日本語教員プラネット 日本語教員試験 対策の問題集

学ぼう!にほんご 中級 第23課「日本食が恋しくてならなかった」の教案

『学ぼう!にほんご 中級』

自分の中からわき上がってきて抑えられない気持ちや、思わずしてしまう行動を、日本語で言い表す課です。似た形が6つ並びますが、気持ちや感覚が強いことを言う「〜てならない」「〜てしょうがない/しかたがない」「〜てたまらない」と、気持ちが強くて思わず行動に出てしまうことを言う「〜ないではいられない」「〜ずにはいられない」の2組に分け、最後に、気持ちはあっても事情があってできない「〜わけにはいかない」を衝動を抑える側として足すと、学習者の頭の中で整理しやすくなります。気持ちの形はどれも、基本は話し手自身の気持ちを言う形で、ほかの人の気持ちを言うときは「〜ようだ」「〜らしい」などを付ける、という制限を課の早いうちに押さえておきます。項目を一つずつ入れたら、ホームシックや結果待ちの不安など、気持ちが強く動いた経験を語る活動でまとめて使わせると、課の目標がそのまま練習になります。

このページについて教科書の本文・例文・練習の文は載せていません。例文と場面はすべて自作です。課の題と学習項目の表記は本の目次に合わせています。
学習項目6時間90分×3コマ

この課のねらい(Can-do)

  • 寂しさ・心配・暑さ・のどのかわきなど、我慢できないほど強い気持ちや感覚を「〜てたまらない」「〜てしょうがない」で話し言葉で言い、ほかの人の気持ちには「〜ようだ」などを付けて言える
  • 「〜てならない」「〜ような気がしてならない」で、自然にそう感じてしまう気持ちを、作文や改まった話の中で言える
  • 「〜ないではいられない」「〜ずにはいられない」で思わずしてしまう行動を言い、二つの硬さの違いと「せずには」の形を使い分けられる
  • したい気持ちを事情で抑える「〜わけにはいかない」と、気持ちに負けてしてしまう「〜ずにはいられない」を対にして、気持ちと行動の食い違いを語れる

進め方と時間配分

目安は 90分×3コマ。コマの長さと学校のカリキュラムで配分は変わります。各段で押さえることと、かける時間の目安です。

段時間やること
導入(目標の場面)10分教師が「日本に来て最初の月、何がいちばんつらかったですか」と聞き、学生に自由に話させる。「とても寂しかった」「すごく食べたかった」のような答えを黒板に集め、「とても」「すごく」より強い、抑えられないほどの気持ちを言う形がこの課に6つある、と予告する。黒板の端に「気持ち・感覚」「行動」「抑える」の3つの箱を作っておく
学習項目1 〜てならない35分「とても心配です」と「心配でなりません」を比べて、止めようとしても止まらない気持ちを導入する。「〜ような気がしてならない」をかたまりで入れ、作文やスピーチ向きのやや硬い形だと押さえる
学習項目2・3 〜ないではいられない/〜ずにはいられない45分「しないでいよう → 気持ちが強い → してしまう」の矢印で行動の形を導入し、「ない → ず」「する → せず」の変換を練習する。意味は同じで「ずには」のほうが硬いことを、会話と作文の書き分けで確かめる。1コマ目はここまで
学習項目4・5 〜てしょうがない/しかたがない・〜てたまらない40分体の感覚と身近な困りごとで導入する。話し言葉ではこの二つがいちばん使いやすいこと、ものの性質には付かないことを例で見せる
気持ちの3つの形の整理20分「心配で〜」「のどがかわいて〜」「〜ような気がして〜」を てならない・てたまらない・てしょうがない に入れさせ、自然さと硬さを表にする。ほかの人の気持ちには「〜ようだ」「〜がっている」を付けることもここで確かめる
学習項目6 〜わけにはいかない30分天秤の絵で、気持ちに負ける「〜ずにはいられない」と、事情で押さえる「〜わけにはいかない」を左右に置く。初中級で学んだ意味を短く思い出させてから、「〜たくてたまらないけど、〜わけにはいかない」の対にして使う。2コマ目はここまで
目標の活動(気持ちを語る1分スピーチ)60分「日本に来て、いちばん〜てたまらなかったこと」を1分で話す。気持ちの形を一つ、行動の形か抑える形を一つ必ず入れ、聞き手は「それで、どうしましたか」と質問を一つ返す。3コマ目の頭に宿題の短い文章を何人かに読ませてから、この活動に入ってもよい
まとめ30分黒板の3つの箱に6つの形を置き直し、硬い形とくだけた形、ほかの人について言うときの付け方を一覧にして残す

学習項目 1 〜てならない

意味・はたらき学習項目 1

ある気持ちや感覚が、自分で止めようとしても自然にわいてきて、どうしようもないほど強いことを表します。前に来るのは、心配・不安・残念・悔しい・寂しいのような感情の言葉や、「気になる」「気がする」、思える・感じられる・悔やまれるのような自発の形の動詞など、自分の意志と関係なく心に起こることです。「〜てたまらない」「〜てしょうがない」と意味は近いですが、やや硬く、作文・手紙・スピーチや、落ち着いて自分の気持ちを振り返る話で使われることが多い形です。とくに「〜ような気がしてならない」「〜ように思えてならない」の形で、はっきりした理由はないのにどうしてもそう感じてしまう、という気持ちを表します。文法の見方で言うと、感情・感覚の述語に付いて程度の強さを言い添える形で、感情形容詞と同じく「人称制限」(言い切りで使えるのは話し手の気持ちだけ)がかかります。

接続

Vて/い形くて/な形で+ならない(動詞は「気になる」「気がする」や、思える・感じられるのような自発の形が多い。丁寧には「〜てなりません」)

形
い形くて ならない(悔しくてならない・寂しくてならない)な形で ならない(心配でならない・残念でならない)〜ような気がしてならない/〜ように思えてならないVたくて ならない(会いたくてならない)

導入

  • 「とても」と比べる「試験の結果が心配です」「とても心配です」「心配でなりません」を順に板書し、どれがいちばん強いか、どれがいちばん自分で止められない感じかを聞く。「心配するのをやめようと思っても、心配がわいてくる」という答えを引き出し、文の上に「止めようとしても止まらない気持ち」と書く。最後に、手紙やスピーチで使う少し硬い言い方だと一言添える。
  • 「気がしてならない」を場面で教師が困った顔で「家を出てから、かぎを閉めたかどうか思い出せない。開けたままのような気がしてならないんです」と言う。理由ははっきりしないのにそう感じてしまう、という使い方を確かめ、「〜ような気がしてならない」を一つのかたまりとして板書する。

板書案

い形くて/な形で/V(気がする・思える)て + ならない
結果が 心配で なりません。
鍵を かけ忘れたような 気が して ならない。
〔赤〕くて・で・て 〔青〕思える・気がする(自然にわく)
〔箱〕気持ち・感覚 やや硬い:作文・手紙・スピーチ

場面と発話(自作)

  • 国の家族から何日も連絡が来ない留学生が、担任の先生に相談する。母から一週間も返事がないので、心配でなりません。
  • スピーチ大会で、去年あと一歩で優勝を逃した経験を話す。あと少しで優勝だったので、今でも悔しくてなりません。
  • 大事な面接が終わった日の夜、日記に書く。最後の質問への答え方がまずかったような気がしてならない。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

感情の言葉のカード(心配・残念・不安・悔しい・寂しい・気になる)と場面のカード(面接のあと・国を出る前の晩・試合に負けた日)を組み合わせ、「〜てなりません」を使った一文を作らせる。そのあと同じ文を友達に話す口調で「〜てたまらない」「〜てしょうがない」に言い換えさせ、硬さの違いを耳で確かめる。

  1. 口頭気持ちのカードと場面のカードを組で見せてキューにする。「面接のあと・不安」→「面接のあと、不安でなりませんでした」、「国の祖母・心配」→「祖母のことが心配でなりません」、「試合に負けた・悔しい」→「悔しくてなりません」、「だれかに見られている・気がする」→「見られているような気がしてなりません」。全体で言わせてから個人に当て、最後は「とても心配です」を「心配でなりません」に言い換える練習で締める。
  2. ペアAは場面のカード(引っ越しの前の晩・家族からの連絡が遅い・発表の前日など)を持ち、Bには見せない。Bが「何か気になることがあるんですか」と聞き、Aは「〜てなりません」か「〜ような気がしてなりません」で答える。Bは「それは心配ですね。〜たらどうですか」と一言返す。3枚で交替する。
  3. 産出「気がかり手紙」。家族か先生にあてて、いま気になっていることを3〜4文の手紙に書かせる。「〜てなりません」を1回、「〜ような気がしてなりません」を1回入れる。教師が見るのは、ふつうの「思う」に付けていないか(「思えて」になっているか)、体の感覚に使って不自然になっていないか、手紙の中で「なりません」と丁寧な形にそろっているか。

つまずきと手当て

  • 「*そう思ってならない」と、ふつうの「思う」に付ける。意志で考える「思う」ではなく、自然にそう思われる「思える」「思われる」に付けて「そう思えてならない」にする、と板書で形を固定する
  • 眠い・おなかがすいた・のどがかわいたのような体の感覚に使う。「〜てならない」は気持ちや自然にわく思いに使われることが多く、体の感覚には「〜てたまらない」「〜てしょうがない」のほうが自然なことが多い、と伝える
  • ほかの人の気持ちを言い切る(「*田中さんは結果が心配でならない」)。会話や説明の文では「心配でならないようだ」「心配でならないらしい」と付ける。物語や昔のことを振り返る文では付けずに書くこともある

既習の文型との違い

  • 〜くらい/ほど(第21課)「泣きたいくらい悔しい」は程度を具体的なものにたとえて言う形で、「悔しくてならない」は気持ちが自分では止められないこと自体を言う形です。「くらい/ほど」は「前が見えないほど霧が濃い」のように、ものの様子にも使えますが、「〜てならない」はものの様子には付かず、気持ちや自然にわく思いに使います(言い切りでは話し手自身の気持ち)。学習者が「*霧が濃くてならない」と言ったら、「ほど」の形に戻します。
  • 〜がする(初中級 第6課)「においがする」「〜ような気がする」は感じたことをそのまま言う形で、「〜ような気がしてならない」はその感じが打ち消せずに続くことを言います。軽い予想に「明日は雨が降るような気がしてならない」を使うと、大げさに聞こえます。軽い予想なら「〜ような気がする」で十分だと、強さの違いで分けます。
関連する文型

学習項目 2 〜ないではいられない

意味・はたらき学習項目 2

そうしないでいようと思っても、気持ちが抑えられず思わずその行動をしてしまうことを表します。「いられない」は「〜ないという状態のままでいることができない」ということです。「〜てならない」「〜てたまらない」が気持ちそのものの強さを言うのに対し、こちらは気持ちが強くて行動に出てしまうことを言うので、前に来るのは、言う・聞く・確かめる・手伝う・食べるのような、ふつうは自分の意志でする動詞です。意味は次の「〜ずにはいられない」と同じで、こちらのほうが少しやわらかく、話し言葉でも使えます。文法の見方で言うと、意志動詞のない形に付いて「その状態にとどまれない」ことを言う形で、結果として話し手はその行動をしています。

接続

Vない(ない形)+ではいられない(丁寧には「〜ないではいられません」)

形
Vない ではいられない(言わないではいられない)Vない ではいられなかった(そのとき思わずしてしまった)〜を見ると/聞くと、Vない ではいられない

導入

  • 「しないでいよう」と「してしまう」の矢印黒板に「しないでいよう → 気持ちが強い → してしまう」の矢印を書く。教師が「帰り道に、おいしそうなケーキの店がありました。わたしはダイエット中です。でも…」と言いかけて学生に続きを考えさせ、「お店に入らないではいられませんでした」と板書する。「先生は我慢できましたか」と聞き、「できなかった、入った」と答えさせて意味を確かめる。
  • 気持ちの形と並べる「新しいゲームがほしくてたまらない」と「新しいゲームが出ると、買わないではいられない」を2行で並べ、「お店に行ったのはどちらの人ですか」と聞く。前の文は気持ちの強さ、後ろの文は行動だと確かめ、導入で作った「気持ち・感覚」「行動」の箱に振り分ける。

板書案

Vない + で は いられない
しないでいよう →(気持ちが強い)→ してしまう
困っている人を 見ると、声を かけないでは いられない。
〔赤〕ないで は 〔青〕行動の動詞(言う・聞く・手伝う)
〔箱〕行動

場面と発話(自作)

  • 駅の階段で、重いスーツケースを運んでいる人を見た学生が、あとで友達に話す。ああいうのを見ると、手伝わないではいられないんだ。
  • 健康診断で甘い物を減らすように言われた会社員が、同僚に打ち明ける。やめようと思っても、疲れると甘い物を食べないではいられないんです。
  • 友達がうその情報を信じて、クラスのみんなに広めていた。黙っていようかと思ったけど、本当のことを言わないではいられなかった。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「きっかけ」のカード(好きな歌手の新曲が出た・道に迷っている観光客を見た・テストの答案が返ってきた)を引かせ、「〜と、〜ないではいられない」で自分の行動を言わせる。言えたら教師が「我慢できますか」と聞き、「できません」と答えさせて、行動を止められない形だと毎回確かめる。

  1. 口頭「状況・行動」のカードでキューを出す。「好きな歌手の新しい曲・聞く」→「聞かないではいられない」、「道に迷っている観光客・声をかける」→「声をかけないではいられない」、「間違った情報・直す」→「直さないではいられない」、「おいしそうなにおい・のぞく」→「のぞかないではいられない」。一つ言うたびに教師が「我慢できますか」と聞き、全員で「できません」と返して意味を確かめる。慣れたら「〜ないではいられなかった」の過去の形でも言わせる。
  2. ペアAが状況のカードを読み上げ(「友達が髪を短く切ってきた」「机の上に開いたままのお菓子がある」など)、Bは「〜と、〜ないではいられません」で自分ならどうするかを言う。Aは「どうしてですか」と聞き、Bは「〜から」で理由を足す。4枚で交替する。
  3. 産出「つい、やってしまうこと」告白トーク。自分がどうしても我慢できない習慣を一つ選び、状況・「〜ないではいられない」・その結果の3文でクラスに話す。教師が見るのは、前が行動の動詞か(気持ちの言葉に付けていないか)、「ないでは」の形になっているか、理由が自分の気持ちになっているか(決まりや立場が理由なら「〜ないわけにはいかない」に直す)。

つまずきと手当て

  • 気持ちの言葉そのものに付ける(「*寂しくないではいられない」)。この形の前は行動を表す動詞。気持ちの強さを言いたいなら「寂しくてたまらない」にする、と板書の箱に戻す
  • 「〜ないわけにはいかない」と取り違える。どちらも結局するが、「ないではいられない」は自分の中の気持ちが抑えられなくてする、「ないわけにはいかない」は決まり・立場・義理などの事情でしなければならない。「気持ちのせい?事情のせい?」と聞いて選ばせる
  • 「言わなくてはいられない」と、「〜なくてはいけない」と混ぜた形で言う。まれに使われる言い方ではあるが、教えるのは「ないでは」の形だと板書で固定する

既習の文型との違い

  • 〜てしまいます/〜てしまいました(初級Ⅱ 第27課)「つい食べてしまった」はしてしまった結果と後悔を言い、「食べないではいられなかった」は我慢しようとしても気持ちが抑えられなかったことを言います。二つをつないで「食べないではいられなくて、つい食べてしまった」とも言えます。ただし、うっかりしてしまったことはこの形では言えません。「財布を落とさないではいられなかった」は形としては作れても「落としてしまった」の意味にはならないので、「財布を落としてしまった」と言うよう示します。
  • 〜ないわけにはいかない(初中級 第4課)どちらも最後はその行動をしますが、理由が違います。自分の中の気持ちが理由なら「〜ないではいられない」、「お世話になった先輩の頼みなので、行かないわけにはいかない」のように立場や義理が理由なら「〜ないわけにはいかない」です。「したい気持ちがありますか」と聞くと分けやすくなります。
関連する文型

学習項目 3 〜ずにはいられない

意味・はたらき学習項目 3

意味は「〜ないではいられない」と同じで、我慢しようとしても思わずその行動をしてしまうことを表します。「ず」は「ない」の古い形で、そのぶん少し硬い響きになり、作文・感想文・スピーチなど、書き言葉や改まった話でよく使われます。話し手自身の行動に使うのが基本で、ほかの人について言うときは「〜ずにはいられないようだ」「〜ずにはいられなかったらしい」のように推量の形を付けます。物語や、昔のことを振り返って語る文では、ほかの人のことにもそのまま使われることがあります。

接続

Vない(ない形)の「ない」を取って+ずにはいられない(する → せずには、来る → 来(こ)ずには)

形
Vず には いられない(書かずにはいられない・確かめずにはいられない)する → せずにはいられない(感動せずにはいられない・心配せずにはいられない)来る → 来(こ)ずにはいられない〜を見ると/知ると、Vず には いられない

導入

  • 「ない」を「ず」に替える学習項目2の板書「言わないではいられない」の下に「言わずにはいられない」を書き、「ないでは」が「ずには」に替わっただけで意味は同じだと確かめる。続けて「食べない → 食べず」「行かない → 行かず」とテンポよく言わせ、最後に「しない」を出して、「しず」ではなく「せず」になることを赤で書く。
  • 同じ内容を会話と作文で同じ出来事を、友達との会話の文(「〜ないではいられなかった」)と、作文の一文(「〜ずにはいられなかった」)で書き分けて見せ、どちらがどちらに合うかを学生に選ばせる。違うのは硬さだけで、意味は変わらないと整理する。

板書案

Vない → Vず + に は いられない
食べない → 食べず  行かない → 行かず
〔赤〕する → せず  来る → 来(こ)ず
友人の 努力を 知って、応援せずには いられなかった。
会話:〜ないではいられない  作文:〜ずにはいられない

場面と発話(自作)

  • 災害のあった地域でボランティアをした大学生が、帰ってから報告会でスピーチする。現地の様子を見て、自分にできることは何か考えずにはいられませんでした。
  • 授業で見た映画について、レポートの感想の部分を書く。最後の場面では、主人公の勇気に感動せずにはいられなかった。
  • 新しいスマートフォンを買った同僚が、会議中も何度も画面を見ている。休み時間に別の同僚と話す。田中さん、新しいスマホがうれしくて、触らずにはいられないようですね。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

動詞のカード(言う・聞く・確かめる・心配する・連絡する・来る)を見せて「〜ずにはいられない」に変える練習を速く回し、「する」「来る」を多めに混ぜる。そのあと学習項目2で作った会話の文を、作文の一文として「〜ずにはいられなかった」に書き直させる。

  1. 口頭まず形の変換をテンポよく回す。教師がない形を言い、学生がず形で返す(「書かない」→「書かず」、「しない」→「せず」、「来ない」→「来ず」、「心配しない」→「心配せず」、「感謝しない」→「感謝せず」)。「する」の動詞を多めに混ぜる。次に「事故のニュース・家族に電話する」→「家族に電話せずにはいられなかった」、「ひどい言い方・言い返す」→「言い返さずにはいられなかった」、「友人の合格・お祝いを言う」→「お祝いを言わずにはいられなかった」と文で言わせる。
  2. ペアAが学習項目2で作った会話の文(「〜ないではいられなかったんだ」)を読み、Bが作文の一文(「〜ずにはいられなかった」)に書き換えて読み返す。「〜んだ」は「〜のだ」に、「けど」は「が」に直させ、文体ごと書き言葉にそろえる。5文で交替する。
  3. 産出「心が動いた瞬間」感想文。映画・本・ニュースのうち一つについて、150字ほどの感想を書かせ、「〜ずにはいられなかった」を1回入れる。教師が見るのは、「せず」「来(こ)ず」の形、ほかの人の行動を言い切っていないか、だ・である調の文章の中で形が浮いていないか。

つまずきと手当て

  • 「*しずにはいられない」「*心配しずにはいられない」と言う。「する」は「せずに」、と板書の赤字に戻す。「来る」も「きずに」ではなく「こずに」と読む
  • ほかの人の行動を言い切る(「*田中さんはその話を聞くと、怒らずにはいられない」)。会話では「〜ようだ」「〜らしい」を付ける。物語や伝記のように、書き手が登場人物の気持ちに入って書く文では付けないこともある、と伝える
  • 友達とのくだけた会話で使って、少し硬く聞こえる。誤りではないが、会話では「〜ないではいられない」や「つい〜しちゃう」のほうが自然なことが多い。なお「は」を落とした「〜ずにいられない」も使われる

既習の文型との違い

  • 〜ないではいられない(第23課 学習項目2)意味は同じで、違うのは形と硬さです。「〜ないでは」は会話でも使え、「〜ずには」は作文やスピーチ向きの少し硬い形です。学習者が作文の中で「〜ないではいられなかったんだ」と書いたら、「〜ずにはいられなかったのだ」と、文型と文体の両方を書き言葉にそろえさせます。
  • 〜ことなく(第22課)どちらも否定を含みますが、意味の向きが逆です。「休むことなく働いた」は休まなかったことを言い、「休まずにはいられなかった」は休みたくて我慢できず、結局休んだことを言います。学習者は「ず」を見て「しなかった」と読み違えやすいので、「最後に、した?しなかった?」と聞いて確かめます。
関連する文型

学習項目 4 〜てしょうがない/しかたがない

意味・はたらき学習項目 4

気持ちや体の感覚がとても強くて、自分ではどうにもできない、我慢できないことを表します。「しょうがない」は「しかたがない(=ほかにどうする方法もない)」と同じ意味の話し言葉(もとは「しようがない」)で、「〜てしょうがない」のほうがくだけていて友達との会話向き、「〜てしかたがない」は少し改まった会話や文章でも使えます。「〜てたまらない」と並んで話し言葉でよく使われ、楽しみ・うれしいのようなよい気持ちにも、暑い・だるい・のどがかわくのような体の感覚にも付きます。また、「最近、忘れ物が多くてしょうがない」のように、困っている・あきれている気持ちを込めて言うことが多いのもこの形の特徴です。

接続

Vて/い形くて/な形で+しょうがない/しかたがない(会話では「が」を落として「〜てしかたない」とも言う。丁寧には「〜てしょうがないです」「〜てしかたがありません」)

形
い形くて しょうがない(暑くてしょうがない)な形で しかたがない(退屈でしかたがない・楽しみでしかたがない)Vて しょうがない(気になってしょうがない・涙が出てしょうがない)Vたくて しょうがない

導入

  • 教師の困りごとから教師が肩を回しながら「きのうから肩が痛くてしょうがないんですよ」と言い、「先生はどうしたいですか」「我慢できそうですか」と聞く。体の感覚にも使えること、困っている気持ちがにじむことを確かめ、「しょうがない = しかたがない = ほかに方法がない」と板書する。
  • 「しょうがない」と「しかたがない」を言い分ける同じ内容を、友達へのメッセージ(「〜てしょうがない」)と、先生へのメール(「〜てしかたがありません」)で書き分けて見せる。意味は変わらず、くだけ具合だけが違うことを確かめ、どちらを使うかを相手で決める練習へつなぐ。

板書案

い形くて/な形で/Vて + しょうがない(話す)/しかたがない(やや改まる)
しょうがない = しかたがない = ほかに方法がない
隣の 部屋の 音が 気に なって しょうがない。
〔赤〕くて・で・て 〔青〕困っている気持ち
まあ、しょうがない。(あきらめ)≠ 〜てしょうがない(我慢できない)

場面と発話(自作)

  • エアコンが壊れた寮の部屋で、留学生がルームメイトに言う。この部屋、夜になっても暑くてしょうがないね。
  • 来週、国の両親が初めて日本へ遊びに来る。アルバイト先の先輩に話す。両親に会えるのが楽しみでしょうがないんです。
  • 新しい部署に移った社員が、前の部署の上司にメールで近況を書く。まだ仕事の流れが分からず、毎日不安でしかたがありません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

気持ち・感覚のカード(暑い・寒い・のどがかわく・退屈・楽しみ・気になる)を引かせ、友達に言う「〜てしょうがない」と、目上の人へのメールに書く「〜てしかたがありません」の両方で言わせる。そのあと「だから、どうしたいか」を一文足させ、気持ちを伝えたあとの会話につなげる。

  1. 口頭体の感覚と困りごとのカードでキューを出す。「エアコンが壊れた・暑い」→「暑くてしょうがない」、「花粉の季節・くしゃみが出る」→「くしゃみが出てしょうがない」、「来週の旅行・楽しみ」→「楽しみでしょうがない」、「昼ご飯のあと・体が重い」→「体が重くてしょうがない」。全体→個人で言わせたあと、同じカードを「先生に言うなら」と言い直させ、「〜てしかたがありません」の形にする。
  2. ペアカードに相手(友達・先生・アルバイト先の店長)と困りごとが書いてある。Aは相手に合わせて「〜てしょうがない」「〜てしかたがありません」を選んで困りごとを言い、Bはその相手になって「〜たらどう?」「〜たらどうですか」と助言を返す。相手を変えて3回ずつ、交替する。
  3. 産出「ちょっと困ってます相談会」。学生がいま困っていることを一つ「〜てしょうがないんです」で書いて読み、ほかの学生が助言を一つずつ返す。教師が見るのは、て形が落ちていないか、ものの性質に付けていないか、相手によって「しょうがない」と「しかたがない」を使い分けているか、単独の「しょうがない」(あきらめ)と混ぜていないか。

つまずきと手当て

  • 単独の「しょうがない」(「まあ、しょうがない」=あきらめる)と混ぜて、「〜てしょうがない」をあきらめの意味に取る。て形のあとに付くときは「強くて我慢できない」という意味で、あきらめではない、と2つの文を並べて確かめる
  • 気持ちや感覚ではない、ものの性質に付ける(「*富士山は高くてしょうがない」)。話し手が感じていること・困っていることの言葉に付ける形だと確かめる
  • て形を落として「*暑いしょうがない」「*暑くしょうがない」と言う。前は必ず「くて」「で」「Vて」
  • ほかの人の気持ちを言い切る(「*妹は国に帰りたくてしょうがない」)。会話では「帰りたくてしょうがないみたいだ」「帰りたがっている」にする

既習の文型との違い

  • 〜すぎます(初級Ⅱ 第29課)「暑すぎる」は基準を超えていることを言う形で、「この部屋は暑すぎる」のようにものの様子の説明にも使えます。「暑くてしょうがない」は、話し手が暑さに困っていて我慢できない気持ちを言います。学習者がものの説明に「〜てしょうがない」を使ったら、「すぎる」に戻すか、自分の気持ちの文に言い直させます。
  • 〜がる(初中級 第8課)「〜てしょうがない」は話し手の気持ちを言う形なので、ほかの人のことは「妹は国に帰りたがっている」「帰りたくてしょうがないみたいだ」のように言います。「*妹は帰りたくてしょうがない」と言い切る誤りが多いので、主語が「わたし」かどうかを毎回確かめます。
関連する文型

学習項目 5 〜てたまらない

意味・はたらき学習項目 5

気持ちや体の感覚が強すぎて、我慢できない、耐えられないことを表します。「〜てしょうがない」とほぼ同じように話し言葉で使われますが、困っている気持ちよりも、感じていることの強さをそのまま、感情を込めて言う響きがあります。うれしい・会いたい・心配だのような気持ちや、痛い・暑い・のどがかわくのような体の感覚に付き、「〜たくてたまらない」で、どうしてもしたい気持ちもよく言います。「〜てならない」とは、体の感覚にも普通に使えること、くだけた会話で使いやすいことが違います。反対に「〜ような気がする」「思える」にはあまり付かず、その場合は「〜てならない」が使われることが多い形です。

接続

Vて/い形くて/な形で+たまらない(丁寧には「〜てたまりません」)

形
い形くて たまらない(痛くてたまらない・うれしくてたまらない)な形で たまらない(心配でたまらない)Vたくて たまらない(会いたくてたまらない)Vて たまらない(のどがかわいてたまらない)

導入

  • 表情と動作で教師が走ってきたふりをして、のどを押さえながら「のどがかわいてたまらない!」と大げさに言い、学生に「先生は何がしたいですか」と聞く。「すぐ水が飲みたい」という答えから、我慢できないほど強い感覚だと引き出す。続けて「国の家族に会いたくてたまらない」を板書し、気持ちにも使えることを見せる。
  • 3つの気持ちの形を並べて比べる「心配でならない」「心配でたまらない」「心配でしょうがない」を板書し、どれも試験の結果待ちの場面で使えることを確かめたうえで、「先生に手紙で書くなら?」「友達に言うなら?」と聞いて硬さの順に並べさせる。次に「のどがかわいて〜」「〜ような気がして〜」を3つに入れさせ、自然なものとそうでないものを表にする。

板書案

い形くて/な形で/Vて + たまらない
たまらない = 耐えられない・我慢できない
歯が 痛くて たまらない。
試験が 終わって、早く 遊びに 行きたくて たまらない。
〔赤〕Vたくて たまらない(どうしてもしたい) 〔箱〕気持ち・感覚

場面と発話(自作)

  • 一人暮らしを始めたばかりの留学生が、国の家族とビデオ通話をしたあと、友達に話す。画面で顔を見たら、母の料理が食べたくてたまらなくなった。
  • サッカーの試合中に足を痛めた学生が、保健室の先生に言う。先生、足首が痛くてたまりません。
  • 第一志望の会社から内定の電話が来た直後、留学生が日本語の先生に報告する。本当にうれしくてたまらないんです。先生のおかげです。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

「〜たくてたまらない」で、いま我慢していることを一人ずつ言わせる(国の料理・家族・休み・新しい服 など)。言えたら、ほかの学生が「どうして我慢しているんですか」と聞き、言った学生は「〜から、〜わけにはいかないんです」(学習項目6)で答える流れにすると、次の項目への橋になる。

  1. 口頭教師の表情と動作をキューにする。歯を押さえる→「歯が痛くてたまらない」、時計を何度も見る→「早く帰りたくてたまらない」、届いた手紙を胸に抱く→「うれしくてたまらない」、手であおぐ→「暑くてたまらない」。全体で言わせてから個人に当て、次に「いちばんしたいこと」を一人ずつ「〜たくてたまらない」で言わせる。
  2. ペア「ジェスチャー当て」。Aがカードの気持ち・感覚を動作だけで見せ、Bが「〜てたまらないんですか」と当てる。Aは「はい、〜てたまらないんです」か「いいえ、〜」で答える。3枚で交替したあと、Bは相手のことをクラスに「〇〇さんは〜てたまらないようです」と報告し、ほかの人の気持ちの言い方をここで使わせる。
  3. 産出「いちばん〜たくてたまらないこと」メモ。目標の活動の1分スピーチの準備として、したくてたまらないこと・その理由・それでもできない事情か実際にしたことの3文を書かせる。教師が見るのは、気持ちや感覚の言葉に付いているか、ほかの人について「ようだ」「がっている」を付けているか、くだけた会話の文体になっているか。

つまずきと手当て

  • ものの性質に付ける(「*この町は古くてたまらない」)。話し手が感じている気持ち・感覚に付ける形なので、「古い町並みが好きでたまらない」のように自分の気持ちの言葉に言い直す
  • ほかの人の気持ちを言い切る(「*弟は新しいゲームがほしくてたまらない」)。会話では「ほしくてたまらないようだ」「ほしがっている」にする
  • 単独の「たまらない」(「この香り、たまらないね」)を聞いて意味が取れない。くだけた会話では、よい意味で我慢できないほどだ、という使い方もあると一言添える

既習の文型との違い

  • 〜てならない(第23課 学習項目1)どちらも強い気持ちを言いますが、「〜てたまらない」は体の感覚にも普通に使え、くだけた会話で使いやすい形です。「〜てならない」はやや硬く、「〜ような気がしてならない」「思えてならない」のように自然にわく思いに使われます。「歯が痛くてならない」は言えなくはありませんが硬く聞こえるので、会話では「たまらない」を勧めます。
  • 〜がる(初中級 第8課)「ほしくてたまらない」は話し手の気持ちで、ほかの人なら「弟は新しいゲームをほしがっている」と「がる」を使います。学習者は「*弟は新しいゲームがほしくてたまらない」と言い切りがちです。「がる」にすると助詞が「が」から「を」に変わることも、あわせて板書で見せます。
関連する文型

学習項目 6 〜わけにはいかない

意味・はたらき学習項目 6

初中級で学んだ「〜わけにはいかない」を、この課では衝動を抑える側の形として使います。気持ちの上ではしたい(あるいは思わずしてしまいそうになる)けれど、立場・決まり・周りの人への気づかい・自分の責任を考えると、することはできない、という判断です。「〜てたまらない」「〜ずにはいられない」が気持ちに負けてしまう側だとすれば、「〜わけにはいかない」は気持ちを事情で押さえる側で、二つを並べると「〜たくてたまらないけど、〜わけにはいかない」のように、気持ちと行動の食い違いが語れます。事情からの判断を言う形なので、気持ちの形と違い、「彼は立場上、断るわけにはいかなかった」のようにほかの人について言うこともできます。

接続

Vる(辞書形)+わけにはいかない(丁寧には「〜わけにはいきません」。前を「Vない」にした「〜ないわけにはいかない」は、事情があってしなければならない、の意味)

形
Vる わけにはいかない/いきませんVたくてたまらないけど、Vる わけにはいかない(気持ちと事情の食い違い)〜ので、今ここでVる わけにはいかないんですそういうわけにはいきません(申し出を受けられない)

導入

  • 気持ちと事情の天秤黒板に天秤の絵を描き、左の皿に「気持ち(〜たくてたまらない)」、右の皿に「事情(仕事・決まり・立場)」と書く。教師が「早くうちに帰りたくてたまらない。でも、きょうの仕事が終わっていないから、帰るわけにはいきません」と言い、右が重いときは「〜わけにはいかない」、左が重くて気持ちに負けたときは「〜ずにはいられない」と、課の項目を天秤の左右に置く。
  • 「できない」との違いを思い出す「チケットが売り切れなので、その映画は見られない」と「月曜日に試験があるので、日曜日に映画を見に行くわけにはいかない」を並べ、「行こうと思えば行けるのはどちらですか」と聞く。後ろの文は行けるのに事情で行かない、と確かめて、初中級で学んだ意味を短く思い出させる。

板書案

Vる + わけには いかない
〔天秤〕左:気持ち(〜たくてたまらない) 右:事情(仕事・決まり・約束)
眠くて たまらないけど、明日 発表なので、今 寝る わけには いかない。
〔赤〕わけには 〔青〕事情の「〜ので」
Vる わけには いかない(しない)⇔ Vない わけには いかない(する)

場面と発話(自作)

  • 国の家族に会いたくてたまらない大学院生が、夏休みに帰国するのか友達に聞かれた。夏も研究室で実験を続けなければならない。帰りたくてたまらないけど、実験を止めるわけにはいかないんだ。
  • 甘い物を控えている会社員が、同僚に差し入れのケーキをすすめられた。来週、健康診断の再検査がある。食べたくてしょうがないんですが、来週再検査なので、今は食べるわけにはいかないんです。
  • 面接を受けた会社から、その場で入社するかどうか返事がほしいと言われた。すぐ決めたい気持ちはあるが、まだ家族と相談していない。ありがたいお話ですが、家族と相談していないので、今ここでお返事するわけにはいきません。

練習の進め方(口頭 → ペア → 産出)

学習項目5の練習で出た「我慢していること」を使い、「〜たくてたまらないけど、〜から、〜わけにはいかない」の一文を作らせる。次に同じ場面で、気持ちが勝ってしまった結末を「結局、〜ずにはいられなかった」で言わせ、一つの場面の二つの結末を天秤の左右に書いて比べる。

  1. 口頭「したいこと・事情」のカードを組で見せる。「遊びに行きたい・明日試験」→「遊びに行きたくてたまらないけど、明日試験なので、行くわけにはいかない」、「休みたい・友達と約束がある」→「休むわけにはいかない」、「携帯を見たい・アルバイト中」→「見るわけにはいかない」、「ケーキを食べたい・来週検査」→「食べるわけにはいかない」。全体→個人で言わせたあと、同じカードの一部を「〜ないわけにはいかない」に言い換えさせ、する・しないが逆になることを確かめる。
  2. ペア「誘いと断り」。Bだけが事情のカード(翌朝早い・締め切り前・家族が来る)を持つ。Aが「今晩、飲みに行かない?」と誘い、Bは「〜ので、今日は行くわけにはいかないんだ」と断る。Aが「ちょっとだけなら?」ともう一度押し、Bは「そういうわけにはいかないんだ」で断り通す。誘いの内容を変えて交替する。
  3. 産出「心の天秤ロールプレイ」。ダイエット中にケーキを勧められる、試験の前に好きなバンドのライブに誘われる、などの迷う場面をペアで演じ、最後の決め台詞を「〜ずにはいられなかった」か「〜わけにはいかなかった」のどちらかで言わせ、結果をクラスに報告する。教師が見るのは、前が辞書形か(可能形にしていないか)、能力の「できない」に使っていないか、言った形と結果(した・しなかった)が合っているか。

つまずきと手当て

  • 我慢した場面で「〜ずにはいられなかった」を使ってしまう。「帰らずにはいられなかった」は結局帰ったという意味になる。言ったあとに「最後に、した?しなかった?」と聞き、しなかったなら「〜わけにはいかなかった」と天秤の右に戻す
  • 能力や体の状態で本当にできないことに使う。「足をけがしているので、走るわけにはいかない」は、走ろうと思えば走れるが医者に止められている、という意味に聞こえる。本当に走れないなら「走れない」と言う
  • 前に可能形を付ける(「*帰れるわけにはいかない」)。前は必ず辞書形で、「できる」の意味はこの形の中にもう入っている

既習の文型との違い

  • 〜ないわけにはいかない(初中級 第4課)「行くわけにはいかない」は事情があって行かない、「行かないわけにはいかない」は事情があって行く、と結果が逆になります。どちらも理由は気持ちではなく立場・決まり・義理です。学習者は否定が二つ重なる形で迷うので、板書の最後の行のように、矢印で「しない」「する」を書き添えます。
  • 可能表現(1)(初級Ⅱ 第22課)「行けない」は能力や状況のために行くことができないことを言い、「行くわけにはいかない」は行こうと思えば行けるが、事情を考えて行かないと判断したことを言います。熱があって起き上がれないときに「起きるわけにはいかない」と言うと意味がずれるので、本当にできないときは可能形の否定「起きられない」を使わせます。
  • 〜ずにはいられない(第23課 学習項目3)この課の中では、気持ちに負けてしてしまうのが「〜ずにはいられない」、事情で気持ちを押さえるのが「〜わけにはいかない」で、天秤の左右になります。同じ場面で「食べずにはいられなかった」と言えば食べた、「食べるわけにはいかなかった」と言えば食べなかった、と結果が逆になることを確かめます。
関連する文型

語彙の扱い

この課で扱う言葉は、気持ちを表す言葉(恋しい・懐かしい・悔しい・不安・退屈 など)と、体の感覚を表す言葉(だるい・のどがかわく・肩がこる など)に分けて板書しておくと、どの形に付けやすいかを考える材料になります。単語だけで覚えさせず、「恋しくてたまらない」「不安でならない」のように、て形に変えた形でカードを作って練習します。

この課の練習で使う語(11語・意味・連語・例文)

  • 恋しい(こいしい) 遠くにいる人や、今はそばにない物・場所を、強くほしいと思う気持ちです。 家族が〜・国が〜・母の料理が〜
    留学して3か月。寮の食堂で、同じ国の友達と話す。
    「最近、母の作るスープが恋しくてたまらないんだ。」
  • 懐かしい(なつかしい) 昔のことを思い出して、もう一度会いたい・見たいと思う気持ちです。 〜写真・〜曲・〜町
    部屋を片づけていて、高校のアルバムが出てきた。
    「写真を見ていたら、懐かしくてしょうがなかった。」
  • 悔しい(くやしい) 負けたり失敗したりして、残念で腹が立つ気持ちです。 負けて〜・〜思いをする
    決勝で1点差で負けた選手が、試合のあとに話す。
    「あと少しだったので、悔しくてなりません。」
  • 不安(ふあん) これからどうなるか分からなくて、心配な気持ちです。 〜になる・将来が〜だ・〜を感じる
    来月から、知っている人がいない町で一人で働く。
    「新しい職場でうまくやれるか、不安でたまりません。」
  • 退屈(たいくつ) することがなかったり同じことが続いたりして、つまらない気持ちです。 〜な毎日・〜する・〜でしかたがない
    雨で3日も外に出られない。
    「家にいるだけで、退屈でしかたがない。」
  • だるい(だるい) 体が重くて、動くのがいやな感じです。 体が〜・足が〜
    風邪をひいた次の日、会社で同僚に具合を聞かれる。
    「熱は下がったんですが、体がだるくてしょうがないんです。」
  • 気になる(きになる) 心配だったり興味があったりして、そのことを考えないでいられなくなります。 結果が〜・音が〜・人の目が〜
    面接から1週間たったが、まだ連絡が来ない。
    「結果が気になってなりません。」
  • 我慢する(がまんする) したいことやつらいことを、しないで・言わないでこらえます。 痛みを〜・〜できない・食べたいのを〜
    健康診断の前の晩、夜食を食べたくなった。
    「明日は検査なので、今食べるわけにはいかない。我慢しよう。」
  • 思わず(おもわず) そうしようと考える前に、気がついたらしていた、という様子です。 〜笑う・〜振り返る・〜手を伸ばす
    駅で、昔の友達によく似た人とすれ違った。
    「あまり似ていたので、思わず振り返ってしまった。」
  • つい(つい) しないつもりだったのに、気持ちに負けてしてしまう、という様子です。 〜食べすぎる・〜言ってしまう
    ダイエット中の会社員が、同僚に話す。
    「甘い物を見ると、つい手が出てしまうんです。」
  • 引き受ける(ひきうける) 頼まれた仕事や役を、自分がすると言って受けます。 仕事を〜・役を〜・頼みを〜
    疲れているが、お世話になっている課長に急な仕事を頼まれた。
    「課長の頼みなので、引き受けないわけにはいかない。」

宿題と次のコマ

宿題は、日本に来てから(または新しい生活を始めてから)気持ちが強く動いた経験を一つ選び、「〜てたまらなかった」「〜てならなかった」「〜ずにはいられなかった」「〜わけにはいかなかった」のうち3つ以上を使って、200〜300字の短い文章に書くこと。硬い形(てならない・ずには)は地の文で、くだけた形(てたまらない・てしょうがない)は会話の引用の中で使わせる。次のコマの最初に何人かに読ませ、聞いた学生が「気持ちの形」「行動の形」「抑える形」のどれが使われていたかを言って振り返ります。

よくある質問

  • 「〜てならない」「〜てたまらない」「〜てしょうがない」の違いはどう教えればいいですか?

    意味の差は小さいので、硬さと付きやすい言葉で分けます。「〜てならない」はやや硬く、作文や手紙、「〜ような気がしてならない」のような自然にわく思いに向きます。「〜てたまらない」「〜てしょうがない」は会話向きで、暑い・痛いのような体の感覚にも普通に使え、「〜てしょうがない」は困っている気持ちを込めることが多い形です。3つを並べた表を作り、同じ「心配で〜」を手紙と友達との会話の場面で言い分けさせると定着します。

  • 「〜ないではいられない」と「〜ずにはいられない」の違いは何ですか?

    意味は同じで、思わずその行動をしてしまうことを言います。違いは硬さで、「〜ずには」のほうが書き言葉や改まった話向きです。形の上では「する→せず」「来る→来(こ)ず」でつまずくので、「ないでは」で意味を入れてから、ない形→ず形の変換を別に練習すると混乱しません。

  • 「〜わけにはいかない」と「〜ずにはいられない」を学習者が混ぜます。どう整理しますか?

    天秤の絵で、気持ちに負けてしてしまう側(〜ずにはいられない)と、事情で気持ちを押さえてしない側(〜わけにはいかない)を左右に置きます。学習者が文を言ったら「最後に、した?しなかった?」と聞き、したなら左、しなかったなら右に戻します。「〜ないわけにはいかない」(事情があってする)は、理由が気持ちではなく立場や決まりだという点で、さらに別の箱に置きます。

  • この課の気持ちの形を、ほかの人について使ってもいいですか?

    「〜てならない」「〜てたまらない」「〜てしょうがない」「〜ずにはいられない」は、言い切りでは話し手自身の気持ちに使うのが基本です。ほかの人について言うときは「〜ようだ」「〜らしい」「〜がっている」を付けさせます。物語や昔を振り返る文章では付けずに書くこともありますが、会話の練習では付ける形を先に固めます。一方「〜わけにはいかない」は事情からの判断なので、ほかの人について言い切ることもできます。

  • 学ぼう!にほんご 中級 第23課は何コマで終わりますか?

    90分×3コマが目安です。1コマ目で「〜てならない」と行動の形2つ(ないでは・ずには)、2コマ目で「〜てしょうがない/しかたがない」「〜てたまらない」と3つの気持ちの形の整理、「〜わけにはいかない」まで進めます。3コマ目は宿題の文章の読み合わせと、気持ちを語る1分スピーチ、まとめに使います。形の数が多い課なので、2コマに詰めるより活動の時間を残すほうが、課の目標に届きやすくなります。

この課に関係する用語・解説・練習問題

この課の文型を、日本語教員試験の用語でいうと何にあたるか。授業の説明に迷ったときの確認と、試験対策に。