日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

中級から学ぶ日本語 第9課「まもる」の教案

『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈見えない相手〉

個人の情報をどう守るかがテーマの課です。本文は、名前・年齢・預金・家族のことなど自分の情報が、知らないうちに顔の見えない相手に知られ、使われているかもしれない、という話題の読み物だと新しい言葉から推測されます。文型は、根拠から当然そうだと判断する「〜はずだ」と、その裏返しで「ありえない」と強く打ち消す「〜はずがない」、立場や役割を言う「〜として」、二つのものが一緒に変わる「〜ば〜ほど」。「はずだ」と「はずがない」は同じ板書の上で続けて導入し、根拠を言わせることを芯にします。「として」は第8課の「にとって」と、「〜ば〜ほど」は第4課の「ほど」と混ざりやすいので、後ろに来る語や形で見分けさせます。

このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ語彙40語

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜はずだ」で、知っている事実や理由をもとに、当然そうだと判断したことを根拠と一緒に言える。理由が分かって納得したときの「〜はずだ」も使える
  • 「〜はずがない」で、ありえないことを根拠を示して打ち消し、「〜ないはずだ」とは強さが違うことを言い分けられる
  • 「〜として」で、自分や人の立場・資格・役割を言い、「〜としての+名詞」「〜としては」も使える。評価を言う「〜にとって」と区別できる
  • 「〜ば〜ほど」で、一方が変わるともう一方も変わることを、動詞・い形容詞・な形容詞の活用を正しく使って言える
  • 本文を読んで、個人の情報が知らないうちに使われる危うさについて、自分の経験と比べて意見を言える

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
新しい言葉20分40語と多いので、まとまりで分ける。「個人・情報・年齢・財産・戸籍・思想・宗教・遺伝子」は「個人の情報にはどんなものがあるか」の表に並べ、「管理・もれる・悪用・預金・引き出す」は「情報が守られない→何が起きるか」の流れで板書する。「めったに〜ない」「まさか」「気味が悪い」は気持ちの言い方として例を一つずつ。「はず」「〜として」「〜ば〜ほど」「〜に対して」「より〜」は使いましょうや本文で扱うと予告するだけにする
いっしょに考えましょう10分「知らない会社から電話やメールが来て、どうして自分の名前を知っているのかと思ったことはあるか」を1人1つ。答えを黒板の端に残すと、学習項目1・2の導入(〜はずだ/〜はずがない)に使える
読みましょう(大意)20分教師の範読→段落ごとの音読→「だれの・どんな情報が・どこへ行くか」「筆者はそれをどう感じているか」の2点で大意をつかむ。細かい表現の精読は2コマ目の初めか宿題に回してよい
答えましょう15分設問を一緒に解き、答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。筆者の気持ちを問う設問は、本文の語(気味が悪い・恐ろしい・気がする など)を手がかりに口頭で短く答えさせる
使いましょう(学習項目1・2)30分1コマ目の後半。「〜はずだ」(15分)のあと、同じ根拠→判断の板書を残して「〜はずがない」(15分)へ。産出の活動は2コマ目の初めに回してもよい
使いましょう(学習項目3・4)55分2コマ目。前のコマの産出を5分で終えてから「〜として」(25分)。第8課の「にとって」と並べる時間を必ず取る。続けて「〜ば〜ほど」(25分)。活用の表を作ってから練習に入る
まとめましょう・話しましょう20分「自分の情報を守るためにしていること」を3〜4文で(〜として/〜ば〜ほど/〜はずだ を1つ以上)。話しましょうはペアで「便利になればなるほど困ることは何か」
漢字を練習しましょう10分読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する。「情報・個人・管理・預金・責任」のような二字の漢語は、本文の中で読みを確かめる

学習項目 1 〜はずだ

意味・はたらき学習項目 1

話し手が、知っている事実や理由をもとに「当然そうだ」と確信をもって判断するときに使う。根拠があることが大切で、ただの想像や願いには使いにくい(根拠がはっきりしないときは「〜と思う」「〜かもしれない」)。もう一つ、分からなかったことの理由が分かって「なるほど、それなら当然だ」と納得するときにも使う(窓が開いている。寒いはずだ)。過去の「〜はずだった」は、予定や見込みではそうなるはずだったのに、実際は違ったことを言う。文法の用語では、話し手の判断を表すモダリティの表現の一つで、確信の強い推量として扱われる。

接続

動詞・い形容詞の普通形+はずだ/な形容詞は「〜な」+はずだ/名詞は「〜の」+はずだ(過去は「〜だった」+はずだ)

形
V普通形+はずだ(この時間なら、もう家に着いているはずだ)Aな+な/N+の+はずだ(駅前は夜でもにぎやかなはずだ/会議は3時からのはずだ)〜はずだった(10時に届くはずだったのに、まだ来ない)(理由が分かって)〜はずだ(エアコンが止まっている。暑いはずだ)

導入

  • 根拠のカードで判断を引き出す教師が「田中さんは今どこにいますか」と聞き、「分かりません」の答えを受けてから、カードを1枚ずつ出す(「田中さんは毎週月曜日、9時から授業がある」「今は月曜日の10時」)。根拠がそろったところで「じゃあ、田中さんは今、教室にいるはずです」と言い、根拠→判断の矢印を板書する。根拠のカードを外すと「はず」が言いにくくなることも見せ、「はず」には根拠が要ると確かめる。
  • 「なるほど」の納得を足す「この教室、寒いですね」と言ったあと、開いている窓を見つけて「あ、窓が開いている。寒いはずだ」と言う。この「はず」は予想ではなく、理由が分かって納得した気持ちだと確かめ、「だから寒いんだ」と言い換えられることを示す。

板書案

根拠(事実・理由) → 〜はずだ(当然そうだと判断)
毎週月曜は9時から授業がある。→ 田中さんは今、教室にいるはずだ。
〔赤〕V・Aい 普通形+はず 〔青〕Aな+な はず/N+の はず
〔緑〕納得: 窓が開いている。→ 寒いはずだ(=だから寒いんだ)
〜はずだった=見込みと実際が違った

場面と発話(自作)

  • 同僚が会議の時間になっても来ない。課長に聞かれて、部署の予定表を見ながら答える。鈴木さんは午前中は外出ですが、11時には戻るはずです。
  • 留学生が友だちに、ネットで頼んだ荷物がいつ届くか聞かれた。通販のメールを確かめる。昨日発送したってメールが来たから、明日には届くはずだよ。
  • 寮で友だちがとても眠そうにしている。聞くと、昨日は朝までアルバイトだったという。朝までアルバイト? それは眠いはずだね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が根拠を一つ言い(「この店は駅から歩いて2分」「山田さんは日本に10年住んでいる」)、学習者が「〜はずだ」で判断を続ける。次に、理由を聞いて納得の「〜はずだ」で反応する問答。最後に教科書の練習へ。

  1. 口頭根拠の文カード(「チケットは昨日買った」「このパソコンは先週直した」「小林さんは料理教室の先生だ」)を見せ、全体で「だから、〜はずだ」と判断を言う。次に根拠だけを言って個人指名で判断を作らせ、名詞・な形容詞の接続(〜のはず/〜なはず)が要るカード(「明日は祝日」「あの公園は静か」)を混ぜる。
  2. ペアAは人や物の情報カード(「佐藤さんは毎朝7時の電車に乗る」「この店は月曜休み」)を持ち、Bは今の状況の質問カード(「今は8時。佐藤さんはどこ?」「今日は月曜。店は開いている?」)を持つ。Bが質問し、Aがカードを根拠に「〜はずです」で答え、Bは「どうしてですか」と根拠を聞き返す。3枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「名探偵ゲーム」: 教師が短い状況(玄関にぬれた傘が置いてある・テーブルに温かいコーヒーが二つある)を言い、グループで「〜はずだ」を使って推理を三つ出す。発表のときは必ず根拠を一緒に言う。教師は、根拠のある判断になっているか、「の/な」の接続が落ちていないかを聞き取り、最後に2、3例を全体で直す。

つまずきと手当て

  • 英語の should に引かれて、義務や助言のつもりで使う(学生は毎日予習するはずです、と言って「するべきだ」を伝えようとする)。「はず」は判断、「べきだ」は義務・助言だと、その人が実際にどうしているかを聞き返して区別させる
  • 名詞・な形容詞の接続を落とす(*会議は3時からはずだ/*あの公園は静かはずだ)。板書の〔青〕の行を指して「の」「な」を言わせ、何度かくり返す
  • 自分の意志で決めることに使う(明日のパーティーに、私は行くはずです)。会社の予定などで決まっていることなら言えるが、自分で決めることは「行くつもりです」「行きます」と言うと手当てする

既習の文型との違い

  • 〜でしょう/〜と思う(初級)「でしょう」「と思う」も推量だが、根拠がはっきりしなくても言える。「はずだ」は、根拠から考えて当然そうだという強い判断で、理由を聞かれたら答えられることが前提になる。学習者が根拠なしに「はずだ」を使ったら「どうしてそう思いますか」と聞いて、言えなければ「と思う」にさせる。
  • 〜つもりだ(初級)「つもり」は自分の意志、「はず」は事実からの判断。「行くつもりだった」は自分が行こうと思っていた、「行くはずだった」は予定で決まっていた、という違いになる。予定が変わった話を両方で言わせると違いが見える。
関連する文型

学習項目 2 〜はずがない

意味・はたらき学習項目 2

根拠や常識から考えて、「そんなことは絶対にありえない」と強く打ち消すときに使う。「〜ないはずだ」が「たぶん〜ないだろう」という落ち着いた判断なのに対して、「〜はずがない」は可能性そのものを認めない強い否定で、驚きや「信じられない」という気持ちがこもりやすい。相手の言ったことやうわさを打ち消す場面(「まさか、そんなはずがない」)でよく使い、話し言葉では「〜はずない」と「が」が落ちることも多い。文法の用語では、否定の判断を表すモダリティの表現の一つ。

接続

「はずだ」と同じ形(動詞・い形容詞の普通形/な形容詞の「〜な」/名詞の「〜の」)+はずがない。丁寧形は「はずがありません」

形
V普通形+はずがない(鍵はかけたから、ドアが開いているはずがない)N+の/Aな+な+はずがない(あの店が月曜に休みのはずがない)まさか〜はずがない(まさか、銀行がメールで暗証番号を聞くはずがない)そんなはずはない(「が」を「は」にして、相手の話を打ち消す)

導入

  • 「はずだ」の板書を打ち消しで裏返す学習項目1の根拠→判断の板書をそのまま使い、根拠を一つ足す(「田中さんは今朝、国へ帰った」)。「田中さんは今、教室にいますか」と聞き、「いるはずがない」と言う。「いないはずだ」と上下に並べて書き、「はずがない」のほうがずっと強く、「ありえない」と同じだと矢印の太さで見せる。
  • あやしいメールで「ありえない」を言わせる自作の短いメール(「あなたが当選しました。暗証番号を返信してください」)を見せて「本当だと思いますか」と聞く。学習者の「ありえない」「うそ」を拾って、「銀行がメールで暗証番号を聞くはずがない」と言い換え、課の話題(個人の情報を守る)につなげる。

板書案

〜はずだ ⇔ 〜はずがない(ありえない)
田中さんは今朝、国へ帰った。→ 教室にいるはずがない。
〔青〕いないはずだ(たぶんいない) 〔赤〕いるはずがない(絶対にいない)
〔赤〕接続は「はずだ」と同じ: 〜のはずがない/〜なはずがない
話し言葉: 〜はずない/そんなはずはない

場面と発話(自作)

  • ルームメイトに「冷蔵庫のケーキ、食べたでしょう」と言われた。その日は朝から一日中出かけていた。食べるはずがないよ。今日は朝からずっと出かけてたんだから。
  • 職場で、取引先の担当者が急に会社を辞めたといううわさを聞いた。先週会ったばかりだ。先週会ったときは来年の計画の話までしていたので、辞めるはずがないと思うんですが。
  • 知らない番号から「市役所です。お金が戻るのでATMへ行ってください」と電話が来た。その話を日本語の先生にする。市役所がATMへ行けと言うはずがないので、すぐに切りました。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師がうわさや信じられない話を言い(「この新品の時計は100円です」「毎日勉強している森さんが単語テストで0点だった」)、学習者が根拠を一つ付けて「〜はずがない」で打ち消す。そのあと「〜ないはずだ」と言い比べる問答をして、教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が「あやしい話カード」(「新品のパソコンが500円」「真夏の東京で雪が積もった」「休みの日に銀行から暗証番号を聞く電話」)を読み、全体で「〜はずがない」と打ち消す。次に個人指名で、前に「〜から」と根拠を付けて言わせる。名詞文(〜のはずがない)になるカードも混ぜる。
  2. ペアAは本当の話とうそのうわさが混ざったカードを読み上げ、Bはカードの裏の「事実メモ」を見て、うそなら「〜はずがない」、本当なら「〜はずだ」で答え、どちらを選んだかの根拠も言う。5枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「その話、本当?」ロールプレイ: 一人が、友だちから聞いたもうけ話や、個人情報を聞いてくる電話の話を相談し、もう一人が「〜はずがない」で根拠を言って止める。教師は、根拠のある打ち消しになっているか、「はずがない」と「ないはずだ」を言い分けられているかを聞き、目上の人への言い方が強すぎないかもあわせて見る。

つまずきと手当て

  • 「〜ないはずだ」と「〜はずがない」を同じ意味だと思う。強さが違うので、「たぶん」と「絶対に」を前に付けて言わせ、自然な組み合わせを選ばせる(たぶん来ないはずだ/絶対に来るはずがない)
  • 「来ないはずがない」を「来ない」の意味だと思って使う。否定が二つ重なると「必ず来る」の意味になることを、二つの否定が打ち消し合う図で見せる
  • 目上の人や取引先の話を「そんなはずがありません」と言い切って、強く聞こえる。根拠を先に言い、「〜はずだと思うのですが」「〜はずではないでしょうか」とやわらげる言い方も練習させる

既習の文型との違い

  • 〜ないはずだ(学習項目1の否定)「ないはずだ」は根拠から「たぶん〜ない」と判断する落ち着いた言い方で、外れることもある。「はずがない」は可能性そのものを否定する。報告の場面(「会議は今日はないはずです」)では「ないはずだ」、相手の話を打ち消す場面では「はずがない」が多い。
  • 〜とは思えない(第4課)「とは思えない」も信じられない気持ちを言うが、話し手の感じ方として言うので、やわらかく聞こえる。「はずがない」は根拠から論理的にありえないと言い切る。同じうわさを両方で打ち消させ、聞き手への響きの違いを比べさせる。
関連する文型

学習項目 3 〜として

意味・はたらき学習項目 3

「N+として」で、ある人や物が、どんな立場・資格・役割・種類で何かをするか、どう扱われるかを言う(留学生として来日した/参考として読む)。後ろには、その立場でする動作や、その立場での扱いが来る。「Nとしての+名詞」で名詞を説明し(親としての責任)、「Nとしては」で「その立場から言えば」と、ほかの立場と比べる気持ちを出す(会社としては反対だ)。後ろに評価(大切だ・難しい)が来るときは、第8課の「にとって」を使う。文法の用語では、いくつかの語がまとまって格助詞のように働く複合格助詞として扱われることが多い。

接続

名詞+として/名詞+としての+名詞/名詞+としては/名詞+としても

形
N+として+V(ボランティアとして、地域の日本語教室を手伝っている)N1+としての+N2(社会人としてのマナー)N+としては(私個人としては、その案に賛成です)N+としても(趣味としても、仕事としても役に立つ)

導入

  • 一人の人の「いろいろな顔」を板書する教師が自分の絵を真ん中に描き、まわりに「教師」「親」「客」「住民」と立場を書く。「教師として、学生の個人情報を守る」「客として、店に意見を言う」と、立場ごとにすることを足していき、同じ人でも立場が変わればすることが変わることを見せる。
  • 物の「使い道」で役割を言う空き瓶やスカーフなどの実物を一つ見せ、「これは何として使えますか」と聞く。「花びんとして」「ペン立てとして」と出た答えを並べ、人だけでなく物の役割や種類にも使えることを確かめる。

板書案

N(立場・資格・役割・種類)+ として + すること・扱い
国では、ホテルの受付として働いていた。
〔赤〕N1としての+N2(親としての責任)
〔青〕Nとしては=その立場から言えば(会社としては反対だ)
〔緑〕評価(大切だ・難しい)なら → Nにとって

場面と発話(自作)

  • アルバイトの面接で、店長に国での仕事を聞かれた。国では、ホテルの受付として3年働いていました。
  • 会社の会議で、新しい顧客管理のシステムについて意見を聞かれた。部署の考えと自分の考えが少し違う。営業部としては賛成ですが、私個人としては、情報の管理が少し心配です。
  • 大学の後輩に、ゼミの発表の準備で何を読めばいいか聞かれた。この本は、参考として読んでおくといいよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が人や物の絵を見せて「何として?」と聞き(留学生・通訳・おみやげ・薬)、学習者が「〜として〜」で一文。次に「〜としては」で立場による意見の違いを言う問答をして、教科書の練習へ。

  1. 口頭立場カード(留学生・アルバイト・親・ボランティア・客)と動作カード(日本語教室を手伝う・個人情報を守る・学費を払う)を組み合わせて見せ、全体で「〜として、〜」と言う。個人指名では、物の役割(「この箱を机として使う」)や「〜としての+名詞」になるカードも混ぜる。
  2. ペアAはある人の自己紹介メモ(「国で看護師」「今は留学生」「週末は通訳のボランティア」)を持ち、Bは質問カード(「国ではどんな仕事を?」「週末は何を?」)を持つ。BがAに質問し、Aはメモを見て「〜として」で答える。メモを取り替えて交替する。
  3. 産出「私の三つの顔」スピーチ: 自分の立場を三つ選び(留学生・長女・サークルの部長など)、それぞれ「〜として、〜している/しなければならない」を1文ずつ言い、最後に「〜としては」で自分の意見を1文言う。教師は、「として」の後ろに動作や扱いが来ているか、評価のときに「にとって」を選べているかを聞き取り、終わってから全体で直す。

つまずきと手当て

  • 後ろに評価が来る文に使う(*私として、この仕事は難しい)。評価(難しい・大切だ・ありがたい)なら「にとって」、その立場でする動作なら「として」と、後ろの語を指して選ばせる
  • 名詞を説明するときの「の」を落とす、または動詞の前に「の」を付ける(*これは親として責任だ/*留学生としての来ました)。「としての」の後ろは名詞だけ、と板書の〔赤〕の行で確かめる
  • 「ホテルとして働いていた」のように、働く場所を立場の位置に置いてしまう。「どこで」と「何として」を分けて聞き、「ホテルで、受付として働いていた」と両方を言わせる

既習の文型との違い

  • 〜にとって(第8課)「にとって」は「その人の立場から見ると」で、後ろは評価や気持ち(大切だ・難しい・ありがたい)。「として」は立場・資格を言い、後ろはその立場ですることや扱い。「留学生にとって、アルバイトは大切だ」と「留学生として、ルールを守る」を並べ、学習者が「留学生として、アルバイトは大切だ」のように言ったら、後ろの語を指して選び直させる。
  • Nで働く(初級)「で」は働く場所や組織、「として」は働く立場や仕事の種類。「銀行で働く」と「通訳として働く」を並べ、両方を一文に入れる練習(銀行で、通訳として働く)をすると混ざりにくくなる。
関連する文型

学習項目 4 〜ば〜ほど

意味・はたらき学習項目 4

一方の程度が変わると、それにつれてもう一方の程度も変わることを言う(考えれば考えるほど分からなくなる/技術が進めば進むほど、情報を守るのが難しくなる)。前と後ろはどちらも、程度が上がったり下がったりするものでなければならず、一回だけの出来事には使わない。前の「〜ば」を省いた「〜ほど」(新しいほど高い)も同じ意味で、短く言いたいときや書き言葉に多い。「早ければ早いほどいい」「多ければ多いほど助かる」のように後ろに「いい」「助かる」が来ると、相手に希望や条件を伝える言い方になる。文法の用語では、条件表現の「ば」を使って比例の関係を表す表現。

接続

動詞のば形+同じ動詞の辞書形+ほど/い形容詞の「〜ければ」+同じ形容詞の「〜い」+ほど/な形容詞は「〜なら〜なほど」(「〜であればあるほど」も)/名詞は「〜であればあるほど」

形
Vば+V辞書形+ほど(使えば使うほど、手になじむ)Aければ+Aい+ほど(部屋は広ければ広いほどいい)Aなら+Aな+ほど(説明は簡単なら簡単なほどいい)〜ほど(「ば」を省く)(年齢が上がるほど、病気になりやすい)

導入

  • グラフで「一緒に変わる」を見せる黒板に縦と横の軸を描き、横に「練習する時間」、縦に「上手になる」と書いて右上がりの線を引く。「練習すればするほど、上手になります」と言いながら線を指でなぞる。次に右下がりの線(横「考える」・縦「分かる」)も描き、「考えれば考えるほど、分からなくなる」と言って、上がる・下がるのどちらにも使えることを見せる。
  • 活用の表を一緒に埋める「話す→話せば話すほど」「高い→高ければ高いほど」「静か→静かなら静かなほど」を三段の表にして、同じ語を2回くり返すこと、前と後ろで形が違うことを学習者に言わせながら埋める。な形容詞と名詞は「〜であればあるほど」とも言えることを最後に足す。

板書案

Aが変わる → Bも変わる(比例)
練習すればするほど、上手になる。
〔赤〕Vば+V辞書形+ほど 〔赤〕Aければ+Aい+ほど 〔青〕Aなら+Aな+ほど
〔緑〕「ば」を省く: 新しいほど高い
〔図〕右上がりと右下がりのグラフ

場面と発話(自作)

  • 日本語の授業のあと、クラスメートと漢字の勉強について話す。漢字って、覚えれば覚えるほど読める看板が増えて、楽しくなるよね。
  • 部下に、頼んだ書類はいつまでに出せばいいか聞かれた上司が答える。遅くても金曜日までに。早ければ早いほど助かります。
  • 友だちがスマートフォンにいろいろなアプリを入れ、どのアプリにも名前や住所を登録している。アプリを入れれば入れるほど、自分の情報をいろいろな会社に渡すことになるから、気をつけたほうがいいよ。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師がグラフの絵や語の組み(練習する→上手になる・駅に近い→家賃が高い)を見せ、学習者が「〜ば〜ほど」で一文。い形容詞・な形容詞の活用を一回りさせたあと、教科書の練習へ。

  1. 口頭語の組みカード(「歩く→疲れる」「安い→よく売れる」「部屋が静か→よく眠れる」「年を取る→一年が短く感じる」)を見せ、全体で「〜ば〜ほど、〜」と言う。最初は動詞だけ、次にい形容詞、な形容詞と一種類ずつ増やしてから混ぜる。個人指名では、「ば」を省いた「〜ほど」の形でも言わせる。
  2. ペアAは右上がり・右下がりのグラフカード(軸に語だけが書いてある)を持ち、Bに見せずに口で説明する(「横は日本に住む時間、縦は日本語の上手さ。線は上がります」)。Bは聞いた内容を「〜ば〜ほど」の一文にまとめ、Aがカードを見せて合っているか確かめる。4枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「〜ば〜ほど 発見リスト」: 自分の生活や国の様子で「〜ば〜ほど」と言えることを三つ書き、グループで一番意外なものを選んで発表する。教師は、同じ語のくり返しと活用(〜ければ/〜なら)が合っているか、一回だけの出来事に使っていないかを見て、最後に全体で直す。

つまずきと手当て

  • な形容詞をい形容詞と同じように活用する(*静かければ静かいほど)。三段の表を見ながら言わせ、な形容詞は「静かなら静かなほど」と口でくり返させる
  • 前と後ろで違う語を使う(*食べれば飲むほど)。「同じ語を2回」と板書の枠で示し、前の語に下線を引いて後ろにも同じ語を書かせる
  • 一回だけの出来事や、程度の変わらないことに使う(昨日のパーティーは、行けば行くほど楽しかった)。グラフの線が描けるかを学習者に聞き、描けなければ「〜て、とても〜」など別の言い方にさせる

既習の文型との違い

  • 〜ほど(比喩)(第4課)第4課の「ほど」は「涙が出るほどうれしい」のように、程度をたとえで言う言い方で、変化は言わない。「〜ば〜ほど」は二つのものが一緒に変わる比例。「死ぬほど疲れた」と「歩けば歩くほど疲れた」を並べ、グラフが描けるのはどちらかを聞いて区別させる。
  • 〜ほど〜はない/いない(第4課)「これほどおいしい店はない」は一番を言う比較の言い方。「ほど」の形が同じなので混ざりやすい。前に「ば」の形と同じ語のくり返しがあれば比例、後ろに「〜はない」が来れば比較、と形で見分けさせる。
  • 〜ば(初級・条件)初級の「安ければ買う」は一回の条件。「〜ば〜ほど」は同じ語をくり返して、程度が変わる関係を言う。「安ければ買う」と「安ければ安いほど買う人が増える」を言い比べさせると、くり返しの意味が分かりやすい。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は 40 語(本文を読むための語 40・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。

新しい言葉は本文に出る順で40語と多い。一語ずつ訳すより、「個人の情報にはどんなものがあるか(年齢・財産・戸籍・思想・宗教・遺伝子)」「情報が守られないと何が起きるか(もれる・悪用・預金を引き出す)」「そのときの気持ち(気味が悪い・恐ろしい・気がする・まさか)」のまとまりで板書すると、本文の流れの予告にもなる。「めったに〜ない」は否定と組で、「より〜」「〜に対して」は本文の中で働きを確かめる。「はず」「〜として」「〜ば〜ほど」は語彙にも出るが、意味と使い方は学習項目でまとめて扱う。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。

第9課の語彙リスト(40語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い

本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(個人・情報・年齢・財産・戸籍・思想・宗教・遺伝子・管理・もれる・悪用・預金・引き出す・のぞく・気味が悪い・やり取りする・進む)から、技術が進んで情報のやり取りが便利になる一方で、自分の個人的な情報が、知らないうちに顔の見えない相手に知られたり、悪いことに使われたりするかもしれない、という話題の読み物だと推測される。課の題「まもる」と本文の題から、そうした情報をどう守るかが筆者の関心だと考えられる。精読では「どんな情報が、だれに知られているか」「筆者がそれに気づいたきっかけは何か」「筆者はそれをどう感じているか(気味が悪い・恐ろしい などの語)」「技術が進むことを筆者はどう見ているか」の4点を段落ごとに聞く。本文に「〜はずだ」「〜ば〜ほど」が出ていれば、その文で止めて、何を根拠にした判断か、何と何が一緒に変わるのかを学習者に言わせる。

宿題と次のコマ

使いましょう(学習項目1〜4)の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの「自分の情報を守るためにしていること」を4文(〜として・〜ば〜ほど を1つずつ、〜はずだ か 〜はずがない を1つ以上)で書いてくる。次のコマは本文の精読の続きと話しましょう。

よくある質問

  • 第9課「まもる」は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と学習項目1・2(はずだ/はずがない)、2コマ目で学習項目3・4(として/〜ば〜ほど)とまとめ・漢字まで進めます。新しい言葉が40語と多いので、語のまとまりごとに板書して時間を詰めるか、精読を3コマ目に回してもかまいません。

  • 「〜はずだ」と「〜でしょう」「〜に違いない」の違いはどう説明すればいいですか?

    「でしょう」は根拠がはっきりしなくても言える推量、「はずだ」は事実や理由から考えて当然そうだという判断です。「に違いない」は話し手の強い確信を言い、根拠が感じや勘でも使えます。学習者には、まず「はずだ」には理由が言えることが必要だ、という点を押さえさせます。

  • 「〜ないはずだ」と「〜はずがない」はどう教え分けますか?

    「ないはずだ」は「たぶん〜ない」という落ち着いた判断、「はずがない」は「絶対にありえない」という強い打ち消しです。「たぶん」「絶対に」を前に付けて自然なほうを選ばせると、強さの違いがつかみやすくなります。目上の人の話を「はずがない」で打ち消すと強く聞こえることも、あわせて伝えます。

  • 「〜として」と「〜にとって」の違いは何ですか?

    後ろに来る語で見分けさせます。「にとって」の後ろは評価や気持ち(大切だ・難しい・ありがたい)、「として」の後ろはその立場でする動作や扱い(働く・守る・使う)です。「留学生にとって大切なこと」と「留学生としてすること」を並べて板書すると混ざりにくくなります。

  • 「〜ば〜ほど」と「〜につれて」はどう違いますか?

    どちらも一方が変わるともう一方も変わることを言いますが、「につれて」は時間とともに自然に進む変化(時間がたつにつれて、町が変わった)に使うことが多く、後ろに話し手の希望や頼みは来にくいです。「〜ば〜ほど」は「早ければ早いほどいい」のように希望や条件を伝える言い方にも使えます。次の課で「につれて」を扱うときに、この課の板書と並べて比べさせると違いが見えます。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

PRこの教科書

手引きで扱っている教科書。本文・例文は手元の教科書で確かめてください。