町や国、物やサービスについて知っていることを並べ、聞き手が選んだり判断したりしやすいように、特徴をまとめて伝える課です。目標の場面は、ふるさとや住んでいる町の紹介、アパートやアルバイト先の比べ方のように、いくつかの点を挙げてから「だからこうだ」と結論を言う説明です。学習項目は二つの組に分かれ、比べる形(〜に比べて・AよりBのほうが)で基準を立て、並べる形(〜も…ば、〜も…/〜も…なら、〜も…)で特徴を重ねます。教えるときの芯は、「ば」と「なら」の分かれ目が「〜も」の前の名詞ではなくそのあとの述語の品詞で決まることと、並べる中身が良い点どうしか、悪い点どうしか、良い点と悪い点かで、形の選び方が変わることの二つです。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 15分 | 教師が二つの町(自分の住む町ととなりの町など)の写真と簡単な表(家賃・交通・店・自然)を見せ、「住むならどちらがいいですか」と聞く。学生の答えの理由を表に書き込み、この表を課の最後まで黒板に残して、すべての学習項目の材料にする |
| 学習項目1 〜に比べて… | 30分 | 表の数字(家賃・人口・駅までの時間)を使い、どちらを基準にして比べるかを矢印で見せる。続けて「去年に比べて」「国にいたときに比べて」で時間の比べにも広げる |
| 学習項目2 〜も…ば、〜も… | 35分 | 表の一つの町から良い点を二つ拾って1文に重ねる→悪い点どうしを重ねる→賛成と反対のように両方あることを「〜もあれば、〜もある」で言う、の順に進める |
| 学習項目3 〜も…なら、〜も… | 30分 | 学習項目2の文の述語をナ形容詞・名詞に替えて、形が「なら」に変わるところを見せる。「ば」と「なら」の2列の表を板書し、学生が出す述語を振り分けさせる |
| 学習項目4 AよりBのほうが〜 | 15分 | 初級の復習として、表を見て「どちらが」に答えさせる。比べた結果と重ねた特徴を理由にして、最後に選んだ結果を言う文として使わせる |
| 目標の活動(町の紹介) | 40分 | ペアでそれぞれのふるさと(または住みたい町)の表を作り、「比べる→特徴を重ねる→結論」の順で1分の紹介をする。聞き手はメモを取り、どちらに住みたいかを理由つきで答える |
| まとめ | 15分 | 黒板の「ば」「なら」の2列の表に、学生が活動で使った述語を書き足して形を確かめる。紹介文を書く宿題の説明をする |
「AはBに比べて〜」の形で、Bを基準(ものさし)にしてAの程度を述べる言い方です。「AはBより〜」とほぼ同じ意味ですが、「に比べて」は何を基準にしているかを文の前に出すので、数字や調べたことを示しながら説明するときによく使います。去年と今年、昔と今のように、時間の違いを比べて変化を言うのにも使います。後ろには「高い・多い・増えた・少し暖かい」のような、程度の違いを表す内容が来ます。
N+に比べて(動詞・形容詞の文を基準にするときは 普通形+の+に比べて)。「に比べると」「と比べて」もほぼ同じ意味で使い、書き言葉では「に比べ」とも書く
教師が二つの物の数字(値段・時間・人数)を書いたカードを見せ、学生が「〜は〜に比べて〜」で言う。同じカードで基準を入れ替えた文も言わせ、意味が反対になることを確かめる。慣れたら「去年と今年」「国と日本」のカードを混ぜて、時間の比べにも使わせる。
一つの物や場所について特徴を二つ「〜も」で対にして並べ、「AもそうだしBもそうだ」と言う形です。「〜し、〜し」と似ていますが、二つの点をきれいに対にするので、紹介や説明の中で特徴を印象づけられます。使い方は三つあります。①良い点を重ねる(値段も安ければ、味もいい)。②悪い点を重ねる(部屋も狭ければ、駅からも遠い)。③良い点と悪い点、賛成と反対のように、反対の物が両方あることを言う。③はほとんど「〜もあれば、〜もある」「〜もいれば、〜もいる」の形で使い、「いろいろある」とまとめる気持ちが出ます。①②では、あとに「だから人気がある」「だから引っ越したい」のような結論がよく続きます。
「〜も」のあとの述語が動詞・イ形容詞のときに使う形。前の述語をば形にし(ある→あれば、いる→いれば、できる→できれば、安い→安ければ、〜ない→〜なければ)、後ろの述語はふつうの形のまま
町・店・アパートのカードに、良い点と悪い点の短いメモ(安い・広い・遠い・うるさい・ある/ない)を付けて配る。まず同じ印の点(良い点どうし・悪い点どうし)を二つ選んで1文にさせ、次に良い点と悪い点を一つずつ選んで「〜もあれば、〜もある」の形で言わせる。最後に「〜ので、〜」で結論を付けさせ、目標の活動の型にする。
学習項目2と同じ並べ方で、「〜も」のあとの述語がナ形容詞や名詞のときの形です。「交通も便利なら、家賃も手ごろだ」のように良い点を重ねるのにも、「道も不便なら、店も少ない」のように悪い点を重ねるのにも使います。「なら」はナ形容詞・名詞の「だ」を条件の形にしたもの(=〜であれば)なので、別の文型ではなく、学習項目2の形が述語に合わせて変わったものと考えると覚えやすくなります。同じ名詞をくり返す「親も親なら、子も子だ」は、両方をよくないと責める決まった言い方で、ほめるときには使いません。良い点と悪い点が両方あると言いたいときは、述語を「ある・いる」にして学習項目2の「〜もあれば/〜もいれば」を使うのが自然です。
「〜も」のあとの述語がナ形容詞・名詞のときに使う形(便利だ→便利なら、教師だ→教師なら)。改まった説明や書き言葉では「〜であれば」も使う。後ろの述語は品詞が違ってもよく、ふつうの形のまま
述語カード(便利だ・静かだ・有名だ・教師だ・近い・広い・ある・できる)を混ぜて配り、学生がカードを引いて「〜も…ば/なら、〜も…」の前半を作る。言う前に「ば」か「なら」かを手で示させてから言わせると、形の選び方が口より先に決まるようになる。後半は自由に続けさせ、良い点どうし・悪い点どうしのどちらになったかをペアで確かめる。
初級で習った、二つを比べて「Bのほうが上だ」と言う形の復習です。この課では、表や資料で集めた情報を比べたあと、最後にどちらを選ぶかをはっきり言う文として使います。「AはBに比べて〜」が基準を立てて違いを説明する形なのに対して、「AよりBのほうが〜」は選んだ結果を言う形なので、説明の最後に置くと話のまとまりがよくなります。動詞どうしを比べるときは「〜するより〜するほうが」で、「ほうが」の前には「の」を入れません(「より」の前は「歩くのより」とも言えます)。打ち消しで言うときは「AはBほど〜ない」になります。
N1より N2のほうが〜/Vるより Vるほうが〜(「ほうが」の前の動詞には「の」をつけない)。聞くときは「AとBと、どちらが〜ですか」
二つの物の情報を3〜4点ずつ書いた表をペアに配り、一人が「AとBと、どちらが〜ですか」と聞き、もう一人が表を見て答える。最後に表全体を見て「〜も…ば(なら)、〜も…ので、AよりBのほうが〜」と、理由つきの結論を1文で言わせ、この課の形を一つにつなげる。
町や国を紹介するための語(人口・気候・交通・家賃・自然・観光地など)は、単語だけで覚えさせず「家賃が安い」「交通が便利だ」のように形容詞とセットにして表の見出しに入れると、学習項目2・3の述語にそのまま使えます。新しい形容詞は、イ形容詞かナ形容詞かが「ば」と「なら」の選び方に直結するので、板書のときに品詞の印をつけておきます。数字を含む比べ(〜割・〜倍・約〜)は学習項目1でよく使うので、読み方を一度声に出して確かめます。
宿題は、自分のふるさと(または住んでみたい町)と今住んでいる町を比べた表を作り、それをもとに「〜に比べて」「〜も…ば/なら、〜も…」「AよりBのほうが」を一つずつ使って200字ほどの紹介文を書くこと。次のコマの最初に何人かに読ませ、ほかの学生は「ば」と「なら」の形が述語に合っているかを聞き取って確かめる。そのあと第6課の、今の状況や状態を説明する表現に進みます。
「〜も…ば、〜も…」と「〜も…なら、〜も…」はどう使い分けますか?
決め手は「〜も」のあとに来る述語の品詞です。動詞・イ形容詞なら「ば」(あれば・安ければ)、ナ形容詞・名詞なら「なら」(便利なら・教師なら)になります。「〜も」の直前の名詞で決まると思い込む学生が多いので、同じ「部屋も」から「広ければ」と「きれいなら」に分かれる例を並べて見せます。
「〜に比べて」と「〜より」の違いは何ですか?
どちらもBを基準にしてAの程度を言う点は同じです。「〜に比べて」は基準を文の前に出しやすく、数字や資料を示しながら説明するとき、昔と今の変化を言うときに向きます。二つを選んだ結果を言うときは「AよりBのほうが」が自然なので、この課では説明は「に比べて」、結論は「のほうが」と分けて練習させます。
良い点と悪い点を「〜も…ば、〜も…」で並べてもいいですか?
「〜もあれば、〜もある」「〜もいれば、〜もいる」の形なら、良いことと悪いこと、賛成と反対が両方あると自然に言えます。それ以外の述語で良い点と悪い点を並べると、聞き手が同じ方向の話を予想するので落ち着かない文になりがちです。対比を言いたいときは「〜は…ですが、〜は…」を勧めます。
この課は何コマで終わりますか?
90分なら2コマが目安です。1コマ目で導入の表と学習項目1・2、2コマ目で学習項目3・4と町の紹介の活動を行います。学習項目4は初級の復習なので短くし、そのぶん目標の活動に40分ほど取ると、比べる・並べる・結論を言うを一つの話にまとめる練習ができます。
板書はどう組めばいいですか?
黒板の左に導入で作った二つの町の表を課の最後まで残し、右に各学習項目の形を書いていきます。学習項目3では「ば」と「なら」の2列の表を作り、学生が出した述語をその場で振り分けて書き足します。まとめでは、活動で使われた述語をこの2列に足して、形の選び方を確かめます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。