日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 初中級 第13課「私にとって最高の出会いは、マイケル先生に会ったことでした」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

物事の価値を、だれの立場から見た価値なのかをはっきりさせて言葉にすることが目標の課です。自分にとって大切な出会いや経験を語るには、「だれから見て大切か(〜にとって)」「気持ちや態度がだれに向いているか(〜に対して)」「それさえあれば十分なほど大切なものは何か(〜さえ…ば)」「二度としないと決めたことは何か(〜まい)」を言い分ける必要があります。中でも「にとって」と「に対して」は同じ「N+に〜」の形で混同しやすいので、Nから見る(評価)か、Nに向ける(態度・動作)かを矢印の向きで見せるのがこの課の芯です。初級の「〜が好きです/嫌いです」は、好きな「もの」だけでなく好きな「こと」まで言えるようにして、最後のスピーチや作文の材料にします。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目6時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜にとって」で、だれの立場から見た価値・評価かを言い、意見を言う「〜としては」や、態度を言う「〜に対して」と取り違えずに使える
  • 「〜に対して」で、気持ち・態度・動作が向かう相手を言い、名詞の前では「〜に対する」にできる
  • 「〜さえ…ば」で自分にとって欠かせない一つの条件を言い、「〜まい」で強い決心をスピーチや作文の中で表せる
  • 好きなこと・苦手なことを「Vのが/Vことが」で言い、言い方の強さを選びながら、自分が大切にしているものを短いスピーチや作文にまとめられる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)15分「日本に来てから、あなたにとっていちばん大切な出会いは何(だれ)ですか」と聞き、一言ずつ答えを黒板に集める。同じ「アルバイト」でも、ある人には生活のためのお金、別の人には日本語の練習の場になっていることに触れ、この課は「だれから見た価値か」をはっきり言う課だと予告する
学習項目1 〜にとって…35分自転車の絵と人のカード(学生・お年寄り・会社員)で、同じものを立場を替えて評価させる。前の課の「〜としては」の文と並べ、意見を言う形か、価値を言う形かを分ける
学習項目2 〜に対して…35分人から人への矢印の板書で、気持ち・態度・動作が向かう相手を見せる。「にとって」との二択の問題で区別を固め、名詞の前の「〜に対する」まで
学習項目3 〜さえ…ば…35分「一つだけ持って行けるとしたら」の問いから「これさえあれば」へ。動詞は「飲めば」を「飲み+さえ+すれば」に分ける板書で形を見せる
学習項目4 〜まい30分教師の失敗談から「もう二度と〜まいと思った」を導入。同じ内容を友達との会話の「もう絶対〜しない」に言い換えさせ、硬い言い方であることを確かめる
学習項目5・6 〜が好きです/〜が嫌いです35分好きな「もの」から好きな「こと」へ(Vのが好き/Vことが好き)。強さのものさし(大好き〜大嫌い)で「嫌い」のやわらげ方を練習する
目標の活動(スピーチ)60分「私にとって最高の〜」という題で、①〜は私にとって…だ ②その人(もの)は私に対して… ③〜さえ…ば… ④もう〜まい(と思った)の四つを入れた1分のスピーチを書かせ、グループで発表する。聞き手は四つの部品が聞こえたらメモに印を付け、発表のあとに「にとって」と「に対して」の使い方を確かめ合う
まとめ25分「にとって/に対して」の二択を5問ほどと、「〜まい」の接続(グループⅠ・Ⅱ・Ⅲ)を確かめ、スピーチ原稿の直しを宿題にする

学習項目 1 〜にとって…

意味・はたらき学習項目 1

「Nにとって」は、Nの立場から見るとどうかという評価を言う形です。後ろには「大切だ・必要だ・難しい・ありがたい」や「〜は…だ」のような評価・判断の言葉が来て、「する・話す」のような動作の動詞は来ません。Nには人だけでなく、会社・町・植物のような「影響を受ける側」も入ります(植物にとって、水と光は欠かせない)。前の課の「〜としては」はある立場の人が意見を言うときの形(社員としては、こう考えます)で、「にとって」はそのNにとっての価値を言う形、と分けると整理しやすくなります。

接続

N+にとって(ほかと比べるときは「にとっては」「にとっても」、名詞の前は「にとってのN」:母にとっての楽しみ)

形
Nにとって、〜は…だ(留学生にとって、アルバイトは大切な収入だ)〜は、Nにとって…だ(この経験は、私にとって一生の宝物です)Nにとっては〜が、Nにとっては…(若い人にとっては便利でも、お年寄りにとっては使いにくい)NにとってのN(母にとっての楽しみは、孫と話すことです)

導入

  • 同じものを、立場を替えて評価する黒板の真ん中に自転車の絵を貼り、まわりに「学生」「お年寄り」「会社員」のカードを置く。教師が「学生にとって、自転車は便利な乗り物です」「お年寄りにとっては、少し危ないかもしれません」と言い、板書は「[人]にとって、[もの]は[評価]」の枠にする。もの(スマホ・満員電車・長い休み)を替えて、学生にもカードの人の立場で評価を言わせる。
  • 前の課の「としては」と並べる「学生としては、学費が上がるのに反対です」と「学生にとって、学費が上がるのは大きな問題です」を上下に書き、「どちらが意見を言っていますか」と聞く。上は留学生が自分の考えを言う文、下は留学生の生活にとってどれだけ重いかを言う文だと確かめ、「にとって」の後ろは評価の言葉になることを赤で囲む。

板書案

[人]にとって、[もの・こと]は [評価]
留学生にとって、アルバイトは大切な収入です。
〔赤〕にとって の後ろ = 評価の言葉(大切だ・必要だ・難しい・ありがたい)
〔青〕*私にとって、毎日勉強します(動作の動詞は来ない)
学生としては、反対です(意見) / 学生にとって、大きな問題です(価値)

場面と発話(自作)

  • アルバイトの面接で、店長に「日本でどんな経験をしましたか」と聞かれた留学生が答える。前のアルバイトは、私にとって日本語を使ういちばんの練習でした。
  • 駅から遠い部屋を見に来た留学生に、不動産屋の人がその部屋のよさを説明する。自転車がある人にとっては、駅から少し遠くても、それほど不便じゃないんですよ。
  • 作文の授業で「大切なもの」という題で、国の家族のことを書く。国の母から届く手紙は、私にとって何よりも大切な宝物です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず口頭で、人のカード(子ども・お年寄り・留学生・会社員)とものカード(スマホ・自転車・日本語・長い休み)を一枚ずつ引かせ、「〜にとって、〜は…」と評価を言わせる。次に同じものを二人の立場で「〜にとっては…が、〜にとっては…」と比べさせる。最後に、自分にとって大切なものを一つ「〜は、私にとって…です」で言い、理由を一文足させる。

  1. 口頭人のカードとものカードを二枚一組で見せ、評価の言葉を学生に選ばせる。キューの例は「お年寄り・スマホ」「子ども・長い休み」「会社員・満員電車」「犬・暑い夏」で、全体で「お年寄りにとって、スマホは少し難しいです」と言ってから個人に当てる。慣れたら人のカードを二枚にして「若い人にとっては便利ですが、お年寄りにとっては使いにくいです」と対比の形まで言わせる。
  2. ペアAは人のカード、Bはものカードを伏せて持ち、同時にめくる。Bがその人の立場で「〜にとって、〜は…です」と評価を言い、Aは「そうですか。じゃあ、〜にとってはどうですか」と別の人を出して聞き返す。Aのカードは相手に見せないので、Bは聞いた立場に合わせて評価を変えることになる。3往復したら役を替える。
  3. 産出「わたしの宝物紹介」。自分にとって大切な物を一つ(実物か写真)持って来させ、「〜は、私にとって…です」に理由を二文足して30秒で紹介する。教師は、「にとって」の後ろが評価の言葉になっているか、「賛成です」「〜と思います」のような意見の文になっていないか、「にとっては」で人と比べる形が使えているかを見て、終わったあとにまとめて直す。

つまずきと手当て

  • 後ろに動作の動詞を置く(*私にとって、毎日日本語を勉強します)。「にとって」の後ろは評価の言葉だけだと枠を指して戻し、「毎日日本語を勉強することは、私にとって大切です」のように評価の文に組み替えさせる
  • 賛成・反対や考えを言うのに使う(*私にとって、その案に賛成です)。意見を言うのは前の課の「私としては」か「私は」だと、導入の上下の板書に戻って確かめる
  • 相手への態度を言うのに使う(*あの先生は学生にとって優しいです)。態度が向かう相手は学習項目2の「に対して」(または「学生に優しい」)で言うと、矢印の板書と並べて見せる

既習の文型との違い

  • 〜としては/も(第12課)「としては」はその立場の人が意見や判断を言う形で、後ろに「賛成だ・〜と思う・〜たい」が来ます。「にとって」はその立場から見た価値・評価で、後ろは「大切だ・難しい・ありがたい」です。学習者は「*私にとって、その案に反対です」と言いがちなので、文の終わりが意見か評価かを先に見て選ばせます。
関連する文型

学習項目 2 〜に対して…

意味・はたらき学習項目 2

気持ち・態度・動作が向かう相手や対象を表します。後ろには「答える・反対する・説明する」のような動作や、「厳しい・優しい・失礼だ」のような態度を表す言葉が来ます。「先生に失礼だ」のように「に」だけでも言えることが多いですが、「に対して」にすると相手に向けているという意味がはっきりし、少し改まった言い方になります。学習項目1の「にとって」がNの立場から見た評価なのに対して、「に対して」はNに向けた動き・態度です。このほかに二つのことを比べる使い方(兄はにぎやかなのに対して、弟は静かだ)もありますが、この課では相手・対象の意味だけを扱います。

接続

N+に対して(取り立ては「に対しては」「に対しても」、名詞の前は「に対するN」が多い:お客様に対する言葉づかい)

形
Nに対して、〜する(質問に対して、一つずつ答える)〜は、Nに対して…だ(あの先生は、遅刻に対して厳しい)Nに対するN(目上の人に対する話し方)Nに対しても(子どもに対しても、ていねいな言葉で話す)

導入

  • 矢印の向きで見せる黒板に店員とお客様の絵を貼り、店員からお客様へ矢印を引いて「店員は、お客様に対して、丁寧な言葉で話します」と言う。矢印の先がNだと見せ、板書は「[人]は [相手]に対して [態度・動作]」の枠にする。学習項目1の板書(人の目からものを見る絵)を横に残しておき、「にとって」は人から見る、「に対して」は相手に向ける、と二つの絵で比べる。
  • 同じ名詞で二つを言い比べる「子どもにとって、遊ぶ時間は大切だ」と「親は子どもに対して厳しい」を並べ、「子どもは、見る人ですか、向けられる人ですか」と聞く。同じ「子ども」でも、評価する立場なら「にとって」、気持ちを向けられる相手なら「に対して」になることを、学生に理由を言わせながら確かめる。

板書案

[人]は [相手]に対して [態度・動作]
店員は、お客様に対して丁寧に話します。
〔赤〕矢印 → 相手に向ける(に対して) 〔青〕目の絵 ← 立場から見る(にとって)
に対して + 動詞・形容詞 / に対する + 名詞
お客様に対する言葉づかい

場面と発話(自作)

  • アルバイト先の研修で、店長が新人に接客の心がけを話す。お客様に対しては、いつも丁寧な言葉で話してください。
  • 授業のあとで、留学生が日本語の先生にアルバイト先の悩みを相談する。先輩に対して、どんな話し方をすればいいか分からないんです。
  • 入学説明会で、学校の職員が参加者から集めた質問に答え始める。いただいた質問に対して、一つずつお答えします。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭で、人のカード(先生・お客様・子ども・後輩)と態度のカード(厳しい・優しい・丁寧だ・失礼だ)を組み合わせて「〜は、〜に対して…」と言わせる。次に「にとって/に対して」のどちらかを選ぶ二択の文を10問ほど出し、選んだ理由を「見る立場」「向ける相手」で言わせる。最後に、自分の国と日本で、目上の人に対する話し方がどう違うかを一人ずつ話させる。

  1. 口頭人から人へ矢印を引いた絵カードと、態度の語を一緒に見せる。キューの例は「先生→学生・厳しい」「母→子ども・優しい」「店長→アルバイト・親切だ」「職員→質問・一つずつ答える」で、全体で「先生は、学生に対して厳しいです」と言ってから個人に当てる。次に「話し方」「言葉づかい」「態度」の語を出し、「目上の人に対する話し方」のように名詞の前の形に言い換えさせる。
  2. ペア「にとって?に対して?」の二択カードを使う。Aが前半の名詞と後半(「この町/住みやすい」「お客様/丁寧に話す」「子ども/遊ぶ時間は大切だ」など)を読み、Bがどちらかを選んで文を完成させ、理由を「見る立場」か「向ける相手」で言う。Aはカードの裏の答えで確かめる。5枚で役を替える。
  3. 産出「国と日本の礼儀くらべ」。3〜4人のグループで、目上の人・お客様・子どもに対する話し方や態度が、自分の国と日本でどう違うかを話し合い、3文で発表する。「〜に対して」と「〜に対する」を一回ずつ使うのが条件。教師は、名詞の前で「に対する」になっているか、話の中身を言う「について」と混ざっていないか、評価の文に「に対して」を使っていないかを聞き取ってメモする。

つまずきと手当て

  • 評価を言うのに使う(*この町は、私に対して住みやすいです)。住みやすいかどうかは私から見た評価なので「私にとって」だと、二つの絵の板書に戻して確かめる
  • 話の内容(テーマ)を言うのに使う(*日本の文化に対して話します)。話の中身は第1課の「〜について」で、「に対して」は気持ちや反応が向かう相手だと分ける。「この問題に対して意見を言う」のように、意見が相手に向かう文ではどちらも使えるので、そこは直さない
  • 名詞の前で「に対して」のまま名詞をつなぐ(*お客様に対して言葉づかい)。名詞の前は「に対する」(「に対しての」も使われる)と、二段の板書で見せる

既習の文型との違い

  • 〜について…(第1課)「について」は話や考えの中身(テーマ)を言い、後ろは「話す・調べる・書く」のような動詞です。「に対して」は気持ちや反応が向かう相手を言います。学習者は「*日本の文化に対して発表します」のように混ぜやすいですが、「意見を言う」「質問する」のように反応が相手に向かう文ではどちらも言えるので、そこは誤りにしません。
  • 〜にとって…(この課の学習項目1)同じ「N+に〜」の形ですが、「にとって」は立場から見た評価、「に対して」は相手に向けた態度・動作です。「*この町は、私に対して住みやすい」「*先生は、学生にとって優しい」と両方向に間違えるので、後ろの言葉が評価か態度かで選ばせます。
関連する文型

学習項目 3 〜さえ…ば…

意味・はたらき学習項目 3

「AさえBば、C」で、Aという一つの条件がそろえば、それだけで十分にCになる(ほかのことは問題にならない)という意味です。価値を言う場面では「これさえあれば幸せだ」のように、話し手がいちばん大切だと思うものを強調するのに使います。後ろには「いい・大丈夫だ・できる・〜になる」のような、条件が満たされたときの結果が来ます。「ば」のない「さえ」(漢字さえ読めない)は「〜も」に近い別の意味(極端な例を出す)なので、この課ではいつも「ば」と組にして練習します。

接続

N+さえ+〜ば/Vます+さえ+すれば/Vて+さえ+いれば/い形く+さえ+あれば/な形・N+で+さえ+あれば(「が」「を」は「さえ」に替わり、「に」「で」などは残る:駅にさえ着けば)

形
Nさえ〜ば、…(パスポートさえあれば、どこへでも行ける)Vますさえすれば、…(このボタンを押しさえすれば、動きます)Vてさえいれば、…(毎日少しずつ続けてさえいれば、上手になる)Nさえ〜なければ、…(雨さえ降らなければ、試合はできる)

導入

  • 「これさえあれば」を引き出す「遠い島で一か月暮らします。一つだけ持って行けるとしたら、何を持って行きますか」と一人ずつ聞く。「スマホ」と答えた学生に、教師が「〇〇さんは、スマホさえあれば大丈夫なんですね」と返し、板書は「[N]さえ [〜ば]、[結果]」の枠にする。ほかのものは要らない、一つに絞る気持ちだと、答えを並べながら確かめる。
  • 動詞の形を分けて見せる「薬を飲めば治る」と板書し、まず名詞に付ける形「薬さえ飲めば治る」を見せて、「を」が「さえ」に替わって消えることを赤で示す。次に「飲めば」を「飲み|すれば」に分け、間に「さえ」を差し込んで「薬を飲みさえすれば治る」と全員で言わせる。こちらは「さえ」が動詞に付くので「を」は残ることを、2つの文を上下に並べて確かめる。続けて形容詞(近くさえあれば・静かでさえあれば)を同じ要領で一段ずつ足し、形の表を黒板に残す。

板書案

[N]さえ [〜ば]、[結果]
辞書さえあれば、一人で読めます。
飲めば → 飲み|さえ|すれば
〔赤〕が・を → さえ(消える) に・で → にさえ・でさえ(残る)
近くさえあれば/静かでさえあれば/続けてさえいれば

場面と発話(自作)

  • 部屋を探している留学生が、不動産屋の人に条件を伝える。駅から近くさえあれば、部屋は狭くてもかまいません。
  • 試験の前に不安そうな後輩に、先輩が勉強のしかたを助言する。この問題集を最後までやりさえすれば、きっと大丈夫だよ。
  • スピーチの練習で、自分にとって大切なものを話す。家族さえそばにいてくれれば、どこに住んでも幸せです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず名詞だけで「〜さえあれば、〜できる」を言わせる(キューは「辞書→漢字が読める」「地図→一人で行ける」)。次に動詞の文のカード(薬を飲む→治る、ボタンを押す→動く)で「Vますさえすれば」に変えさせ、慣れたら「雨さえ降らなければ」のような否定の形を混ぜる。最後に、自分にとって「これさえあれば幸せ」というものを一つ言い、理由を添えさせる。

  1. 口頭まず名詞のキューで「〜さえあれば、…」を言わせる。例は「パスポート→どこへでも行ける」「地図→一人で行ける」「時間→もっと練習できる」。次に動詞の文のキュー「このボタンを押す→動く」「毎日練習する→上手になる」「薬を飲む→治る」で「Vますさえすれば」に変え、最後に「雨が降らない→試合ができる」のような否定の形を混ぜる。全体で一度言ってから、一人ずつ別のキューで当てる。
  2. ペア「お悩み相談」。Aは悩みのカード(日本語がなかなか上手にならない/いい部屋が見つからない/朝起きられない)を読み、Bはアドバイスを一つに絞って「〜さえ…ば、大丈夫ですよ」と答える。Aは「本当ですか。それだけでいいんですか」と聞き返し、Bは理由を一文足す。3枚ずつで役を替え、Bには答えのカードを持たせず自分で考えさせる。
  3. 産出「無人島に一つだけ」。一か月島で暮らすとしたら持って行く物を一つ選び、「〜さえあれば、…。だから、〜は私にとって…です」と、学習項目1とつないで1分で話す。教師は、「が」「を」が残っていないか、動詞が「Vますさえすれば」の形になっているか、後ろに「それで十分」と言える結果が来ているかを見て、言い終わったあとに一つだけ直す。

つまずきと手当て

  • 「が」「を」を残す(*お金がさえあれば/*この本をさえ読めば)。「さえ」は「が・を」の場所に入ると、板書で「が」「を」に線を引いて見せる
  • 動詞の形をまちがえる(*飲むさえすれば/*飲みさえば)。「飲めば」を「飲み+さえ+すれば」に分けた板書に戻り、「すれば」までが一組だと確かめる
  • 「ば」のない「さえ」の文(名前さえ書けない)を、「それだけで十分」の意味に取ってしまう。後ろに「ば」があるか、否定の「ない」があるかを見て意味を分けさせる

既習の文型との違い

  • 〜ば、…(1)(初級Ⅱ 第28課)「ば」だけの文は条件を言うだけですが、「さえ…ば」は条件を一つに絞り、それだけで十分だという気持ちを足します。形は「ば」の文に「さえ」を差し込むので、学習者は「*お金がさえあれば」「*飲むさえすれば」のように崩しやすくなります。初級の「ば」の文を板書し、そこに差し込む手順で見せます。
  • 〜も…ば、〜も…(第5課)「駅も近ければ、家賃も安い」のように、「も…ば、も…」はよい点を二つ以上並べる形です。「さえ…ば」は反対に、条件を一つに絞る形です。並べるのか絞るのかを、指を二本立てるか一本立てるかの動作で見せると区別しやすくなります。
関連する文型

学習項目 4 〜まい

意味・はたらき学習項目 4

「Vまい」は「絶対に〜しない(しないつもりだ)」という強い否定の意志を表します。「もう二度と遅刻するまい」のように自分の決心を言うことが多く、「〜まいと思う」「〜まいと決める」「〜まいと心に誓う」の形でよく使われます。書き言葉や改まった話(スピーチ・作文・物語)で使う硬い言い方で、ふだんの会話では「もう絶対〜しない」「〜ないようにしよう」と言うのがふつうです。「〜まい」には「〜ないだろう」という否定の推量の意味もありますが(この雨はすぐにはやむまい)、この課では意志の意味を中心に扱います。

接続

グループⅠは辞書形+まい(行くまい・飲むまい)。グループⅡは辞書形+まい(食べるまい)のほか「食べまい」の形もよく使われる。グループⅢは「するまい/すまい」「来るまい/来(こ)まい」など揺れがあり、辞書形+まいで教えると間違いが少ない傾向がある

形
Vまい(もう二度と嘘はつくまい)Vまいと思う/決める/誓う(同じ失敗はするまいと決めた)Vまいとして(=〜しないようにがんばって:泣くまいとして、上を向いた)(推量)〜まい(この雨は、すぐにはやむまい)

導入

  • 失敗の話から決心へ教師が「寝坊して、大事な試験に遅れてしまったことがあります」と話し、「そのとき、心の中で『もう二度と寝坊するまい』と思いました」と続ける。板書は「もう二度と [V辞書形]まい(=絶対に〜しない)」とし、横に「〜ないつもりだ」「絶対に〜ない」を並べて、意味は近いが「まい」がいちばん強く、硬い言い方だと見せる。
  • 会話の言い方に言い換えるスピーチの文「二度と同じ失敗はするまいと決めました」と、友達との会話「もう絶対、同じ失敗はしない」を上下に書き、「友達に話すときはどちらですか」と聞く。「まい」は書くとき・改まって話すときの形だと確かめてから、学生自身の失敗を一つずつ聞いて「もう二度と〜まい」の文にさせる。

板書案

もう二度と [V辞書形]まい = 絶対に〜しない(強い決心)
同じ失敗は、二度とするまいと決めました。
〔赤〕行く→行くまい 食べる→食べるまい(食べまい) する→するまい
〔青〕*行かまい *行かないまい(「ない」は要らない)
作文・スピーチ:〜まい / 友達と:もう絶対〜しない

場面と発話(自作)

  • 作文の授業で、日本に来ていちばんつらかった経験について書く。それからは、困ってもすぐには親に甘えまいと、心に決めた。
  • 卒業式のスピーチで、留学生の代表が後輩と先生に向けて話す。この学校で学んだことを無駄にするまいと、強く思っています。
  • 物語を読む授業で、教師が登場人物の気持ちを説明する。主人公は、泣くまいとして、じっと空を見ていたんですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

失敗のカード(寝坊した・財布を落とした・食べすぎた)を見せて「もう二度と〜まいと思った」と言わせる。動詞はグループⅠから始め、Ⅱ、Ⅲの順に混ぜていく。次に同じ内容を友達に話す場面に替えて「もう絶対〜しない」に言い換えさせ、作文の文と会話の文を書き分ける練習で終える。

  1. 口頭失敗の絵カード(寝坊した・財布を落とした・食べすぎた・傘を電車に忘れた)を見せ、「もう二度と寝坊するまいと思いました」と言わせる。動詞はグループⅠから始め、Ⅱ、Ⅲの順に混ぜる。全体で言ったあと、教師が「友達に!」と声をかけたら「もう絶対寝坊しない」に言い換える、という切り替えのキューを入れて、硬さの違いを口で確かめる。
  2. ペア「作文の文・会話の文 書き換え」。Aは作文の文のカード(二度と嘘はつくまいと決めた、など)を読み、Bは同じ内容を友達に話す言い方に直す。次はBが会話の文を読み、Aが作文の文に直す。4往復したら交替。相手のカードは見せないので、聞いた文を頭の中で組み替えることになる。
  3. 産出「二度としない宣言」。日本に来てからの失敗を一つ選び、①何があったか ②そのときの気持ち ③「もう二度と〜まいと心に決めました」の3文で書いて、クラスで読み上げる。教師は、グループⅠをない形につけたり「ない」を残したりしていないか、ほかの人の決心をそのまま「〜まい」で言っていないか、会話の部分に「まい」が混ざっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • グループⅠをない形につけたり(*行かまい)、「ない」を残したり(*忘れないまい/*行かないまい)する。「まい」自体が否定の意味を持つので「ない」は要らない。グループⅠは辞書形につけ(行くまい)、グループⅡは辞書形(忘れるまい)のほか、ない形から「ない」を取った形につく「忘れまい」も正しい形だと、形の表で確かめる
  • ふだんの会話で使い、硬すぎたり古めかしく聞こえたりする(友達に「明日は遅刻するまい」)。文法の誤りではないが、会話では「絶対遅刻しない」と言うほうが自然だと言い換えを示す
  • ほかの人の決心を言うつもりで「川口さんは、もうたばこを吸うまい」と言うと、「吸わないだろう」という推量に聞こえる。ほかの人の決心は「〜まいと決めたそうだ」「〜ないと決めた」で言わせる

既習の文型との違い

  • 〜つもりです/〜予定です(初級Ⅱ 第23課)「〜ないつもりです」は自分の考えを落ち着いて言う形で、会話でもふつうに使えます。「〜まい」はそれより強く気持ちのこもった決心で、作文やスピーチの硬い言い方です。「来週の授業は休まないつもりです」を「休むまい」にすると大げさに聞こえることを、二つ並べて確かめます。
  • 〜ことにします/〜ということ(初級Ⅱ 第34課)「〜ないことにする」は自分で決めたことを言う形で、決めた中身が主役です。「〜まい」は決心の強さが主役で、「〜まいと決める」「〜まいと誓う」のように後ろに決める言葉を置くことが多くなります。学習者には「ことにした」は決めたことの報告、「まいと決めた」は気持ちの強さ、と分けて伝えます。
関連する文型

学習項目 5 〜が好きです

意味・はたらき学習項目 5

初級で習った形の復習です。この課では、自分が大切にしているものを語る場面で、好きなものを名詞(Nが好き)だけでなく、行動(Vのが好き/Vことが好き)でも言えるようにします。「のが好き」は会話でふつうに使う言い方で、具体的な動作やその時の楽しさを言うのに合います。「ことが好き」は少し改まった響きがあり、作文や自己紹介のように自分の好みをまとめて述べるときによく使われる傾向があります。どちらも言える場合がほとんどですが、「趣味は〜ことです」のように「です」の前に置くときは「こと」しか使えません。

接続

N+が好きです/Vる(辞書形)+のが好きです・ことが好きです(名詞の前は「私の好きなN」「私が好きなN」)

形
Nが好きです(古い日本の映画が好きです)Vのが好きです(休みの日に川沿いを歩くのが好きです)Vことが好きです(人の話をじっくり聞くことが好きです)〜は、Vことです(趣味は、古い写真を集めることです)

導入

  • 好きな「もの」から好きな「こと」へ「何が好きですか」と聞いて「音楽」「料理」のような名詞の答えを集め、続けて「音楽の何が好きですか。聞く?歌う?」と聞く。「歌うのが好きです」を引き出したら、板書を「Nが好きです」「Vのが好きです」の二段にし、動詞の後ろに「の」が要ることを赤で書く。
  • 話すときと書くとき同じ内容を、友達との会話(料理を作るのが好きなんだ)と自己紹介の作文(私は料理を作ることが好きです)で並べて見せ、会話では「の」、作文では「こと」が多いという傾向を伝える。そのうえで「趣味は料理を作ることです」を書き、ここは「の」にできないことを確かめる。

板書案

Nが好きです → Vる+の/こと+が好きです
料理が好きです。 → 料理を作るのが好きです。
〔赤〕Vる の/こと(動詞を名詞にする)
会話:〜のが好き / 作文・自己紹介:〜ことが好き
〔青〕趣味は [Vる]ことです(ここは「こと」だけ)

場面と発話(自作)

  • 新しいアルバイト先の休憩時間に、同僚に休みの日の過ごし方を聞かれる。休みの日は、公園でのんびりするのが好きなんです。
  • 奨学金の申込書の「自己紹介」の欄に、自分の性格を書く。私は、人と人をつなぐことが好きです。
  • スピーチの練習で、自分にとって大切な時間を話す。国の家族とビデオ電話で話す時間が、一番好きです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

名詞で答える→「何をするのが好きですか」で動詞の形に広げる→同じ内容を自己紹介の作文の1文(〜ことが好きです/趣味は〜ことです)に書き換える、の順で進める。ペアで「〜するのが好きですか」とインタビューし合い、聞いたことを「〜さんは〜のが好きだそうです」と報告させる。

  1. 口頭名詞の絵カード(サッカー・音楽・料理・写真)で「何が好きですか」「〜が好きです」を言わせ、続けて「音楽の何が好きですか」と聞いて動詞の絵(聞く・歌う・弾く・撮る)に替える。キューは「音楽・聞く」「写真・撮る」「料理・作る」で、全体で「音楽を聞くのが好きです」と言ってから個人に当てる。最後に同じ文を「〜ことが好きです」に言い換えさせる。
  2. ペア「好きなことインタビュー」。質問のカード(休みの日・朝・旅行に行ったとき・一人のとき)を引き、Aが「〜とき、何をするのが好きですか」と聞き、Bが答えて理由を一文足す。Aはメモを取り、4枚で役を替える。終わったら一人ずつ、聞いたことを「〜さんは〜のが好きだそうです」とクラスに伝える。
  3. 産出「自己紹介カード」。奨学金の申込書の自己紹介の欄を想定して、「私は〜ことが好きです」「趣味は〜ことです」を入れた3文を書く。インタビューで話した「〜のが好き」と書き分けられているかを見る。教師は、動詞のあとの「の」「こと」が落ちていないか、「趣味は」の文の終わりが「ことです」になっているかを赤で直す。

つまずきと手当て

  • 動詞のあとの「の」「こと」を落とす(*歌うが好きです)。動詞は名詞にしてから「が好き」につなぐと、二段の板書で確かめる
  • 「です」の前に「の」を置く(*趣味は本を読むのです)。「趣味は」で始まる文の終わりは「〜ことです」だと、決まった形として覚えさせる
  • 「音楽を好きです」と「が」を「を」にする。話し言葉では耳にすることもあるが、教室では「Nが好きです」を基本にし、「〜を好きになる」のように後ろに動詞が続く形では「を」も使われると添える

既習の文型との違い

  • 〜が好きです/〜が好きですから、…(初級Ⅰ 第7課)初級では「海が好きです」のように名詞で好きなものを言い、理由を「から」でつなぎました。この課では好きな「こと」を動詞で言い、自分が大切にしているものを語る材料にします。学習者は「*歌うが好きです」と動詞にそのまま「が好き」をつけるので、名詞にしてからつなぐ二段の板書で見せます。
  • 〜は…ことです(初級Ⅰ 第15課)「趣味は〜ことです」は「AはBです」の形の文で、「です」の前には「こと」を置きます。「Vのが好きです」は「が好き」の前を名詞にする形で、「の」も「こと」も使えます。文の形が違うことを上下に並べて確かめます。
関連する文型

学習項目 6 〜が嫌いです

意味・はたらき学習項目 6

初級で習った形の復習です。「嫌い」は「好き」の反対ですが、日本語でははっきり言うと強く聞こえるので、価値や好みを話す場面では言い方の強さを選ぶことが大切です。自分の好みとして食べ物や物事について言うのは問題ありませんが、相手の作った料理や相手が大切にしているものについて「嫌いです」と言うと、きつく聞こえます。やわらげるときは「あまり好きじゃありません」「苦手です」を使います。「Vのが嫌い/Vことが嫌い」の使い分けは「好き」と同じで、「約束を守らないことが嫌いです」のように、自分の価値観を言うのにも使えます。

接続

N+が嫌いです/Vる(辞書形)+のが嫌いです・ことが嫌いです(な形容詞なので、否定は「嫌いじゃありません」、名詞の前は「嫌いなN」)

形
Nが嫌いです(雨の日が嫌いです)Vのが嫌いです(朝早く起きるのが嫌いです)Nはあまり好きじゃありません(強さをやわらげる)Nが苦手です/Vのが苦手です(人前で話すのが苦手です)

導入

  • 強さのものさし黒板に横線を一本引き、左から「大好き・好き・あまり好きじゃない・苦手・嫌い・大嫌い」と書く。食べ物や活動のカード(納豆・カラオケ・満員電車・掃除)を学生に一枚ずつ渡し、自分の気持ちの位置に貼らせる。貼り終わったら、「嫌い」は線の右の端に近い、強い言い方だと確かめる。
  • 相手と場面で選ぶ「ホームステイ先で、苦手な料理が出ました。家の人に何と言いますか」と聞き、「嫌いです」と答えた場合の家の人の気持ちを想像させる。「ちょっと苦手なんです」「あまり食べたことがなくて」のような言い方を板書し、相手がいる場面では強さを一段下げると見せる。

板書案

Nが嫌いです/Vるのが嫌いです
大好き ― 好き ― あまり好きじゃない ― 苦手 ― 嫌い ― 大嫌い
〔赤〕嫌い は な形容詞:嫌いじゃないです・嫌いでした・嫌いな食べ物
〔青〕相手がいる場面 → 「苦手です」「ちょっと…」で一段やわらげる
約束を守らないことが、一番嫌いです。

場面と発話(自作)

  • 友達同士で、週末にどこへ遊びに行くかを相談している。ぼくは、人が多い所に行くのが嫌いなんだ。静かな所にしない?
  • ホームステイ先で、夕食に食べられない物が出た留学生が、家の人に正直に伝える。すみません、生の魚はちょっと苦手なんです。
  • スピーチで、自分が大切にしていることを話す。私は、約束を守らないことが一番嫌いです。だから、時間には遅れないようにしています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

強さのものさしの上にカードを置かせたあと、同じ内容を相手のカード(友達・ホームステイ先の家の人・アルバイト先の先輩)を替えて言い分けさせる。最後に「私が一番嫌いなことは〜ことです」を言い、なぜそう思うかを一文足して、目標の活動のスピーチの材料にする。

  1. 口頭カード(納豆・カラオケ・満員電車・掃除・朝早く起きる)を一枚ずつ見せ、強さのものさしの上の位置を選ばせて「〜は苦手です」「〜のはあまり好きじゃありません」と言わせる。続けて活用のキューを出す。「嫌い・過去」→「嫌いでした」、「嫌い・否定」→「嫌いじゃありません」、「嫌い・食べ物」→「嫌いな食べ物」。全体で言ったあと個人に当て、「嫌くない」のような誤りはその場で「きれい」と並べて直す。
  2. ペア「やんわりお断りロールプレイ」。Aは勧める側で、相手のカード(友達・ホームステイ先の家の人・アルバイト先の先輩)を一枚引いて、物や誘いを勧める。Bはその物が苦手という設定で、相手に合わせて強さを選んで答える(友達には「〜はあんまり好きじゃないんだ」、家の人には「すみません、〜はちょっと苦手なんです」)。3場面で役を替える。
  3. 産出「私が一番嫌いなこと」スピーチ。「私が一番嫌いなことは〜ことです」に理由を一文足し、「だから、私は〜まいと思っています」か「〜さえ…ば…」のどちらかで締める3〜4文を作り、グループで発表する。教師は、な形容詞としての活用、価値観を言う文として強さが合っているか、学習項目4・3とのつなぎが自然かを見る。

つまずきと手当て

  • い形容詞のように活用させる(*嫌くないです/*嫌かったです)。「嫌い」は「い」で終わるがな形容詞で、「嫌いじゃないです」「嫌いでした」になると、「きれい」と並べて確かめる
  • 名詞の前で「の」を使う(*嫌いの食べ物)。な形容詞なので「嫌いな食べ物」になる
  • 相手がいる場面で強く言いすぎる(ホームステイ先の家の人に「この料理は嫌いです」)。文法の誤りではないが、相手が作った物や大切にしている物には「苦手です」「あまり食べたことがなくて」でやわらげると、強さのものさしに戻って示す

既習の文型との違い

  • 〜たくありません(第4課)「〜たくありません」はそのとき「したくない」という気持ちを言い、「嫌い」はふだんからの好みを言います。誘いを断るときに「その店は嫌いです」と言うと、相手が選んだ物そのものを否定する強さになります。断る場面では「ちょっと苦手で」と理由をやわらげて言う流れを見せます。
  • 〜がる(第8課)「嫌い」は「弟は野菜が嫌いです」のように、ほかの人の好みにもそのまま使えます。「嫌がる」は、ほかの人の嫌だという気持ちが顔や態度に出ている様子を言う形です。自分のことに「嫌がる」を使うと不自然になるので、だれの気持ちか、外から見えるかで分けます。
関連する文型

語彙の扱い

この課の目標の場面で使う語は、価値・評価を表す語(大切だ・貴重だ・欠かせない・ありがたい・宝物)、気持ちや態度を表す語(感謝・尊敬・失礼だ・厳しい・誓う・決心する)、出会いや経験を語る語(出会い・きっかけ・影響を受ける・悔しい)の三つのかたまりに分けると扱いやすくなります。単語だけで覚えさせず、「〜にとって欠かせない」「〜に対して失礼だ」「〜まいと心に誓う」のように、この課の学習項目と組み合わせた形で練習します。「苦手」は「嫌い」をやわらげる言葉と「上手にできない」という意味の両方があるので、二つの例文を並べて一度取り上げます。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 欠かせない(かかせない) それが無いと困るほど、必ず必要だという意味です。 〜に欠かせない・生活に〜・〜もの
    日本での生活で大切な物を話す。
    留学生にとって、辞書は欠かせないものです。
  • 貴重(な)(きちょう(な)) あまり手に入らず、とても価値があることです。 〜な経験・〜な時間・〜な意見
    アルバイトをやめるときに店長にあいさつする。
    ここでのアルバイトは、私にとって貴重な経験になりました。
  • 宝物(たからもの) 自分がいちばん大切にしている物です。 一生の〜・私の〜・〜にする
    友達に家族の写真を見せる。
    この写真は、私の一生の宝物なんです。
  • 出会い(であい) 人や物と初めて会って、つながりができることです。 〜がある・人との〜・最高の〜
    卒業のスピーチの始め。
    この学校で、一生付き合える友人との出会いがありました。
  • きっかけ(きっかけ) 何かを始める理由になった出来事です。 〜になる・〜をつくる・勉強を始めた〜
    面接で、日本語を始めた理由を聞かれる。
    国で見たドラマが、日本語を勉強するきっかけになりました。
  • 影響を受ける(えいきょうをうける) 人や物から、考え方や行動を変える力を受けることです。 〜から影響を受ける・大きな〜・〜に影響を与える
    作文で、尊敬する人について書く。
    私は、高校の先生から大きな影響を受けました。
  • 感謝する(かんしゃする) してもらったことをありがたいと思い、お礼の気持ちを持つことです。 〜に感謝する・心から〜・感謝の気持ち
    卒業式で、お世話になった人たちにお礼を言う。
    支えてくれた皆さんに、心から感謝しています。
  • 尊敬する(そんけいする) その人をりっぱだと思い、自分もそうなりたいと思うことです。 〜を尊敬する・尊敬している人・尊敬できる先輩
    自己紹介で、大切な人について話す。
    私が一番尊敬している人は、国の祖母です。
  • 失礼(な)(しつれい(な)) 相手に対して礼儀がなく、いやな気持ちにさせることです。 〜に失礼だ・〜な言い方・〜な態度
    先輩が後輩の話し方を注意する。
    目上の人に対して、その言い方は失礼ですよ。
  • 誓う(ちかう) 必ずそうする、または絶対にしないと、強く決めて約束することです。 心に〜・〜まいと誓う・かたく〜
    サッカーの大会の前の日に、日記を書く。
    あしたはチームの全員で、最後まであきらめないと誓った。
  • 苦手(な)(にがて(な)) 好きではない、または上手にできないという意味で、「嫌い」よりやわらかく聞こえます。 〜が苦手だ・話すのが〜・〜な科目
    ホームステイ先で、辛い料理を勧められる。
    すみません、辛い物はちょっと苦手なんです。
  • ありがたい(ありがたい) してもらったことがうれしくて、感謝したい気持ちです。 本当に〜・〜話・〜ことに
    アルバイト先で、同僚がゆっくり話してくれる。
    ゆっくり話してくれるのは、私にとって本当にありがたいです。

宿題と次のコマ

宿題は、目標の活動で書いたスピーチ原稿を「私にとって最高の〜」という題の作文(400字程度)に清書すること。「〜にとって」「〜に対して」「〜さえ…ば」「〜まい」を必ず一回ずつ使い、好きなこと・嫌いなことを一つ入れる。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞き手が「にとって」と「に対して」の使い方を確かめてから、第14課の「アドバイスする」に入ります。前の課の「〜としては」とこの課の「〜にとって」を一枚の表にまとめておくと、アドバイスの理由を言うとき(あなたにとっては、〜ほうがいいと思う)にもつながります。

よくある質問

  • 「〜にとって」と「〜に対して」の違いはどう教えればいいですか?

    同じ「N+に〜」の形なので、後ろに来る言葉で分けさせます。「大切だ・難しい」のような評価なら「にとって」(Nの立場から見る)、「厳しい・丁寧に話す」のような態度や動作なら「に対して」(Nに向ける)です。板書では目の絵と矢印の絵を並べて残し、二択の問題を出すたびにその絵に戻って理由を言わせます。

  • 第12課の「〜としては」と「〜にとって」はどう区別させますか?

    文の終わりが意見か評価かで分けます。「留学生としては、その案に反対です」のように考えや判断を言うなら「としては」、「留学生にとって、学費は大きな問題です」のように価値を言うなら「にとって」です。同じ「留学生」で二つの文を上下に書き、「どちらが意見ですか」と聞くと区別がつきやすくなります。

  • 「〜さえ…ば」の動詞の形はどう見せればいいですか?

    初級の「ば」の文から作ります。「飲めば」を「飲み|すれば」に分けて、その間に「さえ」を差し込む板書にすると、「Vますさえすれば」の形が目で分かります。あわせて「が」「を」は「さえ」に替わって消え、「に」「で」は残る(駅にさえ着けば)ことを色を変えて示します。

  • 「〜まい」のグループⅡ・Ⅲの形はどこまで教えますか?

    産出では辞書形+まい(食べるまい・するまい・来るまい)にそろえると間違いが少なくなります。「食べまい」「すまい」「来(こ)まい」のような形もあることは、読んで分かればよいものとして一度見せる程度にします。推量の「〜まい」(〜ないだろう)は、この課では意志の意味のあとに触れるだけにとどめます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目で導入と「にとって」「に対して」、2コマ目で「さえ…ば」「まい」と「好き・嫌い」の復習、3コマ目でスピーチの準備と発表、まとめを行います。「好き・嫌い」の定着がよいクラスでは、そこを短くして2コマ半で収めることもできます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。