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学ぼう!にほんご 初中級 第12課「同じ国の友達をたくさん作ったほうがいいと思います」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

賛成か反対か、自分の立場をはっきり決めてから意見を言うことが目標の課です。この課では、留学生活での友達づくりのような、だれにでも意見がありそうな話題について話し合う場面が中心になります。意見が伝わりにくい学習者は、立場があいまいなまま話し始めたり、相手の反論に押されて意見を引っこめたりしがちなので、この課では「だれの立場から言うか(〜としては)」「意見そのもの(〜と思います・〜のではないかと思います)」「反論や悪い条件を先に認めても意見は変わらないこと(〜としても・たとえ〜ても)」の三つを部品にして、一つの意見の言い方を組み立てさせます。形の上でいちばん気をつけたいのは、「Nとしても」(立場)と「Nだとしても」(仮定)が「だ」一つの違いで意味が変わる点です。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「Nとしては、〜と思います」で、自分がどの立場から意見を言うのかを最初に示せる。ほかの立場の人も同じ考えであることを「Nとしても」で添えられる
  • 「〜としても」「たとえ〜ても」で、相手の反論や悪い条件を仮に認めたうえで、それでも自分の意見や決心は変わらないと言える。「たとえ」が「ても/でも」と組になることが分かる
  • 「Nとしても」(その立場でも)と「Nだとしても」(仮にNであっても)の意味の違いを、「だ」の有無で見分けられる
  • 意見の文末を「〜と思います」「〜たほうがいいと思います」「〜のではないかと思います」から場面と相手に合わせて選び、立場→意見→理由→反論への答え の順で1分ほど意見を述べられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分「留学中は、自分の国の人とはあまり会わないほうが日本語が伸びると思いますか」と聞き、賛成・反対を手を挙げて決めさせる。何人かに理由を言わせると「うーん、いいと思います……でも……」と立場が揺れる答えが出るので、「どちらの立場か、最初に決めて言うと伝わる」と課の芯を示し、意見を組み立てる部品を四つ学ぶと予告する
学習項目1 〜としては/も30分店長・アルバイトの学生・近所の人の絵を黒板に貼り、一つの話題(店の深夜営業)について立場ごとに意見を言わせる。「[立場]としては、[意見]」の枠を板書し、同じ意見の立場を足すときは「も」になることを見せる
学習項目2 〜としても…35分教師の意見に学生が反論を出し、教師がその反論を「〜としても」で受けて意見を守って見せる。板書の二段で「親としても」(立場)と「親だとしても」(仮定)を並べ、「だ」の有無で意味が変わることを確かめる
学習項目3 たとえ〜ても…30分初級の「〜ても、…」を一文だけ復習してから、極端な条件を出して「たとえ〜ても」で決心の固さを言わせる。「たとえ」と「ても」を線で結ぶ板書で呼応を見せ、「たら」「ば」とは組まないことを誤りの文で確かめる
学習項目4 〜と思います25分初級の復習として、同じ意見を「〜べきです」「〜たほうがいいと思います」「〜のではないかと思います」の三段で板書し、相手や場面によってどれを選ぶかを学生に決めさせる
目標の活動(ミニ・ディベート)35分賛成・反対の二組に分け、「[立場]としては、〜と思います。〜からです。たとえ〜ても(〜としても)、〜」の型で一人1分ずつ意見を言う。相手の組が反論を一つ出し、言った人が「〜としても」「たとえ〜ても」で答える。話題は導入の問いのほか、学習者の身近なもの(寮の門限・アルバイト・スマートフォンの使い方など)から選ぶ
まとめ15分ディベートで言った意見を、型どおりに200〜300字の意見文に書く。書き言葉では「〜と思う」「〜のではないだろうか」と文末を変えることを一言添えて宿題にする

学習項目 1 〜としては/も

意味・はたらき学習項目 1

「Nとして」は、資格・立場・役割(〜の立場で・〜という役目で)を表します。「は」がつくと、ほかの立場のことは置いておいて「この立場から言えば」と立場を取り立てる形になり、「私としては」「学校としては」のように意見文の最初に置くと、だれの立場からの意見なのかがはっきりします。「も」がつくと、「ほかの立場と同じように、この立場でも」という意味になり、同意や協力の気持ちを添えるのに使います(「親としても、うれしいです」)。後ろには、その立場からの意見・判断・気持ち・行動が来ます。

接続

N+としては/としても(名詞に直接つき、「だ」は入れない)。名詞を修飾するときは「N+としての+N」

形
Nとしては、〜と思います(私としては、決めるのを来月に延ばしたほうがいいと思います)Nとしても、〜(会社としても、できるだけ協力します)Nとして、〜(クラスの代表として、あいさつします)NとしてのN(教師としての責任)

導入

  • 一つの話題を、立場を替えて言う黒板に「店長」「アルバイトの学生」「近所の人」の三つの絵を貼り、「コンビニが夜中もずっと開いていること」について、教師が立場を替えながら言って見せる(「店長としては、お客さんが増えるからいいと思います」「近所の人としては、夜うるさいのは困ります」)。板書は「[立場]としては、[意見]」の枠にし、学生に絵を一枚ずつ選ばせて同じ枠で言わせる。
  • 同じ意見の立場を「も」で足す「お客さんとしては、夜中に買い物ができてありがたい」と言ったあと、「アルバイトの学生は?」と聞いて、同じ考えなら「学生としても、夜の仕事は時給が高いからうれしい」と「も」で続けられることを見せる。「は」は立場を一つ取り出す、「も」は同じ考えの立場を並べる、と枠の横に書いておく。

板書案

[立場] + としては、[意見]と思います。
店長としては、夜も開けたほうがいいと思います。
近所の人としては、夜うるさいのは困ります。
〔赤〕は=立場を一つ取り出す 〔青〕も=同じ考えの立場を足す
学生としても、うれしいです。(=ほかの人と同じように、学生の立場でも)
〔×〕学生だとしては → 名詞に直接つける(「だ」を入れない)

場面と発話(自作)

  • 寮の話し合いで、門限を夜10時から11時に遅くする案が出た。寮に住む学生の一人が意見を言う。寮に住んでいる学生としては、11時のほうがいいと思います。アルバイトから帰ると、10時を過ぎることが多いからです。
  • クラスで「宿題を減らしてほしい」という声が出た。担任の先生が、自分の考えを伝える。教師としては、毎日少しずつでも練習してほしいんです。量は相談しましょう。
  • 会社の会議で、若い社員が地域のお祭りにボランティアで参加したいと提案した。部長が答える。会社としても、地域の行事にはぜひ協力したいと思っています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず口頭で、立場のカード(学生・親・店長・近所の人・市役所の人)と話題のカード(駅前に大きな駐車場を作る/学校の食堂を夜も開ける など)を一枚ずつ引かせ、「〜としては、〜と思います」で一文言わせる。次に、同じ話題で別の学生に別の立場のカードを引かせ、同じ考えなら「〜としても」、違う考えなら「〜としては」で続けさせ、立場の違いで意見が分かれることを体験させる。

  1. 口頭教師が立場の絵カード(店長・アルバイトの学生・近所の人・親・市役所の人)を見せ、話題を一つ決めてキューを出す。「店長・夜も店を開ける」→ 全員で「店長としては、夜も開けたほうがいいと思います」。続けて「近所の人・困る」「お客さん・ありがたい」「親・心配だ」と立場だけ替えて全体→個人で言わせる。慣れたら絵だけ見せて、意見の中身は学生に考えさせる。
  2. ペア二人に立場カードを1枚ずつ伏せて配る。同じ話題(駅前に大きな駐車場を作る など)について、Aが自分のカードの立場から「〜としては、〜と思います」と言い、Bは自分の立場が同じ考えなら「〜としても、〜」、違えば「〜としては、〜」で続ける。言い終わったらカードを見せ合い、相手の立場を当てる。話題を替えて役を交替する。
  3. 産出「立場カード意見リレー」。クラス全体で一つの話題を決め、学生が一人ずつ立場カードを引いて、その立場からの意見を一文ずつつないでいく。前の人と同じ考えなら「も」、違えば「は」で始めさせる。教師が見るのは、名詞のあとに「だ」が入っていないか、「としては」の後ろが意見・判断になっているか、「にとって」と混ざっていないか。最後に、出た意見を立場ごとに板書でまとめる。

つまずきと手当て

  • 名詞のあとに「だ」を入れる(*学生だとしては、賛成です)。「Nとして」は名詞に直接つくと板書で確かめる。「学生だとしても」は項目2の仮定の形で、意味がまったく違うことにもここで一言触れておく
  • 「〜にとって」と混ぜる(*社員にとっては、この計画に反対です)。「にとって」の後ろは「大切だ・難しい・ありがたい」のような評価の言葉が多く、賛成・反対のような態度は「としては」で言う、と二つの文を並べて見せる(第13課の「〜にとって…」につなぐ)
  • 後ろが立場と関係のない事実の文になる(私としては、きのうは雨でした)。文法の誤りではないが、「としては」の後ろには、その立場から見た意見や判断を言うと確かめる。なお「Nとしては」には「日本人としては背が高い」のように、基準と比べる使い方(〜にしては に近い)もあるが、この課では立場の使い方だけ扱う

既習の文型との違い

  • 私は〜と思います(初級)「私は賛成です」はだれの意見かを言うだけですが、「私としては賛成です」は、ほかの立場はさておき、自分の立場から言えば賛成だという含みが出ます。会議や話し合いで、相手と考えが違うかもしれないときに使うと角が立ちにくくなります。学習者が何でも「私としては」で始めると大げさに聞こえるので、友達との雑談では「私は」で十分だと添えます。
  • 〜について…(第1課)「〜について」は話題(何のことを話すか)を示し、「〜としては」は立場(だれの目で見るか)を示します。「門限について、学生としては11時がいいと思います」のように一文に両方入れられることを見せると、役割の違いが分かりやすくなります。なお「門限としては、11時が妥当だと思います」のように、物事の名詞に付く「としては」も自然な文で、「門限というものとして考えれば」という種類・資格の意味になります。この課では意見を言う人の立場(人・組織)の用法を練習するので、意見の前に置く語は「学生」「店長」「会社」のような人や組織の語にそろえます。
関連する文型

学習項目 2 〜としても…

意味・はたらき学習項目 2

「仮にそうなったとしても(そうだとしても)、後ろのことは変わらない」という仮定の逆接です。前の部分には、まだ起きていないこと・起きるかどうか分からないこと・事実かどうか分からないことを置くのが基本で、それを仮に認めたうえで、後ろで予想とは反対のこと、または変わらない結論を言います。意見を言う場面では、相手が出しそうな反論や悪い条件を先に認めて「それでも自分の意見は変わらない」と示すのに便利です。「〜ても」と意味は近いですが、「としても」は「仮に」の感じが強く、起きたことを事実として述べて後ろにそのあと起きたことを続ける文(*きのうは雨が降ったとしても、試合に行きました)には使いません。ただし「遅れたのは仕方がないとしても、連絡はするべきだった」のように、すでに起きたことを一応認めたうえで評価を続ける使い方はあります。「仮に」「もし」「たとえ」と一緒に使うことがよくあります。形が似ている「Nとしても」(項目1・その立場でも)とは別の表現で、名詞につくときは「Nだとしても」と「だ」が入るのが仮定の形です。

接続

普通形+としても(名詞・な形容詞は「だ」が入る:学生だとしても/不便だとしても。動詞はル形にもタ形にもつく:行くとしても/行ったとしても)

形
Vる/Vたとしても、〜(タクシーに乗ったとしても、空港まで1時間はかかります)い形としても、〜(少し値段が高いとしても、長く使えるならいいと思います)N/な形だとしても、〜(仕事が簡単だとしても、毎日続けるのは大変です)仮に〜としても、〜

導入

  • 反論を先に認めて、意見を守る教師が「留学生は、アルバイトの時間を少なくしたほうがいいと思います」と意見を言い、学生に反論を出させる(「でも、お金が足りません」)。教師が「お金が少し足りないとしても、勉強の時間は減らさないほうがいいと思います」と受け、反論の部分に下線を引いて「相手の言うことを一度認めて、それでも意見は同じ」という形だと見せる。何人かの学生に教師役をさせ、別の反論を「としても」で受けさせる。
  • 「親としても」と「親だとしても」を並べる板書を二段にし、上に「親としても、子どもの留学に賛成です」(親の立場でも賛成)、下に「親だとしても、子どもの手紙を勝手に読んではいけません」(たとえ親であっても)と書く。学生にそれぞれを「〜の立場でも」「仮に〜であっても」のどちらで言い換えられるか答えさせ、違いが「だ」一つであることに気づかせる。

板書案

(仮に)[普通形]+ としても、[変わらない結論]
時間がないとしても、朝ご飯は食べたほうがいいと思います。
〔赤〕N/な形 + だ + としても(不便だとしても・学生だとしても)
上段 親としても、賛成です。(立場)
下段 親だとしても、手紙を勝手に読んではいけません。(仮定)
〔青〕「だ」一つで意味が変わる → 二段を線で区切る

場面と発話(自作)

  • 引っ越し先を探している友達が、駅から遠いけれど家賃の安い部屋にするか迷っている。駅から遠いとしても、自転車があれば大丈夫だよ。安いほうがいいと思う。
  • サークルで週末のバーベキューの相談をしている。天気が心配だという声に、係の学生が答える。仮に雨が降ったとしても、屋根のある場所を予約してあるので、予定どおりやります。
  • 会社で、古いコピー機を新しくするかどうかを話し合っている。若い社員が意見を言う。最初の値段が高いとしても、電気代が安くなるなら、買い替えたほうがいいのではないかと思います。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

三人一組で回す。一人目が意見を言い(「毎朝、朝ご飯を食べたほうがいいと思います」)、二人目が反論や悪い条件を出し(「でも、朝は時間がありません」)、三人目が「〜としても、〜」で受けて意見を守る。役を替えて三回まわし、品詞によって「だ」が入るかどうか(時間がないとしても/忙しいとしても/不便だとしても/一人暮らしだとしても)を教師が途中で確かめる。

  1. 口頭教師が反論のカードを出し、学生が「〜としても」の形に直して言う変換練習から入る。キューは「時間がない」→「時間がないとしても」、「少し高い」→「少し高いとしても」、「駅から遠い」→「駅から遠いとしても」、「不便だ」→「不便だとしても」、「一人暮らし」→「一人暮らしだとしても」。品詞を混ぜ、名詞とな形容詞で「だ」が抜けたらその場で板書の赤い部分を指す。次に後ろの結論まで付けて一文で言わせる。
  2. ペアAが意見カード(「毎朝、運動したほうがいい」など)を読み上げ、Bが反論を一つ考えて「でも、〜」と言う。Aはその反論を「〜としても、〜」で受けて意見を守る。3往復したら交替。仕上げに、Bが反論の代わりに「親」「学生」のような名詞を出し、Aが「〜としても」(立場)と「〜だとしても」(仮定)のどちらで受けるかを選んで言う。
  3. 産出「反論キャッチボール」。三人一組で一人が意見を言い、二人が順に反論を投げ、意見を言った人が二回とも「〜としても」で受け止めて最後に自分の結論をもう一度言う。役を回して全員が受け手をする。教師が見るのは、「だ」の有無、前の部分が仮のこと(まだ起きていないこと)になっているか、後ろが「それでも変わらない」結論になっているか。逆接になっていない組み合わせは「でも」に言い換えさせて確かめる。

つまずきと手当て

  • 仮定のつもりで「だ」を落とし、立場の意味になってしまう(学生としても、割引はありません=学生の立場でも/学生だとしても、割引はありません=仮に学生であっても)。文としては正しいので通じてしまうが意味が変わる、と項目1の二段の板書に戻って確かめる
  • 実際に起きたことに使う(*きのうは雨が降ったとしても、試合に行きました)。もう起きたことは「降ったけれど」「降ったのに」、または「降っても」で言う。「としても」は、起きるかどうか分からないこと・仮のことに使うと確かめる
  • 後ろに、前の部分から当然予想されることを続けてしまい、逆接にならない(たくさん練習したとしても、上手になります)。前と後ろが「それでも変わらない」「予想と反対」の関係になっているかを、「でも」で言い換えて確かめさせる

既習の文型との違い

  • 〜ても、…(初級)どちらも「ある条件でも後ろは変わらない」ですが、「〜ても」は実際に起きたことにも、よくある条件にも使えるのに対し、「〜としても」は「仮にそうだとして」という仮定の感じが強く、話し手がその前の部分を事実かどうかいったん脇に置いて話していることを示します。意見の場面で相手の反論を受けるときに「としても」を使うと、「本当かどうかは別として」という距離が出ます。学習者が過去の出来事に「*きのう雨が降ったとしても、行きました」と使ったら、「降ったけど」「降っても」に戻させます。
  • 〜としては/も(この課の学習項目1)形は似ていますが、学習項目1の「Nとしても」は立場(その立場でも)、この項目の「Nだとしても」は仮定(仮にNであっても)で、名詞につくときの「だ」の有無で分かれます。「だ」を落とすと文は通じてしまうので、学習者も教師も気づきにくい点です。名詞の例を出すたびに「立場ですか、仮の話ですか」と聞いて確かめます。
関連する文型

学習項目 3 たとえ〜ても…

意味・はたらき学習項目 3

初級で習った「〜ても、…」(ある条件でも、後ろのことは変わらない)を、副詞「たとえ」で強める形です。「どんなに極端な条件になっても、後ろのことは変わらない」という強い気持ちを表し、意見を言う場面では、自分の意見や決心が固いことを示すのに使います。「たとえ」は文の前のほうに置き、後ろの「〜ても/〜でも」と必ず組になります(このように、前の言葉が決まった形の後ろの言葉と組になることを「呼応」と言います)。「たら」「ば」「と」とは組みません。「たとえ〜としても」と項目2と組み合わせた形もよく使います。

接続

たとえ+Vて形+も/い形容詞(〜くても)/な形容詞・名詞(〜でも)。「たとえ+普通形+としても」の形もある

形
たとえVても、〜(たとえ家族に反対されても、日本で働きたいです)たとえ〜くても、〜(たとえ高くても、この辞書がほしいです)たとえNでも/な形でも、〜(たとえ子どもでも、ルールは守らなければなりません)たとえ〜としても、〜

導入

  • 「ても」に「たとえ」をつけて強くする初級の「〜ても」を一文だけ思い出させる(「雨が降っても、学校へ行きます」)。続けて教師が「毎月、貯金をしています。少しだけでも、続けたいんです」と話し、「たとえ千円でも、毎月貯金します」と言い直す。「たとえ」と「でも」の二か所を黒板で線で結び、「たとえ」を入れると「どんなに少なくても」という強い気持ちになると説明する。
  • 組にならない文を直させる黒板に「たとえ雨が降ったら、行きません」「たとえ安ければ、買います」のような誤りの文を書き、どこが変かを学生に探させる。「たとえ」が出たら、後ろは「ても/でも」が来るまで待つ、と線の板書に戻って言い直させ、い形容詞・な形容詞・名詞のときの形(くても/でも)も同じ表で確かめる。

板書案

たとえ + Vても/〜くても/Nでも・な形でも、[決心・意見]
たとえ家族に反対されても、日本で働きたいです。
〔赤〕たとえ ――――― ても(線で結ぶ)
〔青〕い形 高い → 高くても な形・N 便利 → 便利でも/子ども → 子どもでも
〔×〕たとえ〜たら たとえ〜ば → 組まない

場面と発話(自作)

  • 家族から国へ帰ってくるように言われている留学生が、友達に自分の決心を話す。たとえ両親に反対されても、日本で就職したいと思っています。
  • 工場の朝のミーティングで、班長が作業の前の確認について話す。たとえ忙しくても、機械の点検だけは毎朝必ずしてください。
  • 歯が痛いのに、お金がもったいないから歯医者に行かないと言う友達に、アドバイスする。たとえお金がかかっても、早く治したほうがいいと思うよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

学生に、自分がゆずれないこと(毎日続けていること・将来の夢・大切にしている決まり)を一つ書かせる。教師が「でも、〜だったら?」と極端な条件を出し(「でも、とても眠かったら?」「でも、給料が安かったら?」)、学生が「たとえ〜ても、〜」で答える。慣れたら学生同士で条件を出し合い、動詞・い形容詞・な形容詞・名詞の条件を混ぜる。

  1. 口頭教師が条件の語を出し、学生が「たとえ〜ても」の形にして言う。キューは「雨が降る」→「たとえ雨が降っても」、「高い」→「たとえ高くても」、「子ども」→「たとえ子どもでも」、「眠い」→「たとえ眠くても」、「簡単」→「たとえ簡単でも」。全体で言わせたあと、教師が後ろに「毎日練習します」「ルールは守ります」のような結論を付け、個人で一文を言わせる。て形を誤った学生は初級のて形の表に戻す。
  2. ペアAが自分の決めていることを言う(「毎日日本語のニュースを聞きます」)。Bが「でも、〜だったら?」と極端な条件を出し、Aが「たとえ〜ても、〜」で答える。Bは条件を毎回ちがう品詞で出すことにし(動詞・い形容詞・な形容詞・名詞)、3回答えたら交替する。
  3. 産出「ゆずれないこと宣言」。学生が自分のゆずれないこと(続けている習慣・将来の夢・大切にしている決まり)をカードに書き、「たとえ〜ても、〜」を使ってクラスの前で二文ほどで宣言する。聞いた学生が一人、「でも、〜としても?」と追加の条件を出し、宣言した人がもう一度答える。教師が見るのは、「たとえ」と「ても/でも」が組になっているか、い形容詞・名詞の形、後ろが強い気持ちや決心になっているか。

つまずきと手当て

  • 「たとえ」を「たら」「ば」と組ませる(*たとえ雨が降ったら、試合はありません/*たとえ時間があれば、行きます)。「たとえ」は「ても・でも・としても」とだけ組むと、線で結んだ板書で確かめる
  • い形容詞・名詞の活用を誤る(*たとえ高いでも/*たとえ子どもても)。い形容詞は「くても」、な形容詞と名詞は「でも」と表で確かめる
  • 例を挙げる「例えば」と取り違える。「たとえば」は例を出すとき、「たとえ〜ても」は極端な条件を出すときで、読みが似ているので書くときに混ざりやすい。「たとえ〜ても」の「たとえ」はひらがなで書くことが多い、と添えておく

既習の文型との違い

  • 〜ても、…(初級)意味の芯は同じで、「たとえ」は「どんなに極端な条件でも」という強さを足すだけです。そのため「たとえ」を外しても文は成り立ちますが、ふつうの条件(「雨が少し降っても」)に「たとえ」を付けると大げさに聞こえます。決心や主張を強く言いたいときにだけ足す、と使う場面で区別させます。
  • 〜としても…(この課の学習項目2)「たとえ」は「ても」とも「としても」とも組み、「たとえ〜としても」は仮定の感じがいっそう強くなります。学習項目2を先に学んだ学習者は「たとえ」を付けると「としても」にしなければならないと思うことがあるので、「たとえ高くても」「たとえ高いとしても」の両方が言えると板書で並べます。どちらも「たら」「ば」とは組みません。
関連する文型

学習項目 4 〜と思います

意味・はたらき学習項目 4

初級で習った、話し手の意見や判断を表す文末です。この課では意見の文末をどう和らげるかに絞って扱います。「〜べきです」「〜です」と言い切るより、「〜と思います」で自分の考えとして示すほうが、話し合いの場では受け入れられやすくなります。「〜たほうがいいと思います/〜ないほうがいいと思います」は提案や助言の形で、課の題もこの形です。さらに控えめに言いたいとき(目上の人への提案・反対意見を言うとき)は、「〜のではないかと思います」(話し言葉では「〜んじゃないかと思います」)を使います。「私は〜と思います」の「思う」の主語は話し手で、ほかの人の考えを言うときは「〜と思っています」「〜と言っています」になります。

接続

普通形+と思います(名詞・な形容詞は「だ」が入る:学生だと思います/便利だと思います)。普通形+のではないかと思います(名詞・な形容詞は「な」:学生なのではないか/便利なのではないか)

形
〜と思います(この案のほうがいいと思います)Vたほうがいいと思います/Vないほうがいいと思います〜のではないかと思います(〜んじゃないかと思います)〜とは思いません(相手の意見に反対するとき)

導入

  • 同じ意見を三段の強さで並べる黒板に同じ意見を三段で書く。「アルバイトの時間を減らすべきです」「アルバイトの時間を減らしたほうがいいと思います」「アルバイトの時間を減らしたほうがいいのではないかと思います」。学生に「友達に言うとき」「先生に言うとき」「会議で部長の案に反対するとき」はどれを使うかを選ばせ、下の段ほど相手に考える余地を残す言い方だと気づかせる。
  • 四つの部品で意見を組み立てる項目1〜3の板書を残したまま、「[立場]としては、〜と思います。〜からです。たとえ〜ても(〜としても)、〜と思います」の型を黒板の中央に書く。教師が一度通して言って見せ(「学生としては、図書館は夜も開けたほうがいいと思います。家では集中できないからです。たとえ利用する人が少なくても、試験の前は必要だと思います」)、目標の活動の手本にする。

板書案

強い 〜べきです。
 ↓ 〜たほうがいいと思います。
弱い 〜たほうがいいのではないかと思います。
〔赤〕N・な形 + だ + と思います 〔青〕N・な形 + な + のではないか
[立場]としては、〜と思います。〜からです。たとえ〜ても、〜。

場面と発話(自作)

  • クラスで文化祭の出し物を決めている。料理の店か劇かで意見が分かれ、留学生の一人が手を挙げる。準備の時間が短いので、料理より劇のほうがいいと思います。
  • 職場で、上司が決めた作業の手順について、新人の社員が控えめに提案する。この確認は、二人でしたほうが間違いが少ないのではないかと思います。
  • 友達が「試験の前は毎日8時間勉強するべきだ」と言うのに、反対の意見を言う。そうかなあ。私は、8時間もする必要はないと思うけど。寝る時間も大事だよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず、教師が言い切りの文のカード(「この店はやめるべきです」「その考えは間違いです」など)を出し、学生に「〜と思います」「〜のではないかと思います」に言い換えさせる。次にペアで、一人が意見を言い、もう一人が賛成なら「私も〜と思います」、反対なら「〜ないと思います」「〜とは思いません」で答える。最後に項目1〜3と組み合わせた型で、一人1分の意見を言わせる。

  1. 口頭教師が言い切りの文のカードを出し、学生が和らげた文末に言い換える。キューは「この店はやめるべきです」→「やめたほうがいいと思います」、「その方法は不便です」→「不便だと思います」、「もう少し待つべきです」→「待ったほうがいいのではないかと思います」。続けて教師が「友達に」「先生に」「会議で」と相手のカードを出し、同じ意見を相手に合わせた文末で言わせる。
  2. ペアAが身近な話題で意見を一つ言い(「スマートフォンは寝る前に使わないほうがいいと思います」)、Bは賛成なら「私も〜と思います」、反対なら前の部分を言い換えて「〜てもいいと思います」などで答え、理由を「〜からです」で一つ足す。次に、Bが相手を目上の人(先生・部長)に替えて同じ反対意見を「〜のではないかと思います」で言い直す。交替して2回。
  3. 産出「1分意見スピーチ」。学習項目1〜4の部品をつないだ型(立場→意見→理由→反論への答え)で、自分で選んだ話題について一人1分話す。聞き手は、立場・意見・理由・反論への答えの四つが入っていたかをチェック表に印を付けて返す。教師が見るのは、意見の文末が場面に合っているか、名詞・な形容詞の「だ/な」、理由の文まで「と思います」にして芯がぼやけていないか。

つまずきと手当て

  • 名詞・な形容詞の「だ」を落とす(*駅前のビルは銀行と思います/*この方法は便利と思います)。反対に「のではないか」の前に「だ」を入れる(*銀行だのではないかと思います)。「と思います」の前は「だ」、「のではないか」の前は「な」と、二段の板書で確かめる
  • 反対の意見を「〜と思いません」で言って、強く聞こえる(行ったほうがいいと思いません)。文法の誤りではないが、自分の意見は「行かないほうがいいと思います」のように前の部分を否定にするほうが自然で、「〜とは思いません」は相手の意見を打ち消すときに使う、と分けて示す
  • ほかの人の考えのつもりで「川口さんは来ないと思います」と言い、話し手自身の推測に聞こえてしまう。ほかの人の考えは「川口さんは〜と思っています」「〜と言っていました」で言うと確かめる。また、すべての文を「〜と思います」で終えて意見の芯がぼやける学習者には、理由の文は「〜からです」で言い切らせる

既習の文型との違い

  • 〜そうだ(第7課)第7課の「〜そうだ」は聞いた話を伝える言い方で、内容は自分の考えではありません。「〜と思います」は話し手自身の意見や判断です。資料で読んだことと自分の意見を区別せずに話す学習者がいるので、「〜によると、〜そうです。私は、〜と思います」と二つの文に分けて言わせます。
  • 〜ませんか(第8課)第8課の「〜ませんか」は相手を誘う・勧める言い方で、相手の返事を求めます。「〜たほうがいいと思います」は話し手の判断として提案を示す形で、返事よりも理由が続くのがふつうです。話し合いで意見を言うときは「〜たほうがいいと思います。〜からです」、具体的に誘うときは「いっしょに〜ませんか」と、役割で使い分けさせます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の語は、意見を言う場面の語(意見・賛成・反対・立場・理由・提案)と、話題になっている留学生活・人づきあいにかかわる語(付き合う・交流・母国・異文化 など)の二つのかたまりに分けて扱うと練習しやすくなります。単語だけで覚えさせず、「〜に賛成する/〜に反対する」「〜と付き合う」「〜の立場から」のように助詞つきの形で、ディベートの型の文に入れて練習します。「賛成・反対」は「〜に」を取ることを、「〜の案に賛成です」「〜には反対です」の文の中で何度も言わせて定着させます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 賛成します(さんせいします) ほかの人の意見や案を「いい」と思って、同じ考えになります。 〜に賛成する・案に〜・意見に〜
    寮の話し合いで、門限を遅くする案が出た。
    「門限を遅くする案には、寮の学生の半分以上が賛成しました。」
  • 反対します(はんたいします) ほかの人の意見や案を「よくない」と思って、違う考えを持ちます。 〜に反対する・計画に〜・強く〜
    留学の計画を家族に話したが、喜んでもらえなかった。
    「たとえ両親が反対しても、留学したいと思います。」
  • 立場(たちば) その人がどんな役目や関係にいるかということです。そこから物事を見ます。 〜の立場から・相手の〜・〜が違う
    会議で、いろいろな人の考えを聞いている。
    「店長の立場から見ると、夜も開けたほうがいいと思います。」
  • 意見(いけん) ある問題について、自分が考えていることです。 〜を言う・〜が分かれる・反対の〜
    クラスで出し物を決めていて、二つの案で迷っている。
    「私の意見を言ってもいいですか。劇のほうがいいと思います。」
  • 理由(りゆう) どうしてそう考えるのか、どうしてそうするのか、そのわけです。 〜を言う・〜を聞く・大きな〜
    意見を言ったあと、先生に「なぜですか」と聞かれた。
    「理由は二つあります。一つは、準備の時間が短いからです。」
  • 反論(はんろん) 相手の意見に対して、「違うと思う」と自分の考えを言い返すことです。 〜する・〜を言う・〜に答える
    ディベートで、相手の組が意見に言い返してきた。
    「その反論は分かります。でも、時間がかかるとしても、続けたほうがいいと思います。」
  • 提案します(ていあんします) 「こうしたらどうか」と、考えや計画をほかの人に出します。 〜を提案する・新しい案を〜・会議で〜
    職場の会議で、新人の社員が手を挙げる。
    「一つ提案があります。確認は二人でしたほうがいいのではないかと思います。」
  • 付き合います(つきあいます) 友達や近所の人などと、いっしょに過ごしたり話したりして、仲よくします。 〜と付き合う・友達と〜・長く〜
    留学生活で、どんな友達を作るかを話している。
    「寮では、いろいろな国の人と付き合うようにしています。」
  • 交流(こうりゅう) 違う国や違うグループの人どうしが、会ったり話したりして、つながりを作ることです。 〜する・〜会・地域との〜
    学校の近くの町で、留学生と住民のイベントがある。
    「寮の学生としては、地域の人と交流できる機会があるのはうれしいです。」
  • 母国(ぼこく) その人が生まれて育った国です。 〜語・〜の友達・〜に帰る
    日本に来て半年。友達づくりについて話している。
    「母国の友達がいると、困ったときに安心だと思います。」
  • 決心します(けっしんします) 迷っていたことを、「こうする」としっかり決めます。 〜を決心する・帰国を〜・固く〜
    国へ帰るか、日本で働くかずっと迷っていた。
    「たとえ大変でも、日本で働くと決心しました。」
  • 仮に(かりに) 本当かどうか分からないけれど、そうだと考えてみると、という意味です。 〜…としても・〜…とすれば・〜決める
    週末のバーベキューの天気が心配だという声が出た。
    「仮に雨が降ったとしても、屋根のある場所なので大丈夫です。」

宿題と次のコマ

宿題は、授業のディベートで言った意見を、200〜300字の意見文に書くこと。「〜としては」「〜と思います(〜のではないかと思います)」「〜としても」か「たとえ〜ても」を必ず一回ずつ使い、書き言葉なので文末は「〜と思う」「〜のではないだろうか」にそろえる。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞いた人が「〜としても」で反論を一つ出して書いた人が答えるところまでやって復習してから、第13課の「〜にとって…」(物事の価値を言う)に入ります。この課の「〜としては」(立場から意見を言う)と「〜にとって」(立場から価値を評価する)を並べて見せると、つながりが分かりやすくなります。

よくある質問

  • 「Nとしても」と「Nだとしても」の違いはどう教えればいいですか?

    板書を二段にし、上に「親としても、賛成です」(親の立場でも)、下に「親だとしても、勝手に読んではいけません」(仮に親であっても)を並べます。学生に「〜の立場でも」「仮に〜であっても」のどちらで言い換えられるかを答えさせ、違いが「だ」一つであることに気づかせます。名詞の例を出すたびに「立場ですか、仮の話ですか」と聞く習慣をつけると、ディベートの中でも混ざりにくくなります。

  • 「〜としても」と初級の「〜ても」の違いは何ですか?

    どちらも「その条件でも後ろは変わらない」という逆接ですが、「〜としても」は「仮にそうだとして」という仮定の感じが強く、まだ起きていないことや事実か分からないことに使うのが基本です。起きたことを事実として述べ、後ろにそのあと起きたことを続ける文(*きのう雨が降ったとしても、行きました)には使わず、「降ったけれど」「降っても」を使います。意見の場面では、相手の反論を、本当かどうかは別として受け止める言い方として「としても」が役に立つ、と場面で示します。

  • 「たとえ」が「たら」「ば」と組んでしまう学習者にはどうしますか?

    「たとえ」と「ても/でも」を黒板で線で結び、「たとえ」が出たら後ろは「ても」が来るまで待つ、と目で見せます。そのうえで「たとえ雨が降ったら」のような誤りの文をいくつか書き、学生に直させます。「たとえ〜としても」も組める形として並べておくと、使える組み合わせが一つの表で確かめられます。

  • 第12課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と学習項目1〜2(〜としては/も・〜としても)まで、2コマ目で学習項目3〜4(たとえ〜ても・〜と思います)と目標の活動のミニ・ディベートを行います。意見文の作文は宿題にし、次のコマの最初の10分で何人かに読ませてから第13課に入ります。

  • ミニ・ディベートの話題はどう選べばいいですか?

    学習者が自分の経験から意見を持てる身近な話題(寮の門限・アルバイトの時間・スマートフォンの使い方・同じ国の友達との付き合い方など)を選びます。賛成と反対のどちらにも理由が出やすい話題にすると、「〜としても」「たとえ〜ても」で反論を受ける練習が自然に起きます。宗教や政治のように個人の信条にかかわる話題は避けます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。