日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

中級から学ぶ日本語 第13課「おもいだす」の教案

『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈昼のにおい〉

においや音をきっかけに昔のことを思い出す、記憶がテーマの課です。本文は、夏の昼のにおいを感じた瞬間に、子どものころの暑い一日や、夕涼み・花火の夜のことがふとよみがえる、という話題の読み物だと新しい言葉から推測されます。文型は、状態が変わらないまま次のことが起きる「〜まま」、話し手が当然だと考えることを言う「〜べきだ/べきではない」、よく知っている人の人柄から予想する「〜のことだから」、始まりや変化のもとになった出来事を言う「〜がきっかけで/をきっかけに」。「〜まま」は「〜て」と、「〜べきだ」は既習の「〜ものだ」「〜ことだ」「〜なければならない」と、「〜がきっかけで」は「〜によって(原因)」と並べて違いを見せるのが芯になります。学習者自身の「思い出」「日本に来たきっかけ」で例が作りやすい課です。

このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ語彙47語

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜まま」で、ある状態を変えないで次のことをした・次のことが起きたことを、「〜て」と区別して言える
  • 「〜べきだ/べきではない/べきだった」で、自分の意見や後悔を、規則を言う「〜なければならない」と言い分けて話せる
  • 「〜のことだから」で、よく知っている人の性格やいつもの様子から、その人の行動や今の様子を予想して言える
  • 「〜がきっかけで/をきっかけに」で、何かを始めたり考えが変わったりしたもとの出来事を、経緯として説明できる
  • 本文を読んで、においや音から昔のことを思い出す経験を、自分の経験と比べて話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
新しい言葉20分47語とほかの課より多いので、全部を同じ重さで扱わない。暑い昼の様子(汗まみれ・乾き切る・ごくごくと・のどを鳴らす・生き返る)は絵と動作で、夏の夜の様子(夕涼み・ゆかた・花火・腰を下ろす・暗やみ)は写真でまとめて見せる。「Nまみれ」「Vマス切る」「N余り」は語の作り方として板書の端に残す。「〜ままに」「〜べき」「〜のことだから」「きっかけ」は学習項目で扱うと予告するだけにする
いっしょに考えましょう10分「においや音で、昔のことを思い出したことはありますか」と聞き、1人1つ「何の・いつのこと」の2点だけ答えさせる。答えを黒板に残すと、学習項目4「〜がきっかけで」の導入にそのまま使える
読みましょう(大意)20分教師の範読→段落ごとの音読→「いつ・何をきっかけに・何を思い出したか」の3点で大意をつかむ。今の場面と昔の場面が行き来する文章なら、段落ごとに『今』か『昔』かだけ確かめ、細かい表現の精読は2コマ目の初めか宿題に回す
答えましょう15分設問を一緒に解き、答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。気持ちを問う設問は、本文の語(ふと・一瞬・ようやく など)を手がかりに口頭で短く答えさせる
使いましょう(学習項目1)25分1コマ目の後半。「〜まま」を導入→口頭→ペアまで。「〜ないまま」と「このまま/昔のまま」も同じ板書に足しておく
使いましょう(学習項目2)20分2コマ目の初め。左に「ルール(〜なければならない)」、右に「わたしの意見(〜べきだ)」の板書で導入し、「〜べきだった」の後悔まで
使いましょう(学習項目3)20分人物カードで「〜のことだから、〜だろう」。後ろを「はずだ」「に違いない」に替える練習を入れ、第9課の「〜はずだ」との違いを一言添える
使いましょう(学習項目4)20分1コマ目の「いっしょに考えましょう」の答えを使って「〜がきっかけで」→区切りの名詞で「〜をきっかけに」。「〜によって(原因)」との違いを例文2つで見せる
まとめましょう・話しましょう20分「においや音で思い出すこと」を4〜5文で(〜がきっかけで/をきっかけに を1つ、〜まま を1つ以上)。話しましょうはペアで「日本に来たきっかけと、来てから変わったこと」
漢字を練習しましょう10分読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する

学習項目 1 〜まま

意味・はたらき学習項目 1

ある状態が変わらずに続いている中で、次のことをする・次のことが起きることを言う。「めがねをかけたまま寝てしまった」のように、ふつうなら変えるはずの状態を変えなかったときに使うことが多く、話し手の『そのままでは変だ』『しまった』という気持ちが出やすい。前は動詞のタ形・ナイ形、形容詞、名詞で、どれも『ある時点から変わっていない状態』を表し、「このまま」「そのまま」「昔のまま」は今の状態を変えないことを言う。文法の見方では、前の部分が後ろの動作のときの様子を言う従属節(付帯状況)にあたる。

接続

動詞のタ形+まま/動詞のナイ形+まま/イ形容詞+まま/ナ形容詞+な+まま/名詞+の+まま。「〜ままで」「〜ままだ」「〜ままにする/ままにしておく」の形もある

形
Vたまま+V(エアコンをつけたまま出かけてしまった)Vないまま+V(朝ご飯を食べないまま授業に出た)Nのまま/Aいまま(町は10年前のままだ/若いままでいたい)Vたままにしておく(窓は開けたままにしておいてください)

導入

  • 絵2枚で『変えなかった状態』を見せる1枚目に靴をはいたまま部屋に上がろうとしている人、2枚目にテレビをつけたまま寝ている人の絵を出す。「靴は?」「はいています」「部屋に入りました」と分けて言わせてから、「靴をはいたまま部屋に入りました」と一文にする。黒板に『はく ━━(ずっと)━━→ 入る』と矢印を書き、はいた状態が切れずに続いていることを見せる。
  • 学習者の『うっかり』を集める「〜たまま寝てしまったことはありますか」と聞き、答え(電気をつけた・化粧をした・コンタクトを入れた)を黒板に並べる。どれも『ふつうは変える状態』なので、「まま」に話し手の『しまった』という気持ちが乗ることを確かめ、続けて「〜ないまま」(歯をみがかないまま)を足す。

板書案

Vた/Vない/Aい/Naな/Nの + まま
めがねをかけたまま寝てしまった。
〔赤〕かける ━━━(変わらない)━━━→ 寝る
〔青〕ふつうは変える状態 → 「しまった」の気持ち
このまま/そのまま/昔のまま

場面と発話(自作)

  • 寮の朝。同じ部屋の友だちが、エアコンが一晩中ついていたことに気づく。昨日、エアコンをつけたまま寝ちゃったみたい。のどが痛い。
  • アルバイト先の店で、店長が新人に開店の準備を説明している。入口のドアは、お客さんが入りやすいように開けたままにしておいてね。
  • 10年ぶりに国の小学校を訪ねた留学生が、日本の友だちに写真を見せる。校舎も校庭も、子どものころのままだったんだ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が絵カード(帽子・コート・コンタクト・電気)を見せて「〜たまま〜てしまった」を言わせ、次に「〜ないまま」(宿題をしない・あいさつをしない)で一回り。そのあと教科書の練習へ。

  1. 口頭教師がキューを二つ組で出す(「靴をはく/部屋に入る」「めがねをかける/おふろに入る」「電気をつける/出かける」「シャワーを浴びない/寝る」)。学習者は全体で「靴をはいたまま部屋に入った」と一文にし、続けて個人指名。肯定(Vたまま)と否定(Vないまま)を交ぜてテンポよく回す。
  2. ペアAは『うっかりカード』(スマホを充電器にさしたまま家を出た・値札を付けたまま服を着た など)を相手に見せずにジェスチャーで演じ、Bが「〜たまま〜たんですか」と当てる。当たったらAが「そうなんです。それで〜」と結果を一文足す。役を交替して3枚ずつ。
  3. 産出「わたしの『そのまま』紹介」: 国を出てからも変わらないもの(自分の部屋・家族の習慣・友だちとの関係)を1つ選び、「〜のまま」「〜たまま」を1回ずつ使って3文で話す。教師は、辞書形に付けていないか、自動詞と他動詞を取り違えていないか、後ろの文が前の状態が続いている間のことになっているかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 動詞の辞書形に付ける(*電気をつけるまま寝た)。状態が始まったあとの話なのでタ形を使うと、矢印の板書の始点を指して確かめる。辞書形に付くのは語彙に出る「言われるままに」「気の向くままに」のような決まった言い方だけだと補う
  • 自動詞と他動詞を取り違える(*電気をついたまま寝た)。「電気をつけたまま」(自分がした状態)と「電気がついたまま」(その状態になっている)を上下に並べ、助詞と動詞をセットで言わせる
  • ふつうの手順の文にも使い、意図しない意味になる(パジャマを着たまま会社に行った=着替えるはずだったように聞こえる)。変えるはずの状態を変えなかったときが「まま」、ただ順に言うだけなら「〜て」でよいと伝える

既習の文型との違い

  • 〜て(初級)「めがねをかけて寝た」は二つの動作を順に言うだけだが、「めがねをかけたまま寝た」は、外すはずのものを外さなかったという気持ちが出る。ふつうの手順なら「〜て」、変えるはずの状態が変わっていないなら「〜まま」と分ける。
  • 〜ないで/ずにいる(第1課)「〜ないでいる」は、しない状態を自分で続けていることを言い、「〜ないまま」は、しない状態のままで次のことが起きる・することを言う。「まだ返事をしないでいる」(今の状態)と「返事をしないまま帰国した」(その状態で次のこと)を並べて見せる。
  • 〜たきり(第17課)「〜たきり」は、ある動作のあと予想された次のことが起きないことを言い(出かけたきり戻ってこない)、話題はその後の『変化のなさ』にある。「〜たまま」は、状態が続いている中で次のことをする・起きることを言う。第17課で出たら、この課の板書と並べるとよい。
関連する文型

学習項目 2 〜べきだ/べきではない

意味・はたらき学習項目 2

話し手が『そうするのが当然だ・正しい』と考えることを言う。規則や事情で決まっていることを言う「〜なければならない」と違い、話し手の意見・判断として言うのが芯で、「〜べきだと思う」の形でよく使う。「〜べきではない」は『そうするのは正しくない』という強い忠告、「〜べきだった」は、しなかったことへの後悔や相手への批判になる。文法の見方では、話し手の判断を表すモダリティ(文の終わりで話し手の気持ちや判断を表す部分)の一つで、義務・当然を表す形として「〜なければならない」「〜ものだ」と並べて問われやすい。

接続

動詞の辞書形+べきだ/べきではない/べきだった(「する」は「するべき」「すべき」の両方)。イ形容詞は「Aくあるべきだ」、名詞・ナ形容詞は「N/Naであるべきだ」。名詞を修飾するときは「べき+N」(やるべきこと)

形
V辞書形+べきだ(困ったときは、早めに相談するべきだ)V辞書形+べきではない(人の話を途中で止めるべきではない)V辞書形+べきだった(もっと早く予約するべきだった)V辞書形+べき+N(今やるべきことを紙に書き出す)

導入

  • 『ルール』と『わたしの意見』を左右に分ける黒板の左に「ルール・決まり」、右に「わたしの意見」と書く。左に「学校には8時50分までに来なければならない」、右に「授業の前に予習するべきだと思う」を置き、「だれが決めた?」と聞く。左は学校、右は話し手自身だと確かめ、「べき」は意見の欄の言葉だと見せる。
  • 失敗談から『べきだった』へ教師が小さな失敗を話す(天気予報を見ないで出かけて、雨にぬれた)。「かさを持っていくべきでした」と言い、過去の『しなかったこと』を今ふり返る形だと示す。続けて学習者に最近の小さな失敗を聞き、「〜べきだった」で言わせる。

板書案

V辞書形 + べきだ/べきではない/べきだった
困ったときは、早めに相談するべきだ。
〔青〕ルール・決まり → 〜なければならない
〔赤〕わたしの意見・判断 → 〜べきだ(と思う)
する → するべき/すべき Aくあるべき Nであるべき

場面と発話(自作)

  • ゼミで『留学生のアルバイト』について話し合っている。留学生が意見を言う。アルバイトは大切ですが、試験の前は時間を減らすべきだと思います。
  • 同僚が、取引先からの急ぎのメールに返事をしないで帰ろうとしている。先輩が声をかける。急ぎの内容なら、今日のうちに返事をするべきじゃないかな。
  • 旅行先で、予約したホテルが駅からとても遠かった。友だちと話す。値段だけで選ばないで、場所もちゃんと確かめるべきだったね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が問題のある状況(毎日遅くまでゲームをしている/約束の時間に遅れそう)を言い、学習者が「〜べきだ」「〜べきではない」で意見を言う。次に過去の失敗を出し「〜べきだった」で一回り。そのあと教科書の練習へ。

  1. 口頭教師がキュー語を出す(「健康」→早く寝る、「お金」→むだづかいをしない、「日本語」→毎日話す、「SNS」→人の悪口を書かない)。学習者は全体で「〜べきだ」「〜べきではない」で言い、次に個人指名で「〜べきだと思います」と意見の形にする。「するべき」と「すべき」を両方言わせる。
  2. ペアテーマカード(大学生はアルバイトをするべきか/子どもにスマホを持たせるべきか)を1枚引き、Aは賛成、Bは反対の立場で「〜べきだと思います。なぜなら〜からです」と1つずつ言う。相手の意見に「でも、〜べきではないと思います」で返し、立場を入れ替えてもう1回。
  3. 産出「ミニ討論『〜べきか』」: グループで1つのテーマを選び、各自が意見を「〜べきだ/べきではない」と理由1つで発表し、最後にグループの結論を一文で言う。教師は、否定の形(べきではない)が正しいか、規則や事実を言う文に「べき」を使っていないか(→なければならない)、目上の人に向けて直接「〜べきです」と言っていないかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 否定の形を間違える(*行くべきない/*行かないべきだ)。否定は「べき」の後ろに付けて「べきではない」になると、板書の形をそのまま指して言わせる
  • 規則や決まっていることに使い、話し手の意見のように聞こえる(日本では、車は左側を走るべきです)。決まりは「〜なければならない」「〜ことになっている」で言うと伝え、『だれが決めた?』と聞いて言い分けさせる
  • 目上の人に直接使い、押しつけているように聞こえる(先生、この本を読むべきです)。目上の人には「〜たほうがいいと思います」「〜てはいかがでしょうか」を使い、「べき」は自分や一般の人についての意見で使うと練習する

既習の文型との違い

  • 〜ものだ(第6課)「〜ものだ」は『ふつうはそうするのが当たり前だ』という社会の常識として言い、「〜べきだ」は話し手自身の判断として言う。「目上の人には敬語を使うものだ」は常識の確認、「この場面では敬語を使うべきだ」は意見になる。
  • 〜ことだ(第7課)「〜ことだ」は目の前の相手への助言で、何をするとよいかを言う(上手になりたいなら、毎日話すことだ)。「〜べきだ」は一般論や第三者についての意見にも使え、助言というより『正しいかどうか』の判断が前に出る。
  • 〜なければならない(初級)「〜なければならない」は規則・事情・必要から『そうするしかない』ことを言い、話し手の意見でなくても使える。「明日までにレポートを出さなければならない」は事実、「レポートは自分の言葉で書くべきだ」は意見。
関連する文型

学習項目 3 〜のことだから

意味・はたらき学習項目 3

ある人(や店・会社)の性格やいつもの様子をよく知っているので、そこから『きっと〜だろう』と判断することを言う。後ろには「〜だろう」「〜はずだ」「〜に違いない」「〜んじゃないかな」など、予想や判断の言い方が来ることが多い。よい予想にも(まじめな彼のことだから、もう準備しているだろう)、困った予想にも(あの人のことだから、また遅れてくるよ)使え、話し手がその人をよく知っているという親しさが出る。また「子どものことだから、大目に見よう」のように、相手の立場や性質から『しかたがない』と判断する使い方もある。

接続

名詞(人・店・会社など)+のことだから。性格やいつもの様子を言う語を前に付けることも多い(「まじめな彼のことだから」「時間に厳しい山本さんのことだから」)

形
Nのことだから、〜だろう(中村さんのことだから、きっと間に合うだろう)〔性格〕Nのことだから、〜はずだ(心配性の母のことだから、何度も電話してくるはずだ)Nのことだから、〜んじゃないかな(あの店のことだから、今日も並んでいるんじゃないかな)

導入

  • 『いつもの人』で予想させる教師が架空の人物を2人紹介する(いつも10分前に来る山本さん/よく寝坊する佐藤さん)。「明日の朝8時に駅で会います。山本さんは?」と聞き、学習者の「早く来ると思う」を受けて「山本さんのことだから、もう来ているでしょう」と言う。佐藤さんでも同じことをし、前の性格が予想の理由になっていることを矢印で見せる。
  • 『よく知っている』が条件だと確かめる「駅で隣にいる知らない人のことだから……」と言いかけて止め、「知らない人のことは分かりませんね」と言う。「〜のことだから」は、話し手がその人をよく知っているときだけ使うと板書の欄外に書く。

板書案

N(よく知っている人)+ のことだから、〜だろう/はずだ
まじめな山本さんのことだから、もう来ているだろう。
〔青〕性格・いつもの様子 ━━→ 〔赤〕予想・判断
知らない人 → 使わない

場面と発話(自作)

  • 会議の資料がまだ届いていないと、同僚が心配している。留学生の社員が言う。仕事の早い木村さんのことだから、もう送ってくれていると思いますよ。メールを見てみます。
  • 友だちの誕生日会。いつも遅れてくる友だちが、まだ来ない。あいつのことだから、また駅で道に迷ってるんじゃないかな。
  • 国の家族に、年末は帰らないと伝えた。日本の友だちに話す。母のことだから、きっと料理をたくさん作って待ってたんだろうな。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が人物カード(まじめ・忘れっぽい・料理が好き・時間に厳しい)を見せ、状況を一つ足す(「明日はパーティーです」)。学習者が「〜さんのことだから、〜だろう」で予想する。そのあと教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が人物の特徴と状況を組で出す(「忘れっぽい鈴木さん/明日の約束」「料理が好きな姉/ホームパーティー」「心配性の父/わたしの一人旅」)。学習者は全体で「忘れっぽい鈴木さんのことだから、約束を忘れているだろう」と一文にし、続けて個人指名。後ろを「だろう」「はずだ」「に違いない」と替えて言わせる。
  2. ペア情報差の練習。Aは人物の特徴が書かれたカード、Bは状況だけのカードを持つ。Bが「〇〇さん、どうしてまだ来ないのかな」と聞き、Aがカードの特徴を使って「〇〇さんのことだから、〜んじゃない?」と答える。Bは「たしかにそうかも」か「いや、今日は〜」で返す。交替して3回。
  3. 産出「わたしの家族・友だち予想」: 家族か親しい友だちを1人選び、その人の性格を一文で紹介したあと、「〜のことだから、今ごろ〜ているだろう」で今の様子を予想して話す。教師は、「の」が落ちていないか、前の名詞が話し手のよく知っている人か、後ろが予想・判断の形になっているかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 「の」を落とす(*山本さんことだから)。「Nのこと」で一つのまとまりだと、「山本さんのこと」を先に言わせてから「だから」を付ける
  • 初めて会った人や性格の分からない人に使う(隣の席の人のことだから、きっと親切だろう)。話し手がその人をよく知っていることが前提なので、見た様子からの判断なら「〜そうだから」「〜ようだから」で言い換えさせる
  • ただの理由として使い、後ろが話し手の判断になっていない(山本さんのことだから、わたしは駅で待った)。後ろには『その人ならきっとこうだ』という予想や『だからしかたがない』という判断が来ると確かめ、理由だけなら「〜から」「〜ので」でよいと伝える

既習の文型との違い

  • 〜はずだ(第9課)「〜はずだ」は、知っている事実や理由から筋道を立てて『当然そうなる』と判断し、理由は人の性格に限らない(電車が動いているから、もう着くはずだ)。「〜のことだから」は、理由が『その人の性格・いつもの様子』に限られ、後ろに「はずだ」を置いて「〜のことだから、〜はずだ」と組み合わせることも多い。
  • 〜だけに(第15課)「〜だけに」も前の事情から当然の結果や評価を言うが、立場・経験・努力のような事情を理由にし(10年住んでいただけに、町に詳しい)、感想や評価の文になりやすい。「〜のことだから」は、話し手がよく知る人の人柄からの予想で、親しみのある話し言葉に多い。
関連する文型

学習項目 4 〜がきっかけで/をきっかけに

意味・はたらき学習項目 4

ある出来事がもとになって、何かを始めたり、気持ちや人との関係が変わったりしたことを言う。後ろには「〜ようになった」「〜始めた」「〜ことにした」など、始まりや変化の文が来るのがふつうで、事故や災害のような『原因→結果』(〜で電車が止まった)とは少し違い、間に人の気持ちや選択が入る。「〜がきっかけで」は出来事を話題にして経緯を説明する言い方、「〜をきっかけに」は出来事を区切りにして次の行動に移る言い方で、作文やニュースでは「〜をきっかけに」がよく使われる。前は名詞か、「Vたの/Vたこと」で名詞の形にした文が来る。

接続

名詞+がきっかけで/をきっかけに(して)。文のときは「Vたの/Vたこと」+がきっかけで/をきっかけに。「〜がきっかけになって」「〜のきっかけは〜だ」の形もある

形
Nがきっかけで(友だちの一言がきっかけで、料理を始めた)Vたのがきっかけで(アニメを見たのがきっかけで、日本語に興味を持った)Nをきっかけに(入学をきっかけに、一人暮らしを始めた)〜のきっかけは〜だ(日本に来たきっかけは、高校の交流プログラムだ)

導入

  • 『日本に来たきっかけ』を矢印で教師が自分の例を話し、黒板に『高校で日本語の先生に会った → 日本語を勉強し始めた』と矢印で書く。矢印の根元に「がきっかけで」を書き、「日本語の先生に会ったのがきっかけで、日本語を勉強し始めました」と言う。前が文のときは「〜たのが」と名詞の形にすることを、「の」を丸で囲んで見せる。1コマ目の「いっしょに考えましょう」の答え(においで思い出した)も同じ矢印で言い直させる。
  • 区切りの出来事で「をきっかけに」「入学」「就職」「引っ越し」「結婚」のカードを出し、「入学をきっかけに、何を始めましたか」と聞く。人生の区切りになる名詞が前に来やすいことを確かめ、「がきっかけで」の経緯の話と並べて、どちらでも言える文が多いことを見せる。

板書案

N/Vたの + がきっかけで、〜ようになった/始めた
N + をきっかけに、〜
先生に会ったのがきっかけで、日本語を勉強し始めた。
〔赤〕出来事 ━━→ 〔青〕始まり・変化(人が何かを始める・変わる)
入学・就職・帰国 + をきっかけに

場面と発話(自作)

  • 会社の面接で、なぜ日本で働きたいのか聞かれた。大学で日本の会社のインターンに行ったのがきっかけで、日本で働きたいと思うようになりました。
  • 同じアパートの人と最近よく話すようになった。友だちに理由を話す。台風の日に停電したのがきっかけで、隣の人と話すようになったんだ。
  • 留学生が、日本での生活の変化について作文を書いている。一人暮らしを始めたのをきっかけに、毎日自分で料理をするようになった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が出来事カード(友だちの誘い・テレビ番組・入院・引っ越し)を見せ、学習者が「〜がきっかけで、〜ようになった/始めた」で変化を言う。次に区切りの名詞(入学・就職・帰国)で「〜をきっかけに」を一回り。そのあと教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が出来事と変化を組で出す(「京都に旅行した/歴史が好きになった」「友だちに誘われた/テニスを始めた」「就職/毎朝早く起きる」「病気をした/野菜を食べるようになった」)。学習者は全体で一文にし、前が文のときは「〜たのがきっかけで」、名詞のときは「〜をきっかけに」と形を替える。個人指名では前を変えずに後ろだけ自分のことに替えさせる。
  2. ペアインタビュー練習。Aが「〜を始めたきっかけは何ですか」と聞き(趣味・日本語・アルバイト・今の友だち)、Bが「〜がきっかけで〜」で答える。Aはもう一つ「それで、何が変わりましたか」と聞き、Bは「〜をきっかけに〜ようになりました」で答える。交替して2テーマずつ。
  3. 産出「わたしの転機スピーチ」: 自分の生活や考えが変わった出来事を1つ選び、「〜がきっかけで」「〜をきっかけに」を1回ずつ使って4文で話す(出来事→変化→今)。教師は、文のときに「の」が落ちていないか、「が・で」「を・に」の組み合わせが崩れていないか、後ろが始まりや変化の文になっているかを聞いて直す。

つまずきと手当て

  • 文にそのまま付ける(*日本語の先生に会ったがきっかけで)。前が文のときは「の」か「こと」で名詞の形にすると、板書の丸で囲んだ「の」を指して言い直させる
  • 助詞の組み合わせを崩す(*入学をきっかけで/*入学がきっかけに)。「がきっかけで」「をきっかけに」はセットで覚えると伝え、二つの形を板書で上下に並べて読ませる
  • 原因と結果だけの文に使い、不自然になる(大雨がきっかけで、電車が止まった)。止まったのは出来事の直接の結果で、だれかが何かを始めたり変わったりしたわけではないので、「〜で」「〜によって」で言うと伝える。『そのあと、だれが何を始めた?』と聞くと見分けやすい

既習の文型との違い

  • 〜によって(原因)(第7課)「〜によって」は出来事が直接の原因になって結果が起きたことを言い、事故や災害を伝える文に多い(大雨によって、電車が止まった)。「〜がきっかけで」は、出来事が始まりになって人が何かを始めたり変わったりしたことを言い、間に人の気持ちや選択が入る。
  • 〜ことから(第19課)「〜ことから」は、ある事実を理由や判断の手がかりにすることを言い、名前の由来の説明にもよく使う(形が似ていることから、この名前が付いた)。「〜がきっかけで」は時間の流れの中での始まりを言い、根拠を示す言い方ではない。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は 47 語(本文を読むための語 47・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。

新しい言葉は本文に出る順で47語と、ほかの課より多い。全部を同じ重さで扱わず、場面ごとにまとめる。暑い昼の様子(汗まみれ・乾き切る・ごくごくと・のどを鳴らす・生き返る)は絵と動作で、夏の夜の様子(夕涼み・ゆかた・花火・打ち上げ・腰を下ろす・暗やみ)は写真で見せると早い。「Nまみれ」「Vマス切る」「N余り」は語の作り方として、ほかの語に広げて確かめる(どろまみれ・使い切る・100人余り)。「一瞬」「瞬間」「ふと」は思い出す場面の言葉として、学習項目4「きっかけ」とつなげる。「〜ままに」「〜べき」「〜のことだから」「きっかけ」は語彙にも出るが、意味と使い方は学習項目でまとめて扱う(「〜ままに」は学習項目1の「〜まま」と並べて違いを見せる)。「〜がてら」「〜つつ」は意味の確認にとどめ、「〜ながら」との違いは聞かれたら答える程度でよい。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。

第13課の語彙リスト(47語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い

本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(思い出す・連想・帰宅・汗まみれ・乾き切る・ごくごくと・生き返る・夕涼み・花火・ゆかた・暗やみ・瞬間・きっかけ・ふと・10年余り・ねだる・眺める)から、あるにおいを感じた瞬間に、子どものころの暑い夏の一日や、夕涼みや花火をした夜のことがふとよみがえる、という話題の読み物だと推測される。精読では「今、何をきっかけに思い出したか」「思い出した昔の場面は、いつ・どこで・だれといたときか」「昔の場面の暑さや涼しさを表す言葉はどれか」「筆者は思い出して今どんな気持ちか」の4点を段落ごとに聞く。今と昔の場面が行き来する文章なら、段落の頭で『今』か『昔』かを学習者に言わせ、時間の変わり目に印を付けさせる。本文に「〜まま」「〜べき」「〜のことだから」が出ていれば、その文で止めて、だれの状態・だれの判断・だれについての予想かを確かめる。

宿題と次のコマ

使いましょう(学習項目1〜4)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの「においや音で思い出すこと」を4〜5文(〜がきっかけで/をきっかけに を1つ、〜まま を1つ以上)で書いてくる。次のコマは本文の精読の続きと話しましょう。

よくある質問

  • 第13課「おもいだす」は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と学習項目1「〜まま」、2コマ目で学習項目2〜4とまとめ・漢字まで進めます。新しい言葉が47語と多いので、語彙の確認を宿題で先に済ませておくと、精読に時間を回せます。

  • 「めがねをかけて寝た」と「めがねをかけたまま寝た」はどう違いますか?

    「かけて寝た」は二つの動作を順に言うだけですが、「かけたまま寝た」には、外すはずのめがねを外さなかったという気持ちが入ります。そのため「〜まま」の文は「〜てしまった」と一緒に使われやすくなります。導入では、ふつうは変える状態かどうかを学習者に聞いてから形を選ばせると、違いがつかみやすくなります。

  • 「〜べきだ」と「〜なければならない」の違いはどう説明すればいいですか?

    「だれが決めたか」で分けるのが分かりやすいです。規則や事情で決まっていることは「〜なければならない」、話し手が正しいと考える意見は「〜べきだ」で、「〜べきだと思います」の形で練習させると意見の言葉だと定着します。目上の人に直接「〜べきです」と言うと強く聞こえることも、あわせて伝えます。

  • 「〜のことだから」の前にはどんな名詞が来ますか?

    話し手がよく知っている人や、店・会社などの名前が来ます。「まじめな彼のことだから」のように性格を言う語を前に付けると、後ろの予想の理由がはっきりします。初めて会った人や性格の分からない人には使わないことを、知らない人の例で確かめさせます。「子どものことだから」「新人のことだから」のように、立場や性質から判断する使い方もあります。

  • 「〜がきっかけで」と「〜をきっかけに」はどう使い分けますか?

    多くの文はどちらでも言えます。「がきっかけで」は出来事を話題にして経緯を説明する言い方で会話に多く、「をきっかけに」は入学・就職のような区切りを境に次の行動に移る言い方で、作文やニュースでよく見ます。教室ではまず二つをセットで覚えさせ、後ろが始まりや変化の文になっていることを先に押さえさせます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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