「何を基準にして決めるのか」を読み取ったり、人に説明したりすることが目標の課です。六つの学習項目は、基準を説明する文の部品として、何をもとに(材料・根拠)・何を中心に(主な部分)・何に応じて(合わせて変える)・何は問わず(条件にしない)の四つと、その中で比べる(〜の中で)・その中から選ぶ(〜の中から)の二つに分けると整理しやすくなります。募集のお知らせや学校の案内のように、学習者が日本で実際に読む文章の中で使わせることが芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 「この学校に入ったとき、クラスはどうやって決まりましたか」と学生に聞き、テスト・面接・勉強の目的など出た答えを黒板に集める。「決める材料になったもの」と「関係なかったもの(年齢・国など)」を2列に分けて見せ、この課は決め方(基準)を説明する課だと予告する |
| 学習項目1・2 〜をもとに…/〜を中心に… | 35分 | 導入で集めた材料から「〜をもとに決める」へ。続けて時間割の円グラフで「〜を中心に」を入れ、同じ授業づくりの場面で二つの文を並べて、「材料・根拠」と「主な部分」の違いを図で見せる |
| 学習項目3 〜に応じて… | 25分 | 料金表で「前が変われば後ろも変わる」関係を見せ、クラス分け・アルバイトの時給の説明に当てはめる。第18課の「〜につれて」(時間とともに変わる)との違いも一言 |
| 学習項目4 〜は問わず… | 20分 | 自作の募集のお知らせを読み、条件になっている欄と「問いません」の欄を色で分ける。文の終わりの「問いません」から、文の途中の「問わず」へつなぐ |
| 学習項目5・6 〜の中で…/〜の中から… | 30分 | 絵カードを丸で囲んで「この中で一番」と比べ、次に同じ丸から「この中から選ぶ」と取り出す。丸の中で考える矢印と、丸の外へ出る矢印で描き分ける |
| 目標の活動(読み取りと説明) | 50分 | 自作の「日本語クラスの案内」(クラスの決め方・授業の中心・参加の条件・選べる授業の一覧)を配り、ペアで質問に答える読み取りをする。次に、新しく入る学生の役に、案内の内容を口で説明するロールプレイ。説明する側は六つの形のうち三つ以上を使う |
| まとめ | 10分 | 六つの形を「決める材料・主な部分・合わせて変える・条件にしない・比べる・選ぶ」の表にして確かめる。「もとに/中心に」「中で/中から」をどちらか選ぶ問題を2〜3問出して終わる |
前の名詞を材料・根拠・土台にして、何かを作ったり、決めたり、判断したりすることを表します。後ろには「作る・書く・決める・判断する・計算する・考える」のような、何かを生み出したり決めたりする動詞が来ます。材料は形を変えて結果の中に生きている、という感じで、「実際にあった話をもとにした映画」「アンケートの結果をもとにした計画」のように使います。似た「〜に基づいて」はやや硬く、規則・法律・データなど、外れてはいけない根拠に使うことが多いです。
N+をもとに(して)、〜/N+をもとにした+N(文の終わりでは「〜は、Nをもとにしています」)
教師が材料のカード(客の数・アンケート・自分の経験・昔の写真)と、作ったもの・決めたことのカード(店の開く時間・新しいメニュー・作文・町の模型)を出し、「〜をもとに、〜」「〜をもとにした〜」の両方で一文にさせる。最後に、自分の学校やアルバイト先で、何をもとに何が決まっているかを一つずつ言わせる。
前の名詞がいちばん大事な部分・真ん中で、そのまわりにほかのものも含まれることを表します。「九州地方を中心に(雨が降る)」のような場所の範囲、「会話を中心に(授業をする)」のような内容の主な部分、「20代を中心に(人気がある)」のような人の範囲を言います。「〜をもとに」が何を材料・根拠にしたかを言うのに対して、「〜を中心に」は中身のどこがいちばん大きいかを言います。ほかのものも含まれる、という含みがあるのがこの形の特徴です。
N+を中心に(して)、〜/N+を中心とした(を中心にした)+N(文の終わりでは「〜はNが中心です」。話し言葉では「会話中心のクラス」のようにも言う)
地図(雨の範囲を色で塗ったもの)・授業の割合の円グラフ・客の年齢のグラフを見せ、「〜を中心に、〜」で言わせる。次に、「もとに」と「中心に」のどちらが合うかを選ぶ問題を口頭で5問ほど出し、選んだ理由(材料か、主な部分か)も言わせる。
前の名詞(ニーズ・レベル・年齢・希望・量など)が人や場合によって違うとき、それに合わせて後ろのことを変える・決めることを表します。「人数に応じて部屋を決める」「働いた時間に応じて給料が決まる」のように、前が変われば後ろも変わる、という対応の関係です。動詞「応じる」はもともと「相手の求めや問いかけにこたえる」という意味です(取材に応じる)。似た「〜によって」は違いがあることを言うだけでも使えますが(国によって習慣が違う)、「〜に応じて」は違いに合わせて何かを変えるときに使い、規則・料金・サービスの説明によく出ます。
N+に応じて、〜/N+に応じた+N(「〜か〜かに応じて」「〜かどうかに応じて」の形もある)
左に条件(レベル・年齢・人数・天気)、右に変えるもの(教材・料金・部屋の大きさ・予定)のカードを並べ、線で結ばせてから「〜に応じて、〜」の一文にさせる。そのあと「〜によって〜が違う」(違いを言うだけ)の文を混ぜて出し、「に応じて」に替えると意味が通るかどうかを考えさせる。
前の名詞(年齢・性別・国籍・経験など)を条件にしない・区別しない、どれでもかまわない、という意味です。「問う」はここでは「問題にする・条件にする」という意味で、「問わず」は「問わないで」に当たる書き言葉の形です。募集のお知らせ・案内・規則など書かれた説明によく出て、会話なら「〜は関係ありません」「〜でも大丈夫です」に当たります。「〜を問わず」とも言い、「は」にするとほかに条件はあるが、これは条件にしないという対比が出やすくなります(年齢は問わず、日本語で会話ができる方)。前に来るのは、いろいろな場合がある名詞(年齢・季節)や、反対の組の語(男女・昼夜・経験の有無)です。
N+は問わず、〜/N+を問わず、〜(文の終わりでは「Nは問いません」。募集のお知らせでは「年齢不問」のように書くこともある)
自作の募集のお知らせを3種類(アルバイト・ボランティア・スポーツ教室)配り、ペアで「〜でも応募できますか」「はい、〜は問いません」「いいえ、〜が条件です」とやり取りさせる。最後に、クラスのイベントの参加者を募集するお知らせを書かせ、「〜は問わず」を一回使わせる。
「Nの中で」で比べる範囲を決め、その範囲の中で「一番〜」を言ったり聞いたりします。初級で習った「〜と〜とどちらが〜ですか」は二つを比べる形でしたが、三つ以上を比べて一番を言うときはこの形を使います。聞くときは「Nの中で、何/どれ/だれ/どこが一番〜ですか」、答えは「〜が一番〜です」で、疑問詞とそれに答える名詞には「が」がつきます。範囲が集団や場所なら「クラスで一番」「日本で一番」のように「で」だけでも言えます。説明や報告の文章では、「応募者の中で最も経験が長い人」のように、基準を決めて順位をつけるときにも使います。
N+の中で、〜が一番〜(Nは三つ以上のものや、人の集まり。「Nのうちで」もほぼ同じ意味で、やや硬い)
絵カードや表を見せて「〜の中で、〜が一番〜ですか」「〜が一番〜です」を全員で回す。次にペアで、範囲(国の料理・季節・スポーツ・町の店)を自分で決めて聞き合わせ、答えに理由を一つ添えさせる。
「から」は起点を表し、たくさんあるものの中から一つ(いくつか)を取り出す・選び出すことを表します。後ろには「選ぶ・選び出す・決める・探す・取り出す」などの動詞が来ます。「〜の中で」が範囲の中で比べて一番を言うのに対して、「〜の中から」は選ぶ動作のほうに焦点があります。選ぶときの基準(〜をもとに・〜に応じて)と一緒に、選考や決め方の説明によく出てきます。また、「かばんの中から財布を出す」のように、物が出てくるところにも使います。
N+の中から+選ぶ/決める/探す など(「この中から」「三つの中から」のように、指示語や数ともよく使う)
店のメニュー・アルバイトの求人・授業の一覧などを配り、「この一覧の中から選ぶなら、どれを選びますか」「〜を選びます。〜からです」と聞き合わせる。慣れたら「〜の中で一番〜のは何ですか」と「〜の中から〜を選んでください」を混ぜて出し、「で」と「から」を言い分けさせる。
基準を説明する文章には、クラス分けや募集の場面の語(基準・条件・募集・応募・面接・結果・希望・ニーズ・レベル・国籍・性別・年齢・経験 など)がまとまって要ります。単語だけで覚えさせず、「〜を基準にする」「〜に応募する」「条件を満たす」「経験の有無」のように助詞つきの形で、案内や募集のお知らせの文の中に入れて練習します。「ニーズ」「レベル」「目的」のような語は「〜に応じて」の前によく来る語として、「年齢」「性別」「国籍」「経験」は「〜は問わず」の前によく来る語として、文型と組にして扱うと定着しやすくなります。
宿題は、自分の国の学校やアルバイト先で「何をもとに・何に応じて決めるか」「何は問わないか」を説明する短い文章(5〜6文)を書くこと。六つの形のうち四つ以上を使う。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、聞いた学生が「その中で一番大事な条件は何ですか」と質問して復習してから、第20課の「〜きる」「〜ぬく」(動作を最後までやりとげることを強く言う)に入ります。
第19課の「〜をもとに」と「〜を中心に」はどう教え分ければいいですか?
同じ場面に両方を入れて比べると分かりやすくなります。「留学生の声をもとに授業を作る」は留学生の声が材料・根拠だと言い、「会話を中心に授業を作る」は授業の中にいくつかある部分のうち会話がいちばん大きいと言っています。「もとに」はほかの材料を使ったかどうかまでは言わない点も添えます。図で「材料→できたもの」と「中心と周り」を描き分け、後ろの動詞(作る・決める)も一緒に見せます。
「〜に応じて」と「〜によって」の違いは何ですか?
「〜によって」は、場合によって違いがあることを言うだけでも使えます(国によって習慣が違います)。「〜に応じて」は、その違いに合わせてだれかが何かを変える・決めるときに使い、料金・サービス・クラス分けの説明によく出ます。後ろに「変える・決める・分ける」があるかどうかを目安にさせます。
「〜は問わず」と「〜を問わず」は同じ意味ですか?
どちらも「〜を条件にしない」という意味の書き言葉です。「〜を問わず」が基本の形で、「〜は問わず」は、ほかに条件はあるがこれは条件にしない、という対比が出やすくなります。募集のお知らせでは文の終わりの「〜は問いません」もよく使われるので、三つを並べて読めるようにしておきます。会話では「〜は関係ありません」で十分です。
「この中で」と「この中から」の使い分けはどう説明しますか?
後ろの言葉で決めさせるのがいちばん簡単です。「一番」「最も」があれば範囲の中で比べるので「中で」、「選ぶ・決める・探す」があれば範囲から取り出すので「中から」です。板書で丸の中で回る矢印と、丸の外へ出る矢印を描き分けると、学生が自分で確かめられます。
第19課は何コマで終わりますか?板書はどう組みますか?
六つの学習項目と目標の活動で、90分×2コマが目安です。1コマ目で「もとに・中心に・応じて・問わず」の基準を説明する形を、2コマ目で「中で・中から」と読み取り・説明の活動をすると、まとまりよく進みます。板書は最初に「決める材料・主な部分・合わせて変える・条件にしない・比べる・選ぶ」の六つの枠を黒板の左に作り、項目が終わるたびに例文を一つずつ足すと、まとめの表がそのまま残ります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。