歌が人と人をつなぐ力がテーマの課です。本文は、カラオケや送別会のような場で歌うのが苦手な人の気持ちから入り、だれでも知っている歌を声をそろえて歌うと見知らぬ人どうしでも気持ちが通じること、昔は田植えや漁のような仕事の中で歌がはげまし合いや喜びを分かち合う役をしていたこと、という話題の読み物だと新しい言葉から推測されます。文型は、言い訳や事情の説明をする「〜ものだから」、動作の段階を言う「〜ところだ」、その「ところ」に助詞を付けて後ろにつなぐ「〜ところへ/を/に/で/まで」、限りはあるがその程度に合ったやり方でを言う「〜なり(に)」、強い確信を言う「〜に違いない」。芯は「ところ」の2項目で、時間の線を1本引いて、直前・途中・直後と、そこに割り込む出来事を同じ板書で見せます。「〜ところだ」は第5課の「〜たばかり」、第8課の「〜たところ」と、「〜に違いない」は第9課の「〜はずだ」と並べて違いを確かめます。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 新しい言葉 | 20分 | 48語と多いので、読みと短い意味の確認は手早く。「えんりょ/えんりょがち」「勇気/勇気づける」「耐える/耐え難い」「立場/立場上」は元の語と派生の組で板書の端に残す。「声をそろえる」「声を合わせる」「汗を流す」「間がある」は決まった言い方としてまとめる。「田植」「摘む」「網」「浜」は絵や写真で一度に見せる。「〜ものだから」「〜ところ」「〜なりに」「〜に違いない」は学習項目でも扱うので、ここでは意味だけ確かめる |
| いっしょに考えましょう | 10分 | 「人前で歌うのは好き? 苦手?」「みんなで歌った歌で覚えているものは?」を1人1つ。苦手だと言った学習者の理由を黒板に残しておくと、「〜ものだから」の導入に使える |
| 読みましょう(大意) | 20分 | 教師の範読→段落ごとの音読→「歌が苦手な人はどんな気持ちか・どんなときに歌が人をつなぐか・昔の人は歌をどう使っていたか」の3点で大意をつかむ。精読は2コマ目の初めか宿題に回してよい |
| 答えましょう | 15分 | 設問を一緒に解き、答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。筆者の考えを問う設問は、題の「歌の力」と結びつけて口頭で短く答えさせる |
| 使いましょう(学習項目1・2) | 25分 | 1コマ目の後半。「〜ものだから」(10分)は遅刻の芝居から入り、後ろに頼みを置かないことを確かめる。「〜ところだ」(15分)は時間の線を1本引いて3つの形を並べる。この線は写真に撮っておき、2コマ目の学習項目3でもう一度使う |
| 使いましょう(学習項目3) | 25分 | 2コマ目の前半。「〜ところだ」の線を復習(3分)→「ところへ・に/を」(10分)→「ところで/まで」(7分)→後ろの動詞を見て助詞を選ぶ練習(5分)。「お忙しいところを」は挨拶の言い方として最後に1〜2例 |
| 使いましょう(学習項目4・5) | 30分 | 「〜なり(に)」(15分)は第9課の「〜として」と並べる。「〜に違いない」(15分)は第9課の「〜はずだ」と並べ、確信の強さを目盛りで見せる |
| まとめましょう・話しましょう | 25分 | 「歌が人と人をつないだと思った経験」を3〜4文で(〜ものだから・〜ところへ/を・〜なりに・〜に違いない から1つ以上)。話しましょうはペアで「人前で歌うことを頼まれたらどうするか」 |
| 漢字を練習しましょう | 10分 | 読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する |
理由を言う形で、とくに「そうするしかなかった」「仕方がなかった」と、自分のしたこと(遅刻・失敗・約束を守れなかったこと)の言い訳や事情の説明をするときに使う。理由そのものを伝えるより、「わかってほしい」という話し手の気持ちが出る。後ろの文は起きてしまった事実や結果で、命令・誘い・話し手の意志(〜しなさい・〜ましょう・〜つもりだ)は来にくい。会話では「〜もんだから」「〜もので/もんで」とも言い、目上の人に謝るときは「〜ものですから」「〜もので」がよく使われる。文法の見方では「から」「ので」と同じ原因・理由の従属節だが、話し手の主張よりも事情の説明に寄った言い方。
動詞・い形容詞の普通形+ものだから/な形容詞の語幹・名詞は「な」を付けて+ものだから(静かなものだから・初めてなものだから)
教師が「遅刻した」「電話に出なかった」「約束を忘れた」のようなカードを見せ、学習者が事情を付けて「〜ものですから、〜てしまいました」で言い訳をする。後ろに頼みや命令が入っていないか、名詞・な形容詞に「な」が付いているかを確かめてから教科書の練習へ。
動作が時間の流れの中で、今どの段階にあるかを言う。「Vるところだ」は始まる直前(今から〜する)、「Vているところだ」はちょうど途中(今まさに〜している)、「Vたところだ」は終わった直後(たった今〜した)。「ところ」はもともと場所の言葉だが、ここでは時間の線の上の一点を指す。文法の見方では、動作のどの段階かを表すアスペクトの言い方。「Vるところだった」は、もう少しでそうなりかけたが実際にはならなかった、という意味になり、危なかったことやほっとした気持ちを言う。
動詞の辞書形・ている形・た形+ところだ(丁寧は「ところです」。会話では「ところなんだ/ところなんです」が多い)
教師が絵カード(出かける直前・料理の途中・食べ終わり など)を出し、学習者が「今、〜ところです」で答える。3つの形がそろったら、「危なかった話」を「もう少しで〜ところだった」で1つずつ。そのあと教科書の練習へ。
学習項目2の「ところ」(時間の中のある場面・時点)に助詞を付けて、後ろの文につなぐ形。「〜ところへ/〜ところに」は、ちょうどその時に、だれかが来た・何かが起きたことを言い、後ろは「来る・入ってくる・電話がかかってくる」のような、こちらへ向かってくる出来事が多い。予想していなかったことや、じゃまが入ったことを言う場合が多い。「〜ところを」は、その場面を後ろの動詞の対象にする言い方で、「見る・見られる・見つかる・助ける・起こす」が来る。「お忙しいところを」「お休みのところを」は、相手の都合がよくない時にあえて、という挨拶になる。「〜ところで」は、その時点・区切りで次のことが起きたり、何かをやめたりすること。「〜ところまで」は、その段階まで、という範囲を言う。
動詞の辞書形・ている形・た形(「〜(よ)うとしている/〜(よ)うとした」も多い)+ところへ/に/を/で/まで。「お忙しいところ」「お休みのところ」のように、い形容詞や「名詞+の」にも付く
教師が「〜ているところ」の絵(電話している・寝ている・料理している)と後ろの出来事のカード(友だちが来た・先生に見られた・電気が消えた)を組み合わせて出し、学習者が助詞を選んで1文にする。「で」「まで」は授業の区切りの言い方(きりのいいところで・読んだところまで)で短く確かめてから、教科書の練習へ。
「Nなりに」「Nなりの」で、十分ではない・限りはあるが、その人やものの程度・立場に合ったやり方で、という意味。「子どもなりに考えた」は、大人ほどではないが子どもとしてできるかぎり考えた、ということ。自分について「私なりに」「自分なりに」と言うと、まだ足りないところがあると謙遜しながら、努力したことを伝える言い方になる。「自分なりの方法」のように「の」で名詞を修飾することも多い。い形容詞・な形容詞では「狭いなら狭いなりに」「下手は下手なりに」のくり返しの形で、その条件に合ったやり方で、という意味になる。
名詞+なりに/なりの。い形容詞の辞書形・な形容詞の語幹にも付く(若いなりに・下手なりに)。「〜なら〜なりに」「〜は〜なりに」のくり返しの形も多い
教師が「留学生」「新人」「子ども」「初心者」のカードを出し、学習者が「〜なりに〜」で、限りはあるが精一杯したことを言う。次に「自分なりの〜」で、自分の勉強法や習慣を1つずつ。目上の人を主語にしていないかを確かめてから教科書の練習へ。
話し手が何かの手がかりから「きっと〜だ」「ほかの可能性はほとんどない」と強く確信していることを言う。手がかりは目で見た事実のこともあるが、経験や直感からそう思う場合にも使える。物語・作文・説明文などの書き言葉に多く、会話では「きっと〜と思う」「〜に決まってる」のほうがふつう。文法の見方では、話し手の判断を表すモダリティの一つで、確信の強さは「〜かもしれない」<「〜だろう」<「〜に違いない」の順に強くなる。話し手自身のこれからの行動(意志)には使わない。
動詞・い形容詞の普通形+に違いない/な形容詞の語幹・名詞+に違いない(「だ」は付けない。書き言葉では「〜であるに違いない」も)。丁寧は「〜に違いありません」
教師が手がかりの絵(ぬれた傘・行列のできた店・電気の消えた部屋)を見せ、学習者が「〜から、〜に違いない」で確信を言う。名詞・な形容詞に「だ」を付けていないかを確かめ、同じ手がかりを「〜かもしれない」「〜だろう」でも言って強さを比べてから、教科書の練習へ。
この課の新出語は 48 語(本文を読むための語 48・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
新しい言葉は本文に出る順で48語と多い。読みと意味の確認は1語ずつ時間をかけず、元の語と派生した語(えんりょ/えんりょがち、勇気/勇気づける、耐える/耐え難い、立場/立場上)は組にして覚えさせる。「声をそろえる」「声を合わせる」「汗を流す」「間がある」は決まった言い方としてまとめ、「声をそろえる」と「声を合わせる」はほぼ同じ意味で使えると添える。「田植」「摘む」「網」「浜」は昔の仕事と歌の話に出る語なので、絵や写真で一度に見せる。「〜かねる」「〜ては」は語彙にだけ出る文型なので、本文の文脈で意味を確かめ、「〜かねない」「〜てはいけない」と混ぜないよう注意する。「〜ものだから」「〜ところ」「〜なりに」「〜に違いない」は学習項目で扱う。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。
本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(なじむ・送別・誘う・立場上・生まれつき・苦手・耐え難い・どうしても・童謡・白ける・えんりょがち・勇気づける・声をそろえる・見知らぬ・分かち合う・田植・摘む・網・浜・はげます)から、送別会などで歌に誘われても、歌が苦手でえんりょがちな人にはつらいこともあるが、だれでも知っている歌を声をそろえて歌うと、見知らぬ人どうしでも気持ちが通じたり勇気づけられたりすること、また昔は田植えや茶摘み、浜で網を引くような仕事の中で、歌がはげまし合いや喜びを分かち合う役をしていたこと、という話題の読み物だと推測される。精読では「歌が苦手な人はどんな場面でつらいと感じるか」「どんな歌なら人と人がつながると筆者は考えているか」「昔の人は仕事の中で歌をどう使っていたか」「題の『歌の力』とは何か」の4点を段落ごとに聞く。「どうしても」「〜かねる」「立場上」のように、したくないのに断りにくい気持ちを表す語のところで一度止め、筆者や登場する人がそのときどう感じているかを学習者に言わせる。歌が苦手な学習者もいるので、話し合いでは歌うことを強いず、聞く・手拍子をするのも参加の仕方だと受け止める。
使いましょう(学習項目1〜5)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。「〜ところだ」の3つの形と「〜ところへ/を/で/まで」を、自分の一日の場面で1文ずつ書いてくる。まとめましょうの「歌が人と人をつないだと思った経験」を4文(〜ものだから・〜ところへ/を・〜なりに・〜に違いない から2つ以上)で書いてくる。次のコマは本文の精読の続きと話しましょう。
第16課「うたう」は何コマで終わりますか?
90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と学習項目1・2、2コマ目で学習項目3〜5とまとめ・漢字まで進めます。「ところ」の2項目に時間がかかるクラスは、学習項目2と3を同じコマで続けて扱い、精読を3コマ目に回してもかまいません。
「〜ものだから」と「〜ので」はどう教え分けますか?
「〜ので」は理由を客観的に言う形で、後ろに頼みや命令も来ます。「〜ものだから」は自分のしたことの言い訳や事情の説明に使い、「仕方がなかった」という気持ちが入ります。後ろの文は起きてしまったことになるので、「〜ものだから、〜しなさい」のような文は作らせないようにします。遅刻のおわびのような場面で2つを言い比べると違いがつかみやすくなります。
「〜ところだ」の3つの形は、どの順で教えればいいですか?
動作の流れに沿って、直前(Vるところだ)→途中(Vているところだ)→直後(Vたところだ)の順で、時間の線を1本引いて同時に見せるのがわかりやすいです。そのあと「Vるところだった」(もう少しでそうなりかけた)を足します。「〜たところだ」は第5課の「〜たばかり」、第8課の「〜たところ、〜」とも並べて、形が似ている3つを区別させます。
「〜ているところへ」と「〜ているところを」の違いは何ですか?
後ろの動詞で決まります。「来る・入ってくる・電話がかかってくる」のように何かがこちらへ来るなら「へ(に)」、「見られる・見つかる・助ける」のようにその場面を対象にするなら「を」です。同じ「歌っているところ」に、後ろの動詞を変えて「友だちが入ってきた/友だちに見られた」と続け、助詞が変わるのを見せると定着しやすくなります。
「〜に違いない」と「〜はずだ」はどう違いますか?
「〜はずだ」は予定・知識・理屈から当然そうだと判断する言い方で、「〜はずだったのに」のように予定どおりにならなかったことも言えます。「〜に違いない」は目の前の手がかりや経験から話し手が強く確信していることを言い、直感にも使えます。また、名詞・な形容詞には「学生に違いない」と「だ」を付けずに続く点も、「学生のはずだ」と並べて確かめます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。