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中級から学ぶ日本語 第15課「ふれあう」の教案

『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈旅行かばん〉

人と人とのふれあい・出会いがテーマの課です。本文は、本を書いた人の講演の場面で、若いころに旅をして体験を重ねた話や、それを得意になって話していた自分にある出会いを通して気がついた話が語られ、最後に「旅行かばん」に何を詰めるかという問いかけで締めくくられる、という話題の読み物だと新しい言葉から推測されます。文型は、代表の例を一つ挙げてほかにもあると言う「〜をはじめ」、評判やふだんの様子と今の結果を比べる「さすが/さすがに/さすがの〜も」、根拠をもって強く打ち消す「〜わけがない」、前の事情から「それなら当然」「だからなおさら」を言う「〜だけに」。「さすが」の3つの形は意味の向きが違うので一度に混ぜず、感心の「さすが」→限界の「さすがに」→「さすがの〜も」の順で一つずつ足し、最後に「だけに」と組み合わせる形(さすが〜だけに)へつなぐのが芯になります。

このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ語彙49語

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜をはじめ」で、代表の例を一つ挙げて、ほかにも同じ仲間がたくさんあることを、スピーチや紹介のような改まった場で言える
  • 「さすが」で評判どおりの結果に感心する気持ちを、「さすがに」「さすがの〜も」でふだんとは違う限界の結果を、言い分けられる
  • 「〜わけがない」で、理由を挙げて「絶対に〜ない」と強く打ち消すことができ、「〜わけではない」(部分の否定)と取り違えない
  • 「〜だけに」で、前の事情からそれにふさわしい結果や、なおさら強くなる気持ちを言え、「〜だけあって」「〜から」との違いが分かる
  • 本文を読んで、旅や人との出会いで自分の見方が変わった経験を、自分のことと比べて話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
1コマ目・新しい言葉20分49語と多いので、読みと短い意味を確かめたあと、まとまりで扱う。「耳を傾ける」「気が合う」「いい気になる」「調子に乗る」「話を合わせる」「ものが見える」は体や気持ちを使った決まった言い方として場面で見せ、「歩き回る」「黙り込む」「締めくくる」は複合動詞として後ろの動詞が足す意味を確かめる。「〜をはじめ」「さすがに」「〜わけがない」「〜だけに」は学習項目で扱うと予告するだけにする
1コマ目・いっしょに考えましょう10分「旅行や引っ越し先で出会って、忘れられない人・一言」を1人1つ。答えを黒板の端に残すと、学習項目2「さすが」と学習項目4「〜だけに」の導入に使える
1コマ目・読みましょう(大意)20分教師の範読→段落ごとの音読→「だれが・どんな場で話しているか」「若いころの話し手はどう変わったか」「最後に聞き手に何を問いかけたか」の3点で大意。精読は2コマ目に回す
1コマ目・答えましょう10分設問をいっしょに解き、答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。気持ちの変化を問う設問は、本文の語(自慢気・黙り込む・恥ずかしい など)を手がかりに口頭で短く答えさせる
1コマ目・使いましょう(学習項目1・2)30分「〜をはじめ」(10分)→「さすが/さすがに/さすがの〜も」(20分)。「さすが」は3つの形を一つずつ足し、最後の5分で混ぜた問答をして形を選ばせる。産出の活動は2コマ目の初めに回してもよい
2コマ目・復習と精読25分人物カードで「さすが」の3つの形を5分で復習してから精読。話し手の気持ちが変わる段落で止め、「いい気になっていた」ころと「気がついた」あとを学習者に言い分けさせる
2コマ目・使いましょう(学習項目3・4)35分「〜わけがない」(15分。「〜わけではない」と並べて0か一部かを図で見せる)→「〜だけに」(20分。期待どおりの使い方と、期待と逆になって「なおさら」の使い方を分けてから混ぜる)
2コマ目・まとめましょう・話しましょう20分「旅や出会いで考えが変わった経験」を3〜4文で(〜だけに・さすが のどちらかを1つ以上)。話しましょうはペアで「自分の旅行かばんに入れて持っていきたいもの(物でも経験でも)」
2コマ目・漢字を練習しましょう10分読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する

学習項目 1 〜をはじめ

意味・はたらき学習項目 1

同じ仲間の中から、いちばん代表的なもの・よく知られたものを一つ挙げて、「それだけでなく、ほかにもいろいろある」と言う形。後ろには「など」「多くの」「さまざまな」「皆さん」のように、たくさんあることを表す語が来ることが多い。「〜をはじめとして」「〜をはじめとする+名詞」の形もあり、どれもスピーチ・案内・ニュース・あいさつなど改まった場面でよく使う。初級の「〜や〜など」が例を並べるだけなのに対して、「〜をはじめ」は最初に挙げたものがその仲間の中心・代表だという見方が入る。

接続

名詞+をはじめ(として)、〜/名詞+をはじめとする+名詞。動詞・形容詞には付かない

形
Nをはじめ、〜など(すしをはじめ、和食の店がたくさんある)Nをはじめとして、〜(部長をはじめとして、部の全員が参加した)Nをはじめとする+N(京都をはじめとする古い町)

導入

  • 写真を一枚だけ前に出す学生の国の料理の写真を黒板に並べ、いちばん有名な一枚だけを前に大きく貼る。「この国にはおいしい料理がたくさんあります」と言ってから、前の写真を指して「トムヤムクンをはじめ、おいしい料理がたくさんあります」と言い直す。前に出した一つが代表で、後ろにその仲間がたくさんある、という形を板書の●と○○○で見せる。
  • 「〜や〜など」と言い比べる同じ内容を「すしやてんぷらなど」と「すしをはじめ」の2通りで言い、「どちらが代表を強く見せているか」「どちらがスピーチらしいか」を聞く。講演・観光案内・会社のあいさつのような場面の写真を添え、改まった場で使う言い方だと確かめる。

板書案

N + をはじめ(として)、〜(など)
N + をはじめとする + N
〔赤〕代表 ● → 〔青〕仲間 ○○○(ほかにもたくさん)
すしをはじめ、日本の料理は外国でも人気がある。

場面と発話(自作)

  • 留学生が地域の国際交流会で、自分の住んでいる町を紹介するスピーチをする。私の町には、古いお寺をはじめ、歴史のある建物がたくさん残っています。
  • 会社の歓迎会で、司会をする社員が最初にあいさつをする。本日は、部長をはじめ、営業部の皆さんにお集まりいただきました。
  • 日本語学校の先生が、学生に進学説明会の内容を知らせる。説明会では、学費をはじめとして、奨学金や住まいについても相談できます。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「日本の祭り」「私の国の有名な場所」「この学校の行事」のような仲間の名前を出し、学生が代表を一つ選んで「〜をはじめ、〜がたくさんある」「〜をはじめ、〜など」と言う。後ろが仲間全体になっているかを確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が仲間のカード(日本の食べ物・世界の大きな都市・スポーツ・家電)を見せ、代表の写真を指して全体で言わせる。キューの例は「すし」→「すしをはじめ、和食は外国でも人気がある」、「サッカー」→「サッカーをはじめ、いろいろなスポーツができる」、「東京」→「東京をはじめとする大都市」。後ろに「など」「いろいろな」が入っているかを確かめながら、列ごと→個人指名へ。
  2. ペアAは町の案内係で、店・観光地・交通の情報が書いてある地図カードを持つ。Bはその町に初めて来た人で、地図は見られない(情報差)。Bの「この町には何がありますか」「買い物はどこでできますか」に、Aが「〜をはじめ、〜」で答え、Bは聞いたことをメモする。3問ごとに役を交替する。
  3. 産出「わが町ガイド」: 自分の国や住んでいる町を、「〜をはじめ」を1回以上使って1分で紹介する(観光地・食べ物・行事から2つ)。教師は、最初に挙げたものが本当にその仲間の代表になっているか、後ろが代表と同じ一つだけで終わっていないかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 後ろが代表と同じ一つだけになる(社長をはじめ、社長が来ました)。「をはじめ」は「ほかにもいる・ある」と言う形なので、後ろには「社員の皆さん」「多くの人」のように仲間全体を置く、と板書の●○○○で確かめる
  • 動詞に付ける(*料理を作るをはじめ、掃除や洗濯もする)。前は名詞だけなので、「料理をはじめ、家事はほとんど自分でする」のように名詞で言い直させる
  • 動詞「始める」の「〜を始めて」と同じだと思い、読み物の中で意味を取り違える。後ろに仲間がたくさん並んでいれば代表を挙げる「をはじめ」だと、読むときの手がかりを示す

既習の文型との違い

  • 〜とか〜とか(第6課)「〜とか〜とか」は、例を思いつくままに並べる話し言葉で、どれが代表かは言わない。「〜をはじめ」は一つを代表として前に出し、改まった場面で使う。友だちとの会話で「すしをはじめ……」と言うと、スピーチのように硬く聞こえる。
  • 〜に限らず(第20課)「〜に限らず」は「〜だけでなく、ほかも」と範囲を広げる言い方で、前に挙げたものが代表である必要はない(子どもに限らず、大人も楽しめる)。「〜をはじめ」は代表を最初に挙げ、その仲間を後ろでまとめて言う。
関連する文型

学習項目 2 さすが/さすがに/さすがの〜も

意味・はたらき学習項目 2

3つの形で意味の向きが違う。「さすが(だ)」「さすが(は)N(だ)」は、評判や期待どおりの結果を見て感心する気持ちで、人をほめるときに使う(さすがプロだ)。「さすがに」は、ふだんは平気なことでも「この場合はやはり〜」と言う形で、後ろに「疲れた」「無理だ」「寒い」のような限界を表す語が来ることが多い(感心の意味で使うこともある)。「さすがの〜も」は、力があると認められている人や物でも、この場合は思いどおりにならなかった、と言う形で、後ろはふつう「〜できなかった」「困った」のような結果になる。3つとも「前から知っている評判・ふだんの様子」と「今の結果」を比べている点が共通で、文法の見方では話し手の評価を表す言い方の一つになる。

接続

さすが(は)+N(だ/ですね)、またはさすが単独(さすがですね)/さすがに+文(さすがに疲れた)/さすがの+N+も、〜(ない・なかった)

形
さすが(は)Nだ(さすがはプロの料理人だ)さすがに+文(毎日走っている人でも、山道の30キロはさすがにきつい)さすがのNも、〜ない(さすがのベテランも、この雪では運転できなかった)

導入

  • 「評判」と「今の結果」を左右に書く黒板の左に「評判・ふだん」、右に「今の結果」と書く。左「田中さんは料理教室の先生」→右「パーティーの料理がとてもおいしかった」で、二つが合っているときに「さすが田中さん!」と言い、矢印に〇を付ける。次に左「山田さんは毎日10キロ走る」→右「100キロ走ったあと、歩けなくなった」と、ふだんの力を超えたときの「さすがに」「さすがの山田さんも」を足し、矢印に×を付けて向きの違いを見せる。
  • 「いっしょに考えましょう」の答えから引き出す学生が挙げた「忘れられない人」から、その人らしい行動を一つ聞き、教師が「さすが〜の人ですね」と返す。本文には体験を得意になって話す場面があると推測されるので、精読のあとで「聞いていた人は本当に『さすが』と思っていたか」を聞くと、感心の気持ちと話の流れがつながる。

板書案

〔赤〕さすが(は)N(だ) 評判 = 結果 → 感心(〇)
〔青〕さすがに + 文 ふだんは平気 → この場合は無理(×)
〔青〕さすがの N も 〜ない 力のある人・物でも → だめ(×)
さすがプロだ。/さすがに疲れた。/さすがの名人も負けた。

場面と発話(自作)

  • 留学生が日本人の友だちの家で夕ご飯を食べる。友だちから、お母さんは料理の先生だと聞いていた。さすが料理の先生ですね。こんなにおいしい肉じゃがは初めてです。
  • 寒い国から来た留学生が、真冬の北海道旅行から帰ってきた。クラスの友だちに話す。国も寒いから平気だと思っていたけど、マイナス20度はさすがに寒かったよ。
  • どんな機械でも直せると言われている先輩が、古いコピー機の前で困っていた。同僚どうしで話す。さすがの佐藤さんも、あの古いコピー機は直せなかったみたいです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「評判・ふだん」のカードと「結果」のカードを組にして見せ、合っていれば「さすが〜」、ふだんの力を超えていれば「さすがに〜」「さすがの〜も」で言わせる。3つを混ぜた問答で形と向きを選ばせてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が人物カード(プロの歌手・毎日練習する選手・何でも知っている先生・寒さに強い人)と結果の絵を組で見せ、全体で言わせる。キューの例は「プロの歌手・とても上手」→「さすがプロの歌手だ」、「寒さに強い人・マイナス30度」→「さすがに寒そうだ」、「何でも知っている先生・とても難しい質問」→「さすがの先生も答えられなかった」。最初は感心の「さすが」だけ、次に「さすがに」、最後に「さすがの〜も」と一つずつ足し、混ぜてから個人指名。
  2. ペアAは人物のプロフィールカード(得意なこと・ふだんの様子)、Bは結果のカードを持つ(情報差)。Aがプロフィールを読み、Bが結果を読み、2人で相談して3つの形のどれで言うかを決めて1文にする。カードを5組ずつ交換し、最後に全体で答え合わせをする。
  3. 産出「さすが日記」: この一週間で「さすが」と感心したことと、「さすがに〜」「さすがの〜も」と思ったことを1つずつ、3〜4文で書いて読み上げる。教師は、感心の「さすが」の後ろに失敗や限界が来ていないか、「さすがの〜も」の後ろが思いどおりにならない結果になっているかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 「さすがの〜も」の「の」や「も」を落とし、形が崩れる(さすが先生も答えられなかった)。「さすがの+名詞+も」をひとかたまりで板書し、何度か口で言わせる
  • 感心の「さすが」の後ろに失敗を置き、ほめているのか分からない文になる(さすが田中さんだ、試験に落ちた)。冗談や皮肉でそう言う人もいるが、まずは「評判と結果が合っているときにほめる」と押さえる
  • 目上の人に「さすがですね」と言うと、評価する立場から言っているように聞こえることがある。目上には「勉強になりました」「すばらしいですね」も使えると場面で示す(「さすがですね」を使う人も多いので、禁止にはしない)

既習の文型との違い

  • やはり/やっぱり(初級)「やはり」は予想どおりだったと言うだけで、よいことにも悪いことにも使う(やっぱり雨が降った)。「さすが」は評判どおりのよい結果に感心する気持ちが入るので、雨のような出来事には使わない。「さすがに」は「やはり」に近いが、「ふだんは平気なのに、この場合は」という限界の気持ちが加わる。
  • 〜のことだから(第13課)「〜のことだから」はその人の性格や評判から、これからのことを推量する(田中さんのことだから、もう準備しているだろう)。「さすが」は結果を見たあとで感心する。評判を使う点は同じだが、見る時が前と後ろで逆になる。
関連する文型

学習項目 3 〜わけがない

意味・はたらき学習項目 3

理由や根拠があって、「絶対に〜ない」「〜はずがない」と強く打ち消す言い方。相手の考えや、うわさ・可能性を強く否定するときに使い、「あんなにまじめな人がうそをつくわけがない」のように、前に根拠が来ることが多い。話し言葉では「〜わけない」「〜わけないじゃない」の形にもなる。「〜はずがない」とほぼ同じ意味で言い換えられることが多いが、「わけがない」のほうが「そんなことはありえない」という話し手の気持ちが強く出やすい。文の終わりの「わけ」には「〜わけだ」(当然そうなる)「〜わけではない」(全部がそうではない)もあり、意味がまったく違う。

接続

普通形+わけがない。な形容詞は「な」(暇なわけがない)、名詞は「の」か「である」(初心者のわけがない・初心者であるわけがない。話し言葉では「初心者なわけがない」も聞く)

形
V普通形+わけがない(3日で全部覚えられるわけがない)いA/なAな+わけがない(あの店が安いわけがない・年末に暇なわけがない)Nの/Nである+わけがない(あの人が初心者のわけがない)

導入

  • ありえないうわさを打ち消す教師が「クラスの○○さん、先週の小テストで0点だったらしいよ」と、明らかにありえないうわさを言い、学生の「えっ、うそ!」という反応を待つ。「○○さんは毎日予習している。だから、0点のわけがない」と、根拠と結論を板書で2段に分け、「わけがない」は根拠があって強く打ち消すときの形だと確かめる。
  • 「わけではない」と並べて図にする同じ板書の下に「日本料理が全部好きなわけではない(好きなものもある)」を書き、「わけがない=全然ない(0)」「わけではない=全部ではない(一部)」を線の図で見せる。第10課の「〜からといって〜わけではない」を思い出させ、同じ「わけ」でも意味が逆になることを確かめる。

板書案

普通形 + わけがない(なAな/Nの・Nである)
根拠:毎日予習している → 〔赤〕0点のわけがない
〔赤〕わけがない = 全然ない(0) 〔青〕わけではない = 全部ではない(一部)
話し言葉:〜わけない(じゃない)

場面と発話(自作)

  • 日本語を始めて3か月の留学生に、寮の友だちが「N1を受けてみたら」と言う。始めて3か月でN1に合格できるわけがないよ。まずはN4から受ける。
  • 職場で、まじめな後輩がミスを隠したといううわさが出た。同僚に言う。鈴木さんがそんなことをするわけがありません。きっと何かの間違いですよ。
  • 雨と風が強い週末に、友だちが「今から海で泳ごう」と言い出した。こんな天気で泳げるわけないじゃない。映画にしようよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「ありえない話」のカード(富士山に半日で3回登った・一日で漢字を1000字覚えた・8月の東京で雪が降った)を読み、学生が根拠を添えて「〜から、〜わけがない」と打ち消す。品詞ごとに「な」「の」を確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師がありえない話のカードを読み上げ、全体で「そんなこと、あるわけがない」と言わせてから、根拠つきの文を作らせる。キューの例は「8月に雪」→「8月の東京に雪が降るわけがない」、「1か月で日本語がペラペラ」→「1か月でペラペラになるわけがない」、「いつも静かなあの人がロック歌手」→「あの人がロック歌手のわけがない」。品詞ごとの付き方を確かめながら個人指名へ。
  2. ペア「うわさ打ち消しゲーム」: Aはうわさのカード(学校や町の、ありえないうわさ)を読み、Bは理由を一つ挙げて「〜わけがない」で打ち消す。Aが「でも、〜って聞いたよ」と食い下がり、Bがもう一つ理由を足して打ち消す。3枚で役を交替する。
  3. 産出「それはありえない!」ロールプレイ: 友だちや職場の人から信じられない話を聞いた場面を2人で作り、「〜わけがない」と「〜わけではない」を1回ずつ入れて演じる。教師は、根拠が言えているか、相手が目上のときに強すぎないか(「〜はずはないと思いますが」のようにやわらげられるか)を見て直す。

つまずきと手当て

  • 名詞にそのまま付ける(*あの人が初心者わけがない)。名詞は「の」か「である」、な形容詞は「な」が要る、と品詞ごとに板書する
  • 「〜わけではない」と取り違え、言いたいことと反対の意味になる(全部は好きではないと言いたくて「日本料理が好きなわけがない」と言う)。0か一部かを線の図で確かめ、言いたいのはどちらかを本人に選ばせる
  • 目上の人の話を打ち消すときにそのまま使い、強すぎて失礼に聞こえる(課長の話に「そんなわけがありません」)。目上には「〜とは思えないのですが」「〜はずはないと思いますが」のようにやわらげる言い方を添える

既習の文型との違い

  • 〜はずがない(第9課)どちらも根拠があって強く打ち消す言い方で、多くの文で言い換えられる。「はずがない」は根拠から判断した結論という落ち着いた言い方、「わけがない」は「ありえない」という気持ちが強く出やすく、「〜わけないじゃない」のように感情をこめた話し言葉にもなる、と説明されることが多い。
  • 〜からといって〜わけではない(第10課)「〜わけではない」は「全部が〜というのではない」という部分の否定で、相手の思い込みを少し直す言い方。「〜わけがない」は可能性を0にする強い否定。混ぜると意味が反対になるので、同じ話題(日本人・漢字が読める)で2つを言い比べさせる。
  • 〜わけにはいかない(第17課)「〜わけにはいかない」は、できるけれど事情があってそうできない、という意味で、可能性そのものを否定する「わけがない」とは違う(明日は試験だから、休むわけにはいかない)。同じ「わけ」でも後ろの形で意味が変わることを、第17課でまとめて確かめる。
関連する文型

学習項目 4 〜だけに

意味・はたらき学習項目 4

「〜だから、それにふさわしく(やはり)」「〜だから、なおさら」と、前の事情が理由になって、後ろのことがいっそう強くなると言う形。一つは、前の事情から期待されるとおりの結果になる使い方(長く日本に住んでいるだけに、町の店にくわしい)。もう一つは、前の事情があったからこそ、予想と逆の結果に気持ちが強く動く使い方(楽しみにしていただけに、中止になってがっかりした)。どちらも前には、その人や物の立場・経験・努力のように、聞き手も「それならそうだろう」と分かる事情が来る。ただの理由の「から・ので」と違い、後ろにはふつう話し手の評価や気持ちが来て、頼みや誘いは来にくい。

接続

普通形+だけに。な形容詞は「な」(有名なだけに)、名詞はそのまま(ベテランだけに)か「である」(ベテランであるだけに)

形
N/Nである+だけに(ベテランの医者だけに、説明がわかりやすい)V普通形+だけに(何度も練習しただけに、本番はうまくいった)〜(期待していた)だけに、〜(なおさら残念だ)(楽しみにしていただけに、中止は残念だった)

導入

  • 「だから」の矢印を太くする「田中さんは10年日本に住んでいる。だから、日本の習慣にくわしい」と板書し、「だから」の矢印を太く書き直して「10年住んでいるだけに、くわしい」と言う。ふつうの「から」より「それなら当然そうだろう」という気持ちが強くなることを、矢印の太さで見せる。
  • 期待が大きいほど、がっかりも大きい「楽しみにしていたコンサートが中止になった」と「あまり行きたくなかったコンサートが中止になった」の2つの場面で、どちらががっかりするかを聞く。前の場面で「楽しみにしていただけに、残念だった」と言い、前の事情が大きいほど後ろの気持ちも大きくなる使い方を見せる。本文の、体験を重ねた話し手がある出来事で強いショックを受けたと推測される場面につなげてもよい。

板書案

普通形 + だけに(なAな/N・Nである)
〔赤〕〜だけに → それにふさわしい結果(ベテランだけに、うまい)
〔青〕〜だけに → なおさら(楽しみにしていただけに、残念だ)
後ろ:評価・気持ち(頼み・誘いは×)

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の学生が、日本の会社で長く働いている先輩に会社を案内してもらった。あとで友だちに話す。あの先輩は長く日本の会社で働いているだけに、敬語の使い方がとても自然だね。
  • 何か月も準備してきたスピーチ大会が、台風で中止になった。担任の先生に話す。毎日練習していただけに、中止と聞いて本当に残念でした。
  • 有名な観光地に行った会社員が、月曜日に同僚に感想を話す。人気の場所だけに、平日でもすごい人でした。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「事情」のカード(有名なレストラン・初めての一人旅・何年も使ったかばん)を出し、学生が「〜だけに、〜」で、期待どおりの結果か、なおさらの気持ちかを言う。後ろが評価や気持ちになっているかを確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が事情と結果の絵を組で見せ、全体で言わせる。キューの例は「有名な店・行列」→「有名な店だけに、いつも行列ができている」、「楽しみにしていた旅行・雨」→「楽しみにしていただけに、雨でがっかりした」、「元選手の先生・教え方」→「元選手だけに、教え方がうまい」。期待どおりの組と、逆になる組を分けて言わせてから、混ぜて個人指名へ。
  2. ペアAは事情のカード、Bは結果のカードを持つ。Aが事情を言い、Bが結果を言って、2人で「〜だけに」の1文にまとめる。そのあとBが「それで、どうするの?」と聞き、Aはふつうの文で答える(頼みや予定は「だけに」の後ろではなく別の文で言う練習)。5組で役を交替する。
  3. 産出「思い出の一枚」スピーチ: 旅行や行事の写真を1枚見せ、そのときの事情と気持ちを「〜だけに」を1回入れて3〜4文で話す(楽しみにしていた・初めてだった・苦労した など)。教師は、前の事情が聞き手にも分かる形で言えているか、後ろが気持ちや評価になっているかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 後ろに頼みや誘いを置き、不自然な文になる(雨が降りそうなだけに、傘を持っていってください)。後ろは話し手の評価や気持ちが来ることが多いので、頼みなら「〜から」に戻す
  • 前の事情と後ろの結果が「それなら当然」の関係になっていない(雨の多い町だけに、傘を持っていない人が多い)。「それなら、そうだろうね?」と聞き返し、前の事情からふさわしい結果か、なおさら強くなる気持ちかを確かめる
  • 限定の「だけ」と読み違える(「親しい友だちだけに話した」を「親しい友だちだから、なおさら」の意味で読む)。読み物では、前が理由になる文か、後ろが気持ちや評価の文かを見て判断させる

既習の文型との違い

  • 〜だけあって(この課では扱わない形)「〜だけあって」は、評判や努力にふさわしいよい結果をほめるときに使い、残念な結果には使わない(楽しみにしていただけあって、残念だった、とは言わない)。「〜だけに」はよい結果にも、期待と逆になって残念な気持ちにも使える。学習者には、残念な結果なら「だけに」と押さえさせる。
  • 〜ばかりに(第18課)「〜ばかりに」は、それが原因で悪い結果になったという後悔の気持ちを言う(一言多かったばかりに、けんかになった)。「〜だけに」は、前の事情からそうなるのが当然、またはなおさら、と言うもので、原因を悔やむ気持ちは入らない。
  • 〜から/〜ので(初級)「から」「ので」は理由を言うだけで、後ろに頼みや予定も置ける。「だけに」は理由に「それなら当然」「だからなおさら」という気持ちを加え、後ろは評価や気持ちになる。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は 49 語(本文を読むための語 49・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。

新しい言葉は本文に出る順で49語と多いので、1語ずつ同じ重さで扱わず、まとまりで見せる。「耳を傾ける」「気が合う」「いい気になる」「調子に乗る」「話を合わせる」「ものが見える」は語を一つずつ訳すと意味が取れない決まった言い方なので、どんな場面で言うかを一文で示す。「いい気になる」「調子に乗る」「自慢気」はよくない意味で使うことを、教師の表情で見せると早い。「歩き回る」「黙り込む」「締めくくる」は複合動詞として、後ろの動詞が足す意味(あちこち・すっかり・最後に)を確かめる。「〜をはじめ」「さすがに」「〜わけがない」「〜だけに」は語彙にも出るが、意味と使い方は学習項目でまとめて扱う。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。

第15課の語彙リスト(49語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い

本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(講演・講演者・問いかけ・ベストセラー・著者・旅・若者・歩き回る・体験・重ねる・自慢気・話を合わせる・黙り込む・ショック・気がつく・恥ずかしい・ものが見える・詰める・添える・和む・拍手・締めくくる)から、本を書いた人の講演で、若いころに旅をして体験を重ね、それを得意になって話していた自分に、ある人とのふれあいを通して気がついた、という話が語られ、最後に旅行かばんに何を詰めるかという問いかけと拍手で締めくくられる、という話題の読み物だと推測される。精読では「だれが・どんな場で話しているか」「若いころの話し手はどんな様子だったか(いい気になる・調子に乗る・自慢気)」「何がきっかけで、何に気がついたか」「講演の最後に聞き手に何を問いかけたか」の4点を段落ごとに聞く。本文に「さすがに」「〜わけがない」「〜だけに」が出ていれば、その文で止めて、だれのどんな気持ちかを学習者に言わせる。

宿題と次のコマ

使いましょう(学習項目1〜4)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの「旅や出会いで考えが変わった経験」を4〜5文で書いてくる(〜だけに・さすが のどちらかを1回以上、〜をはじめ か 〜わけがない を1回)。次の課の初めに2〜3人に読んでもらい、「さすが」の形と「だけに」の後ろの文を全体で確かめる。

よくある質問

  • 第15課「ふれあう」は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と学習項目1・2(〜をはじめ・さすが)、2コマ目で精読と学習項目3・4(〜わけがない・〜だけに)、まとめ・漢字まで進めます。新しい言葉が49語と多いので、クラスによっては語彙の確認を前の課の終わりか宿題に回すと時間に余裕ができます。

  • 「さすが」「さすがに」「さすがの〜も」はどの順で教えればいいですか?

    感心の「さすが」から始め、「さすがに」、「さすがの〜も」の順に一つずつ足すのが分かりやすいです。黒板の左に評判・ふだんの様子、右に今の結果を書き、合っていれば〇で「さすが」、ふだんの力を超えていれば×で「さすがに」「さすがの〜も」と、矢印の印で向きを見せます。3つがそろってから、混ぜたカードで形を選ばせます。

  • 「〜わけがない」と「〜はずがない」の違いは何ですか?

    どちらも根拠があって強く打ち消す言い方で、ほとんどの文で言い換えられます。「わけがない」のほうが「ありえない」という気持ちが強く出やすく、「〜わけないじゃない」のように話し言葉で感情をこめて言うことも多い、と説明すれば十分です。学習者には、意味の違いより「〜わけではない」(部分の否定)と混ぜないことを優先して練習させます。

  • 「〜だけに」と「〜だけあって」はどう教え分けますか?

    「だけあって」は評判や努力にふさわしいよい結果をほめるときに使い、「だけに」はよい結果にも、期待と逆になって残念な気持ちにも使える、と結果の向きで分けます。「楽しみにしていただけに、中止は残念だった」は「だけに」でしか言えない、という例を一つ板書に残すと区別が定着しやすくなります。

  • 「〜をはじめ」はどんな場面で使わせればいいですか?

    スピーチ、町や会社の紹介、行事のあいさつのような改まった場面です。友だちとの会話では「〜とか〜とか」「〜や〜など」が自然なので、産出では「わが町ガイド」や歓迎会の司会のように、人の前で話す役を与えると使う理由がはっきりします。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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