トップ › 教案と語彙 › 中級から学ぶ日本語 › 第1課
中級から学ぶ日本語 第1課「まなぶ」の教案
『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈なぞなぞ〉
外国語を学ぶことの面白さと難しさがテーマの課です。本文は、子供が外国語を習い始めて親が心配して口を出したくなる場面や、なぞなぞを通して相手の文化を知る場面を描いた読み物だと、新しい言葉から推測されます。文型は、変化を言う「〜ようになる/〜なくなる」 (能力と習慣の2つ)、ほかの人の気持ちを言う「〜がる」 、禁止と心配を言い分ける「〜てはいけない/〜といけない」 、しない状態を続ける「〜ないで/ずにいる」 。どれも学習者自身の「日本に来て変わったこと」「まわりの人の様子」で例が作れます。第1課なので、新しい言葉→本文→使いましょう という進め方の型を学習者に見せる課でもあります。
このページについて 教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目 5時間 90分×2コマ語彙 18語
このページの内容
この課のねらい(Can-do)
進め方と時間配分
学習項目 1 〜ようになる/〜なくなる(能力)
学習項目 2 〜ようになる/〜なくなる(習慣)
学習項目 3 〜がる
学習項目 4 〜ては/といけない
学習項目 5 〜ないで/ずにいる
語彙の扱い
本文の扱い
宿題と次のコマ
よくある質問
この課に関係する用語・解説・練習問題
この課のねらい(Can-do)
「〜ようになる/〜なくなる」で、自分の日本語や生活の変化を、能力の変化と習慣の変化に分けて言える
「〜がる」で、ほかの人の気持ち・ほしいもの・したいことを、外から見た言い方で言える
「〜てはいけない」と「〜といけない」を、禁止と「そうなると困る」の理由で使い分けられる
「〜ないでいる/〜ずにいる」で、事情があってあえてしない状態を説明できる
本文を読んで、外国語を学ぶときに何が面白く何が難しいかを、自分の経験と比べて話せる
進め方と時間配分 目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
段 時間 やること
新しい言葉 15分 18語。読みと短い意味を確かめる。「口を出す」「手を止める」「口々に」のように体の部位を使う表現は、動作を見せながらまとめて扱う。「それでも」「そこで」「〜だって」は本文の文脈で働きを見ると予告するだけにする
いっしょに考えましょう 10分 外国語を学び始めたきっかけと、面白かったこと・難しかったことを1人1つ。答えを黒板の端に残しておくと、使いましょう A の「前/今」の導入 に使える
読みましょう(大意) 20分 教師の範読→段落ごとの音読→「だれが・何を学ぶ・まわりの人はどうする」の3点で大意。精読は次のコマに回してよい
答えましょう 10分 設問を一緒に解く。答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。テーマを問う設問は口頭で短く、まとめましょうに残す
使いましょう A〜D 85分(1コマ目35分・2コマ目50分) 1コマ目は A-1・A-2・B、2コマ目は C・D。各文型は導入→自作の問答→教科書の練習の順。導入に時間を使い切らず、枠の半分は教科書の練習に残す
まとめましょう・話しましょう 20分 「外国語を学んで変わったこと」を3文で(〜ようになる/〜なくなる を1つ以上)。話しましょうはペアで「学ぶのが難しいと感じるのはどんなとき」
漢字を練習しましょう 10分 読み書き(A)は宿題、読みだけ(B)は本文を読みながら確認する
学習項目 1 〜ようになる/〜なくなる(能力)
意味・はたらき使いましょう A-1(能力・可能の変化)
前はできなかったこと(分からなかったこと・見えなかったこと)が、できる状態に変わったことを言う。「できる」だけだと今の状態を言うが、「できるようになる」は変化を言うので、頭の中に「前」と「今」の2つがある。反対は「〜なくなる」で、前はできたことができない状態に変わったこと(読めなくなる・聞こえなくなる)。変化の途中なら「〜ようになってきた」。文法の用語では、可能表現 に変化の「なる」が付いた形で、状態が変わったことを表すと説明される。
接続 動詞の可能形(読める・話せる)、または「分かる・見える・聞こえる・できる」のようにもともと能力を表す動詞+ようになる/可能形のない形の「ない」を「なく」にして+なる(読めなくなる)
形
V可能形+ようになる(駅の案内が読めるようになった) V可能形のない形+なくなる(細かい字が読めなくなった) V可能形+ようになってきた(少しずつ聞き取れるようになってきた)
導入
「いっしょに考えましょう」の答えを「前/今」に分ける 学生が挙げた「面白かったこと」から、来日前と今を板書で左右に分ける。「前: 駅のアナウンスが分からない → 今: 分かる」のように並べ、矢印の上に「ようになった」と書いて「分かるようになった」と言う。「できる」(今の状態)と「できるようになった」(変化)の違いは、矢印があるかないかで見せる。
教師自身の変化で「なくなる」まで 教師が自分の外国語の話をする(「日本に来たばかりのころは〜なかった。今は〜ようになった」)。次に、前はできて今はできない例(子どものころは木に登れたが、今は登れなくなった)を出し、矢印を逆向きに書いて「なくなった」を足す。
板書案
V可能形・分かる/見える など + ようになる / (ない)→ 〜なくなる
前:駅の案内が読めない → 今:読めるようになった
子どものころは木に登れた → 今は登れなくなった
〔赤〕矢印=変化(前と今の2つ) 〔青〕「できる」だけ=今の状態
〔誤りの例〕*漢字が読めるになった → 読めるようになった
場面と発話(自作)
来日して半年。駅で友だちと乗り換えを調べながら、前との違いを話す。 前は駅の案内が全然読めなかったけど、最近は読めるようになった。
アルバイト先で店長に、電話の応対ができるようになったか聞かれた。 まだ少し緊張しますが、注文の電話は取れるようになりました。
日本語ばかり使う生活で、母語の難しい言葉が出てこない。寮で同じ国の友だちに。 日本語ばかり使っていたら、母語の難しい言葉がすぐに出てこなくなった。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「日本に来る前は?」「今は?」と聞き、学生が「前は〜なかったけど、〜ようになった」で答える問答を一回り。次に「国にいたときはできたのに、今はできなくなったこと」を1つずつ。そのあと教科書の練習へ。
口頭 教師が「前」と「今」の2枚の絵カードを並べて見せる(箸が使えない→使える/納豆が食べられない→食べられる/敬語の電話が受けられない→受けられる)。全体で「前は箸が使えなかったけど、今は使えるようになった」と言い、次に個人指名。最後にカードの順を逆にして(子どものころは逆立ちができた→今はできない)「〜なくなった」を言わせる。
ペア Aは架空の人物の「1年前」のカード、Bは同じ人物の「今」のカードを持つ(情報差)。互いのカードは見せず、Aが「1年前は〜できなかったそうです」と言い、Bが自分のカードを見て「今は〜ようになりました」「今は〜なくなりました」と答える。3項目ごとに役を交替する。
産出 「できるようになった年表」: 来日から今までを横線で書き、その上に自分ができるようになったことを2つ、できなくなったことを1つ書き込んで、1分で発表する。聞き手は「いつごろから?」と1つ質問する。教師は可能形が正しく作れているか(来られる・見られる など)、「〜なくなる」の形、前の状態を言ってから変化を言っているかを聞き取り、発表のあとで2、3例を全体で直す。
つまずきと手当て
「できるようになる」を「できるになる」「できるのになる」と言う。「ようになる」をひとかたまりで板書し、動詞の後ろにそのまま付くことを示す
「読めないようになる」と言う。通じるが、ふつうは「読めなくなる」と言うと伝えて言い換えさせる
変化が無い文に使う(今泳げるという意味で「私は泳げるようになります」)。「前は?」と必ず前の状態を聞き、変化があるときだけ使うことを確かめる
既習の文型との違い
〜ようにする(初級) 「ようにする」は自分で努力してそうする(意志)、「ようになる」は結果としてそう変わった(変化)。学習者が「日本語が話せるようにしました」と言ったら、努力した話か、結果として話せるようになった話かを聞き返して、言いたいほうを選ばせる。
形容詞・名詞+なる(初級) 「上手になった」「寒くなった」は形容詞や名詞の状態が変わったことで、「なる」が直接付く。動詞のときは間に「ように」が要る。動詞に直接「なる」を付ける誤り(*話せるになった)が出たら、品詞で形が分かれることを板書で見せる。
関連する文型
学習項目 2 〜ようになる/〜なくなる(習慣)
意味・はたらき使いましょう A-2(習慣・行動の変化)
前はしていなかった行動を、するのが当たり前になった(習慣が変わった)ことを言う。A-1 の能力の変化ではなく、行動の習慣の変化。反対は「〜なくなる」で、前はしていた行動をしなくなったこと。本人が決めたというより、生活が変わった結果として自然にそうなった、という言い方になることが多い。A-1 と形は同じ。境目は動詞の意味で、可能形や「分かる・見える・聞こえる・できる」のように能力を表す動詞なら能力の変化、「見る・作る・食べる」のようにふつうの動作の動詞なら習慣の変化になる。
接続 動詞の辞書形+ようになる/動詞のない形の「ない」を「なく」にして+なる(行かなくなる)
形
V辞書形+ようになる(毎朝ニュースを見るようになった) Vない形+なくなる(夜ふかししなくなった) V辞書形+ようになってから、〜(自転車で通うようになってから、体の調子がいい)
導入
A-1 の板書に行動の例を足す A-1 の「前/今」の板書に、能力ではない行動の例を足す。「前: コンビニで弁当を買う → 今: 自分で作る」。「作れるようになった」(能力)と「作るようになった」(習慣)を上下に並べ、能力を言う形(作れる)と動作そのもの(作る)で色を変えて示す。「分かる」「見える」は可能形ではないが能力の側に入ることも添える。
日本に来て変わった習慣を集める 「日本に来てからするようになったこと」を学生に3つ挙げさせる(靴を脱ぐ・ごみを分ける・自転車に乗る)。次に「しなくなったこと」も(夜遅く食べる・バイクに乗る)。並べて書くと「〜ようになる」と「〜なくなる」が対になることが見える。
板書案
V辞書形 + ようになる(習慣) / Vない → 〜なくなる
前:コンビニで弁当を買っていた → 今:自分で作るようになった
作れるようになった(能力)/作るようになった(習慣)
〔赤〕可能形・分かる/見える など=能力 〔青〕ふつうの動作の動詞=習慣
〔誤りの例〕*料理をするのようになった → 料理をするようになった
場面と発話(自作)
日本に来て3か月。国の友だちとビデオ通話で、生活の変化を話す。 こっちに来てから、ごみを曜日ごとに分けるようになったよ。
残業が増えて生活のリズムが変わった。同僚とのランチで。 最近、朝ご飯を食べなくなって、昼まで何も食べていないんです。
日本語の授業で先生に、勉強の仕方が変わったか聞かれた。 聞き取りが苦手なので、通学の電車でラジオを聞くようになりました。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
「日本に来てから」「アルバイトを始めてから」のように変化のきっかけを教師が言い、学生が「〜ようになった」「〜なくなった」を1文ずつ。A-1 と混ぜた問答(「できるようになった? するようになった?」)で区別を確かめてから教科書の練習へ。
口頭 教師が変化のきっかけのカード(日本に来てから/一人暮らしを始めてから/アルバイトを始めてから)と行動の絵(自転車・料理・早起き)を組にして見せ、全体で「一人暮らしを始めてから、料理をするようになった」と言う。次に×印を付けた絵(夜ふかし・外食)で「〜しなくなった」。個人指名では能力の絵(漢字が読める)を混ぜ、能力か習慣かを選ばせる(「分かる」の絵も入れて、可能形でなくても能力の側になることを確かめる)。
ペア 「生活の変化くらべ」: 2人がそれぞれ「来日前」「今」の生活の表(朝ご飯・通学の方法・寝る時間・家族への連絡)を自分のことで埋める。表は見せずに相手に質問し、聞き取ったことを「○○さんは〜ようになったそうです」「〜なくなったそうです」と言う。3項目ごとに質問する側を交替する。
産出 「ビフォー・アフター紹介」: 日本に来て変わった習慣を3つ、よかった変化と残念な変化を両方入れて1分で話す(「〜なくなった」を1つ以上)。教師は、言いたいのが能力か習慣かと動詞の選び方(作れる/作る)が合っているか、一回だけの出来事に使っていないかを聞き取る。
つまずきと手当て
能力と習慣が混ざる(毎日読む習慣を言いたいのに「漢字を読めるようになった」)。どちらも正しい文なので、「できなかった→できる」か「していなかった→する」かを学生自身に選ばせる
「行かないようになる」と言う。A-1 と同じで「行かなくなる」に言い換えさせる
一回だけの出来事に使う(「昨日、映画を見るようになった」)。「ようになる」は習慣の変化なので、「今も続いているか」を聞いて確かめる
既習の文型との違い
〜ようにしている(初級〜中級) 「毎朝走るようにしている」は自分の努力で続けていること、「毎朝走るようになった」は前は走らなかったのが走るのが当たり前に変わったこと。同じ習慣を両方の形で言わせ、「努力しているか」「変わったか」のどちらを言いたいかを比べさせる。
〜ようになる(能力・A-1) 同じ課の A-1 とは形が同じで、動詞の意味で分かれる。「泳げるようになった」「漢字が分かるようになった」は能力(可能形や、分かる・見える・聞こえるのようにもともと能力を表す動詞)、「泳ぐようになった」は習慣。どちらも正しい文なので、学習者がどちらを言いたいのかを先に聞いて動詞を選ばせる。
関連する文型
学習項目 3 〜がる
意味・はたらき使いましょう B
ほかの人の気持ち(ほしい・したい・こわい・寂しい・痛い・いや)を、外から見て「そういう様子だ」と言う言い方。自分の気持ちは「ほしい」「〜たい」で言えるが、他人の気持ちは本当は分からないので、態度や様子から判断して「〜がる」で言う。今の様子なら「〜がっている」、性格や繰り返しなら「〜がる」。「がる」が付くと動詞になるので、目的語の助詞は「が」から「を」に変わる(スマホがほしい→スマホをほしがる)。文法の用語では、気持ちや感覚を表す形容詞は話し手以外のことを言い切りにくい(人称の制限がある)ので、他人について言うときに付ける形と説明されることが多い。
接続 い形容詞の語幹(ほしい→ほし・こわい→こわ)+がる/な形容詞の語幹(いや・残念・不思議)+がる/「〜たい」の「たい」を「たがる」に。「がる」は1グループの動詞として活用する(がっている・がらない・がった)
形
い形容詞の語幹+がる(ほしがる・寂しがる・痛がる) な形容詞の語幹+がる(いやがる・不思議がる・残念がる) V たい→たがる(行きたがる・知りたがる)
導入
「私」と「あの人」で形と助詞を並べる 「私はスマホがほしい」の横に、学生の1人を指して「○○さんはスマホをほしがっている」と書く。「ほしい→ほしがる」「が→を」の2か所を線で結ぶ。「どうして○○さんのことを『ほしい』と言えないのか」を聞き、「他人の気持ちは見えないから」という理由を学生の口から出させる。
本文の親と子の場面で言わせる 本文には親が子供を心配して口を出したくなるという話題があるので、登場人物の様子を「子供は〜をいやがっている?」「親は〜たがっている?」の形で言わせる。本文の中身を断定せず、「どう見えるか」を聞けばよい。
板書案
私は スマホが ほしい。
弟は スマホを ほしがっている。
〔赤〕ほしい → ほしがる 〔青〕が → を
い形容詞・な形容詞の語幹/Vたい→Vたがる + がる(1グループの動詞として活用)
〔誤りの例〕*弟はスマホがほしがっている → スマホを
場面と発話(自作)
学校の行事でお化け屋敷に入ることになった。先生が、こわそうにしている学生の様子を見て言う。 森さんはお化け屋敷をこわがっているから、別の場所に行きましょう。
国の弟が日本へ遊びに来たいと何度も言ってくる。寮で友だちに。 弟が日本に来たがっているんだけど、航空券が高くて。
新しく入ったアルバイトの人が、皿洗いばかりで元気がない。店長に様子を伝える。 新しい人、皿洗いをいやがっているみたいですよ。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が学生の様子を演技で見せ(寒そうに腕を組む・時計を何度も見る)、学生が「先生は寒がっている」「帰りたがっている」と言う。次に絵や写真で第三者の気持ちを言わせ、「が→を」の助詞を確かめてから教科書の練習へ。
口頭 教師が表情や様子の絵カードを見せる(注射を見て泣く子ども・雷の音で隠れる犬・時計ばかり見ている会社員・店のゲームをじっと見つめる子ども)。全体で「この子は注射をこわがっている」「この人は帰りたがっている」と言い、次に個人指名。最後に教師が「じゃあ、あなたは?」と聞き、学習者が「私も注射がこわいです」と「〜がる」を外した形に戻す。
ペア 「気持ち当てジェスチャー」: Aが気持ちのカード(寒い・こわい・痛い・いや・帰りたい・食べたい)を引いて、言葉を使わずに演じる。Bが「Aさんは〜がっていますね」と言い当て、Aは「はい、〜です/〜たいです」と自分の言い方で答える。4枚ごとに交替し、他人なら「〜がる」、自分なら「〜い/〜たい」という切り替えを口で何度も通す。
産出 「うちの家族・ペット紹介」: 家族や友だち、ペットがよくする様子を、性格や繰り返しの「〜がる」で2〜3文紹介する(うちの犬は掃除機をこわがる、など)。教師は、自分のことに使っていないか、目的語の助詞が「を」になっているか、気持ちや感覚の語に付いているかを見て、発表のあとで全体に戻す。
つまずきと手当て
今の自分の気持ちに使う(「私は国へ帰りたがっています」)。「〜がる」はふつう見ている人の言い方だと板書に残し、今の「私」のときは「〜たい」「ほしい」に戻す(過去の自分を振り返る文や「私がいやがること」のような修飾の中では使えるが、ここでは深追いしない)
助詞がそのまま(「お金がほしがっている」)。「ほしがる」「〜たがる」は動詞なので目的語は「を」。「〜たがる」で「が」が残る例も聞くことはあるので、深追いはしない
気持ちを表さない形容詞に付ける(「大きがる」「高がる」)。付くのは気持ちや感覚の語だけだと、使える語の一覧で見せる
既習の文型との違い
〜たい/ほしい(初級) 「〜たい」「ほしい」は話し手の気持ち。ほかの人について「田中さんは帰りたいです」と言うと、本人の心の中を決めつける言い方になり不自然に聞こえる。ほかの人なら「帰りたがっている」「帰りたいと言っていた」「帰りたいそうだ」のどれかにすると示す。
〜そうだ(様態・初級) 「寒そうだ」は見た目からの印象を言うだけ、「寒がっている」は本人が寒さを態度や言葉に出している様子を言う。冬に薄着で立っている人の写真で「寒そうだ」、震えて「寒い寒い」と言っている人の写真で「寒がっている」と言い分けさせる。
関連する文型
学習項目 4 〜ては/といけない
意味・はたらき使いましょう C
「〜てはいけない」は「それをしてはだめだ」という禁止。ルールや注意として相手に向けて言うことが多い。「〜といけない」は「そうなると困る・まずい」という心配で、「〜といけないから、…」のように、前もって何かをしておく理由として使うことが多い。形は似ているが、「ては」は行為を止める言い方、「と」は悪い結果を避ける言い方で、向きが違う。文法の用語では、「てはいけない」は禁止を表す言い方、「といけない」は条件の「と」に「いけない(困る)」という評価が付いた形と説明されることが多い。
接続 動詞のて形+は いけない(話し言葉では「〜ちゃいけない」「〜じゃいけない」)/動詞の辞書形・ない形+と いけない(遅れるといけない・足りないといけない)。「と」の前にて形は使わない
形
V て形+はいけない(ここで写真を撮ってはいけない) V 辞書形/ない形+といけないから、〜(雨が降るといけないから、傘を持っていく) V ない形+といけない(すべき行為の打ち消しに付くと義務。「〜なければならない」と同じ意味で、この課の心配の「〜といけない」とは意味が別と伝える)
導入
教室のルールと持ち物の理由で対にする 教室の掲示(スマホ使用禁止など)を指して「授業中にスマホを使ってはいけません」。次に教師が折りたたみ傘をかばんから出して「午後、雨が降るといけないから、持ってきました」。2つを板書で並べ、「てはいけない=だめ」「といけない=心配」とラベルを付ける。
新しい言葉の「いけない」から本文へつなぐ 新しい言葉に「いけない」があるので、本文の中でどの形で出ているかを探させる。親が口を出したくなるという話題を使い、「口を出してはいけない」「口を出すといけない」のどちらが本文の気持ちに近いかを考えさせると、禁止と心配の違いが実感できる。
板書案
Vて + は いけない(禁止:だめ)
ここで写真を撮ってはいけない。
V辞書形/Vない + と いけない(心配:そうなると困る)から、〜
雨が降るといけないから、傘を持っていく。
〔赤〕ては=行為を止める 〔青〕と=悪い結果を避けるために前もってする
〔誤りの例〕*遅れてといけないから → 遅れるといけないから
場面と発話(自作)
寮の共用キッチンで、友だちが深夜に料理を始めようとしている。 11時過ぎはキッチンを使ってはいけないよ。
明日は日本語能力試験。寮で友だちに、早く寝る理由を言う。 寝坊するといけないから、今日は早く寝る。
アルバイトの初日。店長が食品を扱うときの注意を言う。 手を洗わないで食べ物に触ってはいけません。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が場所の絵(図書館・病院・電車)を見せて「〜てはいけない」を言わせる。次に「明日の持ち物」を聞き、「〜といけないから、〜を持っていく」の形で理由を言わせる。2つを混ぜた問答で「だめ」か「心配」かを学生に答えさせてから教科書の練習へ。
口頭 前半は禁止の標識の絵(撮影禁止・飲食禁止・自転車の乗り入れ禁止)を見せて全体で「ここで写真を撮ってはいけません」。後半は心配の絵(黒い雨雲・電池が残り少ないスマホ・初めて行く会社の地図)を見せて「雨が降るといけないから、傘を持っていきます」。最後に2種類の絵を混ぜて出し、学習者が先に「だめ」か「心配」かを言ってから文を言う。
ペア 「持ち物会議」: 予定のカード(山登り・面接・初めての出張)を引き、Aが「〜を持っていく?」と聞き、Bが「〜といけないから、持っていこう」と理由を付けて答える。続けてAが行き先のルールのカード(山の上で火を使う・面接中に電話に出る)を見て「〜てはいけないよ」と注意する。カード2枚ごとに役を交替する。
産出 「新しく来る人へのアドバイス」: 自分の学校・寮・アルバイト先に新しく来る人に向けて、守るルール(〜てはいけない)を2つ、準備しておくとよいこと(〜といけないから、〜)を2つ入れた短いアドバイスを書いて読み上げる。教師は、て形と辞書形の使い分け、「といけない」が相手への禁止になっていないか、義務の「〜ないといけない」と混ざっていないかを見る。
つまずきと手当て
「〜といけない」を禁止の意味で使う(「たばこを吸うといけない」)。「と」の後ろは心配の内容で、相手に「するな」とは言っていないことを確かめる
「〜といけない」の前にて形を付ける(「遅れてといけない」)。「と」の前は辞書形かない形、と板書する
「〜ないといけない」(義務)と混ざる。「遅れないといけない」のような文が出たら意味(遅れなければならない?)を聞き返し、この課の「〜といけない(心配)」との違いに気づかせる
既習の文型との違い
〜てもいい(初級・許可) 「〜てもいいですか」に対する打ち消しの答えが「〜てはいけません」で、許可と禁止は対になる。ただし面と向かって「〜てはいけません」と言うのは強く聞こえるので、実際の会話では「すみません、ちょっと……」と言うことが多い、と場面の差も添える。
〜ないといけない(初級・義務) 初級で義務として習う「〜ないといけない」(明日までに出さないといけない)は「出さないと困る」=「出さなければならない」という義務。この課の「〜といけない」(遅れるといけないから、早めに出る)は「遅れると困る」という心配。どちらも「Pと困る」の形なので、文末か「から」が続くかでは決まらない(「風邪をひくといけないよ」は文末でも心配、「明日出さないといけないから徹夜する」は「から」が続いても義務)。Pが自分のすべき行為の打ち消し(出さない・行かない)なら義務、避けたい出来事(遅れる・雨が降る・足りない)なら心配、と P の中身で見分けさせる。
関連する文型
学習項目 5 〜ないで/ずにいる
意味・はたらき使いましょう D
「しない」という状態を、わざと、または我慢して続けていることを言う。「〜ていない」が「まだしていない」という事実だけなのに対して、「〜ないでいる」「〜ずにいる」は「したいけれどしない」「言いたいけれど言わない」のように、本人の気持ちや事情が後ろにある。「〜ずに」は「〜ないで」より書き言葉的で、本文のような読み物の文によく出る。「いる」が付くことで、しない状態がある時間続いていることを表し、アスペクト(動きの局面)で見ると状態の継続にあたる。
接続 動詞のない形+で いる(言わないでいる)/動詞のない形の「ない」を「ず」にして+に いる(言わずにいる)。「する」は「せずに」(×しずに)、「来る」は「来(こ)ずに」
形
V ない形+でいる(連絡しないでいる) V ず+にいる(連絡せずにいる) V ないで/ずにいられない(我慢できない。発展として触れる程度)
導入
「していない」との違いを状況で見せる 「友だちからメッセージが来た。でも返事をしていない」という状況を2通りに言い分ける。「まだ返事をしていない」(事実だけ)と「忙しくて返事をしないでいる」(事情があってその状態を続けている)。後者には「わざと・我慢して」の気持ちが入ることを、顔の絵や手ぶりで示す。
本文の親の場面で「ずに」を見せる 本文には、親が子供を心配しながら口を出さない場面があると推測されるので、その場面を使って「言いたい。でも言わない。その状態を続ける」を「口を出さずにいる」の形で見せる。「ないで」と「ずに」を並べ、本文で使われているのはどちらかを確かめる。
板書案
Vない + で いる / Vない→ず + に いる
まだ返事をしていない。(事実だけ)
忙しくて、返事をしないでいる。(事情があってその状態を続けている)
する → せずに 来る → 来(こ)ずに
〔赤〕いる=しない状態を続ける 〔青〕ずに=書き言葉に多い
〔誤りの例〕*連絡しずにいる → 連絡せずにいる
場面と発話(自作)
友だちの日本語の間違いを直したいが、嫌がられるかもしれない。別の友だちに相談する。 気になるけど、言わないでいるんだ。
国の家族に病気のことを知らせていない。心配させたくないから。寮で友だちに。 家族を心配させたくなくて、まだ何も言わずにいる。
新しい職場で分からないことがあるが、忙しそうな先輩に聞けない。同期に話す。 先輩が忙しそうで、質問できずにいる。
練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)
教師が「言いたい・でも言わない」「食べたい・でも食べない」のように気持ちと行動を対で言い、学生が「〜ないでいる」「〜ずにいる」の2つの形で言う。「する」「来る」の動詞を必ず入れて「せずに」「来ずに」を確かめてから教科書の練習へ。
口頭 教師が「〜たい。でも〜ない」の2枚組のカードを見せる(言いたい/言わない・買いたい/買わない・聞きたい/聞かない・連絡したい/連絡しない・来たい/来ない)。全体で「言いたいけど、言わないでいる」と言い、同じカードで「言わずにいる」に言い換える。個人指名では「する」「来る」のカードを必ず当て、「せずに」「来ずに」を確かめる。
ペア 「言えない悩み相談」: Aが悩みのカード(貸したお金を返してほしい・先輩の間違いに気づいた・ルームメイトの音がうるさい)を引き、「実は、〜ずにいるんです」と打ち明ける。Bは「どうして?」と理由を聞き、Aは理由を言う(C の「〜といけないから」を使ってもよい)。Bは最後に一言アドバイスをする。カード1枚ごとに交替する。
産出 「ずっとできずにいること」: 本当はしたいのにまだしていないこと(習い事を始める・国の友だちに連絡する など)を、理由と一緒に3〜4文で書き、ペアで読み合う。教師は、事情や気持ちのない単なる未完了を「〜ないでいる」で言っていないか、「せずに」「来ずに」の形、「ないで」「ずに」の後ろに「いる」が付いているかを見る。
つまずきと手当て
「しずに」「こないずに」と作る。「する→せずに」「来る→来ずに」だけ別に板書して、何度か口で言わせる
「〜ていない」と同じ意味だと思って使い、文が不自然になる(宿題をまだやっていない事実を「宿題をしないでいます」)。「わざと・事情があって」が無いときは「〜ていない」でよい、と確かめる
「〜なくている」と言う(ない形+ている)。「ないで」「ずに」の後ろにだけ「いる」が付くことを形で示す
既習の文型との違い
まだ〜ていない(初級) 「まだ連絡していない」はしていないという事実だけを言い、「連絡しないでいる」は事情や気持ちがあってその状態を続けていることを言う。宿題をまだ終えていないだけのときに「宿題をしないでいます」と言うと、わざとしていないように聞こえる、と場面で比べる。
〜ないで、〜(初級・付帯状況) 「朝ご飯を食べないで学校へ行った」は、一回の動作のしかた(何をしない状態で次の動作をするか)。「食べないでいる」は、しない状態そのものが続いていること。後ろに別の動詞が続くか、「いる」で終わるかで見分けさせる。
関連する文型
語彙の扱い
この課の新出語は 18 語(本文を読むための語 18・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。
新しい言葉は本文に出る順で18語。数が少ないので、1語ずつ読みと意味を確かめる時間が取れる。「口を出す」「手を止める」「口々に」のように体の部位を使う表現は、動作を見せながらまとめて扱う。「それでも」「そこで」「〜だって」は単語として覚えさせるより、本文の中で前後の文をどうつなぐかを確かめる。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。
第1課の語彙リスト(18語) 新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
▸
本文の扱い 本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(始める・心配する・親・口を出す・なぞなぞ・手を止める・口々に・相手・文化・学ぶ・広げる)から、子供が外国語を習い始め、親は心配して口を出したくなるが、ある日なぞなぞの場面で子供たちが口々に答えるのを見て、言葉を学ぶことは相手の文化を学ぶことでもあり世界が広がる、という話題だと推測される。精読では「だれが学んでいるか」「親はどうしたいか・実際にはどうするか」「なぞなぞの場面で何が起きたか」「筆者が面白いと思っているのは何か」の4点を段落ごとに聞く。「それでも」「そこで」が話の向きを変えるところなので、そこで一度止めて前後の関係を学生に言わせる。
宿題と次のコマ 使いましょう A〜D の練習の残りと、漢字 A の書き取り。まとめましょうの「外国語を学んで変わったこと」を3文(〜ようになる/〜なくなる を1つ以上)で書いてくる。次のコマは精読の続きと話しましょう。
よくある質問
第1課「まなぶ」は何コマで終わりますか?
90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・設問と使いましょう A-1・A-2・B、2コマ目で C・D とまとめ・漢字まで進めます。精読に時間をかけたいクラスは、精読の続きを3コマ目に回してもかまいません。
「〜ようになる」の能力の変化と習慣の変化は、どう教え分ければいいですか?
形は同じなので、動詞の意味で分けます。可能形(作れる・泳げる)や「分かる・見える・聞こえる・できる」のようにもともと能力を表す動詞なら能力の変化、「作る・見る」のようなふつうの動作の動詞なら習慣の変化です。「作れるようになった」(能力)と「作るようになった」(習慣)を板書で上下に並べ、「分かるようになった」も能力の側に置いて見せます。どちらも正しい文なので、学習者には「できなかった→できる」か「していなかった→する」かを先に選ばせると混ざりにくくなります。
「〜てはいけない」と「〜といけない」の違いは何ですか?
「〜てはいけない」は「それをしてはだめだ」という禁止で、相手の行為を止める言い方です。「〜といけない」は「そうなると困る」という心配で、「〜といけないから、…」と前もって準備する理由として使います。形の違い(て形+は/辞書形・ない形+と)も板書で並べて確かめます。
「〜がる」はなぜふつう自分のことに使わないのですか?
「ほしい」「こわい」のような気持ちの語は、本人にしか分からない心の中を言う語なので、ほかの人について言い切ると決めつけに聞こえます。「〜がる」は外から見た様子として言う形なので、ふつうはほかの人に使います。ただし、過去の自分を外から振り返る文(子どものころ、私は注射をこわがった)や、「私がいやがることはしないで」のような修飾の中では自分にも使います。学習者には「見ている人の言い方」と説明し、今の自分の気持ちは「〜たい」「ほしい」に戻させます。
「〜ないでいる」と「まだ〜ていない」はどう違いますか?
「まだ〜ていない」は、していないという事実だけを言います。「〜ないでいる」「〜ずにいる」は、したい・言いたいけれど事情があってしない状態を続けている、という気持ちが後ろにあります。宿題がまだ終わっていないだけのような場面では「〜ていない」でよい、と比べて見せます。
この課に関係する用語・解説・練習問題 この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。