体調が悪い・急な用事がある、といった理由を言って、先生や上司に許可を求める力をつける課です。課の題の「〜させていただけませんか」は、使役のて形に「いただけませんか」をつけて「わたしが〜することを許してもらえませんか」と頼む形で、許可を求める言い方の中でもとくに丁寧なものの一つです。初級の「〜てもいいですか」から段を上げて使います。学習項目は、理由をやわらかく言う「〜気味」、なぜ今なのかを言う「〜うちに」「〜ないうちに」、許可を求める基本の「〜てもいいですか」で、どれも「理由 → 今でなければならないわけ → お願い」という許可の求め方の部品になります。板書は「理由(〜気味なので)」「時(〜ないうちに)」「お願い(〜させていただけませんか)」の三つの箱を課の最後まで残し、項目が進むたびに箱の中身を増やしていくと、目標の活動にそのままつながります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 熱があるのに授業中・仕事中の人の絵を見せ、「先生(課長)に何と言いますか」と学生に言わせてみる。出てきた言い方(帰ってもいいですか・帰りたいです など)を黒板の端に残し、この課の終わりには理由をつけて、もっと丁寧に言えるようにすると予告する。板書の三つの箱(理由・時・お願い)はここで描いておく |
| 学習項目1 〜気味 | 25分 | くしゃみ・眠そうな目・疲れた顔の絵カードで「風邪気味」「寝不足気味」「疲れ気味」を導入し、「少しその様子がある」という意味を「ひどい風邪」の絵と比べて確かめる。できた形を「理由」の箱へ入れる |
| 学習項目2 〜うちに… | 30分 | 熱いスープと冷めたスープ、明るい空と暗い空の絵を左右に並べ、「熱いうちに」「明るいうちに」を導入。うちにの前は、いつか変わる状態だと確かめ、「今のうちに」を「時」の箱へ |
| 学習項目3 〜ないうちに… | 25分 | 同じ絵を右側(変わったあと)から見て「冷めないうちに」「暗くならないうちに」。学習項目2の文と線で結んで言い換えさせ、「〜まえに」との気持ちの違いを比べる。1コマ目はここまで(残りの時間で「〜ないうちに〜たいので、」まで言わせておく) |
| 学習項目4 〜てもいいですか | 40分 | 初級の「〜てもいいですか」を教室の小さなお願いで思い出させてから、頼むことを大きくしていき、丁寧さの階段(〜てもいい?→〜てもいいですか→〜てもよろしいでしょうか→〜させていただけませんか)を作る。使役のて形の作り方を表で確かめ、「お願い」の箱を埋める |
| 目標の活動(許可を求めるロールプレイ) | 35分 | 相手(先生・店長・課長)と事情(風邪気味・家族の用事・台風・病院の予約)が書かれたカードを引き、三つの箱を使って許可を求める。相手役は「許可する」「条件をつけて許可する」「断る」のカードを持ち、受け答えまで続ける。役を交代して2〜3回 |
| まとめ | 15分 | ロールプレイで言ったお願いを、先生あての短いメールに書き直す(件名・理由・お願い・お礼)。話すときとメールで、どこが同じでどこが違うかを確かめて終わる |
「少し〜の様子がある」「〜の傾向が出ている」ことを表します。風邪気味(少し風邪をひいているような感じ)・疲れ気味・寝不足気味・遅れ気味・太り気味のように、多くはあまりよくない状態に使います。「少し」の意味がもともと入っているので、「病気です」とはっきり言わずに体調をやわらかく伝えることができ、許可を求めるときの理由に向いています。読みは「ぎみ」です(「気味が悪い」の「きみ」とは使い方が別です)。
N+気味/Vます形(「ます」を取った形)+気味(「〜気味だ」「〜気味で」「〜気味なので」「〜気味のN」の形で使う)
体調・様子の絵カードを見せて「〜気味です」で言わせ、次に「〜気味なので、〜てもいいですか」と許可の文まで一息で言わせる。ペアで相手の顔の絵カードを見て「どうしたんですか」「ちょっと〜気味で…」のやり取りを回す。
「Aの状態が続いている間に、Aが変わってしまう前にBをする」という意味です。熱いうちに(冷める前に)食べる、明るいうちに(暗くなる前に)帰る、若いうちに(年を取る前に)いろいろな経験をする、のように、Aはいつか終わる・変わる状態で、話し手には「変わってからでは遅い、だから今」という気持ちがあります。後ろには「〜する」「〜たほうがいい」「〜ておく」のような、話し手がそうしたい・そうするべきだと考える動作が来ることが多いです。このほかに「話しているうちに眠くなった」のように「Aをしている間に、気がつくと変化が起きていた」という使い方もありますが、この課では前の使い方を中心にします。
Vている/Vる(いる・ある・できる などの状態を表す動詞)・い形・な形+な・N+の +うちに
左に今の状態、右に変わったあとの状態を描いた絵カード(熱い/冷めた・元気/疲れた・空いている/混んでいる)を見せて「〜うちに〜」を言わせる。慣れたら「〜うちに〜たいので、〜てもいいですか」と許可を求める文につなげる。
「Aになる前に(Aになってしまうと困るので、その前に)Bをする」という意味です。暗くならないうちに帰る、忘れないうちにメモする、料理が冷めないうちに食べる、のように、Aには話し手が止められない変化(暗くなる・冷める・忘れる・混む・売り切れる)が来ることが多いです。「暗くならないうちに」と「明るいうちに」のように、学習項目2の「〜うちに」と同じことを反対側から言える場合がよくあります。「〜まえに」とも近い意味ですが、「ないうちに」には「そうなってしまう前に、急いで」という気持ちが強く出ます。また、「知らないうちに」「気がつかないうちに」の形で「気がつかない間に変化が起きていた」という使い方もあります。
Vない(ない形)+うちに
変化の絵カード(暗くなる・冷める・混む・忘れる・売り切れる)を見せて「〜ないうちに〜」を言わせ、次に学習項目2の「〜うちに」に言い換えられるものを探させる(暗くならないうちに→明るいうちに)。最後に「〜ないうちに〜たいので、〜させていただけませんか」まで言わせる。
初級で習った、許可を求める基本の形です。この課では、だれに・どのくらい大きなことを頼むかで丁寧さの段を選び分けるところまで広げます。友達や家族には「〜てもいい?」、先生や上司への小さなこと(窓を開ける・質問する)には「〜てもいいですか」、仕事を早く切り上げるなど相手に負担をかけることには「〜てもよろしいでしょうか」、さらに丁寧に頼むときは使役のて形を使った「〜させていただけませんか」を使います。「〜させていただけませんか」は「わたしが〜することを、あなたに許してもらえませんか」という意味で、使役の「させる」がここでは「許す」の意味で使われています。どの段でも、先に理由を言ってからお願いを言い、許可されたらお礼を言うのが自然な流れです。
Vて+もいいですか/もよろしいでしょうか。使役のて形+いただけませんか(帰る→帰らせて、休む→休ませて、見る→見させて、する→させて、来る→来させて〔こさせて〕)
頼むことのカード(窓を開ける・質問する・早く帰る・休む・席を外す)と相手のカード(友達・先生・店長・部長)を1枚ずつ引き、階段のどの形を使うかを選んで、理由をつけて言わせる。相手役は「ええ、どうぞ」「すみません、きょうはちょっと…」のどちらかで答え、許可されたら「ありがとうございます」、断られたら「わかりました。では〜」と続けさせる。
この課の場面では、体調の語(熱・せき・寒気・頭痛・だるい)と、学校や仕事を休む・早く帰るときの語(早退する・欠席する・遅刻する・席を外す・失礼する)がよく要ります。単語だけで覚えさせず、「熱がある」「早退させていただく」のように助詞や許可の形とつなげて練習します。学習項目1の「〜気味」で使える語(風邪・疲れ・寝不足・緊張)は表にまとめて残しておくと、目標の活動で理由を作るときにそのまま使えます。
宿題は、先生か上司に許可を求める短いメールを1通書くこと(件名・理由・今でなければならないわけ・お願い・お礼の順で、「〜気味」か「〜ないうちに」のどちらかと「〜させていただけませんか」を入れる)。次のコマの最初に何通かを読み上げ、相手の立場の学生が「許可したくなるか」「丁寧さの段が合っているか」を言います。許可をもらったあとのお礼は第3課のお礼の言い方につながるので、メールの最後のお礼の一文を次の課の導入に使えます。
「〜させていただけませんか」と「〜てもよろしいでしょうか」はどちらが丁寧ですか?
どちらも先生や上司に使える丁寧な言い方で、どちらが上かがいつも決まっているわけではありません。この教案では、使役と「いただく」で相手の許しをもらう形になる「〜させていただけませんか」を階段のいちばん上に置き、仕事を休む・早く帰るなど相手に負担をかけるお願いで使わせます。さらに丁寧にしたいときは「〜させていただけないでしょうか」にします。段は目安なので、相手・頼むことの大きさ・言い方の調子で選ぶと伝えます。
第2課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目で「〜気味」「〜うちに」「〜ないうちに」を入れ、2コマ目で「〜てもいいですか」から丁寧さの階段と使役のて形を作り、許可を求めるロールプレイとメールまで進みます。使役形の復習に時間がかかるクラスでは、2コマ目の初めに使役形だけの短い練習を足します。
「〜ないうちに」と「〜まえに」の違いはどう説明すればいいですか?
「まえに」は辞書形について時の順番を言うだけで、「寝るまえに歯をみがく」のような習慣にも使えます。「ないうちに」はない形について、その変化が起きると困るので先にしておきたいという、急ぐ気持ちが入ります。「6時まえに帰ります」と「暗くならないうちに帰ります」を並べ、どちらが急いでいるかを学生に聞くと違いが見えます。
「帰らさせていただけませんか」と言う学生はどう直せばいいですか?
グループⅠの動詞に「さ」を入れた形で、母語話者にも聞かれる言い方ですが、標準的な形は「帰らせて」「休ませて」です。使役形の表をグループごとに板書し、「させて」になるのはグループⅡ(見させて)とグループⅢ(させて・来させて)だけだと分けて見せます。言い終わってから表を指さして言い直させると、話の流れを止めません。
「〜させていただく」を使いすぎると失礼になりませんか?
文化審議会の「敬語の指針」(2007年)は、「〜させていただく」が合うのは、相手の許しを受けて行い、そのことで恩恵を受けるという気持ちがある場合だとしています。この課の場面(上司の許しを得て早く帰る・休む)はこれに当たります。許しの要らないことにまで使うとまわりくどく聞こえることがあるので、許可を求める場面に絞って練習させます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。