて描く黒板に上下二本の右上がりの矢印を描き、上に「年齢」、下に「経験」と書く。教師が「年を取ると、経験も増えますね」と言ってから「年齢とともに経験が増えます」と言い換え、上の矢印が動くと下の矢印も動く形だと見せる。続けて下の矢印を右下がりに描き直して「年齢とともに体力が落ちます」と言い、増える・減るのどちらにも使えることを確かめる。
  • 三つの意味を絵で分ける二人が並んで歩く絵(一緒に)、笛とスタートの絵(同時に)、二本の矢印の絵(変化)を並べ、この課で中心に使うのは三つ目だと印をつける。三つとも、ふだんの会話の言い方(一緒に・と同時に・〜すると〜も)に言い換えさせ、「とともに」がどれも改まった言い方だと気づかせる。

板書案

N + とともに / Vる + とともに
年齢とともに、体力が落ちてきました。
〔赤〕上の矢印(年齢)↗ 〔青〕下の矢印(体力)↘ 一方が動くと、もう一方も動く
三つの意味 ①変化(年齢とともに)②一緒に(家族とともに)③同時に(合図とともに)
会話では → 〜すると、〜も…/〜と一緒に

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の卒業式で、留学生代表が2年間を振り返ってスピーチする。日本語が上達するとともに、日本人の友達の輪も少しずつ広がっていきました。
  • ふるさとの祭りについて、作文の中で今の様子を説明する。この祭りの形も、村の人口が減るとともに少しずつ変わってきた。
  • 4月の朝礼で、部長が新しい社員を迎えて話す。今年度は、新しい仲間とともにこの計画を進めていきます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

上の矢印のカード(年齢・技術・気温・日本語の力)と下の矢印のカード(体力・生活・服装・自信)を組み合わせ、「〜とともに〜てきました/〜ていきます」の文を作る。作った文を友達に話す形(〜すると、〜も…)にも言い換えさせ、スピーチ向きか会話向きかを比べる。

  1. 口頭上の矢印のカード(年齢・気温・技術の進歩・日本語の力)と下の矢印の絵(体力・服・生活・自信)を一組ずつ見せる。教師「年齢・体力」→ 全体で「年齢とともに、体力が落ちてきました」。次に動詞のキュー(年を取る・寒くなる・町が大きくなる)で「Vるとともに」の形に替える。最後に同じ内容を会話の形(年を取ると、体力も落ちます)に戻させ、二つを続けて言い比べる。
  2. ペア「スピーチ係」と「友達係」。スピーチ係がカードの組で「〜とともに」の文を言い、友達係は同じ内容を会話の言い方(〜すると〜も/〜と一緒に)に言い換える。言い換えが合っていれば役を交替する。次に三つの意味の絵カード(並んで歩く二人・スタートの笛・二本の矢印)を混ぜて伏せ、引いた人が絵に合う「とともに」の文を言い、相手がどの意味かを当てる。
  3. 産出「卒業スピーチの一文」。日本語を勉強してきた期間を振り返り、「〜とともに、〜ようになりました/〜てきました」を使ったスピーチの文を2つ書いて、前に出て読む。聞いた人は、その文を友達に話すなら何と言うかを一つ言う。教師が見るのは、前も後ろも変化になっているか、名詞に直接・動詞は辞書形という接続、会話の場面に硬い言い方を持ち込んでいないか。

つまずきと手当て

  • 「*時代のとともに」「*年を取ったとともに」と接続を間違える。名詞には直接つく、動詞は辞書形、と板書の列で確かめる
  • 友達との会話で「きのう、友達とともに映画を見た」と言って硬すぎる。誤りではないが場面に合わないので、スピーチの文と会話の文を並べ、会話では「一緒に」と言うと見せる
  • 前は変化なのに、後ろに一回の出来事を置く(「技術の進歩とともに、新しいスマホを買った」)。意味がつながりにくいので、後ろも「だんだん・少しずつ変わること」にして、二本の矢印の絵に戻る

既習の文型との違い

  • 〜と…へ(移動表現)(初級Ⅰ 第4課)初級の「友達と京都へ行きます」の「と」は一緒にする相手を言う形で、ふだんの会話にそのまま使えます。「とともに」も「家族とともに暮らす」のように一緒の意味になりますが、スピーチや作文の改まった言い方です。友達との話で「友達とともに映画を見た」と言う学習者には、会話なら「友達と(一緒に)」で十分だと示します。
  • 〜と、…(初級Ⅰ 第15課)「春になると、暖かくなります」は、前のことが起こると後ろのことが起こるという条件の形で、決まった結果や機械の使い方の説明にも使います。「とともに」は、二つの変化が並んで少しずつ進むことを言うときの硬い言い方です。「このボタンを押すと、お湯が出ます」のような使い方の説明は「と」のまま言わせ、「とともに」は前も後ろも変化の文で使わせます。
  • 〜ようになります(初級Ⅱ 第24課)「〜ようになりました」は変化の結果を言う形で、「とともに」はその変化が何と並んで起きたかを言う形です。二つは「日本語が上達するとともに、ニュースが分かるようになりました」のように組み合わせて使えます。後ろを「ニュースが分かります」と今の形で終えると変化の文に聞こえにくいので、「ようになりました」「てきました」を足させます。
関連する文型

学習項目 3 〜に伴って…

意味・はたらき学習項目 3

「Aが変わる・起こるのにともなって、Bも変わる・起こる」という意味で、社会・町・会社・制度のような大きなものの変化を言うときによく使います(人口の増加に伴って・駅の開業に伴って)。「とともに」の変化の使い方と近いですが、「に伴って」には「一緒に」の意味はなく、前に人は来ません。また、少しずつ進む変化だけでなく、「Aが起こるので、その結果Bも起こる」という一回の出来事にも使え、お知らせや掲示でよく見ます(事務所の移転に伴い、電話番号が変わります)。ニュース・新聞・お知らせなどで使う硬い言い方で、書くときは「〜に伴い」、名詞を修飾するときは「〜に伴う+N」(工事に伴う通行止め)になります。後ろには、話し手の意志や誘い(〜よう・〜ましょう)はあまり来ません。

接続

N+に伴って/Vる・Vた+の+に伴って(書き言葉では「Vるに伴って」も)。書くときは「〜に伴い」、名詞の前では「〜に伴うN」

形
Nに伴って(人口の増加に伴って)Vる/Vたのに伴って(新しい駅ができたのに伴って)Nに伴い(お知らせ・書き言葉)Nに伴うN(工事に伴う通行止め)

導入

  • 町の地図を「前」と「後」で並べる駅ができる前と後の町の地図(教師が描いた簡単な絵)を左右に貼り、「駅ができました。そのあと、町はどう変わりましたか」と聞く。店が増えた・家賃が上がった・道が混むようになった、という答えを右の地図に書き込み、教師が「駅の開業に伴って、店が増えました」とまとめて板書する。前に来るのは町や社会の大きな変化を表す名詞(開業・増加・発展・移転)だと、名詞だけ赤で書いて確かめる。
  • お知らせの文を読ませる教師が作った掲示(「エレベーター点検に伴い、15日の午前中は階段をご利用ください」)を見せ、「何があるから、どうなりますか」と聞いて読み取らせる。「に伴い」は書き言葉の形で、一回の出来事とその結果を伝えるお知らせの決まった言い方だと確かめる。話すときの言い方(点検があるので・点検で)を横に並べて書き、「とともに」との違いを対比の表にする。

板書案

N + に伴って / Vる・Vた + の + に伴って
駅の開業に伴って、店が増えました。
書く → 〜に伴い  名詞の前 → 〜に伴う + N(工事に伴う通行止め)
〔赤〕前 = 町・社会・会社の変化や出来事(開業・増加・移転・工事) 〔青〕後ろ = その結果
人には使わない → 家族とともに

場面と発話(自作)

  • 市の日本語スピーチ大会で、住んでいる町の変化について話す。外国人の住民の増加に伴って、市役所の案内にも英語や中国語が増えてきました。
  • アパートの入り口に、管理会社からのお知らせが貼ってある。水道管の工事に伴い、20日の10時から12時まで断水します。
  • アルバイト先のミーティングで、店長がスタッフに説明する。来月の店の改装に伴って、シフトの時間が少し変わります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

前の変化のカード(工事・移転・人口の増加・駅の開業・値上げ)と、後ろの結果のカード(通行止め・住所の変更・店の増加・利用者の減少)を組み合わせて「〜に伴って〜」の文を作る。次に同じ内容を「〜に伴い」を使った掲示の1文に書き直させ、さらに友達に話す形(〜があるから・〜で)にも言い換えて、書く形と話す形を行き来させる。

  1. 口頭変化・出来事の名詞カード(開業・増加・移転・工事・値上げ)と結果の絵(店が増えた・道が混む・電話番号が変わる・通行止め・客が減った)を見せる。教師「開業・店」→ 全体で「駅の開業に伴って、店が増えました」。次に動詞のキュー(駅ができた・人口が増える)で「Vる/Vたのに伴って」に替える。最後に同じ内容を掲示の形「〜に伴い、〜ます」と、名詞の前の形「〜に伴う〜」に変える練習を、全体→個人の順で回す。
  2. ペア「管理会社」と「住民」。管理会社役は教師が渡したメモ(何が・いつ・どうなる)を見て「〜に伴い、〜」とお知らせを読み上げる。住民役はメモを見ないで聞き、「〜があるので、〜ますね」と話し言葉で内容を確かめる。聞き違いがあれば管理会社役が言い直す。メモは2枚ずつで、終わったら役を交替する(情報差があるので、住民役は必ず聞いて答える)。
  3. 産出「お知らせ掲示づくり」。3〜4人のグループで、学校や寮で起こりそうな変化(教室の移動・図書館の工事・時間割の変更・自動販売機の値上げ)を一つ選び、「〜に伴い」を使ったお知らせを3〜4行で書いて壁に貼る。ほかのグループの掲示を読み、「何があって、どうなるか」を口で説明する。教師が見るのは、前の形(人口の増加/人口が増加するの)、後ろに意志や誘いを置いていないか、人に使っていないか、話すときに「ので」へ戻せるか。

つまずきと手当て

  • 「*人口が増加に伴って」と、「が」のあとに名詞をつなげる。名詞で言うなら「人口の増加に伴って」、動詞で言うなら「人口が増加するのに伴って」と、二つの形を上下に並べて板書する
  • 人に使う(「家族に伴って日本へ来ました」)。「に伴って」には「一緒に」の意味がないので意味がずれる。人のときは「家族とともに」「家族と一緒に」にすると、学習項目2の三つの意味の絵に戻って確かめる
  • 後ろに自分の意志や誘いを置く(「台風の接近に伴って、早く帰りましょう」)、自分の小さな行動に使う(「朝ご飯を食べたのに伴って、歯をみがいた」)。どちらも不自然になる。社会や町・組織の変化と、その結果起こることを伝える言い方だと、地図とお知らせの例に戻る。第18課の「〜につれて」は少しずつ進む変化にしか使えず、お知らせの一回の出来事には使わない点も、そこで比べるとよい

既習の文型との違い

  • 〜とともに…(第16課 学習項目2)「とともに」は「一緒に」「同時に」の意味でも使え、前に人も来ます。「に伴って」は変化や出来事とその結果だけを言い、前に人は来ません。また「に伴って」は工事・移転のような一回の出来事から起こる結果にも使え、お知らせではこちらが決まった言い方です。「家族に伴って日本へ来ました」と言う学習者には「家族とともに」に替えさせます。
  • 〜ので、…(初級Ⅱ 第21課)「工事があるので、この道は通れません」は話し言葉で理由を言う形で、後ろに頼み(〜ので、〜てください)も置けます。「工事に伴い、通行止めになります」は書き言葉で、出来事に続いて起こることを伝えるだけです。掲示に書くときは「に伴い」、それを人に口で伝え直すときは「ので」と、場面で選ばせます。
関連する文型

学習項目 4 〜てきました

意味・はたらき学習項目 4

「過去から今まで、ある動作を続けてきた」「過去から今まで、少しずつ変わってきた」ことを、今の時点から振り返って言う形です。継続(この10年、毎日日記を書いてきました)と変化(日本の生活に慣れてきました・寒くなってきました)の二つが中心で、変化のときは「だんだん」「少しずつ」がよくつきます。初級の「〜てきます」は「行ってきます」「パンを買ってきます」のように、場所を移動してこちらへ戻ってくる意味でしたが、この課の「てくる」は時間の上でこちら(今)へ近づいてくる使い方です。反対に、今から先へ続く・変わることは「〜ていきます」で言います(これからも続けていきます・ますます変わっていくでしょう)。課の題の「変わっていきます」はこの「ていく」です。

接続

Vて形+きました(変化の動詞: なる・増える・慣れる・変わる/続く動作の動詞: 続ける・働く・住む・守る)。い形は「〜くなってきました」、な形・Nは「〜になってきました」

形
ずっとVてきました(継続)だんだん/少しずつVてきました(変化)〜くなってきました/〜になってきましたこれからもVていきます(今から先)

導入

  • 時間の線の上で「くる」と「いく」を分ける学習項目1の時間の線を使い、左(過去)から「今」へ向かう矢印に「てきました」、「今」から右(これから)へ向かう矢印に「ていきます」と書く。教師が「わたしは20年、日本語を教えてきました。これからも教えていきます」と、線を指でなぞりながら言う。横に初級の「パンを買ってきます」(店へ行って、ここへ戻る)の絵を置き、場所の移動なのか時間の流れなのかを学生に分けさせる。
  • 変わってきたことを聞く「日本に来たころと比べて、何が変わってきましたか」と一人ずつ聞き、「日本語が分かってきました」「寒さに慣れてきました」のような答えを集める。い形・な形の答え(忙しくなってきました・上手になってきました)は板書しながら形を確かめ、「今まで」の箱に入れる。最後に「これからはどうしたいですか」と聞いて「〜ていきたいです」を引き出す。

板書案

過去 ━━━▶ 今 ━━━▶ これから
〔赤〕Vてきました(今まで) 〔青〕Vていきます(これから)
20年、日本語を教えてきました。これからも教えていきます。
だんだん寒くなってきました。(〜くなる/〜になる + てきました)
初級「パンを買ってきます」= 場所の移動 / この課 = 時間の流れ

場面と発話(自作)

  • 定年で退職する社員が、工場の送別会であいさつする。35年間、この工場で安全な部品を作ってきました。
  • 日本に来て半年の留学生が、ホストファミリーに最近の様子を話す。最初は全然分からなかった駅のアナウンスが、少しずつ聞き取れるようになってきました。
  • 商店街で長く続くパン屋の店主が、地元の新聞の取材に答える。祖父の代から60年、毎朝4時にパンを焼いてきました。これからもこの味を守っていきます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

時間の線のプリントに、日本に来た日から今までに続けてきたこと・変わってきたことを三つ書かせ、「〜てきました」で話させる。最後に「これからも〜ていきたいです」を1文足し、学習項目1〜3の形と合わせて、目標の活動の短い経験の話にする。

  1. 口頭時間の線を指しながらキューを出す。続く動作のキュー(ずっと・日記・書く/15年・この店・働く/毎朝・犬の散歩・する)→「ずっと日記を書いてきました」。変化のキュー(だんだん・寒い/少しずつ・日本の生活・慣れる/ますます・町・にぎやか)→「だんだん寒くなってきました」。最後に教師が線の左(今まで)を指せば「〜てきました」、右(これから)を指せば「〜ていきます」と、指の位置だけで切り替えて言わせる。
  2. ペア「インタビュー」。Aが記者役で「日本に来てから、何が変わってきましたか」「これからどうしていきたいですか」と聞き、Bが自分のことで答える。Aは答えを時間の線のメモに「今まで」と「これから」に分けて書き取り、最後に「〜さんは、〜てきたそうです。これからは〜ていきたいそうです」とまとめて言う。Bがまとめを聞いて違うところを直したら、役を交替する。
  3. 産出「わたしの三つの箱スピーチ」(目標の活動)。この課の形を使って、きっかけ(〜て以来)・変化(〜とともに/〜に伴って)・今まで(〜てきました)・これから(〜ていきたい)の順に2分ほど話す。聞き手は質問を一つ返す。教師が見るのは、「てきました」と「ていきます」の時間の向き、い形・な形の活用(寒くなって・静かになって)、移動の「てくる」と混ざっていないか、四つの形が話の順に並んでいるか。

つまずきと手当て

  • 「*寒いなってきました」「*静かくなってきました」と活用を間違える。先に「寒くなる」「静かになる」を作ってから「てきました」をつける、と二段に分けて板書する
  • これまでのことを「ていく」で言う(「これまで10年、この仕事を続けていきました」)。時間の向きが逆になるので、今までのことは「てきました」、これからのことは「ていきます」と、時間の線の矢印の向きで確かめる
  • 初級の移動の「てくる」と混ざって意味を取り違える(「コンビニでジュースを買ってきました」を「ずっと買い続けた」と読む、またはその逆)。前後に時間の長さ(〜年間・ずっと)や「だんだん・少しずつ」があるかを手がかりにさせる

既習の文型との違い

  • 〜てきます(初級Ⅱ 第26課)初級の「〜てきます」は「ちょっとパンを買ってきます」のように、ある場所へ行って動作をし、ここへ戻ってくる移動の言い方です。この課の「〜てきました」は、時間の上で過去から今へ続く・変わることを言います。「コンビニでジュースを買ってきました」はどちらにも読めるので、「ずっと」「だんだん」「〜年間」があるかどうかで見分けさせます。
  • 〜ています(初級Ⅰ 第10課)「〜ています」は今の時点の様子を言い、「〜てきました」はそこまでの時間の長さや変化の流れを言います。「日本語を勉強しています」は今のこと、「3年間日本語を勉強してきました」はこれまでの3年を振り返ることです。卒業のスピーチのような振り返りの場面では、「てきました」のほうが話の目的に合うと示します。
  • 〜ようになります(初級Ⅱ 第24課)「〜ようになりました」はできなかったことができるようになった結果を言い、「〜てきました」は変化がまだ続いている途中の感じを出します。二つを合わせた「聞き取れるようになってきました」は、少しずつ、今も進んでいることを言えます。結果だけを言いたいのか、続いている途中を言いたいのかで選ばせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の場面では、変化を言う動詞(増える・減る・広がる・進む・慣れる・変わる)と、変化を表す名詞(増加・減少・発展・進歩・開業・移転)がよく要ります。「人口が増える」と「人口の増加」のように動詞の文と名詞の形を対にした表を作っておくと、「〜に伴って」「〜とともに」の文を作るときにそのまま使えます。「だんだん・少しずつ・ますます・ずっと」の副詞は、「〜てきました」「〜ていきます」と組にして練習します。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 増える(ふえる) 数や量が、前より多くなることです。 人が〜・店が〜・仕事が〜
    住んでいる町の変化を、スピーチで話す。
    「新しい駅ができてから、駅の前に店が増えてきました。」
  • 減る(へる) 数や量が、前より少なくなることです。「増える」の反対です。 人口が〜・客が〜・体重が〜
    ふるさとの村について、作文に書く。
    「町へ出る若い人が増えるとともに、村の人口が減ってきた。」
  • 慣れる(なれる) 何度もするうちに、それが自然にできるようになることです。 生活に〜・仕事に〜・寒さに〜
    ホストファミリーに、日本に来てからの様子を話す。
    「最初は大変でしたが、少しずつ日本の生活に慣れてきました。」
  • 上達する(じょうたつする) 練習を続けて、技術や力が前より上手になることです。 日本語が〜・料理が〜・少しずつ〜
    日本語学校の卒業式で、留学生代表があいさつする。
    「日本語が上達するとともに、友達と話すのが楽しくなりました。」
  • 増加(ぞうか) 数や量が増えることを、名詞で言う言い方です。ニュースやお知らせでよく使います。 人口の〜・〜に伴って・〜する
    市のスピーチ大会で、町の変化について話す。
    「外国人の住民の増加に伴って、案内の看板が変わってきました。」
  • 進歩(しんぽ) 技術や考え方が、前よりよいほうへ進むことです。 技術の〜・医学の〜・〜する
    授業で、昔と今の生活の違いを話し合う。
    「技術の進歩とともに、生活がずいぶん便利になってきました。」
  • 開業(かいぎょう) 駅や店、病院などが新しく仕事を始めることです。 駅の〜・〜する・〜に伴って
    不動産屋で、町の様子を聞く。
    「新しい駅の開業に伴って、このあたりの家賃が上がりました。」
  • 移転(いてん) 会社や店、事務所などが、別の場所に移ることです。 事務所の〜・店が〜する・〜に伴い
    会社のホームページに、お知らせが出ている。
    「事務所の移転に伴い、電話番号が変わります。」
  • 工事(こうじ) 道や建物を作ったり直したりする仕事です。 道路の〜・〜中・〜に伴う
    アパートの入り口に、管理会社の掲示が貼ってある。
    「水道の工事に伴い、15日の午前中は水が使えません。」
  • だんだん(だんだん) 時間がたつと、少しずつ変わっていく様子です。 〜寒くなる・〜慣れる・〜分かってくる
    秋の朝、同僚とあいさつする。
    「だんだん寒くなってきましたね。」
  • ますます(ますます) 前よりも、もっとそうなる様子です。これからのことにもよく使います。 〜増える・〜便利になる・〜忙しくなる
    会社の朝礼で、部長が今年の計画を話す。
    「これから、海外のお客様はますます増えていくでしょう。」

宿題と次のコマ

宿題は、「日本に来て(日本語の勉強を始めて)以来、変わってきたこと」を300字ほどの作文に書くこと(「〜て以来」と「〜てきました」は必ず入れ、「〜とともに」か「〜に伴って」のどちらかを1回使い、最後は「これからも〜ていきたい」で終える)。次のコマの最初に何人かが読み上げ、聞いた人は「きっかけ」「変化」「今まで」がそれぞれ何だったかを言います。そのあと、第17課の、そのときの状況をそのまま説明する言い方に入ります。

よくある質問

  • 「〜て以来」と「〜てから」の違いはどう教えればいいですか?

    時間の線を1本引き、「〜てから」は線の上の一つの点(そのあとで一回したこと)、「〜て以来」はきっかけの旗から今までの太い矢印(今まで続いていること)と、絵で分けます。後ろに「ずっと〜ています」「一度も〜ていません」のような今までの続きや、「3回引っ越しました」のようなその間の回数のまとめが来るときは「以来」が自然で、一回の出来事だけを言う文は「てから」に戻させます。「以来」のほうが改まった言い方で、月や年の単位で振り返るときに使うことも添えます。

  • 「〜とともに」と「〜に伴って」はどう使い分けますか?

    どちらも、一方が変わるともう一方も変わることを言う硬い言い方ですが、「とともに」には「一緒に」「同時に」の意味もあり、前に人も来ます。「に伴って」は変化や出来事とその結果だけを言い、前に人は来ません。また「に伴って」は工事・移転のような一回の出来事から起こる結果にも使え、お知らせの「〜に伴い」はこちらの決まった形です。対比の表にして板書し、「家族とともに」と「工事に伴い」を代表の例にすると混ざりにくくなります。

  • 「〜てきました」と初級の「買ってきます」が混ざるときはどうしますか?

    初級の「〜てきます」は場所を移動してこちらへ戻る言い方、この課の「〜てきました」は時間の上で今へ近づいてくる言い方だと、絵と時間の線を並べて見せます。読み取るときは「ずっと」「だんだん」「〜年間」のような時間の言葉があるかどうかを手がかりにさせます。今から先のことは「〜ていきます」で、線の右側の矢印に書いておくと向きの間違いも減ります。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分の授業なら2コマが目安です。1コマ目で「〜て以来」「〜とともに」「〜に伴って」まで、2コマ目で「〜てきました」と、経験を2分ほど話す目標の活動、まとめをします。目標の活動を相手を替えて2〜3回くり返す時間を、2コマ目の半分ほど取っておくと、四つの形が話の中で使えるところまで届きます。

  • 第16課の板書はどう組めばいいですか?

    黒板の下に左(過去)から右(これから)へ時間の線を1本引き、その上に「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱を描いて、課の最後まで消さずに残します。「〜て以来」は旗と矢印で「きっかけ」の箱、「〜とともに」「〜に伴って」は二本の矢印と対比の表で「変化」の箱、「〜てきました」「〜ていきます」は線の左右の矢印で「今まで」の箱に入れます。最後の経験を話す活動では、この板書をそのまま話の順番として使います。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。