中級から学ぶ日本語 第2課「みつける」の教案
『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈花の名前〉
身近なものに気づく・見つけることがテーマの課です。本文は、毎日の通勤・通学の道や乗り物の中で、耳に入る話や名前の分からない花、いつも会う人に気づいていく、という話題の読み物だと新しい言葉から推測されます。文型は、何かをしたときに見つけたことを言う「〜と、〜た」、自分で決めたことを言う「〜ことにする/した」とそれを習慣として続ける「〜ことにしている」、そして形が同じで意味が二つある「〜ながら」(同時/逆接)。「ことにした」と「ことにしている」、同時と逆接の「ながら」は、続けて導入して違いを見せるのが芯になります。
このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目5時間90分×2コマ語彙21語
この課のねらい(Can-do)
- 「〜と、〜た」で、何かをしたときに見つけたこと・意外だったことを、体験として話したり書いたりできる
- 「〜ことにする/した」で、迷ったあとに自分で決めたことを、理由と一緒に人に伝えられる
- 「〜ことにしている」で、自分で決めて続けている習慣(マイルール)を説明でき、「〜ことになる」「〜ようにしている」と言い分けられる
- 「〜ながら」の同時と逆接を見分け、同時は一人の二つの動作に、逆接は「〜のに」に近い改まった言い方として使える
- 本文を読んで、ふだん見過ごしているものに気づく面白さを、自分の経験と比べて話せる
進め方と時間配分
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
| 新しい言葉 | 15分 | 21語。読みと短い意味を確かめる。「耳に入る」「見当をつける」「気が進まない」は体や気持ちを使った決まった言い方としてまとめ、「にっこり」「会釈」は教師が動作で見せる。「見つける/見つかる」「動く/動かす」は自他の組で板書の端に残す |
| いっしょに考えましょう | 10分 | 「毎日通る道で、最近気づいたもの・見つけたもの」を1人1つ。答えを黒板に残すと、学習項目1「〜と、〜た」の導入にそのまま使える |
| 読みましょう(大意) | 20分 | 教師の範読→段落ごとの音読→「だれが・どこで・何に気づいたか」の3点で大意をつかむ。細かい表現の精読は2コマ目の初めか宿題に回してよい |
| 答えましょう | 15分 | 設問を一緒に解き、答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。気持ちの変化を問う設問は、本文の語(にっこり・会釈など)を手がかりに口頭で短く答えさせる |
| 使いましょう(学習項目1・2) | 30分 | 1コマ目の後半。「〜と、〜た」→「〜ことにする/した」。各項目は導入→口頭→ペアまで。産出の活動は2コマ目の初めに回してもよい |
| 使いましょう(学習項目3〜5) | 60分 | 2コマ目。「ことにした」の板書を残して「ことにしている」へつなぐ(20分)。同時の「ながら」(20分)のあと、同じ板書の横に逆接の「ながら」(20分)を並べ、混ぜた文でどちらかを答えさせる |
| まとめましょう・話しましょう | 20分 | 「最近決めたことと、続けていること」を3〜4文で(ことにした/ことにしている を1つずつ)。話しましょうはペアで「毎日の道で見つけた小さな発見」を「〜と、〜た」で |
| 漢字を練習しましょう | 10分 | 読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する |
学習項目 1 〜と、〜た(発見・意外)
意味・はたらき学習項目 1
前の文の動作をしたとき(した直後に)、思いがけないことを見つけた・気づいたことを言う。後ろの文は話し手が自分で決められない事実で、過去形(〜た/〜ていた)になる。後ろが「〜ていた」なら、行ったときにはもうその状態だったこと、「〜た」ならその場で起きた出来事。初級の「春になると暖かくなる」のようないつも成り立つ条件の「と」とは違い、一回の出来事の報告で、物語・日記・体験談によく出る。文法の用語では、条件表現の「と」の「発見」の用法と呼ばれることが多い。
接続
動詞の辞書形(ない形も)+と、〜た/〜ていた。前の文は過去形にしない
形
V辞書形+と、Nが〜ていた(窓を開けると、雪が積もっていた)V辞書形+と、〜た(角を曲がると、急に海が見えた)V辞書形+と、〜と分かった(地図で調べてみると、すぐ近くの店だと分かった)
導入
- ドアの絵で「開ける前/開けたあと」を見せる閉まったドアの絵を見せて「中に何があると思いますか」と聞き、紙をめくって中を見せる(部屋に猫がいる)。「ドアを開けると、猫がいました」と言い、「と」の後ろは自分で決めたことではなく、見つけたことだと確かめる。後ろが「〜ていた」(もうその状態)と「〜た」(その時起きた)になる例を1枚ずつ足す。
- 「いっしょに考えましょう」の答えを使う学習者が挙げた「最近気づいたもの」を1つ取り上げ、「どこで?何をしたとき?」と聞き返す。「駅の裏を歩く」「花を見つけた」のように答えが出たら、教師が「駅の裏を歩くと、きれいな花が咲いていた」とつないで黒板に書き、驚きの気持ちがあることを表情で見せる。
板書案
V辞書形 + と、〜た/〜ていた(見つけたこと)
ドアを開けると、猫がいた。
〔赤〕「と」の前=自分の動作 〔青〕後ろ=見つけたこと(自分では決められない)
〔誤りの例〕*駅に着くと、電話してください。→ 着いたら
場面と発話(自作)
- 留学生が週末に初めて近所の公園の奥まで行った。月曜日、クラスの友だちに話す。公園の奥まで歩いていくと、小さな池があって、カメがたくさんいたんだよ。
- 会社員が朝、駅に着くと様子がいつもと違った。遅れる理由を課長に電話で説明する。駅に着くと、事故で電車が止まっていました。30分ほど遅れます。
- アルバイト先で、店長に頼まれて届いた箱を開けた。中身が注文と違う。店長、箱を開けてみると、ちがう色のシャツが入っていました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が動作カード(冷蔵庫を開ける・辞書で調べる・窓の外を見る)を出し、学習者が「〜と、〜ていた/〜た」で見つけたことを続ける。後ろの文が過去形で、意外さが出ているかを確かめてから教科書の練習へ。
- 口頭教師が動作カードと結果の絵を同時に見せ(冷蔵庫を開ける→何もない/かばんを開ける→かぎがない/カーテンを開ける→雪)、全体で「冷蔵庫を開けると、何もなかった」と言う。次に結果の絵を伏せ、学習者が自分で後ろを作る。個人指名で3〜4人。
- ペアAは「家に帰る」「メールを開く」などの動作だけのカード、Bは結果の絵だけのカードを持つ(情報差)。Aが「家に帰ると……?」と始め、Bが絵を見て「家に帰ると、部屋の電気がついていた」と続ける。4枚ごとに役を交替する。
- 産出「びっくり報告」: 日本に来てから驚いたことを1つ選び、「〜と、〜た」を使って30秒で話す。聞き手は「それで?」と質問を1つする。教師は、前の文が辞書形か、後ろが過去形で話し手の意志ではない事実になっているかを聞き取り、終わってから全体で2、3例を直す。
つまずきと手当て
- 前の文を過去形にする(*窓を開けたと、雨が降っていた)。過去の話でも「と」の前は辞書形のままだと板書の枠で固定し、何度か言わせる
- 後ろの文に頼みや自分の意志を置く(*駅に着くと、電話してください)。「と」の後ろは見つけたこと・起きたことなので、頼みや自分で決めたことは「〜たら」で言うと手当てする(駅に着いたら、電話してください)
- 一回の発見なのに後ろを現在形にして、いつもの条件と区別がつかなくなる(ドアを開けると、猫がいる)。体験の報告なら後ろを過去にする、と時間の線を引いて見せる
既習の文型との違い
- 〜と(初級・いつもそうなる)初級の「ボタンを押すと、お茶が出る」は、いつも同じ結果になる条件で、後ろは現在形。この課の「〜と、〜た」は一回の出来事の中で見つけたことで、後ろは過去形。学習者が「ボタンを押すと、お茶が出た」と言ったら、いつもの話か一回の話かを聞き返して確かめる。
- 〜たら、〜た(初級)「窓を開けたら、雪が積もっていた」も発見を言える。「たら」は話し言葉に多く、「と」は物語や作文のような書き方に多い。後ろに頼み・意志を置けるのは「たら」だけ(*駅に着くと、電話してください/駅に着いたら、電話してください)。
関連する文型
学習項目 2 〜ことにする/した
意味・はたらき学習項目 2
自分で考えて、何かをする(しない)と決めることを言う。「〜ことにした」は、決めたという結果を人に伝えるときに一番よく使い、「〜ことにする」はその場で決めるとき(じゃあ、今日は休むことにする)に使う。決めるのは話し手(主語)自身で、会社や学校、まわりの事情で決まったときは「〜ことになる」を使う。予定を言う「〜つもりだ」と比べると、迷ったり考えたりしたあとの「決定」という気持ちがはっきり出る。
接続
動詞の辞書形/ない形+ことにする/ことにした。名詞なら「〜する」を入れる(帰国することにした)
形
V辞書形+ことにした(来年、大学院を受けることにした)Vない形+ことにした(夜はスマホを見ないことにした)V辞書形+ことにする(じゃあ、今日はタクシーで帰ることにするよ)
導入
- 迷っている絵から「決めた」へ「A店とB店、どちらでアルバイトする?」と迷っている人の絵を出し、「時給が高いのはA、近いのはB……」と考える様子を見せる。最後に「Bでアルバイトすることにしました」と言い、決めた瞬間を指で示す。「つもり」との違いは、迷ったあとに決めたことだ、と一言添える。
- 学習者の最近の決定を集める「最近、何か決めたことはありますか」と聞き、答え(引っ越す・自転車を買う・甘いものをやめる)を黒板に書く。する決定とやめる決定を左右に分け、「〜ことにした」「〜ないことにした」を並べる。
板書案
V辞書形/Vない形 + ことにする(今決める)/ことにした(決めた)
来月から自転車で通うことにした。
迷う → 考える → 〔赤〕決める(自分で)
〔青〕会社・学校・まわりが決めた → 〜ことになった
場面と発話(自作)
- 留学生が、国に帰るか日本で働くかずっと迷っていた。日本語学校の先生に報告する。先生、いろいろ考えて、日本で就職することにしました。
- 友だち3人で週末の予定を相談している。雨の予報が出た。雨みたいだから、山はやめて、美術館に行くことにしようか。
- 体の調子が悪く、医者に相談したあと、同僚に話す。しばらく、夜遅くまで残業しないことにしたんです。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が迷う状況(引っ越すかどうか・サークルをやめるかどうか)を出し、学習者が「〜ことにした」で決定を言う。続けて「どうして?」と聞き、理由を一文添えさせてから教科書の練習へ。
- 口頭教師が状況カード(家賃が上がった/駅から遠い/料理が苦手/朝起きられない)を出し、全体で「引っ越すことにした」「お弁当は買うことにした」のように決定を言う。カードを回し、する/しないの両方を言わせる。個人指名でテンポよく。
- ペアAが「迷っていること」のカード(日本の大学に行くか国の大学に行くか など)を読み、Bが質問を2つして意見を言う。Aは最後に「じゃあ、〜ことにする」とその場で決める。交替して2回ずつ。
- 産出「決めましたスピーチ」: 今年自分が決めたことを1つ、理由と一緒に3文で話す(〜ことにした を1回、理由に〜ので)。教師は、決めたのが本人か、会社や学校が決めたことを「ことにした」で言っていないか(→ことになった)を聞いて直す。
つまずきと手当て
- 会社や学校が決めたことに使い、自分で決めたように聞こえる(会社の方針で、来月から大阪に転勤することにしました)。自分で決めたのか決められたのかを聞き返し、決められたときは「〜ことになりました」と言い換える
- 名詞にそのまま付ける(*帰国ことにした)。「こと」の前は動詞の形だけなので、「帰国することにした」と「する」を入れる
- 人への報告に「〜ことにします」を使い、その場で決めているように聞こえる(来年、結婚することにします)。決めたあとの報告なら「ことにした/しました」が自然だと、場面を分けて練習する
既習の文型との違い
- 〜つもりだ(初級)「つもり」は前から持っている予定や意図を言い、「ことにした」は迷ったり相談したりしたあとに決めたことを言う。どちらも使える場面は多いが、「いろいろ考えて」「結局」が前に来ると「ことにした」が自然。
- 〜ことになる(初級)「〜ことになる/なった」は、会社・学校・話し合いなど、話し手以外の力で決まったことを言う。自分で決めたことでも、控えめに伝えるために「〜ことになりました」を使う人は多い。学習者にはまず「自分で決めた=ことにした」「決められた=ことになった」で区別させる。
関連する文型
学習項目 3 〜ことにしている/していた
意味・はたらき学習項目 3
自分で決めたことを、習慣やルールとして続けていることを言う。「毎朝7時に起きる」は事実だけだが、「毎朝7時に起きることにしている」と言うと、そう決めて守っているという気持ちが出る。「〜ことにしていた」は、前はそう決めて続けていたこと(いまは違う、またはそのときはそうしていた)を言う。寮や会社・法律などの決まりは「〜ことになっている」で言い、「ことにしている」は話し手(主語)が自分に決めたルールに使う。
接続
動詞の辞書形/ない形+ことにしている/ことにしていた
形
V辞書形+ことにしている(寝る前に10分、日本語のニュースを聞くことにしている)Vない形+ことにしている(夜9時を過ぎたら、何も食べないことにしている)V辞書形+ことにしていた(国にいたころは、日曜日に家族と昼ご飯を食べることにしていた)
導入
- 学習項目2の「決めた」から続ける前の項目の例「自転車で通うことにした」を黒板に残し、横に矢印で「毎日そうしている」と書く。「自転車で通うことにしている」と言い、決めたあと続けている状態だと確かめる。「〜ている」が習慣を表すことを思い出させる。
- 教師の「マイルール」を3つ教師が自分のルールを3つ紹介する(授業の前は甘いものを食べない・週末は仕事のメールを見ない など)。学習者に「先生のルールは?」と聞いて言い直させ、「〜ないことにしている」の形も一緒に出す。
板書案
V辞書形/Vない形 + ことにしている(決めて、続けている)
寝る前は、スマホを見ないことにしている。
ことにした 〔赤〕→ ことにしている(決めた → 続けている)
〔青〕寮・会社・法律の決まり → 〜ことになっている
場面と発話(自作)
- 飲み会に誘われたが、次の日に試験がある。同じクラスの友だちに断る。ごめん、試験の前の日は飲みに行かないことにしてるんだ。
- 新しい職場で、上司に健康のために何かしているかと聞かれた。会社では、エレベーターは使わないで階段を上ることにしています。
- 日本人の友だちに、国にいたころの生活を聞かれた。国にいたころは、毎朝市場で果物を買うことにしていたんだ。こっちは高くて、なかなか買えないけど。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「健康」「お金」「勉強」などの話題を出し、学習者が自分のルールを「〜ことにしている/〜ないことにしている」で言う。国にいたころのルールは「〜ことにしていた」で言わせ、いまと比べてから教科書の練習へ。
- 口頭教師が話題カード(お金/健康/スマホ/勉強)を見せ、教師の例を1つ言ったあと、全体→個人で自分のルールを言う。キューに「毎日」「〜ときは」「〜前に」を添えると文が作りやすい。
- ペア「マイルールインタビュー」: Aが話題カードを引いて「お金のことで、何か決めていることはある?」と聞き、Bが「〜ことにしている」で答える。Aは「どうして?」と理由を聞き、Bは「〜から」で答える。4枚で交替。
- 産出「マイルール紹介」: 自分のルールを3つ書き、理由をつけてクラスに紹介する(いまのルール2つ+前のルール1つを「ことにしていた」で)。教師は、寮や会社の規則を「ことにしている」で言っていないか、「ようにしている」の方が合う「できるだけ」の話になっていないかを見る。
つまずきと手当て
- 寮や会社の規則を言うのに使い、自分で決めたように聞こえる(この寮では、夜10時までに帰ることにしています)。規則は「〜ことになっています」、自分のルールは「ことにしています」と、だれが決めたかで分ける
- 「こと」の前に「の」を入れる(*飲まないのことにしている)。動詞の形に直接「こと」が付くと、板書の枠で確かめる
- 「ことにしていた」を「ことにした」のていねいな言い方だと思う。「していた」は前の習慣、または決めていたのにそうならなかった話(早く寝ることにしていたのに、友だちが来た)になると、時間の線で見せる
既習の文型との違い
- 動詞+ようになる/なくなる(習慣の変化)(第1課)第1課の「〜ようになった」は、気づいたら習慣が変わっていたという変化を言い、自分で決めたかどうかは言わない。「〜ことにしている」は自分で決めて守っている習慣。「毎朝走るようになった」と「毎朝走ることにしている」を並べ、決めた気持ちがあるのはどちらかを聞くと区別がつく。
- 〜ようにしている(初級)「〜ようにしている」は、できるだけそうしようと心がけていること(できない日もある)。「〜ことにしている」は、はっきり決めたルール。「なるべく」「できるだけ」が前に来るなら「ようにしている」が自然、と目安を示す。
関連する文型
学習項目 4 〜ながら(同時)
意味・はたらき学習項目 4
一人の人が、二つの動作を同じときにしていることを言う。後ろの動作が主で、「ながら」の前はそれをしているあいだに一緒にしている動作。「音楽を聞きながら勉強する」は勉強が主、「勉強しながら音楽を聞く」は音楽が主になる。主語は前後で同じで、前の動詞は続けてする動作(聞く・歩く・話す)がふつう。「アルバイトをしながら大学に通う」のように、長い期間ずっと並行していることにも使える。
接続
動詞のます形(「ます」を取った形)+ながら
形
Vます形+ながら+V(歩きながら電話する)Nを+Vます形+ながら(地図を見ながら道を探す)Vます形+ながら(長い期間)(働きながら日本語学校に通う)
導入
- 教師が動作で見せる教師が歩きながら本を読む、コーヒーを飲みながら書く、を実際にやって見せる。「何をしていますか」と聞き、2つの動作が答えに出たら「歩きながら本を読んでいます」とまとめる。次に、主な動作を変えると前後が入れ替わることを、絵2枚で見せる。
- 学習者の「ながら生活」「何かをしながら、何をしますか」と聞く(ご飯を食べながら動画を見る・通学しながら単語を覚える)。答えを集め、本文の「通う」「利用」の語とつなげて、長い期間の「働きながら通う」も足す。
板書案
Vます + ながら、〔赤〕V(主な動作)
音楽を聞きながら、〔赤〕勉強する。
〔青〕主語は1人(前後で同じ人)
働きながら、大学に通う。(長い期間も)
場面と発話(自作)
- 日本人の友だちに、どうやって単語を覚えているか聞かれた。電車の中で、アプリを使いながら覚えてるよ。
- 会社の面接で、留学中の生活を説明する。日本語学校に通いながら、週に3日、ホテルでアルバイトをしていました。
- 料理教室で、講師が参加者に手順を説明する。火を弱くして、よく混ぜながら少しずつ水を入れてください。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が2つの動作の絵(料理する+電話する、歩く+スマホを見る)を出し、学習者が「〜ながら〜」で言う。主な動作を教師が指で示し、前後の順を入れ替えて言わせてから教科書の練習へ。
- 口頭絵カード2枚を組み合わせて見せる(運転する+歌を歌う/シャワーを浴びる+考える/歩く+電話する)。全体→個人で「〜ながら〜」。教師が赤丸を付けた方を主な動作として後ろに置かせ、前後を入れ替える練習も入れる。
- ペア「ながらジェスチャー」: Aがカードの2つの動作を声を出さずにやって見せ、Bが「〜ながら〜していますね」と当てる。主な動作を大きく、もう一つを小さくやるように指示しておくと、前後の順が決まる。3回で交替。
- 産出「わたしのながら時間」: 一日の中で何かをしながら何かをしている時間を3つ書き、それが良いか悪いか自分の意見を一言添えて発表する。教師は、主語が前後で同じか、一瞬で終わる動作(着く・座る)に「ながら」を付けていないかを見る。
つまずきと手当て
- 主語が違う二人の動作に使う(*私が料理しながら、妹は掃除をした)。「ながら」は一人の動作だけなので、二人なら「私が料理している間、妹は掃除をした」と言い換える
- 一瞬で終わる動作に付ける(*駅に着きながら、電話をした)。続けてする動作かどうかを、手の動きで「長い/一瞬」と見せて確かめる
- 言いたい方を前に置いてしまう(伝えたいのは勉強なのに「勉強しながら音楽を聞いた」)。文としては正しいが、話し手が一番言いたい動作が後ろに来ると、2枚の絵で比べさせる
既習の文型との違い
- 〜て(初級・手段・順番)「地図を見て道を探す」と「地図を見ながら道を探す」はどちらも言える。「て」は順番や手段(見てから探す・見る方法で探す)、「ながら」は二つが同時に続いていることをはっきり言う。順番がある動作(顔を洗って、歯をみがく)は「ながら」にしない。
- 〜ている間(に)(初級)「〜ている間」は前後で主語が違ってもよい(母が寝ている間に、料理を作った)。「ながら」は主語が一人。二人の動作を学習者が「ながら」でつないだら、「間」に直すと覚えやすい。
関連する文型
学習項目 5 〜ながら(逆接)
意味・はたらき学習項目 5
「〜のに」「〜けれども」に近く、前のことから考えると予想しない後ろのことがある、と言う。前は動作ではなく状態や事実(知っている・分かっている・狭い・残念)で、「知っていながら、言わなかった」のように、話し手の驚きや不満、反省の気持ちが出ることが多い。「〜ながらも」の形もよく使い、書き言葉や改まった話に多い。「残念ながら」「勝手ながら」「わずかながら」のような決まった言い方も多いので、まとめて覚えさせるとよい。同時の「ながら」と形が同じなので、前の語が続けてする動作か、状態・評価の語かで見分ける。
接続
動詞のます形(「知っている」は「知ってい」)+ながら/い形容詞の辞書形+ながら/な形容詞の語幹・名詞+ながら。「〜ながらも」とも言う
形
Vていながら(悪いと知っていながら、ずっと黙っていた)いAながら(も)(狭いながらも、日当たりのいい部屋だ)なA語幹/N+ながら(残念ながら、今回は参加できません)
導入
- 同時の「ながら」の横に並べる前の項目の板書「音楽を聞きながら勉強する」の横に、「彼は答えを知っていながら、教えてくれなかった」を書く。「2つのことを同時にしていますか?」と聞き、していないこと、「のに」に置き換えられることを確かめる。前の語が動作か状態かで色を分ける。
- 決まった言い方から入る「残念ながら」「勝手ながら」「わずかながら」を、教師が作ったお知らせのメールや店の張り紙の形で見せる。「残念だけど」と言い換えさせて意味をつかませ、そのあと「〜ていながら」「〜いながらも」の文に進む。
板書案
〔青〕状態・事実・形容詞・名詞 + ながら(も)、〜(予想と違う)
知っていながら、言わなかった。(=知っているのに)
狭いながらも、住みやすい部屋だ。
〔赤〕決まった言い方:残念ながら・勝手ながら・わずかながら
場面と発話(自作)
- 日本語学校の先生が、締め切りを過ぎてもレポートを出さない学生がいることを、職員会議で報告する。締め切りを知っていながら、まだ出していない学生が何人かいます。
- 日本語学校の先生が、学生の作文を返すとき、短いけれどよく書けていたとほめる。短いながらも、自分の考えがはっきり書けていますね。
- 会社員が、取引先からの食事の誘いをメールで断る。せっかくのお誘いですが、残念ながら、その日は先約がございます。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「知っている/分かっている」「狭い/小さい」「子ども」などの語と、予想と違う結果を一組ずつ出し、学習者が「〜ながら(も)」でつなぐ。「残念ながら」「勝手ながら」はお知らせの文の形で言わせてから教科書の練習へ。
- 口頭キューは「前の状態+予想と違う結果」の組(知っている/言わない、狭い/住みやすい、子ども/しっかりしている)。全体→個人で「〜ながら(も)」の文を言う。次に同時の「ながら」の文と混ぜて読み上げ、どちらの意味かを手の形(同時=両手を並べる/逆接=手のひらを返す)で答えさせる。
- ペア「分かっているけど」: Aが「分かっているのにしてしまうこと」を一つ言い(体に悪い・夜更かし・むだ遣い)、Bが「〜と分かっていながら、つい〜てしまうんだね」とまとめて返す。Aは「そうなんだ、だって……」と理由を足す。交替して3回。
- 産出「お知らせメールを書こう」: 先生や店へのお断り・おわびのメールを、「残念ながら」「勝手ながら」のどちらかと「〜ながらも」を1つ入れて4〜5文で書く。教師は、前が状態や評価の語になっているか、「ながら」の前の形(知ってい/狭い/残念)が合っているかを見る。
つまずきと手当て
- 「ながら」の前の形を間違える(*狭いでながら/*残念なながら)。い形容詞はそのまま、な形容詞と名詞は語幹に付くと、3つの形を板書で縦に並べる
- 動作の動詞で逆接を言おうとして、同時の意味に聞こえる(毎日勉強しながら、合格できなかった)。動作の動詞なら「〜ていながら」か「〜のに」(毎日勉強していたのに)で言うと手当てする
- 友だちとの軽い会話で多用して、硬く聞こえる(友だちに「残念ながら、行けない」)。くだけた場面なら「残念だけど」「〜のに」が自然だと、場面ごとに言い換えさせる
既習の文型との違い
- 〜ながら(同時)(第2課)同じ課の同時の「ながら」は、前が続けてする動作(聞く・歩く)で、二つのことが同じときに起きる。逆接は前が状態(知っている・ある)や形容詞・名詞で、「のに」に言い換えられる。迷ったら「のに」を入れて意味が通るかで確かめさせる。
- 〜のに(初級)「〜のに」は話し言葉でもよく使い、不満や残念な気持ちが強く出る。「〜ながら(も)」は少し改まった言い方で、「狭いながらも住みやすい」のように良い評価にもよく使う。友だちとの会話では「のに」、作文やメールでは「ながら(も)」と目安を示す。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は 21 語(本文を読むための語 21・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
新しい言葉は本文に出る順で21語。「耳に入る」「見当をつける」「気が進まない」は語を一つずつ訳すと意味が取れないので、決まった言い方としてまとめて扱い、どんな場面で言うかを一文で示す。「にっこり」「会釈」は教師が動作で見せると早い。「見つける/見つかる」「動く/動かす」は自動詞と他動詞の組で、課の題「みつける」とつなげて確かめる。「〜ことにする」は語彙にも出るが、意味と使い方は学習項目2でまとめて扱う。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。
第2課の語彙リスト(21語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い
本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(交通機関・通う・利用・耳に入る・方向・まよう・見当をつける・見つける・にっこり・会釈・気が進まない)から、毎日の通勤・通学の道や乗り物の中で、聞こえてくる話や名前を知らない花、いつも会う人に気づき、その名前を見つけていく、という話題の読み物だと推測される。精読では「どこで・何に気づいたか」「名前を知る前と知ったあとで何が変わったか」「人との関わり(にっこり・会釈)はどう変わったか」「筆者が見つけて面白いと思っているのは何か」の4点を段落ごとに聞く。本文に「〜と、〜た」「〜ことにした」が出ていれば、その文で止めて、見つけたことと決めたことを学習者に言い分けさせる。
宿題と次のコマ
使いましょう(学習項目1〜5)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの「最近決めたことと、続けていること」を4文(〜ことにした・〜ことにしている を1つずつ)で書いてくる。次のコマは本文の精読の続きと話しましょう。
よくある質問
第2課「みつける」は何コマで終わりますか?
90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と学習項目1・2、2コマ目で学習項目3〜5とまとめ・漢字まで進めます。精読に時間をかけたいクラスは、精読を3コマ目に回してもかまいません。
「〜と、〜た」と「〜たら、〜た」の違いは何ですか?
どちらも何かをしたときに見つけたことを言えます。「と」は物語や作文に多い書き方で、「たら」は話し言葉に多い言い方です。後ろに頼みや自分の意志を置けるのは「たら」だけなので(駅に着いたら、電話してください)、学習者にはまずこの違いを押さえさせます。
「〜ことにする」と「〜ことになる」の違いはどう説明すればいいですか?
「自分で決めた=ことにした」「会社・学校・まわりが決めた=ことになった」と、だれが決めたかで分けて見せるのが分かりやすいです。自分で決めたことでも控えめに「ことになりました」と言う人がいることは、区別ができてから補足します。
「〜ことにしている」と「〜ようにしている」はどう教え分けますか?
「ことにしている」は、はっきり決めて守っているルール、「ようにしている」は、できるだけそうしようと心がけていることです。「なるべく」「できるだけ」が前に来るなら「ようにしている」が自然、という目安を示し、同じ習慣を両方で言わせて気持ちの違いを比べさせます。
同時の「ながら」と逆接の「ながら」は、どう見分けさせればいいですか?
前に来る語で見分けさせます。続けてする動作(聞く・歩く)なら同時、状態や事実(知っている・ある)・形容詞・名詞なら逆接で、逆接は「のに」に言い換えられます。2つを続けて導入したあと、混ぜた文を読み上げてどちらかを答えさせる練習を入れると定着しやすくなります。
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。