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中級から学ぶ日本語 第5課「あきれる」の教案
『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈満員電車〉
電車の中のふるまいを題材に、「あきれる」気持ちを言葉にする課です。本文〈満員電車〉は、新しい言葉(満員・席を取る・大声・お年寄り・夢中・礼儀正しい・手を貸す・列)から、日本に来たばかりの人が満員電車の中で見た人々の様子に驚いたり、あきれたりするという話題の読み物だと推測されます。文型は、まだ時間がたっていないことと「まだ慣れていない」気持ちを言う「〜たばかり」 、おさえられない感情や感覚を言う「〜て/でたまらない」 、するはずのことをする気持ちさえ見せない人への不満を言う「〜(よ)うともしない」 、意外さやあきれを添える「〜なんて」 。後ろの3つは話す人の気持ちが強く出る形なので、だれが・だれに・どんな場面で言うかを決めて練習しないと、失礼な言い方や不自然な文になりやすい課です。
このページについて 教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目 4時間 90分×2コマ語彙 27語
このページの内容
この課のねらい(Can-do)
進め方と時間配分
学習項目 1 〜たばかり
学習項目 2 〜て/でたまらない
学習項目 3 〜(よ)うともしない
学習項目 4 〜なんて
語彙の扱い
本文の扱い
宿題と次のコマ
よくある質問
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課のねらい(Can-do)
「〜たばかり」で、来日・入学・買い物などからまだ時間がたっていないことと、そのための気持ち(まだ慣れていない・まだ新しいのに)を言える
「〜て/でたまらない」で、自分の強い感情や体の感じを言い、ほかの人について言うときは「〜ようだ/らしい」を付けて言える
「〜(よ)うともしない」で、するべきことをしない人の様子への不満を、そのときの状況と一緒に説明できる
「〜なんて」で、意外なこと・あきれたことへの気持ちを言い、名詞に付いて「軽く見る」使い方と区別できる
本文を読んで、筆者が電車の中の何に驚き、何にあきれたのかをまとめ、自分の国の電車やバスと比べて話せる
進め方と時間配分 目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
段 時間 やること
導入(話題に入る) 10分 1コマ目。電車やバスの中で見て驚いたこと・困ったことを1人1つ。出てきた「混んでいた」「座れなかった」「大きな声で話していた」などを黒板の端に残し、新しい言葉と文型の導入 の両方に使う
新しい言葉 20分 27語。「満員」「席を取る」「大声」「お年寄り」「列」は電車の絵1枚の中で位置を示しながらまとめて扱う。「〜たばかり」「〜てたまらない」「なんて」は文型として後で扱うと予告し、ここでは読みだけ確かめる
読みましょう(大意) 25分 教師の範読→段落ごとの音読→「どこで・だれが・何をしていた・筆者はどう感じた」の4点で大意をとる。細かい読みは2コマ目の精読に回してよい
答えましょう 10分 設問を一緒に解き、答えの根拠が本文のどこにあるかを指で押さえさせる。筆者の気持ちを問う設問は、気持ちを表す語(ふしぎ・あきれる)に線を引かせてから答えさせる
使いましょう(学習項目 1・2) 25分 「〜たばかり」と「〜て/でたまらない」。各項目、導入→口頭→ペアまで。産出は宿題に回してよい。枠の半分は教科書の練習に残す
復習とつなぎ 10分 2コマ目。「日本に来たばかりのころ、〜てたまらなかったこと」を1人1文で言わせ、前のコマの2項目を一度に確かめる
使いましょう(学習項目 3・4) 40分 「〜(よ)うともしない」と「〜なんて」。どちらも「あきれる」気持ちの言い方なので、同じ絵(電車の中の困った人)で2つを言い比べさせると課の題にまとまる
精読 15分 段落ごとに、筆者が見た様子と、それに対する筆者の評価を分けて言わせる。評価の文に今日の文型が使われているかを探させる
まとめましょう・話しましょう 20分 「日本の電車(または自分の国の乗り物)で驚いたこと」を3文で(〜なんて を1つ以上)。話しましょうはペアで「電車の中でしてもいいこと・よくないこと」を国ごとに比べる
漢字を練習しましょう 5分 読み書きは宿題。読みだけの漢字は本文を読みながら確認する
学習項目 1 〜たばかり
意味・はたらき学習項目 1
ある動作が終わってから、まだ時間があまりたっていないことを言う。大事なのは実際の時間の長さではなく、話す人が「まだ少ししかたっていない」と感じていることで、だから「先月来たばかり」「去年結婚したばかり」のように少し前のことにも使える。後ろに「〜のに」が続くと「まだ新しいのに(不満・残念)」、「〜で/なので」が続くと「まだ慣れていないので(言い訳・理由)」の気持ちが出やすい。文法の見方では、動作が終わったあとの段階を言うアスペクトの表現の一つで、「〜たところだ」よりも話し手の感じ方が入る。
接続 動詞のた形+ばかりだ/ばかりの+名詞/ばかりで、〜/ばかりなのに、〜
形
Vた+ばかりだ(日本に来たばかりです) Vた+ばかりの+N(買ったばかりの傘) Vた+ばかりなのに、〜(洗ったばかりなのに、もう汚れた) Vた+ばかりで、〜(入社したばかりで、まだ何もわかりません)
導入
「今さっき」と「2週間前」の両方で言う 教師がペットボトルのお茶を開けて一口飲み、「今、開けたばかりです」。次にカレンダーで2週間前を指し、自分のかばんを見せて「このかばんは先々週買ったばかりです」。どちらも「ばかり」が言えることを示し、時間の長さではなく「まだ新しい・まだ慣れていない」と感じるかどうかで決まる、と時間の線で板書する。
「〜のに」で気持ちを足す 壊れた傘の絵を見せ、「買ったばかりなのに…」で止めて学生に続きを言わせる。不満や残念な気持ちが「ばかりなのに」でよく出ることに気づかせる。新しい言葉の「ころ」と組んで「日本に来たばかりのころ」も一緒に言わせておくと、2コマ目の復習に使える。
板書案
Vた + ばかり(だ/の N/で/なのに)
日本に 来た ばかり です。
買った ばかり なのに、こわれた。
〔青〕時間の線: した ──(まだ少し)── 今
〔赤〕「ばかり」の前は た形
場面と発話(自作)
アルバイト先で、店長から一人で閉店の作業をするよう頼まれた。まだ自信がない。 すみません、先週入ったばかりなので、最初は一緒にやっていただけませんか。
先月買ったスマートフォンの画面が割れてしまった。寮で友だちに見せる。 見て、これ。買ったばかりなのに、もう割れちゃった。
日本語学校の新入生歓迎会で、先輩が今朝着いた新入生に声をかける。 日本に着いたばかりで疲れているでしょう。今日は無理しないでね。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「いつ日本に来ましたか」「そのかばん、いつ買いましたか」と聞き、学生が「〜たばかりです」で答える。次に「〜たばかりなのに」で不満を1つ、「〜たばかりのころ」で思い出を1つ。そのあと教科書の練習へ。
口頭 絵カードや動作をキューにして全体→個人で言わせる。キューの例: 教室のドアを開けて入ってくる動作に「今」→「今、来たばかりです」/新しいくつの写真に「昨日」→「昨日買ったばかりのくつです」/空の皿の絵に「さっき」→「さっき食べたばかりです」/段ボール箱の絵に「先週」→「先週引っ越したばかりです」。
ペア 「新しい生活インタビュー」。A は来日・入学・引っ越し・アルバイト開始の日付が書かれたカードを持ち、B が「〜はいつですか」「もう慣れましたか」と聞く。A は「〜たばかりで、まだ〜」で答える。日付は人によって違うので、B は答えを聞いてからでないと次の質問が決められない。カードを交換して役を替える。
産出 「ばかりなのに事件簿」。自分に本当にあった「〜たばかりなのに〜」(買ったばかりなのに壊れた・覚えたばかりなのに忘れた)を2文で書き、クラスで発表する。教師は、た形の作り方と、「ばかり」の前が辞書形になっていないかを見て直す。
つまずきと手当て
「ばかり」の前を辞書形にする(「日本に来るばかりです」)。辞書形+ばかりは「悪くなるばかりだ」(どんどん〜)のように別の意味になるので、た形を赤で板書して区別する
「〜たところだ」と同じだと思い、「先月日本に来たところです」と言う。「ところ」は終わった直後にしか使いにくいことを、時間の線の上で「ところ」と「ばかり」が使える範囲を比べて見せる
名詞に付く「ばかり」(肉ばかり食べる=肉だけ)と混ざる。「食べたばかり」「肉ばかり」「泣くばかり」を3つ並べ、前に何が来るかで意味が変わることを確かめる
既習の文型との違い
〜ところだ(第16課) 「〜たところだ」は終わった直後の一点を言い、「先月来たところだ」とは言いにくい。「〜たばかりだ」は話す人の感じ方で時間の幅が広く、少し前のことにも使える。また「ばかり」には「まだ新しい・まだ慣れていない」という気持ちが入りやすい。
Nばかり(初級) 名詞に付く「ばかり」は「それだけ」「そればかり多い」の意味で、時間とは関係がない。「食べたばかり」(食べてすぐ)と「お菓子ばかり食べる」(お菓子だけ)を並べると、学生が混ぜたときにすぐ気づける。
関連する文型
学習項目 2 〜て/でたまらない
意味・はたらき学習項目 2
気持ちや体の感じがとても強くて、自分ではおさえられないことを言う。「眠い」「痛い」「うれしい」「心配だ」「〜たい」のような、感情や感覚を表す語に付く。主語はふつう話す人自身で、ほかの人について言うときは「〜てたまらないようだ/らしい/そうだ」を付ける。話し言葉でよく使い、似た意味の「〜てならない」より身近で、暑い・痛いのような体の感じにも使いやすい。文法の見方では、話し手の感情・感覚の程度がきわめて強いことを表す表現で、主語が話し手に限られやすい(人称の制限がある)ところが「〜がる」と同じ考え方になる。
接続 い形容詞の「い」を「くて」にして+たまらない(眠くて・痛くて)/な形容詞+で+たまらない(心配で・不安で)/「〜たい」を「〜たくて」にして+たまらない/気持ちを表す一部の動詞のて形+たまらない(気になって・腹が立って)。丁寧な形は「たまりません」
形
Aい→くて+たまらない(暑くてたまらない) Aな+で+たまらない(不安でたまらない) Vたい→たくて+たまらない(帰りたくてたまらない) Vて+たまらない(気になってたまらない)
導入
教師の体の感じから入る 教師が大きくあくびをして「ゆうべ2時間しか寝ていないので、眠くて、眠くて……眠くてたまらない」。次に手であおぎながら「暑くてたまらない」。「とても眠い」との違いを学生に聞き、「たまらない」には「もうがまんできない」気持ちがあると、新しい言葉の「がまんする」と結びつけて説明する。
満員電車の気持ちを集めて言い換える 本文の話題に合わせて、「満員電車の中でどんな気持ちになるか」を学生に聞き、「暑い・苦しい・座りたい・早く降りたい・心配だ」を集める。全部を「〜てたまらない」に言い換えさせ、い形容詞・な形容詞・〜たい の3つの形を色を分けて板書する。
板書案
Aい → くて + たまらない
Aな + で + たまらない
Vたい → たくて + たまらない
眠くて たまらない。/家族に 会いたくて たまらない。
〔赤〕気持ち・体の感じ だけ
〔青〕ほかの人 → 〜てたまらない ようだ/らしい
場面と発話(自作)
試験の結果が明日発表される。寮の友だちに今の気持ちを話す。 明日発表だと思うと、心配でたまらない。
夏の倉庫のアルバイトで、休憩時間に同僚と話す。 今日は本当に暑くてたまりませんね。冷たいものが飲みたいです。
国の母が入院したと聞いた留学生が、担任の先生に相談する。 母の様子が気になってたまらないので、週末に一度帰国してもいいでしょうか。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が状況を言い(3日間ずっと雨/明日から夏休み/歯が痛い)、学生が「〜てたまらない」で気持ちを言う。い形容詞・な形容詞・〜たい を混ぜる。次に、ほかの人の様子を見て「〜てたまらないようだ」と言わせ、人の制限を確かめてから教科書の練習へ。
口頭 動作や絵をキューにする。キューの例: 汗をふく動作→「暑くてたまらない」/おなかを押さえた絵→「おなかが痛くてたまらない」/ラーメンの写真→「ラーメンが食べたくてたまらない」/「明日、面接」のメモ→「緊張してたまらない」/結果を待つ人の絵→「不安でたまらない」。全体で言ってから個人へ。
ペア 「今の気持ち当てゲーム」。A は気持ちのカード(眠い・寂しい・会いたい・心配だ など)を1枚引き、ジェスチャーと状況の説明だけで伝える。B は「〜てたまらないんですか」と当てる。当たったら A が理由を1文足す(「来週国に帰るので、〜」)。カードは B に見せないので、言葉で確かめ合う必要がある。交替して2回。
産出 「たまらない一週間」。この一週間で「〜てたまらなかった」ことを3つ選び、理由とどうしたかを付けて話す(「〜てたまらなかったので、〜た」)。教師は、形容詞の活用(くて/で)と、「たまらない」を気持ちではない性質(広い・高い)に付けていないかを見る。
つまずきと手当て
形容詞の活用を間違える(*眠いでたまらない/*心配くてたまらない)。い形容詞とな形容詞を左右に分けて板書し、何度か口で言わせる
気持ちではない性質に付ける(「この部屋は広くてたまらない」)。「たまらない」は人の中の気持ちや感覚なので、「部屋が広くて、うれしくてたまらない」のように気持ちの語を入れ直させる
ほかの人の気持ちにそのまま使う(「田中さんは寂しくてたまらない」)。第1課の「〜がる」と同じ考え方で、ほかの人には「ようだ/らしい」を付けるか「〜がっている」と言う、と確かめる
既習の文型との違い
〜て/でならない(第18課) どちらも気持ちが強くておさえられないことを言う。「〜てならない」は少し硬く書き言葉的で、「気がしてならない」「思えてならない」のように自然にわいてくる思いによく使う。暑い・痛いのような体の感じは「〜てたまらない」のほうが自然。
〜がる(第1課) 自分の強い気持ちは「〜てたまらない」、ほかの人の様子は「〜がっている」。「弟は日本に来たくてたまらないようだ」と「弟は日本に来たがっている」を並べ、どちらもほかの人について言える形だと見せる。
関連する文型
学習項目 3 〜(よ)うともしない
意味・はたらき学習項目 3
するはずのこと、したほうがいいことを、しようとする気持ちさえ見せない様子を言う。「も」が入ることで「少しも〜しようとしない」と強くなり、話す人の不満・非難・あきれた気持ちが出る。主語はふつう話す人以外の人で、「声をかけても」「目の前にいるのに」のように、それをする機会や理由がある状況と一緒に使うことが多い。文法の見方では、意志や試みを言う「意向形+とする」に取り立ての「も」が入り、それを否定した形。
接続 動詞の意向形(1グループ: 書く→書こう/2グループ: 見る→見よう/3グループ: する→しよう・来る→来よう)+とも しない/しなかった
形
V意向形+ともしない(話を聞こうともしない) V意向形+ともしなかった(目を合わせようともしなかった) 〜ても/のに、V意向形+ともしない(何度呼んでも、起きようともしない)
導入
「しない」と「しようともしない」を同じ絵で言い比べる 自作の絵: 電車の中で、重い荷物を持った人が立っていて、前に座った人はスマートフォンに夢中。まず「荷物を持ってあげない」(事実だけ)、次に「目の前で困っているのに、手を貸そうともしない」(話す人のあきれた気持ち)と2つ言い、どちらに気持ちが入っているかを聞く。ここで課の題「あきれる」を板書に結びつける。
意向形から形を積み上げる 初級の「〜ようとする」を確かめる(「ドアを開けようとしたら、鍵がかかっていた」)。「ようとする=しようとする気持ち・やってみる」を押さえてから、「も」と「しない」を足して「開けようともしない=やってみる気持ちもない」と、1語ずつ板書に積み上げる。3グループの「しよう」「来よう」は必ず口で言わせる。
板書案
V意向形 + とも + しない
(何度 呼んでも)起きよう とも しない。
しない = 事実だけ
しようとも しない = 〔赤〕不満・あきれた
〔青〕する → しよう 来る → 来よう
場面と発話(自作)
寮のルームメートが、何度言っても台所の食器を洗わない。寮の管理人に相談する。 何度お願いしても、自分の食器を洗おうともしないんです。
会議で、上司が新しい案の説明を聞かずに反対した。会議のあと、同僚と話す。 部長、資料を見ようともしないで反対しましたね。
熱があるのに子どもが薬を飲まない。子どもの母親が、友だちに電話で話す。 うちの子、熱があるのに、薬を飲もうともしないの。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「〜のに/〜ても」の状況(何度も起こした/先生が質問した/隣の人が荷物を落とした)を言い、学生が「〜ようともしない(しなかった)」で続ける。意向形が作れない学生がいたら、先に意向形だけを全体で言わせる。そのあと教科書の練習へ。
口頭 意向形の確認から。動詞カード(聞く・見る・手伝う・する・来る)→「聞こう・見よう……」→「聞こうともしない」まで全体で。次に状況の絵をキューにする: 呼ばれても寝ている人→「起きようともしない」/泣いている子の横でゲームをする兄→「話を聞こうともしない」/ごみが落ちていても通り過ぎる人→「拾おうともしない」。
ペア 「あきれた話の聞き役」。A は「あきれたことカード」(同僚が電話に出ない・友だちが謝らない・弟が部屋を片付けない)を持ち、「〜のに、〜ようともしないんです」と話す。B はカードを見ずに、「えっ、それはひどいですね」「それで、どうしたんですか」とあいづち と質問で聞き、最後に自分の意見を1文言う。役を替えて2回。
産出 「あきれた!スピーチ」。自分が見たり経験したりしたあきれたことを、状況→相手の行動(〜ようともしない)→自分の気持ちの順で1分で話す。実在の人が分かる話や悪口にならないよう、場面を変えてよいと伝える。教師は意向形の誤りと、今の自分の行動に使っていないかを見る。
つまずきと手当て
意向形の作り方を間違える(*見ろうともしない/*すろうともしない)。1・2・3グループを縦に並べて板書し、意向形だけを先に言わせる
「〜ようとしない」と「〜ようともしない」の違いが分からない。どちらも正しいが、「も」があると「少しも・まったく」の強さが出る。同じ場面で2つを言い比べさせ、強く不満を言いたいほうを選ばせる
今の自分の行動に使って不自然になる(「私は今、宿題をしようともしません」)。ふつうはほかの人の行動を外から見た言い方で、自分について言うのは「子どものころ、私は親の話を聞こうともしなかった」のように過去を振り返るときが多いと伝える
既習の文型との違い
〜ないで/ずにいる(第1課) 「〜ないでいる」は事情があって、自分や人がわざとしない状態を続けることで、その理由に共感 があることも多い。「〜ようともしない」は、するべきなのにする気持ちを見せないことを外から非難する言い方。「言わずにいる」と「言おうともしない」を同じ場面で比べると違いがはっきりする。
〜ようとする(初級) 「〜ようとする」は、しようと試みる・しそうになることを言う。「開けようとしても開かない」は試したができないことで、「開けようともしない」(試してもいない)とは逆になる。学生が「〜ようとしても」と混ぜたら、試したかどうかを聞き返す。
関連する文型
学習項目 4 〜なんて
意味・はたらき学習項目 4
ある事がらを取り上げて、「意外だ・信じられない・あきれた・ばかばかしい」という話す人の気持ちを添える。「電車の中で化粧するなんて」のように文に付けると驚きやあきれ、「漢字なんて」のように名詞に付けると「そんなもの」と軽く見る気持ちになる。後ろには「信じられない」「ひどい」「びっくりした」のような評価の言葉が来るか、評価を言わずに「〜なんて。」で終えることもある。うれしい驚き(「合格したなんて、夢みたい」)にも使えるが、この課では「あきれる」気持ちと合わせて扱う。文法の見方では、「など」「などと」が話し言葉で変わった形で、話し手の評価を添える取り立ての表現。
接続 名詞+なんて(漢字なんて)/動詞・い形容詞の普通形+なんて(眠るなんて・高いなんて)/な形容詞・名詞の現在は「だ」を付けて+なんて(不便だなんて・学生だなんて)
形
普通形+なんて、〜(電車で大声で電話するなんて、ひどい) N+なんて〜(こんなテストなんて、すぐ終わる) 普通形+なんて。(まさか、あの人が辞めるなんて。)
導入
作った見出しに驚いてみせる 教師が作った短い見出しを見せる(「駅のホームでテントを張った人がいた」)。学生に感想を聞き、教師が「えっ、ホームでテントを張るなんて!」と言って止める。続き(信じられない・あきれた)を学生に言わせ、「なんて」の前に驚いたこと、後ろに気持ち、と板書の2つの箱で見せる。
名詞+なんて で「軽く見る」 「宿題なんて、5分で終わるよ」「お化けなんて、いないよ」のように名詞に付けると「そんなもの・たいしたことない」の気持ちになる例を出す。前の「〜なんて、信じられない」(意外)との違いを、教師の表情(驚く顔/ばかにする顔)を変えて見せる。相手の物や仕事に使うと失礼になることも、ここで先に触れておく。
板書案
普通形 + なんて、〔気持ち〕
ホームで 寝る なんて、あぶない!
N + なんて = そんなもの(軽く見る)
宿題 なんて、すぐ 終わる。
〔赤〕前=驚いたこと 後ろ=気持ち
〔青〕学生だ なんて(意外)/学生 なんて(軽く見る)
場面と発話(自作)
満員電車で、ドアの近くの床に大きな荷物を広げている人がいた。駅を出てから友だちに話す。 あんなに混んでいるのに、床に荷物を広げるなんて、あきれたよ。
アルバイト先の店長から、卒業したら社員にならないかと誘われた。寮で友だちに話す。 留学生の私が社員に誘われるなんて、思ってもいなかった。
宿題が多いと言う後輩に、同じ日本語学校の先輩が言う。 こんな宿題なんて、30分で終わるよ。早くやっちゃおう。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が意外な出来事(友だちが3日で漢字を300覚えた/雨の日にサングラスをかけている人)を言い、学生が「〜なんて、〜」で驚きやあきれを言う。次に名詞+なんて で「たいしたことない」を言わせ、2つの使い方を区別してから教科書の練習へ。
口頭 短い出来事の文や絵をキューにする: ホームのベンチで寝ている人の絵→「ホームで寝るなんて、危ない」/3月の雪の天気予報→「3月に雪が降るなんて、びっくりした」/「同僚が1日で辞めた」のメモ→「1日で辞めるなんて、信じられない」/簡単そうなテストの絵→「こんなテストなんて、簡単だよ」。「だ」の要る形(不便だなんて)は全体で何度か言わせる。
ペア 「本当?うそ?ニュース」。教師が本当の話と作り話を混ぜた短いニュースカードを用意する。A がカードを読み上げ、B は「〜なんて、〜」で反応し、本当だと思うかどうかを1文足す。A はカードの裏を見て答えを明かす。B はカードの中身を知らないので、反応は毎回その場で作ることになる。交替。
産出 「カルチャーショック 発表」。日本に来て(または国を出て)驚いたこと・あきれたことを3つ、「〜なんて、〜と思った」で書き、1つを詳しく話す。教師は、なんての前の普通形(特に「Nだなんて」)と、相手の物や目上の人の仕事を「Nなんて」で軽く見る失礼な言い方になっていないかを見る。
つまずきと手当て
文に付けるときの形を間違える(*静かななんて/*寝ますなんて)。前は普通形で、な形容詞と名詞は「だ」を付けると板書で示す
相手の物や目上の人に関わる物事を「Nなんて」で言い、失礼になる(先生に「先生の宿題なんて簡単です」)。「なんて」には軽く見る気持ちがあるので、相手の物や仕事には使わないと伝える
「なんか」と同じに使い、文の後ろに付ける(「電車で寝るなんか、ひどい」)。「なんか」は名詞の後ろが中心で、文(普通形)の後ろには「なんて」を使う、と整理する
既習の文型との違い
〜など(初級)/〜なんか 「など」は例を挙げる中立の言い方で、書き言葉にも使う。「なんか」「なんて」は話し言葉で、軽く見る・意外だという気持ちが入る。「なんか」は名詞の後ろが中心で、文の後ろには「なんて」を使う。
〜とは思えない(第4課) 「〜とは思えない」は「そうだと考えることができない」という判断を言う。「〜なんて」は驚いた・あきれたという気持ちが先に出る言い方で、後ろの評価を言わずに終えることもできる。「彼が遅刻するとは思えない」と「彼が遅刻するなんて!」を比べる。
なんて〜だろう(感嘆) 「なんてきれいな空だろう」の「なんて」は「どんなに」の意味で、文の頭に置いて感動を言う。この課の「〜なんて」(事がらの後ろに付く)とは位置も意味も違うので、学生が混ぜたら位置を指して区別させる。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は 27 語(本文を読むための語 27・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
新しい言葉は本文に出る順で27語。「満員」「席を取る」「大声」「お年寄り」「列」「手を貸す」は電車の中の絵1枚にまとめ、どこで何が起きているかを指しながら扱うと覚えやすい。「〜たばかり」「〜てたまらない」「なんて」は語彙としてではなく、使いましょうの文型として扱う。「眠る」と「寝る」、「ふしぎ」と「あきれる」のように気持ちや動作の違いが分かれる語は、例文を2つ並べて比べる。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。
第5課の語彙リスト(27語) 新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い 本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(満員・がまんする・ふしぎ・眠る・会社員・席を取る・取り出す・大声・お年寄り・夢中・礼儀正しい・あきれる・手を貸す・列)から、日本に来たばかりの人が満員電車の中で、眠っている会社員や席の取り方、まわりの人の様子を見て、ふしぎに思ったりあきれたりする、という話題の読み物だと推測される。精読では「筆者はいつごろの体験を書いているか」「電車の中で何を見たか(様子)」「それをどう感じたか(評価)」「礼儀正しいという前からのイメージと、見たこととはどう違ったか」の4点を段落ごとに聞く。見た様子と筆者の評価を分けて言わせ、評価の文に今日の文型(〜なんて・〜ようともしない)が使われているかを探させると、文型と本文がつながる。
宿題と次のコマ 使いましょう 学習項目 1〜4 の練習の残りと、漢字の書き取り。1コマ目のあとは「ばかりなのに事件簿」を2文で書いてくる。2コマ目のあとは、まとめましょうの「日本の電車(または自分の国の乗り物)で驚いたこと」を3文(〜なんて を1つ以上)で書いてくる。次の課は第6課「つたえる」。
よくある質問
「〜たばかり」と「〜たところ」の違いは、どう説明すればいいですか?
「〜たところ」は終わった直後の一点だけを言い、「〜たばかり」は話す人が「まだ少ししかたっていない」と感じれば、先月や去年のことにも使えます。時間の線を板書し、「さっき」は両方、「先月」は「ばかり」だけ、と使える範囲を色で塗り分けると伝わりやすくなります。「ばかり」には「まだ新しいのに」「まだ慣れていない」という気持ちが入りやすいことも添えます。
「〜てたまらない」と「〜てならない」「〜てしかたがない」はどう違いますか?
3つとも、気持ちや感覚が強くておさえられないことを言う、ほぼ同じ意味の表現です。「〜てたまらない」と「〜てしかたがない」は話し言葉でよく使い、暑い・痛いのような体の感じにも自然に使えます。「〜てならない」は少し硬く、「気がしてならない」「思えてならない」のように自然にわいてくる思いに使うことが多いです。この教科書では「〜て/でならない」を第18課で扱うので、この課では「たまらない」を中心にし、違いは第18課で比べると予告しておくとよいでしょう。
「〜(よ)うともしない」は自分のことに使えますか?
ふつうはほかの人の行動を外から見て、不満やあきれた気持ちを言う表現なので、今の自分の行動に使うと不自然になりやすいです。ただし「子どものころ、私は親の話を聞こうともしなかった」のように、過去の自分を振り返って反省するときには使えます。練習では主語を他人にした場面を中心にし、自分の話は過去の振り返り として出すと混乱が少なくなります。
「〜なんて」を教えるとき、失礼にならないように何に気をつければいいですか?
名詞に付く「Nなんて」には「そんなもの」と軽く見る気持ちがあるので、相手の物・仕事・目上の人に関わることに使うと失礼になります。導入の段階で「驚く使い方」と「軽く見る使い方」を表情で分けて見せ、産出の活動では話題を自分の体験やニュースにすると安全です。くだけた話し言葉なので、改まった場面では「〜とは驚きました」のような言い方に替えることも添えておきます。
第5課は何コマで終わりますか?
90分のコマなら2コマが目安です。1コマ目に新しい言葉・本文の大意・学習項目1と2、2コマ目に学習項目3と4・精読・まとめと話し合いを入れると収まります。後ろの2項目は場面の説明に時間がかかるので、2コマ目の使いましょうに40分ほど取っておくと無理がありません。
この課に関係する用語・解説・練習問題 この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。