お世話になった人やあこがれの人に、感謝の気持ちをきちんと言葉にすることが目標の課です。この課では、だれかの存在に励まされて目標ができた、という気持ちを伝える場面が中心になります。お礼は「ありがとうございました」の一言で終わると気持ちが伝わりにくいので、この課では「何をしてもらったか(〜てくれて)」「その結果どうなったか(〜おかげで)」「これからどうしたいか(〜のように)」の三つを組み合わせて、一つのお礼の言葉を組み立てさせます。三つの学習項目はどれも新しい形というより、この三つの部品として使えるようにするのが芯です。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 「最近、だれかに助けてもらったことはありますか」「そのとき、何と言いましたか」と聞き、答えを黒板に集める。ほとんどが「ありがとうございました」だけになるので、「それだけだと、何がうれしかったのか相手に分からない」と問題を出し、この課はお礼を三つの部品で組み立てる課だと予告する |
| 学習項目1 〜おかげで… | 35分 | 導入で出た「助けてもらったこと」の結果を聞き、「〜さんのおかげで、〜できました」の形で板書する。よい結果と悪い結果の絵カードを並べ、悪い結果には使わないこと(第17課の「〜せいで」につなぐ)を見せる |
| 学習項目2 〜ように… | 30分 | あこがれの人・手本にしたい人を一人ずつ挙げさせ、「〜のように〜たい」で言わせる。名詞の前では「〜のような」になることを二段の板書で |
| 学習項目3 〜てくれて、ありがとうございました | 35分 | 初級Ⅰの「〜が…を〜てくれました」を思い出させてから、「〜てくれて、ありがとう」へ。友達・先輩・先生の三つの絵カードで「くれて/くださって/いただいて」を言い分ける |
| 目標の活動(お礼の手紙) | 35分 | 黒板に「①〜てくれて/くださって、ありがとうございました ②〜のおかげで、〜できました ③これからも〜のように〜たいです」の型を書き、お世話になった人(先生・アルバイト先の店長・ホストファミリーなど)への短いお礼の手紙を書かせる。ペアで読み合い、相手の手紙の①②③に線を引いて確かめる |
| 目標の活動(口で言う) | 25分 | 書いた手紙をもとに、送別会・卒業式・仕事の最後の日などの場面を決めて、相手役の前でお礼を口で言うロールプレイ。言われた側は「いえいえ、〜さんががんばったからですよ」と受ける |
| まとめ | 10分 | 三つの部品の順番と、相手によって「くれて/くださって」を替えることを確かめる。「おかげで」と「せいで」の言い分けを2〜3問で確認して終わる |
前の部分(人・もの・出来事)が原因や理由になって、よい結果になったことを表します。理由を言うだけでなく、その原因に対する感謝の気持ちが入るのが「から」「ので」との違いで、お礼の言葉の中心になります。後ろには「〜できました」「〜なりました」のような、もう起きた結果を言う文が来ることが多いです。悪い結果の原因を言うときは第17課の「〜せいで」を使います。「おかげで」をわざと悪い結果に使うと、皮肉(相手を責める気持ち)に聞こえます。
N+の+おかげで/普通形+おかげで(な形容詞は「な」:便利なおかげで。名詞文は「の」:いい天気のおかげで。動詞は「Vたおかげで」が多い)
まず口頭で、教師が「先輩が教えてくれた/辞書アプリ/毎日練習した」のような原因のカードと、「仕事に慣れた/漢字が読める」のような結果のカードを出し、「〜おかげで、〜」の一文にさせる。次に、よい結果と悪い結果のカードを混ぜて出し、悪い結果のときは「おかげで」を使わず止めさせる。最後に、自分が日本に来てからだれ(何)のおかげでよかったことを一つ、「〜のは、〜のおかげです」の形で言わせる。
「Nのように」の形で、手本・例として人やものを挙げ、「それと同じように」という意味を表します。この課では特に「〜のように〜たい(なりたい)」と、あこがれの人を手本にして自分の目標を言う使い方が大切で、お礼の言葉を「これから」の話で締めくくるときに使えます。名詞を説明するときは「〜のような+名詞」になります。「先生が言ったように」のように動詞につくと、「その内容のとおりに」という意味になります。初級で習った「〜ようにします」(そうなるように努力する)とは使い方が違うので、混ぜないようにします。
N+の+ように/N+の+ような+N/Vた(Vる)+ように(話し言葉では「〜みたいに」「〜みたいな」も使う)
口頭では、教師が人のカード(父・先輩・先生・好きな選手)と、したいことのカード(料理が上手になる・英語が話せる・速く走る)を組み合わせて出し、「〜のように〜たいです」と言わせる。慣れたら後ろを名詞にしたカード(やさしい人・強い選手)を混ぜ、「ように/ような」を選ばせる。最後にペアで、あこがれている人とその理由を聞き合い、「〜さんは〜のような〜になりたいそうです」とクラスに伝える。
相手が自分のためにしてくれたことを具体的に言って、それにお礼を言う形です。「〜てくれて」の「て」は理由を表し、「〜てくれたので、ありがとう」という意味になります。「ありがとう」だけより、何に感謝しているのかがはっきり伝わります。相手が先生・上司・お客様などのときは、「〜てくださって」「〜ていただいて」にします。もう終わったことへのお礼には「ありがとうございました」、今まさにしてもらっていることや、これからも続くことへのお礼には「ありがとうございます」を使うことが多いです。
Vて+くれて、ありがとう(ございます/ございました)(目上の人には Vて+くださって/Vて+いただいて)
口頭では、教師が「してもらったこと」のカード(傘を貸す・駅まで送る・メールをすぐ返す)と相手のカード(友達・先輩・先生)を組み合わせて出し、相手に合わせた形でお礼を言わせる。次に、学習項目1・2と合わせて、「〜てくださって、ありがとうございました。〜のおかげで、〜できました。これからも〜のように〜たいです」の三文を、カードを替えながら続けて言う練習をし、目標の活動の手紙につなぐ。
お礼の言葉を組み立てるには、お礼の場面の語(感謝・お世話になる・励ます・助かる など)と、目標や手本にかかわる語(目標・あこがれる・活躍する・応援する など)が要ります。新出語もこの二つのかたまりに分けて扱うと練習しやすくなります。単語だけで覚えさせず、「〜にお世話になる」「〜を応援する」「〜で活躍する」のように助詞つきの形で、お礼の手紙の文の中に入れて練習します。「おかげさまで」は「おかげで」とは別の決まったあいさつとして、目上の人に近況を聞かれたときの答え方で一度取り上げます。
宿題は、授業で書いたお礼の手紙を、実際に送れる形(あて名・書き出し・結び)に整えて清書すること。三つの部品(〜てくださって/〜おかげで/〜のように)を必ず一回ずつ使う。次のコマの最初に何人かに読んでもらい、相手役が「いえいえ」と受けるところまでやって復習してから、第4課の「理由を言って断る」に入ります。前の課で習った「〜うちに」を使って「忘れないうちにお礼を言う」と話をつなぐと自然です。
「〜おかげで」と「〜せいで」「〜から・ので」の違いは何ですか?
「おかげで」はよい結果の原因を言い、原因への感謝が入ります。第17課の「せいで」は悪い結果の原因を言い、原因を責める気持ちが入ります。「から」「ので」は理由を言うだけで、よいか悪いかは問いません。この課では「よい結果◎・悪い結果×」の板書で「おかげで」だけを扱い、「せいで」は名前だけ予告しておくと第17課で整理しやすくなります。
「〜のように」と「〜のような」はどう教え分けますか?
前は同じ「Nの」で、後ろの言葉で分かれます。後ろが動詞・形容詞なら「のように」(兄のように医者になりたい)、名詞なら「のような」(先輩のような人)です。板書を二段にして後ろの言葉に下線を引き、迷った学生には「後ろは動詞ですか、名詞ですか」とだけ聞いて選ばせます。
お礼の「〜てくれて」「〜てくださって」「〜ていただいて」はどう使い分けますか?
友達や家族には「〜てくれて、ありがとう」、先生・上司・お客様には「〜てくださって」か「〜ていただいて」を使います。「くださって」は相手が主語、「いただいて」は自分が主語の形ですが、お礼の言葉ではどちらも丁寧に聞こえます。目上の人に「くれて」を使うと少し失礼に、親しい友達に「くださって」を使うと他人行儀に聞こえることも伝えます。
「ありがとうございます」と「ありがとうございました」はどう使い分けますか?
もう終わったことへのお礼(一年間教えてくださった、きのう手伝ってくれた)には「ありがとうございました」を使います。今まさにしてもらっていることや、これからも続くことへのお礼には「ありがとうございます」が多く使われます。ただ、何かを受け取った直後などはどちらも使われるので、この課では「終わったこと→ました」を目安として示し、細かく直しすぎないようにします。
この課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と学習項目1「〜おかげで」、学習項目2「〜ように」まで、2コマ目は学習項目3「〜てくれて、ありがとうございました」と、お礼の手紙・口で言うロールプレイ、まとめです。手紙の清書を宿題にし、次のコマの最初に読み合うと、第4課に入る前の復習になります。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。