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学ぼう!にほんご 初中級 第3課「鈴木選手のおかげで、たくさん目標ができました」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

お世話になった人やあこがれの人に、感謝の気持ちをきちんと言葉にすることが目標の課です。この課では、だれかの存在に励まされて目標ができた、という気持ちを伝える場面が中心になります。お礼は「ありがとうございました」の一言で終わると気持ちが伝わりにくいので、この課では「何をしてもらったか(〜てくれて)」「その結果どうなったか(〜おかげで)」「これからどうしたいか(〜のように)」の三つを組み合わせて、一つのお礼の言葉を組み立てさせます。三つの学習項目はどれも新しい形というより、この三つの部品として使えるようにするのが芯です。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目3時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 相手がしてくれたことを「〜てくれて、ありがとう(ございました)」で具体的に言い、目上の人には「〜てくださって」「〜ていただいて」に替えてお礼が言える
  • 「〜おかげで」を使って、相手の助けでどんなよい結果になったかを言い、「〜せいで」との違い(よい結果か悪い結果か)が分かる
  • 「Nのように〜たい」で、手本にしたい人や目標を言い、お礼の言葉を「これから」の話で締めくくれる
  • 三つの形を組み合わせて、お世話になった人へのお礼の手紙・メール・あいさつを、短い段落で書いたり言ったりできる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分「最近、だれかに助けてもらったことはありますか」「そのとき、何と言いましたか」と聞き、答えを黒板に集める。ほとんどが「ありがとうございました」だけになるので、「それだけだと、何がうれしかったのか相手に分からない」と問題を出し、この課はお礼を三つの部品で組み立てる課だと予告する
学習項目1 〜おかげで…35分導入で出た「助けてもらったこと」の結果を聞き、「〜さんのおかげで、〜できました」の形で板書する。よい結果と悪い結果の絵カードを並べ、悪い結果には使わないこと(第17課の「〜せいで」につなぐ)を見せる
学習項目2 〜ように…30分あこがれの人・手本にしたい人を一人ずつ挙げさせ、「〜のように〜たい」で言わせる。名詞の前では「〜のような」になることを二段の板書で
学習項目3 〜てくれて、ありがとうございました35分初級Ⅰの「〜が…を〜てくれました」を思い出させてから、「〜てくれて、ありがとう」へ。友達・先輩・先生の三つの絵カードで「くれて/くださって/いただいて」を言い分ける
目標の活動(お礼の手紙)35分黒板に「①〜てくれて/くださって、ありがとうございました ②〜のおかげで、〜できました ③これからも〜のように〜たいです」の型を書き、お世話になった人(先生・アルバイト先の店長・ホストファミリーなど)への短いお礼の手紙を書かせる。ペアで読み合い、相手の手紙の①②③に線を引いて確かめる
目標の活動(口で言う)25分書いた手紙をもとに、送別会・卒業式・仕事の最後の日などの場面を決めて、相手役の前でお礼を口で言うロールプレイ。言われた側は「いえいえ、〜さんががんばったからですよ」と受ける
まとめ10分三つの部品の順番と、相手によって「くれて/くださって」を替えることを確かめる。「おかげで」と「せいで」の言い分けを2〜3問で確認して終わる

学習項目 1 〜おかげで…

意味・はたらき学習項目 1

前の部分(人・もの・出来事)が原因や理由になって、よい結果になったことを表します。理由を言うだけでなく、その原因に対する感謝の気持ちが入るのが「から」「ので」との違いで、お礼の言葉の中心になります。後ろには「〜できました」「〜なりました」のような、もう起きた結果を言う文が来ることが多いです。悪い結果の原因を言うときは第17課の「〜せいで」を使います。「おかげで」をわざと悪い結果に使うと、皮肉(相手を責める気持ち)に聞こえます。

接続

N+の+おかげで/普通形+おかげで(な形容詞は「な」:便利なおかげで。名詞文は「の」:いい天気のおかげで。動詞は「Vたおかげで」が多い)

形
Nのおかげで、〜(先生のおかげで、合格できました)Vたおかげで、〜(毎日練習したおかげで、上手になりました)い形/な形 おかげで、〜(駅が近いおかげで、通学が楽です/部屋が静かなおかげで、よく眠れます)〜のは、Nのおかげです(文の終わりに置く形:合格できたのは、先生のおかげです)

導入

  • 導入で出た話を「結果」までつなぐ導入で学生が話した「助けてもらったこと」を一つ選び、「それで、どうなりましたか」と聞く。「レポートが間に合いました」のような答えが出たら、黒板に「[人]のおかげで、[よい結果]」と枠を書き、「川口さんのおかげで、レポートが間に合いました」と全員で言う。何人かの話で同じ枠を使い、後ろがいつもよい結果になっていることに気づかせる。
  • よい結果と悪い結果を並べる「バスがすぐ来た」「バスが遅れた」の二枚の絵を並べ、「バスがすぐ来たおかげで、間に合いました」と言ってから、遅れた絵を指して「バスが遅れたおかげで…?」と止める。学生が変だと感じたところで、悪い結果には別の形(第17課の「せいで」)を使うと予告だけしておく。動詞・形容詞につくときは名詞のときの「の」が要らないことも、ここで板書の下段に書く。

板書案

[原因]Nの おかげで、[よい結果]
V・い形・な形(な)+ おかげで
先生の おかげで、試験に合格できました。
毎日練習した おかげで、上手に話せるようになりました。
〔赤〕よい結果 ◎ 〔青〕悪い結果 ×(→ 第17課「〜せいで」)
文の終わり:〜のは、Nの おかげです

場面と発話(自作)

  • 日本語能力試験に合格した留学生が、授業のあとで担任の先生に結果を報告する。先生のおかげで、N3に合格できました。本当にありがとうございました。
  • アルバイトを始めて三か月。最初に仕事を教えてくれた先輩に、慣れたことを話す。佐藤さんが丁寧に教えてくれたおかげで、一人でレジができるようになりました。
  • 引っ越したばかりの会社員が、同僚に新しい部屋のことを聞かれて答える。駅から近いおかげで、朝ゆっくりできるんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

まず口頭で、教師が「先輩が教えてくれた/辞書アプリ/毎日練習した」のような原因のカードと、「仕事に慣れた/漢字が読める」のような結果のカードを出し、「〜おかげで、〜」の一文にさせる。次に、よい結果と悪い結果のカードを混ぜて出し、悪い結果のときは「おかげで」を使わず止めさせる。最後に、自分が日本に来てからだれ(何)のおかげでよかったことを一つ、「〜のは、〜のおかげです」の形で言わせる。

  1. 口頭教師が原因のカードと結果のカードを1組ずつ出し、全体→列→個人の順で「〜おかげで、〜」の一文にさせる。キューは「先輩が教えてくれた/仕事に慣れた」「辞書アプリ/漢字が読めた」「駅が近い/朝ゆっくりできる」「毎日練習した/日本語が上手になった」「先生/N3に合格できた」のように、名詞・動詞・形容詞を混ぜる。2周目は悪い結果のカード(電車が遅れた/遅刻した)を時々混ぜ、出たら全員で手で×を作らせて「おかげで」を使わずに止める。
  2. ペアAは「最近よかったこと」のカード(試験に合格した・アルバイトが決まった・風邪がすぐ治った・道に迷わなかった)を引き、Bには見せない。Bが「よかったですね。どうしてですか」と聞き、Aがカードの裏に書かれた原因を使って「〜のおかげで」で答える。Bは「〜さんのおかげだったんですね」と受ける。4枚で役を交替する。Bは答えを知らないので、聞いて分かったことをメモさせる。
  3. 産出活動名「おかげでよかった報告」。日本に来てから(または日本語を始めてから)よかったことを一つ選び、「〜のは、〜のおかげです」を必ず一回入れて30秒で話す。聞く人は、だれ(何)のおかげだったかと、どんな結果になったかをメモし、話し終わったら一言で言い返す。教師が見るのは、名詞のあとの「の」の有無、動詞のあとに「の」を入れていないか、後ろがもう起きたよい結果になっているかの3点で、ずれた文はその場で板書の上段・下段を指して言い直させる。

つまずきと手当て

  • 名詞のあとの「の」を落とす(*先生おかげで合格しました)。反対に、動詞のあとに「の」を入れる(*練習したのおかげで)。板書の上段(名詞+の)と下段(動詞・形容詞はそのまま)を指して言い直させる
  • 悪い結果に使って、意図せず皮肉に聞こえる(例:雨のおかげで、試合が中止になりました)。文法の誤りではないが、相手を責めているように聞こえると説明し、悪い結果は第17課の「〜せいで」で言うと予告する。なお「おかげで」は感謝、「せいで」は責める気持ち、「ため(に)」はどちらでもない説明、と三つ並べておくと第17課で整理しやすい
  • 後ろに頼みや誘いを続ける(例:先生のおかげで、がんばりましょう)。「おかげで」の後ろはもう起きたこと・今そうなっていることを言う文が多い、と枠の右側を「結果」と書いて確かめる。あいさつの「おかげさまで(元気です)」と混ぜる学生には、「おかげさまで」は相手の名前を言わない決まった言い方だと分けて示す

既習の文型との違い

  • 〜ので、…(初級Ⅱ第21課)「ので」や初級Ⅰ第7課の「から」は理由を言うだけで、結果がよいか悪いかは問いません。「おかげで」は結果がよいときに使い、原因になった人やものへの感謝が入ります。「先生が教えてくれたので、分かりました」は事実の説明に、「先生が教えてくれたおかげで、分かりました」はお礼に聞こえるので、お礼の場面で「ので」だけを使う学生には、二つを並べて聞き比べさせます。
  • 〜ために、…(初級Ⅱ第29課)第29課の「ために」は目的(〜するために)として習いました。「先生のために」と「先生のおかげで」はどちらも人の名前が前に来るので混ざりやすいです。「先生のために合格できました」と言うと「先生を喜ばせるために」という意味に聞こえてしまうので、助けてもらった結果を言うときは「おかげで」にすると整理します。
関連する文型

学習項目 2 〜ように…

意味・はたらき学習項目 2

「Nのように」の形で、手本・例として人やものを挙げ、「それと同じように」という意味を表します。この課では特に「〜のように〜たい(なりたい)」と、あこがれの人を手本にして自分の目標を言う使い方が大切で、お礼の言葉を「これから」の話で締めくくるときに使えます。名詞を説明するときは「〜のような+名詞」になります。「先生が言ったように」のように動詞につくと、「その内容のとおりに」という意味になります。初級で習った「〜ようにします」(そうなるように努力する)とは使い方が違うので、混ぜないようにします。

接続

N+の+ように/N+の+ような+N/Vた(Vる)+ように(話し言葉では「〜みたいに」「〜みたいな」も使う)

形
Nのように V(兄のように、医者になりたいです)Nのような N(先輩のような、やさしい人になりたいです)Vたように(説明したように、この部分は大切です)Nのようになりたい(いつか、あの先生のようになりたいです)

導入

  • あこがれの人を一人ずつ挙げる教師が「わたしは、中学校のときの国語の先生にあこがれていました。あの先生のように、分かりやすく教えたいと思って、教師になりました」と自分の話をする。学生にも「あこがれている人はいますか」と聞き、家族・先輩・スポーツ選手・歌手など一人を挙げさせて、「〜のように〜たいです」で言わせる。板書は「[手本の人]のように [自分がしたいこと]たい」。
  • 「のように」と「のような」の二段の板書上段に「先輩のように、やさしくなりたい」、下段に「先輩のような、やさしい人になりたい」を並べ、後ろが動詞・形容詞なら「ように」、名詞なら「ような」と、後ろの言葉に下線を引いて見せる。そのあと、教師が「さっき言ったように」と自分の言葉をくり返して見せ、動詞につくと「そのとおりに」になることも一言添える。

板書案

Nの ように + 動詞・形容詞
Nの ような + 名詞
兄の ように、医者になりたいです。
先輩の ような、やさしい人になりたいです。
〔赤〕後ろの言葉に下線(動詞・形容詞 → ように/名詞 → ような)
〔青〕説明した ように = そのとおりに

場面と発話(自作)

  • 大学の陸上部に入った留学生が、自己紹介で目標を言う。部には全国大会に出た先輩がいる。高橋先輩のように、全国大会で走れる選手になりたいです。
  • 介護の仕事を始めた人が、いつも笑顔で利用者と話すベテランの職員について、同僚に話す。わたしも森さんのような、だれにでもやさしい介護士になりたいです。
  • 会議の最後に、司会の社員が、最初に説明した予定をもう一度確かめる。最初にお話ししたように、次の会議は来週の月曜日です。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が人のカード(父・先輩・先生・好きな選手)と、したいことのカード(料理が上手になる・英語が話せる・速く走る)を組み合わせて出し、「〜のように〜たいです」と言わせる。慣れたら後ろを名詞にしたカード(やさしい人・強い選手)を混ぜ、「ように/ような」を選ばせる。最後にペアで、あこがれている人とその理由を聞き合い、「〜さんは〜のような〜になりたいそうです」とクラスに伝える。

  1. 口頭教師が人のカードとしたいことのカードを組み合わせて出し、全体→個人で「〜のように〜たいです」と言わせる。キューは「父/料理が上手になる」「先輩/日本語で上手に話す」「好きな選手/速く走る」「先生/分かりやすく説明する」「母/毎朝早く起きる」。慣れたら後ろを名詞にしたカード(やさしい人・強い選手・明るい店長)を混ぜ、「ように」か「ような」かを学生に選ばせる。迷った学生には、後ろの言葉が動詞か名詞かだけを聞く。
  2. ペアインタビュー形式。Aが「あこがれている人はだれですか」「どうしてですか」「その人のように、何がしたいですか」の三つを聞き、Bが答える。Aは答えをメモし、終わったら役を交替する。Bが「先輩のようになりたいです」で止まったら、Aが「何を先輩のようにしたいですか」ともう一度聞いて、後ろの動きを言わせる。
  3. 産出活動名「あこがれの人紹介」。ペアで聞いた相手の話を、クラスの前で「〜さんは、〜のような〜になりたいそうです。〜のように〜たいそうです」と二文で紹介する。最後に自分の目標を「わたしも〜のように〜たいです」と一文足す。教師が見るのは、「の」の落ち、「ように/ような」の選び方、後ろに具体的な動き(速く走る・分かりやすく話す)が入っているかの3点。

つまずきと手当て

  • 「の」を落とす(*兄ように医者になりたい)。名詞のあとは必ず「の」が入ると板書の上段に戻す。また、名詞の前でも「ように」のまま使う学生がいる(先輩のようにやさしい人になりたい)。これは「先輩と同じように、やさしい人に」という意味なら成り立つので直す必要はないが、先輩の性質を説明したいのなら「先輩のような、やさしい人」のほうが伝わりやすいと、何を言いたいのかを聞いてから整理する
  • 初級の「〜ようにします/〜ようになります」と混ぜて、「先輩のようにします」「先輩のようになります」で文を終わらせ、何を手本にするのかが抜ける。「〜のように」の後ろに具体的な動き(速く走る・分かりやすく話す)を必ず入れさせる
  • 第10課で出る「〜のようだ」(海のようだ=たとえ)や推量の「〜ようだ」と同じものだと思って混乱する。この課の「のように」は、後ろに「どうしたいか」が続いて手本を示す使い方だと、文の形(後ろに動詞が来る)で区別させる

既習の文型との違い

  • 〜ようです(初級Ⅱ第24課)第24課の「ようです」は、見たことや聞いたことから話し手が判断する言い方でした(あの人は留学生のようです)。この課の「Nのように」は手本や例を挙げる言い方で、後ろに「どうしたいか」の動詞が続きます。文の終わりに来るか、後ろに動詞が来るかで見分けさせると混乱が減ります。
  • 〜ようにします/〜ようになります(初級Ⅱ第24課)「ようにします」は自分がそうなるように気をつけること(毎日歩くようにします)、「ようになります」は変化(話せるようになりました)で、前に来るのは動詞です。この課の「のように」は前に名詞と「の」が来ます。「先輩のようにします」で文を終える学生には、何を先輩と同じようにするのかを足させます。
関連する文型

学習項目 3 〜てくれて、ありがとうございました

意味・はたらき学習項目 3

相手が自分のためにしてくれたことを具体的に言って、それにお礼を言う形です。「〜てくれて」の「て」は理由を表し、「〜てくれたので、ありがとう」という意味になります。「ありがとう」だけより、何に感謝しているのかがはっきり伝わります。相手が先生・上司・お客様などのときは、「〜てくださって」「〜ていただいて」にします。もう終わったことへのお礼には「ありがとうございました」、今まさにしてもらっていることや、これからも続くことへのお礼には「ありがとうございます」を使うことが多いです。

接続

Vて+くれて、ありがとう(ございます/ございました)(目上の人には Vて+くださって/Vて+いただいて)

形
Vてくれて、ありがとう(友達・家族に)Vてくれて、ありがとうございました(先輩・知り合いに)Vてくださって/Vていただいて、ありがとうございました(先生・上司・お客様に)Nを ありがとうございました(お手紙を・お土産を・ご連絡を)

導入

  • 初級の「〜てくれました」から初級Ⅰで習った「友達がノートを貸してくれました」を黒板に書き、「そのとき、友達に何と言いますか」と聞く。「ありがとう」が出たら、二つの文を「貸してくれて、ありがとう」と一つにまとめて見せ、「何をしてくれたか」を前に言うとお礼がはっきりすると説明する。学生に、最近だれかがしてくれたことを一つ言わせ、同じ形に直させる。
  • 相手によって替える三つの絵カード友達・先輩・先生の三枚の絵カードを並べ、同じ「待つ」で「待ってくれて、ありがとう」「待ってくれて、ありがとうございました」「待ってくださって、ありがとうございました」と言い分ける。先生のカードの下には「〜ていただいて」も書き添え、どちらも目上の人に使えることを示す。最後に、相手がまだ手伝っている途中の絵と、手伝い終わった絵を並べ、「ございます」と「ございました」の使い分けを一言だけ触れる。

板書案

Vて + くれて、ありがとう(ございました)
友達 → くれて 先輩 → くれて+ございました 先生 → くださって/いただいて
傘を貸してくれて、ありがとう。
いろいろ教えてくださって、ありがとうございました。
〔赤〕「何をしてくれたか」に波線 〔青〕相手の絵カードから形へ矢印
① 〜てくださって ② 〜おかげで ③ 〜のように〜たい

場面と発話(自作)

  • 引っ越しの日、荷物を運ぶのを手伝ってくれた友達に、全部終わってから言う。きょうは手伝ってくれて、ありがとう。助かったよ。
  • 退職するアルバイトの留学生が、最後の日に店長にあいさつする。一年間、いろいろ教えてくださって、ありがとうございました。
  • 就職の面接の前に、作文を何度も見てくれた日本語学校の先生に、合格を知らせるメールを書く。何度も作文を見ていただいて、本当にありがとうございました。おかげさまで、内定をいただきました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

口頭では、教師が「してもらったこと」のカード(傘を貸す・駅まで送る・メールをすぐ返す)と相手のカード(友達・先輩・先生)を組み合わせて出し、相手に合わせた形でお礼を言わせる。次に、学習項目1・2と合わせて、「〜てくださって、ありがとうございました。〜のおかげで、〜できました。これからも〜のように〜たいです」の三文を、カードを替えながら続けて言う練習をし、目標の活動の手紙につなぐ。

  1. 口頭教師が「してもらったこと」のカードと相手のカードを組み合わせて出し、全体→個人で相手に合わせたお礼を言わせる。キューは「傘を貸す/友達」「駅まで送る/先輩」「作文を見る/先生」「シフトを替わる/アルバイトの先輩」「メールをすぐ返す/店長」。同じ動詞のまま相手のカードだけを替えて3回言わせ、「くれて」「くださって」「いただいて」の切り替えを速くする。て形でつまったら動詞だけ取り出して作り直させる。
  2. ペアAは相手役のカード(先生・友達・店長・ホストファミリー)を引いて、その人になる。Bは自分がしてもらったことを一つ決め、Aの役に合わせた形でお礼を言う。Aは役に合わせて「いえいえ」「どういたしまして」「がんばったからですよ」と受ける。3回で役を交替する。終わったら、どの相手にどの形を使ったかを二人で確かめる。
  3. 産出活動名「三部品お礼スピーチ」。送別会・卒業式・アルバイトの最後の日のどれかの場面を選び、①「〜てくださって、ありがとうございました」②「〜のおかげで、〜できました」③「これからも〜のように〜たいです」の順で、相手役の前で1分のお礼を言う。教師が見るのは、相手に合った形を選んでいるか、て形、もう終わったことに「ありがとうございました」を使っているか、①②③がそろっているかの4点。この活動がそのまま目標の活動(お礼の手紙)のもとになる。

つまずきと手当て

  • て形を作り間違える(*待ちてくれて、*来てくりて)。初級の て形の作り方に戻って、動詞だけ取り出して直させる。また「手伝ってくれました。ありがとうございました。」と二文に分けたり、「手伝ってくれたので、ありがとうございました」と理由の形をつけ足したりする学生もいる。どちらも誤りではないが、お礼の決まった言い方としては「〜てくれて、ありがとう」と一文にまとめるほうが自然だと、並べて言い直させる
  • あげる・くれるの向きを取り違える(*手伝ってあげて、ありがとう)。お礼を言うのは自分がしてもらったときなので「くれて」になる、と初級Ⅰの矢印の板書に戻る
  • 先生や上司に「〜てくれて、ありがとうございました」と言う。文法の誤りではないが、目上の人には少し失礼に聞こえることがあると説明し、「くださって」「いただいて」に替えさせる。反対に、親しい友達に「くださって」を使うと他人行儀に聞こえることも添える

既習の文型との違い

  • 〜が…を〜てくれました(初級Ⅰ第14課)初級Ⅰでは、だれかがしてくれたことを報告する文として習いました。この課では「くれて」とて形にして後ろに「ありがとう」を続け、してくれた本人に向かって言うお礼の形にします。報告の文はほかの人にも言えますが、「〜てくれて、ありがとう」は相手に直接言う言葉なので、主語の「〜が」は普通言いません。
  • くださいます/〜てくださいます・いただきます/〜ていただきます(初級Ⅱ第35課)「くださって」は相手が主語(先生が見てくださった)、「いただいて」は自分が主語(先生に見ていただいた)の形で、お礼の言葉ではどちらも目上の人に使えます。二つを混ぜて「*先生に作文を見てくださって」のように助詞と形が合わなくなる誤りが出やすいので、主語を言うなら「先生が〜てくださって」「先生に〜ていただいて」と組で覚えさせます。
関連する文型

語彙の扱い

お礼の言葉を組み立てるには、お礼の場面の語(感謝・お世話になる・励ます・助かる など)と、目標や手本にかかわる語(目標・あこがれる・活躍する・応援する など)が要ります。新出語もこの二つのかたまりに分けて扱うと練習しやすくなります。単語だけで覚えさせず、「〜にお世話になる」「〜を応援する」「〜で活躍する」のように助詞つきの形で、お礼の手紙の文の中に入れて練習します。「おかげさまで」は「おかげで」とは別の決まったあいさつとして、目上の人に近況を聞かれたときの答え方で一度取り上げます。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • お世話になります(おせわになります) ほかの人にいろいろ助けてもらいます。お礼のあいさつでよく使います。 先生に〜・大変〜
    アルバイトの最後の日、店長にあいさつする。
    「一年間、大変お世話になりました。」
  • 助かります(たすかります) 困っていたことが、だれかが手伝ってくれて楽になります。 本当に〜・とても〜
    雨の日に、友達が傘を貸してくれた。
    「傘を貸してくれて、ありがとう。本当に助かったよ。」
  • 励まします(はげまします) 元気がない人に言葉をかけて、もう一度がんばる気持ちにさせます。 友達を〜・やさしく〜
    試験に落ちて元気がなかったとき、話を聞いてくれた先輩に言う。
    「あのとき励ましてくださって、ありがとうございました。」
  • 応援します(おうえんします) がんばっている人がうまくいくように、声をかけたり助けたりします。 チームを〜・選手を〜・ずっと〜
    マラソン大会のあと、見に来てくれた家族に言う。
    「応援してくれて、ありがとう。みんなのおかげで、最後まで走れたよ。」
  • あこがれます(あこがれます) すばらしいと思って、自分もそうなりたいと強く思います。 先輩に〜・プロの選手に〜
    クラブの自己紹介で、好きな選手の話をする。
    「わたしは、日本代表の選手にあこがれています。」
  • 目標(もくひょう) そこまで行きたい、できるようになりたいと決めたことです。 〜を立てる・〜ができる・今年の〜
    新しい学期の最初の授業で、一人ずつ話す。
    「今年の目標は、N2に合格することです。」
  • 活躍します(かつやくします) 仕事やスポーツなどで、目立つほどよい働きをします。 世界で〜・チームで〜
    留学生が、将来の夢を聞かれて答える。
    「いつか海外の大会で活躍できる選手になりたいです。」
  • 手本(てほん) まねをして学ぶための、よい例になる人やものです。 〜にする・いい〜
    介護の仕事を始めた人が、同僚に話す。
    「森さんの話し方を、いつも手本にしています。」
  • 合格します(ごうかくします) 試験やテストに受かります。 試験に〜・大学に〜
    大学の試験の結果が出た日、日本語学校の先生に報告する。
    「先生のおかげで、大学に合格できました。」
  • 上達します(じょうたつします) 練習して、前よりうまくできるようになります。 日本語が〜・少しずつ〜
    ホストファミリーとの最後の夕食で、お礼を言う。
    「毎日話してくださったおかげで、日本語が上達しました。」
  • 感謝します(かんしゃします) してもらったことを、ありがたいと思います。 家族に〜・心から〜
    卒業式のスピーチの最後に言う。
    「支えてくださったみなさんに、心から感謝しています。」

宿題と次のコマ

宿題は、授業で書いたお礼の手紙を、実際に送れる形(あて名・書き出し・結び)に整えて清書すること。三つの部品(〜てくださって/〜おかげで/〜のように)を必ず一回ずつ使う。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、相手役が「いえいえ」と受けるところまでやって復習してから、第4課の「理由を言って断る」に入ります。前の課で習った「〜うちに」を使って「忘れないうちにお礼を言う」と話をつなぐと自然です。

よくある質問

  • 「〜おかげで」と「〜せいで」「〜から・ので」の違いは何ですか?

    「おかげで」はよい結果の原因を言い、原因への感謝が入ります。第17課の「せいで」は悪い結果の原因を言い、原因を責める気持ちが入ります。「から」「ので」は理由を言うだけで、よいか悪いかは問いません。この課では「よい結果◎・悪い結果×」の板書で「おかげで」だけを扱い、「せいで」は名前だけ予告しておくと第17課で整理しやすくなります。

  • 「〜のように」と「〜のような」はどう教え分けますか?

    前は同じ「Nの」で、後ろの言葉で分かれます。後ろが動詞・形容詞なら「のように」(兄のように医者になりたい)、名詞なら「のような」(先輩のような人)です。板書を二段にして後ろの言葉に下線を引き、迷った学生には「後ろは動詞ですか、名詞ですか」とだけ聞いて選ばせます。

  • お礼の「〜てくれて」「〜てくださって」「〜ていただいて」はどう使い分けますか?

    友達や家族には「〜てくれて、ありがとう」、先生・上司・お客様には「〜てくださって」か「〜ていただいて」を使います。「くださって」は相手が主語、「いただいて」は自分が主語の形ですが、お礼の言葉ではどちらも丁寧に聞こえます。目上の人に「くれて」を使うと少し失礼に、親しい友達に「くださって」を使うと他人行儀に聞こえることも伝えます。

  • 「ありがとうございます」と「ありがとうございました」はどう使い分けますか?

    もう終わったことへのお礼(一年間教えてくださった、きのう手伝ってくれた)には「ありがとうございました」を使います。今まさにしてもらっていることや、これからも続くことへのお礼には「ありがとうございます」が多く使われます。ただ、何かを受け取った直後などはどちらも使われるので、この課では「終わったこと→ました」を目安として示し、細かく直しすぎないようにします。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と学習項目1「〜おかげで」、学習項目2「〜ように」まで、2コマ目は学習項目3「〜てくれて、ありがとうございました」と、お礼の手紙・口で言うロールプレイ、まとめです。手紙の清書を宿題にし、次のコマの最初に読み合うと、第4課に入る前の復習になります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。