日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

中級から学ぶ日本語 第3課「たべる」の教案

『テーマ別 中級から学ぶ日本語 三訂版』 ・ 本文〈ごちそう〉

食べることがテーマの課です。新しい言葉(画面・すます・習い事・温める・囲む・栄養・バランス・時間をかける・なつかしい)から、本文は、画面を見ながら簡単にすませる今の食事と、家族が食卓を囲んでいた昔の風景とを比べ、時間をかけていっしょに食べることの意味を考える読み物だと推測されます。文型は、変わる前に何かをする「〜うちに」と、その期間の状態を言う「〜うちは」の対、相手のしたいことを許す「使役て形+あげる/やる」、言葉や考えを一つにしぼって強く言う「〜としか〜ない」の4つ。「うちに/うちは」は一字違いで後ろに来る文の種類が変わるので、同じコマで並べて教えると区別しやすくなります。

このページについて教科書の本文・例文・設問は載せていません。例文と場面はすべて自作です。学習項目の名前は教科書の「使いましょう」の見出しに合わせています。
学習項目4時間90分×2コマ語彙22語

この課のねらい(Can-do)

  • 「〜うちに」で、状態が変わる前にしておきたいことを、理由とともに言える
  • 「〜うちは」で、ある期間だけ続く状態を、そのあとの変化と比べて言える
  • 「使役て形+あげる/やる」で、子ども・年下・ペットなどがしたいことを許す場面を、相手に合った言い方で言える
  • 「〜としか〜ない」で、感想や判断を一つにしぼって強く言え、「言えない」と「言わない」の気持ちの違いが分かる
  • 本文を読んで、今と昔の食事の様子を比べ、自分の国や自分の食生活と比べて話せる

進め方と時間配分

目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
1コマ目・新しい言葉15分22語。読みと短い意味を確かめる。「目をやる」「声を上げる」「時間をかける」は動作や場面で見せ、「遊び疲れる」は「歩き疲れる」「待ち疲れる」と並べて「〜疲れる」の作り方を見せる。「〜うち」は学習項目で扱うと予告するだけにする
1コマ目・いっしょに考えましょう10分「昨日の晩ご飯は、だれと、どこで、何を見ながら食べたか」を1人ずつ。答えを「一人/だれかと」「画面あり/なし」の表にして黒板の端に残すと、本文の大意と話しましょうに使える
1コマ目・読みましょう(大意)25分教師の範読→段落ごとの音読→「今の食事はどんな様子か」「昔の食卓はどんな様子か」「筆者が『ごちそう』と感じているのは何か」の3点で大意。精読は2コマ目に回す
1コマ目・答えましょう10分設問をいっしょに解く。答えが本文のどこにあるかを指で押さえさせる。筆者の考えを問う設問は口頭で短く答え、まとめましょうに残す
1コマ目・使いましょう(学習項目1・2)30分「〜うちに」→「〜うちは」の順に、導入→自作の問答→教科書の練習。最後の5分で二つを混ぜた問答をして、後ろが行動か状態かで選ばせる
2コマ目・復習と精読20分「〜うちに/うちは」を絵カードで2〜3問言わせてから本文の精読。段落ごとに、今の様子を表す言葉と昔の様子を表す言葉を拾わせ、対比の形で板書する
2コマ目・使いましょう(学習項目3・4)40分使役形の確認(5分)→「使役て形+あげる/やる」→「〜としか〜ない」。導入に時間を使い切らず、各項目の半分は教科書の練習に残す
2コマ目・まとめましょう・話しましょう15分「わたしの国の食卓(今と昔)」を3〜4文で(「〜うちは」か「〜うちに」を1つ以上)。話しましょうはペアで「あなたにとっての『ごちそう』は何か」
2コマ目・漢字を練習しましょう15分読み書きの漢字は書き順と熟語を確かめて宿題へ。読みだけの漢字は本文を読みながら確かめる

学習項目 1 〜うちに

意味・はたらき学習項目 1

ある状態が続いている間に、その状態が変わる前に何かをする、と言う形。「温かいうちに食べる」は「冷めるとおいしくなくなるから、今のうちに」という気持ちで、後ろには話し手がする・したいこと(勧め・依頼も)が来ることが多い。「忘れないうちに」「暗くならないうちに」のようにない形に付くと「〜になる前に」に近いが、「そうなると困る」という気持ちが強く出る。もう一つ、「〜ているうちに」の形で、ある動作を続けている間に気づかないうちに変化が起きた(話しているうちに眠くなった)という使い方もある。文法の見方では、時を表す従属節の一つで、前の節は「変わる前の状態」を表す。

接続

動詞の辞書形・ている形・ない形+うちに/い形容詞(温かい)+うちに/な形容詞+な(元気な)+うちに/名詞+の(学生の)+うちに

形
いA/なAな/Nの+うちに、〜(温かいうちに・元気なうちに・学生のうちに)Vない+うちに、〜(忘れないうちに・暗くならないうちに)Vている+うちに、〜(変化)(何度も作っているうちに、上手になった)

導入

  • 湯気の出る料理の絵で「今のうちに」湯気の立つみそ汁の絵と、湯気の消えた冷めたみそ汁の絵を左右に貼り、間に矢印を書く。「冷めると、おいしくない。だから、温かいうちに飲みましょう」と言い、左の絵の上に「温かいうちに」と書く。後ろに来るのは「今しておくこと」だと、矢印の手前に丸を付けて見せる。
  • 「〜ないうちに」を足し、「〜ているうちに」は分けて扱う状態の「うちに」(温かい・明るい・学生の)で練習したあと、「冷めないうちに」「忘れないうちに」をない形の例として足し、同じ絵の左側を指して「まだ冷めていない間」だと確かめる。「〜ているうちに(変化)」は意味が違うので、時間に余裕があれば「料理の動画を見ているうちに、おなかがすいてきた」の1例だけ見せ、主な練習は次のコマに回してよい。

板書案

いA・なAな・Nの・Vない + うちに + 今のうちに すること
〔絵〕温かい みそ汁 →〔矢印〕→ 冷めた みそ汁
温かいうちに 食べて ください。
忘れないうちに メモして おこう。
〔赤〕うちに の後ろ = 変わる前に すること 〔青〕矢印の手前に 丸

場面と発話(自作)

  • 寮で友だちが作ってくれたスープが冷めかけている。スマホばかり見ている友だちに声をかける。せっかく作ってくれたんだから、温かいうちに食べようよ。
  • 来年の春に国へ帰る留学生。先輩に、日本にいる間にしておきたいことを聞かれた。学生のうちに、一度は北海道へ旅行したいと思っています。
  • 料理教室で、講師が卵料理を教えながら受講生に言う。卵がかたくならないうちに、火を止めてください。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「アイスクリーム」「桜」「若い」「明るい」などの語を見せ、学生が「〜うちに、〜」で今のうちにすることを言う。次に「忘れる」「冷める」「雨が降る」で「〜ないうちに」。そのあと教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が変わる前と変わったあとの絵カード(溶ける前のアイスと溶けたアイス、満開の桜と散った桜、夕方の空と夜空)を見せ、全体→列→個人の順で言わせる。キューの例は「アイス」→「溶けないうちに食べましょう」、「桜」→「咲いているうちに見に行きましょう」、「明るい」→「明るいうちに帰りましょう」、「学生」→「学生のうちに〜たいです」。品詞ごとに「の・な・い」の付き方を、言わせるたびに確かめる。
  2. ペア「今のうちにカード」。Aは「今の状態」が書かれたカード(パンの賞味期限はあさって・セールは今日まで・日本に来てまだ1年目)を読み、Bが「じゃあ、何をしておく?」と聞く。Aが「〜うちに、〜ておきたい」で答え、Bは「どうして?」と理由を1つ聞き返す。カード3枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「日本にいるうちにリスト」。学習者が、日本にいる間にしておきたいことを「〜うちに」を使って3つ書き、グループで発表して、ほかの人のリストから「自分もやりたい」ものを1つ選ぶ。教師が見るのは、後ろが今のうちにする行動になっているか、名詞の「の」・な形容詞の「な」の落ち、変わったあとの状態に付けていないか(暗くなるうちに)の3点。

つまずきと手当て

  • 名詞の「の」、な形容詞の「な」が落ちる(「*学生うちに」「*元気うちに」)。品詞ごとの付き方を板書の1行目に残し、言わせるたびに指で押さえる
  • 変わったあとの状態に付けてしまう(明るいうちに帰りたいのに「暗くなるうちに帰る」と言う)。「暗くなる」は変わったあとなので、変わる前の「明るい」か、ない形の「暗くならない」に言い換えさせる
  • 変化の「〜ているうちに」の後ろに意志の形を置く(「何度も練習しているうちに、上手になろう」)。この形は「続けていたら、いつの間にか変わった」という意味なので、後ろは「上手になった」「眠くなった」のような変化の文になる。「子どもが寝ているうちに掃除しよう」のように、ている形が変わる前の状態を表すときは意志の文でよいので、どちらの意味かを場面で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜前に(初級)「〜前に」は二つのことの順番を言うだけで、「食べる前に手を洗う」に特別な気持ちは入らない。「〜うちに」には「その状態が終わったら、できなくなる・困る」という気持ちがあるので、毎日の順番を言うときは「寝る前に歯をみがく」で、「うちに」は使わない。「前に」は時間の点、「うちに」は状態が続いている幅だと、線と矢印で見せる。
  • 〜うちは(第3課・学習項目2)「〜うちに」の後ろは今のうちにする行動で、「温かいうちに食べて」と相手に勧めることもできる。「〜うちは」の後ろはその期間の状態や判断(慣れないうちは大変だ)で、勧めや依頼はふつう来ない。学習者が混ぜたら、後ろが「する」か「〜だ」かを確かめさせる。
  • 〜間に(初級)「子どもが寝ている間に料理を作る」は、ある時間の幅の中で何かをするという事実を言う。「子どもが寝ているうちに料理を作る」は、同じ場面に「起きたらできなくなるから、今のうちに」という気持ちが加わる。学習者が「〜間に」で正しく言えている文を、むりに「〜うちに」に直させない。
関連する文型

学習項目 2 〜うちは

意味・はたらき学習項目 2

ある状態が続いている間は〜だ、とその期間の様子を言う形。「慣れないうちは大変だ」と言えば、「慣れたら大変ではなくなる」というあとの変化が、言わなくても伝わる。「は」が付くことで、その期間とそのあとの期間を比べる気持ちが出る。後ろには「大変だ」「大丈夫だ」「分からない」のような状態や判断が来ることが多く、「〜うちに」のように「今のうちにする」行動を言うのではない。「〜ないうちは〜ない」(自分で作ってみないうちは、手間は分からない)は、「〜してはじめて〜」に近い言い方になる。文法の見方では、「は」は取り立て(対比)のはたらきをしている。

接続

動詞の辞書形・ている形・ない形+うちは/い形容詞+うちは/な形容詞+な+うちは/名詞+の+うちは

形
Vない+うちは、〜(慣れないうちは、時間がかかる)いA/なAな/Nの+うちは、〜(元気なうちは、自分で料理したい)Vない+うちは、〜ない(作ってみないうちは、分からない)〜うちはいいが、〜(若いうちはいいが、年を取ると大変だ)

導入

  • 時間の線を二つに分けて「その間は」時間の線を1本書き、真ん中に縦線を入れて左を「慣れないうち」、右を「慣れたあと」とする。左に「大変」、右に「楽」と書き、「慣れないうちは、大変です」と言う。「は」に丸を付け、右の期間と比べている(今だけだ)ことを、右側を指しながら確かめる。
  • 学習者の「来たばかりのころ」から「日本に来たばかりのころ、何が大変でしたか」と聞き、答え(スーパーで何を買えばいいか分からない・箸がうまく使えない)を「〜うちは、〜」の文にまとめて板書する。「今はどう?」と右側の期間も聞き、あとで変化があるから「うちは」で言えることを学生自身に言わせる。

板書案

〜うちは + 状態・判断(その間だけ)
〔線〕| 慣れないうち | 慣れたあと |
〔左〕大変 〔右〕楽
慣れないうちは、時間が かかります。
〔赤〕は = あとの期間と 比べる

場面と発話(自作)

  • 新しく入ったアルバイトが、レジ打ちが遅いことを謝っている。先輩が励ます。慣れないうちは、時間がかかって当たり前だよ。
  • 一人暮らしを始めた留学生が、クラスメートに自炊しているか聞かれた。時間があるうちは自分で作っていますが、試験の前はコンビニですませています。
  • 80歳を過ぎても毎日料理をしている祖母のことを、同僚に話す。祖母は「体が動くうちは、自分で作る」と言って、毎日台所に立っています。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「来日1か月」「一人暮らしを始めたころ」「アルバイトの1週間目」のように始まったばかりの時期を言い、学生が「〜ないうちは、〜」でそのときの状態を言う。次に「元気な」「若い」で「〜うちは〜が、〜」とあとの変化まで言わせ、「うちに」と混ぜた問答で使い分けを確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が時間の線の左側だけを示すカード(来日1週間・一人暮らし1日目・日本語を始めたばかり)を見せ、全体→個人で「〜ないうちは、〜」を言わせる。キューの例は「漢字・読めない」→「漢字が読めないうちは、買い物が大変です」、「道・覚えていない」→「道を覚えないうちは、よく迷います」、「元気な・料理する」→「元気なうちは、自分で料理します」。2周目は線の右側も言わせ、「〜うちは〜けど、今は〜」まで伸ばす。
  2. ペア「先輩のひとこと」ロールプレイ。Aは新しい生活を始めたばかりの人(新入生・新人アルバイト)として困っていることを言い、Bは先輩として「〜ないうちは〜よ。〜たら〜」と励ます。困りごとは教師がカードで渡す(ごみの分け方が分からない・敬語がうまく出ない・満員電車がつらい)。カード2枚ごとに役を交替する。
  3. 産出「わたしの『うちは』体験」。学習者が、はじめは大変だったが今は変わったことを1つ選び、「〜ないうちは、〜。でも、〜てから、〜ようになった」の流れで4〜5文書き、ペアで読み合う。第1課の「〜ようになる」とつなげられる。教師が見るのは、後ろが状態や判断になっているか(勧め・依頼にしていないか)と、「うちに」との取り違えの2点。

つまずきと手当て

  • 後ろに勧めや依頼を置く(「温かいうちは食べてください」)。不自然な文になるので、「今のうちにする」行動を言いたいときは「うちに」に戻させる
  • 「は」を落として状態の文を続ける(「慣れないうちに、大変です」)。「うちに」の後ろは行動になるので、状態を言いたいときは「は」が要ることを、板書の〔赤〕で確かめる
  • 「〜ないうちは〜ない」の否定が重なって意味を取り違える(「やってみないうちは分からない」を「やってみても分からない」と読む)。「やってみたら、分かる」と肯定に言い直させて意味を確かめる

既習の文型との違い

  • 〜うちに(第3課・学習項目1)「〜うちに」は変わる前に何かをするという行動の言い方で、「若いうちに旅行しておこう」のように使う。「〜うちは」はその期間の様子を言い、「若いうちは、少し寝なくても平気だ」のように後ろが状態になる。同じ「若い」で二つの文を作らせ、後ろの文の種類を比べさせる。
  • 〜間は(初級)「子どもが寝ている間は、静かにする」は、ある期間ずっと同じことが続くという事実を言う。「〜うちは」には「その期間が終われば変わる」という見通しが入るので、「慣れないうちは」「元気なうちは」のように、いつか終わる状態によく使う。
関連する文型

学習項目 3 使役て形+あげる/やる

意味・はたらき学習項目 3

相手がしたがっていることを、こちらが許して(させて)、相手のためになるようにする、と言う形。「させる」には「むりにさせる」(強制)と「したいようにさせる」(許可)の二つの意味があるが、「〜させてあげる/やる」はほとんどが後者で、「ゲームをさせてあげる」は「ゲームをしてもいいと許してあげる」こと。「やる」は自分の子ども・弟や妹・ペット・植物など、目下や身内に使い、くだけた話し言葉になる。許す側が上に立つ言い方なので、目上の人には使わない。食べ物の場面では「食べさせてあげる」が「食べることを許す」と「(赤ちゃんなどに)食べ物を口に運ぶ」の二つの意味になるので、場面で区別する。文法の見方では、使役(ヴォイス)と授受表現の組み合わせ。

接続

動詞の使役形(1グループ: 書く→書かせる/2グループ: 食べる→食べさせる/する→させる/来る→来させる)をて形にして(書かせて・食べさせて)+あげる/やる。動作をする人は「〜に」で表すことが多い

形
〔人〕に Nを V使役て形+あげる(子どもにケーキを作らせてあげる)〔人・動物〕を V使役て形+やる(犬を公園で走らせてやる)V使役て形+あげたい/やりたい(好きなだけ遊ばせてあげたい)

導入

  • 「したい」の吹き出しから始める子どもの絵に「料理を手伝いたい!」の吹き出しを付け、親の絵を横に置く。「親は『いいよ』と言いました」と言ってから「親は子どもに料理を手伝わせてあげました」と板書し、ここの「させる」が「むりに」ではなく「したいようにさせる」意味だと、吹き出しを指して確かめる。比べるために「親は子どもに料理を手伝ってもらいました」(親のため)も下に書き、だれのためになるかを矢印で示す。
  • 使役形の作り方を先に5分使役形がすぐに口から出ない学習者が多いので、導入の前に動詞カードで「行く→行かせる」「食べる→食べさせる」「する→させる」「来る→来させる」を全体で言わせ、続けてて形「行かせて」まで言わせる。形の練習と意味の導入を分けると、意味の説明が形の混乱でぼやけない。

板書案

〔人〕に Nを V使役て形 + あげる/やる
〔吹き出し〕子ども「手伝いたい!」→ 親「いいよ」
母は 子どもに 料理を 手伝わせて あげました。
〔比べる〕母は 子どもに 料理を 手伝って もらいました。(母のため)
〔赤〕させる = したいように させる(許可) 〔青〕やる = 子ども・ペット・植物

場面と発話(自作)

  • 週末に小学生の姪が遊びに来る。台所に立ちたがっているので、同僚に話す。姪がお菓子を作りたがっているので、今度、台所でクッキーを作らせてあげるつもりです。
  • ホームステイ先で、留学生が「国の料理を作ってみたい」と言った。ホストファミリーのお母さんが家族に相談する。明日の晩ご飯は、あの子に国の料理を作らせてあげようか。
  • 犬を飼っている人が、散歩の途中で近所の人に話しかけられた。平日は家で留守番ばかりなので、休みの日は広い公園で走らせてやるんです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「子ども・ゲームをしたい」「弟・車を運転したい」「犬・外で遊びたい」のように〔人〕と〔したいこと〕を言い、学生が「〜に〜させてあげる/やる」で言う。次に「だれのため?」「だれがする?」を聞いて「〜てあげる」「〜てもらう」と混ぜ、動作をする人を確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭まず使役形のカード練習を全体で1周(「食べる」→「食べさせる」→「食べさせて」)。次に〔人〕と〔したいこと〕の絵カードを組にして見せ、全体→個人で言わせる。キューの例は「子ども+アイスを食べたい」→「子どもにアイスを食べさせてあげる」、「弟+パソコンを使いたい」→「弟にパソコンを使わせてやる」、「犬+川で泳ぎたい」→「犬を川で泳がせてやる」。最後に「先生+先に帰りたい」のカードを混ぜ、目上には使えないと気づかせて「どうぞ、お先に」と言い換えさせる。
  2. ペア「いいよ・だめ」家族会議。Aは子ども役で「〜たい!」とお願いを3つ言い、Bは親役で理由をつけて許すか許さないかを決め、許すときは「じゃあ、〜させてあげる」、許さないときは「〜はさせられない、〜から」と言う。最後にAが「〜させてもらえた」と結果をまとめる。許す側・許される側の両方の言い方を、役を替えて一回りする。
  3. 産出「わたしが親だったら」スピーチ。学習者が、自分に子どもがいたら(または弟・妹・ペットに)させてあげたいことを2つ、させたくないことを1つ選び、理由をつけて1分で話す。テーマが食べることなので「好きな物を好きなだけ食べさせてあげたい」「〜は食べさせたくない」も歓迎する。家族のことを話したくない学習者には、ペットや架空の家族でよいと先に伝える。教師が見るのは、使役形の作り方、「あげる」と「やる」の相手の選び方、目上の人に使っていないかの3点。

つまずきと手当て

  • 使役形を作りそこなう(「*食べらせて」「*行きさせて」「*しさせて」)。導入の前の5分で、グループごとの作り方を板書に残しておき、間違えたらそこを指す
  • 目上の人に使う(先生に向かって「わたしのお弁当を先生に食べさせてあげます」)。形は合っていても、上から許しているように聞こえて失礼になるので、目上には「どうぞ召し上がってください」のように勧める形に言い換えさせる
  • 「食べさせてあげる」の二つの意味を取り違える(「赤ちゃんにご飯を食べさせてあげた」を「食べることを許した」と読む)。小さい子や病気の人が相手なら「口に運ぶ」意味が多いと、場面の絵で確かめる

既習の文型との違い

  • 〜てあげる(初級)「〜てあげる」は自分がその動作をして相手のためになること(子どもに料理を作ってあげる=作るのは自分)。「〜させてあげる」は相手がその動作をするのを許すこと(子どもに料理を作らせてあげる=作るのは子ども)。学習者が二つを混ぜると動作をする人が逆になるので、「だれが作る?」と必ず聞き返す。
  • 〜させてもらう/させてください(初級)「〜させてもらう」「〜させてください」は、自分がしたいことを相手に許してもらう側の言い方で、目上の人にも使える(今日は先に帰らせてください)。「〜させてあげる」はその反対側で、許す人が上に立つ言い方なので、目上の人には使わない。立場の上下を矢印で見せると、だれが言える形かが分かる。
  • 使役受身(〜させられる)(第8課)「させられる」はしたくないことをむりにさせられた側の言い方で、迷惑や不満の気持ちが出る(嫌いな野菜を食べさせられた)。「させてあげる」は相手がしたいことを許す側の言い方で、向きも気持ちも反対になる。第8課に進んだら、同じ「食べさせる」を両方の文で言わせて比べるとよい。
関連する文型

学習項目 4 〜としか〜ない

意味・はたらき学習項目 4

「〜と言う・思う・考える」の中身を一つにしぼって、それ以外はない、と強く言う形。「偶然としか思えない」は「偶然だと思うほかない」、「おいしいとしか言えない」は「ほかにいい言葉が見つからないほどおいしい」という気持ち。後ろは「言えない・思えない・考えられない」のように可能の否定になることが多く、「〜としか言いようがない」もよく使う。「言わない」のように可能形でない否定にすると、「その人はそれ以外言わない」という説明や不満になる(子どもに聞いても「ふつう」としか言わない)。文法の見方では、「しか」は取り立て助詞で、「と」で引いた言葉や考えを取り立てている。

接続

文の普通形(名詞・な形容詞は「だ」があってもなくてもよい)+としか+言う・思う・考える・見える などの否定(言えない・思えない・考えられない・言わない)

形
普通形+としか言えない/言いようがない(すばらしいとしか言いようがない)普通形+としか思えない/考えられない(わざとだとしか思えない)「〜」としか言わない/書いていない(「別に」としか言わない)

導入

  • 「しか」を物から言葉の中身へ広げる初級の「100円しかない」「水しか飲まない」を板書し、「しか+否定=それだけ」を思い出させる。次に、教師が一口食べるまねをして「これは……おいしい。それ以外、言葉がない」と言い、「おいしいとしか言えない」と書く。「しか」の前が物から「と」で引いた言葉に変わったことを、「100円」と「おいしい」を上下に並べて見せる。
  • 「言えない」と「言わない」を二つの顔でほめたいのに言葉が見つからない顔と、相手がそれしか言ってくれなくて不満な顔の2枚の絵を出す。前者に「おいしいとしか言えない」、後者に「子どもは『ふつう』としか言わない」を付け、可能の否定か、そうでない否定かで気持ちが変わることを確かめる。本文の話題が食事なので、毎日作る人の気持ちを想像させるとよい。

板書案

普通形 + としか + 言えない/思えない/考えられない
〔上〕100円 しか ない 〔下〕おいしい と しか 言えない
本当に おいしいとしか 言えません。
子どもは 「ふつう」としか 言わない。
〔赤〕言えない = ほかの言葉が ない(強い気持ち) 〔青〕言わない = それだけ(説明・不満)

場面と発話(自作)

  • 友だちの家で、時間をかけて作った煮物をごちそうになった。感想を聞かれて答える。本当に、おいしいとしか言えません。
  • 毎晩料理を作っている同僚が、中学生の子どものことを話す。何を作っても、子どもは「ふつう」としか言わないんですよ。
  • 冷蔵庫に入れておいたケーキがなくなった。部屋にはルームメイトしかいなかった。きみが食べたとしか考えられないんだけど。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

教師が「すごい発表を見た」「同じ人に3回会った」「試験の前の日に熱が出た」などの出来事を言い、学生が「〜としか言えない/思えない」で感想を言う。次に家族や友だちの口ぐせを「〜としか言わない」で紹介させ、肯定で結ばないこと・「と」を落とさないことを確かめてから教科書の練習へ。

  1. 口頭教師が出来事カード(落とした財布が中身ごと戻ってきた・毎朝同じ電車で同じ人に会う・初めて作ったのにお店の味)を読み、全体→個人で「〜としか〜ない」を言わせる。キューの例は「財布」→「運がよかったとしか言えない」、「同じ人」→「わざと同じ電車に乗っているとしか思えない」、「お店の味」→「すごいとしか言いようがない」。2周目は「言えない」「思えない」「考えられない」のどれを使うかを学生に選ばせる。
  2. ペア「口ぐせインタビュー」。Aが「家族や友だちに『ご飯、どう?』と聞くと、何と言いますか」と聞き、Bが「兄は『うまい』としか言いません」のように答え、Aが「どうしてだと思う?」と理由を聞く。質問カード(ご飯の感想・学校の様子・週末の予定)を3枚使い、交替する。
  3. 産出「ひとこと食レポ」。学習者が自分の国の料理か、最近食べておいしかった物を1つ選び、写真や絵を見せながら30秒で紹介し、最後の一文を「〜としか言えません/言いようがありません」で締める。聞く側は「どんな味?」と1つ質問する。教師が見るのは「と」の落ち、後ろの否定、「言えない」と「言わない」の選び方の3点。

つまずきと手当て

  • 「と」を落とす(「*おいしいしか言えない」)。板書で「と+しか」をひとかたまりにして色を付け、言わせるたびに確かめる
  • 後ろを肯定にする(「*偶然としか思える」)。「しか」は必ず否定と組むことを、初級の「しか」と並べて確かめる
  • 「言えない」と「言わない」を混ぜて気持ちが変わる(ほめたいのに「おいしいとしか言わない」と言って、そっけなく聞こえる)。自分の感想なら可能の否定、ほかの人の口ぐせならふつうの否定が多い、と場面で選ばせる

既習の文型との違い

  • 〜しか〜ない(初級)初級の「しか」は「水しか飲まない」のように物や数をしぼる。この課の「としか」は「と」で引いた言葉や考えをしぼるので、「と」が要る。「*おいしいしか言えない」が出たら、「しか」の前が物か、言葉の中身かを確かめさせる。
  • 〜とは思えない(第4課)「偶然とは思えない」は「偶然ではないと思う」で、「偶然としか思えない」は「偶然だと思う」。形は一字違いでも意味は反対になるので、第4課に進んだら二つを並べて板書し、同じ出来事にどちらを使うかを選ばせるとよい。
  • 〜とだけ言う(初級の「だけ」)「『ふつう』とだけ言った」は事実をそのまま伝える言い方で、「『ふつう』としか言わない」には「もっと言ってほしいのに」という気持ちが出やすい。どちらも正しい文なので、話し手の気持ちで選ばせる。
関連する文型

語彙の扱い

この課の新出語は 22 語(本文を読むための語 22・練習などの語 0)。1語ずつの意味・いっしょに使う助詞と連語・例文は語彙のページにあります。

新しい言葉は22語で、ほとんどが本文の語。「すます」「温める」「囲む」「時間をかける」のように食事の場面で使う動詞は、「〜を」の連語ごと覚えさせると、まとめましょうでそのまま使える。「変わる」と「変化」は和語と漢語の対として並べ、話し言葉と書き言葉の違いを確かめる。「〜うち」は単語として覚えさせず、学習項目1・2で扱う。語ごとの意味・連語・場面は語彙のページに。

第3課の語彙リスト(22語)新出語の意味・いっしょに使う助詞と連語・例文(自作)を五十音順に
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本文の扱い

本文の中身は手元の教科書で確かめること。新しい言葉(画面・目をやる・すます・習い事・温める・変化・風景・姿・遊び疲れる・囲む・あふれる・栄養・バランス・商品・時間をかける・なつかしい)から、画面に目をやりながら食事をすませたり、習い事などで家族の食事の時間がそろわなかったり、温めるだけの商品があふれていたりする今の食事と、家族が食卓を囲んでいた昔の風景とを比べ、時間をかけていっしょに食べることを「ごちそう」として考える話題だと推測される。精読では「今の食事の様子を表す言葉はどれか」「昔の様子を表す言葉はどれか」「筆者は今の変化をどう見ているか(よい・悪いと決めつけているか)」「題の『ごちそう』は何を指しているか」の4点を段落ごとに聞く。栄養やバランスの話が出るところでは、筆者の意見と一般的な事実を分けて読ませる。食生活は家庭の事情が出やすい話題なので、話しましょうの前に、家族のことを話したくない学習者は友だちや国の一般的な様子で話してよいと伝えておく。

宿題と次のコマ

使いましょう(学習項目1〜4)の練習の残りと、漢字の読み書き。まとめましょうの「わたしの国の食卓(今と昔)」を4〜5文で書いてくる(「〜うちに」か「〜うちは」を1つ以上、できれば「〜としか〜ない」も1つ)。次のコマは第4課の新しい言葉から入るので、目を通しておくよう伝える。

よくある質問

  • 「〜うちに」と「〜前に」はどう違いますか?

    「〜前に」は二つのことの順番を言うだけですが、「〜うちに」には「その状態が終わったら、できなくなる・困る」という気持ちが入ります。「冷めないうちに食べて」は自然でも、毎日の順番を言うときは「寝る前に歯をみがく」で、「うちに」は使いません。絵で変わる前と変わったあとを見せ、変わる前の側に丸を付けると違いが伝わります。

  • 第3課の「〜うちに」と「〜うちは」は同じコマで教えたほうがいいですか?

    続けて教えると区別しやすくなります。「うちに」の後ろは今のうちにする行動、「うちは」の後ろはその期間の状態や判断、と板書で後ろの文の種類を色分けします。最後に二つを混ぜた問答をして、後ろが「する」か「〜だ」かで学習者に選ばせると定着します。

  • 「〜させてあげる」は目上の人に使えますか?

    使いません。「〜させてあげる」は相手がしたいことを許す側の言い方なので、目上の人に使うと上から許しているように聞こえて失礼になります。目上の人には「どうぞ〜てください」と勧める形にし、自分がしたいときは「〜させてください」「〜させていただけませんか」を使う、と立場の向きといっしょに教えます。

  • 「〜としか思えない」と「〜とは思えない」の違いは何ですか?

    意味が反対です。「偶然としか思えない」は「偶然だと思う」、「偶然とは思えない」は「偶然ではないと思う」という意味になります。「〜とは思えない」は第4課で出るので、そこで同じ出来事に二つを当てて言わせると混同が減ります。

  • 第3課は何コマで終わりますか?

    90分なら2コマが目安です。1コマ目で新しい言葉・本文の大意・「〜うちに/うちは」まで、2コマ目で精読・「使役て形+あげる/やる」・「〜としか〜ない」・まとめと話しましょうを扱います。使役形がまだすぐに出ないクラスでは、2コマ目の初めに使役形の練習を5〜10分足し、話しましょうを宿題に回して調整します。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。

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