日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初中級 第20課「最初のリハビリをやりぬくことができたんです」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

何かを最後までやり終えたことを、聞く人に伝わるように強く報告する課です。五つの学習項目はどれも、動詞のます形に別の動詞をつけて一つの動詞にする形(複合動詞)で、全部・最後まで(〜きる)、苦しくてもやり通す(〜ぬく)、気持ちの上で受け入れにくい(〜がたい)の三つが新しく、始まり(〜始める)と終わり(〜終わる)は初級の復習です。報告を「いつ始めて・何がたいへんで・どこまでやり終えて・どう感じたか」の順に組むと、五つの形がそれぞれの場所に収まります。初中級の最後の課なので、まとめの報告では、これまでの課で学んだ形も一緒に使わせます。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 長い時間をかけて何かをやり通した経験を、「いつ始めたか(〜始める)・何がたいへんだったか・どこまで終えたか(〜終わる・〜きる)」の順に報告できる
  • 「〜きる」(全部・最後まで)と「〜ぬく」(苦しくてもやり通す)を使い分けて、やりとげたことを強く伝えられる。「〜きれない」で、量が多くて最後まではできないことも言える
  • 「〜がたい」を「〜にくい」「〜られない」と区別して、信じられないような出来事や忘れられない経験を、改まった報告やスピーチの中で言える
  • 初中級のまとめとして、これまでの課の形も使いながら、自分の体験を1〜2分の報告として話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分「最近、最後までがんばってやったことはありますか」と学生に聞き、試験・アルバイト・引っ越し・スポーツなど出た答えを集める。その中から一つ選んで「いつ始めましたか」「何がたいへんでしたか」「最後はどうなりましたか」と聞き、答えを黒板の三段(始まり・途中・終わり)に書く。この課は、やりとげたことを強く報告する課だと予告する
学習項目4・5 〜始める/〜終わる(初級の復習)20分時間の線の両端に「始めた」「終わった」の点を打ち、報告の枠(始まりと終わり)を先に作る。初級で習った形なので手早く確かめ、「〜出す」(急に・思いがけず始まる)との違いだけ絵で一言添える
学習項目1 〜きる30分水が減っていくペットボトルの絵とゴールのある線で、「全部」と「最後まで」の二つの意味を見せる。半分残った絵で「〜きれない」も同時に入れる
学習項目2 〜ぬく30分ゴールの線の途中に坂や雨の絵を描き足し、「苦しさに負けずに最後まで」を言う形として入れる。「きる」と「ぬく」のどちらが合うかを選ぶ問題で、量の話か苦しさの話かを区別させる
学習項目3 〜がたい35分三つの「できない」の箱(力が足りない・手間がかかる・気持ちが受け入れない)で、「〜られない」「〜にくい」「〜がたい」を分ける。報告の中で、驚いたことや心に残ったことを硬く言う形として使わせる
目標の活動(体験の報告)45分自作の短い報告の文章(けがからの復帰・資格試験の合格 など)を読み、「始まり・途中の苦しさ・終わり・気持ち」に色の違う線を引かせる。次にペアで自分の体験を報告し合う。話す側は五つの形のうち三つ以上を使い、聞く側は「何がいちばんたいへんでしたか」と一つ質問する
まとめ(初中級の振り返り)10分五つの形を「始まり・途中・終わり・気持ち」の表に入れて確かめる。初中級の最後の課なので、この一冊で何を「やりきった」と思うかを、学生一人ひとりに「〜きる」か「〜ぬく」を使って一文で言ってもらって終える

学習項目 1 〜きる

意味・はたらき学習項目 1

動詞のます形に「きる」をつけて、全部・残らず(お金を使いきる・料理を食べきる)、または途中でやめずに最後まで(10キロを走りきる・長い小説を読みきる)することを表します。量や距離が多くて、終わりまで行くのがたいへんなものによく使い、「全部できた」という達成の気持ちが出ます。「できない」と言うときは可能の形「〜きれない」を使い、「食べきれない(量が多くて全部は無理)」「数えきれない(数がとても多い)」のように言います。また、「疲れきる・困りきる」のようにすっかりその状態になる意味もあります。「待ちきれない」は、待っていられないほど楽しみだという気持ちの言い方です。

接続

Vます(「ます」を取った形)+きる(グループⅠの動詞として活用する:きります・きって・きった・きれる・きれない)

形
Vきりました(三日で、全部読みきりました)Vきることができました(最後まで走りきることができました)Vきれない(多すぎて、一人では食べきれません/数えきれないほど)疲れきった・困りきった(すっかりその状態)

導入

  • 量が減っていく絵で「全部」を見せるペットボトルの水の絵を三つ(いっぱい・半分・空)並べて描く。「水を飲みました」はどの絵にも言えるが、「水を飲みきりました」は空の絵だけ、と指で示す。半分残った絵には「飲みきれませんでした」と書き、できた・できなかったを同じ絵で言わせる。
  • ゴールのある線で「最後まで」を見せるマラソンのコースの線を引き、途中でやめた人と、ゴールまで行った人の印を描く。「走りました」はどちらにも言えるが、「走りきりました」はゴールまで行った人だけ、と示す。量の「全部」と道のりの「最後まで」が同じ形だと板書でまとめる。

板書案

Vます + きる (食べ+きる・走り+きる・読み+きる)
〔絵〕水 いっぱい → 半分 → 空 「飲みきりました」は〔赤〕空の絵だけ
厚い本を、三日で読みきりました。
量が多くて、一人では食べきれません。
〔青〕できない → 〜きれない(食べきれない・数えきれない)
〔赤丸〕量・道のり・時間があるもの + きる

場面と発話(自作)

  • 会社で、たくさんのデータの入力を頼まれていた社員が、締め切りの日の夕方に上司に報告する。頼まれていた500件の入力、今日中に全部やりきりました。
  • 夏休みのあと、日本語学校の留学生が、休み中にしたことを先生に聞かれて答える。日本語の小説を一冊、最後まで読みきりました。辞書を引きながらでしたけど。
  • 寮の近くの食堂で、大盛りの料理を頼んだ学生が、一緒に来た友達に頼む。多すぎて、一人じゃ食べきれないよ。半分食べてくれない?

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

量・道のりのカード(大盛りのご飯・1000ピースのパズル・10キロのコース・一か月の給料・厚い本)を出し、「〜きりました」と「〜きれませんでした」の両方で言わせる。次に、自分がこれまでに最後までやりきったこと(試験勉強・長いアルバイトの一日・引っ越しの片付け など)を一つ選び、「〜きることができました」で短く報告させる。

  1. 口頭教師が量や道のりのある絵カード(大盛りのご飯・厚い本・10キロのコース・ペットボトルの水・一か月の生活費)を一枚ずつ見せ、全体で「食べきりました」「読みきりました」「走りきりました」「飲みきりました」「使いきりました」と言わせる。次に×の印を付けた同じカードで「〜きれませんでした」に切り替え、個人指名でます形からの作り方を確かめる。「食べるきりました」のような形が出たら、まずます形を言わせてから「ます」を取ってつけ直させる。
  2. ペアAは絵カード(大盛りのラーメン・500件のデータ入力・一週間分の宿題 など)と、裏に○(全部できた)か×(無理だった)の印を持つ。Bは印を見ずに「〜は、全部〜きりましたか」と聞き、Aは印に合わせて「はい、〜きりました」「いいえ、多すぎて〜きれませんでした」と答える。Bは答えを聞いて○×を当てる。5枚で役を交替する。
  3. 産出活動名「やりきったことカード」。学生が自分の経験から、全部・最後までやったことを一つ選び、「何を・どのくらい・どうやって〜きったか」を3文でカードに書いて、グループで読み上げる。聞く側は「どのくらいかかりましたか」と一つ質問する。教師が見るのは、ます形につけているか、量・道のり・時間のある動作になっているか(すぐ終わる動作に使っていないか)、「〜きれない」の文で「〜られない」と混ぜていないか、の三点。

つまずきと手当て

  • 辞書形やて形につける(*全部食べるきりました/*食べてきりました)。ます形の「ます」を取った形につくと板書し、「食べ+きる」で一つの動詞として言わせる
  • 量も道のりもない、すぐ終わる動作に使って不自然になる(例:電気をつけきりました)。「きる」は量・距離・時間があって、だんだん終わりに近づいていく動作に使う、とペットボトルの絵に戻る
  • 「食べきれない」と「食べられない」を混ぜる。「食べられない」は嫌い・アレルギーなどで口にできないこと、「食べきれない」は食べられるが量が多くて全部は無理なこと、と二つの絵を並べて分ける

既習の文型との違い

  • 〜てしまいました(第17課)「全部食べてしまいました」も「全部食べきりました」も、食べることが最後まで済んだことを言います。「〜てしまう」は済んだことに、残念な気持ちや「もう元に戻らない」という感じが加わりやすく、「〜きる」は量が多いのに全部できたという達成の気持ちが加わります。妹のケーキまで食べたことを謝る場面で「全部食べきりました」と言うと、自慢しているように聞こえる、と場面で比べます。
  • 複合動詞(初級Ⅱ 第38課)初級Ⅱの複合動詞(持ち上げる・飛び出す など)は、二つの動作を合わせた意味が中心でした。「〜きる」の「きる」は「切る(はさみで切る)」の意味をほとんど持たず、「全部・最後まで」という段階を足すだけです。「パンを食べきる」を「パンを切って食べる」と取る学生には、ペットボトルの絵に戻って意味を確かめます。
関連する文型

学習項目 2 〜ぬく

意味・はたらき学習項目 2

動詞のます形に「ぬく」をつけて、苦しいこと・つらいことがあっても、途中でやめずに最後までやり通すことを表します。「やりぬく・がんばりぬく・走りぬく・守りぬく・生きぬく」のように、努力や我慢が要る動作に使い、やり通した人をほめたり、自分の努力を強く伝えたりする響きがあります。「〜きる」も「最後まで」を表しますが、「きる」は終わりまで届いたこと(全部・最後まで済んだ)に目が向き、「ぬく」は途中の苦しさに負けなかったことに目が向きます。そのため、がんばる必要のないふつうの動作にはあまり使いません。また、「考えぬく・悩みぬく・選びぬく」のように、とことん・徹底的にする意味もあります(考えぬいて決めた)。

接続

Vます(「ます」を取った形)+ぬく(グループⅠ:ぬきます・ぬいて・ぬいた。名詞の前では「考えぬいた〜」「選びぬかれた〜」の形もよく使う)

形
Vぬきました(つらい練習を、最後までやりぬきました)Vぬくことができました(一年間の夜の講座を、休まずにやりぬくことができました)最後までVぬいてください(励ますとき)考えぬいたN/選びぬかれたN(考えぬいた答え・選びぬかれた材料)

導入

  • 「きる」の線に坂を描き足す学習項目1のゴールの線をそのまま使い、途中に坂・雨・足の痛みの絵を描き足す。それでもゴールまで行った人を指して「この人は、最後まで走りぬきました」と言う。「きる」はゴールの旗に、「ぬく」は途中の坂に矢印を向けて板書し、目の向くところが違うことを見せる。
  • 教師の短い体験談で報告の型を見せる教師が「去年は仕事と勉強を両方続けるのがとてもたいへんでした。何度もやめようと思いましたが、最後までやりぬきました」と自分の体験として話す。学生に「何がたいへんでしたか」「最後はどうなりましたか」と聞き、「苦しさ→やり通した」の順を報告の型として黒板に取り出す。

板書案

Vます + ぬく (やり+ぬく・がんばり+ぬく)
〔線〕スタート ── 〔青〕坂・雨・足の痛み ── 〔赤〕ゴールの旗
きる → 〔赤〕ゴールの旗に矢印  ぬく → 〔青〕途中の坂に矢印
足が痛かったけど、最後まで走りぬきました。
〔黄〕とことん:何日も考えぬいて、決めました。

場面と発話(自作)

  • 病院のリハビリ室で、理学療法士が、三か月の訓練を終えた患者に声をかける。三か月、本当によくがんばりぬきましたね。
  • 会社の朝礼で、大きな工事の担当者が、工事が無事に終わったことを報告する。雨の多い時期でしたが、全員で最後までやりぬくことができました。
  • 卒業後の進路に悩んでいた留学生が、心配してくれていた友達に結果を伝える。何日も考えぬいて、日本で就職することに決めたよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「たいへんだったこと」と「結果」のカードを組にして(夜のアルバイトと学校・毎日の練習と大会・三か月のリハビリ)、「〜けど、最後まで〜ぬきました」の一文にさせる。次に、「きる」と「ぬく」のどちらが合うかを選ぶ問題(ケーキを全部食べ〜/つらい練習をやり〜/一か月の給料を使い〜/最後まであきらめずに戦い〜)を口頭で出し、量の話か苦しさの話かで選ばせる。

  1. 口頭教師が「たいへんなこと」の絵カード(雨の中のマラソン・夜のアルバイトと学校・三か月のリハビリ・毎朝5時の練習)を見せ、二語のキュー(「雨・走る」「アルバイト・続ける」「リハビリ・がんばる」「練習・やる」)から、全体で「〜けど、最後まで〜ぬきました」と言わせる。次に教師が「ケーキを全部食べ…」「つらい練習をやり…」「一か月の給料を使い…」と途中まで言い、学生が「きる」か「ぬく」を補って言い終える即答練習にする。迷った学生には、前に来る言葉が量か苦しさかを聞く。
  2. ペアBは体験の当事者の役で、状況と結果が書いてあるカード(例: 仕事をしながら毎晩勉強した→資格の試験に合格した)を持つ。Aは記者の役で、カードを見ずに「何がいちばんたいへんでしたか」「最後はどうなりましたか」と聞く。Bは「〜けど、最後まで〜ぬきました」で答え、Aは聞いた内容を「〜さんは、〜をやりぬいたんですね」とまとめて確かめる。カード3枚で役を交替する。
  3. 産出活動名「がんばりぬいたインタビュー」。学生が自分の体験(勉強・仕事・スポーツ・引っ越し・病気やけが など)を一つ選び、ペアを替えて記者役から質問を受け、1分で答える。そのあと記者役が「(相手の名前)さんは、〜をやりぬきました」とクラスに紹介する。教師が見るのは、「ぬく」の前に努力や苦しさが想像できる動作が来ているか、苦しさ(〜けど・〜のに)を先に言ってから「ぬく」で結んでいるか、ふつうの動作に使った文を「〜終わりました」「〜ました」に言い直せるか。

つまずきと手当て

  • がんばる必要のないふつうの動作に使って不自然になる(例:テレビのドラマを最後まで見ぬきました)。「ぬく」の前は、つらさや努力が想像できる動作だと確かめ、ふつうの動作なら「最後まで見ました」「見終わりました」に直す
  • 「きる」と「ぬく」を同じだと思う。「走りきった」はゴールに着いたこと、「走りぬいた」は苦しさに負けなかったこと、と言い、「10キロを走りきった」「足が痛くても走りぬいた」のように、前に来る言葉(距離か、苦しさか)で選ばせる
  • 動詞の「抜く」(歯を抜く・力を抜く)と結びつけて意味を取り違える。「〜ぬく」は動詞のあとについて「最後まで・とことん」を足す形で、ひらがなで書かれることが多い、と読みの活動の前に注意させる

既習の文型との違い

  • 〜てきました(第16課)「三年間、がんばってきました」は、今まで続けてきたことを言い、まだ続いている場合にも使えます。「がんばりぬきました」は、苦しくても終わりまでやり通して、もう終わったことを言います。まだ続いている勉強について「日本語の勉強をやりぬきました」と言うと終わったように聞こえるので、途中なら「がんばってきました」と言い分けさせます。
  • 〜きる(この課の学習項目1)どちらも「最後まで」を表しますが、「きる」は量や道のりを終わりまで済ませたこと、「ぬく」は途中の苦しさに負けなかったことに目が向きます。「10キロを走りきった」「足が痛くても走りぬいた」のように、前に来る言葉(距離か、苦しさか)で選ばせます。量の話に「ぬく」を使う(例: お金を全部使いぬいた)と不自然になります。
関連する文型

学習項目 3 〜がたい

意味・はたらき学習項目 3

動詞のます形に「がたい」をつけて、気持ちの上で、そうするのが難しい・そうする気持ちになれないことを表します。「信じがたい(本当だと思えない)」「許しがたい(どうしても許せない)」「理解しがたい」「忘れがたい(忘れられないほど心に残る)」「想像しがたい」「耐えがたい」のように、多くは信じる・許す・理解する・忘れる・想像する・受け入れるなど、心のはたらきや判断を表す動詞につきます。ほかに「得がたい(なかなか手に入らない)」「近寄りがたい(雰囲気がきびしくて近づけない)」「言いがたい」「動かしがたい」「避けがたい」のような決まった語もあります。どれも「そうしようとしても、なかなかそうできない・そうする気になれない」という言い方で、体の力や技術でできないこと(重くて持てない)には使いません。似た「〜にくい」は、物の性質や状況のせいでそうするのに手間がかかること(この字は小さくて読みにくい・この道は歩きにくい)、可能形の否定「〜られない」は、能力や条件の上でできないこと(重くて持てない)を言います。「〜がたい」は硬い言い方で、報告・スピーチ・書いた文章によく出ます。報告では「信じがたいことに、〜」「忘れがたい経験」のように、出来事の重さや心に残ったことを伝えるのに使います。

接続

Vます(「ます」を取った形)+がたい(い形容詞と同じに活用する:がたかった・がたくて。名詞の前は「忘れがたい思い出」)

形
Vがたい(その話は、信じがたいです)VがたいN(忘れがたい経験・許しがたい行為)Vがたいことに、〜(信じがたいことに、三か月で歩けるようになりました)Vがたかった(最初は、医者の説明が受け入れがたかったです)

導入

  • 三つの「できない」の箱を並べる黒板に箱を三つ描き、「この箱は重くて持てない(力が足りない)」「この字は小さくて読みにくい(読めるが、手間がかかる)」「親友がうそをついたなんて、信じがたい(信じようとしても、気持ちが受け入れない)」を一つずつ入れる。三つ目だけは体の絵ではなく胸のあたりに×を描き、「がたい」は心の中の「できない」だと示す。
  • ニュースの見出しで出会わせる自作の短いニュースの見出し(「80歳の男性、フルマラソンを走りきる」など)を見せ、「どう思いますか」と聞く。「すごい」「本当?」という反応を、「信じがたいことです」「信じがたい記録です」に言い換えて見せ、驚きを改まって伝える形だと添える。

板書案

Vます + がたい (信じ+がたい・忘れ+がたい)
〔箱1〕重くて持てない(力) 〔箱2〕小さくて読みにくい(手間) 〔箱3〕〔赤〕信じがたい(気持ち)
信じがたいことに、三か月で歩けるようになりました。
日本での二年間は、忘れがたい思い出です。
〔青〕い形容詞と同じ:信じがたかった/忘れがたい+N

場面と発話(自作)

  • 退院の日に、けがで入院していた患者が、世話になった看護師に入院したころの気持ちを話す。最初に「もう走れないかもしれない」と言われたときは、信じがたい気持ちでした。
  • 会社で、課長が、取引先の同じミスで仕事が何度も遅れたことを部長に報告する。同じミスが三回続いたのは、正直、許しがたいことです。
  • 国に帰る留学生が、日本語学校の送別会でスピーチをする。日本で過ごした二年間は、私にとって忘れがたい時間になりました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動詞のカード(信じる・許す・理解する・忘れる・想像する・持つ・読む・歩く)を出し、「〜がたい」が自然なものと、「〜にくい」「〜られない」にするものに分けさせる。分けたあと、ニュースや自分の経験について「〜は、〜がたいです」「〜がたい〜でした」の一文を作らせる。

  1. 口頭教師が動詞カード(信じる・許す・忘れる・理解する・想像する・持つ・読む・歩く)を一枚ずつ出し、学生は「がたい」「にくい」「られない」のどれが自然かを手の合図(グー・チョキ・パー)で全体で示してから、その形で言う。次に「〜は、〜がたいです」「〜がたいNでした」の文に入れ、名詞の前(忘れがたい経験・許しがたいミス)と過去(信じがたかった)を個人指名で言わせる。
  2. ペアAは自作の短い「驚くニュース」カード(80歳の人がフルマラソンを走りきった/迷子の犬が100キロ歩いて家に帰った/一年で日本語の試験のいちばん上の級に合格した など)を読み上げる。Bは「それは信じがたい話ですね」「信じがたいことに、〜んですね」と改まった反応を返し、「どうしてそんなことができたんですか」と一つ質問する。Aはカードの裏の続きを読んで答える。カード3枚で交替する。
  3. 産出活動名「忘れがたい一日スピーチ」。学生が、日本に来てから、または国での忘れがたい出来事を一つ選び、「〜は、私にとって忘れがたい〜です」で始めて3〜4文のスピーチ原稿を書き、立って読む。教師が見るのは、「がたい」の前が気持ちや判断の動詞になっているか、スピーチにふさわしい丁寧な文体でそろっているか(友達との会話の言い方が混ざっていないか)、い形容詞としての活用(がたかった・がたい+N)の三点。

つまずきと手当て

  • 体の力や技術でできないことに使って不自然になる(例:この箱は重くて持ちがたいです)。「重くて持てない」「持ちにくい」に直し、「がたい」の前に来るのは多くが気持ちや判断を表す動詞(ほかに「得がたい・近寄りがたい」のような決まった語)で、力や技術の「できない」には使わない、と三つの箱の絵に戻る
  • 形を取り違える(*信じるがたい/*信じにがたい)。ます形の「ます」を取った形につけ、「信じ+がたい」と区切って言わせる。い形容詞と同じなので、過去は「信じがたかった」になることも確かめる
  • 友達との会話で使って硬く聞こえる(友達に「その話、信じがたいね」)。誤りではないが、報告や書いた文章で使う言い方だと伝え、会話なら「信じられない」「本当?」に言い換えさせる

既習の文型との違い

  • 〜やすいです/〜にくいです(初級Ⅰ 第9課)「にくい」は、物の性質や状況のせいで手間がかかることで、「この字は小さくて読みにくい」は、読めないわけではありません。「がたい」は気持ちが受け入れないことで、物の性質には使いにくく、「信じにくい」と「信じがたい」では「がたい」のほうが強く、改まって聞こえます。字の大きさの話に「がたい」を使う学生がいたら、箱の絵に戻します。
  • 可能表現(1)(初級Ⅱ 第22課)「信じられない」は会話で驚きを言うふつうの言い方で、「持てない」は力が足りないことを言います。「信じがたい」は「信じられない」とほぼ同じ意味ですが、硬く、報告やスピーチ向きで、力や技術の「できない」には使えません。会話の練習では「信じられない」、報告の練習では「信じがたい」と、場面で言い分けさせます。
  • 〜わけがない(第10課)「そんなことがあるわけがない」は、話す人が理由をもとに「ありえない」と判断する言い方です。「信じがたい」は、事実だと分かっていても気持ちがすぐに受け入れない言い方で、事実そのものは否定しません。「信じがたいことに、〜」のあとには本当に起きたことが続く、と例文で確かめます。
関連する文型

学習項目 4 〜始める

意味・はたらき学習項目 4

初級で習った複合動詞の復習です。ます形に「始める」をつけて、動作や変化が始まったことを表します。前の動詞は意志のある動作(話し始める・働き始める)にも、自然の変化(桜が咲き始める・雨が降り始める)にも使えます。この課では、報告の中でいつ始まったかをはっきり言うために使います(手術から一週間後に、歩き始めました)。始まりが言えると、聞く人にどのくらいの期間がんばったのかが伝わります。似た「〜出す」は急に・思いがけず始まる感じがあり(急に雨が降り出した・子どもが泣き出した)、自分で計画して始めることや、誘い・頼みには使いません(一緒に読み始めましょう、とは言うが、「読み出しましょう」とは言わない)。

接続

Vます(「ます」を取った形)+始める(グループⅡ:始めます・始めて・始めた。前の動詞が「降る」のような自動詞でも、後ろは「始める」)

形
Nから/Nに、V始めました(先週から、少しずつ走り始めました)V始めたのは〜です(日本語を勉強し始めたのは、18歳のときです)V始めてから、〜(働き始めてから、もう三年になります)V出しました(急に・思いがけず始まったとき:急に雨が降り出しました)

導入

  • 時間の線に「始まり」の点を打つ黒板に左から右へ時間の線を引き、「3月:歩く練習」「5月:走る練習」と点を打つ。点を指して「3月から歩き始めました」「5月に走り始めました」と言い、「始める」は線の上の始まりの点だと示す。初級で学んだ形なので、学生に言わせて手早く確かめる。
  • 「始める」と「出す」を二枚の絵で比べる「空がだんだん暗くなって、雨が降り始めた」絵と、「晴れていたのに、急に雨が降り出した」絵を並べる。「出す」の絵に「急に」と書き、計画して始めること(来月から日本語を習い〜)には「始める」しか合わないことを、学生に選ばせて確かめる。

板書案

Vます + 始める (歩き+始める・降り+始める)
〔線〕──●3月 歩き始めた ──●5月 走り始めた ──→
先週から、少しずつ歩き始めました。
〔赤〕後ろはいつも「始める」(降り始まる → 降り始める)
〔青〕急に・思いがけず → 〜出す(急に雨が降り出した)

場面と発話(自作)

  • 病院の面会室で、リハビリ中の患者が、見舞いに来た同僚に近況を話す。先週から、つえを使って、少しずつ歩き始めました。
  • 日本語学校の入学の面接で、職員が、入学を希望する人に勉強の経歴を聞く。日本語を勉強し始めたのは、いつですか。——高校二年生のときです。
  • 会社の会議で、新しい商品の担当者が、発売してからの売れ行きを報告する。発売から二か月たって、ようやく売れ始めました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

学生に自分の時間の線(日本語の勉強・アルバイト・趣味)を描かせ、始まりの点ごとに「〜から/〜に、〜始めました」と言わせる。次に、「急に」「計画して」の印をつけた場面を出し、「〜始めました」と「〜出しました」のどちらが合うかを選ばせる。

  1. 口頭教師が月と出来事を書いたカード(4月・日本語の勉強/6月・アルバイト/9月・ギター/先週・歩く練習)を時間の線の上に貼り、二語のキュー(「4月・勉強する」「6月・働く」「9月・習う」「先週・歩く」)で全体に「〜から〜始めました」と言わせる。続けて自然の変化の絵(桜・雨・葉の色・町の人)で「咲き始めました」「降り始めました」「変わり始めました」「集まり始めました」に広げる。「降り始まりました」が出たら、板書の囲みを指して後ろの形を言い直させる。
  2. ペアAは自分の時間の線をノートに描き、点を3つだけ打つ(内容は書かない)。Bは点を一つずつ指して「これは何ですか。いつ始めましたか」と聞き、Aは「〜から〜始めました」「〜始めてから、もう〜になります」で答える。Bはメモを取り、最後にAの線を「〜さんは、〜に〜始めて…」と言い直して確かめる。役を交替する。
  3. 産出活動名「わたしの時間の線」。学生が報告したい体験(けがからの回復・勉強・仕事・趣味)について、始まりの点を2つ以上入れた時間の線を描き、「〜に〜始めました」「〜始めたのは〜です」を使って、まとめの報告の最初の部分(2〜3文)を書く。教師が見るのは、後ろが「始める」になっているか、計画した始まりに「〜出す」を使っていないか、始まりの時を表す「から」「に」がついているか。

つまずきと手当て

  • 前の動詞が自動詞だからと「始まる」をつける(*雨が降り始まりました)。複合動詞の後ろは、前の動詞が何でも「始める」だと板書で囲んで示す
  • 「出す」を、計画した始まりや誘いに使う(例:来月からジョギングをし出します/一緒に食べ出しましょう)。「出す」は急に・思わず始まったことを言う形だと二枚の絵に戻り、「し始めます」「食べ始めましょう」に直す
  • 一瞬で終わる動作に使って意味がおかしくなる(例:一人で駅に着き始めました)。「着く・決める」のような一瞬の動作は、一人の動作には「始める」を使いにくい。「人が集まり始めた」「客が来始めた」のように、たくさんの人や物について少しずつ起こるときは言える、と例を並べる

既習の文型との違い

  • 複合動詞(初級Ⅱ 第38課)初級Ⅱの複合動詞(持ち上げる・飛び出す など)は、二つの動作を合わせた意味でした。「〜始める」は、動作の中身を前の動詞が持ち、後ろは「始まりの段階」だけを足します。そのため前の動詞は自動詞でも他動詞でもよく、後ろはいつも「始める」です(*雨が降り始まりました)。
  • 〜てきました(第16課)「客が増えてきました」は、変化が少しずつ今まで続いていることを言い、「客が増え始めました」は、変化が始まった点を言います。報告では「先月から客が増え始めて、だんだん多くなってきました」のように、始まりと続きを組み合わせて言えます。どちらか一方だけを使い続ける学生には、時間の線の「点」と「矢印」を見せて区別させます。
  • 〜かけの…(第6課)「読みかけの本」は、読み始めたが途中で止まっている本です。「読み始めた本」は読むことが始まったことだけを言い、途中で止まっているかどうかは言いません。時間の線の上で、「始める」は左の点、「かけ」は途中で止まった点と並べて見せます。
関連する文型

学習項目 5 〜終わる

意味・はたらき学習項目 5

これも初級で習った複合動詞の復習です。ます形に「終わる」をつけて、始めた動作が終わりまで行って、済んだことを表します(食べ終わる・読み終わる・書き終わる)。終わりがはっきりしている、意志のある動作に使い、「雨が降り終わる」のような自然の変化には使いません(雨は「やむ」)。「〜きる」も終わりまで行くことを表しますが、「終わる」は動作が済んだという事実を言い、「きる」は量が多くても全部・最後までという達成の気持ちを加えます(レポートを書き終わった/一晩で20ページのレポートを書ききった)。報告では、始まり(〜始める)と組にして期間を言ったり、「〜終わったら、次に〜」のように手順の区切りを言ったりするのに使います。改まった報告や書いた文章では「〜終える」(読み終える・やり終える)もよく使います。

接続

Vます(「ます」を取った形)+終わる(グループⅠ:終わります・終わって・終わった。改まった言い方は Vます+終える(グループⅡ:終えます・終えた))

形
V終わりました(報告書を、全部書き終わりました)V終わったら、〜(食べ終わったら、この薬を飲んでください)〜V始めて、〜にV終わりました(4月に読み始めて、6月に読み終わりました)V終える(改まった言い方:一年間の研修をやり終えました)

導入

  • 時間の線の両端を言わせる学習項目4の時間の線に、右端の点を足す。「4月に本を読み始めた」「6月に読み終わった」と両端を書き、「4月に読み始めて、6月に読み終わりました」と一文で言わせる。両端があると、聞く人に期間が伝わることを確かめ、報告の枠として板書に残す。
  • 「終わる」と「きる」を同じ場面で比べる「宿題をやり終わりました」と「三日分の宿題を、一晩でやりきりました」を並べ、どちらが「すごい」と聞こえるかを学生に聞く。手順の区切りや事実を言うなら「終わる」、量が多くて全部できたことを強く言うなら「きる」、苦しさに負けなかったことなら「ぬく」と、三つを表にまとめる。

板書案

Vます + 終わる (読み+終わる・書き+終わる)
〔線〕●4月 読み始めた ──────● 6月 読み終わった
4月に読み始めて、6月に読み終わりました。
食べ終わったら、薬を飲んでください。
〔表〕終わる=済んだ きる=全部・最後まで ぬく=苦しくても最後まで
〔青〕改まった言い方:やり終える(グループⅡ)

場面と発話(自作)

  • 病院で、看護師が、昼ご飯を食べている患者に声をかける。食べ終わったら、この薬を飲んでくださいね。
  • 会社で、新人の社員が、頼まれた作業が済んだことを先輩に報告する。頼まれた資料、全部コピーし終わりました。次は何をしましょうか。
  • 日本語学校の卒業式で、学生の代表があいさつをする。二年間の勉強をやり終えた今、日本に来てよかったと心から思っています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

一日の予定表(朝ご飯→掃除→レポート→アルバイト)を見せ、「〜終わったら、〜します」「〜終わってから、〜しました」で手順を言わせる。次に、自分の時間の線の一つを「〜始めて、〜終わりました」と両端つきで報告させ、最後に「〜終わった」「〜きった」「〜ぬいた」のどれが合うかを場面ごとに選ばせる。

  1. 口頭教師が一日の予定の絵カード(朝ご飯・掃除・レポート・洗濯・アルバイト)を矢印でつないで貼り、「食べる→掃除」「掃除する→レポート」「書く→洗濯」のキューで、全体に「〜終わったら、〜します」と次々につなげさせる。次に同じカードで過去の「〜終わってから、〜ました」に変え、個人指名で「書き終わります」「書き終えます」の活用を混ぜずに言えるか確かめる。
  2. ペアAだけが料理の手順カード(野菜を切る→肉を焼く→ソースを作る→皿に盛る)を持ち、Bは同じ料理を作る人の役で、手順を知らない。Bは「〜終わりました。次は何をしますか」と聞き、Aは「〜終わったら、〜てください」と次の手順だけを言う。4手順で交替し、別の手順カード(引っ越しの準備・書類の手続き)を使う。
  3. 産出活動名「やりとげ報告スピーチ」(課のまとめを兼ねる)。学生が「いつ始めて(〜始める)・何がたいへんで・いつどこまで終えて(〜終わる・〜きる・〜ぬく)・どう感じたか(〜がたい)」の順に1分の報告を作り、グループで発表する。聞く側は「何がいちばんたいへんでしたか」と一つ質問する。教師が見るのは、「終わる」「きる」「ぬく」を場面で選び分けているか、自然の変化に「終わる」を使っていないか、始まりと終わりの両端で期間が伝わっているか。

つまずきと手当て

  • 自然の変化に使って不自然になる(例:雨が降り終わりました)。雨・雪は「やむ」、風は「やむ・おさまる」と、終わりを表す別の動詞を板書して言い直させる
  • 「終わる」と「終える」の活用を混ぜる(*レポートを書き終えりました)。「終わる」はグループⅠ(書き終わります)、「終える」はグループⅡ(書き終えます)と二つを並べて活用させる
  • 「食べ終わった」を「全部食べた」と同じだと思う。「食べ終わった」は食べることが済んだと言うだけで、残したかどうかまでは言わないことが多い。全部を強く言いたいなら「食べきった」と、学習項目1の空のペットボトルの絵に戻る

既習の文型との違い

  • 〜てしまいました(第17課)「宿題をやってしまいました」は、済んだことに「もう片付いた」という気持ちや、残念な気持ちが加わることがあります。「宿題をやり終わりました」は、済んだという事実を言うだけです。報告では、事実を伝えるなら「終わる」、気持ちを添えるなら「てしまう」と言い分けさせます。
  • 〜かけの…(第6課)「書きかけの手紙」は途中で止まっていて、まだ書き終わっていない手紙です。時間の線の上で、「かけ」は途中で止まった点、「終わる」は右端の点と並べて見せます。「書きかけの手紙を、やっと書き終わりました」のように一文に入れると、二つの違いがはっきりします。
関連する文型

語彙の扱い

体験を報告する場面の語(けが・手術・入院・退院・リハビリ・訓練・目標・努力・結果・記録・挑戦・回復 など)がまとまって要ります。単語だけで覚えさせず、「目標を立てる」「けがから回復する」「つらい時期を乗り越える」「記録を出す」のように助詞つきの形で、報告の文の中に入れて練習します。複合動詞は「使いきる・売りきれる・やりぬく・生きぬく・信じがたい・忘れがたい・動き始める」のように一語として覚えさせ、店の「売り切れ」のように名詞として目にする語は、町で見かける表示と結びつけると定着しやすくなります。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • リハビリ(りはびり) けがや病気のあと、体が前のように動くように練習することです。 〜を続ける・〜を受ける・〜をやりぬく
    病院で、入院している人が、見舞いに来た家族に今の様子を話す。
    毎日リハビリを続けて、やっと階段が上れるようになったよ。
  • 回復します(かいふくします) 病気やけがが治って、体が元の状態に戻ります。 けがから〜・体力が〜・少しずつ〜
    会社で、上司が、けがで休んでいた社員に声をかける。
    足はもう回復しましたか。——はい、走れるまで回復しました。
  • 乗り越えます(のりこえます) たいへんなことや苦しい時期に負けないで、その先へ進みます。 つらい時期を〜・問題を〜・〜ことができる
    卒業式のあと、学生が担任の先生にお礼を言う。
    先生のおかげで、つらい時期を乗り越えることができました。
  • あきらめます(あきらめます) やろうと思っていたことを、もうできないと思ってやめます。 夢を〜・途中で〜・最後まで〜ない
    試合の前に、コーチが選手たちに言う。
    最後まであきらめないで、走りきろう。
  • 我慢します(がまんします) 痛い・つらい・ほしいという気持ちを外に出さないで、耐えます。 痛みを〜・〜できない・少し〜する
    病院の検査のとき、看護師が子どもに声をかける。
    ちょっと痛いけど、少しだけ我慢してね。
  • 目標(もくひょう) 努力して、ここまで届きたいと決めたところです。 〜を立てる・今年の〜・〜に向かって
    新しい年の最初の授業で、留学生が先生に話す。
    今年の目標は、日本語の小説を一冊読みきることです。
  • 続けます(つづけます) やめないで、同じことを長い間します。 練習を〜・毎日〜・〜ことが大切だ
    アルバイトの面接で、店の人が趣味について聞く。
    ピアノは、子どものころから十年続けています。
  • 挑戦します(ちょうせんします) 難しいことに、思い切って取り組みます。 新しいことに〜・試験に〜・〜してみる
    日本語学校で、学生が次の試験について友達に話す。
    今度は、上の級の試験に挑戦してみるつもりだ。
  • 使いきります(つかいきります) 持っているものを、残さないで全部使います。 お金を〜・時間を〜・〜れない
    月の終わりに、留学生が寮の友達に話す。
    今月の生活費、もう使いきっちゃった。
  • 売り切れます(うりきれます) 店の品物が全部売れて、なくなります。名詞の「売り切れ」は店の表示でよく見ます。 チケットが〜・一時間で〜・売り切れ(名詞)
    コンサートのチケットを買いに来た客に、店員が言う。
    申し訳ございません。そのチケットは、もう売り切れました。
  • 記録(きろく) スポーツなどで出た、時間・距離・回数などの結果です。 〜を出す・〜を破る・自分の〜
    大会のあと、選手がインタビューに答える。
    自分でも信じがたい記録が出て、驚いています。

宿題と次のコマ

宿題は、自分が最後までやりぬいた(またはやりきった)経験について、報告の文章を300字ほど書くこと。「始めた時期(〜始める)・途中でたいへんだったこと・終わったとき(〜終わる/〜きる/〜ぬく)・そのときの気持ち(〜がたい)」の順に組み、五つの形のうち三つ以上を使う。初中級の最後の課なので、次のコマでは一人1〜2分のスピーチとして発表してもらい、聞く側が一つずつ質問をしたあと、初中級全体で学んだ形をクラスで振り返ります。そのあと次の巻(中級)の第21課に進みます。

よくある質問

  • 「〜きる」と「〜ぬく」の違いはどう教えればいいですか?

    同じゴールの線を使い、「きる」はゴールの旗(全部・最後まで済んだこと)、「ぬく」は途中の坂(苦しさに負けなかったこと)に矢印を向けて見せます。前に来る言葉で選ばせると分かりやすく、量や距離なら「きる」(10キロを走りきる)、苦しさなら「ぬく」(足が痛くても走りぬく)です。がんばる必要のないふつうの動作には「ぬく」を使わない、と例で確かめます。

  • 「〜がたい」と「〜にくい」「〜られない」の違いは何ですか?

    「〜られない」は力や条件の上でできないこと、「〜にくい」は物の性質や状況のせいで手間がかかること、「〜がたい」は気持ちの上で受け入れられないことです。「がたい」は多くが信じる・許す・忘れる・理解するなど心のはたらきや判断の動詞につき、ほかに「得がたい」「近寄りがたい」「言いがたい」のような決まった語もあります。力や技術でできないことには使わず、硬い言い方なので報告やスピーチ向きです。三つの箱の絵で分け、会話では「信じられない」に言い換えさせます。

  • 第20課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入から「〜始める」「〜終わる」の復習、「〜きる」「〜ぬく」まで、2コマ目は「〜がたい」と体験の報告、まとめです。初中級の最後の課なので、宿題の報告文をもとにしたスピーチ発表に、もう1コマ取ってもよいでしょう。

  • 「〜始める」と「〜出す」は、この課でどこまで扱いますか?

    中心は「〜始める」で、「〜出す」は違いを一言添える程度にとどめます。「出す」には急に・思いがけず始まる感じがあり、計画して始めることや「〜ましょう」の誘いには使いません。だんだん降り始める雨と急に降り出す雨の二枚の絵で見せ、報告で自分の計画を言うときは「始める」を使わせます。

  • 初中級の最後の課のまとめは、どうすればいいですか?

    五つの形を「始まり・途中・終わり・気持ち」の表に入れて確かめたあと、一人1〜2分の「やりとげ報告」をさせます。報告の中で、これまでの課の形(〜おかげで・〜たびに・〜て以来 など)も一つ以上使うように指示すると、一冊の振り返りになります。聞く側には必ず一つ質問させ、やり取りで終えます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。