この課の目標は、雑談や打ち合わせの会話を途中で止めずに、自然に進められるようになることです。会話を進める動きを「話題を出す・相手の話題を受ける・そこから話を広げる」の三つに分け、学習項目を一つずつ当てます。話題を出す「〜というと(1)」と、代表を挙げて全体を言う「〜をはじめ」、相手の言葉を受けて確かめる「〜というと(2)」と、受けた話題で情報を返す「〜なら」、相手の話から思い出した別の話題へ移る「〜といえば」です。どれも形は「名詞+というと/といえば/なら」と単純なので、教えどころは形ではなく会話のどの位置で使うか(自分から出すのか・相手の言葉を受けるのか・話を横に広げるのか)で、板書は二人の吹き出しを並べて「どの言葉を受けているか」を矢印で見せる形を課の最後まで使います。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が学生に「週末、何をしましたか」と聞き、答えに「そうですか」とだけ返して会話が止まってしまう様子をわざと見せる。「このあと、何と言えば話が続きますか」と学生に考えさせ、この課は話題を出す・受ける・広げる言い方の課だと予告する。黒板の上に「出す/受ける/広げる」の三つの欄を作っておく |
| 学習項目1 〜をはじめ… | 25分 | 地図や人の集まりの絵で、代表の一つに大きい丸、全体に枠をかけて導入。後ろには代表を含む全体(〜など・多くの〜・〜全員)が来ることを確かめ、自分の国の料理や名所を紹介する文まで |
| 学習項目2 〜というと…(1) | 25分 | 「日本というと?」の連想ゲームで、その言葉から多くの人が思い浮かべることを言う形を導入。「〜というと〜ですが、…」で、よく知られたイメージから自分の話に入る型も板書の「出す」の欄に残す |
| 学習項目3 〜というと…(2) | 25分 | 同じ呼び方の部屋が二つある場面で、相手の言葉をくり返して「〜というと、〜のことですか」と確かめる形を導入。「というと?」で相手に説明を続けてもらう一言まで。板書の「受ける」の欄へ |
| 学習項目4 〜といえば… | 25分 | 学生の話から一語拾って別の話題へ移る会話を板書し、「というと」と並べて違いを確かめる。「広げる」の欄へ。関係のない話題に変える「ところで」との違いもここで |
| 学習項目5 〜なら…(初級の復習) | 20分 | 人や物を探している相手に「Nなら、…」で情報を返す場面で短く復習。同じ相手の言葉に「なら」と「といえば」の両方で返して、相手の話題の上で答えるか、別の方向へ広げるかを比べる。「受ける」の欄へ |
| 目標の活動(雑談ロールプレイ) | 35分 | 三人組。一人が話題カード(季節・国の料理・住んでいる町など)を引いて「〜というと…」で話題を出し、ほかの二人が「〜というと、〜のことですか」「〜なら…」「〜といえば…」で受けたり広げたりして、3往復以上続ける。毎回一人は観察役になり、使われた表現に印をつけて最後に伝える |
| まとめ | 15分 | 黒板の「出す/受ける/広げる」の欄に、ロールプレイで出た文を学生に書き込ませ、それぞれの言い方が会話のどの位置で働いたかを全員で確かめる |
「AをはじめB」は、Bというまとまり・全体の中から、いちばん代表的なもの・目立つものAを一つ先に挙げて言う言い方です。AはBの一部なので、後ろのBには、Aを含む全体を表す「N+など」「多くのN」「〜たち」「〜全員」のような言葉が来ます。「社長をはじめ、社員全員が…」のように、Aにはふつう、その中でいちばん重要な人・よく知られたものを置きます。やや改まった言い方で、あいさつ・案内・紹介の文章や発表によく出ます。くだけた会話では「〜とか」「〜など」で言うことも多いので、この課では、自分の国や町を紹介する場面で使う形として練習します。
N+をはじめ(として)、N(全体)…/N+をはじめとする+N(全体)
教師が全体を表す言葉(「古いお寺がたくさん」「アジアの国々」「クラスの全員」)をカードで示し、学生がその中の代表を一つ選んで「Aをはじめ、…」の文にする。次にペアで、自分の国の有名な料理・場所・行事を「Aをはじめ、…など」で紹介し合い、聞いた人は「どうしてAを最初に挙げたんですか」と一つ質問して話を続ける。
この教案では(1)を「話題から連想する」使い方として扱います。「Nというと、…」は、Nという言葉を話題として出し、その言葉から多くの人が思い浮かべること・よく知られたイメージを後ろで言う言い方です。後ろには「〜が有名です」「〜を思い浮かべます」「〜ですね」のような文がよく来ます。会話では、話題を出して相手に話してもらうきっかけになるほか、「日本の夏というと花火ですが、私の国では…」のように、よく知られたイメージを先に出してから自分の話に入ることもできます。
N+というと、…(話し言葉では「〜っていうと」)
教師が国・町・季節・行事の言葉をカードで出し、学生が「〜というと、…」で連想を一つ言う。慣れたら「〜というと〜ですが、…」の形で、よく知られたイメージと自分の知っていることを一文につなげさせる。最後にペアで、相手の国について「〜というと、…ですか」と聞き、相手は答えてから一言付け足して話を続ける。
この教案では(2)を「相手の言葉を受けて確かめる」使い方として扱います。相手が言った名前や言葉がどの人・どの物を指すのかはっきりしないとき、その言葉をくり返して「Nというと、〜のことですか」と聞き、話のずれを防ぎます。「というと?」だけで止めて上がり調子で言うと、「それはどういうことですか、もう少し詳しく」と相手に説明を求める言い方になります。分からないところを確かめてから話を続けられるので、会話を止めずに済みます。
相手が言ったN+というと、〜のことですか/〜ですか(話し言葉では「〜っていうと」)
教師があいまいな言い方(「あの人」「例の店」「会議室」「今度の旅行」)を含む文を言い、学生が「〜というと、〜のことですか」で確かめる。教師は「はい、そうです」と「いいえ、〜のほうです」の両方で答え、学生はそれを受けて「じゃあ、…ます」と話を続ける。最後にペアの一人がわざと短く情報を言い、もう一人が「というと?」で続きを引き出す。
「Nといえば、…」も、Nから思い浮かぶことを言う言い方で、(1)の「というと」と同じように連想に使えます(「夏といえば花火です」)。違いが出るのは会話の流れの中で、「といえば」は相手の話に出た言葉をきっかけに、そこから思い出した別の話題へ移るときによく使います。「来週、京都へ行くんです」「京都といえば、駅の近くに新しい美術館ができたそうですよ」のように、相手の話を受けながら話を少し横に広げられます。後ろには、話し手が思い出したことや相手に伝えたい新しい話題が来ます。前の言葉を受けずに、ふと思い出したことを話し始めるときは「そういえば」を使います。
N+といえば、…(話し言葉では「〜っていえば」。前の言葉を受けずに話し始めるときは「そういえば」)
教師が短い話(「きのう、駅前のカフェで友達と勉強しました」)を言い、学生がその中の一語を拾って「〜といえば、…」で別の話題を出す。拾う語を変えて(駅前・カフェ・勉強)何通りも言わせ、一つの話から違う方向へ広げられることを体験させる。次に三人で、前の人の話から一語拾って「〜といえば」でつなぐ会話を3周する。
初級Ⅱの第21課で習った、相手の話に出た話題を受ける「なら」の復習です。この課では会話を進める道具として、相手が出した話題を「Nなら、…」で受けて、相手が知りたいこと・役に立つ情報を返す使い方に絞ります。「ホチキス、ありますか」「ホチキスなら、事務室で借りられますよ」のように、後ろには相手の質問や希望に答える情報・勧めが来ます。「といえば」が話を別の方向へ広げるのに対して、「なら」は相手の話題の上にとどまって答える、という違いを並べて見せると、この課の項目の中での位置がはっきりします。
N+なら、…(「だ」は入れない。文の頭では「それなら」。動詞・形容詞につく「なら」は初級Ⅱの第28課)
教師が人や物を探す質問・希望(「〜はどこですか」「〜を買いたいんですが」「〜はいますか」)を言い、学生が「Nなら、…」で情報を返す。次に同じ質問に「Nなら、…」で答えたあと、「Nといえば、…」で一言広げる二段の答えを作らせ、目標の活動の雑談ロールプレイにつなげる。
この課の学習項目は、国・町・季節・食べ物・行事・身近な人のような、だれでも話せる話題の言葉と組み合わせるとよく働きます。新しい語は単語だけで入れず、「〜というと」「〜をはじめ」の文の中に入れて練習します。「有名だ」「思い浮かぶ」「イメージ」「名物」のような、連想を言うときに後ろに来る言葉はまとめて板書に残しておくと、学習者が文を最後まで言い切れるようになります。
宿題は、①自分の国や住んでいる町を紹介する短い文章(5〜6文)を、「Nというと、…」と「Aをはじめ、…」を一回ずつ入れて書くこと、②友達との会話を想定して、相手の一言に「Nなら、…」で答えるやり取りと、「Nといえば、…」で話を広げるやり取りを一つずつ書くこと。次のコマの最初に①を何人かに読んでもらい、聞いた学生が「〜といえば、…」で一言つなぐ練習をして復習してから、第10課の人物の描写に入ります。
「〜というと」と「〜といえば」の違いはどう教えればいいですか?
連想を言うだけならどちらも使えるので、違いは文の意味ではなく会話の中の位置で見せます。自分から話題を出すときと、相手の言葉を確かめるときは「というと」、相手の話の一語をきっかけに別の話題へ移るときは「といえば」です。板書に「出す/受ける/広げる」の三つの欄を作り、出た文をどの欄に入れるかを学生に決めさせると区別がつきます。
「〜というと(1)」と「(2)」を同じ課で教えると混乱しませんか?
形が同じなので、吹き出しのどちら側から出た言葉かで分けます。(1)は自分から出す話題で、後ろに連想が来ます。(2)は相手が言った言葉をくり返すもので、後ろは「〜のことですか」か上がり調子の「というと?」です。(1)を1コマ目、(2)を1コマ目の終わりから2コマ目の初めに置き、間に連想ゲームをはさむと混ざりにくくなります。
「〜をはじめ」はくだけた会話でも使いますか?
やや改まった言い方で、あいさつ・案内・発表・紹介の文章によく出ます。友達との会話では「〜とか」「〜や〜など」で言うことが多いので、この課では国や町を紹介する発表の場面で練習します。「をはじめとする」の形は書き言葉でさらによく出るので、読む練習で見せておくとよいです。
「〜なら」は初級で習った形ですが、この課ではどこまで扱いますか?
初級Ⅱの第21課で習った、名詞に付いて相手の話題を受ける使い方に絞り、相手が探している人や物について情報を返す場面で短く復習します。動詞に付く「〜なら」(第28課)には広げません。この課での教えどころは、「なら」で相手の話題に答えたあと「といえば」で話を広げる二段の返し方です。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と「〜をはじめ」「〜というと(1)」、「〜というと(2)」の途中まで。2コマ目は「〜というと(2)」の続きと「〜といえば」「〜なら」、雑談ロールプレイとまとめです。ロールプレイは三人組で観察役を回すので、時間が足りないときは回す回数を減らします。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。