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学ぼう!にほんご 初中級 第5課「湖や海もあれば、高い山もたくさんあります」の教案

『学ぼう!にほんご 初中級』

町や国、物やサービスについて知っていることを並べ、聞き手が選んだり判断したりしやすいように、特徴をまとめて伝える課です。目標の場面は、ふるさとや住んでいる町の紹介、アパートやアルバイト先の比べ方のように、いくつかの点を挙げてから「だからこうだ」と結論を言う説明です。学習項目は二つの組に分かれ、比べる形(〜に比べて・AよりBのほうが)で基準を立て、並べる形(〜も…ば、〜も…/〜も…なら、〜も…)で特徴を重ねます。教えるときの芯は、「ば」と「なら」の分かれ目が「〜も」の前の名詞ではなくそのあとの述語の品詞で決まることと、並べる中身が良い点どうしか、悪い点どうしか、良い点と悪い点かで、形の選び方が変わることの二つです。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 二つの物や場所を、基準を決めて「〜に比べて」で比べ、どれくらい違うかを数字や事実を添えて言える
  • 一つの町や物の特徴を「〜も…ば、〜も…」「〜も…なら、〜も…」で重ね、良い点・悪い点・その両方をまとめて伝えられる
  • 述語が動詞・イ形容詞か、ナ形容詞・名詞かを見て「ば」と「なら」を選び、形を作り間違えずに言える
  • 比べる・並べる・結論を言うをつなげて、ふるさとや住みたい町を1分ほどで紹介し、聞き手の質問に「AよりBのほうが」で答えられる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)15分教師が二つの町(自分の住む町ととなりの町など)の写真と簡単な表(家賃・交通・店・自然)を見せ、「住むならどちらがいいですか」と聞く。学生の答えの理由を表に書き込み、この表を課の最後まで黒板に残して、すべての学習項目の材料にする
学習項目1 〜に比べて…30分表の数字(家賃・人口・駅までの時間)を使い、どちらを基準にして比べるかを矢印で見せる。続けて「去年に比べて」「国にいたときに比べて」で時間の比べにも広げる
学習項目2 〜も…ば、〜も…35分表の一つの町から良い点を二つ拾って1文に重ねる→悪い点どうしを重ねる→賛成と反対のように両方あることを「〜もあれば、〜もある」で言う、の順に進める
学習項目3 〜も…なら、〜も…30分学習項目2の文の述語をナ形容詞・名詞に替えて、形が「なら」に変わるところを見せる。「ば」と「なら」の2列の表を板書し、学生が出す述語を振り分けさせる
学習項目4 AよりBのほうが〜15分初級の復習として、表を見て「どちらが」に答えさせる。比べた結果と重ねた特徴を理由にして、最後に選んだ結果を言う文として使わせる
目標の活動(町の紹介)40分ペアでそれぞれのふるさと(または住みたい町)の表を作り、「比べる→特徴を重ねる→結論」の順で1分の紹介をする。聞き手はメモを取り、どちらに住みたいかを理由つきで答える
まとめ15分黒板の「ば」「なら」の2列の表に、学生が活動で使った述語を書き足して形を確かめる。紹介文を書く宿題の説明をする

学習項目 1 〜に比べて…

意味・はたらき学習項目 1

「AはBに比べて〜」の形で、Bを基準(ものさし)にしてAの程度を述べる言い方です。「AはBより〜」とほぼ同じ意味ですが、「に比べて」は何を基準にしているかを文の前に出すので、数字や調べたことを示しながら説明するときによく使います。去年と今年、昔と今のように、時間の違いを比べて変化を言うのにも使います。後ろには「高い・多い・増えた・少し暖かい」のような、程度の違いを表す内容が来ます。

接続

N+に比べて(動詞・形容詞の文を基準にするときは 普通形+の+に比べて)。「に比べると」「と比べて」もほぼ同じ意味で使い、書き言葉では「に比べ」とも書く

形
AはBに比べて〜Bに比べて、Aは〜Vる/Vた のに比べて〜去年に比べて〜/〜ときに比べて〜

導入

  • 表の数字で基準を立てる導入で作った二つの町の表から家賃の欄を指し、教師が「この町の家賃は、となりの町に比べて2万円ぐらい安いです」と言う。「に比べて」の前が基準、後ろが言いたい町だと、黒板に矢印を書いて見せる。続けて人口や駅の数の欄を指して、学生にも同じ形で言わせる。
  • 時間を比べて変化を言う教師が自分の町について「10年前に比べて、外国から来た住民がずいぶん増えました」と言い、昔と今を比べて変化を言う使い方を見せる。学生には「国にいたときに比べて」で始めさせ、日本に来てから変わったこと(朝ごはん・寝る時間・使うお金)を一つずつ言わせる。

板書案

A は B に比べて 〜(程度の違い)
〔青〕B=基準(ものさし) → 〔赤〕A=言いたいもの
この町の家賃は、となりの町に比べて 2万円ぐらい安いです。
10年前に比べて、住民が増えました。(時間の比べ)
Vる+〔赤〕の+に比べて  〔丸〕「と比べて」「に比べると」も同じ仲間

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の授業で、留学生が自分の国の気候をクラスに紹介する。わたしの国は、日本に比べて冬が短くて、雪はほとんど降りません。
  • 会社の会議で、新しく入った社員が今月の売り上げの資料を説明する。今月の売り上げは、先月に比べて1割ほど増えています。
  • 寮の先輩が、引っ越してきたばかりの後輩に、近くの二つのスーパーの違いを教える。駅前の店は、こっちの店に比べて少し高いけど、夜11時まで開いてるよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が二つの物の数字(値段・時間・人数)を書いたカードを見せ、学生が「〜は〜に比べて〜」で言う。同じカードで基準を入れ替えた文も言わせ、意味が反対になることを確かめる。慣れたら「去年と今年」「国と日本」のカードを混ぜて、時間の比べにも使わせる。

  1. 口頭教師が二つの数字を書いたカードを見せ、学生が全体で、次に一人ずつ「〜は〜に比べて〜」で言う。キューの例は「東京の家賃 8万円/この町の家賃 5万円」「バス 40分/電車 20分」「去年の学生 20人/今年 30人」「国の夏 40度/日本の夏 35度」。同じカードで基準を入れ替えた文もすぐ言わせ、形容詞が反対になることを口で確かめる。
  2. ペアAとBに、同じ二つの町の表を配るが、Aの表には家賃と人口だけ、Bの表には駅までの時間と店の数だけが書いてある。Aは「この町の家賃は、となりの町に比べてどうですか」と聞き、Bは知らない欄なので相手に聞き返す。お互いに足りない欄を「〜に比べて」の文で埋め、終わったら役を交替して別の町の表で行う。
  3. 産出「わたしの町・今昔くらべ」: 学生が、国にいたときと今、またはふるさとの町と今住んでいる町を比べて、変わったことを3つ「〜に比べて」で書き、クラスで30秒ずつ話す。教師は、基準と言いたいものが逆になっていないか、動詞を基準にしたとき「の」が入っているか、後ろが程度の違いを表す内容になっているかの3点を見て、終わったあとにまとめて直す。

つまずきと手当て

  • 動詞の文を基準にするとき「の」を落とす(「*一人で勉強するに比べて」)。「一人で勉強するのに比べて」と、文を名詞のようにまとめる「の」が要ることを板書の形で示す
  • 後ろに程度の違いを表さない内容を続ける(「兄に比べて、わたしは会社員です」は比べた意味にならない)。比べた結果、どちらがどれだけ違うかを言う形だと確かめ、「兄に比べて、わたしは休みが少ないです」のように言い直させる
  • 基準と言いたい物を逆にして、意味が反対になる。「〜に比べて」の前は基準、と矢印の板書に戻って確かめる。「と比べて」「に比べると」が出てきたときに別の文型だと思う学生には、同じ仲間だと一言添える

既習の文型との違い

  • 〜は…より―です(初級Ⅰ第6課)「AはBより〜」も「AはBに比べて〜」も、Bを基準にしてAの程度を言う点は同じです。違いは、「に比べて」が基準を文の前に置けて(「去年に比べて、今年は〜」)、数字や資料を示す説明に向くことです。初級の「より」の感覚で「*去年により」のように助詞を混ぜる学生がいるので、「より」と「に比べて」は二つで一組の形だと並べて見せます。
関連する文型

学習項目 2 〜も…ば、〜も…

意味・はたらき学習項目 2

一つの物や場所について特徴を二つ「〜も」で対にして並べ、「AもそうだしBもそうだ」と言う形です。「〜し、〜し」と似ていますが、二つの点をきれいに対にするので、紹介や説明の中で特徴を印象づけられます。使い方は三つあります。①良い点を重ねる(値段も安ければ、味もいい)。②悪い点を重ねる(部屋も狭ければ、駅からも遠い)。③良い点と悪い点、賛成と反対のように、反対の物が両方あることを言う。③はほとんど「〜もあれば、〜もある」「〜もいれば、〜もいる」の形で使い、「いろいろある」とまとめる気持ちが出ます。①②では、あとに「だから人気がある」「だから引っ越したい」のような結論がよく続きます。

接続

「〜も」のあとの述語が動詞・イ形容詞のときに使う形。前の述語をば形にし(ある→あれば、いる→いれば、できる→できれば、安い→安ければ、〜ない→〜なければ)、後ろの述語はふつうの形のまま

形
N1も Vば、N2も VN1も イ形ければ、N2も 〜N1もあれば、N2もある/N1もいれば、N2もいるN1も Vなければ、N2も Vない

導入

  • 表の良い点を二つ拾って1文にする導入の表で一つの町の欄から良い点を二つ選び、教師がまず「この町は家賃も安いです。駅も近いです」と2文で言ってから、「家賃も安ければ、駅も近いです」と1文にまとめて見せる。板書では「〜も」の二つの名詞と、前の述語の「ば」に色を付け、後ろの述語は形が変わらないことを示す。
  • 悪い点どうし、そして両方ある場合同じ表で今度は悪い点を二つ重ねさせる(「店も少なければ、バスも少ない」)。次に、町に新しい駅ができる話に対する住民の意見カード(賛成・反対)を見せ、「賛成の人もいれば、反対の人もいます」と言う。良いことと悪いこと、賛成と反対を並べるときは「あれば/いれば」の形になることを、①②③の三つの例を並べた板書で整理する。

板書案

N1〔赤〕も Vば/イ形ければ、N2〔赤〕も 〜(ふつうの形)
① 良い点+良い点 家賃も安ければ、駅も近い。
② 悪い点+悪い点 店も少なければ、バスも少ない。
③ 両方ある 賛成の人もいれば、反対の人もいる。
〔青〕「ば」は前だけ  〔丸〕二つの「も」に同じ色

場面と発話(自作)

  • 不動産屋で、店員が部屋をさがしている留学生にアパートを勧める。このアパートは学校にも近ければ、家賃も安いですよ。
  • 引っ越しを考えている同僚が、昼休みに今の部屋の不満を話す。今の部屋は日当たりも悪ければ、駅からも遠いので、来月引っ越すつもりです。
  • クラスでふるさとを紹介する留学生が、自分の町のいいところと困るところをまとめて言う。わたしの町には、静かで住みやすいところもあれば、仕事が少なくて困るところもあります。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

町・店・アパートのカードに、良い点と悪い点の短いメモ(安い・広い・遠い・うるさい・ある/ない)を付けて配る。まず同じ印の点(良い点どうし・悪い点どうし)を二つ選んで1文にさせ、次に良い点と悪い点を一つずつ選んで「〜もあれば、〜もある」の形で言わせる。最後に「〜ので、〜」で結論を付けさせ、目標の活動の型にする。

  1. 口頭教師が一つの物についての短い2文を言い、学生が1文にまとめて言い返す。キューの例は「この店は安い。おいしい。」「部屋は狭い。駅から遠い。」「この町は川がある。森がある。」「学生は日本語ができる。英語ができる。」。全体→個人の順で回し、次に教師が「良い・良い」「悪い・悪い」「良い・悪い」の札を上げ、その札に合う点を学生に選ばせて言わせる。
  2. ペア一人が不動産屋の店員、一人が部屋をさがす留学生になる。店員はアパートのカード(良い点2つ・悪い点2つ)を持ち、客は「どんな部屋ですか」と聞く。店員は良い点を重ねて勧め、客は悪い点を聞き出して「〜も…ば、〜も…ので、ちょっと…」と答える。カードを替えて役を交替する。
  3. 産出「部屋さがしおすすめトーク」: 学生が自分の今の部屋か住みたい部屋について、良い点を重ねる文と、良い点と悪い点が両方あることを言う「〜もあれば、〜もある」の文を一つずつ作り、最後に結論(だから気に入っている/だから引っ越したい)を付けて話す。教師はば形の作り方、後ろの述語まで「ば」にしていないか、前を「は」にしていないかを聞き取り、活動のあとで板書の①②③に戻して直す。

つまずきと手当て

  • ば形を作り間違える(「*安いば」「*あるば」「*来るば」)。初級の「〜ば」の作り方に戻り、動詞は「〜ば」、イ形容詞は「〜ければ」、打ち消しは「〜なければ」を表で確かめる
  • 後ろの述語まで「ば」にする(「*駅も近ければ、家賃も安ければ」)。「ば」は前の一つだけで、後ろは文の終わりの形、と板書の色分けで示す
  • 前の「〜も」を「〜は」にしてしまう(「家賃は安ければ、駅も近い」)。これでは「もし家賃が安いなら」という条件の意味に聞こえる。並べるときは二つとも「〜も」と、二つの名詞に同じ色を付けて見せる
  • 良い点と悪い点を「ある・いる」以外の述語で並べる(「給料も高ければ、仕事もきつい」)。文法の誤りではないが、聞き手は同じ方向の話を予想するので、落ち着かない文になることが多い。対比したいときは「給料は高いですが、仕事はきついです」、両方あると言いたいときは「〜もあれば、〜もある」を勧める

既習の文型との違い

  • 〜し、…し、―/〜し、…から、―(初級Ⅰ第19課)「〜し、〜し」も特徴を重ねますが、三つ以上を並べられ、述語の品詞を気にせず普通形のまま使えます。「〜も…ば、〜も…」は二つの点をきれいに対にする形で、前の述語だけをば形にします。「〜し」の感覚で「*安いば」と普通形にそのまま「ば」をつける誤りが出やすいので、形の作り方を表で確かめます。
  • 〜ば、…(1)(初級Ⅱ第28課)初級の「〜ば」は「もし〜なら」という条件を表しました。この課の「〜も…ば、〜も…」は形は同じでも、条件ではなく並べる意味です。二つ目の「も」が来るかどうかで分かれるので、「家賃も安ければ」で文を止めて、学生に「条件か、並べるか」を予想させると違いが見えます。
関連する文型

学習項目 3 〜も…なら、〜も…

意味・はたらき学習項目 3

学習項目2と同じ並べ方で、「〜も」のあとの述語がナ形容詞や名詞のときの形です。「交通も便利なら、家賃も手ごろだ」のように良い点を重ねるのにも、「道も不便なら、店も少ない」のように悪い点を重ねるのにも使います。「なら」はナ形容詞・名詞の「だ」を条件の形にしたもの(=〜であれば)なので、別の文型ではなく、学習項目2の形が述語に合わせて変わったものと考えると覚えやすくなります。同じ名詞をくり返す「親も親なら、子も子だ」は、両方をよくないと責める決まった言い方で、ほめるときには使いません。良い点と悪い点が両方あると言いたいときは、述語を「ある・いる」にして学習項目2の「〜もあれば/〜もいれば」を使うのが自然です。

接続

「〜も」のあとの述語がナ形容詞・名詞のときに使う形(便利だ→便利なら、教師だ→教師なら)。改まった説明や書き言葉では「〜であれば」も使う。後ろの述語は品詞が違ってもよく、ふつうの形のまま

形
N1も ナ形なら、N2も 〜N1も N なら、N2も N だN1も ナ形であれば、N2も 〜N1もN1なら、N2もN2だ(両方を責める)

導入

  • 述語を替えて、形の変わり目を見せる学習項目2の文「駅も近ければ、家賃も安い」の前の述語を「交通が便利だ」に替えて、学生に言わせてみる。「*便利ければ」と言う学生が出たらそこで止め、「便利だ→便利なら」と板書する。黒板に「動詞・イ形容詞→ば/ナ形容詞・名詞→なら」の2列の表を作り、学生が出す述語を振り分けさせる。
  • 名詞ではなく述語を見る「賛成の人もいれば」「雨の日もあれば」を板書し、「〜も」の前は名詞でも、述語が「いる・ある」なので「ば」になることを確かめる。反対に「部屋も広い」「部屋もきれいだ」を並べ、同じ「部屋も」でも述語によって「ば」と「なら」に分かれることを見せて、形を選ぶときは「〜も」の直後ではなく、その述語を見る、と一言でまとめる。

板書案

「〜も」のあとの 述語 を見る
動詞・イ形容詞 → 〔赤〕ば  ナ形容詞・名詞 → 〔青〕なら
交通も便利なら、家賃も手ごろです。
父も教師なら、母も教師です。
〔丸〕きれい・有名・きらい は ナ形容詞 → なら

場面と発話(自作)

  • 旅行サイトに口コミを書いている人が、泊まったホテルをほめる。部屋もきれいなら、朝ごはんもおいしいホテルです。
  • 留学生が、クラスメートに自分の家族を紹介する。父も教師なら、母も教師なので、家ではいつも学校の話をしています。
  • 町内会の集まりで、住民が新しいごみの出し方について困っていることを話す。説明も不十分なら、出す場所も分かりにくいので、みんな困っています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

述語カード(便利だ・静かだ・有名だ・教師だ・近い・広い・ある・できる)を混ぜて配り、学生がカードを引いて「〜も…ば/なら、〜も…」の前半を作る。言う前に「ば」か「なら」かを手で示させてから言わせると、形の選び方が口より先に決まるようになる。後半は自由に続けさせ、良い点どうし・悪い点どうしのどちらになったかをペアで確かめる。

  1. 口頭教師が述語だけを言い、学生が「ば」か「なら」かを手で示してから、「〜も」をつけた前半を言う。キューの例は「便利だ」「静かだ」「近い」「ある」「有名だ」「学生だ」「きれいだ」「できる」。きれい・有名のようにイ形容詞に見えるナ形容詞は、何度か混ぜて出す。慣れたら教師が名詞と述語を同時に言い、学生が前半から後半まで1文で言う。
  2. ペア二人に述語カードの山を一つ渡す。Aがカードを2枚引いて「〜も…ば/なら、〜も…」の文を作り、Bは「ば」と「なら」が述語に合っているかを2列の表で判定する。合っていれば1点、まちがっていればBが直して1点。5回ずつで交替し、点数よりも直した文をノートに書き残させる。
  3. 産出「ホテルの口コミカード」: 旅行で泊まった所、行った店、使っている物について、ナ形容詞か名詞の述語を少なくとも一つ使って、ほめる口コミを2〜3文で書く。書いたカードを教室に貼り、ほかの学生が読んで、いちばん行きたい所に印をつける。教師は「*便利ければ」のような形の誤りと、「〜も〜なら」を責める意味で使っていないかを見て、カードの横に直しを書く。

つまずきと手当て

  • ナ形容詞・名詞に「ば」をつける(「*便利ければ」「*きれいければ」「*教師ば」)。2列の表に戻り、「きれい」「有名」のようにイ形容詞に見えるナ形容詞があることを確かめる
  • 「〜も」のすぐ前が名詞なので「なら」を選んでしまう(「賛成の人もいるなら、…」は「いるなら」の条件の意味に聞こえる)。形は述語で決まると確かめ、「賛成の人もいれば」に直させる
  • 「親も親なら、子も子だ」の形をほめる場面で使う。両方を責める決まった言い方だと、場面つきで一度だけ見せる。良い点を重ねたいときは、同じ名詞をくり返さず「〜も[ほめる言葉]なら」にする

既習の文型との違い

  • 〜なら、…(初級Ⅱ第28課)初級の「〜なら」は、相手の話を受けて「それなら〜」と条件や助言を言う形でした。この課の「〜も…なら、〜も…」は、ナ形容詞・名詞の述語を並べるための形で、条件の意味はありません。動詞に「なら」をつけて「店もあるなら、駅もある」と並べようとする学生がいますが、これでは「店があるのなら」という条件に聞こえるので、動詞なら「あれば」だと学習項目2の形に戻します。
  • 〜も…ば、〜も…(第5課)並べる意味は同じで、違うのは前の述語の品詞だけです。「〜も」の直前の名詞ではなく述語で決まるので、「部屋も広ければ」と「部屋もきれいなら」を上下に並べて見せると、同じ「部屋も」から形が分かれることがはっきりします。
関連する文型

学習項目 4 AよりBのほうが〜

意味・はたらき学習項目 4

初級で習った、二つを比べて「Bのほうが上だ」と言う形の復習です。この課では、表や資料で集めた情報を比べたあと、最後にどちらを選ぶかをはっきり言う文として使います。「AはBに比べて〜」が基準を立てて違いを説明する形なのに対して、「AよりBのほうが〜」は選んだ結果を言う形なので、説明の最後に置くと話のまとまりがよくなります。動詞どうしを比べるときは「〜するより〜するほうが」で、「ほうが」の前には「の」を入れません(「より」の前は「歩くのより」とも言えます)。打ち消しで言うときは「AはBほど〜ない」になります。

接続

N1より N2のほうが〜/Vるより Vるほうが〜(「ほうが」の前の動詞には「の」をつけない)。聞くときは「AとBと、どちらが〜ですか」

形
AよりBのほうが〜AとBと、どちらが〜ですかVるより Vるほうが〜AはBほど〜ない

導入

  • 表のまとめとして結論を言わせる学習項目1〜3で書き込んだ黒板の表を見ながら、教師が「どちらの町に住みたいですか」と聞き、学生に「この町は家賃も安ければ駅も近いので、となりの町よりこの町のほうがいいです」と、理由と結論をつなげて言わせる。初級の形なので説明は短くし、「理由の文→結論の文」の順番だけを板書で示す。

板書案

N1 より N2 のほうが 〜
Vる より Vる〔赤〕ほうが 〜(「ほうが」の前に「の」なし)
聞く: AとBと、どちらが 〜ですか
打ち消し: AはB〔青〕ほど 〜ない
理由の文(〜も…ば、〜も…ので)→ 結論の文(Bのほうがいい)

場面と発話(自作)

  • アルバイトを二つ紹介された留学生が、先輩に相談して意見をもらう。時給は夜の仕事のほうが高いけど、勉強のことを考えたら、夜より朝の仕事のほうがいいと思うよ。
  • 旅行の計画を立てていて、友達に二つの行き方の違いを説明する。バスより新幹線のほうが高いですが、2時間も早く着きます。
  • 先生に、漢字の練習をどうしているか聞かれた留学生が答える。わたしは、パソコンで打つより手で書くほうが覚えられます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

二つの物の情報を3〜4点ずつ書いた表をペアに配り、一人が「AとBと、どちらが〜ですか」と聞き、もう一人が表を見て答える。最後に表全体を見て「〜も…ば(なら)、〜も…ので、AよりBのほうが〜」と、理由つきの結論を1文で言わせ、この課の形を一つにつなげる。

  1. 口頭教師が二つの物の名前を言い、「どちらが〜ですか」と聞いて、学生が全体→個人で答える。キューの例は「バスと電車、どちらが速いですか」「朝と夜、どちらが勉強しやすいですか」「肉と魚、どちらが好きですか」「歩くのと自転車に乗るのと、どちらがいいですか」。最後の型で動詞の比べを出し、「歩くほうが」と「の」を入れない形を言わせる。
  2. ペアAとBに、それぞれ別の二つの町の表を渡す。Aは自分の表を見ないで「どちらが〜ですか」と3つ質問し、Bは表を見て答える。答えのあとで、Bはその町についてもう一つ情報を「〜も…ば(なら)、〜も…」で付け足す。役を交替し、最後に二人で「住むならどちらか」を一つ決める。
  3. 産出「住むならどっち?1分スピーチ」: 学生が二つの町(ふるさとと今の町、または候補の町二つ)について、比べる文→特徴を重ねる文→「だから、AよりBのほうが〜」の結論の順で1分話す。聞き手は結論と理由を一つずつメモし、話し手に一つ質問する。教師は結論が最後に来ているか、動詞の比べで「ほうが」の前に「の」が入っていないか、「ほど」を肯定の文で使っていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 動詞に「の」を入れる(「*歩くのほうが速い」)。名詞は「のほうが」、動詞は「ほうが」と、2行に分けて板書する
  • 「AはBほど〜ない」を肯定の文で使う(「*わたしの町は東京ほどにぎやかです」)。比べる「ほど」は打ち消しといっしょに使うと確かめ、「東京ほどにぎやかではありません」か「東京よりは静かです」に直させる
  • 三つ以上を比べるときにも「より」を重ねて言おうとして文が長くなる。三つ以上から一つを選ぶときは「〜の中で〜がいちばん」を使うと示し、この課では二つの比べに絞る

既習の文型との違い

  • 〜は…より―です(初級Ⅰ第6課)初級の「AはBより〜」はAを話題にして説明する形で、「AよりBのほうが〜」はBを選んだ結果を言う形です。どちらも同じ事実を言えますが、「どちらが〜ですか」と聞かれたときの答えは「〜のほうが」が自然です。「どちらが速いですか」に「電車はバスより速いです」と答える学生には、聞かれたことに直接答える形を示します。
  • 〜に比べて…(第5課)「〜に比べて」は基準を立てて違いの程度を説明する形、「〜のほうが」は選んだ結果を言う形です。説明の途中では「〜に比べて」、最後のまとめでは「〜のほうが」と役割を分けると、紹介の文の運びがよくなります。
関連する文型

語彙の扱い

町や国を紹介するための語(人口・気候・交通・家賃・自然・観光地など)は、単語だけで覚えさせず「家賃が安い」「交通が便利だ」のように形容詞とセットにして表の見出しに入れると、学習項目2・3の述語にそのまま使えます。新しい形容詞は、イ形容詞かナ形容詞かが「ば」と「なら」の選び方に直結するので、板書のときに品詞の印をつけておきます。数字を含む比べ(〜割・〜倍・約〜)は学習項目1でよく使うので、読み方を一度声に出して確かめます。

この課の練習で使う語(10語・意味・連語・例文)

  • 家賃(やちん) 部屋や家を借りるために、毎月払うお金です。 〜が高い・〜が安い・〜を払う
    不動産屋で、二つのアパートを比べている。
    「駅前の部屋に比べて、こちらは家賃が1万円安いです。」
  • 交通(こうつう) 電車やバスなど、人が移動するための乗り物や道のことです。 〜が便利だ・〜が不便だ・〜の便
    ふるさとの町をクラスで紹介している。
    「わたしの町は交通も便利なら、買い物もしやすいです。」
  • 便利(べんり) 使いやすくて、役に立つようすです。ナ形容詞なので、並べるときは「便利なら」になります。 交通が〜だ・〜な場所・〜になる
    友達に、新しく住む町のことを聞かれた。
    「駅にも近くて、とても便利な所ですよ。」
  • 不便(ふべん) 使いにくくて、困ることが多いようすです。「便利」の反対の意味のナ形容詞です。 交通が〜だ・〜な所・〜を感じる
    同僚に、今の部屋の不満を話している。
    「バスも少なければ、店も遠いので、ちょっと不便です。」
  • 人口(じんこう) その国や町に住んでいる人の数です。 〜が多い・〜が増える・〜が減る
    二つの町の資料を見ながら説明している。
    「この町の人口は、10年前に比べて少し減りました。」
  • 気候(きこう) その土地の、一年を通した天気のようすです。 〜が温暖だ・〜がいい・暖かい〜
    留学生が自分の国について話している。
    「わたしの国は日本に比べて気候が暖かくて、雪は降りません。」
  • 自然(しぜん) 山や川、海や森など、人が作ったのではないもののことです。 〜が豊かだ・〜が多い・〜の中で
    住みたい町の理由を聞かれた。
    「温泉もあれば、スキー場もあって、冬も楽しめる町です。」
  • 日当たり(ひあたり) 部屋や家に、日の光が入るかどうかのようすです。 〜がいい・〜が悪い
    部屋を見に来た人に、店員が説明している。
    「この部屋は日当たりもよければ、窓からの景色もいいですよ。」
  • 手ごろ(てごろ) 値段や大きさが、高すぎず、ちょうどいいようすです。ナ形容詞です。 〜な値段・値段が〜だ
    友達に、よく行く店を勧めている。
    「あの店は料理もおいしいし、値段も手ごろです。」
  • 増えます(ふえます) 数や量が、前より多くなります。 人が〜・客が〜・店が〜
    会議で、今年の数字を報告している。
    「去年に比べて、外国からの客が2割増えました。」

宿題と次のコマ

宿題は、自分のふるさと(または住んでみたい町)と今住んでいる町を比べた表を作り、それをもとに「〜に比べて」「〜も…ば/なら、〜も…」「AよりBのほうが」を一つずつ使って200字ほどの紹介文を書くこと。次のコマの最初に何人かに読ませ、ほかの学生は「ば」と「なら」の形が述語に合っているかを聞き取って確かめる。そのあと第6課の、今の状況や状態を説明する表現に進みます。

よくある質問

  • 「〜も…ば、〜も…」と「〜も…なら、〜も…」はどう使い分けますか?

    決め手は「〜も」のあとに来る述語の品詞です。動詞・イ形容詞なら「ば」(あれば・安ければ)、ナ形容詞・名詞なら「なら」(便利なら・教師なら)になります。「〜も」の直前の名詞で決まると思い込む学生が多いので、同じ「部屋も」から「広ければ」と「きれいなら」に分かれる例を並べて見せます。

  • 「〜に比べて」と「〜より」の違いは何ですか?

    どちらもBを基準にしてAの程度を言う点は同じです。「〜に比べて」は基準を文の前に出しやすく、数字や資料を示しながら説明するとき、昔と今の変化を言うときに向きます。二つを選んだ結果を言うときは「AよりBのほうが」が自然なので、この課では説明は「に比べて」、結論は「のほうが」と分けて練習させます。

  • 良い点と悪い点を「〜も…ば、〜も…」で並べてもいいですか?

    「〜もあれば、〜もある」「〜もいれば、〜もいる」の形なら、良いことと悪いこと、賛成と反対が両方あると自然に言えます。それ以外の述語で良い点と悪い点を並べると、聞き手が同じ方向の話を予想するので落ち着かない文になりがちです。対比を言いたいときは「〜は…ですが、〜は…」を勧めます。

  • この課は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目で導入の表と学習項目1・2、2コマ目で学習項目3・4と町の紹介の活動を行います。学習項目4は初級の復習なので短くし、そのぶん目標の活動に40分ほど取ると、比べる・並べる・結論を言うを一つの話にまとめる練習ができます。

  • 板書はどう組めばいいですか?

    黒板の左に導入で作った二つの町の表を課の最後まで残し、右に各学習項目の形を書いていきます。学習項目3では「ば」と「なら」の2列の表を作り、学生が出した述語をその場で振り分けて書き足します。まとめでは、活動で使われた述語をこの2列に足して、形の選び方を確かめます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。