目の前で起きていることや、ある場所の今の様子を、その場にいない人にも分かるように説明する課です。目標の場面は、地震や事故のあとに家族や管理人、警察・消防に電話で様子を伝える、部屋や物の状態を報告する、といった状況説明です。学習項目は三つの組に分かれ、物の状態を言う形(〜だらけだ・〜かけの…)で「どうなっているか」を、感じたことを言う形(〜がする)で「何が聞こえたか・におったか」を、初級の存在文(〜がいる・〜がある)で「どこに何が・だれがいるか」を言います。教えるときの芯は、説明を「場所→何が・だれが→どんな様子か」の順に組み立てさせることと、どの形も話し手の評価や感じ方(いやだ・変だ・途中だ)を一緒に運ぶので、場面に合わないと意味がずれることの二つです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 地震のあとの部屋を描いた絵(本棚が倒れ、床に本や割れたコップが散らばり、テーブルに食べている途中のご飯がある)を見せ、「この部屋にいない家族に、電話で様子を伝えてください」と言う。学生が持っている言葉で言わせ、言えなかったところに印を付けて、課の最後まで黒板に絵を残す |
| 学習項目1 〜だらけだ | 25分 | 絵の床を指して「床がガラスだらけです」と言い、よくない物がたくさんある・一面に付いている状態を言う形だと示す。服・顔・作文など身近な物に広げ、ほめる物には使わないことを確かめる |
| 学習項目2 〜かけの… | 25分 | 絵のテーブルのご飯を指して「食べかけのご飯」と言い、途中でやめた状態を表すことを示す。なぜ途中なのか(地震で逃げたから)を言わせて、前に起きたことの説明につなげる |
| 学習項目3 〜がする | 30分 | 音の録音やにおいの写真カードで「〜音/においがする」を導入し、題の「〜という音がした」の形を板書する。最後に体の感じ(寒気・めまい)に広げる |
| 学習項目4・5 〜がいる/〜がある | 30分 | 初級の存在文の復習として、絵の中の人と物を「どこに・何が・どんな様子で」の順で言わせる。人や動物は「いる」、物と出来事は「ある」、出来事は場所に「で」を使うことを2列の表で整理する |
| 目標の活動(電話で状況を伝える) | 45分 | ペアで、一人に現場の絵(事故の道・台風のあとの店など)を渡し、絵を見ていない相手(家族・管理人・消防)に電話で様子を伝えさせる。聞き手は聞いた内容を絵に描き、最後に元の絵と比べて、伝わらなかった所を言い直させる |
| まとめ | 15分 | 黒板の絵に、学生が活動で使った文を書き足し、「場所→何が・だれが→様子」の順になっているかを確かめる。宿題の説明をする |
「Nだらけだ」は、ある場所や物の表面に、Nがたくさんある・一面に付いている状態を言う形です。「床がほこりだらけだ」「作文が間違いだらけだ」のように、話し手が「いやだ・困る・汚い」と思う物によく使い、その気持ちも一緒に伝わります。そのため、花・本・笑顔のような良い物がたくさんあると言いたいときには使わず、「〜でいっぱいだ」を使います。似た形の「〜まみれ」は、汗・泥・油のように表面にべったり付く物に使うことが多く、「間違い」「穴」のように付く物ではない名詞には「だらけ」を使います。
N+だらけ。名詞と同じように使い、文の終わりは「Nだらけだ/です」、名詞の前は「Nだらけの N」、変化は「Nだらけになる」、文をつなぐときは「Nだらけで、〜」
汚れた物・壊れた物の写真カード(ほこりの棚・傷のある机・赤ペンだらけのテスト・泥の靴)を見せ、学生が「〜は〜だらけです」と言う。次に「〜だらけの〜」の形で名詞を説明させ(「傷だらけの机」)、最後に「〜だらけなので、〜」で、だからどうするかを付けさせる。
「Vかけの N」は、ある動作を始めたが途中でやめて、まだ終わっていない物の状態を言う形です。「飲みかけのコーヒー」は、少し飲んで残っているコーヒーのことです。状況説明では、物が途中のまま残っていることから「だれかが急にその場を離れた」「何かがあって中断した」と、前に起きたことを伝える手がかりになります。また、「壊れる・消える・腐る」のように自然に変わる動詞につくと、「壊れかけのいす」のように、変化が始まっていて、もう少しでそうなる状態を表します。
Vます形(グループⅠ・Ⅱ・Ⅲとも「ます」を取った形)+かけ。名詞の前は「Vかけの N」、文の終わりは「Vかけだ」、動詞として「Vかける/Vかけた」(「言いかけてやめた」)とも使う
「読む・飲む・食べる・書く・作る」の動詞カードと、物の絵(本・コーヒー・パン・手紙・料理)を組にして見せ、学生が「〜かけの〜」で言う。慣れたら「〜かけの〜がある」に続けさせ、さらに「〜かけの〜があるので、〜たようです」と、前に起きたことを推し量る文にさせる。
「〜がする」は、音・声・におい・味のように耳や鼻や舌で感じるものや、寒気・めまい・吐き気のような体の感じが、自然に起きて感じられることを言う形です。「台所から変なにおいがする」のように、だれがしたかではなく、感じたこと自体を言います。何の音かを具体的に言うときは、「『ドーン』という音がした」のように擬音語(音をまねた言葉)に「という」をつけます。目で見えるもの(光・煙・色)には使わず、「光が見える」「煙が出ている」と言います。
(場所から)N(音・声・におい・味・感じ・寒気など)+がする。何の音・においかは「Nの音/においがする」「「〜」という音がする」「〜ような味がする」で言う
音の録音・においや味の写真カード・体の具合の絵を混ぜて出し、学生がカードに合わせて「〜の音/におい/味がします」「〜がします」と言う。音のカードでは「「〜」という音がしました」と擬音語を入れて言わせ、最後に「〜がしたので、〜」で、そのあとどうしたかを続けさせる。
初級で習った、人や動物がいることを言う形の復習です。この課では、事故や地震の現場のように、その場にいない人にどこに、だれが、どんな様子でいるかを伝える文として使います。初めて伝える情報なので「場所に(は)〜がいる」の形にし、人の様子は「けがをした人」「泣いている子ども」のように名詞の前に説明を付けて言います。人数は「けが人が二人いる」のように「が」のあとに言うと、電話でも聞き取りやすくなります。運転手が乗っているタクシーのように、人が動かしている乗り物にも「いる」を使うことがあります。
場所+に(は)+N(人・動物)+が+いる。人の様子は[Vている/Vた]N、人数は「Nが+数+いる」。だれもいないときは「だれもいない」
現場の絵を見せ、教師が「どこに?」「だれが?」「どんな様子?」とカードで順に聞き、学生が答えを一つの文にまとめて言う。次に人数カードを足して「〜が〜人います」を入れさせ、最後はペアで、絵を見ている人が見ていない人に電話のつもりで伝える。
初級で習った、物があることを言う形の復習です。この課では、地震のあとの部屋や事故の現場のように、どこに、何が、どんな状態であるかを並べて、その場の様子を伝えるのに使います。物の状態は「割れたコップ」「倒れた本棚」のように名詞の前に説明を付けて言います。また、「地震・事故・火事」のような出来事が起きたことも「〜がある」で言い、そのときは場所に「で」を使います(駅前で事故があった)。「本棚が倒れている」が物の変化の結果に注目するのに対して、「倒れた本棚がある」はその場にある物を一つずつ並べる言い方なので、部屋の様子を数え上げるときに使いやすくなります。
物:場所+に(は)+N+が+ある。物の状態は[Vた/Vている]N。出来事:場所+で+N(地震・事故・火事など)+が+ある(あった)
部屋や道の絵を見せ、教師が場所を指して学生が「〜に〜がある」で言う。次に出来事カードと場所カードを組にして「〜で〜がありました」と言わせ、「に」と「で」を混ぜて出して選ばせる。最後に学習項目1〜5の形を全部使い、絵の様子を「場所→何が・だれが→様子」の順で30秒で説明させる。
状況説明に使う語は、物の状態を表す動詞(倒れる・割れる・散らかる・壊れる)を自動詞と他動詞の組で確かめ、「倒れた本棚」「割れたコップ」のように名詞の前に置く形で練習すると、学習項目4・5の文にそのまま使えます。音を表す擬音語(ドーン・ガチャン・ドンドン)は、意味を説明するより教師が声に出してまねさせ、「〜という音がした」の形とセットにします。けが・停電・避難など災害のときの語は、実際に使う場面(電話で知らせる・張り紙を読む)を一つ添えて覚えさせます。
宿題は、自分の部屋や近所の道など、身近な場所が地震や台風のあとにどうなっていそうかを想像して絵に描き、その絵を見ていない家族に電話で伝えるつもりで、「〜だらけ」「〜かけの」「〜がする」「〜がいる/〜がある」を一つずつ使った200字ほどの説明を書くこと。次のコマの最初にペアで読み合い、聞き手は聞いた説明から絵を描いて、元の絵と比べる。そのあと第7課の、聞いた話を伝える表現に進みます。
「〜だらけ」と「〜でいっぱい」「〜まみれ」はどう違いますか?
「〜だらけ」はよくない物がたくさんある・一面に付いている様子で、困った気持ちが一緒に出ます。「〜でいっぱい」は場所や入れ物が満ちている様子で、良い物にも使えます。「〜まみれ」は汗・泥・油のように表面にべったり付く物に使うことが多く、「間違い」のような付く物ではない名詞には使いにくい語です。授業では「だらけ」を主にし、ほかの二つは言い換えの先として見せる程度にします。
「〜かけの」を教えると「話しかける」「電話をかける」と混ざります。どう分けますか?
「〜かけの N」で途中の意味になるのは、「読みかけ・飲みかけ」のように動作の途中で止まった物を言うときだと、先に枠で示します。「話しかける」「呼びかける」は相手に向かって働きかける別の語で、「電話をかける」は「かける」という動詞そのものです。始め・途中・終わりの3本のボトルに何度も戻り、真ん中の物を言う語だと見せると混ざりにくくなります。
「音がする」と「音が聞こえる」はどう教え分けますか?
「音がする」は音が起きていること、「音が聞こえる」はその音が自分の耳に入ることを言う、と板書で並べます。状況説明では何が起きたかを伝えるので「〜がする」が使いやすく、「「ドーン」という音がした」の形で練習します。どちらも助詞は「が」で、「音を聞く」だけが「を」になることを、3行の板書で確かめます。
初級で習った「〜がいる」「〜がある」を、第6課ではどこまで扱いますか?
形の説明はやり直さず、「場所→何が・だれが→様子」の順で現場を説明する文に絞ります。新しく足すのは、名詞の前に様子を付ける言い方(けがをした男の人・割れたコップ)と、出来事の場所に使う「で」です。人に「ある」を使う誤りが残っている学生には、2列の表に戻って短く確かめます。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で導入と「〜だらけ」「〜かけの」「〜がする」まで、2コマ目で存在文の復習と電話で様子を伝える活動、まとめをします。活動に使う現場の絵を前もって何枚か用意しておくと、2コマ目の半分ほどを活動に使えます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。