日本に来てからの自分の変化や、住んでいる町が時間とともにどう変わってきたかを、まとまった話にして伝える力をつける課です。学習項目は、変化のきっかけを言う「〜て以来」、一方が変わるともう一方も変わることを言う「〜とともに」「〜に伴って」、過去から今までの続き・変化をまとめる「〜てきました」の四つで、どれも「きっかけ → 変化 → 今まで(とこれから)」という経験の話の部品になります。「とともに」「に伴って」はスピーチ・作文・お知らせで使う硬い言い方なので、ふだんの会話の言い方と並べて、場面で選べるようにします。板書は時間の線を1本引いて課の最後まで消さずに残し、「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱に形を足していくと、最後の経験を話す活動にそのままつながります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が自分の住んでいる町の駅前の「10年前」と「今」の様子を簡単な絵か写真で2枚見せ、「何が変わりましたか」と聞く。出てきた答え(店が増えた・人が多くなった)を黒板に残し、黒板の下に左(過去)から右(これから)へ時間の線を引いて、「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱を描く。この課の終わりには、自分の経験をこの三つの箱で話せるようにすると予告する |
| 学習項目1 〜て以来… | 25分 | 時間の線に「きっかけ」の旗を立て、旗から「今」まで太い矢印を引いて「〜て以来、ずっと〜ています」を導入。「〜てから」と並べ、一回だけのことには使いにくいことを確かめて「きっかけ」の箱へ |
| 学習項目2 〜とともに… | 25分 | 上下二本の矢印(年齢と体力・技術と生活)で、一方が動くともう一方も動く形を見せる。「一緒に」「同時に」の意味もあることを一言添え、どれも改まった言い方だと確かめて「変化」の箱へ |
| 学習項目3 〜に伴って… | 30分 | 駅ができる前と後の町の地図で、社会や町の大きな変化を言う形として導入。掲示のお知らせの「〜に伴い」も読ませ、「とともに」との違い(人には使わない・一回の出来事にも使う)を対比の表にして「変化」の箱に並べる。1コマ目はここまで。時間の線と三つの箱の板書は写真に撮っておき、2コマ目の初めに同じ形で描き直す |
| 学習項目4 〜てきました | 30分 | 2コマ目。初めに前のコマの三つの形を時間の線の上で5分ほど言い直してから入る。時間の線の上で、過去から今へ向かう矢印に「てきました」、今からこれからへ向かう矢印に「ていきます」を書く。初級の「買ってきます」(場所の移動)の絵と並べて違いを確かめ、「今まで」の箱へ |
| 目標の活動(経験を話す) | 45分 | 時間の線のプリントに、日本に来た日(日本語を始めた日)から今までのことをメモさせ、三つの箱の順に2分ほど話す。聞き手は「それ以来、〜んですか」「これからはどうしたいですか」と質問を一つずつ返す。相手を替えて2〜3回くり返し、回を重ねるごとにメモを見る回数を減らす |
| まとめ | 15分 | 話した内容を作文の書き出し数行に書き直させ、話すときの「〜てから」「〜と一緒に」と、書くときの「〜て以来」「〜とともに」「〜に伴い」を見比べて終わる |
「過去のある時(きっかけになった出来事)からあと、今までずっと同じ状態が続いている」ことを表します。後ろには「ずっと〜ている」「一度も〜ていない」「〜てきた」のように今まで続いていることを言う文か、「3回引っ越した」「一度だけ国に帰った」のように、その期間の中の回数をまとめて言う文が来ます。「〜てから」と似ていますが、「〜てから」は「Aのあとで一回Bをした」という順番にも使えるのに対し、「〜て以来」は一回の出来事だけを言う文には使いにくく、少し改まった言い方です。また、さっき・きのうのような近い過去より、ある程度長い期間を振り返るときに使います。
Vて形+以来/N(入学・卒業・来日などの出来事の名詞)+以来。前の文の出来事を受けるときは「それ以来」
きっかけのカード(日本に来た・一人暮らしを始めた・アルバイトを始めた・スマホを替えた)を引き、「〜て以来、ずっと〜ています/一度も〜ていません」と自分のことを言う。聞いた人は「それ以来、〜んですか」と一言質問を返し、やり取りを一往復させる。
この課の中心は「Aが変わると、それにつれてBも変わる」という使い方です(年齢とともに体力が落ちる・技術の進歩とともに生活が便利になる)。前にも後ろにも変化を表す言葉が来て、後ろには「〜てきた」「〜ていく」「〜ようになった」がよくいっしょに使われます。「とともに」には、ほかに「〜と一緒に」(家族とともに暮らす)と「〜と同時に」(合図とともに走り出す)の意味もあり、どの意味でも、ふだんの会話よりスピーチ・ニュース・作文などの改まった場面で使う硬い言い方です。友達と話すときは「〜と一緒に」「〜と同時に」や、「〜すると、〜も…」の形で言います。
N+とともに/Vる(辞書形)+とともに(変化の意味では「年齢・時代・成長・進歩」のような名詞や「年を取る・増える」のような動詞がよく前に来る)
上の矢印のカード(年齢・技術・気温・日本語の力)と下の矢印のカード(体力・生活・服装・自信)を組み合わせ、「〜とともに〜てきました/〜ていきます」の文を作る。作った文を友達に話す形(〜すると、〜も…)にも言い換えさせ、スピーチ向きか会話向きかを比べる。
「Aが変わる・起こるのにともなって、Bも変わる・起こる」という意味で、社会・町・会社・制度のような大きなものの変化を言うときによく使います(人口の増加に伴って・駅の開業に伴って)。「とともに」の変化の使い方と近いですが、「に伴って」には「一緒に」の意味はなく、前に人は来ません。また、少しずつ進む変化だけでなく、「Aが起こるので、その結果Bも起こる」という一回の出来事にも使え、お知らせや掲示でよく見ます(事務所の移転に伴い、電話番号が変わります)。ニュース・新聞・お知らせなどで使う硬い言い方で、書くときは「〜に伴い」、名詞を修飾するときは「〜に伴う+N」(工事に伴う通行止め)になります。後ろには、話し手の意志や誘い(〜よう・〜ましょう)はあまり来ません。
N+に伴って/Vる・Vた+の+に伴って(書き言葉では「Vるに伴って」も)。書くときは「〜に伴い」、名詞の前では「〜に伴うN」
前の変化のカード(工事・移転・人口の増加・駅の開業・値上げ)と、後ろの結果のカード(通行止め・住所の変更・店の増加・利用者の減少)を組み合わせて「〜に伴って〜」の文を作る。次に同じ内容を「〜に伴い」を使った掲示の1文に書き直させ、さらに友達に話す形(〜があるから・〜で)にも言い換えて、書く形と話す形を行き来させる。
「過去から今まで、ある動作を続けてきた」「過去から今まで、少しずつ変わってきた」ことを、今の時点から振り返って言う形です。継続(この10年、毎日日記を書いてきました)と変化(日本の生活に慣れてきました・寒くなってきました)の二つが中心で、変化のときは「だんだん」「少しずつ」がよくつきます。初級の「〜てきます」は「行ってきます」「パンを買ってきます」のように、場所を移動してこちらへ戻ってくる意味でしたが、この課の「てくる」は時間の上でこちら(今)へ近づいてくる使い方です。反対に、今から先へ続く・変わることは「〜ていきます」で言います(これからも続けていきます・ますます変わっていくでしょう)。課の題の「変わっていきます」はこの「ていく」です。
Vて形+きました(変化の動詞: なる・増える・慣れる・変わる/続く動作の動詞: 続ける・働く・住む・守る)。い形は「〜くなってきました」、な形・Nは「〜になってきました」
時間の線のプリントに、日本に来た日から今までに続けてきたこと・変わってきたことを三つ書かせ、「〜てきました」で話させる。最後に「これからも〜ていきたいです」を1文足し、学習項目1〜3の形と合わせて、目標の活動の短い経験の話にする。
この課の場面では、変化を言う動詞(増える・減る・広がる・進む・慣れる・変わる)と、変化を表す名詞(増加・減少・発展・進歩・開業・移転)がよく要ります。「人口が増える」と「人口の増加」のように動詞の文と名詞の形を対にした表を作っておくと、「〜に伴って」「〜とともに」の文を作るときにそのまま使えます。「だんだん・少しずつ・ますます・ずっと」の副詞は、「〜てきました」「〜ていきます」と組にして練習します。
宿題は、「日本に来て(日本語の勉強を始めて)以来、変わってきたこと」を300字ほどの作文に書くこと(「〜て以来」と「〜てきました」は必ず入れ、「〜とともに」か「〜に伴って」のどちらかを1回使い、最後は「これからも〜ていきたい」で終える)。次のコマの最初に何人かが読み上げ、聞いた人は「きっかけ」「変化」「今まで」がそれぞれ何だったかを言います。そのあと、第17課の、そのときの状況をそのまま説明する言い方に入ります。
「〜て以来」と「〜てから」の違いはどう教えればいいですか?
時間の線を1本引き、「〜てから」は線の上の一つの点(そのあとで一回したこと)、「〜て以来」はきっかけの旗から今までの太い矢印(今まで続いていること)と、絵で分けます。後ろに「ずっと〜ています」「一度も〜ていません」のような今までの続きや、「3回引っ越しました」のようなその間の回数のまとめが来るときは「以来」が自然で、一回の出来事だけを言う文は「てから」に戻させます。「以来」のほうが改まった言い方で、月や年の単位で振り返るときに使うことも添えます。
「〜とともに」と「〜に伴って」はどう使い分けますか?
どちらも、一方が変わるともう一方も変わることを言う硬い言い方ですが、「とともに」には「一緒に」「同時に」の意味もあり、前に人も来ます。「に伴って」は変化や出来事とその結果だけを言い、前に人は来ません。また「に伴って」は工事・移転のような一回の出来事から起こる結果にも使え、お知らせの「〜に伴い」はこちらの決まった形です。対比の表にして板書し、「家族とともに」と「工事に伴い」を代表の例にすると混ざりにくくなります。
「〜てきました」と初級の「買ってきます」が混ざるときはどうしますか?
初級の「〜てきます」は場所を移動してこちらへ戻る言い方、この課の「〜てきました」は時間の上で今へ近づいてくる言い方だと、絵と時間の線を並べて見せます。読み取るときは「ずっと」「だんだん」「〜年間」のような時間の言葉があるかどうかを手がかりにさせます。今から先のことは「〜ていきます」で、線の右側の矢印に書いておくと向きの間違いも減ります。
この課は何コマで終わりますか?
90分の授業なら2コマが目安です。1コマ目で「〜て以来」「〜とともに」「〜に伴って」まで、2コマ目で「〜てきました」と、経験を2分ほど話す目標の活動、まとめをします。目標の活動を相手を替えて2〜3回くり返す時間を、2コマ目の半分ほど取っておくと、四つの形が話の中で使えるところまで届きます。
第16課の板書はどう組めばいいですか?
黒板の下に左(過去)から右(これから)へ時間の線を1本引き、その上に「きっかけ」「変化」「今まで」の三つの箱を描いて、課の最後まで消さずに残します。「〜て以来」は旗と矢印で「きっかけ」の箱、「〜とともに」「〜に伴って」は二本の矢印と対比の表で「変化」の箱、「〜てきました」「〜ていきます」は線の左右の矢印で「今まで」の箱に入れます。最後の経験を話す活動では、この板書をそのまま話の順番として使います。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。