日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

中級から学ぶ日本語 第4課「たとえる」の教案

『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈猫に小判〉

ものごとを別のものにたとえる言い方がテーマの課です。本文は、「猫に小判」「猫の手も借りたい」「猫の額」のような猫が出てくることわざや慣用句と、それを今も使い続ける日本語の面白さを扱った読み物だと、新しい言葉から推測されます。文型は、いちばんだと強く言う「〜ほど〜はない/いない」、程度を大げさなたとえで言う「〜ほど(比喩)」、ほかの人への望みを言う「〜てほしい/ないでほしい」、信じられないほどの驚きやほめ言葉に使う「〜とは思えない」の4つ。前の2つはどちらも「ほど」なので、「いちばんを言うほど」と「どのくらいかを言うほど」を最初に板書で分けておくと混ざりません。「目が回るほど忙しい」「初めてとは思えないほど上手」のように、学習項目どうしを組み合わせた例で締めると課のテーマにつながります。

このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ語彙21語

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜ほど〜はない/いない」で、自分にとっていちばんのもの・人を、気持ちをこめて言える
  • 「〜ほど(比喩)」で、忙しさ・うれしさ・疲れなどの程度を、大げさなたとえを使って言える
  • 「〜てほしい/ないでほしい」で、ほかの人や物事への望みを言え、目上の人には依頼の形に言い換えられる
  • 「〜とは思えない」で、見たものや聞いたことへの驚きやほめ言葉を言える
  • 本文を読んで、ことわざや慣用句のたとえが何を何に見立てているかを説明し、自分の国の似た言い方と比べて話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
新しい言葉(1コマ目)15分21語。「目が回る」「手を借りる」「口に出す」「手にする」「手に入れる」のような体の部位を使う連語は、動作を見せながらまとめて扱う。「きっと」と「ぜひ」、「ずっと」の2つの意味は、語彙のページの例で区別を確かめる
いっしょに考えましょう10分自分の国の動物が出てくることわざを1人1つ。日本語に直訳して意味を説明させ、黒板の端に残しておく(話しましょうで使う)
読みましょう(大意)25分教師の範読→段落ごとの音読→「どんなことわざが出てくるか・それぞれ何を何にたとえているか・筆者はどう思っているか」の3点で大意。精読は2コマ目に回してよい
答えましょう10分設問を一緒に解く。答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。筆者の考えを問う設問は口頭で短く
使いましょう(学習項目1・2)30分2つの「ほど」を続けて扱う。板書を左右に分け、左に「いちばん」の「ほど〜はない」、右に「どのくらい」の「ほど」。各項目は導入→口頭→ペアまで。産出は2コマ目の頭に回してよい
復習(2コマ目)10分学習項目1・2の産出(ふるさと自慢・大げさ表現リレー)を短く。新しい言葉の連語を口頭で確認
使いましょう(学習項目3・4)40分「〜てほしい」は依頼の言い方への言い換えまで、「〜とは思えない」は「〜と思わない」との違いまで。最後に「〜とは思えないほど」の組み合わせを1つ言わせる
読みましょう(精読)15分段落ごとに「たとえているもの」と「たとえられているもの」を書き出す。筆者の考えが出るところで止めて、前後の関係を言わせる
まとめましょう・話しましょう20分1コマ目に出た自分の国のことわざを、日本語のことわざと比べて3文で(〜ほど を1つ以上)。話しましょうはペアで「日本語で面白いと思ったたとえ」
漢字を練習しましょう5分読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する

学習項目 1 〜ほど〜はない/いない

意味・はたらき学習項目 1

「AほどBはない」で、Bの中でAがいちばんだと、話す人の強い気持ちをこめて言う。「Aがいちばん〜だ」と意味は近いが、ほかのものと一つずつ比べた結果を言うというより、「Aに並ぶものは思いつかない」という感動や実感を言う。物には「ない」、人や動物には「いない」。文法の見方では、否定の形を使って最上級を言う比較の表現で、初級の「AはBほど〜ない」(AはBに届かない)とは文の組み立ても意味も違う。

接続

名詞+ほど+(い形容詞・な形容詞+な・動詞の普通形)+名詞+は+ない/いない。こと・ものを使って「Vことほど〜ことはない」「Nほど〜ものはない」とも言う

形
Nほど+い形容詞+Nはない(この店のラーメンほどおいしいラーメンはない)Nほど+な形容詞な+Nはいない(祖母ほど料理が上手な人はいない)Vことほど+〜ことはない(家族と離れて暮らすことほど寂しいことはない)Nほど〜ものはありません(丁寧な形)

導入

  • 「いちばん」の文から言い換える学生に「国でいちばんおいしい食べ物は何ですか」と聞き、答えを「〜がいちばんおいしい」で板書する。その下に同じ内容を「〜ほどおいしい食べ物はない」と書き、「いちばん」と「ほど〜はない」を線で結ぶ。どちらも意味は同じだが、下の文は「ほかに思いつかない」という気持ちが強いと、教師が気持ちをこめて言って見せる。
  • 初級の「AはBほど〜ない」と並べる「大阪は東京ほど大きくない」と「東京ほど大きい町はない」を上下に並べ、どちらが「いちばん」を言っているかを学生に選ばせる。上は比べて届かない、下は並ぶものがない、と矢印で示す。名詞の位置と「は」の位置が違うことに丸を付ける。

板書案

N ほど 〜 N は ない/いない
〔赤〕= N が いちばん 〜(並ぶものが ない)
秋 ほど すごしやすい 季節 は ない。
祖母 ほど 料理が上手な 人 は 〔青〕いない。
〔青〕人・動物 → いない 物・こと → ない
比べる: 大阪 は 東京 ほど 大きく ない(=東京のほうが大きい)

場面と発話(自作)

  • 留学生が、国の母の料理を思い出して、寮の友だちに話す。母が作るスープほどおいしいスープはないと思う。
  • アルバイト先で、仕事を丁寧に教えてくれた先輩のことを、新しく入った人に紹介する。佐藤さんほど教え方が上手な人はいませんよ。何でも聞いてみてください。
  • 日本語学校の作文の授業で、日本に来て一番つらかったことを書く。言葉が通じないまま一人で病院に行くことほど不安なことはありませんでした。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「季節」「町」「人」などの語を出し、学生が「〜ほど〜はない/いない」で自分のいちばんを言う。人のときは「いない」になるかを必ず確かめてから、教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が語のカードを見せる(キュー: 「秋・すごしやすい季節」「富士山・きれいな山」「母・やさしい人」「寝る前の時間・楽しい時間」)。学生は全体で「秋ほどすごしやすい季節はない」と言い、次に一人ずつ。人のカードでは「いない」、物では「ない」と言えたか、カードの色(人=青・物=白)で確かめる。
  2. ペア1人がテーマ(食べ物・町・スポーツ・人)を言い、もう1人が「〜ほど〜はない/いない」で答える。聞いた人は「どうしてですか」と1回聞き、答えた人は理由を一文足す。4つのテーマで役を交替する。
  3. 産出「ふるさと自慢」: 自分の町や国のいちばんを「〜ほど〜はない」で1つ言い、理由を2文足して1分で話す。聞く人は「行ってみたい」と思ったものに手を挙げる。教師は「ない/いない」の選び方と、「AはBほど〜ない」と混ざっていないか(意味が逆になっていないか)を見て、終わってから直す。

つまずきと手当て

  • 初級の「AはBほど〜ない」と混ぜて意味が逆になる(自分の国の夏がいちばん暑いと言いたくて「国の夏は日本ほど暑くない」)。「いちばんを言いたいときは、ほどの後ろにもう一度名詞」と板書の型で確かめる
  • 人に「ない」を使う(「祖母ほど料理が上手な人はない」)。書き言葉の古い言い方では見ることもあるが、会話や作文ではふつう「いない」にすると伝える
  • 最後を肯定にする(*「富士山ほどきれいな山はある」)。この文型は必ず「ない/いない」で終わることを、文末に赤で枠をかいて示す

既習の文型との違い

  • Nがいちばん〜(初級)「秋がいちばんすごしやすい」は、比べた結果を落ち着いて言う。「秋ほどすごしやすい季節はない」は、並ぶものが思いつかないという気持ちが強く、会話では感動や自慢の場面で使う。調査の結果やランキングを伝えるときは「いちばん」のほうが自然になりやすい。
  • AはBほど〜ない(初級)「AはBほど〜ない」はAがBに届かないことを言い、Bのほうが上。「Bほど〜Nはない」はBがいちばん。名詞が「ほど」の後ろにもう一度出るかどうかが見分けの目印で、ここを混ぜると意味が逆になる。
関連する文型

学習項目 2 〜ほど(比喩)

意味・はたらき学習項目 2

「目が回るほど忙しい」のように、状態の程度がどのくらいかを、具体的なできごとや大げさなたとえで言う。本当に目が回るわけではなく、「それくらいひどく・強く」という気持ちを伝える言い方で、課のテーマ「たとえる」の中心になる文型。「死ぬほど」「涙が出るほど」「信じられないほど」のように、決まった組み合わせで使われるものも多い。文末に置いて「忙しくて、目が回るほどだ」とも言う。文法の見方では、程度を表す助詞「ほど」の用法で、似た「くらい」と言い換えられることが多い。

接続

動詞の辞書形・ない形+ほど(目が回るほど・眠れないほど)/い形容詞+ほど(痛いほど)/な形容詞な+ほど(不思議なほど)/名詞+ほど(山ほど)。文末は「〜ほどだ」

形
V辞書形+ほど+形容詞(目が回るほど忙しい)Vない形+ほど(夜も眠れないほど心配だ)Nほど+ある(宿題が山ほどある)〜て、〜ほどだ(足が痛くて、もう歩けないほどだ)

導入

  • 「とても」を絵にする「とても忙しい」と板書し、「どのくらい忙しい?」と聞く。頭の上で目がぐるぐる回る絵をかき、「目が回るほど忙しい」と言う。続けて「とてもうれしい」に涙の絵、「とてもおなかがすいた」に倒れる人の絵を添え、学生に「〜ほど」の文を作らせる。「とても」の代わりに、どのくらいかを絵で見せる言い方だと確かめる。
  • 語彙の「目が回る」「猫の手も借りたい」から入る新しい言葉で出た「目が回る」を使い、年末のコンビニや引っ越しの日など忙しい場面を学生に挙げさせる。「猫の手も借りたいほど忙しい」まで言えたら、ことわざや慣用句も「ほど」の前に入ることを示し、本文のテーマにつなぐ。

板書案

V(辞書形・ない形)/Adj/N + ほど + 状態
〔赤〕どのくらい? = たとえで言う
目が回る ほど 忙しい。
夜も 眠れない ほど 心配だ。
〔青〕ほんとうに目が回る? → いいえ、気持ちを言う
宿題が 山 ほど ある。

場面と発話(自作)

  • 年末にレストランでアルバイトをしている留学生が、休みの日に友だちに話す。先週は目が回るほど忙しくて、休憩も取れなかったよ。
  • 日本語能力試験の合格が分かった日、留学生が担任の先生に報告する。結果を見たとき、涙が出るほどうれしかったです。
  • 会社の同僚が、初めての富士登山から帰ってきた。月曜日の朝、職場で話す。山を下りたあと、もう一歩も歩けないほど足が痛かったです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が形容詞(忙しい・眠い・寒い・おいしい・うれしい)を出し、学生が「〜ほど」の前に入るたとえを考えて言う。同じ形容詞で何人かに言わせ、いちばん面白いたとえを選んでから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が絵や身ぶりをキューに出す(目を回す身ぶり→忙しい、震える身ぶり→寒い、ほっぺたを押さえる→おいしい、あくび→眠い)。学生は全体で「目が回るほど忙しい」と言い、次に一人ずつ別のたとえを考えて言う。「ほど」の前は辞書形かない形になっているかを確かめる。
  2. ペア1人がカードの場面(引っ越しの日・試験の前の晩・真冬の朝・合格発表)を読み、もう1人が「どうだった?」と聞く。読んだ人は「〜ほど〜」で答える。答えを聞いた人は、たとえが大げさか普通かを「大げさ・ふつう」で判定し、役を交替する。
  3. 産出「大げさ表現リレー」: グループで1つの形容詞を決め、前の人より大げさなたとえを順に言っていく(「疲れた」→「すぐ座りたいほど」→「立ったまま寝られるほど」…)。最後に一番いいものを選んで、自分の経験の文にして書く。教師は「ほど」の前の形と、たとえが状態の程度を言っているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「ほど」の前を過去の形にする(「目が回ったほど忙しかった」)。過去のことでも、程度を言うたとえはふつう辞書形のまま(目が回るほど忙しかった)にし、時は文末で言うことを示す
  • 小さい程度に使う(「少し汗をかくほど暑い」)。言えなくはないが、「ほど」は程度が大きいときに使うことが多く、小さい程度なら「くらい」のほうが自然だと伝える
  • たとえが程度を言っていない(「電車に乗るほど遠い」)。「ほど」の前には、その状態がどのくらいかが伝わることを入れると確かめ、「歩いては行けないほど遠い」のように言い換えさせる

既習の文型との違い

  • 〜くらい程度のたとえでは「目が回るくらい忙しい」とほぼ言い換えられ、会話では「くらい」のほうがくだけた感じになる。ただ「くらい」は小さい程度や軽く見る気持ち(それくらい自分でできる)にも使えるが、「ほど」は大きい程度に使うことが多い。
  • 〜ように/〜ような(比喩)「夢のような話」「子どものように笑う」は、何に似ているかを言う。「ほど」は似ているものではなく、どのくらいかを言う。「子どものようにはしゃぐ」は様子、「子どもに戻ったかと思うほどはしゃぐ」は程度、と並べると違いが見える。
  • 〜ば〜ほど「練習すればするほど上手になる」は、一方が変わるともう一方も変わることを言う別の用法。「ほど」の前に「〜ば」が付くかどうかで見分けられる。
関連する文型

学習項目 3 〜てほしい/ないでほしい

意味・はたらき学習項目 3

話す人が、ほかの人にしてもらいたいこと、物事がそうなってもらいたいことを言う。自分がすることは「〜たい」、ほかの人がすることは「〜てほしい」と分けるのが芯。してもらいたい相手は「に」で表し(友だちに手伝ってほしい)、人でない物事は「が」で表す(雨がやんでほしい)。してほしくないことは「〜ないでほしい」。文法の見方では、話し手の希望を表すモダリティの表現で、授受の「〜てもらいたい」とほぼ同じ意味だが、相手に直接言うと要求が強く聞こえることがある。

接続

動詞のて形+ほしい(来てほしい)/動詞のない形+でほしい(来ないでほしい)。「ほしい」はい形容詞と同じように活用する(ほしかった・ほしくない)

形
人にVてほしい(ルームメイトに早く帰ってきてほしい)Nが Vてほしい(早く春が来てほしい)人にVないでほしい(夜中に大きな音を出さないでほしい)Vていただけませんか/Vていただきたいんですが(目上の人への依頼)

導入

  • 「たい」と「てほしい」を矢印で分ける教師が自分を指して「私は旅行に行きたい」と言い、次に学生を指して「〇〇さんに宿題を出してほしい」と言う。板書で「たい」は自分に向かう矢印、「てほしい」は相手に向かう矢印にする。したい人は自分、する人は相手、という2人の関係を線で見せる。
  • 困ったことから「ないでほしい」へ寮やシェアハウスで困ったこと(夜中に洗濯機を回す・台所を片づけない)を学生に挙げさせる。それを「〜ないでほしい」で言わせ、次に本人に直接言うならどう言うかを聞いて、「〜ないでもらえますか」「〜ないでいただけますか」への言い換えまで進む。

板書案

(人)に Vて ほしい / Vないで ほしい
〔赤〕私 → たい  〔青〕相手 → てほしい(矢印)
ルームメイト に 掃除して ほしい。
夜中に 洗濯機を 回さないで ほしい。
物事: 明日は 晴れて ほしい(が/は)
目上の人に → 〜ていただけませんか

場面と発話(自作)

  • シェアハウスに住む留学生が、夜遅くまで音楽をかける同居人について大家さんに相談する。夜は音楽の音をもう少し小さくしてほしいんです。
  • 国に住む親が日本に来ることになった。留学生がクラスメートに話す。せっかく来るんだから、両親には日本の温泉も見てほしいな。
  • 会社で、大事な発表の前の日に台風が近づいている。新人が同僚に言う。明日の朝までに台風が通り過ぎてほしいですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「家族に」「先生に」「天気が」などのキューを出し、学生が「〜てほしい」「〜ないでほしい」の文を作る。相手が人なら「に」、物事なら「が」になるかを確かめ、最後に目上の人への言い方に言い換えてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師がキューを出す(「ルームメイト・掃除する」「弟・ゲームをしすぎない」「明日・晴れる」「先生・宿題を少なくする」)。学生は全体で「ルームメイトに掃除してほしい」と言い、次に一人ずつ。「明日・晴れる」では「明日は晴れてほしい」と、人がいない文になることを確かめる。
  2. ペア1人が寮の住人、1人が寮の管理人になる。住人はカードに書かれた困りごと(ごみの日・夜の電話・共用の冷蔵庫)を見て、まず友だちに話す形「〜てほしいんだけど」で言い、次に管理人に向かって「〜ていただけませんか」で頼む。管理人は「分かりました、伝えておきます」などで受ける。カードを替えて役を交替する。
  3. 産出「お願いカード」: 家族・友だち・職場や学校の人の3人に向けて、してほしいこと・してほしくないことを1枚ずつ書き、そのうち1枚を相手に直接言う形に直してクラスで読む。教師は「に/が」の助詞と、相手に直接言う文が「〜てほしいです」のままになっていないかを見る。

つまずきと手当て

  • 否定の形を間違える(*「夜中に来なくてほしい」)。「ないでほしい」をひとかたまりで板書し、「〜ないでください」と同じ「ないで」だと結びつける
  • してもらう人を「が」で言う(「私は友だちが手伝ってほしい」)。人が相手のときはふつう「に」、人でない物事のときに「が」と、板書の2行で見せる
  • 目上の人に直接「〜てほしいです」と言う(部長に「資料を見てほしいです」)。文法は正しいが要求が強く聞こえやすいので、「見ていただけませんか」「見ていただきたいんですが」に言い換える練習をする

既習の文型との違い

  • 〜たい(初級)「〜たい」は自分がしたいこと、「〜てほしい」はほかの人にしてもらいたいこと。学習者は自分が働きたいのに「私は日本で働いてほしい」と言うことがあるので、だれが動作をするかを毎回確かめる。
  • 〜てもらいたい(初級)「友だちに手伝ってもらいたい」と「手伝ってほしい」はほぼ同じ意味。「もらいたい」は、してもらう恩恵の気持ちが少し前に出る。どちらも本人に向かって言うと強いので、依頼は「〜てもらえませんか」の形にする。
  • 〜がる(第1課)「弟は日本に来たがっている」は、ほかの人の希望を外から見て言う。「弟に日本に来てほしい」は、話す人の希望。希望を持っているのがだれかが逆になる。
関連する文型

学習項目 4 〜とは思えない

意味・はたらき学習項目 4

目の前のことや聞いたことが、ふつうに考えるとそうだとは信じられない、という強い驚きを言う。「初めて作ったとは思えない」「七十歳とは思えない」のように、相手や作品をほめるときによく使う。反対に、「あの人がそんなことを言ったとは思えない」のように、話を疑ったり打ち消したりするときにも使う。文法の見方では、「思える」は自然にそう感じられることを表す自発の動詞で、「〜とは思わない」(自分の意見として思わない)より、どうしてもそう感じられないという感じが強い。「は」は取り立てて意外さを強める。

接続

普通形+とは思えない(作ったとは思えない)/名詞・な形容詞は「だ」を付けても付けなくてもよい(プロ(だ)とは思えない)。「〜とは思えないほど+形容詞」の形でもよく使う

形
V普通形+とは思えない(子どもがかいたとは思えない)N(だ)とは思えない(とても手作りとは思えない)〜とは思えないほど+形容詞(初めてとは思えないほど上手だ)〜とは思えません(丁寧な形)

導入

  • 写真で「信じられない」を作るとても若く見える人の写真や、子どもが作った精巧な工作の写真を見せ、「何歳だと思いますか」「だれが作ったと思いますか」と聞く。本当の答えを言ってから、「七十歳とは思えない」「子どもが作ったとは思えない」と板書する。見た目と本当のことがずれていて信じられないときに使う、と矢印で示す。
  • 「思わない」と並べて強さを比べる「この料理は手作りだと思わない」と「手作りとは思えない」を並べ、どちらがほめているかを学生に聞く。上は自分の意見、下は信じられないほどよくできている、と顔の表情で読み分けて見せる。

板書案

普通形 + とは 思えない
〔赤〕見た目・結果 ⇔ 本当のこと(ずれている)
七十歳 とは 思えない。
初めて 作った とは 思えない ほど おいしい。
〔青〕思わない(私の意見)/思えない(信じられない)
疑う: あの人が うそを つく とは 思えない。

場面と発話(自作)

  • 日本語学校の発表会で、入学して半年の学生が上手なスピーチをした。聞いていた先生が、あとで本人に言う。日本語を勉強してまだ半年とは思えないスピーチでしたよ。
  • 会社の同僚が、休みの日に初めて作ったというケーキを職場に持ってきた。これ、初めて作ったとは思えないほどおいしいですね。
  • 留学生が、真面目な友だちが授業を休んでいると聞き、クラスメートと話す。あの人が理由もなく休むとは思えないから、何かあったのかもしれないね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が写真や短い情報(「この人は八十歳」「これは百円の皿」)を見せ、学生が「〜とは思えない」でほめる文を作る。慣れたら「〜とは思えないほど〜」まで伸ばし、教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が写真カードと本当の情報をキューに出す(「若く見える人・六十歳」「立派な絵・小学生がかいた」「高そうな服・古着屋で千円」「おいしい料理・作り始めて一か月」)。学生は全体で「六十歳とは思えない」と言い、次に一人ずつ「〜とは思えないほど〜」まで言う。
  2. ペア1人が自分の持ち物や写真(スマホの中の写真でよい)を見せて「これ、何だと思う?」と聞き、もう1人が答えを予想する。本当の答えを聞いたら「〜とは思えない」で反応する。見せる人と答える人を交替して3回。
  3. 産出「ほめ言葉ロールプレイ」: 同僚の手料理・友だちの作品・後輩の発表などの場面カードを引き、「〜とは思えない」を使って相手をほめ、相手は謙遜して返す(「いえいえ、それほどでもないです」)。教師は、ほめているのか疑っているのかが文の後ろ(ほど〜・ですね)で伝わっているかを見る。

つまずきと手当て

  • 「〜とは思わない」と同じだと思って使う(ほめたいのに「手作りとは思わない」)。「思わない」は自分の意見、「思えない」は信じられない気持ちだと、表情をつけて読み分ける
  • ほめるつもりが疑いに聞こえる(先生の作品に「先生が作ったとは思えません」だけで終わる)。後ろに「ほど上手」「すごいですね」を足すと、ほめていることがはっきりすると伝える
  • 時の形がずれる(もう作り終えた料理に「初めて作るとは思えない」)。できごとが前にあったなら「作った」、と文の中の時を確かめる

既習の文型との違い

  • 〜と思わない(初級)「〜と思わない」は、考えた結果の自分の意見。「〜とは思えない」は、そう感じようとしても感じられないという自然な気持ちで、驚きやほめ言葉になりやすい。学習者が「思わない」でほめようとすると、そっけなく聞こえることがある。
  • 〜はずがない「あの人がうそをつくはずがない」は、理由や知っていることから考えて、ありえないと強く打ち消す。「〜とは思えない」は、目の前の様子や話を受けての印象で、打ち消しは少しやわらかい。ほめる場面では「〜はずがない」は使わない。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は 21 語(本文を読むための語 21・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。

新しい言葉は本文に出る順で21語。「目が回る」「手を借りる」「口に出す」「手にする」「手に入れる」のように体の部位を使う連語が多いので、動作を見せながらまとめて扱い、「手にする」と「手に入れる」の違い(持つ・自分のものにする)も確かめる。「きっと」(予想)と「ぜひ」(願い・依頼)は学習者が混ぜやすいので、並べて使い分けを確認する。「それほど〜ない」は学習項目の「ほど」と同じ語なので、文型の前に一度触れておくと導入が楽になる。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。

第4課の語彙リスト(21語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い

本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(ことわざ・目が回る・手を借りる・昼寝・のんびり・額・たとえる・小判・価値・手に入れる・使い続ける)から、「猫の手も借りたい」「猫の額」「猫に小判」のような猫が出てくることわざや慣用句を取り上げ、身近な動物に何をたとえているか、昔の言葉を今も使い続けていることの面白さを述べた読み物だと推測される。精読では「どのことわざが出てくるか」「それぞれ何を何にたとえているか」「猫のどんな様子からそのたとえが生まれたと書かれているか」「筆者はことわざについてどう考えているか」の4点を段落ごとに聞く。接続詞の「また」が出るところでは、前の段落に何を付け加えているかを学生に言わせる。

宿題と次のコマ

使いましょう(学習項目1〜4)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの課題として、自分の国の動物が出てくることわざを1つ選び、意味と使う場面を「〜ほど」を1つ以上使って3〜4文で書いてくる。次の課の新しい言葉に目を通しておく。

よくある質問

  • 「〜ほど〜はない」と「〜がいちばん〜」はどう違いますか?

    意味はほぼ同じで、どちらも最上級を言います。「〜ほど〜はない」は、並ぶものが思いつかないという話し手の気持ちが強く、自慢や感動の場面に向きます。調べた結果や順位を落ち着いて伝えるときは「いちばん」のほうが自然です。

  • 比喩の「〜ほど」と「〜くらい」は言い換えられますか?

    「目が回るほど忙しい」「目が回るくらい忙しい」のように、程度を大げさに言う文ではほぼ言い換えられます。「くらい」のほうが会話的で、小さい程度や軽く見る気持ち(それくらいできる)にも使えます。「ほど」は大きい程度に使うことが多いと説明すると整理しやすいです。

  • 「〜てほしい」を目上の人に使ってもいいですか?

    文法としては正しいですが、本人に向かって「〜てほしいです」と言うと要求が強く聞こえやすいです。目上の人への依頼は「〜ていただけませんか」「〜ていただきたいんですが」に言い換える練習まで入れると、教室の外で使えます。ほかの人に自分の希望を話すとき(先生に見てほしいと思っている)は問題ありません。

  • 「〜とは思えない」と「〜と思わない」の違いはどう教えればいいですか?

    「思わない」は考えた結果の自分の意見、「思えない」はそう感じようとしても感じられないという気持ちです。写真や作品を見せて「〜とは思えないほど上手」とほめる場面で導入すると、驚きの気持ちが伝わります。「思える」が自然にそう感じられる意味の動詞だと一言添えるとよいです。

  • 第4課は何コマで終わりますか?

    90分×2コマが目安です。1コマ目に新しい言葉・本文の大意・2つの「ほど」、2コマ目に「〜てほしい」「〜とは思えない」と精読・まとめを入れます。2つの「ほど」は混ざりやすいので、同じコマで板書を左右に分けて続けて扱うのがおすすめです。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

PRこの教科書

手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。