二つの物事を並べて、どこが違うのか、どちらの面が強いのかを、読み手に分かるように説明する力をつける課です。5つの形は、違う二つの物事を比べる「〜一方(で)」「〜に対して」、一つの物事の表と裏を並べる「〜反面」、予想や期待と結果の食い違いを言う「〜に反して」「〜どころか」の3組に分けて入れると整理しやすくなります。とくに「一方(で)」「反面」「に対して」は、どれも対比に使えるので学習者が混ぜやすく、「同じ一つの物事か、別々の二つか」「同じ人が並行してすることも言えるか」の二つの問いで使い分けを確かめておきます。「〜に対して」は初中級で学んだ「相手に向かう」用法の続きとして、この課では対比の用法に絞ります。最後に、二つの物事を比べる短い作文を書かせると、課の目標がそのまま活動になります。
目安は 90分×2コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。
| 段 | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 導入(目標の場面) | 10分 | 教師が「スマートフォンがない生活とある生活、どちらがいいですか」と聞き、良いところと困るところを自由に出させる。黒板を左右に分けて答えを集め、「この二つを比べて、文章で説明する形がこの課に5つある」と予告する。黒板の端に「別々の二つを比べる」「一つの物事の表と裏」「予想と結果が違う」の3つの箱を作っておく |
| 学習項目1・2 〜一方(で)・〜反面 | 35分 | 地図で南北の地方の気候を比べて「〜一方(で)」を入れ、同じ人が昼と夜に別のことをしている例で並行の使い方も見せる。次に一つの物事(一人暮らし)を表と裏の絵にして「〜反面」を入れ、「一つの物事の二つの面」に限ることを押さえる |
| 学習項目5 〜に対して | 25分 | 初中級で学んだ「相手に向かう矢印」の絵を思い出させてから、二つの物事を向かい合わせに置く絵で「AはXのに対して、BはY」を導入する。アンケートの数字を比べる文で練習する |
| 対比の3つの形の整理 | 20分 | 同じ組み合わせの文(二つの国の比較・一つの物事の評価・一人の人の二つの活動)を出して、「一方で」「反面」「のに対して」のどれが自然か表にまとめさせる。どれも使える文と、一つしか使えない文を分けて確かめる。1コマ目はここまで |
| 学習項目3 〜に反して | 25分 | 天気予報や試合の予想を板書し、「予想」と「結果」を逆向きの矢印で結んで導入する。「予想に反して」「期待に反して」「意志に反して」「規則に反して」をかたまりで入れ、書き言葉の形だと押さえる |
| 学習項目4 〜どころか | 25分 | 程度の階段の絵で「Aどころか、Bも〜」を入れ、続けて「楽になるどころか、かえって忙しくなった」で予想と正反対の使い方を見せる。最後に、相手の言葉を「〜どころか」で打ち消す短い会話をペアで練習する |
| 目標の活動(比べる作文) | 30分 | 「AとB」(自分の国と日本の〜/スマートフォンを使う生活と使わない生活 など)の題を選び、比べる観点を3つメモしてから、この課の形を3つ以上使って400字ほどの文章を書く。ペアで読み合い、相手の文の対比がはっきりしているかを確かめ合う |
| まとめ | 10分 | 黒板の3つの箱に5つの形を置き直し、前と後ろの関係(別々の二つ・一つの表と裏・予想と結果)と、硬さ(作文向きか会話でも使えるか)を一覧にして残す |
二つのことを並べて示す形で、使い方は大きく二つあります。一つは、「AはXだ。一方、BはYだ」のように、違う二つの物事を比べて違いを対比する使い方です。もう一つは、「彼は昼は会社で働く一方で、夜は大学院で勉強している」のように、同じ人・同じ物事の別の面や、並行してしていることを並べる使い方で、この場合は前と後ろが反対の性質でなくてもかまいません。「で」はあってもなくても意味はほぼ同じです。説明文・レポート・ニュースなどの書き言葉や改まった話でよく使い、作文では文の頭に「一方、」「その一方で、」と置いて、前の段落と次の段落を対比させることもできます。
V普通形/い形普通形/な形な・である/Nである+一方(で)(文の頭では「一方、」「その一方で、」)
二つの物事のカード(夏と冬・都市と地方・自分の国と日本・平日と週末)を引かせ、「〜一方(で)、〜」で違いを一文で言わせる。次に、知っている人(家族・先輩・店長)が並行してしていることを「〜一方で、〜もしている」で紹介させ、二つの使い方を言い分ける。
一つの物事・一人の人が持っている、反対向きの二つの面を並べる形です。多くは「良い面」と「悪い面」の組で、前に一方の面を、後ろにそれと反対の面を言い、その物事を全体として評価するときに使います。主語は前と後ろで同じ一つの物事です。「〜一方(で)」も同じように使えますが、「一方(で)」が違う二つの物事を比べることもできるのに対して、「反面」は一つの物事の表と裏に限られるところが違います。やや硬い言い方で、作文・説明・評価の文でよく使います。文の頭では「その反面、」とも言い、「半面」と書くこともあります。
V普通形/い形普通形/な形な・である/Nである+反面(文の頭では「その反面、」)
身近な物事のカード(コンビニ・深夜のアルバイト・オンライン授業・大きな町・車)を引かせ、良い面と悪い面を一つずつメモしてから「〜は〜反面、〜」の一文にさせる。言えたら、同じ物事について聞き手が「それでも、〜と思いますか」と質問し、評価まで言わせる。
予想・期待・予報・希望・意志など、前もって考えていたこと・望んでいたことと逆の結果になったことを表します。「予想に反して」は「予想とは反対に」という意味で、後ろには実際に起きたことが来ます。「(自分の)意志に反して」は、本当はしたくないのに、命令や事情でそうすることになった、という意味です。また、「規則に反して」「法律に反する」のように、決まりを守らない(違反する)という意味でも使います。名詞の前では「〜に反するN」(期待に反する結果)の形になります。新聞・ニュース・レポートなどの書き言葉でよく使われ、会話では「予想と違って」「思ったより」と言うことが多い形です。
N+に反して(名詞の前は「Nに反するN」、書き言葉では「Nに反し、」とも言う)
「予想(期待・予報)」と「結果」を書いた二枚組のカード(試合・試験・天気・新商品の売れ行き)を配り、「〜に反して、〜た」で一文にさせる。次に、同じ内容を友達に話す会話の形(「思ったより」「予想と違って」)に言い換えさせ、書き言葉と話し言葉の違いを確かめる。
前で言ったことを強く打ち消して、実際はそれとは程度がまったく違うと言う形です。使い方は大きく二つあります。一つは「Aどころか、Bも〜」の形で、Aはもちろん、もっと程度の違うBまでそうだ、と言う使い方です。否定の文では、Bにもっと簡単なこと・当たり前のことが来て(「旅行どころか、近所を散歩する時間もない」)、肯定の文では、Bにもっと大きなことが来ます(「日本語が話せるどころか、日本語で小説まで書いている」)。もう一つは、相手の予想や期待と正反対だと言う使い方で(「楽になるどころか、前より忙しくなった」)、「かえって」「逆に」といっしょに使うことが多いです。会話では、相手の言葉を受けて「暇どころか、〜」と打ち消すときにもよく使います。Bには「も」「さえ」「まで」がよく付きます。
V普通形/い形普通形/な形・N+どころか(な形と名詞は「暇どころか」「休みどころか」のようにそのまま付く形が多い)
ペアで、一人が「〜でしょう?」「〜した?」と軽い予想を言い(「もう慣れたでしょう?」「週末は休めた?」)、もう一人が「〜どころか、〜も/かえって〜」で打ち消して答える。答えた人は理由を一文足し、会話を続ける。
初中級では、気持ちや態度が向かう相手を表す「〜に対して」(お客様に対して丁寧に話す)を学びました。この課では、違う二つの物事を並べて、違いをはっきり対比する使い方を扱います。「AはXのに対して、BはY」の形で、AとBという別々の物事について、反対の、または大きく違う性質や様子を述べます。アンケートや統計の数字を比べる文(賛成が〜人なのに対して、反対は〜人だった)でもよく使います。「〜一方(で)」と近いですが、「に対して」は対比だけに使い、同じ人が並行して別のことをする意味にはなりません。また「〜反面」と違って、一つの物事の二つの面ではなく、違う二つの物事を比べます。説明文・レポート・発表でよく使う形です。
V普通形/い形普通形+のに対して、な形・N+な(である)+のに対して(文の頭では「それに対して、」)
二つの物事の比べ方の表(自分の国と日本:食事の時間・電車の様子・学校の休み など)を学生に作らせ、表の一行ずつを「〜は〜のに対して、〜は〜」の一文にさせる。次に、同じ表から一つ選んで「一方(で)」でも言わせ、どちらも自然なことを確かめる。
この課の言葉は、比べる観点の言葉(人口・割合・世代・都市・地方 など)と、評価の言葉(便利・自由・不安・危険・手間がかかる など)に分けて板書しておくと、対比の文を作る材料になります。作文の前に、観点の言葉を「〜の面では」「〜について比べると」と組み合わせる練習をしておくと、文章の組み立てがはっきりします。
宿題は、「AとB」の形の題(自分の国と日本の〜/都市の生活と地方の生活/スマートフォンを使う生活と使わない生活 など)を一つ選び、「〜一方(で)」「〜反面」「〜のに対して」のうち2つ以上と、「〜に反して」か「〜どころか」を1つ使って、400字ほどの文章に書くこと。最初の段落で何と何を比べるかを書き、次の段落で違いを対比し、最後の段落で自分の考えを書く、という三段の形にさせる。次のコマの最初に何人かに読ませ、聞いた学生が「別々の二つの比較」「一つの物事の表と裏」「予想と結果の食い違い」のどれが使われていたかを言って振り返ります。
「〜一方(で)」「〜反面」「〜に対して」の違いはどう教えればいいですか?
「話題が一つか二つか」と「同じ人が並行してすることか」の二つの問いで分けます。一つの物事の表と裏は「反面」も「一方で」も使え、別々の二つの物事の対比は「一方で」と「のに対して」が使えます。同じ人が並行してしていることを並べられるのは「一方で」だけです。同じ組み合わせの文を表にして、使える形に○を付けさせると整理できます。
「〜どころか」は否定の文と肯定の文でどう違いますか?
否定の文では、後ろのBにもっと簡単なこと・当たり前のことが来ます(旅行どころか、散歩する時間もない)。肯定の文では、Bにもっと大きなことが来ます(話せるどころか、小説まで書いている)。程度の階段の絵で、否定は上から下へ、肯定は下から上へ指を動かして見せると、順序の誤りが減ります。予想と正反対の使い方は「かえって」と組にして別に入れます。
「〜に反して」と「〜に対して」を混ぜる学習者にはどうしますか?
前に来る名詞の種類で分けます。「に対して」の前は気持ちや動作が向かう相手か比べるもう一方の物事で、「に反して」の前は予想・期待・意志・規則のような「ことがら」です。向かう矢印と逆向きの矢印の二つの絵を板書に残し、取り違えたらその絵を指して自分で直させます。
第39課は何コマで終わりますか?
90分×2コマが目安です。1コマ目は導入と「〜一方(で)」「〜反面」「〜に対して」、それに対比の3つの形の整理まで。2コマ目は「〜に反して」「〜どころか」と、比べる作文、まとめです。作文を宿題に回せば2コマ目に余裕ができ、次のコマの頭で読み合いができます。
この課の形は会話でも使えますか?
「〜どころか」は会話でもよく使い、相手の言葉を打ち消すときに自然です。「〜一方(で)」「〜反面」「〜に対して」「〜に反して」は説明文・レポート・発表で使う硬い形で、友達との会話では「〜けど」「予想と違って」で言うことが多くなります。練習では、書き言葉の文を話し言葉に直す往復を入れると、場面の違いが身につきます。
この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。