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学ぼう!にほんご 中級 第36課「「分からないので教えてください」と言うべきなのである」の教案

『学ぼう!にほんご 中級』

相手のしていることに注意したり、これからどうすればいいかを忠告したりして、相手に納得してもらう、つまり説得するための課です。並ぶ5つの形は、どれも「こうするのがよい/こうしてはいけない」を言いますが、何を根拠に言うかが違います。「〜ものだ」は世の中の常識・本来の性質として、「〜べきだ/べきではない」は話し手の判断として、「〜ことだ」はその人のその状況への具体的な助言として、「〜というものだ」は目の前のことを「それこそが〜だ」と評価する形として、「〜てはならない」は規則や教えとしての強い禁止として言います。どれも初級の「〜たほうがいい」「〜てはいけない」より強く、目上の人に直接言うと押しつけがましくなるので、強さの段を板書に残し、「誰に・どの場面で」を毎回確かめさせます。最後は、常識(ものだ)→判断(べきだ)→具体的な助言(ことだ)の順で話を組み立てる説得のロールプレイでまとめると、課の目標がそのまま練習になります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目5時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜ものだ/ものではない」で、世の中の常識や本来の性質を根拠にして、やわらかく注意できる。回想(よく〜したものだ)・感慨(早いものだ)の「ものだ」も聞いて分かる
  • 「〜べきだ/べきではない」で自分の判断としての忠告を言い、目上の人に直接言うと強すぎることを知って、「〜たほうがいいと思います」などに言い換えられる
  • 「〜ことだ」で、困っている友達や後輩に「いちばん大切なのは〜することだ」と具体的に助言でき、「〜というものだ」で相手の行動をはっきり評価して説得の決め手にできる
  • 「〜てはならない」を規則・注意書き・教えの文で読み取り、会話の「〜てはいけない」「〜ちゃだめ」との硬さの違いを使い分けられる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)15分「アルバイトの後輩が、分からないことがあっても質問しないで自分で決めてしまい、よく失敗します。あなたは先輩です。何と言いますか」と聞き、学生の答えを黒板に集める。「質問したほうがいいよ」「質問してください」などの初級の形が出たところで、この課では、もっとはっきり、理由を持って注意・忠告する形を5つ学ぶ、と予告する。黒板の端に強さの段(やわらかい ↔ 強い)の矢印を書いておく
学習項目1 〜ものだ40分ことわざの意味を説明する文や「人はだれでも間違えるものだ」のような一般論で、「本来そういうものだ」という意味を入れる。次に「目上の人には自分からあいさつするものだ」で、常識を根拠にした注意の使い方へ広げ、否定は「〜ものではない」だと押さえる。回想と感慨は最後に短く聞かせる
学習項目2 〜べきだ/べきではない40分「〜ものだ(みんなの常識)」と「〜べきだ(わたしの判断)」を並べて違いを確かめる。「する → するべき/すべき」「〜べきではない」の形、「〜べきだった」の後悔を練習し、目上の人には直接言わないことを確かめる
学習項目3 〜ことだ35分「〜たいなら、〜ことだ」の形で、困っている人への具体的な助言として導入する。「〜たほうがいい」と比べて、ほかの選択肢を考えない「これがいちばん」の言い方であること、目上の人には使わないことを押さえる
学習項目4 〜というものだ35分相手の行動や考えに対して「それは〜というものだ」「それこそ〜というものだ」と評価する形を入れる。「〜ものだ」は一般論、「〜というものだ」は目の前のことの評価、と2行で並べて区別する
学習項目5 〜てはならない30分施設の注意書きや規則の文で、強い禁止を読み取らせる。会話の「〜てはいけない」「〜ちゃだめ」と硬さを比べ、第23課の「〜てならない」と形が似ていることも確かめる
強さの段の整理と目標の活動(説得のロールプレイ)55分導入の矢印に5つの形と初級の形(〜たほうがいい・〜てはいけない)を置き直す。そのあと2人1組で、先輩と後輩、友達どうしなどの役で、「常識(〜ものだ)→ 判断(〜べきだ)→ 具体的な助言(〜ことだ)」の順に説得する。相手が目上になったら、どの形をどう言い換えるかも考えさせる。1コマ目は学習項目1・2、2コマ目は学習項目3〜5、3コマ目はこの活動とまとめに当てる
まとめ20分黒板の段に、それぞれの形の「根拠」(常識・判断・助言・評価・規則)と「目上の人に使えるか」を書き足して一覧にして残す

学習項目 1 〜ものだ

意味・はたらき学習項目 1

この課で中心になるのは、本来そういうものだ、一般的にそうなるのが当然だという意味の「〜ものだ」です。「人はだれでも間違えるものだ」「子どもは外で遊びたがるものだ」のように、個人の意見ではなく、世の中の常識や物事の性質として言います。ことわざや格言の意味を説明する文(「『急がば回れ』とは、急ぐときほど安全な道を選んだほうが結局早く着くものだ、という意味だ」)にもよく出てきます。この性質の意味から、「目上の人には自分からあいさつするものだ」のように、常識を根拠にした注意・忠告にもなり、否定は「〜ものではない(=常識としてしないことだ)」です。ほかに、「Vた+ものだ」で昔よくしたことを懐かしく思い出す回想(「子どものころは、よく川で泳いだものだ」)、「時間がたつのは早いものだ」「よく一人でここまで来たものだ」のようなしみじみとした感慨・驚きの使い方もあります。話し言葉では「もんだ」になることもあります。

接続

Vる/Vない/い形い/な形な+ものだ(性質・当然・忠告)。否定の忠告は「Vる+ものではない」。回想は「Vた+ものだ」。話し言葉では「〜もんだ」

形
Vる ものだ/Vない ものだ(人は失敗から学ぶものだ・人は自分の欠点には気づかないものだ)Vる ものではない(人の悪口を言うものではない)(よく)Vた ものだ(学生のころは、よく徹夜したものだ)〜とは、〜ものだ、という意味だ(ことわざの説明)

導入

  • ことわざの意味を説明させる「失敗は成功のもと」「急がば回れ」などのことわざを板書し、どういう意味かを学生に考えさせる。教師が「『失敗は成功のもと』とは、失敗から学べば次はうまくいくものだ、という意味です」と説明し、「これは田中さん一人の話ですか、みんなの話ですか」と聞いて、「だれにでも当てはまる、本来そういうもの」の意味を引き出す。続けて、学生の国のことわざを一つずつ「〜とは、〜ものだ、という意味です」で説明させる。
  • 常識から注意へ「人はだれでも間違えるものだ」の下に「目上の人には自分からあいさつするものだ」を書き、「これはだれかの意見ですか、日本の常識ですか」と聞く。常識を根拠にすると、相手を直接責めずに注意できることを確かめ、否定の「人の悪口を言うものではない」を足す。最後に、回想の「よく〜したものだ」を教師の思い出話で短く聞かせ、形は似ていても意味が違うと一言添える。

板書案

〔左〕人は だれでも 間違える ものだ。 =本来そういうもの(一般論)
〔中〕目上の人には 自分から あいさつする ものだ。 → 常識を根拠にした注意
〔中・下〕人の悪口を 言う ものではない。 〔赤丸〕否定は「ものではない」
〔右・小さく〕学生のころは、よく 徹夜した ものだ。 (回想・Vた)
〔赤〕「ものではない」=しないのが常識 / 「〜ないものだ」=しないのが本来の性質 を2行で並べる
黒板の端:強さの段の矢印(やわらかい ↔ 強い)の左寄りに「〜ものだ」

場面と発話(自作)

  • 試験で失敗して落ち込んでいる留学生に、日本語学校の先生が声をかける。最初からうまくいく人なんていませんよ。人はだれでも間違えるものです。
  • 新入社員が、取引先の人より先にエレベーターに乗ろうとした。あとで先輩が小声で教える。お客様がいるときは、先に乗っていただくものだよ。
  • 同窓会で、昔通った学校の近くの店に入った会社員が、友達と話す。学生のころは、この店で毎日のようにラーメンを食べたものだね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

ことわざや「人は〜」「子どもは〜」で始まるカードを引かせ、「〜ものだ」で一般論を言わせる。次に、マナーの場面のカード(電車の中・お見舞い・目上の人との食事)を見せて、「〜ものだ/〜ものではない」で後輩に注意する一文を作らせ、「だれの意見か」「常識か」をクラスで確かめる。

  1. 口頭教師が主語のカードを見せ、学生が「〜ものだ」で一般論を言う。キューは「人は(失敗から学ぶ)」「子どもは(すぐ大きくなる)」「時間は(すぐたつ)」「お年寄りは(早く起きる)」の4つ。全体で言わせてから個人に当てる。次にマナーの絵カード(電車の中で大きな声で話す・お見舞いで長くいる・食事の席でスマートフォンを見る)を見せ、全員で「〜ものではない」に言い換える。言えた文には「一般論」か「注意」かを手で示させ、否定の位置を確かめる。
  2. ペアAは日本に来たばかりの留学生、Bは同じ寮の先輩。Aだけが持つカードに「迷った場面」(ごみの日を知らない・夜遅くに洗濯機を回す・借りた傘を返していない)が書いてあり、Aが状況を説明する。Bは「〜ものだよ」「〜ものではないよ」でやわらかく注意し、Aは「そうなんですか。知りませんでした」で受ける。3場面ごとに役を交替する。教師は回って、Bの文が常識として言えているか(個人の好みになっていないか)を聞く。
  3. 産出「わたしの国の常識クイズ」。学生が自分の国の常識を一つ「〜ものだ/〜ものではない」で言い、ほかの学生は日本でも同じかどうかを当てる。最後に、子どものころによくしたことを「よく〜たものだ」で一文ずつ言わせる。教師が見て直すのは、否定の位置(〜ものではない/〜ないものだ)の取り違えと、回想を一回の出来事に使っていないかの2点。

つまずきと手当て

  • 「〜ものではない」と「〜ないものだ」を取り違える。「人の悪口を言うものではない」は「言ってはいけない」という忠告、「人は自分の欠点に気づかないものだ」は「気づかないのが本来の性質だ」という一般論。否定の位置で意味が変わることを2行で並べて確かめる
  • 回想の「Vた+ものだ」を、一回だけの出来事に使う(「去年の夏、一度だけ海で泳いだものだ」)。誤りとまでは言えないが不自然。回想の「ものだ」は、昔くり返していたこと・習慣を懐かしむときに使い、一回の出来事は「泳いだことがある」「泳いだ」で言う
  • 特定の相手のことを、常識の形で強く言いすぎる。「〜ものだ」は「みんな知っている常識なのに、あなたは知らないのか」という響きになり、説教のように聞こえることがある。親しい後輩や子どもへの注意にとどめ、目上の人には使わない
  • 第4課の理由の「〜ものだから」と混ぜる。「遅れたものですから」は言い訳の理由で、この課の「ものだ」とは別の形だと確かめる

既習の文型との違い

  • 〜ものだから(初中級 第4課)「〜ものだから」は「遅れたものですから」のように、自分の事情を理由として言うときの形で、言い訳の響きがあります。この課の「〜ものだ」は文の終わりに置き、だれにでも当てはまる性質や常識を言います。学習者が「人は失敗するものだから」で文を終えたら、理由の形になっているので後ろに続く文が要ると確かめます。
  • 〜ほうがいい(初中級 第14課)「早く寝たほうがいいよ」は話し手のすすめで、相手のその日の状況に合わせた言い方です。「早く寝るものだ」は常識として言うので、相手が知らないのはおかしい、という響きが出ます。学習者が友達に「休むものだよ」と言って説教くさくなったら、「ほうがいい」との違いを場面で確かめます。
関連する文型

学習項目 2 〜べきだ/べきではない

意味・はたらき学習項目 2

「そうするのが正しい・当然だ」という話し手の判断を表します。否定の「〜べきではない」は「そうするのは正しくない」です。「〜ものだ」が世の中の常識を根拠にするのに対し、「〜べきだ」は「わたしはこう考える」という主張なので、意見文・討論・説得の中心になる形です。過去の「〜べきだった」は、すればよかったのにしなかったことへの後悔や、相手への批判を表します(「もっと早く相談するべきだった」)。強い言い方なので、目上の人に直接「〜べきです」と言うと、命令や批判のように聞こえて失礼になることがあります。目上の人には「〜たほうがいいのではないでしょうか」などに言い換えます。「守るべきルール」「読むべき本」のように名詞の前にも置けます。

接続

Vる(辞書形)+べきだ(する → するべきだ/すべきだ)。否定は「Vる+べきではない」。い形は「〜くあるべきだ」、な形・Nは「〜であるべきだ」。丁寧には「〜べきです」「〜べきではありません」

形
Vる べきだ/べきではない(謝るべきだ・遅刻するべきではない)する → すべきだ(作文や改まった話で多い)Vる べきだった(後悔・批判)Vる べき N(守るべきルール・今すべきこと)

導入

  • 「みんなの常識」と「わたしの判断」学習項目1の「人の物を借りたら、返すものだ」の下に「借りた本は、きょう中に返すべきだ」を書き、「みんなの常識はどちらですか」「話している人が自分の考えとして言っているのはどちらですか」と聞く。「〜べきだ」は「わたしはこう考える」という主張だと確かめ、「わたしは、〜べきだと思います」の形で意見を言わせる。
  • 強さを体で感じる同じ内容を「質問したほうがいいよ」「質問するべきだよ」「質問しなさい」の3つで、教師が後輩役の学生に言ってみせ、どれがいちばん強いかを聞く。次に、相手を部長にして「部長、もっと早く決めるべきです」と言ってみせ、学生の反応を見て、目上の人には直接使わないことを確かめる。

板書案

Vる + べきだ / Vる + べきではない (する → するべき/すべき)
〔左〕借りた物は 返す ものだ。(みんなの常識) 〔右〕借りた本は きょう中に 返す べきだ。(わたしの判断)
〔赤×〕言わないべきだ → 〔赤丸〕言うべきではない
もっと早く 聞く べきだった。 =後悔
い形→〜くあるべきだ な形・N→〜であるべきだ
〔青〕目上の人には → 〜たほうがいいのではないでしょうか

場面と発話(自作)

  • ゼミの討論で、大学の食堂でのプラスチックの使い方について意見を言う。わたしは、使い捨てのスプーンは使うべきではないと考えます。
  • 約束の時間を守らずに友達とけんかした留学生が、ルームメイトに相談する。やっぱり、言い訳しないで、まず遅れたことを謝るべきだよね。
  • 大事な書類の提出期限に遅れてしまった会社員が、家で反省する。分からないところがあったなら、もっと早く先輩に聞くべきだった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「大学生はアルバイトをするべきか」「子どもにスマートフォンを持たせるべきか」のような問いのカードを引かせ、「わたしは〜べきだ/べきではないと思います。なぜなら〜」で意見を言わせる。次に、失敗の場面のカードを見せて「〜べきだった」で後悔を言わせ、最後に同じ忠告を目上の人に言う形(「〜たほうがいいのではないでしょうか」)に言い換えさせる。

  1. 口頭教師が動詞のカードを見せ、学生が「〜べきだ」「〜べきではない」の両方で言う。キューは「謝る」「約束を守る」「遅刻する」「うそをつく」「説明する」の5つ。「説明する」は「説明すべきだ」の形も言わせる。次に失敗の絵カード(傘を忘れた・寝坊した・書類を出し忘れた)で「〜べきだった」を全体→個人で。否定は「べき」のあとに付く、と言うたびに板書の赤丸を指す。
  2. ペア討論の練習。2人に同じ問いのカード(大学生はアルバイトをするべきか・電車の中で電話をするべきではないか・子どもにスマートフォンを持たせるべきか)を配り、Aは賛成、Bは反対の役で「わたしは〜べきだと思います。なぜなら〜」を言い合う。1問ごとに役を交替する。言い終わったら、相手が部長だったらどう言うかを2人で考え、「〜たほうがいいのではないでしょうか」の形に直す。
  3. 産出「1分間の意見スピーチ」。クラスの身近なテーマ(教室でのスマートフォン・宿題の量・寮の門限)から一つ選び、「〜べきだ/べきではない」を2回以上入れて1分で話す。聞いた学生は「話し手の判断」と「理由」を一つずつメモして言う。教師が見て直すのは、否定の形(*〜ないべきだ)、決まりを「べきだ」で言っていないか、目上の人の話になったときの言い換えの3点。

つまずきと手当て

  • 否定を「*言わないべきだ」と作る。否定は「べき」のあとに付けて「言うべきではない」にする、と板書で形を固定する
  • い形容詞・名詞にそのまま付ける(「*教師は優しいべきだ」)。「優しくあるべきだ」「公平であるべきだ」の形にする。ただ、会話では「優しくなければならない」などのほうが自然なことも多い
  • 目上の人に「先生は、もっと宿題を減らすべきです」のように直接言う。文法は正しいが、批判や命令に聞こえて失礼になる。「〜ていただけると助かります」「〜たほうがいいのではないでしょうか」に言い換えさせる
  • 法律や規則で決まっていることを「〜べきだ」で言う。「パスポートを持っているべきだ」は「わたしはそう思う」という意見に聞こえる。決まりなら「持っていなければならない」と言う、と根拠の違いで整理する

既習の文型との違い

  • 〜なければなりません(初級Ⅰ 第12課)「〜なければなりません」は規則や事情で決まっていて、するしかないことを言います。「〜べきだ」は話し手が正しいと考える判断で、決まりがなくても使います。学習者が「ビザを更新するべきです」と言ったら、決まりなら「更新しなければなりません」だと根拠の違いで直します。
  • 〜ほうがいい(初中級 第14課)「〜たほうがいい」は相手のためのすすめで、断る余地が残ります。「〜べきだ」は正しさを主張する言い方なので、ずっと強く、相手に反論しにくくさせます。同じ忠告を両方で言わせ、相手が友達か先生かで選ばせると違いがはっきりします。
関連する文型

学習項目 3 〜ことだ

意味・はたらき学習項目 3

相手の状況を考えて、「〜するのがいちばんいい・いちばん大切だ」と具体的に助言する形です。「日本語が上手になりたいなら、日本人と話す機会を増やすことだ」のように、「〜たいなら」「〜たければ」などの条件と一緒によく使います。「〜たほうがいい」がほかのやり方と比べてすすめるのに対し、「〜ことだ」はほかの選択肢を考えず「これをしなさい」と言い切るので、話し手が経験や知識のある立場から言う響きがあります。そのため、先生から学生、先輩から後輩、親から子どものように上の立場から使うのが自然で、目上の人には使えません。否定は「〜ないことだ(=〜しないのがいちばんだ)」です。「〜ものだ」が世の中のだれにでも当てはまる常識を言うのに対し、「〜ことだ」は目の前のその人のその状況への助言です。

接続

Vる(辞書形)/Vない+ことだ(丁寧には「〜ことです」。目上の人には使わない)

形
Vる ことだ(よく寝ることだ)Vない ことだ(無理をしないことだ)〜たいなら/〜たければ、Vる ことだいちばん大切なのは、Vる ことだ

導入

  • 経験者の助言として教師が「日本語の発音をよくしたい、という学生がいました。わたしは一つだけ言いました。毎日、声に出して読むことです」と話し、「先生はいくつのやり方をすすめましたか」と聞く。「一つだけ、これがいちばん」という意味を確かめ、「〜たいなら、〜ことだ」の形を板書する。
  • 「ほうがいい」と並べる「熱があるなら、休んだほうがいいよ」と「熱があるなら、とにかく休むことだ」を並べ、どちらが強いか、どちらが先生や親の言い方らしいかを聞く。そのあと「部長、休むことです」と言ってみせ、目上の人には使えないことを確かめる。

板書案

〜たいなら/〜たければ、 Vる + ことだ / Vない + ことだ
発音を よくしたいなら、 毎日 声に出して 読む ことだ。
〔左〕休んだ ほうがいいよ。(すすめ・ほかの方法もある) 〔右〕とにかく 休む ことだ。(これがいちばん)
〔青矢印〕先生→学生 先輩→後輩 親→子ども 〔赤×〕学生→先生
〔赤〕心配しない ことだ(助言) ≠ 心配する ことはない(必要がない)

場面と発話(自作)

  • 面接で緊張してしまうと悩んでいる後輩に、就職したばかりの先輩が話す。緊張しないようにするには、何度も練習しておくことだね。
  • 引っ越してきたばかりで、ごみの出し方が分からず困っている留学生に、アパートの大家さんが言う。分からないときは、一人で決めないで、まずだれかに聞くことですよ。
  • スマートフォンを見すぎて夜眠れないという大学生に、保健室の先生が助言する。よく眠りたければ、寝る一時間前には画面を見ないことです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

悩みのカード(漢字が覚えられない・アルバイトが忙しくて疲れる・日本人の友達ができない)を一人が読み、ほかの学生が先輩の立場で「〜たいなら/〜たければ、〜ことだ」と助言する。助言が出たら、悩んだ学生は「〜たほうがいいですか」と聞き返し、「ほうがいい」との強さの違いを会話の中で確かめる。

  1. 口頭教師が悩みを言い、学生が全体で「〜ことだ」の助言を返す。キューは「漢字が覚えられない(毎日少しずつ書く)」「かぜをひいた(よく寝る)」「お金がない(むだな物を買わない)」「日本人の友達がほしい(サークルに入る)」の4つ。かっこの語はカードで見せ、慣れたら隠して自分で考えさせる。2回目は「〜たいなら」を前に付けて言わせ、否定の「〜ないことだ」も個人に当てる。
  2. ペアAは悩んでいる後輩、Bは経験のある先輩。Aは悩みのカードを読み、Bは「〜たいなら、〜ことだね」と一つだけ助言する。Aは「〜たほうがいいですか」と聞き返し、Bは「うん、いちばん大切なのは〜ことだよ」と言い直す。悩みを3つ回したら役を交替する。最後に、Aを課長に変えたらBは何と言うかを2人で考え、「〜たほうがいいと思います」に直す。
  3. 産出「先輩からの一言カード」。来年この学校に入る学生に向けて、自分の経験から助言を3つ、「〜たいなら、〜ことだ」「〜ないことだ」でカードに書き、クラスで発表して壁にはる。教師が見て直すのは、名詞にする「こと」(趣味は〜ことだ)と混ざっていないか、条件の部分と助言がつながっているか、相手が目上になっていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 目上の人に使う(「先生、少し休むことです」)。文法は正しいが、上から指示する言い方になって失礼。目上の人には「少しお休みになったほうがいいと思います」にする
  • 名詞にする「こと」と混ぜる。「わたしの趣味は写真をとることだ」は「こと」で名詞にしているだけで、助言ではない。助言の「ことだ」は相手に向けて言い、「〜たいなら」などの条件と一緒に出ることが多い、と形で見分けさせる
  • 「〜ないことだ」と、第14課・第32課の「〜ことはない」を取り違える。「心配しないことだ」は「心配しないのがいちばんだ」という助言、「心配することはない」は「心配する必要はない」という励まし
  • 感嘆の「ことだ」(「うらやましいことだ」「ありがたいことだ」)を助言と取る。形容詞の前に来る「ことだ」は気持ちを言う別の使い方だと一言添える

既習の文型との違い

  • 〜ほうがいい(初中級 第14課)「〜たほうがいい」はほかの方法と比べて「こちらがいい」とすすめる形で、相手が目上でも「〜たほうがいいと思います」にすれば使えます。「〜ことだ」はほかの方法を考えず一つに決めて言い切るので、経験のある人が下の立場の人に言う形です。学習者が先生に「休むことです」と言ったら、「ほうがいい」に戻させます。
  • 〜ことはない(中級 第32課)「〜ことはない」は「する必要はない」と相手を楽にさせる言い方です。「〜ないことだ」は「しないのがいちばんだ」と行動を決める助言です。「心配することはない」と「心配しないことだ」を並べ、どちらが励ましでどちらが指示かを聞いて確かめます。
関連する文型

学習項目 4 〜というものだ

意味・はたらき学習項目 4

目の前の出来事や相手の行動・考えについて、「それこそが〜だ、それはまさに〜にあたる」と、話し手がはっきり評価・断定する形です。「せっかく来てくれたのに、すぐ帰すのは失礼というものだ」「困ったときに助け合うのが、本当の友達というものだ」のように、「それは〜というものだ」「それこそ〜というものだ」「〜のが〜というものだ」の形で使います。「〜ものだ」が一般的な性質を言うのに対し、「〜というものだ」はこの件をある言葉で言い当てて評価するので、説得の最後に「だから、それはやめたほうがいい(するべきだ)」と結論を後押しする決め手になります。「無理」「わがまま」「失礼」「ぜいたく」のような悪い評価にも、「本当の友情」「プロ」のようなよい評価にも使いますが、相手の行動を悪く言うときはかなり強い非難になります。否定の「〜というものではない」は「必ずしも〜とは言えない」という別の意味です(「高ければよいというものではない」)。

接続

普通形+というものだ(N・な形は「だ」を付けずに「Nというものだ」「な形というものだ」の形がふつう)。丁寧には「〜というものです」

形
それは N というものだ(それは無理というものだ・それは失礼というものだ)それこそ N というものだ〜のが N というものだ(約束を守るのがプロというものだ)〜ば〜というものではない(必ずしもそうとは言えない)

導入

  • 行動を一言で言い当てる教師が「友達が、試験の前の日になって『ノートを全部写させて』と言ってきました。しかも、お礼も言いません」と話し、「この友達のしていることを一言で言うと?」と聞く。「わがまま」「失礼」などの答えを受けて、「それは、わがままというものです」と板書し、目の前のことを言葉で言い当てて評価する形だと確かめる。
  • 「ものだ」と2行で比べる「人は自分のことを先に考えるものだ」と「お礼も言わないのは、わがままというものだ」を並べ、「みんなの一般論はどちらですか」「この友達一人のことを評価しているのはどちらですか」と聞いて区別する。最後に、説得の流れ(「それは〜というものだ。だから〜べきだ」)を板書して、次の活動につなぐ。

板書案

それは/それこそ N + というものだ (Nには「だ」を付けないのがふつう)
お礼も 言わないのは、 わがまま というものだ。
〔左〕人は 自分のことを 先に考える ものだ。(人は〜=一般論) 〔右〕それは わがまま というものだ。(それは〜=この件の評価)
評価の言葉:無理・わがまま・失礼・ぜいたく / 本当の友情・プロ・責任感
〔赤〕〜ば いい というものではない =必ずしもそうではない
説得の流れ:それは〜というものだ。 → だから、〜べきだ。

場面と発話(自作)

  • 一週間で日本語の新聞がすらすら読めるようになりたい、と言う新しい留学生に、先輩が言う。一週間でなんて、それは無理というものだよ。少しずつ慣れていけばいい。
  • 引っ越しを手伝ってくれた友達に、お礼の食事をごちそうしようとしたら「いいよ」と断られた。手伝ってもらってお礼もしないなんて、それこそ失礼というものだよ。
  • スポーツの指導者が、試合に負けても相手チームに拍手をした選手について、取材で話す。勝っても負けても相手をたたえる。それが本当のスポーツマンというものです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

行動のカード(借りた物を返さない・約束の時間に毎回遅れる・失敗した友達を励ます・一日で漢字を百覚えようとする)を引かせ、「それは〜というものだ」で一言評価させる。評価に使える言葉(無理・わがまま・失礼・ぜいたく・本当の友情・責任感)を板書しておき、言えたら「だから、〜べきだ/〜ことだ」を一文足して説得の形にさせる。

  1. 口頭教師が行動を一文で言い、学生が評価の言葉を選んで「それは〜というものだ」と返す。キューは「一日で漢字を百覚える(無理)」「人のノートを黙って使う(失礼)」「毎日タクシーで学校に来る(ぜいたく)」「試合に負けた相手に拍手する(スポーツマン)」の4つ。評価の言葉は板書から選ばせ、慣れたら自分で考えさせる。続けて「高ければいい」「長く勉強すればいい」を言い、全体で「〜というものではない」を付けさせる。
  2. ペアAは困ったことをしようとしている友達の役で、行動のカード(試験の前の日に徹夜する・借りたお金を返さないで旅行に行く・かぜなのにアルバイトに行く)の内容を「〜しようと思っているんだ」と言う。Bは「それは〜というものだよ」で評価し、「だから〜べきだよ」を一文足して止める。Aは一度だけ反論してよい。カード2枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「一言で言うと?」。教師が「それは本当の〜というものだ」で終わる短い話を3つ聞かせ、学生は自分の経験から同じ形で終わる話を3〜4文で書いて読む。聞いた学生は、評価の言葉がよい評価か悪い評価かを言う。教師が見て直すのは、名詞のあとの「だ」の有無、「〜ものだ」との混同(主語が「人は」か「それは」か)、相手が目上の場面で使っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 「〜ものだ」と区別できない。「〜ものだ」は「人は〜ものだ」のようにだれにでも当てはまる性質、「〜というものだ」は「それは〜というものだ」のように目の前のこの件の評価。主語が「人は」か「それは」かで見分けさせる
  • 名詞のあとに「だ」を入れて「無理だというものだ」と言う。誤りとまでは言いにくいが、「無理というものだ」のように「だ」を付けない形がふつうだと、板書で形を固定する
  • 否定の「〜というものではない」を「〜ではない」の強い否定と取る。「高ければいいというものではない」は「高くてもよくないことがある(必ずしもそうではない)」という意味だと、例を足して確かめる
  • 目上の人の行動に使う(「課長、それはわがままというものです」)。相手の行動を言葉で決めつける強い評価なので、目上の人や初めて会う人には使わない

既習の文型との違い

  • 〜ものだ(この課 学習項目1)「〜ものだ」は「人は〜ものだ」のように、だれにでも当てはまる性質を言います。「〜というものだ」は「それは〜というものだ」のように、目の前のこの件を一つの言葉で言い当てます。学習者が「*お礼を言わないのはわがままものだ」のように混ぜたら、「という」の有無と主語の違いに戻させます。
  • 〜こそ(中級 第21課)「〜こそ」は「これこそ」「今こそ」のように、ほかではなくこれだ、と一つを強く取り立てます。「それこそ失礼というものだ」は「こそ」と「というものだ」が重なった形で、評価をいっそう強めます。「こそ」だけでは評価の言葉が出ないので、「〜というものだ」で言葉を言い当てる働きを分けて見せます。
関連する文型

学習項目 5 〜てはならない

意味・はたらき学習項目 5

「〜てはいけない」と同じく禁止を表しますが、ずっと硬く強い言い方です。法律・規則・施設の注意書き・試験の注意・スポーツのルール、また親や先生が大切な教えとして言う言葉、演説や文章で多く使われます(「試験中は、隣の人と話してはならない」「人の命を軽く考えてはならない」)。個人のその場の気持ちで止めるというより、社会や組織の決まり、守るべき教えとして「決してしてはいけない」と言う響きがあります。日常の会話でふつうに使うと大げさで硬く聞こえるので、会話では「〜てはいけない」「〜ちゃだめ」を使います。この課の中ではいちばん強い禁止で、「〜べきではない(わたしの判断)」「〜ものではない(常識)」より上の段に置けます。

接続

Vて(て形)+はならない(丁寧には「〜てはなりません」。会話のくだけた形は「〜てはいけない」「〜ちゃいけない」「〜ちゃだめ」)

形
Vて はならない(走ってはならない・持ち込んではならない)Vて はなりません(改まった注意・教え)決して Vて はならないVて はならない N(してはならないこと・言ってはならない言葉)

導入

  • 注意書きを読むプール・図書館・試験会場の注意書きを教師が作って配り、「〜てはならない」を探させる。「この文はだれが書きましたか」「友達に言うときは何と言いますか」と聞き、規則や施設が書く硬い禁止で、会話では「〜てはいけない」「〜ちゃだめ」になると整理する。
  • 強さの段に置く「人の悪口を言うものではない」「人の悪口を言うべきではない」「人の悪口を言ってはならない」を並べ、根拠(常識・わたしの判断・決まりや教え)と強さを聞く。導入の矢印のいちばん強い端に「〜てはならない」を置き、第23課の「心配でならない」と形が似ているが、「は」があるかないかで意味がまったく違うことも板書する。

板書案

Vて + はならない (丁寧:〜てはなりません)
試験中は、 隣の人と 話しては ならない。
〔強さの段〕〜ないほうがいい < 〜ものではない(常識) < 〜べきではない(判断) < 〜てはならない(決まり・教え)
〔会話〕〜てはいけない / 〜ちゃだめ
〔赤〕心配で ならない(気持ちが強い) ≠ 心配させては ならない(禁止) →「は」に赤丸
〔赤〕書いては ならない(書くな) ⇔ 書かなくては ならない(書く必要がある)

場面と発話(自作)

  • 市民プールの入り口に、注意書きがはってある。プールサイドを走ってはならない。飛び込みは禁止。
  • 工場の新人研修で、安全担当の社員が最初に話す。機械が動いているときは、決して中に手を入れてはなりません。
  • スピーチ大会で、ある留学生が祖父の教えを紹介する。祖父はいつも「困っている人を見て、知らないふりをしてはならない」と言っていました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

場所のカード(図書館・試験会場・病院・工場)を引かせ、注意書きの一文を「〜てはならない」で書かせる。次に、同じ内容を友達に言う会話に直させ(「〜ちゃだめだよ」)、硬さの違いを声に出して確かめる。最後に、自分の家族や国の教えを一つ「〜てはならない」で紹介させる。

  1. 口頭教師が場所と行動の絵カードを見せ、学生が注意書きの文として「〜てはならない」で言う。キューは「図書館・飲食する」「試験会場・辞書を使う」「病院・大声で話す」「工場・機械にさわる」の4つ。言えたら同じ内容を友達に言う形「〜ちゃだめだよ」に全体で言い換えさせる。最後に「書いてはならない」「書かなくてはならない」を交互に言い、意味が反対になることを口で確かめる。
  2. ペアAは施設の係の人、Bは利用者の役。Aは自分の施設の注意書きのカード(3つの規則が「〜てはならない」で書いてある)を持ち、Bの質問「ここで〜てもいいですか」に「申し訳ありませんが、〜てはならないことになっています」で答える。Bは理由を一つ聞く。施設を替えて役を交替する。教師は、Aが利用者に向かって直接「〜てはなりません」と言い切っていないかを見る。
  3. 産出「わが家の教え」スピーチ。家族や国の人から言われてきた大切な教えを一つ「〜てはならない」で紹介し、なぜ大切だと思うかを2〜3文で続ける。あわせて、クラスのルールを3つ「〜てはならない」で書いて教室にはる。教師が見て直すのは、「てならない」「なくてはならない」との取り違えと、会話の中で使って大げさになっていないかの2点。

つまずきと手当て

  • 第23課の「〜てならない」と取り違える。「心配でならない」は気持ちがとても強いこと、「心配させてはならない」は禁止。「は」があれば禁止、と板書の赤字で確かめる
  • 「〜なくてはならない」と取り違える。「書いてはならない」は「書くな」、「書かなくてはならない」は「書く必要がある」で、意味が反対になる。「ない」が前に付いているかを見て選ばせる
  • 友達とのくだけた会話で使って、大げさに聞こえる。誤りではないが、会話では「〜ちゃだめだよ」「〜ないほうがいいよ」が自然なことが多い
  • 目上の人に直接言う(「部長、その書類を捨ててはなりません」)。規則を読み上げるような強い禁止になり、命令に聞こえる。「捨てないでいただけますか」などに言い換える

既習の文型との違い

  • 〜てはいけません(初級Ⅰ 第13課)意味はどちらも禁止ですが、「〜てはいけません」は会話で相手に直接言う形、「〜てはならない」は規則・注意書き・教えなど書き言葉や改まった話の形です。学習者が友達に「ここでたばこを吸ってはならない」と言ったら、誤りではないが大げさだと伝え、「吸っちゃだめだよ」に直します。
  • 〜てならない(中級 第23課)「〜てならない」は「心配でならない」「残念でならない」のように、気持ちがおさえられないほど強いことを言い、禁止の意味はありません。「は」が入ると禁止になります。「気になってならない」と「気にしてはならない」を並べ、「は」の有無と、前に来るのが気持ちの語か行動の語かで見分けさせます。
  • 〜なければなりません(初級Ⅰ 第12課)「〜なければなりません」はする必要があること、「〜てはならない」はしてはいけないことで、「ならない」が同じでも意味は反対です。学習者が「書かなくてはならない」と「書いてはならない」を取り違えたら、前の動詞に「ない」が付いているかを指で示させます。
関連する文型

語彙の扱い

注意・忠告に使う言葉(注意する・忠告する・説得する・常識・マナー・決まり・反省する・後悔する など)は、「〜に注意する」「〜を説得する」のように助詞と一緒にカードにしておくと、ロールプレイでそのまま使えます。評価の言葉(無理・わがまま・失礼・ぜいたく・責任感)は「それは〜というものだ」の形で、ことわざは「〜とは、〜ものだ、という意味だ」の形で練習すると、項目と語彙がいっしょに定着します。

この課の練習で使う語(12語・意味・連語・例文)

  • 注意する(ちゅういする) 相手のよくない行動を、やめるように言います。 後輩に〜・〜を受ける
    アルバイト先で、後輩がお客様の前でスマートフォンを見ていた。
    「お客様の前では、スマートフォンを見るものではないよ」と後輩に注意した。
  • 忠告する(ちゅうこくする) 相手のためを思って、これからどうするのがいいかを言います。 友達に〜・〜を聞く・〜に従う
    毎晩遅くまでゲームをしている友達がいる。
    「試験の前は早く寝るべきだよ」と忠告したが、聞いてくれなかった。
  • 説得する(せっとくする) 理由を話して、相手に考えを変えてもらいます。 親を〜・〜に成功する
    留学をやめようとしている友達と話す。
    一晩かかって友達を説得し、もう一度考えてもらった。
  • 納得する(なっとくする) 話を聞いて、「そのとおりだ」と心から分かります。 説明に〜・〜がいく
    先輩に、なぜ質問するべきなのかを説明してもらった。
    理由を聞いて、やっと納得できました。
  • 常識(じょうしき) その社会の多くの人が、当然だと考えていることです。 〜がある・社会の〜・〜に欠ける
    新入社員の研修で、あいさつについて話す。
    目上の人に自分からあいさつするのは、社会の常識です。
  • マナー(まなー) 人に迷惑をかけないための、ふるまい方の決まりです。 〜を守る・〜が悪い・電車の〜
    電車の中で大きな声で電話をしている人がいる。
    電車の中で大声で電話するのは、マナー違反というものだ。
  • 迷惑(めいわく) 人のしたことで、ほかの人がいやな思いをしたり困ったりすることです。 〜をかける・近所の〜・〜な話
    夜中に寮の部屋で友達と騒いでいた。
    夜遅くに騒いで、隣の人に迷惑をかけてはならない。
  • 言い訳(いいわけ) 自分の失敗について、理由を言って責任を軽くしようとすることです。 〜をする・〜ばかり
    遅刻した学生が長い理由を話し始めた。
    言い訳をする前に、次から遅れないための方法を考えることだよ。
  • 反省する(はんせいする) 自分のしたことをふり返って、よくなかった点を考えます。 深く〜・失敗を〜
    大事な約束を忘れてしまった日の夜。
    もっと早く確認するべきだったと、深く反省した。
  • 後悔する(こうかいする) してしまったこと、しなかったことを、あとで残念に思います。 〜しても遅い・〜しないように
    先輩が、学生時代のことを話す。
    あのときもっと勉強するべきだったと、今になって後悔している。
  • 守る(まもる) 決まりや約束のとおりにします。 約束を〜・規則を〜・時間を〜
    新しく寮に入った留学生に、寮長が説明する。
    寮の規則は、必ず守らなければならない。
  • 謝る(あやまる) 自分が悪かったと言って、許してもらおうとします。 友達に〜・心から〜・素直に〜
    友達とけんかしたあと、ルームメイトに相談した。
    約束の時間に遅れたので、会ってすぐに謝った。

宿題と次のコマ

宿題は、自分の国のことわざを一つ選んで「〜とは、〜ものだ、という意味だ」で説明し、そのことわざを使って、悩んでいる後輩を説得する短い手紙を200〜300字で書くこと。「〜ものだ」「〜べきだ」「〜ことだ」「〜というものだ」のうち3つ以上を使い、手紙の相手を目上の人に変えたら、どの文をどう言い換えるかも最後に一文書かせる。次のコマの最初に何人かに読ませ、聞いた学生が「根拠は常識か、判断か、助言か、評価か」を言って振り返ります。

よくある質問

  • 「〜ものだ」と「〜べきだ」の違いはどう説明すればいいですか?

    根拠の違いで説明します。「〜ものだ」は世の中の常識や本来の性質として言い、「〜べきだ」は話し手が「わたしはこう考える」と判断して言います。同じ内容を「借りた物は返すものだ」「借りた本はきょう中に返すべきだ」と2行で並べ、「みんなの常識はどちらか」「話している人の意見はどちらか」と聞くと分かれます。

  • 「〜ことだ」と「〜たほうがいい」の違いは?

    「〜たほうがいい」はほかの方法と比べてすすめる言い方で、断る余地があります。「〜ことだ」はほかの方法を考えず「これがいちばんだ」と言い切る助言で、経験のある人が下の立場の人に言う響きがあります。そのため目上の人には「〜ことだ」は使えず、「〜たほうがいいと思います」にします。

  • 第36課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目で「〜ものだ」「〜べきだ」、2コマ目で「〜ことだ」「〜というものだ」「〜てはならない」を扱い、3コマ目を強さの段の整理と説得のロールプレイ、まとめに当てます。時間が足りなければ、「〜てはならない」は注意書きを読む練習だけにして、ロールプレイに時間を回します。

  • 目上の人への忠告はどう教えればいいですか?

    この課の5つの形は、どれも目上の人に直接言うと押しつけがましくなる、とまず押さえます。そのうえで「〜たほうがいいのではないでしょうか」「〜ていただけると助かります」などの言い換えを板書の右に置き、練習のたびに相手を部長や先生に変えて言い換えさせます。形を覚えることと、使わない相手を知ることを同じ重さで扱うのがこの課の要点です。

  • 「〜てはならない」と「〜てならない」「〜なくてはならない」はどう見分けさせますか?

    「は」があって前が行動の語なら禁止(話してはならない)、「は」がなく前が気持ちの語なら気持ちの強さ(心配でならない)、前に「ない」が付いていれば必要(話さなくてはならない)、と3行で並べて見せます。意味が反対になる組み合わせもあるので、読む練習では文の最後まで見て判断させます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。